関連審決 |
審判1964-3891 |
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関連ワード | 指定商品 / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 対比的(対比的観察) / 非類似 / 商号 / |
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事件 |
昭和
42年
(行ケ)
103号
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1970/11/27 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が、昭和四二年三月二二日、同庁昭和三九年審判第三八九一号事件についてした審決は、取り決す。 訴訟費用は、被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判等
一 原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。 二 被告代表者は、適式の呼出を受けながら、本件各口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面の提出をもしない。 |
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原告の請求の原因
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、つぎのとおり述べた。 (特許庁における手続の経緯)一 原告は、昭和三九年八月五日、被告を被請求人として、被告が商標権者である登録第五八二二五三号商標(その構成は別紙第一目録記載のとおり。以下「本件商標」という。)について、登録無効の審判を請求したが、特許庁は、同庁昭和三九年審判第三八九一号事件として審理のうえ、昭和四二年三月二二日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年四月二六日原告に送達された(出訴期間として三月が附加された。)。 (本件審決の理由の要点)二 本件商標は、白無地の書面に西洋紋章にいう盾を変形したものとリボンの図形を結合した図形、すなわち盾の上部を薄い板状に線描きし、かつ、盾の末端のやや上部の両側を少し括つたように狭め、その地内のほとんどすべてを黒色で塗りつぶして表わし、盾地の中央部よりやや下部を真横に幅狭に切り除き、この個所に一見リボンを思わせる図形をはめ込むように配置し、その両端を上方(上記板状図形の下部)に、外側に丸めるように描き(該図形(表面)の下辺の両端と盾の両端を線で連結し、かつ、その内部を輪郭線との間に少し間隔をあけて黒色で塗りつぶしてある。)、その表面の内部に角ゴシツク書体とローマン書体との中間的な書体風の「STORK」の欧文字を横書きし、さらに上記板状図形の上部に腹這いになつて首を延し右を向いている鳥(鶴を思わせる。)を写実的に描き、かつ、該描画中の下部よりリボン図形(表面)の上辺の上部にわたつて「S」字形の図形を重画し、 盾地以外のものについても、すべて黒色で表わして成り、旧第二〇類車両、船舶その他運搬用機械器具およびその各部を指定商品として、昭和三四年五月六日の登録出願にかかり、昭和三七年一月九日にその登録がされたものである。 つぎに、請求人の引用にかかる登録第四一九六三〇号商標(以下「引用商標」という。)は、白無地の書面に欧文字と各事物の混合図形、すなわちその中央部にフアツシヨンシヤドー書体風の「R」のローマ字を表わし、かつ、該文字の中央部に、同書体風の「C」のローマ字を掛けるように重画し、さらに「R」のローマ字の右下方の背後に、同書体風の「C」のローマ字を隠すように表わし、その右にやや小さく同書体風の「O」のローマ字を表わし、「R」のローマ字の上部に弧状にした止木(全体を黒色で、一見鳥の脚が当たる所と思われる部分を白抜きにして描いてある。)を描き、さらにその上部に、長い嘴を左に向けた鳥の頸部(その末端を三裂にし、左右の部分を外側に向けて描いてある。)を写実的に描き、「R」のローマ字の下部に、リボンを思わせる横長方形の図形(リボンの両端は上方に、外側に丸めるように描いてある。)を、その表面を黒色で塗りつぶして描き、その内部に角ゴシツク書体の「THE RALEIGH」の欧文字を白抜きで表わし、該図形の下部に同書体風の「NOTTINGHAM」および「ENGLAND」の各欧文字をいずれも上記文字に比し小さく、かつ後者を前者よりやや小さく、幅狭に二段にして横書きし、上記リボンおよび止木以外のものについても、すべて黒色で表わして成り、旧第二〇類自転車、自動自転車、三輪車およびそれらの部分品その他本類に属する商品を指定商品として、昭和二七年一月一〇日の出願にかかり、同年一二月一五日にその登録がされたものである。 