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関連ワード 識別力 /  指定商品 /  商品の同一性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項15号 /  著名商標 /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  国内 /  警告 /  使用許諾 /  無効審判 /  継続 /  有名ブランド / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10833号 審決取消請求事件
原告 株式会社セント・ローラン代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 浅井正
訴訟代理人弁理士 足立勉
被告 ベアー,ユー,エス,エー,インコーポレーテッド 代表者
訴訟代理人弁護士 吉武賢次
同宮嶋学
同高田泰彦
訴訟代理人弁理士 黒瀬雅志
同小泉勝義
同塩谷信
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/04/24
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2005-89025号事件について平成17年11月9日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,後記商標の商標権者である原告が,特許庁から,被告の無効審判の請求に基づき後記商標を無効とする審決を受けたことから,同審決の取消しを求めた事案である。
当事者の主張
1 請求原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,後記商標につき,平成15年2月13日に登録出願をし,平成16年2月17日に商標登録をすべき旨の査定を受け,平成16年4月9日に商標登録第4762838号として登録を受けた(甲61。以下「本件商標」という。)。
ところが本件商標につき,被告から平成17年2月24日付けで商標登録の無効審判請求がなされ,無効2005-89025号事件として特許庁に係属した。特許庁は,同事件を審理の上,平成17年11月9日,本件商標の登録を無効とする旨の審決をし,その謄本は平成17年11月18日原告に送達された。
(2) 本件商標の内容ア登録商標イ 指定商品 第25類「アメリカ製の被服,アメリカ製のガーター,アメリカ製の靴下止め,アメリカ製のズボンつり,アメリカ製のバンド,アメリカ製のベルト,アメリカ製の履物,アメリカ製の仮装用衣服,アメリカ製の運動用特殊衣服,アメリカ製の運動用特殊靴」(3) 審決の内容ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本件商標は,被告(無効審判請求人)の使用する下記「引用商標7」(甲68)と近似し,原告が本件商標をその指定商品に使用した場合,当該商品が被告又は被告と関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について誤認,混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項15号の規定に違反して登録された,というものである。
記〔出願番号〕商願2000-140040〔出 願 日〕平成12年(2000)12月27日〔公 開 日〕平成13年(2001)2月2日〔称 呼〕ベアユウエスエイ,ベア〔出 願 人〕ベアー,ユー,エス,エー,インコーポレーテッド(被告)〔指定商品〕被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(4) 審決の取消事由しかしながら,本件審決は,以下に述べる理由により,違法として取り消されるべきである。
ア 本件商標と引用商標7との類似性の判断の誤り(取消事由1)本件商標は,本件審決のいうように「アメリカ合衆国の熊」の観念が生じるものではなく,文字と図形が一体のものとして看取され,既成の観念は生じない。
また,本件商標の文字部分の「USBear」は,識別力に乏しい「US」を,同様に識別力に乏しい「Bear」と結合させたものであるが,通常であれば識別力が疑わしい文字同士を結合させた造語にも,一連一体の商標として自他商品を識別する機能が生じるものである。現に,本件商標とほぼ同様の構成を有する商標が現に登録されており(登録4536505号〔甲7〕,登録4646915号〔甲8〕,登録4762834号〔甲9〕,登録4762835号〔甲10〕,登録4768545号〔甲11〕),このことは,特許庁において,「USBEAR」は一連一体の商標であって既成の観念が生じることはなく,また本件商標の熊の図形も被告の商標とは印象が異なるものととらえていることを明確に物語っている。本件審決は,このような登録例を全く考慮することなく判断を下しており,著しく不当である。
