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事件 昭和 42年 (ワ) 1986号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1971/03/03
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者双方の申立
原告訴訟代理人は「(一)被告ら三名は、それぞれの製造にかかる菓子類の容器包装、広告及び値札に「銀装」及び「銀包装」の各表示を使用してはならない。
(二)被告ら三名は、それぞれの所持する菓子類の容器包装、看板、ポスター及び値札から右各表示を抹消せよ。(三)原告に対し、被告ぼんちあられ株式会社は金一〇〇万円、被告豊洲製菓株式会社は金三〇〇万円、被告林一二株式会社は金一〇〇万円、並びに、右それぞれに対する昭和四二年五月三日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。(四)訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被告ぼんちあられ株式会社(以下被告ぼんちあられと略称する)、同豊洲製菓株式会社(以下被告豊洲と略称する)両名訴訟代理人及び被告林一二株式会社(以下被告林と略称する)訴訟代理人は、いずれも、主文同旨の判決を求めた。
請求原因
一、原告は旧第四三類(現第三〇類)菓子、パンの類を指定商品とする登録第五七二四九四号商標「銀装」及び登録第六九六四九七号商標「GINSO」の商標権者である。その権利取得の経過を詳述すると、登録商標「銀装」は、昭和三五年三月七日訴外【A】によつて出願され(出願番号昭三五ー六五一〇)、同年一〇月三一日出願公告を経た(公告番号昭三五ー二四八五三)が、原告において同年一一月一〇日右同人から右商標登録出願権を譲り受け、同月二八日特許庁長官に対し出願権承継人として名義変更届をなしてその承認を得、昭和三六年五月一五日商標原簿に登録を受けたものである。また、登録商標「GINSO」は、前記「銀装」と類似する連合商標として昭和三九年八月一三日原告自ら登録出願し(出願番号昭三九ー三八一八五)、昭和四〇年七月八日出願公告を経て(公告番号昭四〇ー一九四一〇)、昭和四一年一月二六日連合商標登録を受けたものである。
しかして、原告は菓子類の販売を業とする会社であつて、昭和二七年八月二一日株式会社大阪文明堂という商号で設立され、昭和二九年に株式会社文明堂大阪店と商号を変更したが、昭和三五年頃から自己の商品であるカステラ、クツキー等について前記登録商標「銀装」を広く使用するうち、「銀装カステラ」、「銀装クツキー」の名声はとみに高まり、登録商標「銀装」は原告の商標として国内において広く認識せられるに至り、遂には「銀装」といえば原告の商品だけでなく原告の営業自体を連想するほど一般消費者間に著名となつたため、原告は昭和四二年二月七日その商号を株式会社銀装文明堂と変更して現在に至つている。
二、被告ぼんちあられは、旧商号を株式会社中央軒と称し、油菓子類の製造販売を業とする会社、被告豊洲は、あられ類の製造販売を業とする会社は、被告林は、飴類の製造販売を業とする会社であるが、被告ら三名は昭和四一年頃からそれぞれの製造にかかる菓子類の容器包装並びに右各商品に関する新聞、テレビ、立看板等による宣伝広告及び店頭展示のポスター、値札等に「銀装」又は「銀包装」なる標章を使用している。仮りに被告らにおいて現在「銀装」の標章を使用していないとしても、それは原告から本訴の提起を受けたため一時的にその使用を見合わせているのにすぎず、将来再び使用する虞れのあることは明白である。
三、被告らの右各標章の使用は、次に述べるとおり、原告の登録商標「銀装」及び同「GINSO」の商標権を侵害するものである。
(一)被告らの使用した「銀装」なる標章は登録商標「銀装」と同一である。また、「銀包装」なる標章は、その外観称呼観念のいずれにおいても登録商標「銀装」及び同「GINSO」と類似する。
すなわち、まず外観についてみれば、「銀包装」とは「銀装」の中間に「包」の一字を挿入したものにすぎず、この場合外観において最も印象づけ、注意を惹きつける部分は文字の前後の「銀装」の部分である。
次に、「銀包装」から生ずる「ギンホーソー」の称呼と登録商標「銀装」及び同「GINSO」から生ずる「ギンソー」の称呼とは、発音の要部を共通にしており、且つ、アクセントも「ギ」の音にかかる共通のもので両者の称呼は明らかに類似している。
さらに、意義、観念についても、「銀包装」と「銀装」は結局同一の意味に理解され、ともに華麗な外観、高級な内容を暗示連想させるものである。被告らが「銀包装」と銘打つて宣伝広告した商品が百貨店、小売店、スーパーマーケツトの店頭において屡々「銀装」と表示して陳列販売されていることは、菓子類を取り扱う業者間において「銀包装」と「銀装」とが甚だ相紛らわしいことを如実に示すものといえる。
(二)仮りに、被告らが「銀装」又は「銀包装」の表示を独立の標章として使用するものでないとしても、被告らの使用する標章は、いずれも「銀装何々」、「銀包装何々」というように、「銀装」又は「銀包装」の文字部分を中核とし、右の「何々」にあたる部分には、被告ぼんちあられについて言えば「ぼんち揚」、「ぼんちあれ」等の如く、被告豊洲について言えば「ハイサラダ」、「ハイチーズ」、「ハイカラツト」、「とよすあられ」等の如く、被告林について言えば「センタン飴」、「くろ飴」、「ひき茶飴」、「あじの露」、「うめぼし」等の如く、菓子類の普通名称又はありふれた名称を附加して構成されているのであるから、その要部は「銀装」又は「銀包装」の文字部分に存する。この部分が原告の前記各登録商標と同一又は類似である以上、被告らの使用する標章は全体として右各登録商標と類似するものというべきである。
(三)なお、被告らが、右各標章を使用した商品あられ、おかき及び飴類が前記各登録商標の指定商品である菓子、パンの類に包含されていることはいうまでもない。
四 被告らは故意に、少なくとも過失により、前記の如く原告の商標権を侵害したものであり、そのため原告は次のとおりの損害を蒙つた。
(一) 被告らは、それぞれの商品につき原告の登録商標「銀装」と同一ないし類似の標章を使用し、原告の商品であるかのような印象を需要者に与えたことにより、現在に至るまで被告ぼんちあられ、同林の両名は少なくともそれぞれ金一〇〇万円の、被告豊洲は少なくとも金三〇〇万円の超過利益を得た。
従つて、商標法第38条第1項により原告の蒙つた損害額は右同額と推定される。
(二) 仮りに右の点が明らかでないとしても、登録商標「銀装」を附した商品が原告の商品であるとの認識は広く社会一般に行きわたつており、「銀装」という言葉のもつ語感と原告の製品の風味とが結合して独自のイメージを消費者間に形成している。原告は他人に右登録商標の使用を許諾する意思は毛頭ないが、万一許諾するとすれば、その対価の短期間の使用についても極めて高額とならざるを得ず、どのように低く評価しても被告ぼんちあられ、同林の場合は各金一〇〇万円を下らず、被告豊洲の場合は商品の製造販売量が多く、商標の使用頻度も高い関係上、金三〇〇万円を下らないので、結局原告は右それぞれと同額の損害を蒙つたものといえる。
