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関連ワード 出所表示機能 /  指定商品 /  普通に用いられる方法 /  ありふれた氏 /  著名な略称 /  称呼(称呼類似) /  外国 /  商号 / 
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事件 昭和 41年 (行ケ) 49号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1973/02/23
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求は、棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
この判決に対する上告のための附加期間を九十日とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四十年十月二十九日、同庁昭和三九年審判第五、五一四号事件についてした審判は、取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする」との判決を求め、被告指定代理人は、主文第一、二項同旨の判決を求めた。
請求の原因
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和三十八年八月二十六日、角ゴシツク体で「シバ」の仮名文字を左横書してなる商標(以下「本願商標」という。)につき、商品の区分第三類「染料、
顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤」を指定商品として、商標登録出願をしたところ、昭和三十九年七月二十日、拒絶査定を受けたので、同年十一月六日、これに対する審判の請求をし、同年審判第五、五一四号事件として審理されたが、昭和四十年十月二十九日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年十一月十七日原告に送達された。(出訴期間として三か月を附加)二 本件審決理由の要点 本願商標の構成、指定商品および登録出願日は、前項記載のとおりであるが、本願商標はありふれた氏姓芝に通ずるシバの文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。すなわち、本願商標「シバ」の文字は、漢字の「芝」に通じ、この芝の文字から世人一般は氏姓としての「芝」(シバ)を直感するものであるというを、社会通念に照らし相当とする。そこで、氏姓「芝」(シバ)が、ありふれたものであるかどうかについてみるに、昭和四十四年四月一日、
日本電信電話公社東京電気通信局の発行にかかる「東京二三区五十音別電話番号簿(上巻)」における数多くの電話加入者(一〇八九頁ー一〇九〇頁)の事例に徴しても、「芝」(シバ)なる氏姓がありふれていることが認められる。したがつて、
本願商標は、これをその指定する商品に使用したとしても、取引者、需要者は他の芝なる氏姓を有する同種商品とその出所を区別することのできないものであつて、
需要者が何人の業務にかかる商品であることを認識することのできない商標であると言わざるをえず、他方、本願商標が、片仮名で表わされているとしても、現今の商取引の迅速化によつて、たとえば電話連絡等の場合は、その称呼によつて取引されることが通常であり、また、その称呼を文字で表わすときは、必ずしも漢字のみに限られず、むしろ仮名文字をもつて表わすことが実験則上相当とするものであるから、本願商標は、結局、商標法第3条第1項第4号に規定する商標に該当し、その登録は拒絶すべきものである。
三 本件審決を取り消すべき事由 本願商標の登録出願日、構成および指定商品に関する本件審決の認定は争わないが、本件審決は、本願商標「シバ」をもつて、漢字の「芝」に通ずるものとし、この漢字の「芝」は社会通念上氏姓としての「芝」を直感すると認定し、ひいて本願商標をその指定する商品に使用したとしても、取引者、需要者は他の芝なる氏姓を有する同種商品とその出所を区別することができないものであると断定した点において、その判断を誤つた違法があり、取り消されるべきものである。すなわち、
(1) 本願商標は、片仮名文字「シバ」そのものであり、漢字の「芝」ではない。商標法第3条第1項第4号にいうありふれた「氏」とは漢字の「芝」であり、
片仮名の「シバ」は氏ではない。したがつて、本件審決が、片仮名「シバ」から漢字の「芝」を引き出し、本願商標をもつて前記法条にいうありふれた氏であるとしたことは違法である。現に、ありふれた氏姓に通ずると考えられる音を平仮名または片仮名の普通の書体で表わしてなる別紙記載の商標が登録されている事例に徴しても、本件審決のこの点の判断は誤りである。
