関連審決 |
審判1997-6887 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ワ25426損害賠償請求事件 | 判例 | 商標 |
平成16ワ25661商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成19ワ14984商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成22ワ32483商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成15ワ23577商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 役務の提供 / 指定商品 / 指定役務 / 普通に用いられる方法 / 3条1項6号 / 3条2項 / 権利濫用(権利の濫用) / 契約の解除 / 債務不履行 / 通常使用権 / 先使用(32条) / 中用件(33条) / 外観(外観類似) / 国内 / 補正 / 警告 / 判定 / 差止 / 組成した物 / 侵害の予防 / 連合商標 / 共有 / 使用許諾 / 存続期間 / 先使用権 / 継続 / 商号 / |
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事件 |
平成
15年
(ワ)
8312号
商標権侵害差止等請求事件
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原告 原頭工業株式会社 訴訟代理人弁護士 山川 富太郎山田拓男 補佐人弁理士 丸山敏之宮野孝雄北住公一長塚俊也 被告 ニューNT工法協会 被告 株式会社エヌ・ワイ・ケイ 被告ニューNT工法協会、被告株式会社エヌ・ワイ・ケイ訴訟代理人弁 護士 鎌倉利行檜垣誠次鎌倉利光今井俊裕下元高文石井将治 被告AA訴訟代理人弁護士 藤本卓司 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2005/03/24 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告ニューNT工法協会は、建築現場における鉄筋の継手工事についてその会員に別紙被告標章目録記載1ないし4の標章の使用をさせるために、同目録記載1ないし4の標章を表示した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持してはならない。 (2) 被告ニューNT工法協会は、その所有に係る別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、 取引書類を廃棄せよ。 (3) 被告ニューNT工法協会は、その会員に、別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類の使用をさせてはならない。 (4) 被告株式会社エヌ・ワイ・ケイは、標準仕様書に別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供してはならない。 (5) 被告株式会社エヌ・ワイ・ケイは、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類に別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。 (6) 被告株式会社エヌ・ワイ・ケイは、その所有に係る別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付した標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類を廃棄せよ。 (7) 被告株式会社エヌ・ワイ・ケイは、その下請企業に、別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付した標準仕様書、パンフレット、取引書類の使用をさせてはならない。 (8) 被告Aは、標準仕様書に別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供してはならない。 (9) 被告Aは、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類に別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。 (10) 被告Aは、その所有に係る別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を付した標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類を廃棄せよ。 (11) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (12) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(被告ら) 主文同旨。 |
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当事者の主張
1 請求原因 (1) 当事者 ア 原告 原告は、建築工事業、配管及び溶接工事業、鉄筋工事業等を目的とする株式会社である。 イ 被告ら (ア) 被告ニューNT工法協会(以下「被告現協会」という。)は、継手スリーブを使用した鉄筋の溶接継手工法の普及活動を行っている私的団体であり、 法人登記はしていない。 (イ) 被告株式会社エヌ・ワイ・ケイ(以下「被告NYK」という。)は、土木工事業、建築工事業、鉄筋・鋼構造物工事業等を目的とする株式会社である。 (ウ) 被告A(以下「被告A」という。)は、建設業、鉄筋溶接業等を業とする個人事業者である。 (2) ニューNT工法 ア(ア) 有限会社K1(以下「K1」という。)代表者であったP1は、半自動炭酸ガスアーク溶接法を用い、鉄筋の接続部に円筒形のスリーブをはめて行う溶接継手の製作方法を発明し、これをNT工法と称し、昭和57年4月20日、これについて特許出願をし、平成2年9月13日、特許の設定登録を受けた(別紙特許権等目録記載一の特許権。以下、この特許権を「第一特許権」といい、その特許発明を「第一特許発明」という。)。 原告は、昭和62年からNT工法による鉄筋溶接事業へ参入し、P1とともに第一特許発明に係る工法の改良に取り組み、K1の下請となって技術力を向上させて工事の実績を上げ、NT工法に対するゼネコンの信頼を獲得するように努めた。 (イ) 原告はP1とともに第一特許発明に係る工法を改良し、筒型のスリーブに代えて、円筒形の4分の1程度をカットしたスリーブを開発した。これについて、P1は、昭和63年10月21日、発明者をP1として特許出願を行った(別紙特許権等目録記載二の特許権に係る特許発明についての特許出願。以下、同目録記載二の特許権を「第二特許権」といい、その特許発明を「第二特許発明」という。)。 (ウ) 第一特許権は、平成4年4月23日、P1から同人の妻であるP2に譲渡され、同年6月22日、その旨の移転登録がされ、平成5年1月27日、P2からP3に買戻しの特約付きで譲渡され、同年3月22日、その旨の移転登録がされた。 P1は、平成2年ごろから、同人がK1の代表を辞める場合などに原告に第一特許権及びNT工法事業を承継させることを認めており、平成4年12月12日、K1の営業権及び第一特許権を原告に譲渡することを約した。これにより、原告は、K1の正式な承継会社となった。K1、P1及びP2は、平成5年3月9日、大阪地方裁判所で破産宣告を受けた。原告は、NT工法の事業を続けるために第一特許権及び第二特許発明の特許を受ける権利が必要であったことから、同年7月28日、P2破産管財人P4との間で、代金を3120万円とし、同破産管財人がP3に対する買戻権を行使して第一特許権を破産者P2名義にした上で、同特許権を移転すること、第二特許発明の特許を受ける権利を原告に移転することを内容とする契約を締結した。第一特許権については、平成6年3月28日、P3から破産者P2への移転登録と、同人から原告への移転登録がされた。原告は、平成8年8月22日、第二特許権につき設定登録を受けた。第二特許発明の発明者はP1とされているが、前記(イ)のとおり、同特許発明は、原告とP1の共同研究によるものである。 (エ) 第二特許発明のスリーブには作業性に関して不都合な点があったので、原告代表者は、半円筒形でかつ軸方向の中央部内面に溶接金属を充満させる溝条を形成したスリーブを発明した。これについて、原告は、平成7年3月31日、 発明者を原告代表者として特許出願を行い、平成12年8月11日、特許の設定登録を受けた(別紙特許権等目録記載三の特許権。以下、この特許権を「第三特許権」といい、その特許発明を「第三特許発明」という。)。 原告は、鉄筋の突合せ溶接による接続の際、接続部に半円筒形スリーブをはめて行う工法を「ニューNT工法」と称することにした。 (オ) 原告は、第三特許発明に係るスリーブの縁にルート間隔(鉄筋の突合せ間隔)の幅で切欠きを形成したものについて、平成7年3月31日、考案者を原告代表者として実用新案登録出願を行い、平成9年6月4日、実用新案の設定登録を受けた(別紙特許権等目録記載四の実用新案権。以下、この実用新案権を「本件実用新案権」という。)。 イ 被告らは、ニューNT工法に用いられる半円筒形スリーブの発明者が原告代表者であり、原告がそのようなスリーブに係る第三特許発明の特許権者であることを認めていた。 第三特許権及び本件実用新案権の各出願の際には、これらの登録名義を被告らの共有にするという話はなく、被告らは、本件訴訟に至って初めて、第三特許権が原告、被告NYK、K2株式会社(以下「K2」という。)、K3株式会社(以下「K3」という。)の共有であると主張するようになった。 (3) 商標権 ア 第一商標権 (ア) 原告は、平成6年2月9日、別紙商標権目録記載一の商標権(以下「第一商標権」といい、その登録商標を「第一商標」という。)につき商標登録出願をし、平成10年12月18日、商標登録を受けた。 (イ) 原告は第一商標権を有している。 イ 第二商標権 (ア) 原告が施工するニューNT工法は、半割型スリーブを使用した安全性、作業性に優れた工法として建築業界で周知されていたので、原告は、平成7年3月2日、別紙商標権目録記載二の商標権(以下「第二商標権」といい、その登録商標を「第二商標」という。)につき商標登録出願をし、平成11年1月29日、 商標登録を受けた。 (イ) 原告は第二商標権を有している。 ウ 費用負担等 第一商標及び第二商標の商標登録出願は、原告、株式会社K4(以下「K4」という。)、K3の3社の協議によりK5特許事務所に依頼したものではなく、原告が単独で依頼し、出願費用も支払ったが、約6か月から1年半後にK4とK3が出願費用の一部を負担したものである。 第一商標及び第二商標が商標登録された際の出願代理人の成功報酬及び登録料の支払は、ニューNT工法協会が支出しており、同協会の財産は、正会員、 準会員等の構成員の費用負担で構成されているから、これを正会員4社の負担というのは誤りである。これを正会員4社が負担したとしても、それは、4社の共有とする旨の合意があったからではなく、株式会社K6(以下「K6」という。)等の模倣業者の横行の排除を契機とするものである。 第一商標及び第二商標の出願費用及び成功報酬をK4(又は被告NYK)、K3、K2らが負担したのは、第一商標及び第二商標の使用の謝礼として負担したものであり、それらの商標権を共有にすることの対価として負担したものではない。 共有の合意があるのは第一特許権のみであり、その他の商標権、特許権、実用新案権は原告が単独で取得したものである。 (4) ニューNT工法協会 ア 旧協会 (ア) 設立 原告、K3、被告NYKは、平成7年5月、これら3社を正会員としてニューNT工法協会(所在地 大阪市<以下略>。以下「旧協会」という。)を設立し、旧協会の理事長には、被告NYK代表取締役のP5が就任した。その後、 K2が旧協会の正会員に加わった。 原告、K3、K2、K4は平成10年3月31日付けで、第一特許権をこれらの4社が共有していることを記載した文書を作成したが、この文書は、通常使用権者の被告NYKが、第一特許発明及びそれに関するノウハウに関連して新たに改良・発明をしても、その新たな技術は原告、K3、K2、K4の4社の共有となり、被告NYKがこれを取得しないことを定めたものにすぎない。また、被告NYKは、第一特許権の共有者ではないから、第一特許発明及びそれに関するノウハウに関連して新たに改良・発明をしても、その新たな技術について特許権を取得し得ない。 (イ) 法的性質 a 民法上の組合 (a) 民法上の組合への該当性 財団法人日本建築センター(以下「日本建築センター」という。)がニューNT工法について行った評定は、旧協会ではなく、原告、被告NYK、K3、K2の4社が取得したものであり、これら4社の責任施工により実施することが評定取得の条件とされており、原告以外の正会員は、この評定を取得した事実に基づいて旧協会の正会員として位置付けられている。このように、旧協会は、正会員の独立性が高く、正会員からなる民法上の組合に該当する。 旧協会は、正会員、準会員、賛助会員、特別会員の4種類の会員からなる会員制を採り、会員の種類によってその地位及び会費が異なっていた。正会員と準会員以下の会員との関係は、預託金制ゴルフ会員権における経営会社と会員の関係と同じであり、正会員による組合の存続を前提とし、その限りにおいて成り立つ権利関係である。 (b) 商標権の組合財産への属否 旧協会の資産は、旧協会の会則によれば、会費、寄付金品、資産から生じる収入、その他の収入とされており、これらが組合財産に当たり、第二商標権はこれに含まれていない。 第二商標権は正会員の共有名義の登録とはされておらず、対外的には原告の個人財産であり、正会員4社が、旧協会の存続する限り第二商標を共同目的のために利用することが義務づけられている関係にある。旧協会という組合が作られたのは、組合員にとっては、組合契約を結ぶことによって第二商標を無償で使用することができ、原告にとっては組合員の使用により第二商標の普及発展が図られ評価が高まるという点において利害が一致したからであり、原告は、他の組合員に対し、組合の存立を前提として第二商標を無償で使用させることを認めたものである。したがって、第二商標権は組合財産ではない。 b 法人格なき社団への該当性 (a) 法人格なき社団の要件 法人格なき社団の成立要件は、@団体としての組織を備え、A多数決の原則が行われ、B構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、かつCその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることである。 (b) 構成員の変更と団体の存続 旧協会の構成員は、正会員、準会員、賛助会員、特別会員の4種類であり、均質を欠いており、正会員4社は、準会員以下の会員をもって代替することができないから、旧協会は、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するという上記(a)Bの要件を充足していなかった。 (c) 団体としての主要な点の決定 @ 総会の運営 旧協会の会則によると、通常総会は毎年6月に開催されることになっており、過去に定時総会を開催した事実はあったが、平成14年度の定時総会は、旧協会理事長P5が旧協会会員に対して不開催を一方的に通知したことにより開催されず、定時総会を開催する旨の会則は有名無実であり、総会の運営は確定していなかった。 A 財産の管理 @ 財産の独立性 旧協会は、平成10年度の研究開発実験に要した費用275万5509円のうち69万6254円を協会財産から支払い、残余の205万9255円を正会員4社に分担させていたから、旧協会の財産運営は、社団財産をもって引当てとしておらず、社団構成員の有限責任は確立されていなかった。 A 残余財産の分配 旧協会は、平成14年7月31日付けの収支計算書の支出欄の繰越残高に計上された221万7032円を、正会員と準会員に会費の納入比率に応じて分配している。これは旧協会の解散を裏付ける事実である。そうでないとしても、これは社団財産の管理が確立していなかったことを裏付ける事実ということができる。 B したがって、旧協会は、その組織において総会の運営、財産の管理が確定しておらず、上記(a)Cの要件を充足していなかった。 (d) 該当性 上記(b)、(c)記載のとおり、旧協会は法人格なき社団の要件を充足しないから、法人格なき社団ではない。 イ 旧協会の解散 (ア) 解散に至る経緯 a K3は、平成14年3月6日、経営不振により旧協会に退会を申し出、旧協会理事長及び事務局(会則10条により、理事長、副理事長、理事らで構成される。)はこれを承認し受理した。これにより、旧協会の正会員は、原告、被告NYK及びK2の3社となった。旧協会理事長は、「平成13年度決算報告書送付の件」と題する文書と定時総会議案書を会員に送付してK3の退会を会員に告知し、K3の会費は平成14年3月分までしか計上されなかった。 b 平成14年3月以降、旧協会の運営につき、原告とK2は、職員給与の削減等による経費削減、会費の減額等を提唱したのに対し、被告NYKは溶接訓練センターの併設を提唱し、3社間の意見の対立が顕著となった。このような対立状態の下で、同年4月以降、3社で何度も協議が行われたが、意見の対立は解消せず、被告NYK代表者で旧協会理事長であったP5が、原告らに無断で溶接訓練センターの併設を関係官庁に申請したことから、3社の対立は決定的となった。 c 平成14年6月11日、3社の代表者が一同に会してその後の方針を協議したが、対立は解消せず、3社は、旧協会を解散すること、及び解散に伴って残余財産を会員に分配し清算することで一致した。 (イ) 解散の法的根拠 a 組合の解散 (a) 組合は、全組合員の合意のある場合には解散される。 平成14年6月11日、旧協会の全組合員である原告、K2及び被告NYKが解散に合意したことにより、旧協会は解散し、残余財産が清算された同年7月31日をもって組合関係は終了した。 (b) 組合は、組合員が1人となった場合にも解散される。 旧協会について解散の合意がなかったとしても、K3、原告及びK2が退会し、組合員が被告NYKのみとなったことにより、旧協会は解散し、残余財産が清算された平成14年7月31日をもって組合関係は終了した。 被告らは、K3が退会を撤回したと主張するが、仮にそうであるとしても、K3は、平成15年8月19日、大阪地方裁判所で破産宣告を受けたから、それにより、組合員は被告NYKのみになった。 b 法人格なき社団の解散 (a)@ 旧協会は残余財産を清算し、旧協会理事長であったP5が会員に送付した平成14年7月31日付けの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書には旧協会の解散の事実が記載されていたが、会員から何らの異議の申立てもなく、解散の事実は各会員に受け入れられていたから、旧協会の会員はすべて旧協会の解散を追認したものといえる。 