(三) 仮りに財産上の損害に関する上記各主張が容れられないとしても、原告は被告らの商標権侵害行為により原告の営業及び商品に対する消費者のイメージを歪曲され、また、被告らの右侵害行為を発見の都度、調査及び警告等をなし、遂には本訴提起のやむなきに至る等、商標管理のために多大の時間と労力を費すこと余儀なくされた。右の無形の損害に対する慰藉料の額は被告らそれぞれにつき前記(一)、(二)において主張した金額を下らない。
五 よつて、商標法第36条に基づき被告らの侵害行為の差止と侵害行為を組成した容器包装、看板、ポスター及び値札の廃棄を求め、あわせて被告らの前記商標権侵害行為により原告の蒙つた損害の賠償を求める。
六、仮りに商標法に基づく差止請求及び商標権侵害を理由とする損害賠償請求が認められないとしても、被告らはそれぞれの商品につき原告の周知商標「銀装」と同一又は類似の「銀装」及び「銀包装」の各表示を使用して原告の商品と混同を生ぜしめており、そのため原告の右登録商標のもつ独自のイメージが歪曲され、その顧客吸引力が減殺されつつあるので、原告は予備的に不正競争防止法第1条第1項第一項、第1条ノ二第一項に基づき、被告らの不正競業行為の差止と右不正競業行為により原告の蒙つた損害の賠償を求める。
被告ぼんちあられ、同豊洲の答弁
一、原告主張の請求原因一の事実は不知。同二の事実中、被告両名がそれぞれ原告主張の如き会社であること、被告両名が各自の製品であるあられ、おかきの容器包装並びに右各商品に関する新聞広告、テレビ広告、看板、ポスター、値札等に「銀包装」の文字を含む表示を使用したことは認め、その余の被告両名関係部分の事実は否認する。同三、四及び六の主張事実は否認する。
二、被告両名は、いまだかつて自ら「銀装」なる文字を各自の商品の容器包装、広告及び値札等に使用したことがなく、将来これを使用する意図もない。仮りに被告両名の商品に関する新聞広告、小売店頭に展示されたポスター、値札等に「銀装」の文字が使用されていた事例があるとしても、それは被告両名の意思に基づくものではなく、新聞社、小売業者等の手違いによるものである。
三、被告両名は、各自の商品について「銀包装」の文字を商品に関する説明用語として使用したのであつて、これを商標として使用したものではない。
すなわち、被告両名はその製造するあられ、おかきを小売のための便宜上、価格に応じた容量の袋に詰めて包装し、その一袋をもつて商品の基本単位としているが、右包装袋として従来はポリエチレン等の合成樹脂膜の袋を用いていたところ、
被告ぼんちあられは昭和四一年末頃から、被告豊洲は昭和四〇年末頃から従来のものの外にアルミパツク袋を併用するようになつた。このアルミパツク袋は、内側から順次ポリエチレン膜、紙、アルミニウム箔、セロフアン、ポリエチレン膜を帖り重ねて作られており、防湿性において従来のものに比し優れた性能を有する。被告両名は、従来のポリエチレン袋入りの商品と区別するため、換言すれば被告らの商品内部間における個別化、識別化の目的で、前記包装に附すべき適切な名称を種々考えた末、銀紙による包装ないし銀色の包装であることを意味する「銀包装」なる用語を採用することとし、銀包装製品と銘打つてこれを宣伝広告するに至つたのである。
「銀包装」の用語はかかる経緯により生じたものであつて、被告両名の商品の包装状態についての説明用語にすぎず、「銀包装」の表示それ自体には自他商品の識別力がなく、商標とは次元を異にするものであるから、右表示の使用をもつて類似商標の使用に当るか否かを問題とするのはそもそも無意味である。
四、仮りに被告両名による「銀包装」の表示の使用が商標としての使用に当るとしても、「銀包装」なる文字は登録商標「銀装」及び同「GINSO」と外観称呼は勿論のこと、その観念においても相異なる。
「銀装」という字句は銀による「よそおい、かざり」という観念を生じ、「銀」の文字が単に物質的な銀を表現する以上に銀色の明るい華やかな美観を意味し、更に秀れたものを連想させる。これに対し、「銀包装」という字句は極めて現実的、
具体的な言葉であつて、その中の「包装」の部分は「よそおい」の持つ華やかな語感を有せず、「梱包」と同列の日常用語であり、その「包装」の文字の上に「銀」の一字を冠しても到底「銀装」の如き華やかにして明るい語感の響きもデリカシーも生ずるに由なく、そこからは唯現実的な包装の状態が感受されるのみである。
かくの如く、「銀装」と「銀包装」とはその語態に根本的な差異が存するので、
両者は非類似というべきである。
五、しかも、被告両名による「銀包装」の表示の使用は、その使用状況及び取引の実態に照らし、被告らの商品が需要者から原告の商品と誤認混同される虞れを生ぜしめない。
(一) 被告両名は各自の製品につき「銀包装」の文字を単独で使用したのではなく、常に被告らの著名な登録商標、すなわち被告ぼんちあられについては登録第六三五九九五号商標「ぼんち」、被告豊洲については登録第五二八七二五号商標「とよす」及び登録第五二八七二五号商標(丸に餅花の図形)と付加して一体的に使用したのである。この場合需要者の注意を惹くのは「ぼんち」の文字又は「とよす」の文字及び前記丸に餅花の図形の部分であつて、需要者は右部分により一見して商品の出所がそれぞれ被告ぼんちあられ、被告豊洲であることを容易に知りうるのである。もともと「銀包装」の文字は前述のとおりそれ自体のみでは何等出所識別力を有しないので、被告両名の使用した商標の一部をなすと仮定しても附随的な構成部分たるにすぎず、その要部をなすものではない。故に、被告両名の使用した商標全体のうちから、「銀包装」の文字部分のみを強いて抽出し、これを原告の登録商標と対比してその類否を論ずるのは失当である。
(二) のみならず、原告はあられ、おかき等の米菓子を全然製造販売していないのに対し、被告両名は右米菓子類を専ら取り扱い、あられ、おかきの著名なメーカーとして知られている。営業面においても原告の商品とは販売ルートも販売店も異にしており、原告は直売システムをとるのに対し、被告両名の商品は一般菓子店からスーパーマーケツト、更には酒タバコ小売店等において広く小売されており、原被告双方の商品が競合して販売されるのは百貨店及び名店街においてのみである。
このように、原告と被告両名とは何等競業関係にないので、かかる取引の実態に照らしても、両者の商品の間に出所の誤認混同の生ずる虞れは絶無である。
六、仮りに叙上各主張が容れられないとしても、被告らの行為は次の理由により原告の商標権に対する侵害を構成しない。
(一) 「銀包装」という文字は前述のとおり極めて現実的な銀紙による包装の状態を表示するものにすぎない。銀紙はタバコの銀紙等から防湿性の効果が連想され、そこに防湿性の観念を生ずるから、「銀包装」の文字は、かかる意味において防湿性の強く求められる商品たるあられ、おかきについての品質、加工方法の表示に該当し、商標法第26条第1項により原告の商標権の効力は及ばない。