さらに,本件審決は,本件商標と引用商標7の熊の図形は,共にほぼ輪郭線のみにより描かれている点や文字の全部又は一部を熊の図形の輪郭線内の枠に表示している点を指摘して,外観が近似していると判断している。しかし,動物の図形を輪郭線のみで描くことは,一般によく行われていることであり,その動物の図形に枠を描くことも特に珍しいものではない。このような,輪郭線や枠の共通性をあまりに重視しすぎた判断は,極めて数多い熊の図形の登録例において,熊の構成が似ているような商標も,その向きやしぐさ,文字の有無等,一部に相違点があれば,それぞれ別の権利者によって登録され,混同を生ずることなく使用されているという経験則に反するものであることは明らかである。
イ 引用商標7の著名性の判断の誤り(取消事由2)本件審決は,引用商標7は,本件商標の登録出願時ないし査定時には,著名性を獲得していたもので,その状態は現在においても継続しているものというべきであるとしている。しかし,雑誌広告の数,新聞記事の量からみて,この程度で著名であるかは極めて疑わしい。
また,本件審決は,引用商標7がアメリカ合衆国内で著名であるかのような判断をしているが,引用商標7及び他の引用商標は,同国内で商標登録もされていない。また,しかも,引用商標7が著名ということならば,被告会社の売り上げも多いはずであるが,被告会社の売り上げはわずかであり,周知著名になるほどの売り上げはなく,到底著名商標を実現するだけの宣伝広告のための資金力はないところである。
このように,引用商標7が著名であるとした審決の判断は誤りであり,この誤りは,引用商標7の著名性に基づき商品の誤認,混同を生ずるとした結論に重大な影響を及ぼすことは明らかである。
ウ 商標法4条1項15号の適用の誤り(取消事由3)引用商標7は,原告が商標権者である下記の登録第3340430号商標(甲6。以下「甲6商標」という。)と類似している。
記〔商 標〕〔出 願 日〕 平成7年7月17日〔登 録 日〕 平成9年8月15日〔指定商品〕 第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」そうすると,引用商標7が仮に著名であったとしても,著名性を獲得するに当たっての使用は甲6商標の商標権の侵害に当たる。このように他の商標権を侵害する引用商標7は,商標法4条1項15号を適用して保護すべきではない。
エ 第三者の熊の図を盗用した被告の行為(取消事由4)(ア) 引用商標7の熊の図は,第三者が被告の使用前から使用して(甲16「SNOWboarding 93 BUYER'SGUIDE」),著名となっている下記の図(以下「甲16標章」という。)を盗用しているものである。
記甲16標章は,長期間世界中で愛用されている防寒ブーツに使用されているものであり,以前より数多くの需要者の目に触れているものと考えられる。このように,被告は極めて悪質であり,盗用した図を基にした引用商標7を保護すべき理由は全くない。
(イ) また,被告は,商標登録第3335699号及び第3335700号(出願 いずれも平成6年12月1日,公告 いずれも平成9年1月28日,出願人 いずれもヴァルキリー・コーポレイション(アメリカ合衆国)。甲24)の下記の熊の図形(以下「甲24図形」という。)を盗用した標章(甲23〔熊の図形が使用されたジャンパーの背中に使用された写真〕。以下「甲23標章」という。)も使用している。
記本件審決は,このように悪質な被告の行為についても何ら判断することなく結論を導き出しており,著しく不当である。
(ウ) そもそも,熊の図と文字を結合して熊の図形を描出することは,原告が最初に考案し,宣伝広告したものである。被告は,このような態様を真似したものに他ならない。この点からも,被告の盗用行為が裏付けられる。
オ 最高裁判例違反(取消事由5)本件審決は,最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決(民集54巻6号1848号)の示す判断基準に従うことなく,引用商標7の著名性及び引用商標7との類似性に偏った判断をしているものであり,不当である。
すなわち,上記判例によれば,著名性及び類似性のみならず,引用商標の独創性や,取引者及び需要者において普通に払われる注意力をも判断の要素とすべきものとしている。まず,独創性については,引用商標7の文字部分は,一般の日本人がよく知っている動物で,しかも極めて多数の者が商標登録,商標出願並びに実際に使用しているため,既にその文字自体が識別力を失っている「Bear」と「USA」の文字から成るにすぎないものであり,造語による商標に比べて著しく独創性が低いものである。
