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関連ワード 識別力 /  包装 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  警告 /  差止 /  類似範囲 /  同一の商品 /  継続 /  同業者 / 
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事件 昭和 44年 (ワ) 13261号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1972/01/31
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 被告は、商品シヤツおよびその包装、定価札に、別紙目録(二)記載の標章を付して、譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示してはならない。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを二分し、その一を、原告の、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告は、商品シヤツおよびその包装、定価札に、別紙目録(一)および(二)記載の標章を付して、譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求は、いずれもこれを棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
一 請求原因1 原告は、左記商標権を有する。
登録商標 別紙目録(三)記載のとおり指定商品 第一七類、被服、布製身回品および寝具類登録出願日 昭和三八年三月八日出願公告日 昭和三九年四月三〇日商標登録日 昭和三九年八月一七日登録番号 第六五〇、二四八号2 被告は、従来から、商品であるシヤツおよびその包装、定価札に、別紙目録(一)および(二)記載の各商標を付して販売し、また販売のため展示しており、
今後も、これを継続して使用するおそれがある。
3 原告が前記1において主張する商標は、月桂樹の小枝二本を左右対称に冠状に形成してなる図形であるが、被告が使用する別紙目録(一)および(二)記載の商標もまた、月桂樹の小枝二本を左右対称に冠状に形成した図形であつて、右目録(一)の商標は、原告の商標と月桂樹の小枝の形状、葉の数がやや異るが、共に月桂樹の冠図形であるという点で観念が同一であるとともに、外観も類似する。また同目録(二)の商標は、原告の商標とほぼ同一構成からなり、その観念が月桂樹の冠図形として同一であつて、外観も類似する。
4 被告が、別紙目録(一)および(二)に記載された商標を付しているシヤツは、原告が別紙目録(三)記載の商標につき有する商標権の指定商品と同一である。
5 よつて、原告は、前記1の商標権にもとづき、被告に対し、商品であるシヤツおよびその包装、定価札に、別紙目録(一)および(二)記載の商標を付したものの譲渡、引渡し、譲渡もしくは引渡しのための展示をしないことを求める。
二 請求原因に対する被告の認否1 原告が請求原因1において主張する事実は認める。
2 同2において主張する事実のうち、被告が、昭和四四年頃まで、別紙目録(一)および(二)記載の標章を、被告の商品であるシヤツに付していたことは認めるが、その余はいずれも否認する。即ち、被告は、昭和四二年頃から、別紙目録(一)記載の標章の下に“Laurel”と記入するか、同標章中央部の空白部分に“Jun”と記入するかして使用し、また、別紙目録(二)の標章は、商標としてではなく、被告商品の胸ポケツト部の刺繍模様として使用されてきたのであるが、昭和四四年五月五日、原告から、右両標章の使用が、原告の商標権を侵害するものであるとの警告をうけたので、被告は、原告との無用な争いを避けるため、以降、右二標章の使用を中止しており、今後とも、月桂樹の小枝を冠状としたものの葉の数が、左右合計二〇枚に満たない標章は使用しない方針である。
