関連審決 |
審判1979-8035 |
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関連ワード | 先願主義 / 指定商品 / 称呼(称呼類似) / 出所の混同 / 出願変更 / 連合商標 / 非類似 / |
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事件 |
昭和
56年
(行ケ)
299号
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1983/04/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の訴を却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告のための附加期間を九〇日と定める。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
原告は、「特許庁が昭和五六年七月一七日昭和五四年審判第八〇三五号事件についてした審決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。 |
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請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和四八年八月一六日、昭和四八年商標登録願第一三二二五五号をもつて、別紙一に表示した構成よりなる商標について、指定商品を第一一類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具、電気材料」として、商標登録出願をしたところ(以下、この商標「本願商標」という。)、昭和五四年二月二六日、その出願について拒絶の査定を受けた。そこで、原告は、同年七月五日、これに対し審判を請求し、昭和五四年審判第八〇三五号事件として審理されたが、昭和五六年七月一七日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同年八月一二日、原告に送達された。なお、原告のため、出訴期間として三か月が附加された。 二 審決理由の要点 本願商標の構成、指定商品及び商標登録出願についての手続の経緯は、前項記載のとおりである。 ところで、登録第一二四八九三三号商標「以下「引用登録商標」という。)は、 別紙二のとおり、「メリツト」の片仮名文字を横書きにしてなり、指定商品を第一一類「電気機械器具、その他本類に属する商品」として、昭和四七年七月二七日に登録出願され、昭和五二年二月一〇日に設定の登録がされたものである。 本願商標は、「Melitta」の欧文字を筆記体風に書いたものと容易に理解されるから、「Melitta」の欧文字から「メリツタ」の称呼を生ずる。一方、引用登録商標は、「メリツト」の片仮名文字から、「メリツト」の称呼を生ずる。 そうして、本願商標より生ずる「メリツタ」の称呼と引用登録商標より生ずる「メリツト」の称呼とについてみるに、両者は、共に、四音から構成され、異なるところは、末尾の第四音における「タ」音と「ト」音との差異のみである。しかも、この両者の差異音にしても、子音〔t〕を同じくし、かつ、近似する母音〔a〕もしくは〔o〕からなる同行音であり、また、この差異音が比較的弱い音として発音又は聴取される末尾音であることから、両者をそれぞれ一連に称呼した場合、両者は、その語音語感が近似し、互いに紛れて聴取されるおそれのあるものといわざるをえない。 そうすると、本願商標は、引用登録商標と、その称呼において類似する商標と認められる。また、両者の指定商品は同一である。 したがつて、本願商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録することができない。 三 審決を取消すべき理由1(1) 原告は、引用登録商標につき、昭和五七年七月三日権利者樋口利雄からその商標権の譲渡を受け、同年八月一〇日付でその旨の移転登録申請手続に及び、 同年一〇月一八日その登録がされた。この権利譲受に伴い、原告は、同年八月一〇日本願商標の商標登録出願を、商標法第11条第2項、第三項に基き、自己の登録商標となつた引用登録商標の連合商標登録出願に変更した。 (2) 右出願変更により、独立の商標登録出願としての本願商標のもとの出願は、同条第四項の規定に基き取下げたものとみなされ、本件審決は、審査の対象として存在しない商標登録出願についてされたものとなるから、違法であり、取消されねばならない。 (3) このような場合でも、以下の理由により、原告は、本件審決の取消を求める訴の利益を有する。 (一) 右取下げにより、この独立出願は、その登録出願の日(昭和四八年八月一六日)に遡つて出願が無かつたことになる。このため、本件審決は存在しない出願に対してされたものとなるから、審決の当然無効として放置しても差し支えないようにみえる。しかしながら、形式上審決は存在し、存在しない出願に対し審決したという違法は残るから、この違法を理由に、当事者に本件審決を形式上消滅させる措置を執る途を認めるべきである。この点でまず原告に訴の利益があるといえる。 (二) 原告は、違法な審決について、審決取消の訴を提起し、審決の確定を阻止することにより、以下のごとき利益を有する。 (い) 商標法第11条第3項の規定によれば、独立出願から連合出願への変更は、審決が確定する以前にのみすることができるとされている。本件審決は昭和五六年七月一六日にされ、その謄本の原告への送達は、同年八月一二日であり、原告のため三か月の出訴のための附加期間が定められている。これにより、出訴期間は、同年一二月一一日であるところ、同日、原告は本訴を提起した。その後昭和五七年八月一〇日に右の出願変更手続をしたものである。今特許庁の出願手続では、 この変更出願は、本訴が係属しているため、審決の確定前の変更出願として有効に受理されている。ところが、本件訴訟で訴の利益なしとして訴が却下されれば、却下の遡及的効果として、その審決は、審決に対する出訴期限(昭和五六年一二月一一日)に遡つて確定されたことになるから、右の変更出願は、確定後の変更として許されないものとなる。