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関連審決 抗告審判1954-813
関連ワード 指定商品 /  周知商標 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  禁止権 /  善意使用 /  連合商標 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  類似商標 / 
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事件 昭和 41年 (行ケ) 1号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1970/09/18
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求は、棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
双方の求める裁判
(原告)1、昭和二九年抗告審判第八一三号事件について、特許庁が昭和四〇年一一月一六日にした審決を取り消す。
2、訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決(被告)主文第一項と同旨の判決
原告の請求原因
一 原告は、昭和二七年一一月二五日別紙第一記載のとおりの商標(以下「本願商標」という。)につき、指定商品を旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)第15条による第三八類清酒とし、登録第一三四、二三八号商標ほか数件の登録商標の連合商標として、登録出願をしたところ、昭和二九年三月六日拒絶査定をうけたので、同年四月二九日抗告審判の請求をし、同年抗告審判第八一三号事件として審理され、昭和三八年四月一〇日右抗告審判の請求は成り立たない旨の審決があつたが、同審決は当庁昭和三八年(行ナ)第五八号審決取消請求事件の確定判決により取り消され、さらに審理の結果、昭和四〇年一一月一六日右抗告審判の請求は成り立たない旨の審決(以下「本件審決」という。)があり、その謄本は同年一二月九日原告に送達された。
二 本件審決は、別紙第二記載のとおりの登録第六二、三九七号商標(その指定商品を旧々第三八類清酒として大正二年九月六日登録出願、同年一二月二七日登録、
その後昭和八年五月二四日および昭和二八年六月一日に商標権存続期間更新の登録がされた。)(以下「引用商標」ともいう。)を引用し、本願商標と引用商標とは、外観上は類似の範囲をこえる差異があるが、称呼および観念を共通にすること、すなわち、本願商標は、中央に「白鹿」の文字がきわめて顕著に表わされており、その他の文字、図形は単なる付記付飾にすぎないと認められるから、「ハクシカ」(白鹿)の称呼および観念が生ずるというのを相当とするに対し、引用商標からも、その構成上「ハクシカ」(白鹿)の称呼および観念が生ずることが明らかであるから、両者は、類似の商標であり、かつ、その指定商品も同一である、として、本願商標は旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第2条第1項第9号により登録を拒否すべきものである、とした。
三 しかしながら、本件審決はつぎのとおり、判断を誤つた違法のものであり、取り消されるべきものである。
(一) 引用商標の認定の誤り(イ) 本件審決引用の登録第六二、三九七号商標については、大正一二年九月一日の関東大震災によりその商標原簿が滅失したので、大正一二年農商務省令臨第九号「滅失シタル商標原簿ノ回復ニ関スル件」の規定に基づき、当時の商標権者訴外【A】から大正一三年一〇月二八日商標権登録回復の申請手続がされた。
(ロ) この滅失商標原簿の回復に関する省令第1条第3条および第1条で準用する滅失特許原簿回復規則(大正一二年農商務令臨第六号)第4条の規定によれば、商標登録回復の申請をする場合は、申請書に商標登録証および商標見本五通を添付しなければならず、滅失、紛失その他やむをえない事由により登録証を添付することができないときは、その事由を記載した書面および商標公報その他証憑となるべき書面を添付しなければならないとされている。
(ハ) 訴外【A】が引用商標の登録回復申請のさい申請書に添付して提出した商標登録証には、その商標の構成として別紙第三のとおりのものが表示されており、
また、同時に提出された商標見本もそれと同一のものであつたから、引用商標の構成の実体は別紙第三のとおりのものであつたと思われる。
すなわち、商標原簿が滅失した場合、原登録の商標の実体を知るには、登録回復申請書に添付された証拠書類である商標登録証および商標見本によるほかはないのであつて、後記被告の主張(第三、二)のように、回復申請書に添付されたものでない商標公報を基礎とし、それだけによつて原登録の正当な商標を確認することは許されない。
したがつて、本件審決が、引用商標の構成を、右商標登録証および商標見本に表示された別紙第三記載のとおりのものであると認定しないで、単に商標公報に表示されているにすぎない別紙第二記載のとおりのものであると認定し、