(二) 被告ぼんちあられは、登録商標「銀包装ぼんち野郎」の商標権者であるから、同被告によると「銀包装ぼんち」を要部とする商標の使用は右商標権に基づく適法な権利行使である。
被告林の答弁
一、原告主張の請求原因一の事実は不知、同二の事実中、被告林が原告主張の如き会社であること、同被告がその製造する飴類について、昭和四一年一二月頃から翌四二年一月頃までの短期間右商品のパツキングケースに「銀装」の文字を含む表示を施し、その頃右商品の広告ポスターにも右同様の表示を施して頒布したこと、その後前記パツキングケースに「銀包装」の文字を含む表示を施し、前記商品に関する新聞広告、テレビ広告中にもこれと同様の表示を使用したことは認めるが、その余の同被告関係部分の事実は否認する。同三、四及び六の主張事実は否認する。
二、被告林は、「くろ飴」、「あじの露」、「ひき茶飴」、「うめぼし」等と名付ける飴類を「センタン飴」の総称のもとに製造販売しているが、アルミニウム箔を使用した袋で包装した右飴類について、その包装の特異性を表現する趣旨で「銀装」又は「銀包装」の文字を「センタン」、「くろ飴」、「あじの露」、「ひき茶飴」、「うめぼし」等の固有の表示に付記して使用したにすぎない。「銀装」及び「銀包装」たる語句は、商品を包装する物体の形状を指称する説明用語にすぎないから、その使用によつて商品の出所についての誤認、混同を来す虞れはない。
三、なお、「銀装」の文字については、被告林は昭和四二年一月頃から既にその使用を廃しており、将来再び使用する意思もない。
四、原告はカステラ等洋菓子の製造販売を専業とし、飴類の製造販売を営んでいないので、被告林の行為は不正競業行為とはならない。
被告らの主張に対する原告の反論
一、(「銀装」、「銀包装」は説明用語にすぎない旨の主張について) 商標法にいう商標とは、同法第2条に明らかなように、「文字、図形若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡するものがその商品について使用するもの」をいうのであるから、商標法による保護の対象となるか否かの問題を別論とすれば、たとえば「取扱注意」、
「天地無用」等の文字どおりの説明文であつても、商品について使用する限りは商標であり、従つて、銀装及び銀包装の文字は、それが説明用語であると否とにかかわりなく商標法上の商標に該当する。そして、商標が互いに類似するか否かの判断基準は、二つの商標が外観称呼観念のいずれか一点以上について紛らわしいかどうかにあるのであつて、「銀装」ないし「銀包装」が説明用語であるか否かは類否の判断に無関係である。
なお、仮りに被告らの使用する右各表示が商標法上の商標に当らないとしても、
不正競争防止法は類似商標の使用のみならず商品の容器、包装その他特定の者の商品であることを示す表示と同一又は類似のものの使用を禁じているのであるから、
「銀装」及び「銀包装」の表示が原告の周知商標「銀装」と同一又は類似であり、
これによつて被告らの商品と原告との商品との間に誤認混同を生ぜしめている以上、被告らには右各表示を適法に使用する権限はない。
二 (「銀包装」の表示は被告らの著名商標と共に使用しているから商品の出所について誤認混同の虞れは生じない旨の主張について 被告ぼんちあられ、同豊洲主張の同被告らの登録商標が著名であるとの事実は争う。原告の登録商標と右被告らの商品又は広告に附されている全標章とを直接対置した場合であれば格別、いわゆる離隔的観察の方法によれば、称呼によつて商品を購入する菓子類については出所について誤認混同の虞れがないとは到底いえない。
そればかりでなく、「銀装」の語句から連想される独自のイメージと「銀装=原告商品」という消費者の認識とは、登録商標「銀装」の、従つて原告の営業自体の、
文字どおり命ともいうべきものであつて、「銀装」に酷似する「銀包装」というが如き表示が他人により使用されるときは、「銀装」のもつ本来のイメージが希釈化され、右登録商標の有する顧客吸引力、宣伝力は自ら弱化させられ、ひいてはその出所識別機能さえ破壊されるに至ることは必定であり、これによつて原告が回復不可能な損害を蒙ることは見易いところであるから、商標法上も、不正競争防止法上も、被告らによる「銀包装」の表示の使用が是認される余地はない。
三、(「銀包装」の表示は商標法第26条第1項第2号に該当する旨の主張について) 商品の包装状態が、商標法第26条第1項第2号所定の商品の品質、形状、加工方法等に該当するかどうかは甚だ疑問であり、仮りにこれを積極に解しても、「銀装」の語句は勿論、「銀包装」の語句もこれまで商品の包装状態について慣用せられて来た事跡がないのみならず、本件における被告らの商品の如く、アルミニウム箔を主体とする袋に封入されたものの状態を「銀包装」と表記、称呼することは明らかに普通の用法に従つたものではない。
けだし、包装を表わすには色彩によらず材質によるのが我国の慣習であり、包装状態を色彩で表現すること自体が異常である。右アルミニウム箔は通常銀紙とは呼ばれず、ましてこれを銀と略称するが如きは一般に行なわれていない。更に、袋入りのものを「包装」と呼ぶのも首肯できない。
本件アルミニウム箔を主体とするポリエチレン加工の袋は、被告らが使用を始める前から、インスタントスープの素、ピーナツツその他のナツツ類、あられ、おかき等の防湿性を要求される食品について既に使用されていたが、これまで、右の袋入りの商品が「銀包装」と表記、呼称された実例は絶無である。「銀包装」なる語句は被告らによる新造語であり、商品の品質、形状、加工方法等をありのままに記述した表示でないことは明白であるから、被告らの主張は理由がない。
証拠関係(省略)
理 由一、原告の商標権 いずれも成立に争いのない甲第一号証の一、同第二号証の一及び四、同第一三号証の一、二、原告代表者の供述に当事者弁論の全趣旨を綜合すると、訴外【A】は別紙図面(一)に記載のとおり「銀装」の文字をゴジツク体で左横書きにしてなる商標につき旧第四三類菓子、パンの類を指定商品として昭和三五年三月七日商標登録出願(商願昭三五―六五一〇)をなし、同年一〇月三一日出願公告(商標出願公告昭三五―二四八五三)を経たが、原告は同年一一月二〇日右同人から該商標の登録出願により生じた権利を譲り受け、同月二八日特許庁長官に対し右権利の承継の届出をなし、前記出願にかかる商標は昭和三六年五月一五日登録第五七二四九四号商標として原簿に登録され、原告において右登録商標(以下これを登録商標「銀装」という)の商標権者となつたこと、
原告は右登録商標「銀装」と類似する別紙図面(二)に記載のとおり正方形及びこれに内接する菱形の輪廓線内に「GINSO」「CASTELLA」の文字を二段に横書きしてなる商標につき現三〇類カステラを指定商品として昭和三九年八月一三日連合商標登録出願(商願昭三九―三八一八五)をなし、昭和四〇年七月八日出願公告(商標出願公告昭四〇―一九四一〇)を経て昭和四一年一月二六日登録第六九六四九七号をもつて連合商標登録を受け、右登録商標(以下これを登録商標「GINSO CASTELLA」という)の商標権者となつたことをそれぞれ認めることができる。