本件商標と引用商標との類否について比較検討する。 外観上においてみるに、両者の態様がそれぞれ前記するとおり複雑な構成よりなるものであるけれども、もとより両者にかかる指定商品とくに「自転車」に附する商標にあつては、一般にこれら両商標のような混合図形が採択されることが決して少なくないところであり、一方この種商品の需要者はその構造、性能などについて仔細に吟味することは勿論のこと、同時にそれに附してある商標についても注意深く観察するのが通例である点に鑑みるときは、両者は、その構成にかかる各事物を相異にするものであることが明らかであるので、畢意外観上において相紛らわしいものではないとみるのが至当である。 また、称呼上および観念上においてみるに、もとより両者がいずれもその構成にかかる各事物と各欧文字が互に一体不可分の関係にあつて、そのうちのいずれか一つを欠く場合には商標の機能を喪失するというものではないし、まして簡易迅速を尚ぶ商取引の実際に徴するときは、看者をして、前者よりは、その構成要素中に顕著に表示されてある鶴を思わせる鳥の描画の部分を着目、印象させ、これより「つる」の称呼および「鶴」の観念を生じさせるものであるとみるのが相当である。 これに対し、後者よりは、その権利主体である「ザ・ラレイ・サイクル・コンパニー・リミテツド」(THE・RALEIGH・CYCLE・COMPANY・LIMITED)の名称との関係において、しかもその構成要素中に顕著に表示してある「THE RALEIGH」の欧文字の部分を着目、印象させるところであるので、これより「ざ・られい」(THE RALEIGH)の称呼および観念を生じさせるものであるとみるのが自然である。 このような訳であるので、両者は、称呼上および観念上においても互に類似しない商標であるといわなければならない。 してみれば、本件商標は、その指定商品が引用商標の指定商品と同一または類似するものであつても、叙上のとおり外観、称呼および観念のいずれの点においても引用商標に類似しないものであることが明らかであるので、なんら旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第2条第1項第9号の規定に違反して登録されたものではないと判断せざるをえない。 また、本件商標は、叙上のとおり引用商標に非類似であり、また引用商標が著名であるとの立証もない以上、これをその指定商品に使用するも、広く取引者および需要者をして、あたかも引用商標権者より出所した商品であるかのような混同を生じさせるおそれはないというを実験則に照し明らかであるので、同法第2条第1項第11号の規定に違反して登録されたものでもない。 したがつて、本件商標は、商標法施行法第10条第1項の規定によつて、なお効力を有する旧商標法第16条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべき限りでない。 (本件審決を取り消すべき事由)三 本件審決は、つぎのとおり判断を誤つた違法があるから、取り消されるべきものである。すなわち、本件商標の構成、その指定商品および登録に至る経緯、ならびに、登録第四一九六三〇号商標(その構成は別紙第二目録記載のとおり。)の構成、その指定商品および登録に至る経緯は、いずれも本件審決の認定するとおりであるが、本件商標は、つぎに述べるとおり、引用商標と類似するものであるのに、 本件審決は、これと異なる判断をしたものであつて、違法といわなければならない。 (一) 外観の類似について。 本件審決は、(1)本件商標および引用商標は、それぞれ複雑な構成よりなるものであること、(2)両者の指定商品とくに「自転車」に附する商標にあつては、 一般にこれら両商標のような混合図形が採択されることは、決して少なくないこと、(3)この種商品の需要者は、その構造・性能などについてのみならず、それに附してある商標についても、注意深く観察するのが通例であること、を根拠として、両者が、その構成にかかる各事物を相異にするものであることが明らかであり、外観上において相紛らわしいものではないとみられる旨を述べているが、前記(1)の事実は、右の結論とどのように関係するのか理解できず、また、(2)における「両商標のような混合図形」とは何を意味しているのかも理解できない。もし、これが鳥の頭部を表わした図形の下部にローマ字のモノグラム・リボン等を配した図形という趣旨であれば、原告はこれを否認する。もし、ローマ字と図形との結合商標という程度であるならば、これが前記結論と結びつく理由が理解し難い。 