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関連審決 無効2004-89128
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10763審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10061審決取消請求事件 判例 商標
平成15ワ11661商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成16行ケ341審決取消請求事件 判例 商標
平成17ワ11663不正競争行為差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  類似商標 /  非類似 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10764号 審決取消請求事件
原告 株式会社すこやか工房代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 八尋光良
被告 田辺製薬株式会社代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 阿部隆徳
同 弁理士 樋口豊治
同 寺田花子
同 石津義則
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/04/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2004-89128号事件について平成17年9月20日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯被告は,「源気」の文字を大きく横書きし,その上段に「げんき」の文字を振り仮名風に小さく併記した構成からなり,指定商品を第5類「薬剤」とする登録第4371626号商標(平成10年8月6日登録出願,平成12年3月31日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は,平成16年10月27日,被告を被請求人として,本件商標の商標登録を無効とすることについて審判を請求した。特許庁は,同請求を無効2004-89128号事件として審理した結果,平成17年9月20日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同月30日にその謄本を原告に送達した。
2 審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件商標は,登録第2085510号商標(以下「引用商標」という。)との対比において,両商標を同一又は類似の商品に使用しても,これに接する取引者・需要者において商品の出所について誤認混同するおそれのない非類似商標であるので,商標法4条1項11号に違反して登録されたものでないから,その商標登録を無効とすることはできないとした。
3 引用商標引用商標は,「元気」の文字を横書きしてなり,指定商品を旧第32類「玄米を粉状にして酵素を培養して顆粒状あるいはミール状にした食料品」とするもので,昭和60年7月4日に登録出願され,昭和63年10月26日に設定登録を受け,その後,平成10年6月2日に商標権存続期間更新登録がされている。
原告主張の審決取消事由
審決は,本件商標と引用商標の類否判断を誤り,また,両商標の指定商品類否判断も誤り,その結果,本件登録を無効にすることができないとの誤った結論を導いたものであって,違法であるから,取り消されるべきである。
1 商標の類否判断の誤り( ) 審決は,最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号3 199頁を引用した上,本件商標と引用商標の類否判断につき,「両商標は,『ゲンキ』の称呼を共通にするとしても,それぞれの外観が著しく異なることから,看者に対し,全く別異の印象を与えるものであり,また,本件商標は,既成の観念を有する語として一般に親しまれているものとは到底認め難いので,直ちに特定の観念を必ず想起させるものとはいい難いのに対し,引用商標は,上記のとおり,日常頻繁に使用される極めて親しまれた意味よりなる語であるために,一見して直ちに,その観念が想起されるものと認められる。」(審決謄本5頁第3段落)とした上で,「本件及び引用の両商標の類否判断においては,称呼の同一性がそれぞれの外観及び観念における相違を凌駕するものとは認められないことから,両商標を同一又は類似の商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,その出所について誤認混同するおそれはないものというべきであり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標というのが相当である。」(同頁第4段落)と判断したが,上記最高裁判決の一般論を恣意的に運用して,原告の無効審判請求を不当に排斥したものであって,誤りである。
( ) すなわち,本件商標と引用商標は,称呼が完全に共通であり,それによっ 2て生ずる両商標の誤認混同のおそれは明らかであって,両商標の外観及び観念の差異によって覆されるようなものではない。
元来,商標の実務においては,商標の類否の判断は,判断者の主観又は恣意を排除するために,外観,称呼及び観念の三点に分けて商標間の類否を考察するいわゆる三点観察によることとし,この三点観察では,指定商品の抵触する両商標が,その外観,称呼及び観念のうち一点において類似する場合は,指定商品の取引の一般的実情等により,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認め難い客観的な事情のない限り,両者は相類似するものとすべきものとされていたのである(東京高裁昭和44年9月2日判決・同43(行ケ)第92号参照)。上記最高裁判決も,基本的には三点観察によることを述べており,「商標の外観,観念または称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の混同のおそれを推測させる一応の基準」である旨判示し,三点のうちの一つが類似するときは,商標が類似することが一応推測されるということであり,三点観察の三要素に重きを置いている。三点観察が,外観及び観念に加えて,称呼も,商標類否の判断基準の一つとしているのは,商品の取引においては,対面取引の他にも電話等による隔地間取引がなされる場合があり,これらの対面取引や電話等による口頭の取引では商標の称呼をもって商品を特定することになるためであって,称呼が他の二要素の外観及び観念に比べて重要性が低いというようなことは全くない。
審決は,上記最高裁判決が三点観察の要素である「三点の一を軽視してよい」と述べた判例であると誤った評価をした結果,極めて非論理的,主観的又は恣意的な判断を行ったものであり,失当である。