二、被告ぼんちあられ使用の標章並びにその使用態様(一) 被告ぼんちあられが、旧商号を株式会社中央軒と称し、油菓子類の製造販売を業とする会社であることは当事者間に争いがなく、同被告がその商品であるあられ、おかきの容器包装並びに右商品に関する広告、値札等に「銀包装」の文字を含む表示を使用したことは同被告の認めて争わないところである。
(二) 右争いのない事実と成立に争いのない甲第三号証の六、同被告がその製品「ぼんち揚」の包装に使用している袋であることにつき争いのない検丁第二号証の一ないし三、証人【B】の証言を綜合すれば、被告ぼんちあられは、その製造販売するあられ及び揚げ菓子について従来「ぼんち」の文字からなる商標を使用し、右商品をポリエチレン製の包装袋に封入し、これに「ぼんちあられ」、「ぼんち揚」等の表示を附して発売していたが、昭和四一年八月頃からアルミニウム箔を主体としポリエチレンで防湿加工を施した材質の包装袋を一部に採用し、この包装袋に封入した商品を従来のものと区別するため、後記認定の被告豊洲の例に做つて銀包装品と命名し、右商品について従来使用の商標に「銀包装」の文字を付加した「銀包装ぼんちあられ」、「銀包装ぼんち揚」なる標章を包装用段ボールケースに附して現在に至つているほか、昭和四二、三年中に新聞、テレビ等によつて右商品の宣伝広告をするに当り、たとえば、前顕甲第三号証の昭和四二年三月二七日付製菓時報紙上に掲載された広告に見られる「ぼんち揚」「ぼんちあられ」と上下二段に分けて横書きし、その左側に上下二段分にまたがつて「銀包装」の文字を大書した標章の如く、「銀包装」の文字と「ぼんち」の文字とを綜合させた標章を広告に附して展示又は頒布した事実が認められる。
(三) 被告ぼんちあられが、その商品について「銀包装」なる標章を単独で使用した事実並びに「銀装」なる標章又は「銀装」の文字を含む標章を使用した事実は、いずれもこれを認めるに足りる証拠がない。
もつとも、成立に争いのない甲第三号証の一の昭和四二年一月二日付菓業食品新聞紙上に掲載された同被告の商品の広告中には、「銀装ぼんち海老あられ」なる標章が附されているけれども、成立に争いのない甲第三号証の二ないし五、証人【B】の証言を綜合すると、右新聞広告に「銀装」と印刷されている部分は右菓業食品新聞社の手違いによる誤値であつて、同被告が同新聞社に掲載方を注文した広告の原稿には「銀包装ぼんち海老あられ」と明記せられていた事実が認められ、この認定を左右しうる証拠はない。従つて、同被告自身が前記「銀装ぼんち海老あられ」の標章を使用したものということはできない。
また、松坂屋百貨店地下一階売場における同被告の製品を撮影した写真であることにつき争いのない検甲第一号証には、「ぼんち揚銀装パツク」及び「海老アラレ銀装パツク」なる標章を附した値札が展示されている情景が写されているが、右各値札にかかる標章を附して展示した主体は右売場において被告ぼんちあられの製品を小売している松坂屋百貨店であると認められ、少なくとも当該行為主体が同被告自身であることを肯認させる証拠は存しない。
三、被告豊洲使用の標章並びにその使用態様(一) 被告豊洲があられ類の製造販売を業とする会社であることは当事者間に争いがなく、同被告がその商品であるあられ、おかきの容器包装並びに右商品に関する広告及び値札に「銀包装」の文字を含む表示を使用したことは同被告の認めて争わないところである。
(二) 右争いのない事実と、いずれも同被告がその商品の包装に使用している袋であることにつき争いのない検甲第四号証、同第一〇号証、検丙第一号証の一ないし三、同第二号証の一ないし五、同第三号証の一、二、証人【C】の証言を綜合すれば、被告豊洲は、その製造するあられ類を「とよすあられ」の総称のもとに製品の種類別に「ハイサラダ」、「ハイチーズ」、「ハイカラツト」、「ハイミツクス」等の名称を用いて販売し、これら商品につき別紙図面(三)の如き丸に餅花の図形からなる商標及び別紙図面(四)の如き「とよすあられ」の文字をやや特殊な字体で表記してなる商標を前記製品名称を示す文字と組み合わせて使用してきたが、右商品は従来セロフアン及びポリエチレン製の包装袋に封入して発売していたところ、昭和四〇年末頃アルミニウム箔を主体としポリエチレンで防湿加工を施した材質の包装袋を一部に採用することとなり、この包装袋に封入したあられ類を新製品として発売すべく、これに附する適当な名称を種々考案した結果、会社内部において創作した「銀包装」の造語を採択し、前記アルミニウム箔の防湿袋で包装された商品を銀包装品と銘打つて売り出すと共に、その旨大々的に宣伝広告するに至つたことが認められる。
(三) しかして、被告豊洲がその命名にかかる銀包装品について使用した標章の具体的構成を詳細に検討すると、次のとおりであることが認められる。
1 前掲検甲第四号証の包装袋の表面には、中央に大書した「ハイミツクス」の文字とその上部に別紙図面(三)記載の図形、別紙図面(四)記載の文字及び「TOYOSU ARARE high mix」の文字が記され、袋の裏面には別紙図面(三)記載の図形と表面同様のローマ字等が記されているほか、「のれんの風味、ハイミツクス」と題し、「この銀包装は、あられのパツケージとして、特にとよすが研究・開発したもので、湿らず、風味を逃さない、あられには最適の包装です。」等の説明文が小さい活字で記載されている。
2 同被告の使用する包装用段ボール箱を昭和四三年一一月一日撮影した写真であることにつき争いのない検甲第四四号証によると、右段ボール箱側面には、その右側方又は左下側方に横長の二重長円枠で囲んだ「銀包装」の横書文字が、その中央部に四隅を丸めた二重の角枠内に太字で白抜きした「ハイサラダ」の文字が、その左側方上段に別紙図面(三)記載の図形が、左側方下段に別紙図面(四)記載の文字が、それぞれ附されている。
3 成立に争いのない甲第四号証の三の昭和四二年二月一七日付朝日新聞夕刊紙上に掲載された広告には、その広告にかかる商品を表彰するものとして、上段に「銀包装のあられ」の横書文字、下段に別紙図面(三)記載の図形及び別紙図面(四)記載の文字が附されている。
4 成立に争いのない甲第四号証の四の昭和四二年三月二日付菓業食品新聞紙上に掲載された広告には、その広告にかかる商品を表彰するものとして、上段に連続して横書きした別紙図面(四)記載の文字及び「銀包装トリオ」の文字、右下隅に別紙図面(三)及び同(四) 各記載の図形及び文字が附されている。
5 成立に争いのない甲第四号証の五の昭和四二年三月三一日付朝日新聞夕刊紙上に掲載された広告には、その広告にかかる商品を表彰するものとして、「銀包装ハイ」「ミツクス」と二段に横書きした文字と、その上側に別紙図面(三)及び同(四)各記載の図形及び文字が附されている。