3 同3において主張する事実は否認する。即ち、被告は、別紙目録(一)の標章を、Laurelの文字と併せて使用しているため、右標章に月桂樹の観念が生じ、また、別紙目録(二)記載の標章は、同(一)記載の標章を被告商品の襟の部分に“Laurel”の文字と共に使用すると同時に、胸ポケツトに刺繍してあるため、同様月桂樹の観念が生じるのである。これに対して、原告が権利を有する別紙目録(三)記載の商標を単独に、客観的にみるときは、せいぜい「樹枝」「小枝」「木の葉」の観念、呼称しか生じないから、右商標は、別紙目録(一)および(二)記載の標章と、その観念において同一でない。さらに、右のような曖味な観念、呼称しか生じないような商標の類似範囲は、その外観上酷似するものに限定されるべきである。この点からみれば、別紙目録(一)記載の標章と同(三)の商標とは、その葉の形状、数および配列の点からみても、外観上類似ということはできず、また、同(二)の標章についても、右(三)の商標に比し、その枝および葉が明確に表現されており、外観上類似の範囲にはない。
4 同4において主張する事実のうち、被告が、かつて、別紙目録(一)および(二)の標章を付したシヤツが、原告の有する商標権の指定商品と同一であることは認めるが、その余は否認する。
三 被告の抗弁 かりに、別紙目録(一)および(二)記載の標章が、同(三)記載の商標と類似しているとしても、月桂樹の小枝二本を左右対称に冠状に形成する図形を商標として使用することは、商標法施行令第1条の別表第一七類に定める商品について一般に慣用されているから、原告の有する商標権の効力は、別紙目録(一)および(二)記載の標章の使用におよばない。
四 抗弁に対する原告の認否被告が抗弁において主張する事実は、いずれもこれを否認する。
証拠関係(省略)
理 由一 原告が、請求原因1において主張する内容の商標権を有すること、被告が、昭和四四年頃まで、別紙目録(一)、(二)記載の標章を、その商品であるシヤツに付していたことおよび右シヤツが、原告の本件登録商標の指定商品と同一であることは当事者間に争いがない。
二 そこで先ず、被告が、今後、商品であるシヤツおよびその包装、定価札に、別紙目録(一)および(二)記載の標章を、商標として使用するおそれがあるかについて判断する。
成立に争いのない乙第一一号証、同第一二号証および被告がその標章を付したことについて争いのない検甲第一号証、同第二号証ならびに証人【A】、同【B】の各証言を総合すると、次の事実が認められる。即ち、被告は、被告の販売する商品のイメージないし出所表示として月桂樹が適しているとの見地より、昭和四二年頃から、別紙目録(一)および(二)記載の標章を含む、月桂樹の小枝二本を左右対称に冠状に形成した図形を単独あるいは文字と組み合わせて使用してきた。そして、別紙目録(一)記載の標章は、主として、その下に“Laurel”なる文字を記入するか、その中心部の空白に“Jun”の文字を記入して、被告の商品であるシヤツの襟の部分、定価札、下げ札に、被告の商品であることを表示するために用い、また、別紙目録(二)記載の標章は、主として、単独で、被告商品のシヤツの胸に刺繍して用いてきた。ところが、昭和四四年四、五月頃、原告から、右月桂樹の使用は、原告の商標権を侵害するものであるとの警告をうけ、被告の商品の販売を行なつている訴外株式会社三越が、右警告を理由として、被告商品の取扱いを行なわない旨の意思を表示したため、以後、右両標章の使用は差し控えている。現在のところ、一応は、月桂樹の小枝二本を左右対称に冠状にした図形の標章については、その葉の数が左右合計二〇枚に満たないものは使用しない方針である。
右認定の事実によれば、別紙目録(一)記載の標章は、主として、他の文字と組み合わせて使用されてはいるが、その組み合わせ方は、右標章の外観を変更するものではなく、またその使用の態様は、被告の商品を表示するためのものであることが明らかであるから、被告は右標章を、商標として使用していたものであることは明らかである。また、別紙目録(二)の標章は、その使用態様において、装飾の意味をも有するけれども、被告が、被告商品のイメージないし出所表示として、月桂樹が適しているとの見地から使用している点を併せ考えるとき、右標章は、同時に商標としての性質をも有していたものといわなければならない。次に、前示認定の事実から、被告は、昭和四四年以降、別紙目録(一)および(二)の標章を商標として使用することを差し控え、現在のところ、一応、月桂樹の左右の葉の合計が二〇枚未満の標章の使用をする意図はないことが明らかではあるが、被告は、月桂樹をその商品のイメージないし出所表示とする従来からの見地をかえていないことおよび原告から警告をうける以前は、別紙目録(一)および(二)記載の標章を使用しており、現在はただ無用な紛議を避け、本件訴訟の結果いかん等を考慮すべくその使用を差し控えているに過ぎないと認められる事実に徴するときは、今後とも右両標章をその商品シヤツ、その包装および定価札に付し、商標として使用するおそれがないものとすることはできないから、この点についての原告の主張は、いずれも認めうるものといわなければならない。
