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関連審決 審判1973-7976
関連ワード 指定商品 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  著名商標 /  除斥期間 /  称呼(称呼類似) /  無効審判 /  登録異議申立 /  外国 /  継続 / 
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事件 昭和 56年 (行ケ) 151号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1982/04/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告は、「特許庁が昭和五六年五月六日、昭和四八年審判第七九七六号事件についてした審決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は、主文同旨の判決を求めた。
原告の請求の原因
一 特許庁における手続の経緯1 被告は、昭和三三年九月二〇日、指定商品を第八類(旧)「利器及び尖刃器」とし、別紙第一のとおり、「<10161-001>盛光」と縦書してなる商標(以下「本件商標」という。)について登録出願をし、昭和四五年一二月一八日設定の登録(登録第八八四〇五一号)がされた。
2 原告は、昭和四八年一一月八日、被告を被請求人として、本件商標について、
商標登録の無効の審判を請求し、昭和四八年審判第七九七六号事件として審理されたが、昭和五六年三月五日付審理終結通知が同月一三日発送され、同年五月六日、
右審判の請求は成り立たない旨の審決がされ、その審決の謄本は、同月一六日原告に送達された。
二 審決の理由の要旨1 本件商標は、前項記載のとおりである。
2 原告は、本件商標は原告がその前身である株式会社テイケイ物産商会当時からその業務に係る金切鋏その他の鈑金工具、機械類に使用する商標として需要者間に広く認識されている「<10161-001>盛光」及び「盛光」(以下「原告各商標」という。)と同一又は類似の商標であつて、同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものである、と主張する。しかしながら、原告各商標が本件商標の登録出願当時から原告の業務に係る商品に使用されていたこと自体認められないので、その主張は採用できない。
3 また、原告は、原告各商標が商品「金切鋏」に昭和二三年頃から引続き現在にいたるまで使用されているほか、鈑金工具、機械類にも昭和二七年頃より引続いて使用されてきた結果、昭和三三年九月二〇日当時においても、刃物、工具業界において著名商標となつていたものであり、したがつて、本件商標の登録は、原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号の規定に違反している、と主張する。しかしながら、前記のとおり、本件商標の登録出願当時に原告各商標が原告の業務に係る商品を表示するものとして使用されていたことが認められない以上、この主張もまた採用することはできない。
4 よつて、原告の審判請求の理由によつては本件商標登録を無効とすることはできない。
三 審決取消事由1 原告は、本件商標の登録の無効事由として、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する事実を主張し、証拠を提出しているにもかかわらず、審決は、これに対し何等の判断をせず事実摘示すらしていない。これは判断を脱漏したもので、違法であり、審決は、取消されねばならない。
2 原告は、当初無効事由として、商標法第4条第1項第10号及び一五号の規定に該当する事実を主張し、その立証方法の一つとして、昭和四九年九月二四日特許庁審判部受付の審判請求理由補充書において、同庁甲第一五号証の一及び二として、別紙第二の商標登録第五三七四一二号商標(以下「引用登録商標」という。)の商標登録原簿謄本及び商標公報を提出した。
3 その後、原告は、昭和五三年九月二九日同庁審判部に更に審判請求理由補充書を提出して、従来の主張に追加して、本件商標が引用登録商標と「モリミツ」の称呼において類似し、かつ、本件商標の指定商品に含まれる「切箸鋏」と引用登録商標の指定商品とが類似するから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第46条第1項の規定によつてその登録を無効とすべきものである旨の主張をし、その主張を裏付ける審査例として、商標法第4条第1項第11号の規定に該当することを根拠として登録異議申立を理由あるものとした決定をあげた。
4 右の主張は、明らかに商標法第4条第1項第11号の規定に該当する事実を具体的に述べたものである。およそ、審判請求人としては、無効事由となる事実を主張し、これを立証する証拠を提出すればよいのであつて、本件の場合も、第一一号の規定に該当する事実を主張すればよく、第一一号という必要はない。また、本件の場合、主張を裏付けるために援用して主張している審査例の中では、第一一号ということを明確に述べており、原告の右主張が第一一号によるものであることは明らかである。事実、被告においても、昭和五五年一〇月三〇日審判部受付の無効審判答弁補充理由書で、この主張について「法文は商標法第4条第1項第11号の規定に該当すべきものであります。」と述べているところからも明らかである。