次に,「取引者及び需要者において普通に払われる注意力」にしても,熊の図形や「ベアー」「bear」の文字から成る商標については,極めて多数の商標登録,商標出願がなされ,実際にも使用されているという事情から,熊の図形や「ベアー」「bear」の文字だけでなく,結合されている他の文字や図形を基に商品を区別する習慣が身に付いており,注意力が高くなっているものと考えられる。
このような「独創性」や「取引者及び需要者において普通に払われる注意力」は,本件商標と引用商標7との関係をみる上で極めて重要であり,最高裁の判例に反してこれらを全く考慮していない本件審決は,著しく不当である。
2 請求原因に対する認否請求原因(1)(2)(3)の各事実は認める。同(4)は争う。
3 被告の反論本件審決の認定判断は正当であり,以下に述べるとおり原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1に対しア 原告は,本件商標から「アメリカ合衆国の熊」の観念は生じないと主張するが,「US」がアメリカ合衆国を表示する語としても日常的に普通に使用され広く知られており,原告自身,本件商標とほぼ同じ構成から成る商標を「アメリカ生まれのカジュアルブランド」として広告していたものであるから,本件商標に接する取引者,需要者は,本件商標は「アメリカ合衆国の熊」を表すものと認識するというべきである。
イ 原告は,「US」と「BEAR」の文字から成る商標が多数登録されており,特許庁の実務上は「USBEAR」は一連一体の商標であって既成の観念は生じないものとして取り扱われていると主張するが,これらの登録商標については,既にその登録を無効とする審決が確定しているか,又は無効審判手続が係属中である。
(2) 取消事由2に対し原告は,引用商標7が著名であるとした本件審決の判断は誤りであると主張するが,被告が本件審判手続において提出した証拠により,引用商標7が著名性を獲得していた事実は揺るぎようのないものである。原告は,これらの証拠(新聞記事,雑誌広告等)の量や質が著名性を認定するには不十分であると主張するが,著名性の認定は証拠の量のみによって左右されるものではないし,引用商標7が掲載された業界紙の「繊研新聞」は多くの繊維,アパレル業界関係者が目を通しているものであり,引用商標7が付された商品の広告の掲載雑誌も多様であることからすれば,原告の主張には理由がない。
(3) 取消事由3に対し原告は,引用商標7は原告の甲6商標の商標権を侵害するものであるから,商標法4条1項15号を適用して保護すべきではないと主張する。しかし,原告は,熊の図形や「BEAR」の文字を構成要素とする商標を多数登録出願しているところ(甲6商標もその一つである。),その出願の時期及び経緯,ライセンスに係る広告の実情及び使用許諾の実態から見れば,被告の著名な商標を知った上でこれにフリーライドする目的をもって出願をし,使用していることは明らかである。かかる事情をも勘案し,引用商標7の著名性,本件商標と引用商標7との外観称呼観念の近似性,指定商品の同一性等を総合的に検討して,本件商標は商標法4条1項15号に違反して登録されたものであるとした本件審決の判断は,妥当である。
(4) 取消事由4に対しア 原告は,被告の使用に係る商標の構成中の熊の図形は甲16標章を盗用したものであると主張するが,被告はその使用する商標の熊の図形を独自にデザインしたものであって,甲16標章の熊の図形とは異なっており,甲16標章の使用者が被告に対して問題を指摘してきたこともない。原告の主張は,何の根拠もない言いがかりというべきものである。
イ 原告は,被告は甲24図形を盗用した甲23標章を使用していると主張するが,甲23標章が付された商品として原告が主張するジャンパーは,被告の関与のもとで製造・販売された商品ではなく,原告の主張は前提において失当である。
ウ 原告は,熊の図と文字とを結合して熊の図形を描出することは,原告が最初に考案したものであると主張する。しかし,原告が考案したとする商標は,引用商標7とは明らかに構成が相違するものであり,しかも被告の使用に係る商標を付した商品がヒットして知られるようになった後にデザインされたものである。これらのことからしても,原告主張の事情は,本件審決の結論に重大な影響を及ぼすものとはいえない。
(5) 取消事由5に対し原告は,本件審決は,引用商標7の独創性の程度や,取引者及び需要者の払う注意力の程度を考慮していない点で不当であると主張する。
しかし,引用商標7の熊の図形は被告が独自にデザインしたものであり,その輪郭線を横に延長して輪郭線内に「Bear」の文字を配した構成は,原告が示す多くの登録商標にもない特徴性を有しており,独創性が高いといい得るものである。また,本件審決の理由の説示からすれば,取引者及び需要者の注意力の程度をも考慮した判断であることは明らかである。よって,原告の上記主張も失当である。