6 成立に争いのない甲第八号証の一の昭和四二年四月二一日付菓業食品新聞紙上に掲載された広告には、その広告にかかる商品を表彰するものとして、「銀包装」「ハイミツクス」と二段に横書きした文字並びにその直下に別紙図面(三)及び同各(四)記載の図形及び文字が附されている。
7 成立に争いのない甲第八号証の二の昭和四二年六月一日付近畿菓業新報紙上に掲載された広告には、その広告にかかる商品を表彰するものとして、上段左側に「銀包装」「ハイミツクス」と二段に横書きした文字と下段右側に別紙図面(三)及び同各(四)記載の図形及び文字が附されている。
8 昭和四二年三月一五日及び同月二九日に放映された同被告提供にかかるテレビ番組「なにわ寄席」のテレビ画像を撮影した写真であることにつき争いのない検丙第四号証の一、二によると、右番組中のコマーシヤル画面には、その広告にかかる商品を表彰するものとして、上段に別紙図面(三)及び同各(四)記載の図形及び文字が、下段に「銀包装トリオ」の文字が、いずれも白抜きして附されている。
9 地下鉄車内窓上小枠に掲示された同被告製品の広告ポスターを撮影した写真であることにつき争いのない検甲第二号証の三によると、右ポスターにはその広告にかかる商品を表彰するものとして、左側に外側白地、内側黒地の二重菱形枠内に大きく白抜した別紙図面(四)記載の文字、中央から右方にかけて大きく横書した「銀包装あられ」の文字とその下段に小さく一段に横書きした「ハイミツクス、ハイチーズ、ハイカラツト、ハイサラダ」の文字が附されている。
10 京阪神急行沿線に立てられている同被告製品の広告看板を撮影した写真であることにつき争いのない検甲第二号証の八及び九によると、右立看板にはその広告にかかる商品を表彰するものとして、左側の黒地菱形内に大きく白抜きした別紙図面(三)及び同各(四)記載の図形及び文字、中央から右方にかけて大きく横書きした「銀包装のあられ」の文字とその下段に二段に分けて小さく横書きした「ハイサラダ ハイチーズ」、「ハイミツクスハイカラツト」の文字が附されている。
(四) 以上に見たように、被告豊洲使用の標章の具体的構成は使用態様を異にすることに区々にわたるけれども、そのいずれを採り上げても、つねに「銀包装」の文字を別紙図面(三)及び同(四)各記載の図形及び文字又は別紙図面(四)記載の文字と併用している点においては一貫しているのであつて、同被告において他に「銀包装」の標章を単独で使用した事実を認めるに足りる証拠はなく、また、上記各証拠によると、同被告使用の前認定にかかる各標章中の、別紙図面(三)及び同(四)各記載の図形及び文字の部分は、つねに「銀包装」の文字部分と同大又はそれ以上に大きく表記されており、前二者の図形文字が特に目立たないように表記されている事例は見当らない。
(五) 次に、被告豊洲が「銀装」の標章又は「銀装」の文字を含む標章を使用した事実は、本件に現われた全ての証拠によつても肯認することができない。
もつとも、それぞれ、ナンバ地下センター売場、阪神百貨店地下一階売場、阪急百貨店地下一階売場、松坂屋百貨店地下一階売場における同被告の製品を撮影した写真であることにつき争いのない検甲第二号証の一、二、五、六及び七、証人【D】の証言によると、同被告の製品が陳列販売されている前記各売場において、
昭和四二年三月中その値札に「銀装ハイサラダ」「銀装ハイチーズ」、「銀装ハイカラツト」(以上ナンバ地下センター)、「とよす銀装ハイサラダ」「とよす銀装ハイチーズ」「とよす銀装ハイカラツト」(以上阪神百貨店)、「とよす銀装あられ」(阪急百貨店)、「ハイチーズ銀装パツク」「ハイカラツト銀装パツク」(以上松坂屋百貨店)なる標章が附されて展示されていたことが認められるけれども、
右各値札にかかる標章を附して展示した主体は右各売場の経営者(証人【E】の証言によると右ナンバ地下センター売店は被告豊洲とは別会社の訴外株式会社とよすの経営にかかるものであることが認められる)にほかならないものと思料され、なお、証人【D】の証言によつて真正に成立したと認める甲第一四号証によれば、阪急、阪神の両百貨店は被告豊洲の製品につき納入業者の発見した見積書に記載せられた商品名称をそのまま値札に転記したことが窺われるが、右納入業者が被告豊洲自身であつたことを認めうる証拠はないので、結局、同被告において前記「銀装」の文字を含む標章を値札に使用したということのできないのは勿論、取引書類に使用したということもできないのである。
四、被告林使用の標章並びにその使用態様(一) 被告林が飴類の製造販売を業とする会社であることは当事者間に争いがなく、同被告が昭和四一年一二月頃から若干の期間その商品である飴類のパツキングケースに「銀装」の文字を含む表示を施し、またその頃右商品の広告ポスターにもこれと同様の表示を施して頒布したこと、その後前記パツキングケースに「銀包装」の文字を含む表示を施し、前記商品に関する新聞広告、テレビ広告中にもこれと同様の表示を使したことは同被告の認めて争わないところである。
(二) 右争いのない事実と成立に争いのない甲第一一号証の五、関西テレビにより放映された同被告の製品の広告を撮影した写真であることにつき争いのない検甲第三号証の一、同被告の製品の包装箱を撮影した写真であることにつき争いのない前同号証の二、同被告の製品の広告ポスターを撮影した写真であることにつき争いのない前同号証の三、同被告が昭和四二年以降使用しているセンタン飴の包装袋であることにつき争いのない検甲第八号証、同号証の袋の中に飴と共に入れられている乾燥剤の包装であることにつき争いのない検甲第九号証、証人【F】の証言を綜合すると、以下の事実を認めることができる。
1 被告林は、従来その製造販売する飴玉につき「<11653-002>のセンタン飴」なる商標を使用し、右商品を缶に入れて発売していたが、昭和四一年一二月頃以降その製品を「くろ飴」、「ひき茶飴」「あじの露」「うめぼし」の四種類に分類し、アルミニウム箔にポリエチレンによる防湿加工を施した包装袋に封入した右商品を「銀装センタン飴」と命名して発売した。
2 そして、同被告はその頃(イ)右商品の段ボール包装中箱の側面に、左側の部分には波状山形の輪廓線を上下対称に重ね合わせた黒地図形内に黒船の紋及び「KUROAME」の文字を白抜きにし、中央から右方にかけて上部に「センタン」の文字を配し、中央部の短形黒地内に二段に分けて「銀装」「くろ飴」の文字を白抜きした標章(以下標章イという)を附し、(ロ)前記商品の段ボール包装大箱の側面に、左肩部分には短形の黒地内に「銀装」の文字を白抜きし、中段に前記波状山形を上下対称に重ね合わせた黒地図形を四個並べ、その一つには石臼を模して二重の輪の中間部に放射状短線を附し中央部に三枚の茶の葉の模様をあしらつた挽茶を象徴する紋及び「ひき茶飴」の文字を、その一つには露をかたどつた擬宝珠の紋及び「あじの露」の文字を、その一には梅の紋と「うめぼし」の文字を、その一つには黒船の紋と「くろ飴」の文字を、それぞれ白抜きし、下段に「(<11653-002>)センタン飴本舗」なる記号及び文字を配した標章(以下標章ロという)を附し、(ハ)その商品の広告ポスターに「センタンの新発売」なる標題文字と「銀装」の文字を右側から中央にかけて大きく縦書きし、左側に「あじの露」「くろ飴」「ひき茶飴」「うめぼし」各文字と右各製品の包装外観を図示してなる標章(以下標章ハという)を附してこれを各小売店に配布した。
