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事件 昭和 48年 (行ケ) 41号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1973/09/21
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求は、棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四十七年十一月二十七日、同庁昭和四五年審判第八、一一四号事件についてした審決は、取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告指定代理人は、主文第一項同旨の判決を求めた。
請求の原因
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和四十二年十二月十八日、別紙記載のとおり、ゴシツク体で「PFRFECT」の欧文字を横書きし、さらに、その下部に、アンチツク体で「パーフエクト」の片仮名文字を横書き併書してなる商標につき、商標法施行令第1条別表第三類染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤を指定商品として、商標登録出願をしたところ、昭和四十五年七月十日、拒絶査定を受けたので、同年九月五日、これに対する審判を請求し、同年審判第八、一一四号事件として審理されたが、昭和四十七年十一月二十七日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は、昭和四十八年三月三十一日、原告に送達された。
二 本件審決理由の要旨 本願商標の構成、指定商品及び登録出願日は前項大記載のとおりであるところ、
本願商標を構成する「PERFECT」及び「パーフエクト」の文字が、英語で「完全な」、「欠点のない」「申し分のない」等の意味を有するものであることは明らかなものであり、しかも、英語知識の急速に普及している現在、たとえば、野球用語で、完全試合のことを「パーフエクトゲーム」という如く「完全な」の語義を有する語の用法として、日本語同様に日常普通一般に使用されている親しみ深い語である。してみれば、本願商標が、その指定商品について使用された場合には、
その取引者、需要者は、英語の「PERFECT」の持つ「完全な」、「欠点のない」、「申し分のない」等の語義を感得し、その商品の品質の優秀なることを表示するものとして、たとえば、
「完全な商品」あるいは「欠点のない商品」との意味で理解し、さらに、それより「品質が非常に良い商品」であることを連想するものと判断されるから、自他商品の識別標識としての機能を具有するものとはいえないものである。したがつて、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものとして、その登録を拒絶すべきものである。
三 本件審決を取り消すべき事由 本願商標の構成、指定商品及び登録出願年月日が本件審決認定のとおりであること、しかして、「PERFECT」及び「パーフエクト」の文字が、英語で「完全な」、「欠点のない」、「申し分のない」等の意味を有するものであることは認めるが、本件審決は、本願商標をもつて、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とした点において判断を誤つた違法があり、取り消されるべきものである。すなわち、「完全な」商品、「欠点のない」商品、「申し分のない」商品は、本来、実在するはずがないし、仮に実在するとしても、そこには何らかの具体的商品基準が設定され、その基準に対する関係で始めてそのような評価が可能であるものであり、何ら具体的品質基準の設定もない本願指定商品について、本願商標を構成する英語の「PERFECT」が、前記のような意味を有するというだけの事実から、本願商標が、商品の品質を普通に表示する標章であるとすることはできない。また、単に「PERFECT」の文字からなる商標が、商品に附されていても、該商品が、非常に良い品質を有するものと単純に考える者はなく、仮に品質が非常に良い商品であることを連想する者があつたとしても、右表示自体は商品の品質を普通に表示しているものではない。したがつて、本願商標をもつて、商標法第3条第1項第3号に該当するものとすることはできない。なお、別表記載のとおりの登録例が存在するところ、これら登録例と本願商標とは実質的に同じであるから、本願商標のみを商品の品質表示とみることは誤りである。
被告の答弁
被告指定代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。
原告主張の事実中、本件に関する特許庁における手続の経緯、本願商標の構成及び指定商品並びに本件審決理由の要旨が原告主張のとおりであることは認めるが、
その余は争う。本件審決の判断は正当であり、原告主張のような違法の点はない。
すなわち、本願商標は、その書体及び構成において何ら特異の点がないこと商標自体において明らかである。そして、「PERFECT」の欧文字は、「完全な」、