右のとおり、原告は、審判手続において商標法第4条第1項第11号の規定に該当する事実を主張し、証拠を提出しているにもかかわらず、審決は、この点について全く触れていない。
5 本件審判請求の日は、商標法第47条に定める除斥期間内であり、引用登録商標の商標登録原簿謄本及び商標公報を提出したのも、除斥期間内のことである。これに対し、商標法第4条第1項第11号の事由を主張した審判請求理由補充書が審判部に受付けられた日は、昭和五三年九月二九日であり、この日は、本件商標の登録日である昭和四五年一二月一八日から五年を経過してはいる。しかし、審判請求自体が除斥期間内になされている以上、除斥期間経過後においても、新たな無効事由を主張することは許される。まして、無効事由についての証拠が除斤期間内に提出されている以上、これに基づく主張が除斥期間経過後であつても差支えはない。
そもそも、商標法第47条が一定の事由による無効審判請求について除斥期間を定めたのは、公益的事由による場合を除き、瑕疵ある登録商標の権利行使によつて生ずる弊害と、その登録を無効とすることによつてもたらされる弊害とを比較し、
後者の弊害がより大であるとの政策的判断に立つて、既存の法律関係を尊重し、権利の安定を図ろうとしたものである。すなわち、設定の登録後五年の間登録の瑕疵について争いがなかつたという事実状態を尊重して、瑕疵を争えなくしようというものである。
しかし、除斥期間内に無効審判請求がされた以上、右の紛争がなかつたという事実状態は破れたのであり、法が除斥期間を定めて権利関係を速やかに確定し、法的安定性を期待する利益はすでに失なわれたものというべきである。まして、除斥期間内に無効事由となる資料が提出されている以上、審判手続においては、当事者が申立をしない理由についても審理することができるのであるから、その資料に基づき職権で無効とされても異議のないところである。つまり、いわば潜在的に審理の対象となつているのであるから、その資料により、当初の審判請求の理由とは異なつた理由によつて、除斤期間経過後に登録が無効とされても、除斥期間の制限に違反するものとはいえない。
右のような考え方は、先例においても認められているところである。すなわち、
大審院昭和二一年七月八日判決は、除斥期間経過後に審判請求の理由の補充、変更は許されると解すべきであり、これを認めることは必ずしも除斥期間を定めた法の精神に反するとはいえないとしている。
また、東京高等裁判所昭和五〇年一月二三日判決は、外国刊行物を引用した実用新案登録無効審判請求事件につき、除斥期間内に右資料にもとずき実用新案法第3条第2項の規定を理由として無効審判請求をした場合に、除斥期間経過後において、右資料にもとづき同条第一項第三号の規定を理由として無効審判をすることは、同法第38条の規定に違反しないとしている。
更に、東京高等裁判所昭和五四年九月二〇日判決は、除斥期間内に提出された無効審判請求書において引用すべき外国文献が特定されていれば、それが証拠として現実に審判手続に提出された日が除斥期間経過後であつても、無効請求を基礎づける外国文献として引用例たりうるとしている。
右のように、審判請求後における無効事由の追加変更については、商標法第47条の制限はないと解すべきである。本件において原告が審決の取消事由として主張するのは、この点についての審決の判断がされていないということである。
すなわち、原告は右のとおり除斥期間の制限はないと考えるものであるが、被告は昭和五五年一〇月三〇日審判部受付の無効審判答弁補充理由書において除斥期間の制限を受けると主張し争つていた。したがつて、この点は重要な争点であつたにもかかわらず、
審決は何らの判断を示していない。そして、仮に除斥期間経過後の主張であるからこれを認めないというのであれば、その旨の判断を示すべきである。しかるに、これをしていないのであつて、審決には、明らかな取消事由がある。
被告の答弁
一 請求の原因一、二及び三の2、3の事実並びに4の事実のうち、被告が審判答弁補充理由書で原告主張のような記述をしたことは認め、三のその余の主張は争う。
二 本件訴訟はすでに終了している。
すなわち、本件訴訟は、審決が商標法第4条第1項第10号及び第一五号の規定に該当することを理由とする無効事由について判断を示したものであるのに対し、
無効審判請求人である原告は、同項第一一号の問題につき判断を欠く旨を主張するに止まり、第一〇号及び第一五号に関しては、本訴において、結局、不服申立をしない旨の意向を表明し、被告もこれに異議なき旨を述べた現段階においては、第一〇号および第一五号に関する論点は、本訴の論点外の事項となり、審決の判断を違法とする原告の主張自体が消滅してしまつているのである。
よつて、本訴はすでに、取消事由を撤回した昭和五六年一二月三日の法廷における原告の陳述によつて、終了したというべきである。
三 本案について1 本件商標について無効事由の主張をしうる除斥期間は昭和五〇年一二月一八日の経過とともに満了し、右期間経過後においては、商標法第43条第1項第11号の規定に該当する事由の主張はしえない。