その前提に立つて本願商標との類否の判断をしたのは誤りである。
(二) 登録回復手続の無効 かりに、右登録回復申請書に添付された商標登録証および商標見本に表示された商標が誤りで、原登録の商標と異なるものであつたとすれば、引用商標は、その登録回復申請に必要な登録証および商標見本の添付がなかつたことに帰着し、他に登録証にかわるべき商標公報その他の証拠書類の添付もなかつたのであるから、回復申請手続はまつたく違法であつて、商標原簿回復の効力を生じえなかつたのであり、したがつて、その後二度にわたつて行なわれた商標権存続期間更新の登録も無効である。このような商標を有効な登録商標として引用し、旧商標法第2条第1項第9号により本願商標の登録を拒絶した審決の判断は誤りである。
(三) 旧々商標法第3条第2項違反 原告は、かつて明治一八年一二月八日登録にかかり清酒を指定商品とする登録第九一六号商標「白鹿」を有していたが、引用商標は原告の右登録商標が存在するにもかかわらず登録された。また、原告の右登録商標は大正一〇年一月一二日存続期間の満了により消滅したので、原告はその後身として同年八月三〇日登録第一三四、二三八号商標「白鹿」として再登録をうけたが、この商標は引用登録商標が存在するにもかかわらず登録を認められたものである。
この引用商標の登録および原告の登録第一三四、二三八号商標の登録は、いずれも旧々商標法(明治四二年法律第二五号)第3条第2項の規定にもとづき、それらが同一商品に使用すべき類似の商標であるのにもかかわらず、登録要件をみたすものとして許されたのである。
このことは、旧々商標法の右規定により、原告の「白鹿」商標と引用商標「白鹿」とが互いに類似するかどうかは、登録要件の判断にあたり審理の限りでないとされたことを意味する。
したがつて本件審判が、本願商標から「白鹿」の文字を抽出し、これと引用商標の「白鹿」とを対比して類似の判断をしたことは、旧々商標法の右規定の定める制限をこえて、比較すべからざる商標を比較した違法がある。
(四) 一部観察の誤り 本願商標は、
「白鹿」の文字のほか、黒松の図形、「黒松」の文字、「KUROMATSU―HAKUSHIKA」の文字、「宜春苑、長生自得千年寿」の文字などをもつて構成されている。
本願商標は、原告の大正一五年八月五日登録にかかる第一八三、四七九号商標と実質上同一の商標であり、右商標が更新手続懈怠のため消滅したので、あらたに登録出願をしたものであるところ、右の登録第一八三、四七九号商標以来約四〇年間におよぶ使用の結果、本願商標は、黒松の図形および文字等の部分と白鹿の文字とあいまつて、取引目標を形成し、これを付した清酒は世上「黒松白鹿」と称呼され、商品の識別に役立つているのである。
また、「宜春苑」「長生自得千年寿」の文字もそれぞれ原告の登録商標となつており、この二つの商標は、原告の「白鹿」の商標紙牌にとり、それがなければ原告の商標紙牌でないことが直ちにわかるほど重要な構成部分となつているのである。
したがつて、本願商標を引用商標と対比するにあたつては、これらの本願商標の構成全体を観察して行なうべきであるにかかわらず、本件審決が、なんらの理由を示すことなくその一部分である「白鹿」の文字だけを抽出して引用商標との類否の判断をしたのは不当である。
(五) 取引の実情による識別 前記のとおり、本願商標は、前身である登録第一八三、四七九号商標以来引き続き約四〇年間にわたり、原告が商品清酒に付して全国に売り広めてきたもので、この長年にわたる使用により、本願商標は引用商標と取引上区別して認識され、両者が取引上相紛れるおそれはまつたくないのである。このように、取引の実情により両商標が互に紛れるおそれがないときは、両者は類似の商標とはいえないのに、本件審決がかかる取引界の実情を審査することなく、単なる両商標の対比観察のみにより前記の判断をしたのは誤りである。
(六) 引用商標の禁止権は及ばない。
かりに、本願商標と引用商標が類似するとしても、本願商標の基本商標たる登録第一三四、二三八号ほか数件の商標と引用商標とは、長年の間併存して同一商品に使用することを許されてきた関係にあるから、引用商標はその禁止権を本願商標の右基本商標に及ぼしえない関係にある。このような場合に、右基本商標に連合する本願商標の登録を許しても、引用商標との間にあらたに商品の誤認、混同をひき起こすことはないから、引用商標の禁止権は、連合商標たる本願商標にも及ばないと解するのが相当である(大判昭和一〇年一二月一四日参照)。
したがつて、引用商標を根拠として本願商標の登録を拒絶した本件審決は誤りである。
被告の答弁
一 原告の請求原因一、二の事実は認めるが、同三の本件審決を違法であるとする主張は争う。
二 請求原因三、(一)、(二)について その主張(一)(イ)の事実は認める。