「欠点のない」等の意味を有する英語、「パーフエクト」の片仮名文字は、英語の「PERFECT」に由来する外来語で、「パーフエクト・ゲーム」の用例にみるように、「完全な」、「欠点のない」等の意味で一般によく理解され、親しまれて使用されている。もともと、前掲の「安全な」の語は、欠点や不足のないという意味内容であつて、完全商品というように、製品についても一般に使用される語である。しかして、本願商標の指定商品、たとえば、塗料については、商品の多種、多様化に伴い、その使用目的に応じて、耐候性、耐マシン油性、耐酸性、耐火性等の性能が要求され(耐候性、耐火性等の「耐」は、商品の用途に応じた完全さを要求される語として結びつく。)そのような性能の有無、良否が商品の品質に大きく影響する。
しかも、塗装においては、素地の完全な隠蔽、完全な密着、完全乾燥等の要件が要求される。したがつて、「PERFECT」及び「パーフエクト」の文字を商標としてその指定商品に使用するときは、単に商品が品質又は効能を誇称する表現となり、その商品の品質、効能がきわめて優秀であること、又は従来の商品に比して品質がすぐれていることを誇称するにすぎないものとして、容易に認識、理解されるにとどまる。なお、原告主張の登録商標の事例は、本件と事案を異にするから、このような登録例のあることをもつて、本件審決の判断を誤りとすることはできない。
証拠関係(省略)
理 由(争いのない事実)一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願商標の構成、指定商品及び登録出願日並びに本件審決理由の要旨がいずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)二 原告は、本件審決が、本願商標を商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるとしたことをもつて、判断を誤つた違法のものである旨主張するが、右主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、前記争いのない事実によれば、本願商標は、別紙記載のとおり、単に、ゴシツク体で、「PERFECT」の欧文字を横書きし、その下部に、アンチツク体で、「パーフエクト」の片仮名文字を横書き併書してなるものであるところ、本願商標を構成する「PERFECT」及び「パーフエクト」の文字が、英語で「完全な」、「欠点のない」、
「申し分のない」等の意味を有するものであることは、原告の認めて争わないところであり、成立に争いのない乙第二号証の一から三(株式会社東京堂出版、外来語辞典)によれば、「パーフエクト」の語は、英語の「PERFECT」に由来する日本語であつて、「完全な」の意味を有する形容詞であることを認めることができ、この語を用いた「パーフエクトゲーム」の語が、野球において、「完全試合」を表現するものとして普通に使用されていることなどに徴すれば、「パーフエクト」及び「PERFECT」の語はともに「完全な」、「欠点のない」等の意味で一般世人に理解され、使用されているものと認めるのが相当である。
そして、成立に争いのない乙第五号証から第八号証の各一ないし三によれば、本願商標の指定商品である塗料は、各用途、塗料対象個所等に適応するように製造され、その種類は二十種をこえ、これらの塗料の多種多様化に伴い、その使用目的に応じて、耐候性、耐マシン油性、耐ガソリン性、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性、
耐熱性等の性能が要求され、また、塗装においては、素地を完全に穏蔽する能力、
素地に対する完全な密着力、塗膜の完全な乾燥性等の要件が要求されることを認めることができる。
しかして、このような商品である塗料について、「PERFECT」及び「パーフエクト」なる語を用いるときは、この語は、その使用目的に応じて、欠点のない品質を有し、あるいは完全な性能を有している塗料を意味し、商標としては、単に商品の品質、性能を誇示する一般的機能を有するにすぎないとみるのが相当であり、他にこの認定を左右するに足る証拠資料はない。したがつて、本願商標は、指定商品の品質を表示するものであり、特別顕著性を欠くものといわざるをえない。
原告は、「完全な」商品、「欠点のない」商品、「申し分のない」商品は実在するはずがないし、「PERFECT」の文字から商品が良い品質を有すると単純に考える者はないから、「PERFECT」の文字が品質を表示するということはできない旨主張するが、いずれも原告の独自の見解というほかなく、採用に値しない。
また、原告は、本願商標の指定商品には具体的商品基準がないことから、「PERFECT」の文字をもつて叙上のように指定商品の品質を表示するものといいえない旨主張するが、この主張は前段説示に照らし、採用するに由ないものというほかはない。さらに原告は、別表記載の既登録例を挙げ、これらの事例からも、本願商標を品質の表示とみることは誤りであると主張するが、商標の登録適格性の有無は各商標につき個別的に判断すべき性質のものであることはいうまでもないところであるから、本願商標が指定商品の品質を表示するものであり、特別顕著性を欠くこと前説示のとおりである以上、原告主張の既登録例の存在することから直ちに本願商標をもつて指定商品の品質を表示するものとしたことを誤りとすることはできない。
(むすび)三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第八十9条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 三宅正雄
裁判官 武居二郎
裁判官 秋吉稔弘