当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(本件商標の内容)及び(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
本件審決は,前記のとおり,本件商標が,被告が使用する著名な引用商標7と類似していること等を認定の上,本件商標は,その指定商品について使用されると,被告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり,商標法4条1項15号に違反して登録されたものである,と判断した。原告は,審決がかかる判断の理由として述べるところに対し,逐一その不当である旨を主張するが,結局は,本件商標が商標法4条1項15号に違反して登録されたとする審決の判断を不当とするものである。
そこで,以下においては,本件商標が商標法4条1項15号に違反して登録されたものであるといえるか否かを判断し,次いで,原告主張の取消事由に対する当裁判所の見解を示すこととする。
2 本件商標の商標法4条1項15号該当性の有無(1) 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すべきである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848号参照)。
(2) そこで,まず引用商標7の著名性について検討する。
ア 本件各証拠には,以下のとおりの記載がある。
(ア) 雑誌「asayan」1996年(平成8年)1月号(審決甲46・本訴甲106)には,「ニューヨークで超話題のストリートブランド『Bear』のダウンジャケット」との記載とともに,「Bear」ブランドの商品が掲載されており,別のページには,下記構成から成る商標(本件審決にいう「引用商標4」)の付された商品の広告が掲載されている。
記なお,商品の広告中,引用商標4の下には,「MORIMURA BROS.,INC.」との表示がされている。
(イ) 雑誌「asayan」1996年(平成8年)2月号(審決甲46・本訴甲106)には,「N.Y.生まれの本格アウトドアブランド」「昨年くらいからN.Y.のブラック達の間で異常に支持され出し,あまりの人気にMTVでも取り上げられるほど。」などと記載され,引用商標4の付されたダウンウェア等の広告が掲載されている。
(ウ) 雑誌「BOON」1996年(平成8年)2月号(審決甲44・本訴甲104)には,「あまりの人気にメディアも混乱。ブームの秘密はMTVデビューにあり?」「…ノースフェイス,マーモットなどアウトドア系のビッグブランドと肩を並べるほど,広く認知されたのが,この『Bear』だ。
…アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。」などと記載され,引用商標4を付したダウンジャケットの写真が掲載されている。
(エ) 1996年(平成8年)4月8日発行の「繊研新聞」(審決甲28・本訴甲88)の記事には,「ベアー・U・S・A社偽物排除へ強硬手段」「『ベアー・U・S・A』の偽物が日本で大量に出回っている事態に対処するため,真正品の対日輸出を今春夏物の期間中はいったん停止する。」「ベアー・U・S・Aは一昨年から販売して以来,米国や日本などで人気を集めているカジュアルウエア。……昨秋冬商戦では日本でもダウンジャケットやアウターウェアがヒットした。」との記載がある。
また,同記事には,「日本でのベアー・U・S・Aの販売は昨年まで森村商事(本社東京)が総代理店だったが………」との記載もある。
(オ) 1996年(平成8年)4月11日発行の「繊研新聞」(審決甲30・本訴甲90)に,「Bear U.S.A.からの警告」「現在日本市場で売られているBear U.S.A.ロゴが付いている商品は全て偽物です。」等という広告が掲載されている。また,同広告には,下記構成から成る商標(本件審決にいう「引用商標3」)が掲載されている。
記(カ) 1996年(平成8年)4月25日発行「繊研新聞」(審決甲29・本訴甲89)にも,「偽ブランド品摘発/奈良県警」として「……アメリカの『ベアー』など海外人気ブランド……」と記載されている。
(キ) 1997年(平成9年)10月17日発行「繊研新聞」(審決甲10・本訴甲70)に,「この冬,Bearで差をつけろ!!」と記載された「Bear」ブランドの商品の広告が紙面の全面を使用して掲載されており,当該紙面の最下段には,引用商標7が大きく表示されている。
(ク) 1997年(平成9年)10月22日発行「繊研新聞」(審決甲50・本訴甲110)に,他のメーカーの商品と並んで,「変わるヒップホップ系ブランド」「洗練され大人びたデザインに」「グラデーションを使った『ベアーUSA』のダウンジャケット」と記載し,「Bear」ブランドのダウンジャケットの記事が掲載されている。