A 原告は、「ニューNT工法の新構成と運営について」と題する文書を取引先に送付し、旧協会が解散したことと、原告が原告本社内に「ニューNT工法協会」を設立したことを報告した。 K2は、取引先及び旧協会理事長であったP5に対し、「ニューNT工法協会の件」と題する文書及び「ニューNT工法および協会の件」と題する文書を送付し、旧協会が解散したことと、K2が原告の設立した「ニューNT工法協会」に参加することを通知した。 旧協会は、平成14年7月31日付け収支計算書において、未払金として、旧協会が存続していれば計上する必要のない項目である退職慰労金、 預託金払戻金、事務所敷引、事務所解約金、リース解約金、備品撤去料を計上し、 事務局職員、顧問は、退職慰労金を受け取って旧協会を退職し、預託金払戻金は、 準会員に返還された。 旧協会の事務所の賃貸借契約の賃借人は、平成14年8月1日、形式上も実質上も被告NYKに変更された。 (b) 上記(a)記載の事実によれば、旧協会が仮に法人格なき社団であるとしても、旧協会は解散したといえる。 ウ 現協会 被告現協会は、旧協会が平成14年7月31日に消滅した後、被告NYKによって設立された組織であり、旧協会とは別の組織である。被告現協会は、原告が自己都合により旧協会を退会したという虚偽の事実及び被告現協会が臨時総会を開催したことを新聞に発表し、旧協会が存続するかのような誤認を会員に与え、 さらに、ゼネコン、官庁などの得意先にも、原告が自己都合により旧協会を退会したという虚偽の事実を記載した文書を送付している。 エ 被告A 被告Aは、被告現協会の準会員であるが、被告現協会は旧協会とは別の組織であるから、被告現協会の準会員であるとしても、別紙被告標章目録記載1ないし4の標章の使用権原はない。 被告現協会が旧協会と同一の組織であるとしても、後記(6)イ記載のとおり、旧協会の構成員に上記標章の使用権原はない。 (5) 被告らによるニューNT工法の変更 被告らは、ニューNT工法の標準仕様書を勝手に変更して評定4社の責任施工であることを不明確にし、曲げ試験を不要にし、引張試験における母材破断の条件を削除し、90度以上の裏曲げ試験で破断しないことを不必要としたが、これは明らかに日本建築センターの評価認定の基準に反する。被告らがこのような変更を行ったのは、被告NYKの技術力が劣り、厳格な検査試験を実施すると不合格品が続出したためである。被告らがニューNT工法の標準仕様書をこのように変更したことは、ニューNT工法に対する信用を害する行動である。 (6) 使用許諾とその終了 ア 通常使用権の許諾 原告は、第二商標につき、平成11年1月29日の商標登録の後、旧協会又は旧協会の構成員に対し、無償で使用することを黙認した。このような原告の行為は、旧協会又は旧協会の構成員に対して、黙示的に無償の通常使用権を許諾したものと解される(黙示的通常使用権許諾契約)。 イ 通常使用権の消滅 (ア) 旧協会が解散したことにより、旧協会の通常使用権は消滅した。また、旧協会の構成員の通常使用権は、旧協会の存在を前提とするものであったから、旧協会が消滅したことにより、旧協会の構成員の通常使用権も消滅した。 (イ) 旧協会の解散が認められないとしても、上記ア記載の黙示的通常使用権許諾契約においては、原告が旧協会から離脱することが解除条件とされていたから、原告が旧協会を離脱したことにより、その解除条件が成就し、旧協会及び旧協会の構成員の通常使用権は消滅した。 (ウ)a 旧協会の解散が認められないとしても、上記ア記載の黙示的通常使用権許諾契約においては、旧協会又は旧協会の構成員が、第二商標権に化体された原告の業務上の信用を害するような行動をとらず、原告に協力する限りにおいて使用を許諾することが当然の前提とされ、約定の内容とされており、旧協会又は旧協会の構成員は、その当然の前提である約定の内容を明示的又は黙示的に承認していた。また、上記ア記載の通常使用権許諾契約に基づき、旧協会又は旧協会の構成員は、再使用(サブライセンス)を許諾する場合に原告の同意を得る義務を負っていた。 b 旧協会又は旧協会の構成員である被告らは、前記(5)記載のとおり、 ニューNT工法の標準仕様書を勝手に変更し、第二商標権に化体された原告の業務上の信用を害する行動をとり、上記a記載の約定の、第二商標権に化体された原告の業務上の信用を害するような行動をとらず、原告に協力するという債務を履行しなかった。また、旧協会は、その構成員に再使用を許諾する際に原告の同意を得ず、上記a記載の義務に違反した。 c 原告は、被告らに対し、平成16年2月16日の本件の第3回弁論準備手続期日において、平成15年12月24日付け原告第2準備書面を陳述することにより、上記b記載の債務不履行に基づき上記ア記載の通常使用権許諾契約を解除する旨の意思表示を行った。これにより、同契約は解除された。 (7) 被告らによる標章の使用 ア 被告現協会 (ア) 被告現協会は、建築現場における鉄筋の継手工事についてその会員に別紙被告標章目録記載1ないし4の標章(以下、別紙被告標章目録記載1ないし4の標章を包括して「被告標章」という。)の使用をさせるために、被告標章を表示した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持している。 (イ) 被告現協会は、その会員に、被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類の使用をさせている。 イ 被告NYK (ア) 被告NYKは、標準仕様書に被告標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供している。 (イ) 被告NYKは、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類に被告標章を付して展示し、又は頒布している。 (ウ) 被告NYKは、その下請企業に、被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、取引書類の使用をさせている。 ウ 被告A (ア) 被告Aは、標準仕様書に被告標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供している。 (イ) 被告Aは、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、 パンフレット、広告、取引書類に被告標章を付して展示し、又は頒布している。 (8) 商標権の侵害 ア 役務 被告現協会がその会員に被告標章の使用をさせている役務、被告NYK及び同Aが被告標章を使用している役務は、建築現場における鉄筋の継手工事であり、第二商標権の指定役務と同一である。 イ 標章 被告標章は、いずれも、第二商標と同一又は類似である。 ウ 侵害 (ア) 被告現協会 a 前記(7)ア(ア)記載のとおり、被告現協会が、建築現場における鉄筋の継手工事についてその会員に被告標章の使用をさせるために、被告標章を表示した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持していることは、第二商標権の指定役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為(商標法37条6号)に該当するから、被告現協会は、 第二商標権を侵害しているものとみなされる。 b 被告標章を表示した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類は、第二商標権の侵害の行為を組成した物(商標法36条2項)に該当する。 c 前記(7)ア(イ)記載のとおり、被告現協会は、その会員に、被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類の使用をさせているが、それを差し止めることは、第二商標権の侵害の予防に必要な行為(商標法36条2項)に該当する。 (イ) 被告NYK a 標準仕様書は、建築現場における鉄筋の継手工事の提供に当たり、 その提供を受ける者の利用に供する物に該当するから、前記(7)イ(ア)記載のとおり、被告NYKが、標準仕様書に被告標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供していることは、第二商標権の指定役務の提供に当たり、 その提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを用いて同指定役務を提供する行為(商標法2条3項4号、37条1号)に該当し、第二商標権を侵害しており、又は侵害しているものとみなされる。 b 標準仕様書、パンフレットは広告に該当するから、前記(7)イ(イ)記載のとおり、被告NYKが、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類に被告標章を付して展示し、又は頒布していることは、第二商標権の指定役務に関する広告、取引書類に登録商標又はこれに類似する商標を付して展示し又は頒布する行為(商標法2条3項8号、37条1号)に該当し、第二商標権を侵害しており、又は侵害しているものとみなされる。 c 被告標章を付した広告は、第二商標権の侵害の行為を組成した物(商標法36条2項)に該当する。 d 前記(7)イ(ウ)記載のとおり、被告NYKは、その下請企業に、被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、取引書類の使用をさせているが、それを差し止めることは、第二商標権の侵害の予防に必要な行為(商標法36条2項)に該当する。 (ウ) 被告A a 前記(7)ウ(ア)記載のとおり、被告Aが、標準仕様書に被告標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供していることは、第二商標権の指定役務の提供に当たり、その提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを用いて同指定役務を提供する行為(商標法2条3項4号、37条1号)に該当し、第二商標権を侵害しており、又は侵害しているものとみなされる。 b 前記(7)ウ(イ)記載のとおり、被告Aが、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類に被告標章を付して展示し、又は頒布していることは、第二商標権の指定役務に関する広告、取引書類に登録商標又はこれに類似する商標を付して展示し又は頒布する行為(商標法2条1項8号、37条1号)に該当し、第二商標権を侵害しており、又は侵害しているものとみなされる。 (9) 請求 よって、原告は、被告らに対し、次のとおり請求する。 ア(ア) 被告現協会に対し、商標法36条1項、37条6号に基づき、建築現場における鉄筋の継手工事についてその会員に被告標章の使用をさせるために、 被告標章を表示した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、 取引書類を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持することの差止めを求める。 (イ) 被告現協会に対し、商標法36条2項、37条6号に基づき、その所有に係る被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類の廃棄を求める。 (ウ) 被告現協会に対し、商標法36条2項、37条6号に基づき、その会員に被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、ニューNT工法技量資格証明書、取引書類の使用をさせることの差止めを求める。 イ(ア) 被告NYKに対し、商標法36条1項、2条3項4号、37条1号に基づき、標準仕様書に被告標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供することの差止めを求める。 (イ) 被告NYKに対し、商標法36条1項、2条3項8号、37条1号に基づき、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、 広告、取引書類に被告標章を付して展示し、又は頒布することの差止めを求める。 (ウ) 被告NYKに対し、商標法36条2項、2条3項8号、37条1号に基づき、その所有に係る被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類の廃棄を求める。 (エ) 被告NYKに対し、商標法36条2項、37条1号に基づき、その下請企業に被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、取引書類の使用をさせることの差止めを求める。 ウ(ア) 被告Aに対し、商標法36条1項、2条3項4号、37条1号に基づき、標準仕様書に被告標章を付したものを用いて、建築現場における鉄筋の継手工事を提供することの差止めを求める。 (イ) 被告Aに対し、商標法36条1項、2条3項8号、37条1号に基づき、建築現場における鉄筋の継手工事に関する標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類に被告標章を付して展示し、又は頒布することの差止めを求める。 (ウ) 被告Aに対し、商標法36条2項、2条3項8号、37条1号に基づき、その所有に係る被告標章を付した標準仕様書、パンフレット、広告、取引書類の廃棄を求める。 2 請求原因に対する認否(被告ら) (1)ア 請求原因(1)(当事者)ア(原告)の事実は認める。 イ(ア) 請求原因(1)イ(被告ら)(ア)の事実は認める。 被告現協会は、継手スリーブを使用した鉄筋の溶接継手工法の発展、 普及、管理及び工法開発を図る目的で設立された団体であり、@施工実施権契約者に対する技術指導及び実施権等の管理、A会員に対する技術指導、機材・計器等の開発製作及び品質管理指導、B特許工法及び申請中の各工法についての研究・開発と工業所有権の保持業務、C官公庁などの事業主体、設計事務所、コンサルタント及び建設会社などに対する普及活動、D会員の研究・勉強会、親睦会などの開催、 E協会の運営に関する事務の活動を行っている。被告現協会は、法人格なき社団であり、国土交通省及び日本建築センターに登録している。 (イ) 請求原因(1)イ(イ)の事実は認める。 (ウ) 請求原因(1)イ(ウ)の事実は認める。 (2)ア(ア) 請求原因(2)(ニューNT工法)ア(ア)の事実のうち、K1代表者であったP1が、半自動炭酸ガスアーク溶接法を用い、鉄筋の接続部に円筒形のスリーブをはめて行う溶接継手の製作方法を発明し、これをNT工法と称し、昭和57年4月20日、これについて特許出願をし、平成2年9月13日、第一特許権の設定登録を受けたことは認め、その余は不知。 (イ) 請求原因(2)ア(イ)の事実のうち、P1が、第二特許発明について、 昭和63年10月21日、発明者をP1として特許出願を行ったことは認め、その余は不知。 (ウ) 請求原因(2)ア(ウ)の事実のうち、第一特許権について、平成4年6月22日、P1から同人の妻であるP2への移転登録がされ、平成5年3月22日、P2からP3に移転登録がされたこと、K1、P1及びP2が、同月9日、大阪地方裁判所で破産宣告を受けたこと、第一特許権について、平成6年3月28日、P3から破産者P2への移転登録と、同人から原告への移転登録がされたこと、原告が、平成8年8月22日、第二特許権につき設定登録を受けたことは認め、その余は不知。 原告は、K4やK3と協議し、原告、K4、K3が特許権を共有し、 費用を平等に負担することを前提として、平成5年7月6日、第一特許権及び第二特許発明の特許を受ける権利を、P1らの破産管財人から購入した。 (エ) 請求原因(2)ア(エ)の事実のうち、第二特許発明のスリーブに作業性に関して不都合な点があったこと、第三特許発明について、平成7年3月31日、 発明者を原告代表者として特許出願が行われ、平成12年8月11日、特許の設定登録がされたこと、鉄筋の突合せ溶接による接続の際、接続部に半円筒形スリーブをはめて行う工法を「ニューNT工法」と称することは認め、その余は否認する。 第三特許発明は、原告、被告NYK、K3の3社が、原告名義で出願し、特許の設定登録を受けた。第三特許発明に係る半円筒形のスリーブは、原告代表者が発明したのではなく、原告、被告NYK、K3が共同でNT工法を改良研究して開発、発明したものである。また、「ニューNT工法」の名称は、平成5年ごろにNT工法研究会の会員であった原告、被告NYK、K3の3社が協同して名付けたものである。 (オ) 請求原因(2)ア(オ)の事実は否認する。実用新案登録は、原告、被告NYK、K3の3社が、原告名義を用いて行ったものである。 イ 請求原因(2)イの事実は否認する。 第二商標権の登録が原告名義で行われたのは、第一特許権について平成6年3月28日に原告への移転登録がされたのと同様に、便宜上原告の名義を使用したにすぎない。 (3)ア(ア) 請求原因(3)(商標権)ア(第一商標権)(ア)の事実は否認する。 第一商標権は、原告、被告NYK、K3の協議により、3社が平等に費用を負担することを前提に、原告名義で商標登録を行ったものである。 (イ) 請求原因(3)ア(イ)は争う。 イ(ア) 請求原因(3)イ(第二商標権)(ア)の事実は否認する。 第二商標権は、原告、被告NYK、K3の協議により、3社が平等に費用を負担することを前提に、原告名義で商標登録を行ったものである。 (イ) 請求原因(3)イ(イ)は争う。 ウ 請求原因(3)ウ(費用負担等)は争う。 第一商標及び第二商標の商標登録出願は、原告、K4(被告NYK)、K3の3社の協議により、原告の名義でK5特許事務所に依頼し、その出願費用はK5特許事務所から原告に請求され、原告が立替払し、その後、第一特許権の出願費用は、原告、K4、K3の3社で清算した。第一商標及び第二商標が商標登録された際の成功報酬は、ニューNT工法協会を通じ、原告、K3、被告NYK、K2の4社が平等に負担した。 第二商標権については、原告、被告NYK、K2、K3の4社の共有とする旨の合意があった。もっとも、この合意は、法的には、原告が、被告NYK、K3、K2らに対して通常使用権の許諾をしたものであり、その許諾は、研究開発費、出願登録費用等を各自平等に負担したこと、その後の維持費用等も4社で平等に負担することを前提としており、商標の使用を制限する何らの条件や約定も付されていなかった。 (4)ア(ア) 請求原因(4)(ニューNT工法協会)ア(旧協会)(ア)(設立)の事実は認める。 旧協会は法人格なき社団であり、被告現協会として現在まで存続している(被告らは、便宜上、「旧協会」、「被告現協会」という文言を用いるが、それは、旧協会と被告現協会が別の組織であることを認めるものではない。)