3 その後昭和四二年一月に至り、同被告はその商品の名称を「銀装センタン飴」から「銀包装センタン飴」に変更し、これに伴なつて遅くとも同月末日迄には「銀装」の文字を含む前記標章イ、ロ、ハの使用を全面的に廃止し、同年二月からこれに代えて「銀包装」の文字を含む標章を使用しはじめ、商品の包装用段ボール箱については従来これに附していた前記標章イ及びロ中の「銀装」の文字部分を「銀包装」と改めたものを附するようになり、商品と共に包装袋内に封入する乾燥剤の袋には「銀包装センタン飴」の標章を附し、また、同年中にテレビ、新聞等によつて自己の商品を宣伝広告するに当り、昭和四二年四月一一日放映された関西テレビのコマーシヤル画面中には「銀包装センタン飴」の標章を、同年七月一日付関西菓子新聞紙上に掲載された広告には(丸文の銀包装センタン飴」「(<11653-002>)センタン飴本舗」と二列に縦書きした標章を使用した。
(三) 被告林がその商品につき「銀装」及び「銀包装」の標章をそれぞれ単独で使用した事実を認めるに足りる証拠はなく、また同被告が「銀装」の文字を含む標章を前記四、(二)に認定した以外の使用態様で使用し、あるいは右認定の使用期間を越えてその使用を継続した事実も、本件に現われた証拠上これを認定するのは困難である。
もつとも、前顕検甲第三号証の二、三及び証人【D】の証言を綜合すると、スーパーマーケツト業者である訴外サカエ薬品株式会社戎橋支店の店頭には、前記標章イ及び標章ロの附された被告林の商品包装用段ボール箱並びに標章ハの附された同被告の広告ポスターが昭和四二年四月一一日に至るもなお陳列掲示されていたとの事実が明らかであるけれども、右は当該段ボール箱及びポスターが被告林の手を離れ、流通経路末端の小売業者のもとに渡つた後において生じた事態にすぎないのみならず、郵便官署作成部分の成立に争いがなく、その余の部分は弁論の全趣旨により真正に成立したと認める甲第五号証の一によれば、原告から昭和四二年三月二七日付をもつて被告林に対し、センタン飴の販売につき「銀包装」の標章使用の中止方を求める通告書が発せられていることが認められるのであつて、この事実をも併せ考えると、「銀装」の文字を含む標章を附した包装箱及び広告ポスターが同年四月に至るもなお小売店店頭に陳列掲示さたていた事実があるからといつて、被告林が同年一月末頃既に右標章の使用を全面的に廃止したとの前段認定を妨げる資料とするには足りない。
更に、成立に争いのない甲第一一号証の三、四の昭和四二年六月一日付及び同月一一日付関西菓子新聞紙上に掲載された同被告の商品に関する広告には、いずれも「丸文の銀装センタン飴、(<11653-002>)センタン飴本舗」なる標章が附されているけれども、成立に争いのない甲第一一号証の五、前掲【F】証人の証言によると、菓子業界紙の広告注文の取り方は、注文者から一切を委せられ適宜に文案を作成して掲載することが行なわれており、前認定の関西菓子新聞紙上掲載の広告は、被告林からその商品の広告掲載方の注文を受けた関西菓子新聞社において独自の判断で文案を作成したうえ掲載するに至つたものであり、同被告は事前にその文案を知らされていなかつたこと、広告掲載後にその内容を知つた同被告が右新聞社に対し注意を促した結果、次回同年七月一日付の同紙上に掲載された広告には、前掲甲第一一号証の五に見る如く「銀包装センタン飴、(<11653-002>)センタン飴本舗」と正しく表示されるに至つたことが窺われるので、前記甲第一一号証の三、四の新聞広告に現われている標章が同被告自身の意向に基づいて附されたものとは遽かに断じえないものといわねばならず、他に同被告が昭和四二年二月以降「銀装」の文字を含む標章を使用した事実を認定しうる証拠は存しない。
五、被告林による「銀装」の文字を含む標章の使用と商標権侵害の成否(一) 原告の登録商標「銀装」は、既述の構成から「ギンソー」の称呼と「銀装」の観念を生ずることはいうまでもなく、また原告の登録商標「GINSO CASTELLA」は、既述の構成から「GINSO」の文字部分を要部とし、「ギンソー」の称呼を生ずるものと解される。
これに対し、被告林の使用した標章イ、ロ及びハは、前記四、(二)2において認定したとおりの構成であるが、右各標章のうち「くろ飴」、「ひき茶飴」、「あじの露」、「うめぼし」の文字は、飴類について用いられる普通名詞ないし慣用標章と目すべきものであるから、結局原告の登録商標との類否の判断にあたり観察すべき対象は、右以外の「銀装」、「センタン」、「(<11653-002>)センタン飴本舗」の各文字部分と既述の紋章入り図形部分である。
(二) 被告林は、右各標章中の「銀装」の文字はアルミニウム箔を使用した袋で包装した飴類について、その包装の特異性を表現する趣旨で付記的に使用したにすぎず、「銀装」の語句は商品を包装する物体の形状を指称する説明用語にすぎないから出所の誤認混用の虞れは生じない旨主張する。なるほど、同被告の商品がアルミニウム箔にポリエチレンによる防湿加工を施した包装袋に封入されていることは既に認定したとおりであり、アルミニウム箔が通常銀紙と呼称表記されていることは公知の事実である。しかしながら、「銀装」という字句は銀色の華麗な外見を暗示し連想させるものとはいえ、「装」の語は「よそおい、かざり」の語義を有するのみで、直接には包装を示す語義を有しないで、同被告が「銀装」の文字を使用するに至つた動機はともあれ、飴類の取引者、需要者が「銀装」の字句に接した場合に、右字句が銀色アルミニウム箔による包装を意味することを何等の説明も受けずに直ちに感得するものとは解し難い。従つて、かかる包装を施した商品について使用される「銀装」の文字が取引者、需要者間において当該商品の包装状態を説明する付随的な表示として理解されうるものとは未だ認め難いところといわねばならない。
(三) しかして、前示標章イ、ロ、及びハにおいて、「銀装」の文字部分はその構成上も「センタン」あるいは「(<11653-002>)センタン飴本舗」の文字及び前記紋章入り図形とは離れた位置に目立つように表記されており、また観念上も他の文字図形と不可分一体の必然的な結合関係があるとは到底認められないものである。これに加えて、成立に争いのない甲第一号証の一、同第七号証、証人【D】の証言並びにこれによつて真正に成立したと認める甲第一号証の二、三、同第六号証の一ないし三、同第一八、一九号証、原告がそれぞれ朝日、毎日、読売、