(ケ) 雑誌「street Jack」1998年(平成10年)11月号,同年12月号,1999年(平成11年)1月号,同年2月号(審決甲16〜19・本訴甲76〜79)には,「ニセモノの商品が氾濫しております。」「ニセモノに注意せよ!」等という文面の「Bear」ブランドの商品についての広告が掲載されており,当該ページの左上には引用商標7が大きく表示されている。
(コ) 1999年(平成11年)9月27日,同年10月5日,同年10月13日,2000年(平成12年)9月25日及び同年10月23日発行の「繊研新聞」(審決甲11〜15・本訴甲71〜75)には,「Bear USA社からのお知らせ」との見出しとともに,「 (判決注:引用商標7)……は米国BEAR USA社の登録商標及び商標です。これら知的所有権を侵害する類似品,偽物については断固たる法的処置を取ります。」という文面の広告が掲載されている。
(サ) 2002年(平成14年)4月2日発行の「繊研新聞」6〜7頁(本訴乙19)に掲載された全面広告には,引用商標7を表示して「Bear USA」ブランドの歴史等が紹介されるとともに,「“Bear USA”ブランドの模倣品にご注意下さい」との謹告も表示されている。
また,同広告においては,引用商標7等のロゴマークは被告が所有する商標であること,「Bear USA」ブランドの我が国におけるマスターライセンシーとして株式会社エイヴィックの,アパレルライセンシーとして株式会社バイスコーポレーション及び株式会社東京マルトの名称が,それぞれ表示されている。
イ 上記アの各証拠によれば,以下の各事実が認められる。
(ア) 被告を出所とする「Bear USA」ブランドのダウンジャケット等の商品は,米国の人気音楽番組「MTV」で取り上げられたこと等を契機に,我が国の雑誌等においても紹介され,平成8年ころまでには我が国で広く認知され,その偽物や類似品が大量に出回るに至るほどの人気を博していた。
(イ) 「Bear USA」ブランドの商品の我が国における宣伝広告は,平成6〜7年ころには当時被告の日本における総販売代理店であった森村商事によって行われ,その後も,被告自らの手により,又は販売代理店ないしライセンシーを通じて,継続的に行われてきた。
(ウ) 「Bear USA」ブランドを表す商標としては,平成8年ころまでは引用商標3,4等も使用されていたが,平成9年ころ以降は,引用商標7が主として使用されている。
(エ) 平成14年ころにおいても,我が国における「Bear USA」ブランドの商品の宣伝広告は引き続き展開されており,また,偽物や模倣品が出回る状況にも大きな変化はなかった。
ウ 上記認定事実によれば,引用商標7は,被告を出所とするダウンジャケット等の商品に付され,我が国の新聞,雑誌広告等を通じて広く取引者,需要者の目に触れるとともに,被告が偽物,類似品について新聞広告等を通じて業界関係者及び消費者に注意喚起をした際には,真正品であることを示す商標として引用商標7が表示されていることが認められる。
こうした事実によれば,引用商標7は,本件商標の登録出願の時(平成15年6月27日)には,被告を出所とするダウンジャケットなどのカジュアルウエアの商標として取引者,需要者の間に広く認識され,著名性を獲得していたものというべきである。
なお,被告を出所とする商品の主たる商標として引用商標7が使用されるようになったのは平成9年ころ以降であり,それ以前は引用商標3,4が使用されていたものであるが,引用商標3,4と引用商標7との間には,「Bear」の文字を熊の図形の輪郭線の中に置くか外に置くかといったわずかな差異があるにすぎないから,引用商標3,4の使用の事実も,本件商標の登録出願時たる平成15年6月27日当時において引用商標7が著名性を獲得していたとの認定の根拠となり得るものである。
(2) 本件商標と引用商標7との類似性についてア 本件商標と引用商標7とを対比すると,本件審決が認定したとおり,本件商標は,頭部のみを右に向けた熊の図形と,その右側に「USBear」の文字を表し,これらの文字を囲むように熊の図形の輪郭線から延長する線で枠を描き,さらに,その右側の枠外に左に90度回転させた「USA」の文字を配して成るものであるのに対し,引用商標7は,左を向いた熊の図形と,その右側に「Bear」の文字を大きく表し,これらの文字を囲むように熊の図形の輪郭線から延長する線で枠を描き,さらに,その右側の枠外に左に90度回転させた「USA」の文字を配して成るものであり,両商標における熊の図形は,共にほぼ輪郭線のみにより描かれているものと認められる。