ところで、原告指摘の昭和四九年九月二四日特許庁審判部受付の審判請求理由補充書は、「6請求の理由補充」の項の最終の段において明示されているとおり、商標法第4条第1項第10号及び同第一五号の規定に該当する無効事由を主張したものであつて、証拠方法のうちに、甲第一五号証の一、二として「商標登録第五三七四一二号原簿謄本及び同商標公報」との記載はあつても、いわゆる引用登録商標として挙げられたものではなく、原告が有する登録商標を参考として示したに過ぎない。
しかも、右の特許庁における甲第一五号証の一、二は、単にその記載があるに止まり、原告主張のように、「原簿謄本及び同商標公報を提出した」のではない。
そもそも、右証拠写しの副本は、被告に送達されていないから、提出したことにはならない。
のみならず、原告提出の昭和五三年九月二九日特許庁審判部受付の審判請求理由補充書は、除斥期間経過後に提出されたものであるだけでなく、その内容も単なる事情を申し述べたに止まり、これをもつて、第一一号の規定に該当する無効事由を述べていると評価することはできない。
無効審判を請求するには、無効事由についての証拠を提出し、かつ、その法に定める条文に該当することを主張せねばならない。除斥期間が経過した後の段階において、右第一一号の規定該当を理由とする無効事由の主張があるように見える書面が出されても、単なる事情陳述と見る外はない。
のみならず、右は、明らかに除斥期間経過後の主張であるから、法律的には意味はない。
したがつて、除斥期間経過後に理由にならない事由を述べているからといつて、
これを斟酌しなかつたのは当然のことである。
そもそも、いつたん無効審判請求がされている以上、除斥期間経過後でも、新しく無効事由を主張できるとの見解は誤りである。
無効審判は無効事由ごとにされ、審決は無効事由ごとにその判断を示すものである。
除斥期間の規定は特定の無効事由についてのみ定められている。除斥期間のある無効事由と、除斥期間のない無効事由とが併存しているというのが現行制度である。一方の主張は許されても、他方の主張は許されないと定めているのであるから、無効審判の請求は、どの無効事由によつてされたかによつて扱いを異にするのは、当然のことである。
無効審判の請求をしておきさえすれば、それだけで、前記の区別は解消するものとの原告の主張は、営業を保護するために、特別に除斥期間を定めた法律の基本理念に反する。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一(手続の経緯)及び二(審決理由の要旨)の事実は、当事者間に争いがない。
二 まず、被告は、本件訴訟は昭和五六年一二月三日終了した、と主張する。ところで、前示争いない事実及び弁論の全趣旨によれば、本件審決は、その理由において、無効審判請求の理由として本件商標が商標法第4条第1項第10号及び第一五号の規定に該当する事由をあげ、その各事由は認容しえないとしていること、原告は、本件審決について、本訴提起時には、右各事由に対する判断の誤りをも取消事由として主張していたが、昭和五六年一二月三日の第二回口頭弁論期日においてこの主張を撤回し、これに対し被告も異議がないとしたこと、がいずれも明らかである。しかしながら、原告は、なお、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に該当する旨の無効事由に対する判断が欠けているとして、審決の違法を主張し、
その商標登録の取消を求めていることも、弁論の全趣旨から明らかである。
また、原告は、現にその取消を求める本件審決の基礎となつていた商標登録の無効審判手続の継続中において、右商標法第4条第1項第11号の規定に該当する事由の存在を主張していることも、後記認定のとおりである。
そして、審決がされた以上、審判手続の一体性、審決の性質から、当該手続中に主張されたその無効事由に対する判断の有無、当否は、商標法第63条の規定による審決取消訴訟として争う外はなく、審決取消訴訟の審理の対象には、当該審決の当否及び審判手続の違法性の存否も、一般的に含まれ、原告主張の右無効事由に対する判断も、後記認定のように、実質的に審決の結論に係わつているものとみるべきであるから、審決取消事由の主張の一部撤回によつて本訴が終了したとする被告の主張は採用することができない。
三 そこで、進んで、原告主張の審決取消事由の有無について検討する。
1 成立に争いのない甲第六号証、第七号証、第一二号証ないし第一四号証、第一五号証の一・二を総合すると、本件審決の基礎となつた審判手続(昭和四八年審判第七九七六号事件)において、原告は、昭和四九年九月二四日提出の審判請求理由補充書をもつて、本件商標が、原告の業務に使用されて周知であるとする原告各商標に類似し、類似の商品に使用され、商標法第4条第1項第10号及び第一五号の各規定に違反して登録されたものであるとの従前からの無効事由の主張を維持、敷衍するとともに、その証拠方法の欄に、その15として、引用登録商標の商標登録原簿謄本及び同商標公報を「甲第一五号証の一及び二」なる標目のもとに記載したが、現実に右甲第一五号証の一・二として引用登録商標の商標登録原簿謄本及び同商標公報を提出したのは、同年一二月二三日受付の物件提出書によつてであること、そして、昭和五三年九月二九日提出の審判請求理由補充書により、始めて、本件商標の商標登録の無効事由として、引用登録商標を引用し、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する旨の登録異議の申立てについての決定事例二件を引用の上、実質上、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである旨の主張をしたが、とりたてて前記提出の甲第一五号証の一・二としての証拠は引用していないことが、いずれも認められる。