。 旧協会の設立の経緯は平成7年以前に遡る。平成5年4月、原告、被告NYK及びK3の3社が「NT工法溶接工選定委員会」、「NT工法研究会」を発足させた(所在地 大阪市<以下略> 委員長 P6)。平成5年にK1、P1が破産宣告を受けたため、同委員会を構成する3社が協調して第一特許権及び第二特許発明の特許を受ける権利を取得することとなった。同委員会を構成する3社は、平成6年3月に第一特許権の移転登録をするに当たり、その取得を依頼していたP7弁護士が原告の顧問弁護士であったことなどから、将来第一特許権を3社の共有にするという合意の下で、第一特許権の登録名義を便宜上原告の名義にした。 第一特許権については、平成10年6月22日、原告、K3、K2、 K4(K4の代表者は、被告NYKの代表者と同じく、P5であった。)の共有とする移転登録がされた。これらの4社は、同年3月31日付けで、第一特許権をこれらの4社が共有していること、第一特許発明及びそれに関するノウハウに関連して新たに改良・発明・考案した技術・意匠をこれら4社の共有とすることを記載した文書を作成した。 平成5年ごろより、原告、被告NYK、K3は、NT工法による工事実績を積み重ねるとともに、NT工法の改良を研究し、半円筒形スリーブを用いる工法(後の「ニューNT工法」)を開発して一般評定を取得する準備を始めた。 平成7年1月の阪神大震災後の復旧、補修工事において、多数の事業主体がニューNT工法の特性に注目し、ニューNT工法は高い評価を受けて約200件を超える震災復旧工事に採用された。そして、同年4月20日、原告、K3、 及びK4から第一特許の通常実施権の許諾を受けた被告NYKによって「ニューNT工法協会設立合意書」が作成され、原告、K3、被告NYKによって、同年5月、「ニューNT工法協会」が設立され、その後、K2が正会員に加わった。 (イ)a(a) 請求原因(4)ア(イ)(法的性質)a(民法上の組合)(a)(民法上の組合への該当性)のうち、日本建築センターがニューNT工法について行った評定は、原告、被告NYK、K3、K2の4社が取得したものであり、これら4社の責任施工により実施することが評定取得の条件とされていたこと、旧協会は、 正会員、準会員、賛助会員、特別会員の4種類の会員からなる会員制を採り、会員の種類によってその地位及び会費が異なっていたことは認め、その余は争う。 旧協会は、被告現協会として存続しており、その法的性質は民法上の組合ではなく法人格なき社団である。旧協会の会員の地位は、会則に基づいて考えれば足り、預託金制ゴルフ会員権における経営会社と会員の関係を持ち出す必要はない。 (b) 請求原因(4)ア(イ)a(b)(商標権の組合財産への属否)の事実は否認し、主張は争う。 b(a) 請求原因(4)ア(イ)b(法人格なき社団への該当性)(a)(法人格なき社団の要件)は認める。 (b) 請求原因(4)ア(イ)b(b)(構成員の変更と団体の存続)のうち、 旧協会の構成員が、正会員、準会員、賛助会員、特別会員の4種類であり、均質を欠いていることは認め、その余は争う。 法人格なき社団の要件として構成員の均質性は要求されていないから、協会の構成員が均質を欠いていたとしても、そのことは、協会が法人格なき社団でないことの根拠にはならない。また、第三者が正会員から特許権の譲渡を受けて正会員となる要件を満たすことは可能であるから、旧協会は、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するという要件を充足する。 (c)@ 請求原因(4)ア(イ)b(c)(団体としての主要な点の決定)@(総会の運営)のうち、旧協会の会則によると、通常総会が毎年6月に開催されることになっていたこと、過去に定時総会を開催した事実があったこと、平成14年度の定時総会が開催されなかったことは認め、その余は争う。 旧協会及び被告現協会は、会則に従い、毎年総会を開催してきた。平成14年度の総会は、平成14年6月に原告が旧協会を退会し、旧協会の運営に混乱が生じたため、不測の事態により開催されなかったものであり、その点について各会員に事情を説明するとともに平成14年度定時総会議案書を送付することにより、総会手続に代替する手続をとったから、平成14年度の総会が開催されなかったことをもって会則の存在が有名無実であるとはいえない。 A@ 請求原因(4)ア(イ)b(c)A(財産の管理)@(財産の独立性)のうち、旧協会が、平成10年度の研究開発実験に要した費用275万5509円のうち69万6254円を協会財産から支払い、残余の205万9255円を正会員4社に分担させていたことは認め、その余は争う。 協会の財産は、会員の財産とは独立していた。会員からの研究開発実験費の徴収は、旧協会と構成員との間の対内的な関係であり、対外的な責任負担とは無関係であるから、旧協会が正会員4社から研究開発実験費等の特別会費を徴収していることによって協会の有限責任が否定されることはない。205万9255円を正会員4社が分担していたことは、特許権、実用新案権、商標権等の使用許諾契約に基づいて費用負担していたことの証左である。 A 請求原因(4)ア(イ)b(c)AA(残余財産の分配)のうち、旧協会が、平成14年7月31日付けの収支計算書の支出欄の繰越残高に計上された221万7032円を、会費の納入比率に応じて分配し、原告、K2及びその傘下の準会員について支払ったことは認め、その余は否認する。被告NYKは、その分配金の支払を受けていない。 旧協会の会員は、旧協会の財産について共有持分権又は分割請求権を有するものではない。旧協会が、原告及びK2の退会に当たり、剰余金を正会員と準会員に分配したのは、会員の総意に基づく財産処分として行ったものである。 B 請求原因(4)ア(イ)b(c)Bは争う。 (d) 請求原因(4)ア(イ)b(d)は争う。 イ(ア)a 請求原因(4)イ(旧協会の解散)(ア)(解散に至る経緯)aの事実のうち、K3が、平成14年3月6日、旧協会に退会を申し出たこと、旧協会理事長が、「平成13年度決算報告書送付の件」と題する文書と定時総会議案書を会員に送付したことは認め、その余は否認する。 K3は、平成14年3月6日、口頭により旧協会に退会を申し出たが、その後、退会を撤回し、現在も被告現協会の会員である。 b 請求原因(4)イ(ア)bの事実のうち、原告が職員給与の削減等による経費削減を提唱していたこと、被告NYKが溶接訓練センターの設立を提唱し、原告らが反対したことは認め、その余は否認する。 被告NYKは、溶接訓練センターの設立を提唱したが、原告の強い反対があったため、旧協会としての設立は行わず、被告NYK代表取締役のP5が、平成14年5月に大阪府の認可を受け、被告NYKが出資して独自に溶接訓練センターを設立した。 c 請求原因(4)イ(ア)cの事実は否認する。 旧協会の会則によれば、総会によらなければ解散決議を行うことはできないのであり、理事会における解散決議などあり得ない。 平成14年6月11日、旧協会の理事会が開催され、原告代表者から退会の意思が再三にわたり表明され、原告の退会を認めることになった。そして、原告の退会に当たって、施工権、特許権、商標権、意匠権、著作権、ノウハウ等の権利は正会員4社の共有であり、旧協会にも商標権、著作権などがあることを会員間で確認し、念のため、後日、覚書又は協定書を作成することが決まった。また、同月開催予定の平成14年度定時総会は開催せず、決算書、業務報告書を作成して会員に郵送し、総会に代えることとした。同理事会では、旧協会を解散するという話が出たことはなかった。 (イ)a(a) 請求原因(4)イ(イ)(解散の法的根拠)a(組合の解散)(a)のうち、組合が全組合員の合意のある場合に解散されることは認め、その余は争う。 (b) 請求原因(4)イ(イ)a(b)のうち、組合が組合員が1人となった場合にも解散されること、K3が、平成15年8月19日、大阪地方裁判所で破産宣告を受けたことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。 b(a)@ 請求原因(4)イ(イ)b(法人格なき社団の解散)(a)@のうち、旧協会理事長であったP5が平成14年7月31日付けの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書を旧協会の会員に送付したことは認め、その余は争う。 平成14年7月31日付けの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書には、協会が解散した旨の記載はなく、むしろ反対に、 「諸般の事情により会員会社がニューNT工法協会を退会することとなった」と記載され、「組織変更」、「再編」という、協会の存続を前提とした表現が用いられている。 A 請求原因(4)イ(イ)b(a)Aの事実のうち、旧協会が、平成14年7月31日付け収支計算書において、未払金として退職慰労金を計上していたことは認め、原告が「ニューNT工法に新構成と運営について」と題する文書を取引先に送付し、旧協会が解散したことと原告が原告本社内に「ニューNT工法協会」を設立したことを報告したことは不知であり、その余は否認する。 旧協会は、原告とK2が退会に当たって清算金の支払を求めたため、平成14年7月31日付け収支計算書により剰余金の計算を行い、会員の会費の納入比率に応じて分配すべき剰余金の金額を計算した。職員の退職慰労金などを収支計算書に計上したのは、剰余金を算出するためであったにすぎない。職員であるP8及びP9は、退職慰労金を受領していない。 (b) 請求原因(4)イ(イ)b(b)は争う。 ウ 請求原因(4)ウ(現協会)の事実は否認する。 エ 請求原因(4)エ(被告A)のうち、被告Aが被告現協会の準会員であることは認め、その余は争う。 (5) 請求原因(5)(被告らによるニューNT工法の変更)のうち、ニューNT工法の標準仕様書が変更されて曲げ試験が不必要とされ、母材破断は常に求めるのではなく原則として求めるとされたことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。 標準仕様書の変更は、平成13年9月ごろより旧協会の理事会において協議され、変更することは原告も了承していた。 (6)ア 請求原因(6)(使用許諾とその終了)ア(通常使用権の許諾)の事実のうち、原告が、第二商標について通常使用権を許諾したことは認め、その余は否認する。原告は、第二商標について、旧協会及び被告NYKらに対し、開発費、権利取得費用等の平等負担を前提として、有償で通常使用権を許諾した。 イ(ア) 請求原因(6)イ(通常使用権の消滅)(ア)は争う。 (イ) 請求原因(6)イ(イ)は争う。 通常使用権許諾契約には、何らの条件も付されていなかった。 (ウ)a 請求原因(6)イ(ウ)aの事実は否認する。 b 請求原因(6)イ(ウ)bの事実は否認する。 旧協会及び被告NYKらが、標準仕様書の変更を行ったことは、原告も承認していたし、平成12年建設省告示第1463号の施行により、建設省住指発第31号の一部が廃止されたことに基づくものであって、到底ニューNT工法の信用を害する行動とはいえない。 c 請求原因(6)イ(ウ)cのうち、原告が被告らに対し、平成16年2月16日の本件の第3回弁論準備手続期日において、平成15年12月24日付け原告第2準備書面を陳述することにより、債務不履行に基づき通常使用権許諾契約を解除する旨の意思表示を行ったことは認め、同契約が解除されたことは争う。 (7)ア 請求原因(7)(被告らによる標章の使用)ア(被告現協会)(ア)、(イ)の事実は認める。 イ 請求原因(7)イ(被告NYK)(ア)ないし(ウ)の事実は認める。 ウ 請求原因(7)ウ(被告A)(ア)、(イ)の事実は認める。 (8)ア 請求原因(8)(商標権の侵害)ア(役務)は認める。 イ 請求原因(8)イ(標章)は認める。 ウ 請求原因(8)ウ(侵害)(ア)ないし(ウ)は争う。 (9) 請求原因(9)(請求)アないしウは争う。 3 抗弁 (1) 先使用権 被告NYKは、第二商標の商標登録出願日である平成7年3月2日の前から、「ニューNT工法」の名称を用いて工事を受注しており、被告NYKらが使用していた「ニューNT工法」の名称は、関連業者の間では広く認識されていた。 したがって、被告NYKは、先使用による商標使用権を有している。 (2) 権利濫用 被告NYKは、平成5年ごろより、原告及び他の被告らとともに、NT工法及びニューNT工法の研究開発、特許権、商標権の取得による保護、普及、発展に尽力しており、それらに要する費用も平等に負担してきた。 さらに、当事者の認識としては、特許権や商標権について、その実体が共有であるという共通の認識をもっていたことから、それらの権利の名義を原告の単独名義とすることについて、特に問題を生じていなかった。 また、原告も、旧協会を退会し、本件訴えの提起に至るまでの間、特許権、商標権等について単独の保有を主張したことは一度もなかった。 被告NYKらは、10年以上の長きにわたり、「ニューNT工法」の名称を使用して鉄筋継手工事を受注しており、「ニューNT工法」の名称の使用を前提とした地位を築いている。 さらに、被告NYKらには、商標権についての通常使用権許諾契約を解除される理由は全くない。 したがって、原告の商標権の通常使用権許諾契約の解除の主張は、権利濫用である。 4 抗弁に対する認否 抗弁(1)(先使用権)、(2)(権利濫用)は争う。 理 由1 次の(1)ないし(7)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。 (1) 請求原因(1)(当事者)ア(原告)、イ(被告ら)(ア)ないし(ウ)の事実。 (2)ア 請求原因(2)(ニューNT工法)ア(ア)の事実のうち、K1代表者であったP1が、半自動炭酸ガスアーク溶接法を用い、鉄筋の接続部に円筒形のスリーブをはめて行う溶接継手の製作方法を発明し、これをNT工法と称し、昭和57年4月20日、これについて特許出願をし、平成2年9月13日、第一特許権の設定登録を受けたこと。 イ 請求原因(2)ア(イ)の事実のうち、P1が、第二特許発明について、昭和63年10月21日、発明者をP1として特許出願を行ったこと。 ウ 請求原因(2)ア(ウ)の事実のうち、第一特許権について、平成4年6月22日、P1から同人の妻であるP2への移転登録がされ、平成5年3月22日、P2からP3に移転登録がされたこと、K1、P1及びP2が、同月9日、大阪地方裁判所で破産宣告を受けたこと、第一特許権について、平成6年3月28日、P3から破産者P2への移転登録と、同人から原告への移転登録がされたこと、原告が、 平成8年8月22日、第二特許権につき設定登録を受けたこと。 エ 請求原因(2)ア(エ)の事実のうち、第二特許発明のスリーブに作業性に関して不都合な点があったこと、第三特許発明について、平成7年3月31日、発明者を原告代表者として特許出願が行われ、平成12年8月11日、特許の設定登録がされたこと、鉄筋の突合せ溶接による接続の際、接続部に半円筒形スリーブをはめて行う工法を「ニューNT工法」と称すること。 (3)ア(ア) 請求原因(4)(ニューNT工法協会)ア(旧協会)(ア)(設立)の事実。 (イ)a 請求原因(4)ア(イ)(法的性質)a(民法上の組合)(a)(民法上の組合への該当性)のうち、日本建築センターがニューNT工法について行った評定は、原告、被告NYK、K3、K2の4社が取得したものであり、これら4社の責任施工により実施することが評定取得の条件とされていたこと、旧協会は、正会員、準会員、賛助会員、特別会員の4種類の会員からなる会員制を採り、会員の種類によってその地位及び会費が異なっていたこと。 b(a) 請求原因(4)ア(イ)b(法人格なき社団への該当性)(a)(法人格なき社団の要件) (b) 請求原因(4)ア(イ)b(b)(構成員の変更と団体の存続)のうち、旧協会の構成員が、正会員、準会員、賛助会員、特別会員の4種類であり、均質を欠いていること。 (c)@ 請求原因(4)ア(イ)b(c)(団体としての主要な点の決定)@(総会の運営)のうち、旧協会の会則によると、通常総会が毎年6月に開催されることになっていたこと、過去に定時総会を開催した事実があったこと、平成14年度の定時総会が開催されなかったこと。 A@ 請求原因(4)ア(イ)b(c)A(財産の管理)@(財産の独立性)のうち、旧協会が、平成10年度の研究開発実験に要した費用275万5509円のうち69万6254円を協会財産から支払い、残余の205万9255円を正会員4社に分担させていたこと。 A 請求原因(4)ア(イ)b(c)AA(残余財産の分配)のうち、旧協会が、平成14年7月31日付けの収支計算書の支出欄の繰越残高に計上された221万7032円を、会費の納入比率に応じて分配し、原告、K2及びその傘下の準会員について支払ったこと。 イ(ア)a 請求原因(4)イ(旧協会の解散)(ア)(解散に至る経緯)aの事実のうち、K3が、平成14年3月6日、旧協会に退会を申し出たこと、旧協会理事長が、「平成13年度決算報告書送付の件」と題する文書と定時総会議案書を会員に送付したこと。 b 請求原因(4)イ(ア)bの事実のうち、原告が職員給与の削減等による経費削減を提唱していたこと、被告NYKが溶接訓練センターの設立を提唱し、原告らが反対したこと。 (イ)a(a) 請求原因(4)イ(イ)(解散の法的根拠)a(組合の解散)(a)のうち、組合が全組合員の合意のある場合に解散されること。 (b) 請求原因(4)イ(イ)a(b)のうち、組合が、組合員が1人となった場合にも解散されること、K3が、平成15年8月19日、大阪地方裁判所で破産宣告を受けたこと。 b(a) 請求原因(4)イ(イ)b(法人格なき社団の解散)(a)@のうち、旧協会理事長であったP5が平成14年7月31日付けの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書を旧協会の会員に送付したこと。 (b) 請求原因(4)イ(イ)b(a)Aの事実のうち、旧協会が、平成14年7月31日付け収支計算書において、未払金として退職慰労金を計上していたこと。 ウ 請求原因(4)エ(被告A)のうち、被告Aが被告現協会の準会員であること。 (4) 請求原因(5)(被告らによるニューNT工法の変更)のうち、ニューNT工法の標準仕様書が変更されて曲げ試験が不必要とされ、母材破断は常に求めるのではなく原則として求めるとされたこと。 (5)ア 請求原因(6)(使用許諾とその終了)ア(通常使用権の許諾)の事実のうち、原告が、第二商標について通常使用権を許諾したこと。 イ 請求原因(6)イ(通常使用権の消滅)(ウ)cのうち、原告が被告らに対し、 平成16年2月16日の本件の第3回弁論準備手続期日において、平成15年12月24日付け原告第2準備書面を陳述することにより、債務不履行に基づき通常使用権許諾契約を解除する旨の意思表示を行ったこと。 (6)ア 請求原因(7)(被告らによる標章の使用)ア(被告現協会)(ア)、(イ)の事実。 イ 請求原因(7)イ(被告NYK)(ア)ないし(ウ)の事実。 ウ 請求原因(7)ウ(被告A)(ア)、(イ)の事実。 (7)ア 請求原因(8)(商標権の侵害)ア(役務) イ 請求原因(8)イ(標章)2 上記1の当事者間に争いのない事実と、後掲各証拠、乙第21号証、第42号証、第122号証、被告現協会代表者兼被告NYK代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる(なお、後記4(2)認定のとおり、旧協会と被告現協会は、同一の法人格なき社団であり、旧協会は、被告現協会として存続しているものと認められるが、事実欄における用法に従い、概ね平成14年7月31日までは「旧協会」、同年8月1日以降は「被告現協会」と呼ぶ。)。 (1) 当事者 ア 原告 原告は、建築工事業、配管及び溶接工事業、鉄筋工事業等を目的とする株式会社である。 イ 被告ら (ア) 被告現協会は、継手スリーブを使用した鉄筋の溶接継手工法の普及活動等を行っている私的団体であり、法人登記はしていない。 (イ) 被告NYKは、土木工事業、建築工事業、鉄筋・鋼構造物工事業等を目的とする株式会社である。 K4と被告NYKは、いずれもP5が代表取締役で、役員、株主がP5の親族である同族会社であり、被告NYKの株主は、すべてK4の株主でもある。 したがって、K4と被告NYKとは、法人格が異なるものの、実質的には、いずれもP5が経営する会社として密接な関連を有しており、被告NYKに旧協会へ拠出する資金の余裕がないときにK4が資金を拠出することもあった。(乙第23ないし第28号証、第42号証) (ウ) 被告Aは、建設業、鉄筋溶接業等を営む個人事業者であり、被告現協会の準会員である。 (2) K1によるNT工法の実施等 ア K1の代表者であったP1は、半自動炭酸ガスアーク溶接法により、鉄筋の突き合わせ溶接の接続部に、周壁上に狭い貫通孔を開設した金属筒のスリーブをはめて行う鉄筋の溶接継手工法を発明し、これをNT工法と称した。P1は、NT工法について、昭和57年4月20日、第一特許権に係る特許出願をし、平成2年9月13日、設定登録を受けた。なお、第一特許権は、平成14年4月20日、存続期間満了により消滅した。(乙第55号証の1、2) イ K2、K3、K1は、昭和61年2月8日、覚書を作成し、NT工法による溶接用継手について、K3が製造、K2が販売、K1が技術指導を分担することによってNT工法の普及に努めることなどを内容とする合意をした。(乙第58号証) ウ K2、K3、株式会社K7は、昭和62年2月15日、NT工法の実用化に関する契約を締結した。同契約は、上記3社が、NT工法について日本建築センターの一般評定を取得するため互いに協力して実用化のための開発を行うこと、評定の申請は上記3社の共同名義で行うこと、契約の有効期間は昭和61年12月1日から昭和62年11月30日までとし、契約期間は上記3社による協議の上延長できることなどを内容とするものであった。(乙第60号証) 上記3社は、昭和62年5月20日、日本建築センターに評定申込みを行い、平成元年4月19日、鉄筋の種類SD35につき、継手の性能がA級であるとの評定(評定番号BCJ-C1251)を受けた。(乙第61号証) エ P1は、NT工法を改良し、筒型のスリーブに代えて、円筒形の4分の1程度をカットしたスリーブを開発し、この発明(第二特許発明)について、昭和63年10月21日、発明者をP1として特許出願を行った。(乙第56号証) (3) 原告とK1の契約等 ア K1と原告は、平成2年4月1日、「協力会社契約書」を作成し、K1が元請け、原告が下請けとしてNT工法による工事を行うこと、K1の業務に支障が生じた場合、又はK1の社長がP1から他へ変わったなどの場合、原告がNT工法を引き継ぎ、業務を継続することなどを約した。(甲第39号証) イ K1は、平成4年12月12日ごろ、取引先に挨拶状を送付した。その挨拶状には、P1の健康上の都合でK1の営業権及びNT工法の特許権を原告に譲渡したこと、原告は、従来より永年にわたりNT工法を施工し、同工法に充分習熟していることなどが記載されていた。(甲第40号証) (4) NT工法溶接工選定委員会 ア 平成5年の初めごろ、NT工法を実施していたのは、原告、被告NYK及びK3であったが、上記3社は、平成5年4月、NT工法溶接工選定委員会を設立した。同委員会の委員長はK3のP6、事務局所在地は大阪市<以下略>とされ、 同委員会の目的は、NT工法の品質を高め、要求される安全性及び信頼性を得るため、習熟した溶接工の技量資格選定試験を実施し、技量資格を承認するとともに、 工法技術の調査研究を行い、工法の普及を図り、土木・建築技術の向上に寄与することとされていた。(乙第16号証) イ K4は、NT工法溶接工選定委員会に対し、平成5年8月2日に400万円、同年11月8日に300万円、平成6年2月22日に500万円、同年9月22日に310万1879円を支払い、同委員会の活動資金を負担した。(乙第14号証、第15号証の1、2) (5) K1の破産と第一特許権の譲渡 ア 第一特許権は、平成2年9月13日、P1を特許権者として設定登録がされ、平成4年6月22日、P1の妻であるP2へ譲渡を原因とする移転登録がされ、平成5年3月22日、P3へ譲渡を原因とする移転登録がされた。また、同年1月25日、P10を専用実施権者とする専用実施権の設定登録がされた。(乙第55号証の2) イ K1、P1及びP2は、平成5年3月9日、大阪地方裁判所で破産宣告を受け、第一特許権(P2が買戻特約付きでP3に譲渡していた。)、実用新案登録第1932898号の実用新案権、第二特許発明の出願中の特許を受ける権利は、 破産債権者として届け出ていた者に譲渡されることとなった。原告は、K1の破産債権者として届け出ていたことから、原告が上記権利の譲渡を受けることとなり、 原告の顧問弁護士であったP7弁護士が、譲渡契約の代理をした。破産者P1、同P2両名破産管財人と原告は、平成5年7月28日、上記権利について売買契約を締結した。同契約においては、@破産管財人が、原告に対し、上記権利を代金3120万円で売り渡し、原告がこれを買い受けること、A破産管財人は、譲渡契約の効力発生後、原告から売買代金の内金として420万円の支払を受けたときは、速やかにP3に対し買戻権を行使し、上記権利の登録名義を破産管財人に戻さなければならないこと、B破産管財人は、原告に対し、P3に対する買戻権を行使して上記権利の登録名義を破産管財人名義に戻した上、代金全額の支払を受けるのと引換えに、上記権利につき移転登録手続をすること、C第一特許権については、P10名義の専用実施権の登録がされたままの売買であるが、原告は、原告の費用をもって同専用実施権設定登録の抹消登録手続をし、訴訟手続上必要なときは、破産管財人に対して訴訟告知を行うことなどが合意された。(乙第40号証) 原告は、破産管財人に対し、上記売買代金として、平成5年7月28日、 420万円を支払い、同年9月29日、1140万円を支払い、同年11月29日、1560万円を支払った。(甲第45号証の1ないし3) ウ 第一特許権、実用新案登録第1932898号の実用新案権、第二特許発明の出願中の特許を受ける権利の売買代金3120万円は、原告、K3、K4が3等分して1040万円ずつ負担することとされ、平成5年7月末までに既にK4が2260万円、原告が860万円を負担していたことから、これを清算するため、 原告がK4に対して180万円、K3がK4に対して1040万円支払うことが合意された。また、P3に対する処分禁止の仮処分に要する費用、及びP10の専用実施権設定登録の抹消に要する費用は、K4が400万円を立て替え、最後に清算することとされた。さらに、評定に要した費用については、原告、K3、被告NYKが100万円ずつ負担することとされた。(甲第35号証、乙第43号証) 上記の原告からK4への180万円、K3からK4への1040万円は、 平成5年12月1日、原告及びK3からK4へそれぞれ支払われた。(乙第44号証) エ 原告は、平成5年7月30日、P3に対する処分禁止の仮処分命令(神戸地方裁判所伊丹支部平成5年(ヨ)第50号)を取得し、同年9月20日、その旨の登録がされた。破産管財人は、P3に対する買戻権を行使し、平成6年3月28日、 第一特許権について、P3から破産者P2に対して譲渡を原因とする移転登録がされ、更に同日、破産者P2から原告に対して譲渡を原因とする移転登録がされた。 (乙第55号証の2) オ 原告は、平成8年8月22日、第二特許権につき設定登録を受けた。(乙第56号証) (6) 商標登録 ア P1は、第一商標と同一の商標について、K5特許事務所のP11弁理士等を代理人とし、平成元年8月1日付け商標登録願により、指定商品を鉄筋溶接継手金具などとして商標登録出願し、その後拒絶理由通知を受け、指定商品を補正するなどしたが、平成3年11月22日付けの拒絶査定を受けた。(甲第58号証) イ(ア) 原告は、P11弁理士等を代理人とし、第一商標について、平成6年2月9日付け商標登録願により、商品の区分を第37類、指定商品を建築現場における鉄筋の継手工事、その他の鉄筋工事、配管工事として商標登録出願(商願平6-12678号)をした。(甲第59号証) (イ) 特許庁審査官は、原告に対し、平成8年11月6日起案の拒絶理由通知書により、商標登録出願に係る商標は、役務の内容を表す記号、符号として用いられる欧文字2文字の「NT」の文字に、役務を提供する工事の方法を認識させる「工法」の文字とを「NT工法」として書してなるにすぎないものであるから、これを本願の指定役務に使用するときは、需要者が何人の業務に係る役務であるかを認識することができないものと認め、商標法3条1項6号に該当する旨の拒絶理由を通知した。(甲第59号証) (ウ) 旧協会は、平成8年12月、P11弁理士に対し、NT工法もニューNT工法も建設業界では広く知られており、パンフレットも旧協会に属する各社が共通に作成、配布していること、建設工事についてローマ字と工法という言葉を組み合わせた商標は、CEC工法、PTC工法など数多くあることなどを記載した意見書を送付した。(乙第124号証) 原告は、特許庁審査官に対し、平成9年1月8日付けの意見書を提出し、本願商標は、取扱い業者間では出願人の営業を表示する商標として認識され、 現に特別顕著性を発揮し、業務上の信用が化体しており、商標法3条1項6号に該当するものではない旨の意見を述べた。(甲第59号証) (エ) しかし、特許庁審査官は、原告に対し、平成9年3月4日付けの拒絶査定を行った。その理由は、平成8年11月6日付けで通知した理由によって拒絶すべきものと認め、意見書によって先の認定を覆すに足りないというものであった。(甲第59号証) (オ) 原告は、平成9年4月28日付けの審判請求書により、拒絶査定不服審判(平成9年審判第6887号)を請求し、同年5月28日付けの審判請求理由補充書を提出した。(甲第59号証) (カ) 特許庁審判官は、平成10年10月26日、原査定を取り消し、本願商標は登録をすべきものとする旨の審決を行った。第一商標は、同年12月18日、商標登録された。(甲第22号証、第59号証) ウ(ア) 原告は、P11弁理士等を代理人とし、第二商標について、平成7年3月2日付け連合商標登録願により、役務の区分を第37類、指定役務を建築又は土木現場における鉄筋の継手工事、その他の鉄筋工事、配管工事とし、第一商標(商願平6-12678号)の連合商標として商標登録出願した(商願平7-20736号)。(甲第1号証、第60号証) (イ) 特許庁審査官は、原告に対し、平成9年5月26日起案の拒絶理由通知書により、商標登録出願に係る商標は、役務の質(内容等)が新しいといった意を直感させる「ニュー」の文字と、役務の内容を表す記号・符号として用いられている欧文字2文字の一類型と認められる「NT」の文字、及び工事の方法であることを表す語として他の語に付して広く使用されている「工法」の文字とを結合させ「ニューNT工法」と普通に用いられる方法で書してなるにすぎず、これをその指定役務に使用しても、需要者が何人の業務に係る役務であるかを認識することができないものと認め、商標法3条1項6号に該当する旨の拒絶理由を通知した。(甲第60号証) (ウ) 原告は、特許庁審査官に対し、平成9年7月30日付け意見書を提出するとともに、同日付けの手続補正書(自発)を提出し、指定役務を建築又は土木現場における鉄筋の継手工事と補正した。 原告は、平成10年12月8日付け追加意見書を提出し、第一商標の拒絶査定不服審判(平成9年審判第6887号)において、原査定を取り消し、商標登録出願に係る商標を登録すべきものとする旨の審決を受け、第一商標は自他役務の識別力を有し、商標法3条1項6号の規定に該当しないとの判断が示されたことから、第二商標も同様に自他役務の識別力を有することになる旨の意見を述べた。 (甲第60号証) (エ) 特許庁審査官は、平成10年12月17日、第二商標について登録査定を行った。第二商標は、平成11年1月29日、商標登録された。(甲第1号証、第60号証) エ 原告は、第一特許権、第二特許発明の出願中の特許を受ける権利を譲り受けており、第一特許権、第二特許権の登録名義が原告の名義になることとなっていたことから、第一商標権、第二商標権の出願、登録も、原告名義で行われた。 原告は、第一商標、第二商標につき、旧協会及び旧協会の構成員(会員)に、黙示に通常使用権を許諾していた。 (7) ニューNT工法 ア(ア) 原告、K3、被告NYKは、協力してNT工法の改良について研究開発を行っていた。第二特許発明のスリーブには、作業性に関して不都合な点があったので、上記3社の担当者らは、鉄筋の突き合わせ溶接の接続部に半円筒形スリーブをはめて行う鉄筋の溶接継手工法を考え出し、この工法は、「ニューNT工法」と称されることとなった。(乙第122号証) (イ) 原告、K3、被告NYKは、財団法人日本建築総合試験所に対し、ニューNT工法による鉄筋溶接継手部の強度試験を依頼し、平成6年12月16日、 同試験所から報告書の提出を受けた。(乙第36号証) また、原告、K3、被告NYKは、ニューNT工法について、平成7年5月17日、日本建築センターに評定を申し込み、同年12月、評定番号BCJ-C1865の評定を取得した。(乙第122号証) 旧協会設立後は、旧協会が「ニューNT工法標準仕様書」を発行し、旧協会の会員は、同標準仕様書に基づいてニューNT工法の施工を行っていた。(甲第47号証) イ 原告、K3、被告NYKの担当者らは、半円筒形でかつ軸方向の中央部内面に溶接金属を充満させる溝条を形成したスリーブを発明し、原告は、この発明につき、平成7年3月31日、発明者を原告代表者として特許出願を行い(特願平7-74837号)、平成12年8月11日、第三特許権の設定登録を受けた。(乙第57号証) 原告は、第一特許権、第二特許発明の出願中の特許を受ける権利を譲り受けており、第一特許権、第二特許権の登録名義が原告の名義になることとなっていたことから、第三特許権の出願、登録も、原告名義で行われた。 ウ 原告は、第三特許発明に係るスリーブの縁にルート間隔(鉄筋の突合せ間隔)の幅で切欠きを形成したものについて、平成7年3月31日、考案者を原告代表者として実用新案登録出願を行い、平成9年6月4日、本件実用新案権の設定登録を受けた。(甲第23号証) 本件実用新案権の出願、登録も、第三特許権と同様に、原告名義で行われた。 エ 原告、K3、被告NYKは、従前はNT工法を施工していたが、平成6年ごろから、ニューNT工法の施工を始めた。(甲第41号証、乙第63、第64号証、第123号証。なお、甲第41号証においては、平成2年7月以降の工事が記載された表に「ニューNT工法工事履歴書」という題名が付されているが、これまで認定された事実に照らし、同表には、ニューNT工法が採用される前の工事も含めて記載されているものと認められ、平成2年7月以降の工事がすべてニューNT工法によることを表す趣旨ではないものと認められる。) (8) 旧協会の設立 ア 原告、K3、被告NYKは、平成7年4月20日、「ニューNT協会設立合意書」を作成し、旧協会の設立に合意した。同合意書には、NT工法及びニューNT工法の知的所有権、保有技術、及びそれらのノウハウを保持管理することを図り、更に同工法の発展、普及、研究開発等をするとともに、工法の管理体制を確立することを目的として、旧協会の設立に合意したこと、上記3社は、旧協会の会則を遵守し、相互扶助、互恵の精神に則り、旧協会の目的に沿って互いに協力し、会員の技術的・経済的地位の向上に寄与するものとして合意することが記載されていた。(乙第17号証) イ 旧協会は、設立当初は、正会員が原告、K3、被告NYKであり、理事長は被告NYK代表取締役のP5であり、所在地は、大阪市<以下略>であった。 平成7年5月、原告、K3、被告NYKの他にK2が旧協会の正会員となった。 (9) 第三者との係争等 ア 第一特許権については、P10を専用実施権者とする専用実施権設定登録がされていたところ、原告は、平成6年3月23日、P10に対する処分禁止の仮処分命令(大阪地方裁判所平成6年(ヨ)第851号)を取得し、同年5月30日、その旨の登録がされた。原告は、P10に対する専用実施権設定登録抹消登録手続請求訴訟を提起して勝訴し、P10の専用実施権設定登録は、平成9年10月20日、抹消された。(甲第56号証、乙第55号証の2) イ 平成7年9月19日の日経産業新聞に、広島県尾道市に所在するK6がP10から第一特許権の専用実施権を購入し、自らNT工法を実施するとともに、中国地方に代理店を置いてNT工法の一層の普及を図る旨の記事が掲載された。原告代理人のP7弁護士は、K6に対して警告書を送付し、原告がP10に対して第一特許権の専用実施権設定登録抹消登録手続請求訴訟を提起して係属中であり、原告が同訴訟で勝訴した場合には、原告がK6に対して第一特許権の侵害による損害賠償を請求する旨警告した。(甲第55、第56号証) (10) 費用の分担等 ア 原告は、平成5年12月9日から平成7年8月7日までに、K5特許事務所に対し、第一特許権の登録名義を原告に移転するための費用、第一商標の出願費用及び登録料、第二商標の出願費用及び登録料等として、合計約124万円を支払うとともに、同事務所に対する歳暮、中元等の費用を負担し、それらの合計は127万7822円であった。(乙第2ないし第4号証) イ 原告、K3、K4は、@NT工法について日本建築センターの評定を取得するために上記3社が負担していた費用合計1666万7472円、A第一特許権の登録名義の移転費用、第一商標及び第二商標の出願費用及び登録料等として原告がK5特許事務所に対して負担した費用合計127万7822円(前記ア)、BP10に対する専用実施権設定登録抹消登録手続請求訴訟等に要した費用として原告が負担していた428万8688円を、上記3社がそれぞれ3等分して負担することとし、平成7年9月26日、各社のそれまでの立替分との差引額及び支払先が明らかにされ、その後清算が行われた。