関連ワード | 指定商品 / 存続期間 / 更新登録 / |
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事件 |
昭和
49年
(行ウ)
179号
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 1976/06/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
被告が、原告の昭和四八年一〇月一日付登録第三六〇一一九号商標権存続期間更新登録願(昭和四八年商標登録願第一五八九七四号)について、昭和四八年一二月一七日付でした不受理処分を取り消す。 訴訟費用は、被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求める裁判
一 請求の趣旨 主文と同趣旨二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
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当事者の主張
一 請求の原因1 原告は、被告に対し、昭和四八年一〇月一日、商標法第20条第二・第三項に基づき左記登録商標につき商標権の存続期間の更新登録の出願(昭和四八年商標登録願第一五八九七四号、以下「本件出願」という。)をした(以下右登録商標に係る商標権を「本件商標権」という。)。 記登録番号 第三六〇一一九号原出願日 昭和一七年一二月一日原登録日 昭和一八年一一月一三日第一回更新登録出願日 昭和三八年五月六日同登録日 昭和三八年七月二三日指定商品 旧第一類 生薬商標権者 原告2 被告は、本件出願につき、昭和四八年一二月一七日付で、商標権の存続期間の更新登録の出願をすべき期間内の出願でないとの理由で不受理処分(以下「本件処分」という。)をした。 3 そこで、原告は昭和四九年二月一二日、被告に対し、本件処分につき行政不服審査法に基づく異議申立てをしたが、被告は昭和四九年一一月七日付で、本件出願は商標法第20条第3項所定の要件を具備していないので、同条第二項の期間内の出願でないことを理由に行つた本件処分は正当であり、異議申立ては理由がないとして、これを棄却する旨の決定をし、その謄本は同月一二日、原告代理人に送達された。 4 しかし、本件処分は以下の理由により違法である。 本来、本件商標権の存続期間の更新登録の出願は商標法第20条第2項により、 昭和四八年五月一四日から同年八月一三日までの間になされるべきであつた。しかし、原告は、昭和四八年七月一日から同年一〇月末日まで、急性腎炎のため福山市<以下略>の川端医院に入院加療しており、殊に入院当初の同年七月一日から同年九月二五日までは重篤状態となつてA医師から面会謝絶の絶対安静を命じられ、自ら出願手続をし、またはそのための代理人を選任することも全く不能の心神喪失状態にあつた。右事情は商標法第20条第3項が規定する更新登録の出願をする者の責に帰することができない理由により決定の期間内に出願することができないときに該当し、しかも本件出願は、右事情を記載した医師A作成の診断書および原告作成の事情説明書を添付して原告が医師から面会を許され、出願可能な状態となつた同年九月二六日から五日後で、かつ、本来本件商標権の存続期間の更新登録の出願をすべき期間の経過後二月以内にされている。従つて、本件処分は法令の解釈適用並びに事実認定を誤つた違法な処分であるから取り消されるべきである。 6 よつて原告は請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。 二 請求の原因に対する認否1 請求の原因1ないし3は認める。 2 同4は、そのうち本件商標権の存続期間の更新登録の出願が昭和四八年六月一四日から同年八月一三日までの間になされるべきであつたこと、および原告が医師作成の診断書、原告作成の事情説明書を添付して本件出願をしたことは認め、その余は否認する。被告は、原告が添付した右各書面からは商標法第20条第3項に定める原告の「責に帰することのできない理由「があるとはとうてい判断できなかつたので本件出願は同条第二項の出願ではないとしてこれを不受理処分にしたものである。 |
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証拠(省略)
理 由 被告が本件出願につき、本件商標権の存続期間の更新登録の出願をすべき期間内の出願でないとの理由で本件処分をしたこと、本件商標権の存続期間の更新登録の出願は、昭和四八年五月一四日から同年八月一三日までの間にされるべきであつたところ、原告は右期間内に出願せず、期間経過後である同年一〇月一日にこれをしたことについては当事者間に争いがない。 成立に争いのない甲第一号証の三及び四、同第二号証並びに証人Bの証言を総合すると、原告は、昭和四八年七月一日頃、 急性腎炎のため見合の席で急に気分が悪くなり、その場から直ちに川端病院に入院したが、入院後約一週間頃から高熱が出ると共に重篤状態となり、その状態が一カ月くらい続いたあと、一週間ほどはやや回復したが、その後再び重篤状態となり、 その状態が同年九月二五日まで続き、その間医師から安静を命ぜられ、家族以外の者との面会を禁止されており、重篤状態時には判断力、思考力が極度に減衰していたことが認められ、右事実によると、原告は、昭和四八年七月一日頃から同年九月二五日までは自ら本件商標権の存続期間の更新登録の出願をし、あるいは代理人をしてこれをさせることを念頭におくことを期待できない状況にあつたものと推認することができる。 ところで、商標法第20条第3項の規定する「責に帰することができない理由」のある場合とは、商標権の存続期間の更新登録の出願をする者が、その出願手続をする上に通常用い得ると期待される注意を尽しても、なお出願期間の徒過を避けることができないと認められる事由のある場合をいうものと解すべきであり、右は必ずしも天災その他避けることのできない事変といつた、いわゆる客観的事由に基づく不能の場合に限られず、出願本人に生じた、いわゆる主観的事由に基づく不能の場合もまたこれに含まれるものである。従つて右に認定したように突然の重病により出題が不能となつた本件の場合も、右不能になつた理由は、原告の「責に帰することができない理由」に該当するというべきである。 そして、本件出願が昭和四八年一〇月一日にされたものであることは前認定のとおりであり、右の日が前認定の原告の「責に帰することができない理由」のなくなつた日である昭和四八年九月二六日から一四日以内で、本来出願をすべき期間(同年五月一四日から同年八月一三日)の経過後二月以内であることは明らかである。 従つて、商標法第20条第3項の適用を排し、同条第二項に定める商標権の存続期間更新登録の出願をすべき期間内の出願でないとの理由でした被告の本件処分は違法であり取り消されるべきものある。 よつて原告の被告に対する本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担つにき民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 高林克巳 |
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裁判官 | 清永利亮 |
裁判官 | 岡久幸治 |