商標権は登録により発生するから、一たん登録により発生した商標権自体は、たとえその商標原簿が滅失しても、その存続に影響を及ぼされることはない。しかし、商標権者が権利を行使するためには、滅失した原簿の回復を得なければならないので、その手続を定めたのが大正一二年農商務省令臨第九号である。したがつて、この手続によつて回復される登録は、滅失前の商標原簿に登載されていた商標および指定商品と同一のものであることは当然である。引用商標については、当時の商標権者【A】から回復申請書が提出され、特許庁はその申請手続が正当であると認めて大正一四年一月二四日登録回復をした。このように、回復申請が受理されて登録の回復がされている事実に徴して、申請書に添付された商標登録証が真正なものであり、そこに正当な商標(別紙第二に記載のもの)が表示されていたものと考えられる。右申請の際添付された商標見本が原登録商標のものと相違し、別紙第三に記載のものであつたことは事実であるが、回復手続にこの程度の瑕疵があつても、手続を違法ならしめるものではない。
また、かりに申請書に添付された登録証にも原登録商標と異なつた商標が表示されていたとしても、最終的には特許庁備えつけの商標公報により正当な商標を確認することができ、これによつて登録回復をすることができるのであるから、そのことだけで登録回復の手続を違法ならしめるものではない。なお、引用商標は、その後二度にわたつて存続期間更新登録がされているが、その更新の手続の際表示された商標は、いずれも原登録商標と同一のものである。
三 請求原因三、(三)、(六)について 旧々商標法第3条第2項の規定により、引用商標と、原告の登録第一三四、二三八号商標とが併存して登録されたことは原告主張のとおりであるが、その関係は、
右両商標の間においてのみ、互いに不登録事由を排除するものであり、これを商標権の効力の面からみれば、両商標が自己の商標権の効力として相手方の禁止権を互いに排除する作用をもつものと解されるところ、連合商標の登録出願は、独立の商標の登録出願の場合と同じく、商標の類否や特別顕著性の有無等の登録要件は、当該連合商標自体について判断されなければならない。したがつて、本願商標が右登録商標の連合商標として登録出願されたものであつても、その登録要件は、基本となる右登録商標について存する前記旧々商標法にもとづく法律関係に拘束されることなく、別の観点から判断されなければならないものである(最判昭和三六年六月二七日参照)。したがつて、本件審決が、引用商標をもつて本願商標の登録を拒絶したことに、原告主張のような違法はない。
四 請求原因三、(四)について 本願商標は、「白鹿」の文字のほかに原告主張のような文字および図形を有するけれども、このうち「白鹿」の文字がひげ文字風の特異な態様で圧倒的に顕著に表わされており、また、原告は、商品清酒について「白鹿」の文字を長年使用して取引者、需要者間に周知著名ならしめていることを考慮すれば、本願商標から「ハクシカ」の称呼および「白鹿」の観念が生ずることは必至である。したがつて、このような称呼観念をもつて引用商標との類否の判断をした本件審決に、原告主張のような違法はない。
証拠関係(省略)
理 由一 原告の請求原因一、二の各事実(特許庁における手続の経緯および本件審決の理由の要旨等)は、当事者間に争いがない。
二 原告の請求原因三の(一)(引用商標の認定の誤り)の主張について。
まず、引用商標が大正二年九月六日指定商品を旧々第三八類清酒として登録出願され、同年一二月二七日登録第六二、三九七号商標として登録されたこと、その後原告主張の日に二度にわたり存続期間更新の登録がされたこと、同商標の商標原簿は大正一二年九月一日震災により滅失したので、当時の商標権者訴外【A】は、同年農商務省令臨第九号の規定にもとづき、大正一三年一〇月二八日商標権登録回復の申請をしたこと、ならびに、その申請書には商標登録証および商標見本が添付され、商標見本には同商標の構成として別紙第三に記載のような標章が表示されていたこと、以上の事実は当事者間に争いがなく、また、成立に争いのない乙第一号証の一、二、同第二号証によれば、右の登録回復申請に基づき大正一四年一月二四日登録回復がされた事実が認められる。
ところで、商標権は登録により発生し、一たん発生した商標権は、商標原簿が滅失しても権利自体に変動を受けることはなく、ただ、この場合、その商標権に関する権利関係の内容および順位等を公示する必要から、滅失した商標原簿の復元のため、登録回復手続が行なわれるにすぎない。そして、この登録回復手続は、滅失当時における商標原簿の記載事項を、回復申請人の提出する証拠資料により確認して行なわれるが、もしその確認に誤りがあり、もとの商標原簿の記載と異なつた商標原簿の復元がされたとしても、これによつて実体上存在する権利自体に変動を生ずるものでないことはいうまでもなく、このような場合には、登録の更正により、原簿上の記載を実体関係に一致させる必要が生ずるにすぎないのである。
原告は、引用商標の登録回復申請のさい申請書に添付された商標登録証および商標見本には、別紙第三のとおりの商標が表示されていたことを根拠として、引用商標の構成の実体は別紙第三のとおりのものであると主張し、成立に争いのない甲第二号証の一によれば、右申請書添付の商標登録証に表示された商標が別紙第三のとおりであることが認められる。しかしながら、成立に争いのない甲第二号証の三、