(乙第5号証、第109号証) ウ 原告、K3、K4は、平成7年11月、第一特許権について覚書を作成し、@第一特許権は原告の名義で登録されているが、実質は原告、K3、K4の共有であり、その持分は各3分の1であることを互いに確認すること、A第一特許権に関して係属中である原告のP10に対する専用実施権設定登録抹消登録手続請求訴訟の終了後、第一特許権の登録を原告、K3、K4の共有名義にすること等について協議すること、B第一特許権に関する原告とP10との間の本案訴訟、仮処分に関する訴訟費用、弁護士費用等一切の費用は、原告、K3、K4が平等に負担することを約した。(乙第41号証) エ 原告代理人のP7弁護士は、平成9年12月26日、原告に対し、P10に対する仮処分申立事件及び専用実施権設定登録抹消登録手続請求事件並びにP3に対する仮処分申立事件の費用、着手金、報酬の合計が537万7408円である旨の計算書を送付した。(乙第47号証) (11) 旧協会の組織 ア 旧協会会則 旧協会においては、「ニューNT工法協会会則」(以下「旧協会会則」という。)が定められた。旧協会会則は、設立当初は、旧協会の名称、目的などを定めた第1章「総則」、会員、会費などを定めた第2章「会員」、理事等の任命、任期、事務局の行う事務などを定めた第3章「事務局」、総会、理事会等の会議の構成、権能などを定めた第4章「会議」、技術開発等のために設けられた技術開発委員会について定めた第5章「技術開発委員会」、ニューNT工法に習熟した技術者の教育訓練、資格取得のために設けられた溶接技術者選定委員会について定めた第6章「溶接技術者選定委員会」、資産の構成、管理、予算、決算等について定めた第7章「資産及び会計」、会則の変更及び解散について定めた第8章「会則の変更及び解散」、第9章「雑則」、並びにニューNT工法協会組織図からなっていた。 (甲第3号証) 平成11年当時の旧協会会則は、第3章の題名が「役員及び事務局」とされ、第5章「運営委員会」として、旧協会の運営に当たる運営委員会の構成、権能等が定められ、第6章「技術開発委員会」、第7章「溶接技術者選定委員会」、第8章「資産及び会計」、第9章「会則の変更及び解散」、第10章「雑則」という構成であったが、設立当初の旧協会会則の規定は、ほぼそのまま維持されていた。 (甲第46号証) イ 旧協会の構成 (ア) 旧協会会則によれば、旧協会の会員は、正会員、準会員、賛助会員、 特別会員からなり、正会員は、特許権者又は評価取得者、準会員は、旧協会の目的に賛同して、通常実施権を許諾され、又はニューNT工法の実施資格の認定を受け、正会員のいずれかと施工協力契約を行う個人若しくは法人(平成11年当時の旧協会会則では、「通常実施権を許諾され」という部分は削除された。)、賛助会員は、旧協会の目的に賛同して協力する個人又は法人、特別会員は、旧協会の目的に賛同して理解、指導、協力が得られる個人又は法人、及び学識経験者とされ、会員の種類によって会費が異なっていた。(甲第3号証、第46号証) 平成8年11月12日当時の旧協会の会員は、正会員が原告、K3、K2、被告NYKであり、賛助会員が株式会社K8、K9株式会社であり、特別会員がP8、P12であった。また、特別会員にP13が加わることもあった。(乙第19号証) (イ) 旧協会には、事務局の他に溶接技術者選定委員会、技術開発委員会が置かれ、平成8年11月12日当時の事務局の構成は、理事長がP5、副理事長がP14(K2大阪建材部部長)、理事(運営理事)がP15(K3代表取締役社長)、P16(原告代表取締役社長)、P17(被告NYK代表取締役社長)、P8、P13(K9取締役営業部長)、運営理事がP18(K3常務取締役)、P19(K2大阪建材部副部長)、P12、監事がP20(K2大阪建材部副部長)であり、溶接技術者選定委員会の構成は、委員長がP5、副委員長がP13、委員がP18、P19、P16、P17、P12であり、技術開発委員会の構成は、委員長がP12、副委員長がP13、委員がP18、P19、P16、P17であった。また、運営理事にP21(被告NYK専務取締役)が加わり、技術開発委員会が、委員長P16、副委員長P12、委員P18、P19、P17、P13とされたこともあった。(乙第19号証) (12) 第一特許権等の共有契約 ア 原告、K3、K2、K4は、平成10年3月31日、第一特許権につき特許共有契約を締結し、旧協会は、上記4社と、同契約に拘束されることに合意した。同契約には、次の趣旨の条項が定められていた。(甲第20号証) 2条 (1) 原告は、第一特許権の持分の4分の1ずつをK3、K4及びK2に譲渡し、第一特許権を共有する。そのため、原告、K3、K4及びK2は、第一特許権の特許権者の名義変更・追加の手続を行い、かつ特許登録令33条に従って、持分の定め、及びK4は原告、K3及びK2の同意のない限り特許発明の実施をすることができない旨の定めを登録する手続を行うものとする。この名義変更・追加の手続に要する費用は、原告、K3、K4及びK2がそれぞれ均等に負担する。 (2) K4は、原告、K3及びK2の同意のない限り、共有となった第一特許発明を自ら実施しない。 (3) 原告、K3、K4及びK2は、共有となった第一特許権について、2条(1)に定める特許権者の名義変更・追加の手続がされた日から5年間は分割を請求しないことに同意する。 (4) K3、K4及びK2は、本契約締結後直ちに第一特許権に関する一切の書類及び2条(1)に定める手続に必要な一切の書類を原告に引き渡すものとし、原告は、第一特許権に関する2条(1)に定める手続を善良なる管理者の注意義務をもって行うものとする。 (5) 原告、K3、K4及びK2は、他の共有者全ての同意なしに第一特許権を他に譲渡してはならないものとする。 (6) 原告、K3及びK2は、共有となった第一特許権につき、K4が被告NYKに対して通常実施権(実施地域は日本国内全域、実施期間は特許有効期間、 実施内容は全部)を許諾することに同意し、許諾に際しては、原告、K3、K4及びK2が同意する内容の通常実施権設定契約を、原告、K3、K4、K2、被告NYK間で締結するものとする。 (7) 2条(6)の他、第一特許権の実施、管理等については、旧協会会則に従うものとする。 3条 (1) 本契約の有効期間中に、原告、K3、K4又はK2が、単独又は共同(これら4社以外の第三者との共同を含む)で、第一特許権に係る発明及びノウハウに関連して新たに改良、発明、考案した技術、意匠については、原告、K3、K4又はK2のいずれかが工業所有権の出願を要請したときは、必要事項を協議し、 合意を得たものについて、原告、K3、K4及びK2が共同して工業所有権の出願をするものとする。その際には、2条の規定を準用する。 (2) (1)における出願費用、登録費用は、原告、K3、K4及びK2がそれぞれ均等に負担する。 4条 (1) K3、K4及びK2は、2条(1)に定める第一特許権の一部譲渡及び本契約における原告の合意の対価として、原告に対しそれぞれ914万4000円を支払う。 (2) 2条(6)によって第一特許権に関し通常実施権を被告NYKに許諾する場合のランニングロイヤリティーについては、原告、K3、K4、及びK2が協議の上決定する。 5条 (1) 旧協会は、原告、K3、被告NYK及びK2が第一特許権を実施する上で必要なすべての情報、資料その他を提供し、かつ技術的な面において協力し、 原告、K3、被告NYK及びK2を援助するものとする。 (2) 旧協会は、原告、K3、被告NYK及びK2が第一特許権を実施できるように、原告、K3、被告NYK及びK2に対し、第一特許権に係るノウハウを開示、提供し、技術指導を行うものとする。 (3) 5条(1)、(2)に関する事項の詳細は、旧協会にて別途定めるものとする。 6条 第一特許権の登録を維持するための費用については、原告、K3、K4及びK2がそれぞれ均等に負担するものとする。 7条 第一特許権につき、第三者より侵害を受けたり、侵害の申立てを受けるなど、第三者との間に紛争が生じた場合には、原告、K3、K4及びK2は、協力して紛争の解決に当たるものとする。 9条 原告、K3、K4及びK2は、他の共有者の書面による承諾を得ずに、 本契約に基づく権利、義務を第三者に譲渡、引受させてはならない。 11条 本契約は、第一特許権の有効期間中、効力を有するものとする。 イ K2は、平成10年3月18日ごろ、上記特許共有契約4条(1)に定める負担を実行するため、原告、K3、K4に清算額(それぞれ304万8000円)を支払った。(乙第45号証) ウ 第一特許権については、平成10年6月22日、その持分の一部を原告からK3、K4、K2に移転する旨の移転登録がされた(乙第20号証、第55号証の2)。 (13) 第一特許権の通常実施権許諾契約 原告、K3、K2、被告NYK及びK4は、平成10年6月30日、K4が被告NYKに対して、原告、K3、K4及びK2が共有する第一特許権の通常実施権を許諾する通常実施権許諾契約を締結した。同契約には、次の趣旨の条項が定められていた。(乙第1号証) 2条 (1) 原告、K3及びK2は、K4が被告NYKに対して、実施地域を日本国内全域、実施期間を特許有効期間、実施内容を全部とする通常実施権を許諾することに同意する。被告NYKは、第三者に対し再実施許諾しないものとする。 (2) K4は、原告、K3及びK2の同意のない限り、自ら第一特許権を実施しないものとする。 4条 (1) 本契約の有効期間中に、被告NYKが、単独又は共同(原告、K3、 K2、K4以外の第三者との共同を含む)で、第一特許発明及びこれに関するノウハウに関連して新たに改良、発明、考案した技術、意匠については、第一特許権の特許権者の共有に帰属するものとし、第一特許権の特許権者は必要事項を協議し、 合意を得たものについて、共同して工業所有権の出願をするものとする。 (2) 4条(1)における出願費用については、第一特許権の特許権者がそれぞれ均等に負担するものとする。 5条 第一特許権につき、第三者より侵害を受けたり、侵害の申立てを受ける等、第三者との間に紛争が生じた場合には、第一特許権の特許権者及び被告NYKは、協力して紛争の解決に当たるものとする。 9条 本契約は、第一特許権の有効期間中、効力を有するものとする。 (14) 商標登録費用等 ア 原告は、平成10年12月3日、K5特許事務所に対し、第一商標の拒絶査定不服審判の成功謝金、納付手数料、登録料等の合計として25万6000円を支払った。(乙第11号証) 原告は、平成10年12月24日、旧協会に対し、第一商標の登録に要した費用として、上記25万6000円を含む29万6210円を請求し、旧協会は、平成11年2月25日、原告に対し、29万6210円を振り込んだ。(乙第10号証、第12号証) イ 原告は、平成11年1月18日、K5特許事務所に対し、第二商標の登録の成功謝金、納付手数料、登録料等の合計として11万8250円を支払った。 (乙第7号証) 原告は、平成11年3月5日、旧協会に対し、第二商標の登録に要した費用として、上記11万8250円を含む12万3750円を請求した。(乙第6号証) また、原告は、旧協会に対し、平成11年1月28日に東京の日本建築センターに出張した際の手土産、タクシー、飲食の代金の立替分として合計6050円を請求した。(乙第8号証) 旧協会は、平成11年3月29日、原告に対し、上記12万3750円と6050円の合計12万9800円を支払った。(乙第9号証) ウ 原告は、平成11年10月21日、旧協会に対し、第一特許権と本件実用新案権の登録料合計14万8900円、日本建築センターの追加評価に必要な試験に要した費用合計15万1200円を請求し、旧協会は、同年12月6日、原告に対し、これらの合計30万0100円を支払った。(乙第65ないし第67号証) エ 原告は、平成14年2月14日、トンボスリーブについての意匠登録第1113580号の意匠権の第2年分の登録料8500円を特許庁に対して支払い、 旧協会は、同年7月末の清算金の分配の際、この金額を含めて、清算金を原告に支払った。(甲第5号証) (15) 旧協会の活動等 ア 旧協会の会費 (ア) 原告、K3、K2、被告NYKは、平成8年6月から平成14年7月まで(ただし、K3については平成14年3月まで)、旧協会に対し、会費及び研究開発等に要する臨時会費を支払っていた。(乙第102ないし第108号証の各1ないし4) (イ) 平成5年から平成14年3月末まで、NT工法又はニューNT工法の開発実験、試験、日本建築センターの評定取得に要した費用は合計3115万1000円であり、特許権、商標権、意匠権等の出願、登録の維持に要した費用は合計417万1000円であり、これらの合計3532万2000円のうち233万2000円をNT工法協会が負担し、その余は正会員4社が負担した。正会員4社がそれぞれ負担した金額は、平均約824万円であり、そのうち特許権、商標権、意匠権等の出願、登録の維持に要した費用は、約104万円であった。(乙第102ないし第108号証の各1ないし4、第109、第110号証、第122号証) (ウ) 旧協会は、平成10年度の研究開発実験に要した費用275万5509円のうち69万6254円を協会財産から支払い、残余の205万9255円を正会員4社が負担した。 (エ) 旧協会は、平成11年11月20日、原告に対し、同月分会費等18万6000円、及び臨時会費として日本建築センターの追加評価に必要な強度試験の費用、K5特許事務所に支払った特許登録料等7万5025円を請求し、被告NYKに対し、臨時会費として日本建築センターの追加評価に必要な強度試験の費用、K5特許事務所に支払った特許登録料等7万5025円、溶接工選定試験費用1万5000円を請求し、K3及びK2に対し、それぞれ、同月分会費18万円、 及び臨時会費として日本建築センターの追加評価に必要な強度試験の費用、K5特許事務所に支払った特許登録料等7万5025円を請求した。(乙第68ないし第71号証の各1、2) イ 旧協会における技術開発等 (ア)a 旧協会の理事であったP8は、平成6年までK10株式会社に勤務し、一級建築士の資格を有していたが、退職後、理事として旧協会の運営に当たるとともに、ニューNT工法に関する技術の開発や評定の取得に尽力した。P8は、 ニューNT工法を改良した鉄筋の溶接継手工法を開発し、特許出願のために明細書案などを作成し、K11特許事務所と、明細書の内容について調整等を行った。原告は、これについて、K11特許事務所のP22弁理士らを代理人として、平成12年2月1日、特許出願を行い(特願2000-24139号、発明の名称 鉄筋溶接継手工法)、同年8月3日にも特許出願を行った(特願2000-235715号、発明の名称 鉄筋の溶接継手工法とその溶接部探傷方法)。(乙第79ないし第83号証) b また、P8は、ニューNT工法の改良型スリーブ(トンボスリーブ)を開発し、K11特許事務所と、意匠登録出願の願書、添付図面について調整を行った。原告は、これについて、K11特許事務所のP22弁理士らを代理人として、平成12年5月2日、意匠登録出願を行い(意願2000-11799号)、 平成13年4月27日、意匠登録を受けた(意匠登録第1113580号)。(乙第52号証、第76ないし第78号証) c 上記a、bの工業所有権の出願費用等は、旧協会が支出した。(乙第73号証、第99号証) (イ)a 原告、K3、K2、被告NYKは、平成13年6月20日、日本建築センターに評定申込みを行い、同年9月19日、鉄筋の種類SD490につき、 継手の性能がA級であるとの追加評定(評定番号BCJ-RC0011-01)を受けた。(甲第4号証、乙第18号証) b 旧協会が日本建築センターから鉄筋の種類SD490について追加評定を受けたことは、平成13年10月29日の日刊建設工業新聞の記事に掲載され、同記事には、ニューNT工法協会の正会員4社(原告、K3、K2、被告NYK)がニューNT工法についての特許権、商標権を共有していることが記載されていた。(乙第131号証) c 旧協会は、平成13年4月10日、「UT検査改良型継手スリーブの開発と今後の継手スリーブの取扱いについて」と題する文書を会員に配布し、継手スリーブの取扱い規定を設けたこと、旧協会が指定したメーカー以外が製造したスリーブを使用してはならないことを通知した。(乙第126号証の1、2) ウ 旧協会の取引関係 (ア) 旧協会は、事務局に充てるため、平成10年9月4日ごろ、K12株式会社との間で、同社所有の大阪市<以下略>を賃借する旨の賃貸借契約を締結し、有限会社K8が連帯保証人となった。旧協会は、同日、K12株式会社に対し、貸室保証金として144万円を支払った。(乙第38、第39号証) (イ) 旧協会は、平成12年6月、コピー機についてリース契約を締結し、 同契約は、被告現協会が引き継ぎ、現在まで継続している。(乙第30号証の1、 2、乙第31号証) 旧協会は、平成14年3月、電話機等についてリース契約を締結し、同契約は、被告現協会が引き継ぎ、現在まで継続している。(乙第37号証) エ 旧協会の出納 (ア) 旧協会は、平成8年5月7日、株式会社K13銀行にニューNT工法協会名義の普通預金口座を開設し(株式会社K13銀行は、その後、株式会社K14銀行に商号変更し、更にその営業は、株式会社K15銀行に譲渡された。)、旧協会が有する金銭の出納を管理してきた。(乙第90ないし第97号証) (イ) 平成14年7月31日当時、上記預金口座には約488万円が残っていたが、そのうち清算金(後記(18)キ、ク)として支払われたのは220万円余りであり、清算金を分配した後も旧協会の預金は存続した。(乙第32号証、第42号証) オ 旧協会の第三者への警告等 (ア) 旧協会は、平成10年9月4日、日刊建設工業新聞に「鉄筋の溶接継手工法についてのお知らせ」という題の広告を掲載した。同広告には、次の趣旨が記載されていた。(乙第127号証) 「ニューNT工法は、定格半割型スリーブ継手金具を用いたエンクローズ方式の溶接継手工法として一番長い歴史を有している。そして、当工法は、平成元年、日本建築センターの評定を受け、かつ平成2年に特許が登録されたNT工法をベースに開発したものである。 その後、品質、性能の向上と適用範囲拡大を目的とし、新たにニューNT工法として、平成7年、日本建築センターの評価を取得した。現在までの施工実績は1000件を超え、施工累計は約500万個所である。 当工法は、ニューNT工法協会の指導と保障のもとに、以下の特徴による施工とサービスを約束している。 @ 会員会社は、日本建築センターの評価取得者であり、『A級継手』の品質保証と認定された標準仕様書に基づき、責任施工を行う。 A 所属する溶接技術者は、JIS資格を有し、かつ当協会の教育訓練・実技試験の合格者であり、協会認定の資格証明を保持している。 B 当協会で製作した刻印のある定格スリーブを使用している。 C 会員会社は、当工法にかかわる特許権を共有している。 D 当協会は、構造体の技術進化に対応すべく、上位鋼種SD490の溶接継手の実用化研究を進めている。 ここ2〜3年来各方面で当工法の亜流や類似工法の売り込みが多発している。 鉄筋の溶接継手工法の選定の折りには、日本建築センターの評定・評価を得ているか、組織的な品質管理・性能保証・溶接技術者の資格認定などがなされているか、また特許権侵害の問題はないかなどを十分検討、注意の上、採用されたい。」 (イ) 旧協会は、平成10年9月ごろ、上記広告と同趣旨の「鉄筋の溶接継手工法についてお願い」と題する文書を、建設会社等の構造設計担当部門長、設計監理担当部門長宛に送付した。