(2) 本願商標の「シバ」は、明治三十四年頃から日本に染料を輸出販売している世界的に著名な染料メーカーであり、日本の染料業界においてもその名を知らない人は絶無であるといつても過言ではない原告会社名Ciba LimitedのCibaを日本の文字で表わしたものであり、本願商標は、たまたまその語音が日本人の氏姓に通ずるものであるとはいえ、本件の場合は特にそれが直ちに取引者、
需要者に「芝」を直感せしめるものではなく、原告の著名な社名の一部であるCibaを直感させ、これをその指定商品に使用した場合、十分商品の出所表示機能を果たすものである。そして、この種商品取引界においては、この外国の社名であるCiba Limitedまたはその略称である「Ciba」を指称または表示するに当たり、その英語の呼称に近い日本語の発音から「シバ社」または「シバ」が使用されてきたのである。これを要するに、本願商標「シバ」は、その指定商品染料、顔料については、「Ciba」に通ずるものとして認識されているという厳然たる社会的事実があるから、本願商標がありふれた氏姓「芝」に通ずるという社会通念は、本願の場合全くあてはまらないのである。
被告の答弁
被告指定代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。
原告主張の事実中、本件に関する特許庁における手続の経緯および本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであること、ならびに別紙記載の商標登録例の存在は認めるが、その余は否認する。本件審決の認定は正当であり、原告主張のような違法の点はない。すなわち、
(1)「芝」という氏姓、名称を、氏姓、名称として用いる場合には「芝」と書くのが正しい表示には違いない。けれども、漢字でなければ「芝」ではないというものではない。電信、コンピユーター、テレタイプのように片仮名で表現されるものの場合には、「芝」は「シバ」で表現される。現代においては、特に本願の指定商品(染料、顔料等)に関しては、漢字の縦書、横書は、商標としての感覚上相応しくないので、商品に近代的感覚または新製品的感覚を与えるために、片仮名文字または欧文字が好んで用いられ、この商標の態度から受けるこれらの感覚によつて需要者を吸引する手段とするのが普通である。したがつて、漢字の「芝」は、これを「商標」として論ずる場合には、当然片仮名文字、欧策字をも包含するものであり、商標法第3条第1項第4号が「商標」に関する規定である以上、氏姓、名称を片仮名文字で表示したものを除外しているものではなく、片仮名文字、欧文字も当然「普通に用いられる方法で表示する標章」に包含されるものである。なお、原告主張の商標登録例は、いずれも当時商標としての特別顕著性を具有するものとして登録されたものであり、これらの例があるからといつて、本願商標が登録適格を有するものとはいい難い。
(2) 原告は、原告会社の社名の一部である「CIBA」およびそれを日本文字で表わした「シバ」は、本願指定商品、ことに染料、顔料に対しても非常に著名であり、片仮名文字「シバ」から成る商標は、それが普通に用いられている方法で表示されていても、商品が染料、顔料である場合には、ありふれた氏姓である「芝」に通ずるより、むしろ原告会社の社名の著名な略称である「CIBA」(シバ)に通じるのが商品取引界の実情である旨主張するが、真の意味での「シバ」が片仮名で独立して使用されている事実はなく、「CIBA」が日本文字で表わされた「シバ」に対応するものではなく、「シバ」が独立して原告会社の社名の著名な略称「CIBA」に通ずるものということはできない。また、この場合、「CIBA」の文字から、取引者、需要者間に生ずる称呼は「チバ」であり、「シバ」ではないことは、その社名が「CIBA LIMITED」(チバ・リミテツド)として認識されていることに徴し、また、原告自身もその商号を「チバ・リミテツド」と邦訳していることをもつてしても明白である。
およそ、商標の識別性(特別顕著性)は、その商標の構成自体によつて決すべきものであるから、「CIBA」と表示した場合には特別顕著性が認められるとしても、「シバ」と表示した場合には、「芝」を普通に用いられる方法で表示したものにほかならず特別顕著性を有しない。したがつて、「シバ」が原告会社の社名の著名な略称「CIBA」に通ずるものであるから、「シバ」には特別顕著性があるということはできない。
仮に、本願商標「シバ」が、原告主張のように「CIBA」に通ずるものがあるとしても、なお一方にはありふれた氏姓、名称の「芝」に通ずるものであるから、