四、乙第四号証の一、二、第五、六号証および弁論の全趣旨によれば、特許庁備え付けの商標公報(大正三年二月六日発行)および昭和八年一月二四日と昭和二八年一月二二日の二回にわたり商標権者から提出された引用商標の存続期間更新登録願には、いずれも別紙第二のとおりの商標が表示されていて、この商標が、滅失前の商標原簿に登載されていた正当な引用商標であつて、前記登録回復申請書添付のものは誤りであつたことを認めるに十分である。したがつて、本件審決が引用商標の構成を別紙第二記載のとおりのものであり、ハクシカ(白鹿)の称呼および観念を生ずるとして、これを本願商標との類否判断に供したことは正当であり、この点に原告主張のような誤りはない。
三 原告の請求原因三の(二)(登録回復手続の無効)の主張について。
右のとおり、引用商標の登録回復手続には回復申請書添付の商標が誤りであつたのに、これを看過して登録回復をした錯誤があつたことは原告主張のとおりであるが、前記のとおり、このような登録上の錯誤は更正登録により是正すべきものであつて、引用商標が一たん登録により商標権となり、その後存続期間更新の登録を受けて現に存続している以上、右のような商標原簿上の登録回復手続に誤りがあつても、商標権の実体に影響を及ぼすものではなく、これを登録商標として本願商標の拒絶の理由に引用することはなんら妨げない(原告主張のように、引用商標の登録の効力またはその存続期間更新登録の効力を争おうとするならば、その手続は商標法に定める登録無効審判によるほかなく、本訴においてこれを争点とすることはできない。)。
四 原告の請求原因三の(三)および(六)(旧々商標法第3条第2項違反等)の主張について。
本願商標は登録第一三四、二三八号商標の連合商標として出願されたこと、この基本商標と引用商標とは、いずれも清酒を指定商品とし、「白鹿」の文字をもつて構成されていること、両者は特許庁により旧々商標法第3条第2項の規定の適用をうけるものとして、併存して登録を認められたものであることは、当事者間に争いがない。
しかし、旧々商標法第3条第2項の規定の趣旨は、他人の周知商標または先願(登録)商標と同一または類似の標章は商標登録をうけられないことに対する例外として、明治三二年七月一日以前からかかる標章を善意で使用していた場合にはその登録を認めるというのであつて、基準時以前からの善意の使用という事実に基づき、他人の周知ないし登録商標の存在にかかわらず、これを登録させ、類似商標の併存を認めたものである。その結果、互いに類似する登録商標の商標権者は、自己の禁止権を相手方に及ぼしえないこととなる。
また、一方、連合商標は、その性質上、それ自体独立の商標であつて、基本商標に付随するものではないから、それが登録されるためには、それ自体登録要件を具備しなければならず、したがつて、その商標が指定商品を同じくする他人の登録商標と同一または類似であつてはならない(最判昭和四二年五月二日参照)。
したがつて、本件の基本商標が、引用登録商標の存在にかかわらず、旧々商標法の前示規定に基づき登録を認められ、両商標権が互いに禁止権を排斥し合いながら併存する関係に立つているとしても、このような関係は前記のような善意使用等の事実を要件として当該商標相互間においてのみ認められることであつて、基本商標とは別個の商標として独立に登録要件の具備を必要とし、しかも前記のような基準時以前からの善意使用の事実に基づいて出願されたのでもない本願商標についてまで、―その構成の要部が「白鹿」の文字に存する点で基本、引用両商標と共通するとしても―これに対して引用商標の禁止権を及ぼしえないものと解すべき理由はなく、それが引用商標と類似するかぎり、商品の誤認混同のおそれがあることは明らかであるから、その登録を拒絶すべきことは当然である。この点の原告主張は採用できない。
五 原告の請求原因三の(四)(一部観察の誤り)の主張について。
本願商標が原告主張の経緯により、「黒松白鹿」等として識別され、そのように称呼されているとしても、一方、別紙第一に示す構成すなわちその中央部に特異なひげ文字で大きく顕著に表わされた「白鹿」の文字があるところから、「ハクシカ」の称呼および「白鹿」の観念をも生ずることは見易いところであるから、この称呼観念をもつて引用商標との類否判断を行なつた本件審決に、原告主張のような違法の点はない。
六 原告の請求原因三の(五)(取引の実情による識別)の主張について。
原告主張のような取引の実情によつて本願商標と引用商標とが取引上互いに紛れるおそれがまつたく存しないとの事実は、これを認めるに足る証拠がなく、かえつて、証人【B】、【C】の各供述によれば、両商標を商品清酒に用いた場合、事情に精通した一部の業者を除いて取引者、需要者の間に商品の誤認混同を生ずるおそれがあることを推認することができるから、両商標は、その称呼および観念を共通する以上、類似の商標であるというべきである。
七 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 三宅正雄
裁判官 杉山克彦
裁判官 楠賢二
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