その結果、その変更出願の日をもつて新出願をしたものと取扱われる可能性がある。 (ろ) 本来、商標法第11条第2項の規定によつて出願の変更をした場合は、同条第五項で準用する同法第10条第3項の規定により、その変更出願は、当初の独立出願(もとの出願)の時にしたものとなり、商標法上の先願主義の例外的効果を取得することができる。すなわち、昭和五七年八月一〇日の変更出願は、当初の独立出願の日である昭和四八年八月一六日にしたものとみなされる。ところが、前述のごとく変更出願が許されず、新出願とする措置が執られれば、その出願日は昭和五七年八月一〇日となる。この間約一〇年間、もし第三者によつて本件商標と類似する商標が出願登録されていれば、結局、原告の商標出願は拒絶され、商標権を得ることができなくなる。 (は) ここに、審決の対象を欠いた違法な審決が存在し、その審決の取消を求められないとすれば、審決は遡つて確定し、右のごとく原告の権利の得喪に重大な影響を及ぼす。このため、原告にとつて、審決取消を求める利益は存し、これはまさに現在、本件訴訟の訴の利益といえるものである。 2 本願商標は、「Melitta」の欧文字を筆記体風に書いてなり、「メリツタ」の称呼が生ずる。この本願商標の称呼「メリツタ」と引用登録商標から生ずる「メリツト」の称呼とを比較した場合、両者の相違音は語尾音「タ」と「ト」ということになり、これらは共に「タ行」の同行音であるが、その前者に促音を伴うことから、単に「一音の相違」ではすまされないものがある。すなわち、両音は、共に舌を硬口蓋に接触させ発する破裂音であるが、「ト」音が口をつぼめて発する口籠つた音であるのに対し、「タ」音は口を開いて発する明瞭な音であること、しかも、「リ」音が促音を伴うことにより、両者は、語尾音にもかかわらず、全体が三音の短い構成であるということもあつて、一層明確に聴別可能となり、この差異音が全体としての称呼に及ぼす影響は極めて大きいといわざるをえない。更に、聴覚上の差異に加え、引用登録商標は、英語の「merit」(長所、優秀さ、価値等の意味を有する。)を片仮名で表示したものであり、日本においては最早日常会話に多用される程聞きなれた言葉でもあることから、容易かつ明確に記憶されるものであるのに対し、本願商標は、その音自体として、聴者に記憶されるにとどまる(ただし、原告は、近年の宣伝広告活動により、コーヒーメーカーとしての知名度を有している。)。したがつて、本願商標と引用登録商標とは、その語尾音を異にするにすぎないとはいえ、上述のごとく、たとえ同一、類似の商品に使用されたとしても、出所の混同を生ずるものとはいえず、互いに非類似である。 しかるに、本願商標と引用登録商標とを称呼上類似するとし、本願商標をもつて商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録できないとした本件審決は、判断を誤つた違法のものであるから、取消されるべきである。 |
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被告の答弁
一 請求の原因一、二及び三の1の(1)の各事実は認め、同三のその余の主張は争う。 二 審決の判断は正当であつて、何ら違法の点はない。 本願商標より生ずる「メリツタ」の称呼と引用登録商標より生ずる「メリツト」の称呼とは、共に、四音から構成され、異なるところは、末尾の第四音における「タ」音と「ト」音との差異のみである。しかも、両者の差異音にしても、子音〔t〕を同じくし、かつ、近似する母音〔a〕もしくは〔o〕からなる同行音であり、この「タ」と「ト」の両者の前音の「リ」の音が共に促音を伴つて強い音となるため、末尾の両音が比較的弱い音として発音され、聴取されるから、両者をそれぞれ一連に称呼した場合、両者は、その語音語感が近似し、互いに紛れて聴取されるおそれのあることは疑いのないところである。 したがつて、本願商標と引用登録商標とが称呼上類似するとした審決に誤りはない。 |
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証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一、二及び三の1の(1)の各事実は当事者間に争いがない。 二 ところで、右争いのない事実及び本願商標に係る出願変更手続について特に特許庁の処分があつたとは認められないなど弁論の全趣旨によれば、本願商標の商標登録出願は、本件審決がその取消訴訟係属中であることによる未確定の時点で、連合商標登録出願に変更され、その変更が商標法第11条第2項、第三項に規定する手続要件を満たしていたものであるから、その時点より、同条第四項、第五項の規定により、適法な連合商標の商標登録出願として、もとの独立出願の出願時である昭和四八年八月一六日に遡つて出願されたものとして手続が開始、進行され、これと同時に、もとの独立出願手続は、取下げたものとみなされ、遡つて初めから係属しなかつたものとして効力を失つたから、その手続の対象の喪失によつて拒絶査定はもとより本件審決も当然その効力を失い(したがつてまた、原告のいう審決の確定の問題も生じない。)、原告もまた、もとの独立出願手続の出願人としての地位を失つたものといわねばならない。 そうすると、原告は、審決の対象となつた出願について出願人の地位にない者であり、その訴自体、既に効力を失つた審決の取消を求めることに帰するから、本件審決の取消を求めるについて法律上の利益を欠くものとして、本件訴は、不適法であり、却下を免れない。 よつて、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間の付与につき、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条、第158条第2項の各規定を適用し、主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 荒木秀一 |
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裁判官 | 舟本信光 |
裁判官 | 舟橋定之 |