両商標の外観を対比すると,両商標は,熊の頭部の向きが異なり,構成文字が,一方が「USBear」の文字から成るのに対し,他方は「Bear」の文字の右側に「USA」の文字が分離して配されているという相違を有するものの,両商標は,熊の図形の描出方法(筆致)及びその結果描かれた熊全体の図柄において相似た印象を受け,また,文字においては,文字の全部又は一部を囲うように熊の図形の輪郭線を延長する線で枠が描かれており,さらに,右側の枠外に左に90度回転させた「USA」の文字が配されているという点においても共通する。
したがって,本件商標と引用商標7とは,外観において相当程度近似しているというべきである。
称呼及び観念に関し,本件商標中の「USBear」の文字は,熊の図形の輪郭線内に標記されているところ,「bear」が「熊」を意味する平易な英語であること(公知の事実)に照らすと,本件商標に接する取引者,需要者は,「USBear」を「US」と「Bear」の2語に分離して認識するものと認められる。そして,「US」の文字が「UnitedStates」(アメリカ合衆国)の略称として広く知られていることも公知の事実といえる。また,右側の枠外に配された「USA」も,「UnitedStates of America」(アメリカ合衆国)の略称として我が国において広く知られている。そうすると,本件商標は,その構成文字の全体に相応して「ユーエス・ベアー・ユーエスエイ」の称呼及び「アメリカ合衆国の熊」の観念を生ずるものと認められる。
他方,引用商標7は,熊の図形と「Bear」及び「USA」の両文字から成るものであり,「USA」が「United States of America」(アメリカ合衆国)の略称であることは我が国において広く知られているから,「ベアー・ユーエスエイ」の称呼及び「アメリカ合衆国の熊」の観念をも生ずるものと認められる。
そうすると,本件商標と引用商標7は,観念を同一にしており,称呼においても「ユーエスエイ」「ベアー」の音を共通にしているものであって,両商標は,称呼及び観念においても相当程度似ているということができる。
ウ 以上の両商標における外観,称呼,観念を総合勘案すれば,本件商標は,引用商標7と相紛れる程度に近似しているというべきである。
(3) 混同を生ずるおそれの有無以上のとおりの引用商標7の著名性,本件商標と引用商標7との類似性の程度に加え,本件商標の指定商品には被告の使用する商品が含まれていることからすれば,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,引用商標7を連想,想起し,当該商品が被告又は被告と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認,混同するおそれがあると認められる。
よって,本件商標は,商標法4条1項15号に違反して登録されたものというべきであり,これと同旨の本件審決に誤りはない。
3 原告主張の取消事由についての判断(1) 取消事由1について原告は,本件商標は文字と図形が一体のものとして看取され,既成の観念は生じないと主張する。しかし,本件商標の構成要素である熊の図形と「USBear」の文字とは,両者を別々に看取することが不可能なほどに一体化したものとはいえず,むしろ,本件商標に接する者にとっては,熊の図形から直ちに英語の「bear」が想起され,「USBear」の文字部分も「US」と「Bear」とに分離して認識され,その結果,「アメリカ合衆国の熊」との観念が生じることは明らかである。
また,原告は,「US」と「bear」の文字の組み合わせから構成される商標は多数登録されている旨指摘する。しかし,類似性の判断は,外観,称呼,観念を総合して個別に行うべきものであるのみならず,本件商標と引用商標7との間には,文字部分が「US」と「USA」及び「Bear」と「Bear」であるという類似性が存するほか,熊の図形を輪郭線で描いていること,右方の輪郭線を延長した中に「bear」等の文字を配していること,延長された輪郭線には「e」「a」「r」の英文字の形状に合わせて凹凸がつけられていること,等の点においても共通性が顕著であるから,両者が類似していることは明らかである。本件商標と同一の文字から構成される商標が登録されている事実は,上記類似性の認定を左右するものではない。
(2) 取消事由2について原告は,審決が基礎とした雑誌広告及び新聞記事の量は著名性を認定するには不十分であり,その雑誌,新聞は一般に広く読まれているものではないと主張する。しかしながら,著名性の認定はその証拠の量によって左右されるものではない。また,繊研新聞がファッションビジネスの情報紙であって,多くの繊維・アパレル業者が目を通していることは,原告自身が広告を掲載していること(平成13年9月21日付け繊研新聞。審決甲20,本訴甲80)からうかがわれるところであり,また前記認定のとおり引用商標7等を付した商品の広告が掲載された雑誌も多様である。したがって,引用商標7等が掲載された雑誌広告及び新聞記事が一般に広く読まれているものではないとの原告主張は採用できない。