「シバ」はありふれた氏姓、名称「芝」を普通に用いれられる方法で表示したものであることは明らかであり、本願商標は、それ自体特別顕著性を有しない。
証拠関係(省略)
理 由(争いのない事実)・ 本願商標の構成、登録出願の年月日および指定商品、特許庁における手続の経緯ならびに本件審決理由の要点が、本件審決認定のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)二 原告は、本件審決が本願商標「シバ」をもつて、漢字の「芝」に通ずるものとし、漢字の「芝」は社会通念上氏姓としての「芝」を直感すると認定し、ひいて本願商標をその指定する商品に使用したとしても、取引者、需要者は他の芝なる氏姓を有する同種商品とその出所を区別することができないものであると断定した点において、その判断を誤つた違法がある旨主張するが、原告の右主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、本願商標「シバ」は、片仮名文字の「シ」と「バ」の結合からなり、「シバ」の称呼を生ずるものであり、この呼称より、一般に氏姓としての「芝「「柴」「欺波」「司馬」または事物の名称としての「芝」(芝草)および「柴」(雑木)あるいは東京都の地名としての「芝」を連想すると解するのが社会通念に照らし相当であるところ、一方、「芝」なる氏姓は、原本の存在およびその成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(東京二十三区五十音別電話番号簿上巻)に三欄にわたり掲載せられている事実に徴すれば、「芝」なる氏姓は、わが国において、数多く存在する一般的な氏であることぎ明らかであり、また、本願商標「シバ」は、その構成自体に何ら特別のものはないから、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に規定する商標であると認めるを相当とする。なお、原告は別紙記載の商標登録例の存在を主張するが、原告挙示にかかる商標登録例があるとしても、商標の登録適格性の有無は各商標つき個別的に判断すべき性質のものであるから、
本願商標につき前記のとおり認定しうる以上は、右商標登録例の存在の有無にかかわらず、本願商標が登録適格を欠くことは多言を要しない。
原告は、商標法第3条第1項第4号にいうありふれた「氏」とは漢字の「芝」であり、本願商標である片仮名の「シバ」は氏ではなく、したがつて、片仮名「シバ」から漢字の「芝」を引き出しえない旨主張するが、日本人の氏姓も、日常これを表現する手段として、漢字、片仮名、平仮名、ローマ字等種々な文字を使用することは顕著な事実であるから、原告の右主張は理由がない。
原告は、本願商標「シバ」は、その指定商品である染料、顔料については、「Ciba」に通ずるものとして認識されているという社会的事実があり、これがありふれた氏姓「芝」に通ずるという社会通念は本願の場合全くあてはまらない旨主張するが、仮に原告主張のような社会的事実なるものが存在したとしても、そのことは前認定にいささかの消長を及ばしうべきものではない。けだし、そのような事実の有無と一般取引者間において「シバ」がありふれた氏姓と認識されるということは、全く別個のことに属するからである。
(むすび)三 以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。よつて、
これを棄却することとし、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第八十9条および第百五十8条第2項の規定を適用して、主文のとおり判決する。
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別紙商標登録番号(出願公告番号)商標商品の区分(1)四八八、一六四(昭三一ー五、六三〇)ヤマト旧一六類(2)四九八、七一〇(昭三一ー二〇、一八五)にいやま旧三四類(3)五三九、一一五(昭三一ー二、三八五)かしわ旧五六類(4)五三九、一一七(昭三四ー二、三八七)はぎ旧五六類(5)五三九、一一八(昭三四ー二、三八八)くすのき旧五六類(6)五五〇、四六九(昭三一ー一四、五三三)ホリタ旧一類(7)五五五、六七三(昭三五ー三、六二一)クボタ旧七類(8)五五五、六七八(昭三四ー一七、〇二七)ワカマツ旧一類(9)六四九、五九六(昭三九ー六、九六三)あまぎ三二類(10)六四九、七〇四(昭三九ー五、七三五)チヨダ一七類
裁判官 三宅正雄
裁判官 武居二郎
裁判官 布井要太郎
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