三 そこで次に、別紙目録(一)および(二)記載の商標が、原告が商標権を有する別紙目録(三)記載の商標と類似するか否かについて判断する。
証人【A】および同【B】の各証言によれば、右別紙目録(一)、(二)および(三)記載の商標のいずれからも、一般に月桂樹の観念が生ずることは明らかである。しかしながら、成立に争いのない乙第三号証の一ないし九、同第四号証の一ないし三、同第五号証の一ないし二〇、同第六号証の一ないし三五、証人【B】の証言により真正に成立したと認められる乙第九号証の一ないし三および証人【A】、
同【B】の各証言を総合すると、月桂樹の小枝二本を左右対称に冠状にして形成した図形を商標として用いることは、被服その他の商品について、一般にひろく行なわれているところであることが明らかであるので、単に、右のように、別紙目録(一)および(二)記載の商標が、同(三)記載の商標と同時に、一般的に月桂樹の観念および称呼を生じさせるからといつて、直ちにそのことのみによりその類否を決することは許されない。したがつて、右の態様により月桂樹の観念を表示する商標の類否を判断するに当つては、右の態様のほかに、葉の枚数、形状および小枝の表示方法等をも観察対比しなければならない。いまこれを、別紙目録(一)記載の商標についてみるに、同商標における葉の数は、左右の合計が三六枚であつて、
原告の商標における葉の数の合計一六枚に比しかなり多く、葉の形も原告の商標のそれに比し、長さが短く湾曲しておらず、小枝の部分は空白となつており、図形の下部には、原告商標にはみられない、明らかに飾りひもとみられる裂片が示され、
また、全体の形も、原告商標が自然の月桂樹の小枝二本を、そのまま冠状としたとみられる図形であるのに対し、別紙目録(一)記載の商標は、キリスト降誕祭の装飾として用いられるやどりぎ(ミスルトウ)に近い図案化された図形であつて、右両者を対比するとき、これを離隔して観察したとしても、その混同は生じないものというべく、したがつて、たがいに類似の商標であるということはできない。次に、別紙目録(二)記載の商標を原告商標と対比するに、前者の葉の形状は、後者のそれに比し、輪郭がやや明瞭で、葉の尖端が後者ほど鋭くなく、また後者よりは長さがやや短い差異はあるけれども、両者共葉の数は一六枚で、葉の形状も共に比較的細長く、冠状をなす小枝と同方向に湾曲しており、小枝の内側と外側の葉が、
小枝に交互に付着していて、全体としても、共に自然の月桂樹の小枝二本を、そのまま冠状としたとみられる図形で、酷似しており、前記差異点は、いずれも細かい部分に限られ、右両者を離隔して観察するときは、これを区別することが困難であり、混同を生じるおそれがあるものといわなければならない。したがつて、右両者は相互に類似の商標であるとするのが相当である。
四 さらに進んで、被告の抗弁について判断する。
商標法第26条第1項3号にいう「当該指定商品又はこれに類似する商品について慣用されている商標」とは、ある商標が、同種類の商品に関して、同業者間で普通に使用されるにいたつた結果、自他商品の識別力を失つてしまつたものをいうと解するところ、本件全立証をもつてしても、いまだ別紙目録(三)のとおりの構成をもつ原告の本件登録商標が、その指定商品につき、自他商品の識別力を失わしめるほど一般に使用されているとは認められない。よつて、被告の抗弁は、理由がない。
五 以上のとおり、別紙目録(一)記載の商標は、原告の本件登録商標と類似でなく、同商標権にもとづいて、その使用の差止めを求める部分の原告の請求は理由がないので、これを棄却することとし、同(二)記載の商標は、本件登録商標と類似し、被告はこれを今後、本件登録商標の指定商品同一の商品であるシヤツおよびその包装、定価札に使用するおそれがあるので、その予防のため、譲渡その他、右商品について該商標の使用の差止めを求める部分の原告の請求は理由があるから、
これを認容することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第89条および第92条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 荒木秀一
裁判官 野沢明
裁判官 元木伸