(乙第128号証) (ウ) 旧協会は、平成12年7月19日、平成13年7月11日にも、日刊建設工業新聞に、類似工法に注意するよう呼びかける広告を掲載した。(乙第129、第130号証) (エ) 原告は、平成11年3月、有限会社K16に対し、第一商標又は第二商標と同一又は類似の「NT工法」又は「メッシュNT工法」という標章の使用中止を求める警告をした。(甲第57号証) カ 旧協会の定時総会 (ア) 旧協会の会則によれば、旧協会の通常総会は毎年6月に開催することとされていた。旧協会は、平成9年6月12日に平成9年度定時総会、平成10年6月30日に平成10年度定時総会、平成11年6月18日に平成11年度定時総会、平成12年7月14日に平成12年度定時総会、平成13年7月6日に平成13年度定時総会を開催し、前年度(前年4月ないし当年3月)の事業及び収支決算の報告、当年度の事業計画案及び収支予算案の報告、役員改選などの議案について、議事及び採決が行われた。事業報告においては、実施した事業として、技術開発、溶接工の養成、P10に対する専用実施権設定登録抹消登録手続請求訴訟、商標の無断使用に対する警告、特許の取得などが報告された。(甲第3号証、乙第22号証、第72、第73号証、第98、第99号証) (イ) 平成12年7月19日の日刊建設工業新聞には、ニューNT工法協会の平成12年度定時総会の開催を紹介する記事が掲載され、平成13年7月11日の同新聞には、平成13年度定時総会の開催を紹介する記事が掲載された。いずれの記事にも、旧協会の正会員4社である原告、K3、K2、被告NYKが、ニューNT工法に関する特許権、商標権を共有している旨記載されていた。(乙第129、第130号証) キ 旧協会においては、ほぼ毎月、運営理事会が開かれ、技術事項の検討、溶接工の養成、顧問の報酬など、旧協会の運営に必要な事項を協議し、決議していた。(乙第22号証、第72、第73号証、第98、第99号証) (16) K3から原告への営業の引き継ぎ ア K3は、平成14年2月25日、原告に対し、「ニューNT工法に関わる商権及び要員のお引き受け検討お願いの件」という題の文書を送付し、K3が廃業するのに伴い、施工中の現場、従業員などを原告が引き継ぐよう願い出た。(甲第43号証) イ 原告とK3は、平成14年3月6日、取引先に対し、「ニューNT工法営業および施工統合のお知らせ」と題する文書を送付し、同月11日からK3の営業を原告が引き継ぐことを通知した。(甲第44号証) ウ K3は、平成14年3月6日、旧協会に退会を申し出た。 (17) 溶接訓練センターの設立 ア 旧協会においては、平成14年2月ごろから、旧協会の理事長であり被告NYKの代表者であるP5らが、ニューNT工法を施工する溶接工を養成する溶接研修センターの設立を提唱し、事務局は、溶接研修センターの設立に伴う助成制度などを調査していた。旧協会は、同年3月4日、会員に対し、助成対象条件、助成対象内容、溶接研修センター設立の目的とメリットなどを記載した「ニューNT工法『溶接研修センター』設立」と題する文書を送付した。(甲第28号証) イ 原告は、平成14年3月6日、旧協会に対し、「ニューNT工法『溶接研修センター』設立について」と題する書面を送付し、工業高校、専門溶接技術工業高校の卒業生を毎年雇い入れ、現場に出ながら溶接の練習又は講習を義務づけているので、溶接研修センターの設立は、現在のところ特に必要と考えていない旨を通知した。(甲第29号証) また、原告は、旧協会の職員給与の削減等による経費削減を主張していた。 ウ P5は、旧協会の費用で溶接研修センターを設立することを断念し、被告NYKの費用で溶接研修センターを設立することにした。被告NYKは、平成14年5月21日、大阪府職業能力開発協会会長に対し、被告NYKの技術部長を職業能力開発促進法12条の規定による職業能力開発推進者に選任することを届け出た。大阪府知事は、同月23日、「ニューNT工法溶接訓練センター P5」を名宛人として、普通職業訓練短期過程の溶接技術科初級コース、溶接技術科上級コースを職業能力開発促進法24条1項の規定により認定した。(乙第88、第89号証) (18) 分裂の経緯 ア 平成14年6月11日、旧協会の理事会が開かれ、旧協会の理事長であり被告NYKの代表者であるP5、原告代表者、K2のP23、旧協会事務局のP8、P13が出席した。原告代表者は旧協会からの退会を表明し、P5から慰留を受けたが、退会の意思が固く、繰越金の配分をも要求した。P5は、原告が退会しても被告NYKが責任をもって旧協会を存続させる旨、剰余金を返還するのであれば、正会員と準会員に公平に配分する旨述べた。特許権、商標権等については、後日、覚書又は協定書を作成することが決まり、事務局が案を作成して送付すること、平成14年度の総会は行わず、決算書、業務報告書を作成し、郵送して総会に代えることとされた。K2のP23は、K2としては退会する気持ちはないが、剰余金の配分は受けたいと表明した。(乙第48号証) イ 旧協会は、平成14年6月24日、原告とK2に、同月18日付けの覚書案を送付した。同覚書案には、同月11日の理事会の出席者として、原告代表者、 K2のP23、被告NYK代表者、旧協会事務局のP8、P13が記載されており、同理事会で協議の結果決議された条項として、次のような事項が記載されていた。(乙第49号証の1、2、第50号証、第51号証の1、2) @ 原告は都合により、旧協会を離れて独自で従来どおり、ニューNT工法による鉄筋の溶接継手の施工にかかわる事業活動を行う。旧協会は、構成を変えて存続する。(1項) A 旧協会の維持継続の任には被告NYKが当たり、協会の運営のために一新して必要な会員と事務局員とにより協会を再構築する。(3項) B 日本建築センターより取得した評価、評定に基づく施工権及び平成7年協会設立後に出願登録した特許権、商標権、意匠権などの権利は、旧協会と評定を取得した4社の共有とする。メンテナンスフィーは権利者が負担する。(4項) C 旧協会のP5理事長、P8事務局長が、平成14年3月6日、K3のP15社長からの口頭による退会届を受理したことも、この覚書により各関係者は追認した。(5項) D 事務処理について(6項) (イ) 平成14年度総会(覚書案には「平成13年度総会」と記載されているが、後記エと同様に、「平成14年度総会」の誤記であると認められる。)は行わず、決算書、会務報告などは事務局が作成し、関係会社に郵送する。 (ロ) 旧協会の会計は平成14年7月末日をもっていったん清算する。事務所の移転に必要な費用を含め清算書を作成し、旧協会と利害関係のない第三者(税理士など)の監査を受ける。 (ハ) 原告に対しては、平成13年度全会費収入(開発分担金を除く)に原告の納入会費比率を乗じて算定した額を清算金から還付する。 (ニ) 旧協会の保有する什器備品等は、残存価値について第三者の評価を受け、存続する「ニューNT工法協会」に移転する。 (ホ) 旧協会が保有している仕様書、パンフレット類は希望者に頒布する。残存する他の物品は、新規協会に移転する。 ウ K2は、平成14年6月26日、旧協会、被告NYK、原告宛てに、「6/11の理事会の内容にそって作成しました。確認願います。」という記載をして覚書案を送付した。同覚書案は、K2、原告、被告NYK、旧協会の記名がされており、同覚書案には、次のような条項が記載されていた。(甲第52号証) @ 旧協会は6月末をもって解散する。ただし、清算業務のため、旧協会及び旧協会事務局は7月末まで存続させる。(1項) A 日本建築センターより取得した評価・評定に基づく施工権及び平成7年協会設立後に出願登録した特許権、商標権、意匠権などの権利は、評定を取得した4社の共有とする。そのメンテナンスにかかわる費用については、権利者の応分負担とする。(2項) B 旧協会解散後の客先への各種サービスについては、各施工会社が独自で行うものとする。ただし、評定・評価のメンテナンス、商標・意匠などの権利の管理、免許発行・更新の手続については、正会員3社(原告、被告NYK、K2)で協議するものとする。(3項) C 事務処理について(4項) (1) 平成14年度の総会は行わない。決算書・会計報告については事務局で作成し、関係会社に郵送する。 (2) 旧協会の会計については、6月末日をもって締め切り、7月末までに清算を行う。 (イ) 会費徴収は6月分までとし、7月以降、会費徴収は行わない。 (ロ) 準会員の預託金については7月中に返還する。 (ハ) 事務局閉鎖に伴う費用を算出し、7月末までに清算を行う。 (ニ) 旧協会が保有している仕様書・パンフレット等については、希望者に配布する。 (ホ) 旧協会が保有している什器備品等は、残存価値を算出し、7月末までに清算を行う。 (へ) (イ)ないし(ホ)の清算終了後の残金については、徴収比率に応じて正会員4社に分配する。 エ 旧協会は、平成14年7月15日、会員に対し、「平成13年度決算報告書送付の件」と題する文書を送付し、例年、定時総会は7月中旬に開催してきたが、平成14年度は総会は行わず、決算書及び事業報告書のみを送付する旨通知するとともに、平成13年度定時総会議案書(甲第26号証に「平成13年度定時総会議案書」と記載されているのは、平成13年7月6日付けの乙第99号証に「平成13年度定時総会議案書」と記載されていることからして、「平成14年度定時総会議案書」の誤記であると認められる。)及び平成13年度収支計算書を送付した。(甲第25、第26号証) オ 旧協会は、平成14年4月1日から同年7月26日までの収支について、 未払の事務所敷引、事務所解約金、リース解約金等を支出の項目に含めて平成14年度7月26日収支計算書を作成し、繰越残高を明らかにした。また、平成13年7月から平成14年6月までの会費の入金及び未収入金を明らかにする表を作成した。さらに、ファックス、コピー機、電話機などの割賦金及びリース代金の平成14年7月末日現在の残額を計算した。(甲第27号証、第30号証) カ 旧協会は、平成14年7月31日、会員に対し、「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書を送付した。同文書には、同文書記載の事由により、同月末日をもって協会をいったん清算せざるを得なくなり、同年8月1日から協会を再編することとなった旨記載されており、清算に至った事由として、次のとおり記載されていた。(甲第5号証) @ 諸般の事情により会員会社が旧協会を退会することとなった。 A 平成14年7月31日をもって旧協会の会計を閉鎖し、清算することとなった。 B 協会の維持継続の任に被告NYKが当たり、一新して協会を再編する。 C ニューNT工法の施工権は、評定を取得した4社の共有とし、特許権、 商標権、意匠権等などは4社と協会の共有とし、メンテナンスフィーは権利者の持分負担とする。 D 平成14年8月1日より新編成の「ニューNT工法協会」を立ち上げる。所在地は従来どおりの予定である。 E 平成14年7月31日決算の清算配分金は、評定取得者に振り込む。未収金がある場合は相殺する。預託金は、直接預託者に振り込む。 キ 旧協会は、平成14年4月1日から同年7月31日までの収支について、 未払の退職慰労金、事務所敷引、事務所解約金、リース解約金等を支出の項目に含めて作成した平成14年度7月31日収支計算書を作成し、その繰越残高として計上された221万7032円を、正会員と準会員に、平成13年7月から平成14年6月までの納入会費の納入比率に応じて分配することとした。旧協会は、会員に対し、前記カの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書とともに、平成14年度7月31日収支計算書、及び清算に伴って支払うべき金額について算出した結果を記載した表を送付した。(甲第5号証) ク 原告は、平成14年8月9日、旧協会から清算金34万6000円を受領し、K2は、同日、旧協会から清算金101万円を受領した(甲第6、第7号証)。 しかし、退職慰労金、事務所敷引、事務所解約金、リース解約金などは、 実際は支出されなかった。 ケ 被告現協会は、平成14年8月1日、K12株式会社に対し、旧協会の事務局に充てている大阪市<以下略>の賃貸借契約書の賃借人名義及び貸室保証金預り証の宛名の名義を「ニューNT工法協会」から被告NYKに書き替えることを申し入れる念書を差し入れた。K12株式会社と被告NYKとの間では、平成14年8月1日付けで、賃借人名義を被告NYKとし、連帯保証人をP8とする賃貸借契約書、及び宛名を被告NYK名義とする貸室保証金預り証が作成された。しかし、 同事務所は、引き続き被告現協会の事務所として使用されている。(甲第49ないし第51号証) (19) 分裂後の状況 ア 被告現協会は、平成14年8月6日、原告、K3、K2、被告NYKに対し、「協定書締結の件」と題する文書を送付した。同文書には、特許権、実用新案権、意匠権について共有の登録をすることは可能であるが、多大な費用と2か月以上の期間が必要と思料されること、評定にかかわる施工実施権、建設省新技術登録などは共有の登録になじまないことから、上記4社と被告現協会が協定を締結し、 公証人による宣誓認証証書を作成することとなった旨記載されていた。 同文書に添付された協定書案には、@日本建築センターの評定(評定番号BCJ-RC0011-01)にかかわる施工実施権、第二特許権、実用新案登録第1932898号の実用新案権、意匠登録第1113580号の意匠権、出願中の特許を受ける権利(特願2000-14384号、特願2000-15373号、特願2000-24139号、特願2000-235715号)を上記4社の共有とすること、A第一商標権、第二商標権、建設省新技術登録(平成11年2月15日登録、登録番号KK-980086)、平成7年の協会設立後に確定し作成したノウハウ、印刷物の著作権、研究成果物、フロッピーディスク等に保存されたデータを上記4社と被告現協会の共有とすることなどが記載されていた。(乙第52号証、第53号証の1、2) イ K2は、平成14年9月19日、被告現協会に対し、協定書締結の件についてファックスで回答し、協定書締結の趣旨には異存がないが、問題点を検討、調整するように求め、問題点として、@実質的に経営が破綻しているK3を協定書に連名するのは後々の問題となるので、10月ごろまで様子をみてからでよいのではないかということ、AニューNT工法にかかわる審議・決定については、共有者の相談事項とし、協会名を入れるべきではないことを指摘した。(乙第54号証) ウ 被告現協会は、平成14年9月11日、会員に対し、「臨時総会のご案内」と題する文書を送付した。同文書には、同年10月4日に臨時総会を開催することの他、原告が自己都合により旧協会から退会したこと、その要請もあって協議の結果、7月末日に正会員、準会員に対して会費、預託金の清算を完了したこと、 今後、原告は被告現協会と関係がないこと、被告現協会は再編を行い、協会として技術スタッフも充足し、ユーザーに対する技術サービス証明証の改訂、発行仕様書の改訂など従来どおりの機能をもっていることなどが記載されていた。(甲第8号証) (20) 分裂後の協会の活動等 ア 被告現協会は、平成14年9月20日、準会員である有限会社K17に対し、同年10月4日に臨時総会を開催する予定であることを通知した。(甲第9号証) イ 平成14年9月18日の日刊建設工業新聞には、被告現協会がニューNT工法溶接訓練センターを設立し、第1回生が卒業した旨の記事が掲載された。同記事には、その所在地が被告NYK内であることも記載されていた。(甲第10号証) ウ 被告現協会は、平成14年10月4日、平成14年度総会を開催し、平成13年度事業報告、決算報告、平成14年度事業計画案、収支予算案の報告が行われた。平成14年10月10日の日刊建設工業新聞には、上記総会の記事が掲載され、同記事には、原告が自己都合で被告現協会を退会し、K2も利益効率が悪いことを理由として退会の意思を表明したこと、標準仕様書の内容を一部変更し、評定取得者の名前を記入せず、従業員、施工協力会社も所属者であるという広い意味をもたせたほか、外観検査、引っ張り・曲げ、超音波試験のうち、曲げ試験は規定からはずしたことなどが記載されていた。(甲第11号証、乙第100号証) エ 被告現協会は、平成14年10月8日、ゼネコン各社に「鉄筋の溶接継手工法について(お知らせ)」と題する文書を送付した。同文書には、同年5月大阪府の認定を受けて「ニューNT工法溶接訓練センター」を設立したこと、同年7月、原告が自己都合により被告現協会を退会し、同年9月末、K2も被告現協会を退会したこと、原告とK2の名義で、協会が解散したとか、別に協会、委員会を設けるなどと記載した文書を関係先に配布しているとの報告を受けたこと、今般、ニューNT工法標準仕様書を改訂し、協会発行の資格証明証も切り替えたことなどが記載されていた。(甲第12号証) オ 被告現協会は、平成14年8月分の会費、臨時会費等を、正会員である被告NYK、及び準会員、賛助会員から徴収した。K2は、同月時点において、3か月分の会費が未納であった。被告現協会は、同年7月31日まで金銭の管理に用いられてきた預金口座により、同年8月1日以後も金銭の出納を管理している。(乙第33ないし第35号証) (21) 原告及びK2の活動等 ア 原告は、平成14年10月、取引先等に、「ニューNT工法の新構成と運営について(ご報告とご案内)」と題する文書を送付した。同文書には、同年3月にK3の施工班が原告の傘下に入り、旧協会の正会員が原告、K2、被告NYKの3社になったこと、同年7月末日をもって旧協会を解散したこと、旧協会の解散は、被告NYKのP5が会員の反対を無視して同年6月に一方的にニューNT工法溶接工訓練センターを設立し運営を開始したことによること、同年8月より原告が新たに「ニューNT工法協会」を大阪市<以下略>に設立し、運営方針に賛同したK2も合流していること、ニューNT工法の日本建築センターの評定条件は、評定申込み3社それぞれの責任施工であり、評定を取得した3社が平等に権利を有していることなどが記載されていた。 原告は、取引先等に、上記文書とともに、原告とK2が「ニューNT工法協会」を設立したこと、第二商標権並びに第二特許権、第三特許権及び本件実用新案権を原告が有することを記載した文書を送付した。(甲第31号証) イ K2は、平成14年10月9日、被告現協会に対し、「ニューNT工法協会の件(回答)」と題する文書を送付した。同文書には、同年7月末日に旧協会がいったん解散し、その後被告NYKと原告がそれぞれ別個に協会を立ち上げたこと、K2は最終的に原告が組織する協会に参加すること、その理由は、ニューNT工法溶接訓練センターに賛同できず、原告が第二商標権を有するからであることなどが記載されていた。(甲第32号証) ウ K2は、平成14年10月18日、取引先に対し、「ニューNT工法および協会の件(ご報告)」と題する文書を送付した。同文書には、旧協会が、その運営等について会員間で意見の相違があったため、同年7月末日をもって解散したこと、原告及び被告NYKがそれぞれ協会を設立し、従来どおりの活動を行っており、K2は、原告の組織する協会に参加して引き続き営業活動を行うことが記載されていた。