産経の各新聞紙上に掲載した広告であることにつき争いのない検甲第二九号証の一ないし二一、同第三〇号証の一ないし一四、同第三一号証の一ないし三四、同第三二号証の一ないし三二を綜合すると、原告は肩書地に本店を置き、和洋菓子の製造販売を目的とする会社であつて、昭和三四年頃からその製造販売するカステラ、クツキー等につき「銀装」の商標を使用し、昭和三五年以降一流新聞、著名雑誌等に「文明堂の銀装カステラ」あるいは「銀装カステラ」と表示した紙上広告を毎月掲載すると共に、大阪市営地下鉄車内にも右同様の表示を施した広告ポスターを掲示するなどして鋭意宣伝に努め、カステラを主力とする原告製品の売上高は、昭和三四年一〇月から昭和三五年九月迄の間一億六一〇七余円であつたのがその後毎年度数千万円づつ着実に増加して昭和三九年一〇月から昭和四〇年九月迄の間には五億〇四五四万余円に達し、他方宣伝広告費としては年間売上高のおおむね五パーセント内外に当る金額を毎年支出し、その結果、遅くとも昭和四〇年末頃には「銀装」の商標が原告の業務にかかる菓子について使用される商標として京阪神地方における取引者、需要者間に広く認識されるに至つていたという事情の存することが認められる。
されば、被告林は他人の著名な登録商標を他の文字図形と結合させて自己の商標中にとり入れて使用したものというべく、同被告使用の前示各標章中において「銀装」の文字部分と他の文字図形との結合関係が前述の如く稀薄であり、「銀装」の文字が菓子類の取引者、需要者に極めて馴染深い識別標識である以上、前示標章イ、ロ及びハからは「センタン」以外に「銀装」の称呼観念が生ずることは否定し得ないところであつて、この各標章が使用された被告林の商品は「銀装」印しの飴類として取引、購買される虞れがあるといわなければならない。
(四) そうすると、前示標章イ、ロ及びハは、いずれも原告の登録商標「銀装」とその称呼観念を共通にし、且つ、原告の登録商標「GINSO CASTELLA」の要部と称呼を共通にするものであるから、全体として右各登録商標に類似するものと認めざるをえない。故に、登録商標「銀装」の指定商品旧第四三類菓子、
パンの類に属し、且つ登録商標「GINSO CASTELLA」の指定商品であるカステラと同一店舗において販売せられる飴類について、前示各標章を使用することは、原告の右各登録商標の商品出所識別機能を害するものであつて、当該商標権に対する侵害を構成するものというべきである。
六、被告らによる「銀包装」の文字を含む標章の使用と商標権侵害の成否(一) 被告ぼんちあられ及び同豊洲は、同被告らの使用した標章中の「銀包装」なる文字は同被告らの商品の包装状態を説明するものにすぎず、商標としての使用に当らないから、商標権侵害の問題を生じない旨主張するので、先ずこの点について判断する。
商標法第2条第1項は、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用する標章をもつて同法にいう商標であるとしているが、商標というからには少なくとも社会通念上商品の個性の標識と認めるに値するものであることを必要とするものと考えられる。しかし、それが具体的に商品のいかなる個性を表彰するための標識であるかは問うところではなく、商品の出所に限らず、その普通名称、品質、効能、使用方法その他当該商品における何らかの個性の識別に奉仕するものと認められる限り、すべて商標法にいう商標に該当するものと解しなくてはならない。従つて、商品について使用された文字が当該商品の包装状態を説明するためのものであるとしても、それはまさに右商品の個性の標識にほかならないから、右文字が商標ないし商標の構成部分であることを否定する理由とはなし難い。
なお、右被告両名は「銀包装」の文字は自他商品の識別力がないから商標にあたらない旨主張するようであるが、出所識別力の存在は商標登録の要件にすぎず、これを具備しないものも商標法にいう商標であることは同法第3条第1項第26条第1項の規定に徴しても疑いを容れないところである。
よつて、右被告両名の主張はいずれも採用し難い。もつとも被告ら三名は、「銀包装」の文字のみからなる商標を使用したわけではなく、右文字を構成部分とする標章を商標として使用したものであることは、すでに認定説示したところである。
(二) そこで進んで、被告ら使用の「銀包装」の文字を含む標章が原告の登録商標「銀装」及び同「GINSO CASTELLA」と類似するか否かについて検討する。
被告らにおいて前記標章を使用したあられ、おかき又は飴類は、既述のとおりいずれもアルミニウム箔にポリエチレンによる防湿加工を施した防湿袋によつて包装されたものであり、且つ、右包装状態のまま消費者の手に渡るものである。しかして、アルミニウム箔が古くから商品の防湿包装資材として使用され、一般に銀紙と呼称表記されることは煙草、チヨコレート等の例を引くまでもなく明らかであるところ、あられ、おかき及び飴類はいずれも湿気を嫌う商品であり、また、この種菓子類の需要者は店頭に陳列された現物を購買するのを常とするから、本件の如く、
アルミニウム箔を主体とする袋によつて密封防湿包装を施した菓子類について「銀包装」の文字が使用された場合、右文字に接する当該商品の取引者及び需要者は、
これを銀紙による包装の略称で商品の外形を表示する文字と直感し、特別の事情のない限り商標中の付記的、付随的な構成部分と受け取り、当該商品の出所は商標中のその他の部分によつて識別するものと判断せざるをえない。
原告は、本件の如きアルミニウム箔を主体とする防湿袋は、被告らが使用を始める前から防湿性を要求される菓子その他の食料品の包装に使用されていたにかかわらず、これまで当該防湿袋入りの商品が「飴銀包」と表記呼称された前例はなく、
右語句は被告らによる新造語である旨主張し、右主張事実は証人【B】、同【C】、同【F】の各証言及び弁論の全趣旨によつてこれを認定しうるけれども、
それは従来世人が右包装状態を「銀包装」と表現することを思い付かなかつたことを示すにとどまり、「銀包装」の文字を取引者及び需要者がいかなる趣旨に理解するかは別問題であるから、それが新造語であることは何等前叙判断の妨げとはならないものというべきである。
ところで、被告ら使用の「銀包装」の文字を含む標章の具体的構成は既に詳細に認定したとおりであつて、右各標章中被告ぼんちあられ使用のものについては「ぼんち」の文字、被告豊洲使用のものについては別紙図面(三)記載の図形及び同(四)記載の文字、被告林使用のものについては「センタン」又は「(<11653-002>)のセンタン飴本舗」の文字がそれぞれ見易い状態で「銀包装」の文字と連続又は併列して記載されているので、被告らの商品の取引者及び需要者は、
商品の出所についてはむしろ右部分に着目し、「ぼんち」、「とよす」、「センタン」等の称呼表記によつて取引購買をなすものと認められる。
そうすると、被告ら使用の前記各標章中の銀包装の文字部分は、被告らの商品の取引時における包装状態との具体的関連においてみれば商標の要部をなすものといえず、したがつて、右各標章から銀包装の独立した称呼観念は生ずる由なく、これを使用した被告らの商品が「銀装」印しとしてはもとより、「銀包装」印しの商品として取引購買される虞れも認められないので、右各標章は原告の前記各登録商標と外観称呼観念のいずれの点においても非類似と判断するのが相当である。