右認定事実によると、昭和四九年九月二四日付の審判請求理由補充書の証拠欄に標目として掲記され、同年一二月二三日に提出された引用登録商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反する旨の無効事由の根拠としてではなく、本件商標が商標法第4条第1項第10号および第一五号の規定に違反して登録された旨の無効事由として、原告各商標の周知性に関する事情を示す証拠として提出されたものであり、原告が本件商標登録無効原因として第4条第1項第11号の規定に該当する事由を主張したのは、昭和五三年九月二九日であつて、前記争いのない手続の経緯に照らせば、商標法第47条による除斥期間五年を経過した後であることが明らかである。
ところで、原告は、本件商標登録の無効審判請求の日は、本件商標が登録された昭和四五年一二月一八日から五年以内である昭和四八年一一月一八日であり、いつたん除斥期間内に登録無効審判の請求をしている以上、除斥期間の適用は排除され、新たな無効事由を主張することが許される旨主張する。
しかしながら、商標法第46条、また、第56条によつて準用する特許法第167条に徴すれば、商標登録の無効審判の手続は、本来、個別的な特定の無効事由を前提とするものであり、したがつてまた、そのうちの所定の個別的な無効事由について、各別に、当該登録商標が無効の審判を請求されることなく一定の期間経過したことに伴う既存の事実上、法律上の状態を尊重し、無効事由たるかしが治癒したものとして、その商品についての業務の相互関係における利害の調整ひいては権利又は法的関係の相対的な安全性の維持を図るべく、このために定められたものである商標法第47条所定の除斥期間の適用に当つては、個個の無効事由に基づく審判請求の有無によつてこれを決すべきであり、一の何らかの無効事由に基づく審判の手続が存続するからといつて、他の同条所定のすべての無効事由に基づく商標登録の無効審判請求の除斥期間の進行を妨げうるものとは解されない。
そうすると、本件商標登録の無効の原因として商標法第4条第1項第11号の規定に該当することを事由とする原告の商標登録の無効審判請求は、前認定のとおり、明らかに除斥期間経過後のものであつて不適法であり、この点に関する原告の主張は採用できない。
なお、原告は、除斥期間内に当該無効事由の根拠となる証拠さえ提出してあれば、無効事由の主張が除斥期間後にされても、証拠提出時に遡つて除斥期間内の審判請求として適法となる旨主張する。しかしながら、前認定のとおり、除斥期間内である昭和四九年一二月二三日に提出された引用登録商標の商標公報等は、明示的、黙示的にも同項第一一号の規定に係る無効事由を主張立証するものとして提出されたものではないので、これを根拠として無効審判の請求時を遡らせて有効とすることは、前説示の商標法第47条の法意に照して許されないところである。原告がその主張に沿うものとして指摘する各判決例は、技術的思想の創作の保護の見地に立つ実用新案法上の事案であつて、昭和三四年法律第一二三号による同法改正の経緯よりみると、商標法第47条除斥期間の規定とは別途に考慮すべき論点を含んだ法域に属し、しかも、その各事業の示す手続経過が必ずしも本件のそれと軌を同じくするものともいえないので、本件に適切ではない。
2 原告は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する旨の無効事由の主張に対する判断脱漏による審決の違法を主張し、前認定のとおり、本件審決がその理由の項には右主張について触れる記述のないことも、原告主張のとおりである。
しかしながら、前認定のとおり、本件商標の登録について商標法第4条第1項第11号の規定に該当する事由をもつてする原告の商標登録の無効審判請求の主張は、除斥期間経過後のものであつて、事案の内容に立ち入るまでもなく不適法なものであり、また、弁論の全趣旨によれば、訴えの変更に準じて考えうべき面がないでもない登録無効審判の請求の事由の追加的変更に関し、審判手続上、審判長等の審判主体が準拠すべき手続規定もないものの、前認定のとおり、前記無効事由の主張を記載した原告の審判請求理由書が受理されていることが明らかであり、これらの事実からすれば、本件審決の「請求人の申立は成り立たない。」との結論には、
それ自体不適法な請求の追加的変更をしりぞける趣旨の判断も包含されているものとみるべきであつて、理由中にその主張に関する事実の摘示とその不適法な旨の明示の記載がないからといつて、ただちに審決にこれを取消すべき手続ないし判断脱漏の違法があるとはいえない。
四 そうすると、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は理由がなく、これを棄却するほかはない。よつて、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 荒木秀一
裁判官 舟本信光
裁判官 舟橋定之