(3) 取消事由3について原告は,引用商標7が著名性を獲得するに当たっての使用は,甲6商標を侵害してなされたものであり,このように他の商標権を侵害する引用商標7は,商標法4条1項15号を適用して保護すべきものではない,と主張する。
ア しかし,甲6商標は,「USBEAR」の文字のみから構成されており,熊の図形を欠くという点で引用商標7とは外観が大きく異なる。また,称呼及び観念の点でも,「USBEAR」がすべて英大文字であり,熊の図形も欠いているため,甲6商標に接する者は,これを「US」(アメリカ合衆国)と「BEAR」(熊)とに分離して認識するとは限らず,「USBEAR」を一連一体のものとして認識する可能性も大きいというべきである。そうすると,甲6商標が引用商標7と類似し,引用商標7の使用が甲6商標に係る商標権を侵害すると直ちにいうことはできず,原告の上記主張は,前提を欠く。
イ また,甲6商標は,平成7年7月17日に出願されたものであるところ,その当時,既に我が国内の雑誌等において,被告を出所とする「Bear」ブランドの商品がアメリカ合衆国内で人気を博している旨が紹介されていたことは前記認定のとおりであり,原告がブランドのライセンス等を業としている会社であること(2001年(平成13年)9月21日発行繊研新聞〔審判甲20,本訴甲80〕,原告作成に係る「新ブランドのご案内」〔審判甲54,本訴甲114〕)を考慮すると,原告は,被告を出所とする「Bear」ブランドの存在を知った上で甲6商標を出願したものと推認される。そして,上記「新ブランドのご案内」(審判甲54,本訴甲114)には,甲6商標に図形等を付加した標章が表示されているが(「ブランドライセンスリスト」の2枚目の番号16〜19),この「ブランドライセンスリスト」には,後に,海外の有名ブランドの著名な商標との関係において無効又は取り消すべきものとされた商標が複数含まれている(1枚目の番号6の「ILANCELI」〔登録第4101024号商標。審判甲56,本訴甲116〕につき取消決定〔平成10年異議第91010号,平成12年6月8日確定。審判甲59,本訴甲119〕,同番号7の「IDUNHILLI」〔登録第4101020号商標。審判甲55,本訴甲115〕につき無効審決〔平成11年審判第35700号,平成13年4月6日確定。審判甲61,本訴甲121〕)。
これらの事情からすれば,甲6商標も,被告を出所とする「Bear」ブランドの著名性にただ乗りしようとする意図をもって出願されたものと推認され,そうすると,引用商標7の使用の開始が甲6商標の登録の後であり,引用商標7が甲6商標に類似するとしても,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 取消事由4について原告は,引用商標7の熊の図形はその登録以前から第三者が使用していた著名標章を盗用したものであるなどと主張するが,混同を生ずるおそれの有無を判断する要素としての周知・著名な他人の表示の存在は,客観的に定められるべきものであり,当該他人が周知・著名性を獲得するに至った経緯によって取引者,需要者に混同を生ずるおそれの認定が左右されるものではない。また,そもそも本件において引用商標7の熊の図がそれ以前から第三者が使用していた著名標章を盗用したものであると認めるに足る的確な証拠もない。
よって,原告の上記主張も理由がない。
(5) 取消事由5について原告は,本件審決は,前記最高裁判例の示した判断基準のうち,引用商標7の独創性や,取引者,需要者の注意力を考慮していない点で不当であると主張する。
しかし,まず,引用商標7は,熊の図形の輪郭線を右方に延長してその中に「Bear」の文字を配したこと,「e」「a」「r」の文字の形状に合わせて輪郭線に凹凸を施したこと,「Bear」と「USA」の文字の書体及び配置角度を異ならせたこと,等の点において,相当程度の独創性を有するものと認められる。また,取引者,需要者の注意力についてみると,「Bear USA」ブランドの商品についての記事や広告が掲載された前記の雑誌類からは,これら商品の購買者層は一般消費者であり,商標について特段の高い注意力を有するものではないと認められる。
そうすると,引用商標7の独創性や,取引者,需要者の注意力を考慮しても,混同が生ずるとした本件審決の判断は相当であり,原告の上記主張も採用できない。
4結語以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件商標は商標法4条1項15号に違反して登録されたものであるとした本件審決の認定判断に誤りはない。
よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 岡本岳
裁判官 上田卓哉
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