(三) 原告は「銀装」の語句から連想される独特のイメージと「銀装‖原告商品」という消費者の認識とは、登録商標「銀装」の、したがつて、原告の営業自体の文字どおり、命ともいうべきものであつて、「銀装」に酷似する「銀包装」というが如き表示が他人により使用されるときは「銀装」のもつ本来のイメージが稀釈化され、右登録商標の有する顧客吸引力、宣伝力はおのずから弱化せられ、延いてはその出所識別機能さえ破壊されるに至るから「銀装」の表示の使用は右登録商標権を侵害するものであると主張する。
もし、被告らが「銀包装」の語をそれだけ単独で自己の商標として使用したのであれば、右の語は「銀装」と外観称呼等において類似していることは争えないところであるから、右の行為は原告主張の如き結果をもたらすことは推認するに難くなく、違法な行為としての非難は免れないであろう。しかし、既に認定した如く、
被告らがこのような行為をした事実は認められず、右の語を使用するときはつねに、被告ぼんちあられにおいては「ぼんち」の文字、被告豊洲においては別紙図面(三)及び(四)に示す図形及び文字又は右(四)に記載の文字、被告林においては「センタン」又は「(<11653-002>)センタン飴本舗」の文字いずれも併記し、かつ右図形及び文字の大きさはつねに「銀包装」の文字に劣らぬ程度に目立つようにして表示しており、その包装には俗に銀紙と呼ばれているアルミニウム箔を使用しているのである。銀包装の語の右使用態様からは「銀包装」印しと言つた観念は生ぜず、また「銀装」印しと混同せしめんとする意図あるいは「銀装」の語が持つ優雅にして華麗な装いと言つたイメージに便乗せんとする形跡は認められず、銀包装の語は現実的な銀紙による包装、すなわち具体的な包装の種別を意味する普通用語として理解されるのである。更に被告らの商品が湿気を嫌う性質を有することにかんがみると、被告らが、湿気に備えた銀紙包装の商品であることを明示するため「銀包装」の文字を被告らの商標に附記したとしても、それは格別不自然な表現方法であるとも解せられない。被告らの銀包装の語の使用は表示全体として観察すべきである。そうだとすると、被告らの上記認定の銀包装の語の使用は、
右認定の態様に止まる限り、これを原告らの著名商標「銀装」のただ乗り、あるいは、右商標の持つ前記イメージを僣用するものとなすのは当らず、その他これを社会的に非難し違法視するのは当を得ない。
なお、原告の右主張は「銀包装」の字句は「銀装」と酷似しており、被告らが「銀包装」と表示して発売した商品も末端小売店においては屡々銀装と略して表示されているほどであるから、かかる略称を生ずる危険を孕む「銀包装」の商標使用は原告の商標権を稀釈化するものであつて許容されないとの趣旨を含むものとしても、「銀包装」の語句からその略称、略語として「銀装」なる語句が自然に生ずるものとは考えられないので、一般に「銀包装」の表示が小売店等において「銀装」と略記表示される蓋然性があるとは断じ難いところである。被告ら使用の商標中の「銀包装」の部分が百貨店、スーパーマーケツト等において「銀装」と略記表示された実例があるとしても、それは右小売業者らが偶々不注意に表示したものと認められ、通常の取引上の注意を払う限りかかる事態の発生は防止しうるものと考えるのが相当である。そして斯様に第三者の故意又は過失によつて不当表示が行なわれる可能性があるとしても、それは右第三者に対し別途にその責任を追及すれば足りることがらであつて、被告らによる「銀包装」の文字を含む商標の使用それ自体を違法視すべき根拠とするのは当らない。
(四) 以上説示のとおりであるから、被告らによる「銀包装」の文字を含む標章の使用は、原告の前記各登録商標の商標権を侵害するものとは認められない。
七、本訴各請求の理由の有無(一) 「銀装」、「銀包装」の表示使用の差止請求について上来検討の結果を要約すると、被告ぼんちあられ、同豊洲においてそれぞれの商品につき、単独であると他の文字図形と共にであるとを問わず、「銀装」の標章を使用した事実は認められない、また、被告林においてその商品につき「銀装」の文字を含む標章イ、ロ及びハを使用した事実は認められるが、同被告は原告から本訴の提起を受けるより前の昭和四二年一月末限りその使用を全面的に廃止し、爾後「銀包装」の文字を含む標章に切替えているのであつて、本訴において被告林が「銀装」の表示の使用が原告の商標権に対する侵害とならない旨主張抗争しているという一事だけでは、将来同被告においての使用を再開する虞れがあると認めるわけにはいかない。
他にかかる虞れのあることを推測せしめるに足りる事情は全証拠によつても窺うことができないので、現段階において被告林に対し「銀装」の表示使用の差止を求めることは許されない。
次に、被告ら三名の使用した「銀包装」の文字を含む標章は原告主張の各登録商標と類似するものといえないので、右標章の使用は原告の商標権を侵害するものでないことは既述のとおりであり、また、不正競争防止法にいう商標の類似も、その類似の程度につき商標法における商標の類似と別異に解すべき理由はないので、右標章を使用する被告らの行為は不正競争防止法第1条第1項第1号所定の不正競争行為にも該当しないというべきである。
従つて、被告らに対する「銀装」、「銀包装」の表示使用の差止請求は、いずれもその理由がない。
(二) 損害賠償請求について 被告ぼんちあられ、同豊洲に対する請求は、その前提となる商標権侵害又は不正競争行為の成立が認められないため、いずれも理由のないことは明白である。
被告林に対する請求について考えると、同被告による前記標章イ、ロ及びハの使用が原告主張の各登録商標の商標権を侵害するものであることは既述のとおりであるが、原告主張にかかる被告林のこれによつて利得した金額並びに右各登録商標の使用料相当額については、これを認定しうる証拠がないので、結局、右侵害行為によつて原告の蒙つた財産上の損害は、その数額の点で証明がないことに帰着する。
なお、原告は無形の損害を蒙つた旨主張するけれども、被告林による侵害行為の継続期間は二箇月に満たず、侵害標章の使用頻度も著るしいことは認められないことにかんがみると、同被告の商品の品質が劣悪であつたというような事跡の認むべきもののない本件においては、被告林の商標権侵害行為によつて原告が財産上の損害以外にその主張の如き無形の損害を蒙つたものとは到底認めることができない。
被告林の右侵害行為が同時に不正競争行為に当るとしても、損害の発生又は数額の点につき証明のないことは同断である。
そうすると、被告林に対する損害賠償請求も、遂にこれを認容するに由ないものである。
八、結論以上の理由により、被告らに対する原告の本訴各請求はすべて失当として排斥を免れない。
よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 大江健次郎
裁判官 近藤浩武
裁判官 庵前重和
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