さらに、(3)において、商品自転車等の需要者は、その商品との関係において、 構造・性能のみならず、商標についても注意深い観察をなすべきことを述べているが、自動車等の、高価な、しかも構造・性能等について一見了解し難いものであればともかく、自転車は、現在のわが国の一般的生活水準からみてそれほど高価なものではなく、また、構造・性能等も店頭において一見すればほぼ了解しうる程度のものであり、薬品等のように人の健康ないし生命に直接関係するものでもないから、他類の一般商品に比し、商標の類否に関し、需要者がとくに高度の注意能力を有し、また、とくに綿密な注意を払うものとして判断すべき必然性はない。むしろ、原告は、自転車における商標の表示は、一般に自転車前輪の支承パイプに装着させる金属製プレート等により行なわれるものであり、このような商標表示態様においては、細部の識別は困難で、両者とも、漫然、鳥の頭部図形として観察されるにすぎないと考える。要するに、本件審決は、商標の外観類否判断において深くいましめられている対比的観察をすることにより、前記の結論に達したものであるから、この結論は、容認できない。 (二) 称呼・観念の類似について。 本件審決は、両商標の称呼・観念の類否について判断するにあたり、本件商標からは「つる」の称呼および「鶴」の観念が生ずるのに対し、引用商標からは、その権利主体である「ザ・ラレイ・サイクル・コンパニー・リミテツド」の名称との関係、およびその構成要素中に顕著に表示してある「THE RALEIGH」の欧文字より、「ざ・られい」の称呼および観念が生ずる、と述べている。引用商標中に「THE RALEIGH」の文字があるために、これより「ザ・ラレイ」(むしろ、正しくは、「ザ・ローリー」)の称呼を生ずる可能性は、必ずしも否定できないが、前述したように、商品自転車に使用される金属製プレート等において、右の「THE RALEIGH」のような文字を適確に認識し、しかも、これを「ザ・ラレイ」ないし「ザ・ローリー」と称呼することを、わが国における自転車の一般需要者に期待することは、むしろ困難であり、少なくとも、これが「トリ」等と略称され、観念される可能性を否定することはできない。なお、権利主体との関係についていえば、実際の取引の場において、商標は、その商品の出所が、具体的に何々会社等というような営業主体の商号とは無関係に、ただ何人かの営業にかかることを認識させるための標識として作用するのであるから、商標の称呼・観念を認定する場合に、商標権者の商号を参酌することは許されない。他方において、 本件商標の称呼・観念は、決して、審決理由中に認定されているように「つる」・「鶴」ではありえない。本件商標の構成から、これが鳥ないし鳥の頭部であることを認識することができても、これを「鶴」であるとするに足る明確な特徴は示されていないからである。本件商標中の「STORK」という英語に着目し、あるいはこれを「こうのとり」、「ストーク」と認識し、そのように称呼し・観念することも、まつたく否定はできないが、これは、審決自体が否定しているか、少なくとも積極的に肯定していないところである。引用商標について述べたと同様に、本件商標の称呼・観念は、「つる」・「鶴」ではなく、「トリ」でなければならない。本件審決が、前記のような構成の両商標において、なぜ、一方の称呼・観念が、文字部分「STORK」から生ぜず、「鳥の描画の部分を着目、印象………これより「つる」の称呼及び「鶴」の観念を生じさせ……」としながら、他方の商標については、もつぱらその文字部分に着目して、「ざ・られい」と称呼し、「THE RALEIGH」の観念を生ずるとされたのかは、理解し難いところである。したがつて、両商標は、称呼・観念においても相類似するものと考えられるべきである。 かりに、百歩を譲つて、本件商標の称呼は「ストーク」であり、引用商標の称呼が「ザ・ラレイ」ないし「ザ・ローリー」であるとしても、なお、観念において、両者は類似である。 |
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証拠関係(省略)
理 由一 被告は、適式の呼出を受けながら、本件各口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面の提出をもしないから、原告主張の事実を自白したものとみなされる。 二 右事実によれば、本件商標の構成は別紙第一目録に、引用商標の構成は同第二目録に、それぞれ記載されたとおりであり、両商標の登録に至る経緯は本件審決の認定するとおりであつて、両商標の構成について本件審決が述べているところも、 ほぼ首肯しうるものと認められるが、本件審決は、本件商標が引用商標と外観において類似しないとした点において、判断を誤つた違法があるというべきである。すなわち、 (一) 本件審決は、 (イ) 本件商標および引用商標が、いずれも複雑な構成からなつていること。 (ロ) 両商標に共通な指定商品、とくに自転車については、両商標のような混合図形が採択されることが少なくないこと。 (ハ) この種商品の需要者は、その商品の構造・性能についてくわしく吟味すると同時に、それに附してある商標についても注意深く観察するのが通例であること。 を考えれば、両商標がその構成要素としている事物を異にしていることが明らかに認識されるものであつて、両商標は、外観上相紛らわしいものではないとみられる旨判断している。 (二) しかしながら、右(イ)、(ロ)、(ハ)の事実ないし事情を根拠として、看者が両商標の構成上の差異を明確に認識すると断ずることは、理由のない速断といわざるをえない。すなわち、右(イ)の点については、前記のとおりの構成よりなる両商標は、他の多くの商標にみられる、単に一連の文字よりなり、あるいは、一個の図形からなるような簡単な構成に比し、たしかに複雑な構成を持つといいえよう。つぎに、右(ロ)の点については、甲第九号証の一ないし二〇(その成立についても被告において自白したものとみなされる。)によれば、自転車およびその部品等を指定商品とする商標にあつては、前記のような簡単な構成のもののほかに、多くの文字と数個の図形を組み合わせた、本件審決のいう「両商標のような混合図形」といいうるような構成のものも少なくないことが認めえないではない。 しかし、右(ハ)の点について考えると、両商標に通ずる指定商品、とくに自転車が、本件商標の登録当時において、その需要者にとつて必ずしも安直に購入できるものとはいえず、したがつて、需要者らは、購入にあたつて、その構造・性能等に相当の留意をし、調査をするのを通例としたことは明らかであるが、だからといつて、右商品が、特段に貴重なものであるとか、または、外部からの観察や試乗等によつてその構造・性能等を調査することがきわめて困難である等の事情が認められない以上、需要者が、右商品を購入するにあたつて、その構造・性能のみでなく、 その商標についても、他の商品におけると異なり、とくに注意深く観察するのを通例としたということはできないといわざるをえない。まして、両商標の指定商品に含まれる自転車の部品等についてみれば、商標の調査の程度に関し、これを他の一般商品と区別すべきいわれはない。 (三) そこで、右(イ)および(ロ)の事実、ならびに、 (ニ) 自転車における商標の表示が一般に自転車前輪の支承パイプに装着される金属プレート等により行なわれる事実(この事実も被告において自白したものとみなされる。)を考慮したうえ、本件商標と引用商標との外観上の類否について判断する。まず、 両商標は、いずれもその上部に、右向きと左向きとの差異はあるが、くびの長い鳥の上部を顕著に表示し、その下に、リボンを思わせるような両商標に共通の図形や、両商標に共通しない図形および欧文字を組み合わせて表示しているものである。そして、本件商標の中央よりやや下の部分に表示された「STORK」の文字および引用商標の下部近くに表示された「THE RALEIGH」の文字も、相当明らかに看取される。しかしながら、両商標の指定商品の需要者および取引者の中には、右「STORK」および「THE RALEIGH」の欧文字の意義を解しうる者も少なくないであろうが、一方、わが国における英語の普及度からみて、 右各文字の意義を解しえず、したがつて、これから格別強い印象を受けない者も相当数にのぼるであろうことも見易いところである。これに反し、両商標に顕著に表示された前記くびの長い鳥の上部は、程度の差はあるが、いずれも写実的に表現されており、それ自体が何人にも身近に感ぜられるものであるため、看者の多くの者に強い印象を与えるものとみるのが相当である。そして、以上の事実に、自転車における商標の一般的表示態様に関する前記(ニ)の事実をあわせ考えれば、両商標が、その形状に若干の差異があり、そしてまた、前記(イ)、(ロ)の事実から、 需要者等は、自転車の商標についてはやや慎重に観察する傾向があろうと考えられるにもかかわらず、時と所を異にして観察されるとき、その外観から彼此混同されるおそれがあることは、否定できないところといわざるをえない。したがつて、右と異なり、両商標がその外観において類似しないとした本件審決は、その点において判断を誤つた違法があるというべきである。 三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、その他の点について判断するまでもなく、 その理由があるものとして、これを認容すべく、訴訟費用は、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条により被告の負担とすることとし、主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 三宅正雄 |
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裁判官 | 杉山克彦 |
裁判官 | 楠賢二 |