(甲第33号証) エ 原告は、平成14年10月2日、被告Aに対し、被告Aから原告に対して送付された同年8月7日付け通知書及び同年9月4日付け通知書に対する反論を記載した文書(通知書)を送付した。同文書には、「貴社は、当社がニューNT工法協会から退会したことにより、当社がニューNT工法での工事を行えなくなった等の虚偽の風説を流布し、当社の業務を妨害しているやに聞き及んでおります。元来、ニューNT工法の特許は、当社が承継取得し、その後、他3社との共有にして、その普及発展に寄与してきたものであります。また、当社は、同工法に関する財団法人日本建築センターの評定書も取得しており、当社がニューNT工法協会を退会しても、同工法により工事を行うことが出来ることは、当然のことであります。」と記載されていた。(乙第29号証) (22) 商標使用中止の警告等 ア 原告は、被告現協会に対し、平成14年11月26日、同月25日付け警告書を送付した。同警告書には、旧協会は同年6月11日開催の運営理事会決議により同月30日をもって閉鎖し、同年7月31日をもって解散したこと、したがって、被告現協会は、理事長P5、事務局長P8を新役員として組織され、被告NYKを会員とする新たに設立された、旧協会とは別個の協会であること、「ニューNT工法」の名称の使用中止を求めることなどが記載されていた。(甲第15号証の1、2) 原告は、被告NYKに対し、平成14年12月19日、上記警告書と同旨の同月18日付け警告書を送付した。(甲第16号証の1、2) イ これに対し、被告現協会は、原告に対し、平成14年12月10日付け回答書を送付し、旧協会は解散しておらず、被告現協会と旧協会が同一の協会であることなどを主張した。(甲第17号証) また、被告NYKは、原告に対し、平成15年1月7日付け回答書を送付し、旧協会が解散していないこと、第一商標権、第二商標権を原告、K3、K2、 K4が共有すること、第二特許権、第三特許権も第一特許権と同様に上記4社が共有することなどを主張した。(甲第18号証) ウ なお、K3は、平成15年8月19日、破産宣告を受けた。(甲第53号証) 以上の事実が認められ、甲第19号証、第34号証及び原告代表者本人尋問の結果のうち、上記認定に反する部分は、採用することができない。上記認定事実に基づいて、以下、検討する。 3 旧協会の法的性質について検討する。 (1) 法人格なき社団の成立要件は、@団体としての組織を備え、A多数決の原則が行われ、B構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、かつCその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることである。そこで、旧協会がこれらの要件を備えていたかについて検討する。 (2)ア(ア) 旧協会は、会則を備え、各種の会員、委員会を有しており(前記2(11))、団体としての組織を備えていたと認められ、上記(1)の@の要件を満たす。 (イ) 旧協会は、定時総会で、前年度の事業及び収支決算の報告、当年度の事業計画及び収支予算案の報告、役員改選などの議案について、議事及び採決を行っており(前記2(15)カ)、多数決の原則が行われていたものと認められ、上記(1)のAの要件を満たす。 (ウ) 旧協会の会員には、正会員、準会員、賛助会員、特別会員の種別があり(前記2(11)イ)、正会員は、特許権者又は評価取得者とされており、特許権若しくはその持分の得喪又は評定の得喪によって正会員が変更しても旧協会は存続し得るものであった。また、他の種類の会員についても、会員の資格要件に照らして、 会員が変更しても旧協会は存続し得るものであった。したがって、旧協会は、構成員が変更しても存続するものであったと認められ、上記(1)のBの要件を満たす。 (エ) 旧協会は、会則を備えており(前記2(11)ア)、代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していたものと認められ、上記(1)のCの要件を満たす。 イ さらに、旧協会は、会員から会費を徴収し、その財産を旧協会名義の預金口座において管理し、その財産から工業所有権の出願費用、登録料に相当する金額を原告に支払うなどし、収支は定時総会に報告され、議事、採決を経ていたものであり(前記2(14)、(15))、協会の財産、会計は、会員の財産、会計とは名実ともに区別されていたものと認められる。 また、旧協会は、ニューNT工法にかかわる技術開発、特許権、意匠権等の出願の準備を行うほか、ニューNT工法の標準仕様書の発行、事務所の賃貸借契約やコピー機等のリース契約などの取引、広告の掲載などを行い(前記2(7)ア、(15))、旧協会の名義をもって、個々の会員の行為とは区別された行為を行っていたものと認められる。 ウ 以上の認定事実によれば、旧協会は、民法上の組合ではなく、法人格なき社団であると認めるのが相当である。 (3)ア 原告は、旧協会の構成員は4種類で均質を欠いており、正会員4社は準会員以下の会員をもって代替することができないから、旧協会は、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するという要件を充足していなかった旨主張する。 しかし、法人格なき社団の成立要件として、構成員の均質性までは要求されておらず、前記(2)ア(ウ)認定のとおり、旧協会においては、いずれの種類の会員についても、その変更にかかわらず旧協会は存続し得るものであったから、旧協会は、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するという要件を充足していたものというべきである。 イ(ア) 原告は、平成14年度の定時総会は、旧協会理事長P5が旧協会会員に対して不開催を一方的に通知したことにより開催されなかったのであり、定時総会を開催する旨の会則は有名無実であったから、総会の運営は確定していなかった旨主張する。 しかし、旧協会においては、会則に総会の構成、権能が定められており(前記2(11)ア)、平成9年度から平成13年度までは、毎年6月又は7月に定時総会が開催され、議事、採決等が行われていたから(前記2(15)カ)、旧協会においては、総会の運営が確定していたものと認められる。確かに、平成14年度定時総会は開催されず、旧協会が会員に対して定時総会議案書及び収支計算書を送付するにとどまったが(前記2(18)エ)、それは、同年6月11日の理事会において原告が退会を表明し、事実上旧協会が分裂することとなり、同年度定時総会を開催しないこととされたためであり(前記2(18)ア)、その後、被告現協会(後記4(2)認定のとおり、旧協会と同一性が認められる。)が同年10月4日に平成14年度総会を開催したこと(前記2(20)ウ)も併せ考えると、平成14年度定時総会が6月又は7月に開催されなかったことをもって、総会の運営が確定していなかったとはいえない。 (イ)a 原告は、旧協会は平成10年度の研究開発実験に要した費用275万5509円のうち69万6254円を協会財産から支払い、残余の205万9255円を正会員4社に負担させていたから、旧協会の財産運営は社団財産をもって引当てとしておらず、社団構成員の有限責任は確立されていなかった旨主張する。 確かに、旧協会は、平成10年度の研究開発実験に要した費用275万5509円のうち69万6254円を協会財産から支払い、残余の205万9255円を正会員4社に負担させていた。しかし、そうであるとしても、そのことから直ちに、会員の財産が旧協会の債務の引当てとされていたとは認められず、むしろ、前記(2)イ認定のとおり、旧協会の財産、会計は、会員の財産、会計とは名実ともに区別されていたものであるから、原告の上記主張は採用することができない。 b 原告は、旧協会が、平成14年7月31日付けの収支計算書の支出欄の繰越残高に計上された221万7032円を正会員と準会員に会費の納入比率に応じて分配したことをもって、旧協会の解散を裏付ける事実であるとし、そうでないとしても、社団財産の管理が確立していなかったことを裏付ける事実である旨主張する。 しかし、後記4(1)イ(イ)の認定のとおり、上記分配は、算出された剰余金の分配にすぎず、それをもって、旧協会の会計が清算されたとは認められないし、社団財産の管理が確立していなかったともいえない。また、旧協会会則に剰余金の分配や解散後の残余財産の分配について具体的に規定されていないこと(甲第3号証、第46号証)、及び旧協会の分裂の経緯(前記2(18))に鑑みれば、剰余金の分配は、原告の旧協会からの退会に際し、原告、K2らと旧協会の合意の上で、剰余金に限って分配が行われたものというべきであり、上記分配が行われたことをもって、会員が旧協会に対して旧協会の財産につき分配請求権を有していたと認めることはできない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 4 旧協会の解散の有無について検討する。 (1)ア 旧協会の分裂の経緯は、前記2(18)のとおりであり、その後の状況等は、 前記2(19)ないし(22)のとおりである。 イ(ア) 旧協会は、未払の退職慰労金、事務所敷引、事務所解約金、リース解約金等を支出の項目に含めて作成した平成14年度7月31日収支計算書を作成し、その繰越残高として計上された221万7032円を正会員と準会員に分配することとし、原告及びK2は、その分配を受けた。(前記2(18)キ、ク) (イ) しかし、旧協会の会計を清算するのであれば、旧協会の債権債務、有形無形の資産のすべてについて、その金額と承継者等が定められるべきところ、平成14年度7月31日収支計算書は、単に繰越残高を算出したものにすぎず、原告及びK2は、算出された剰余金の分配を受けたものにすぎないというべきである。 また、退職慰労金、事務所敷引、事務所解約金、リース解約金等は、繰越残高を計算するために計上されたものの、それらは実際には支出されず(前記2(18)ク)、清算金の分配後も、旧協会の預金口座には、相当額の現金が存在し、 被告現協会は、平成14年7月31日以降も、同じ銀行口座によって金銭の出納を管理している(前記2(15)エ、(20)オ)。 したがって、平成14年度7月31日収支計算書に基づく清算金の分配をもって、旧協会の会計が清算されたとは認められないというべきである。 ウ 被告現協会は、平成14年9月18日の日刊建設工業新聞に、ニューNT工法溶接訓練センター設立の記事を掲載し、同年10月4日、平成14年度総会を開催した。また、被告現協会は、正会員である被告NYK、及び準会員、賛助会員から同年8月分の会費を徴収した。(前記2(20)) 被告現協会は、平成14年8月、ニューNT工法標準仕様書を改訂し、同年9月、その改訂に係るニューNT工法標準仕様書を発行した。(甲第14号証) エ 旧協会の事務局に充てられていた大阪市<以下略>の賃貸借契約書の賃借人名義及び貸室保証金預り証の宛名の名義は、平成14年8月1日付けで被告NYKに書き替えられたが、同事務所は、引き続き被告現協会の事務所として使用された。(前記2(18)ケ) オ 旧協会が締結したコピー機、電話機等のリース契約は、被告現協会が引き継ぎ、現在まで継続している。(前記2(15)ウ(イ)) カ K2が平成14年6月26日に旧協会等に宛てて送付した覚書案(前記2(18)ウ)、K2が同年10月9日に被告現協会に送付した文書(前記2(21)イ)、原告が平成14年10月に取引先等に送付した文書(前記2(21)ア)には、 旧協会が解散したことが記載されている。しかし、旧協会が平成14年6月24日に原告、K2に送付した覚書案(前記2(18)イ)には、旧協会は構成を変えて存続する旨記載されており、原告が同年10月2日に被告Aに対して送付した書面(前記2(21)エ)には、原告が旧協会から退会した旨記載されており、旧協会自体の解散については記載されていなかった。原告が被告現協会に対して旧協会の解散を明確に主張したのは、原告が被告現協会に対して「ニューNT工法」の名称の使用中止を求めて同年11月26日に送付した同月25日付け警告書においてであった(前記2(22))。 キ 甲第3号証、第46号証によれば、旧協会の会則には、解散について、総会の議決に基づいて解散する場合は、出席会員数の過半数の同意を得なければならない(甲第3号証では40条、甲第46号証では45条)旨規定されていたことが認められるが、本件において、旧協会の総会において解散について議事、採決がなされたと認めるに足りる証拠はない。 (2) 前記3(2)認定のとおり、旧協会は、法人格なき社団であり、会員とは別個の財産、会計を有し、旧協会の名義をもって、個々の会員の行為とは区別された行為を行っていたものである。したがって、このような実態を有していた旧協会が解散したというためには、財産の面で清算が行われ、組織等の面において、会則の定めに従った解散の手続が採られ、又は会員と独立した団体の実態が失われることなどが必要と解される。 しかし、前記(1)イないしキの認定によれば、旧協会の会計は清算されておらず、その財産は存続し、旧協会を当事者とする契約等も継続しており、また、総会決議等の会則の定めに従った解散の手続は採られておらず、団体としての活動も被告現協会によって引き続き行われているものである。そうであるとすれば、旧協会が解散したものとは認められず、被告現協会は、旧協会と同一の法人格なき社団であり、旧協会は、被告現協会として存続しているものと認められる。 (3)ア 原告は、旧協会は残余財産を清算し、旧協会理事長であったP5が会員に送付した平成14年7月31日付けの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書には旧協会の解散の事実が記載されていたが、会員から何らの異議の申立てもなく、解散の事実は各会員に受け入れられていたから、旧協会の会員はすべて旧協会の解散を追認したものといえる旨主張する。 しかし、前記(1)イ認定のとおり、旧協会による清算金の支払は、剰余金の分配にとどまるというべきであるし、旧協会理事長であったP5が会員に送付した平成14年7月31日付けの「ニューNT工法協会の組織変更について」と題する文書の記載内容は、前記2(18)カ認定のとおりであり、旧協会の会計を閉鎖し清算する旨記載されていたとはいえ、会員会社が旧協会を退会することとなったこと、 協会の維持継続の任に被告NYKが当たることなども記載されており、全体としてみると、旧協会が解散したことが明確に記載されていたとは認められないから、原告の上記主張は、その前提を欠くというべきである。また、前記(2)認定のとおり、 旧協会は解散したものとは認められず、被告現協会として存続している。したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 イ(ア) 原告は、原告が「ニューNT工法の新構成と運営について」と題する文書を取引先に送付したこと、K2が取引先及び旧協会理事長であったP5に対し、「ニューNT工法協会の件」と題する文書及び「ニューNT工法および協会の件」と題する文書を送付したことなどをもって、旧協会は解散したと主張する。 確かに、前記2(21)アないしウ認定のとおり、原告、K2は上記文書を送付したが、そのことのみをもって旧協会が解散したと認めることはできない。前記(2)認定のとおり、旧協会は解散したものとは認められず、被告現協会として存続しているものというべきであるから、原告の上記主張は、採用することができない。 (イ) 原告は、旧協会が、平成14年7月31日付け収支計算書において、 未払金として、退職慰労金、預託金払戻金等を計上したことなどをもって、旧協会は解散したと主張する。 確かに、旧協会は、平成14年度7月31日収支計算書において、未払の退職慰労金等を計上した(前記2(18)キ)。しかし、退職慰労金等は実際は支出されず(前記2(18)ク)、前記(1)イ(イ)認定のとおり、清算金の支払は、剰余金の分配にすぎず、未払金の計上は、剰余金の計算のためにされたものであるから、清算金の分配をもって、旧協会が解散したとは認められないというべきである。 (ウ) 原告は、旧協会の事務所の賃貸借契約の賃借人が、平成14年8月1日、形式上も実質上も被告NYKに変更されたことなどをもって、旧協会は解散したと主張する。 確かに、旧協会の事務局に充てられている部屋の賃貸借契約書の賃借人名義及び貸室保証金預り証の宛名の名義は、平成14年8月1日付けで、「ニューNT工法協会」から被告NYKに書き替えられた(前記2(18)ケ)。しかし、同事務所は引き続き被告現協会の事務所として使用されており、上記の名義書替えの事実があることにより、旧協会は解散していないとの前記(2)の認定が覆されることはないというべきであり、原告の上記主張は、採用することができない。 5 第二商標の使用権について検討する。 第二商標の商標登録等の経緯は、前記2(6)ウ、エ認定のとおりであって、第一商標権、第二商標権の出願、登録が原告名義で行われたのは、第一特許権、第二特許権の登録名義が原告の名義になることとなっていたからである。また、原告は、 第一商標、第二商標につき、旧協会及び旧協会の会員(構成員)に、黙示に通常使用権を許諾していたものである。そして、原告は、原告の登録名義であった他の工業所有権の出願費用、登録料と同じように、第二商標の登録に要した費用を旧協会に請求し、旧協会がこれを負担していたものである(前記2(14))。これらの事実に、旧協会が、その名称のとおり、ニューNT工法の施工、管理等を主たる業務としていること、ニューNT工法の開発、発展の経緯(前記2(1)ないし(17))、並びにその過程において旧協会の正会員4社及びK4が第一特許権を共有にしたほか、 その他の工業所有権の取得、保有等に関しても協力してきたこと、旧協会とその会員がニューNT工法の研究、施工等の主体となってきたこと、さらに、原告が旧協会、被告現協会又はそれらの会員に対して「ニューNT工法」の名称の使用中止を求めたのは、平成14年11月以降であること(前記2(22))を併せ考えると、原告は、第二商標が商標登録された平成11年1月29日ごろ、旧協会及び旧協会の会員に対し、登録に要した費用を旧協会が負担することの対価として、旧協会及び旧協会の会員がニューNT工法を使用する限りにおいて第二商標の使用を許諾する旨の通常使用権の許諾を黙示に与えたものと認めるのが相当である。第二商標権は、第一特許権のように共有の登録がされておらず、登録名義は原告の名義となっているが、上記の諸事情に鑑みれば、登録名義が原告の名義となっていることは、上記通常使用権の許諾を認定することの妨げにならないというべきである。 6 次に、第二商標の通常使用権の消滅の有無について検討する。 (1) 原告は、旧協会が解散、消滅したことにより、旧協会又はその会員の通常使用権も消滅した旨主張する。 しかし、前記4(2)認定のとおり、旧協会は解散したものとは認められず、被告現協会として存続しているから、原告の上記主張を採用することはできない。 (2) 原告は、第二商標の黙示的通常使用権許諾契約においては、原告が旧協会から離脱することが解除条件とされていたから、原告が旧協会を離脱したことにより、その解除条件が成就し、旧協会及び旧協会の構成員の通常使用権は消滅した旨主張する。 しかし、前記5認定のとおり、第二商標権の出願、登録が原告名義で行われたのは、第一特許権、第二特許権の登録名義が原告の名義になることとなっていたからであり、第二商標の通常使用権の許諾は、登録に要した費用を旧協会が負担することの対価として、旧協会及び旧協会の会員がニューNT工法を使用する限りにおいて第二商標の使用を許諾するというものであって、第二商標の通常使用権許諾契約において、原告が旧協会から離脱することが解除条件とされていたと認めるに足りる証拠はない。したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (3)ア(ア) 原告は、第二商標の黙示的通常使用権許諾契約においては、旧協会又は旧協会の構成員が、第二商標権に化体された原告の業務上の信用を害するような行動をとらず、原告に協力する限りにおいて使用を許諾することが当然の前提とされ、約定の内容とされており、旧協会又は旧協会の構成員が、その当然の前提である約定の内容を明示的又は黙示的に承認していたことを前提として、被告らが標準仕様書を勝手に変更し、第二商標権に化体された原告の業務上の信用を害する行動をとり、上記約定の債務を履行しなかった旨主張する。 (イ) そこで、標準仕様書の変更に関して検討する。 乙第122号証、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、鉄筋継手の性能の判定基準に関する通達等の改廃等は、次のとおりと認められる。 a 建設省住指発第31号 建設省住宅局建築指導課長が都道府県建築主務部長に宛てた平成3年1月31日付けの建設省住指発第31号「特殊な鉄筋継手の取扱いについて」という通達には、爾後の取扱いについて、特殊な鉄筋継手について建設省住宅局建築指導課長が行ってきた認定を行わないこと、各社の継手工法の性能の確認に当たっては、別添1の1の鉄筋継手性能判定基準(溶接継手の継手性能の確認にあっては、 別添1の2の鉄筋の溶接継手性能判定基準)及び別添2の鉄筋継手使用基準による継手工法については、建築基準法施行令73条5項の規定に適合する性能を有するものとして取り扱って差し支えないものとすることなどが定められていた。同通達別添1の2の鉄筋の溶接継手性能判定基準には、継手性能の判定について、次のように記載されていた。(乙第117号証) 「(1) JIS G3112の8.試験に定められた引張試験を行い、以下の(a)〜(c)の条件を満足すること。 (a) 降伏点強度 σy≧σ y0 ここで、σ y :接合鉄筋の降伏点強度 σy0 :母材の規格降伏点強度 (b) 引張り強度 σb≧1.35σ y0 又はσ b0 ここで、σ b :接合鉄筋の引張り強度 σb0 :母材の規格引張り強度 (c) 接合鉄筋の破断は母材部分で生じること。」 「(3) JIS G3112の4.機械的性質の『曲げ性』の規格を満足すること。 ただし、曲げ角度は90°以上とする。」 b 国住総第15号 国土交通省住宅局長が都道府県知事に宛てた平成13年2月19日付けの国住総第15号「地方分権に伴う住宅・建築行政に関する通達の取扱いについて」という通達は、次のように定めていた。(乙第114号証) 「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)は、平成12年4月1日から施行され、機関委任事務及びその処理に関する国の包括的指揮監督権限が廃止されたところである。このため、機関委任事務の処理に関し拘束力のあるものとして地方公共団体に対し発出した通達はその根拠を失っているが、従前に発出した住宅・建築行政に関する通達(国の地方公共団体に対する支出金の交付及び返還に係るものを除く。)の取扱いについて疑義が生じないよう下記のとおりとしているので、ご了知願いたい。 なお、各都道府県におかれては、貴管下市町村(指定都市を除く。)に対してこの旨周知いただくようお願いする。 記 防災計画書の作成について(昭和47年5月10日建設省住指発第389号)、高層建築物等に係る防災計画の指導について(昭和56年7月30日建設省住指発第190号)、旅館及びホテルの防災計画の指導等について(昭和57年5月20日建設省住防発第16号)の通達を廃止し、その他の住宅・建築行政に関する通達については、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言とみなす。ただし、法令に基づかない関与又は事務の義務付け等の規定があるものについては、当該部分の効力は失効し、地方公共団体を拘束するものではない。」 c 建築基準法施行令73条2項 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)73条は、鉄筋の継手及び定着に関する規定であり、同条2項は、次のとおり定めている。(乙第111号証) 「主筋又は耐力壁の鉄筋(以下この項において「主筋等」という。)の継手の重ね長さは、継手を構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける場合にあっては、主筋等の径(径の異なる主筋等をつなぐ場合にあっては、細い主筋等の径。以下この条において同じ。)の二十五倍以上とし、継手を引張り力の最も小さい部分以外の部分に設ける場合にあっては、主筋等の径の四十倍以上としなければならない。ただし、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる継手にあっては、この限りでない。」 d 平成12年建設省告示第1463号 平成12年建設省告示第1463号「鉄筋の継手の構造方法を定める件」は、次のとおり定めている。(甲第64号証) 「建築基準法施行令(昭和25年政令第三百三十八号)第七十3条第2項ただし書(第七十9条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。 1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第七十3条第2項本文(第七十9条の4において準用する場合を含む。)の規定を適用しない鉄筋の継手は、構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける圧接継手、溶接継手及び機械式継手で、それぞれ次項から第四項までの規定による構造方法を用いるものとする。ただし、一方向及び繰り返し加力試験によって耐力、靱性及び付着に関する性能が継手を行う鉄筋と同等以上であることが確認された場合においては、次項から第四項までの規定による構造方法によらないことができる。」 e 建築物の構造関係技術基準解説書 「2001年版 建築物の構造関係技術基準解説書」(国土交通省住宅局建築指導課、日本建築主事会議、日本建築センター編集、国土交通省建築研究所編集協力、平成13年3月15日第1版第1刷発行、平成14年6月1日第2版第2刷発行)127頁には、平成12年建設省告示第1463号の解説として次のとおり記載されている。(乙第111号証) 「平12建告第1463号は令第73条第2項ただし書の規定に基づき鉄骨の継手の構造方法を定めたものである。具体的には、圧接継手、溶接継手及び機械式継手について規定している。なお、通常行われているガス圧接以外の方法、 例えば電気圧接についても本告示中の圧接の規定の適用を受けるが、これに適合しない場合は平12建告第1463号のただし書の規定により継手部分の性能を確認する必要がある。ただし書の加力実験によって耐力、靱性及び付着に関する性能を確認する方法としては、一般に(7)鉄筋継手性能判定基準に示す方法が行われている。」 そして、上記(7)鉄筋継手性能判定基準は、建設省住指発第31号の別添1の1、別添2とほぼ同一であるが、別添1の2の内容は含まれておらず、したがって、(7)鉄筋継手性能判定基準には、別添1の2に記載された継手性能の判定についての降伏点強度(別添1の2(1)(a))、母材破断(別添1の2(1)(c))、曲げ試験(別添1の2(3))は含まれていない。 (ウ) 上記(イ)の認定によれば、建設省住指発第31号は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律が平成12年4月1日から施行され、 機関委任事務及びその処理に関する国の包括的指揮監督権限が廃止されたことにより効力を失い、そのことは、国住総第15号により明らかにされたものと認められる。そして、建設省住指発第31号が廃止された後は、同通達の別添1の2に記載された降伏点強度(別添1の2(1)(a))、母材破断(別添1の2(1)(c))、曲げ試験(別添1の2(3))は、継手性能の判定に必要な要件ではなくなったものと認められる。 (エ) ニューNT工法の標準仕様書の記載の訂正について、後掲各証拠によれば、次の事実が認められる。 a 旧協会のニューNT工法標準仕様書U(鋼種SD490適用)(2001)(平成13年10月改訂)25頁には、溶接継手の性能の合格判定基準について、試験方法として、引張り試験、曲げ試験、超音波探傷試験が記載され、引張り試験の合格基準として、次のように記載されていた。 「○降伏点強度σy≧σya ここで、σy :接合鉄筋の降伏点強度 σya :母材の規格降伏点強度 ○引張り強度σb≧1.35σya又はσb0 ここで、σb :接合鉄筋の引張り強度 σb0 :母材の規格引張り強度 ○ 全ての試験片が母材破断した場合」 また、曲げ試験の合格基準として、次のように記載されていた。 「○90度以上裏曲げ試験で破断しない事。」(甲第47号証) b ところが、ニューNT工法標準仕様書(鋼種SD345、SD390、SD490適用)(2002)(平成14年8月改訂。以下「新仕様書」という。)25頁には、溶接継手の性能の合格判定基準について、試験方法として、引張り試験、超音波探傷試験のみが記載され、曲げ試験は記載されていない。また、 引張り試験の合格基準として、次のように記載され、降伏点強度、母材破断については記載されていない。 「○引張り強度σb≧1.35σya又はσb0 ここで、σb :接合鉄筋の引張り強度 σya :母材の規格降伏点強度 σb0 :母材の規格引張り強度」 さらに、合格判定基準について、「(解説)」という項目の下に次のとおり記載されている。 「平成12年5月31日付建設省告示第1463号公布以降に平成3年1月31日付建設省住指発第31号の一部が改廃されて『接合鉄筋の破断は母材部分で生じること。』の字句が抹消された。 これは溶接材料強度が母材規格引張り強度以上であっても溶接部に欠陥がある場合、又は、しばしば母材強度が規格引張り強度よりはるか高すぎる為に起る『溶接部破断等の問題』に対処する為とも考えられる。」、「当ニューNT工法としては、引張り試験においては『原則として母材破断』の姿勢の保持を希求しており、一部に不具合が発生した場合には種々の方法で調査、検討をなしその対処を講じ更なる技術の向上の資としたいと考えている。」(甲第14号証) (オ) 乙第84、第85号証の各1ないし4、第86、第87号証の各1ないし3によれば、旧協会及び被告現協会は、日本建築センターの評定を受けた際の標準仕様書において、建設省住指発第31号の別添1の2に定められた引張り試験、曲げ試験が要求されていることから、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律が平成12年4月1日から施行されて建設省住指発第31号が廃止された後も、実際の施工に当たっては、建設省住指発第31号の別添1の2に定められた引張り試験、曲げ試験を行い、その合格基準を満たすようにしていることが認められる。 (カ) 甲第72号証の1、2によれば、原告訴訟代理人のP7弁護士が日本建築センターに対して弁護士法23条の2第2項に基づいて申し出た照会について、次のとおり認められる。 照会事項は、@平成13年9月19日付評定書(評定番号BCJ-RC0011-01)において、引張り試験において全ての試験片が母材破断することが性能判定の合格基準として現在においても要求されているか、AニューNT工法による鉄筋溶接継手の施工業者が、ニューNT工法の標準仕様書の性能判定基準の合格基準の曲げ試験の項目を削除し、曲げ試験を不要とすることは、上記評定書に違反するか、BニューNT工法による鉄筋溶接継手の施工業者が、ニューNT工法の標準仕様書の性能判定基準の合格基準の引張り試験における降伏点強度試験の項目を削除し、引張り試験における降伏点強度試験を不要とすることは、上記評定書に違反するか、CニューNT工法による鉄筋溶接継手の施工業者が、上記評定書に違反した標準仕様書を用い建築工事を受注している場合、その違反業者に対し、日本建築センターは、評定の取消等の是正措置を講ずることは可能かという趣旨であった。 日本建築センター評定部部長は、上記@の照会に対しては、現在においても要求していると回答した。上記AないしCについては、質問の趣旨は、ニューNT工法標準仕様書記載の合格基準が変更された場合、評定書違反になるかとの点にあると思われるが、同センターの評定は、あくまで申込みのあった標準仕様に関するものであり、各個別の建設工事において、設計者等が特記仕様として格別に指示することは可能であり、質問の趣旨が、各個別の建設工事における特記仕様の内容を意味するというのであれば、日本建築センターとしては、その内容について確認する立場にないため、当該内容が評定書の範囲内にあるかどうかについては回答しかね、また、あくまで標準仕様における合格基準を変更した場合を意味するというのであれば、変更した合格基準を前提に再度評定の申込みがないと判断しかね、 回答しかねる旨回答をした。 (キ) 前記(イ)、(ウ)認定の鉄筋継手の性能の判定基準に関する通達等の改廃の状況に照らすと、前記(エ)認定のとおり被告現協会が標準仕様書を一部改訂し、降伏点強度、母材破断、曲げ試験を削除したのは、建設省住指発第31号が、 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の施行によって効力を失い、同通達の別添1の2に記載された降伏点強度、母材破断、曲げ試験が継手性能の判定に必要な要件でなくなったことに対応した措置であり、そのことは、改訂後の新仕様書の解説の部分に記載されているとおりであると認められる。そして、 前記(オ)認定のとおり、被告らは、日本建築センターの評定を受けた際の標準仕様書が母材破断、曲げ試験を要求していることから、実際の工事に当たっては、これらの要件を充足するようにしている。 そうであるとすれば、前記(エ)認定のとおり被告現協会が標準仕様書を一部改訂したことは、法令に反することはなく、第二商標権に化体された原告の業務上の信用を害するような行動には該当しないというべきである。前記(カ)認定の日本建築センターによる回答の事実は、上記認定を覆すに足りるものではない。 (ク) また、原告は、被告らが原告に協力する限りにおいて第二商標の使用を許諾することが第二商標の黙示的通常使用権許諾契約の約定の内容とされていたと主張するが、第二商標の使用許諾につきそのようなことが約定の内容であったと認めるに足りる証拠はない。 イ 原告は、旧協会又は旧協会の構成員が、第二商標の通常使用権許諾契約に基づき、再使用(サブライセンス)を許諾する場合に原告の同意を得る義務を負っていたことを前提とし、旧協会は、その構成員に再使用を許諾する際に原告の同意を得ず、上記義務に違反した旨主張する。 しかし、前記5認定のとおり、第二商標の通常使用権許諾契約は、旧協会又は旧協会の会員がニューNT工法を使用する限り、第二商標の使用を許諾するという内容であり、旧協会の会員(構成員)は、ニューNT工法を使用する限り、第二商標の使用が許諾されているものであるから、第二商標の使用につき、旧協会の再許諾を得る必要はないものというべきである。そして、被告現協会は、旧協会と同一であると認められるから(前記4(2))、旧協会の会員はもちろんのこと、被告現協会の会員も、ニューNT工法を使用する限り、第二商標を使用し得るものというべきである。 したがって、旧協会の会員が第二商標を使用するに当たって旧協会の再使用許諾を要することを前提とする原告の上記主張は採用することができない。 ウ これまで認定、判断したところによれば、旧協会及びその会員並びに被告現協会及びその会員が第二商標についての黙示の通常使用権許諾契約に基づく義務に違反したことは認められず、同契約の債務不履行に基づく解除についての原告の主張は、採用することができない。 (4) 以上によれば、第二商標の通常使用権が消滅したものとは認められない。 7 第二商標権の侵害の有無について検討する。 (1) 弁論の全趣旨によれば、別紙被告標章目録記載1ないし4の各標章と第二商標を対比すると、同目録記載1の標章は、書体が影付きの斜字体となっている点は異なるが、文字は同一であり、同目録記載2の標章は、前後にかぎ括弧が付されている点は異なるが、書体及び文字は同一であり、同目録記載3の標章は、第二商標と同一であり、同目録記載4の標章は、前後に丸括弧が付されている点は異なるが、書体及び文字は同一であり、いずれの標章も、第二商標と同一又はほとんど同じものと認められる。 第二商標の通常使用権許諾契約が、旧協会及び旧協会の会員がニューNT工法を使用する限り第二商標を使用することができるというものであり(前記5)、 旧協会及びその会員並びに被告現協会及びその会員がニューNT工法の施工等の主体となっており、第二商標を広く使用する必要性が少なからずあることからすれば、同契約は、第二商標と全く同一の標章の使用のみならず、別紙被告標章目録記載1、2、4のような、第二商標とほとんど同一というべき標章の使用の許諾をも含むと解するのが、当事者の合理的意思に合致するものというべきである。 (2) 前記4(2)認定のとおり、被告現協会は旧協会と同一であり、現在も被告現協会及びその会員がニューNT工法を使用している。そして、前記6(4)認定のとおり、第二商標の通常使用権が消滅したものとは認められない。したがって、被告現協会並びに被告現協会の会員である被告NYK及び被告Aは、第二商標の通常使用権許諾契約に基づき、被告標章を使用し得るものと認められる。 また、仮に、原告が、第二商標の通常使用権許諾契約を解除し得るとしても、前記5において考慮した事情、及び前記6(3)ア(鉄筋継手の性能の判定基準に関する通達等の改廃、標準仕様書の改訂等)の認定に照らし、原告が被告らに対して第二商標の使用差止めを求めることは、権利の濫用に当たり、許されないというべきである。 したがって、被告らの行為は、いずれも原告の第二商標権を侵害するものではない。 8 よって、その余の点につき判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中俊次 |
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裁判官 | 中平健 |
裁判官 | 大濱寿美 |