( ) 上記最高裁判決は,「前記三点のうち,その一において類似するものでも, 3他の二点において,著しく相違すること,その他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似商標と解すべきでない」と判示しているが,本件においては,称呼が類似しているというのではなく,全く同一なのであるから,両商標が類似していないといい得るのは,極めて例外的な場合のみに限られるべきはずである。
ところが,まず,外観についてみると,本件商標と引用商標は,相違してはいるが,ともに漢字2文字からなり,しかも,2文字目の「気」は共通しており,普通に横書きしたものである点も同一であるから,外観が著しく異なるとはいえず,少なくとも,両商標の称呼の同一性をりょうがするほどの相違とはいえない。次に,観念についてみると,本件商標の「源気」という語は,国語辞典にはみられず,既成の観念を有する語として一般に親しまれているものでもない。しかし,「源気」を構成する「源」の字は,「みなもと」と訓読みし,物事の起る始めを意味している。したがって,「源気」は,「源」及び「気」の2文字から成ることから,同語が「みなもととなる気力」ないし「気力のみなもと」を意味していることは通常の日本人であれば容易に想起できることである。元々,被告自身,「源気」を「元気」に引っ掛けて造語したのであり,「元気」と全く同様に「活動のみなもととなる気力」の意味を持つ語として,滋養強壮剤に用いていることが明らかである。
したがって,観念については,両者は相違しているものではなく,むしろ類似しているといってよく,少なくとも,その相違が称呼の共通性をりょうがするものとはいえない。
( ) 以上のとおり,本件商標と引用商標とで商品の出所について誤認混同する 4おそれがないとはいえないから,審決は,類否判断を誤ったものである。
2 商品の類否判断の誤り( ) 審決は,「たとえ,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが類似す 1るものであるとしても,・・・本件商標と引用商標とが類似しないものである以上,本件商標が同法(注,商標法)条項第11号に該当するものとはいえない」(審決謄本5頁第5段落)と判断したが,誤りである。
本件商標の指定商品は,第5類「薬剤」であり,その中には「滋養強壮剤」が包含され,現に,被告は,本件商標を付した自社の滋養強壮剤を販売している。
一方,引用商標の指定商品は,旧第32類「玄米を粉状にして酵素を培養して顆粒状あるいはミール状にした食料品」であるが,現行の商品及び役務区分分類によれば「加工食品」に当たり,「加工食品」には「健康食品」が包含される。引用商標の商標権者である訴外株式会社玄米酵素(以下「訴外会社」という。)は,健康食品の販売を業とする会社である。そして,「健康食品」と「滋養強壮剤」とは,類似の商品であるから,本件商標と引用商標の指定商品は,類似するものである。
( ) 被告は,引用商標の指定商品「玄米を粉状にして酵素で培養して顆粒状あ 2るいはミール状にした食料品」は,主に栄養の摂取を目的として日常の食膳にのせるものであるから「食料品」に当たると主張する。
しかし,厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室長作成の平成17年2月28日付け「『健康食品』に係る制度に関する質疑応答集について」によれば,「健康食品」とは,「健康に関する効果や食品の機能等を表示して販売されている食品(栄養補助食品,健康補助食品,サプリメントなど)」をいうとされており,被告がいうような「食料品のように日常的に食膳に供されることはないもの」である必要はない。そもそも,「健康食品」を食料品と峻別する必要もない。また,訴外会社は,引用商標の指定商品である「玄米を粉状にして酵素で培養して顆粒状にした食料品」に「ハイ・ゲンキ」という商品名を付し,健康補助食品として昭和52年から現在に至るまで販売しており,厚生労働省が設置した団体である財団法人日本健康・栄養食品協会は,同商品を植物発酵食品と認定している。
( ) したがって,引用商標の指定商品である「玄米を粉状にして酵素で培養し 3て顆粒状にした食料品」が,一般的に「健康食品」,すなわち,「健康に関する効果や食品の機能等を表示して販売されている食品」に該当することは明らかである。
そして,「健康食品」と「滋養強壮剤」とが類似の商品である以上,本件商標と引用商標の指定商品は類似するものであり,審決は,商品の類否判断を誤ったものである。
被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
1 商標の類否判断の誤りについて( ) 原告は,本件商標と引用商標は,称呼が完全に共通であり,それによって 1生じる両商標の誤認混同のおそれは明らかであって,両商標の外観,観念の差異によって覆されるようなものではない旨主張する。
しかし,外観,称呼,観念の三点観察において,一点でも類似する場合は,原則として両商標は類似するとの原告の主張は,原告の引用する上記最高裁判決に真っ向から反するものであり,原告独自の見解にすぎず,失当である。
( ) 本件商標「源気」と引用商標「元気」とは,「源」と「元」という全く外 2観が異なる漢字を有する点で相違しているが,この外観の差異は,取引者・需要者に対し,全く別異の印象を与えるものである。また,既成の観念を有する語として一般に親しまれているとは到底認め難い本件商標と,日常頻繁に使用される極めて親しまれた意味よりなる語である引用商標とでは,観念も全く異なる。したがって,外観及び観念の相違は著しいから,称呼の同一性が外観及び観念における相違をりょうがするものではないとの原告の主張は,失当である。
商標における類否は,事案ごとに,外観,称呼,観念の三点を総合的に考慮して判断されるものであり,既成の観念を有する語として一般に親しまれているとは到底認め難い本件商標「源気」と,日常頻繁に使用される極めて親しまれた意味よりなる語である引用商標「元気」の類否を判断するという,本件の個別具体的事情を考慮して,「称呼の同一性がそれぞれの外観及び観念における相違を凌駕するものとは認められない」とした審決の判断は正当なものというべきである。
2 商品の類否判断の誤りについて引用商標の指定商品「玄米を粉状にして酵素で培養して顆粒状あるいはミール状にした食料品」は,主に栄養の摂取を目的として日常の食膳にのせるものであるから,「食料品」に当たる。また,引用商標の指定商品は,その記載から「酵素で培養して」製造するものであるが,これこそ「発酵食品」の製造において一般的に行われている工程である。酵素の特性を利用して製造される「食料品」である「発酵食品」は,多数存在し,その例としては,「味噌」,「醤油」,「納豆」,「漬け物」,「ヨーグルト」等が挙げられる。
仮に,原告主張のように栄養があるものを健康食品として扱っていくと,あらゆる食料品が健康食品といえることとなり,我が国における一般的な認識ないし常識から外れることとなる。商標法における指定商品の記載は,特許法における特許請求の範囲に相当し,権利の及ぶ範囲を画定するものであるから,客観的に,すなわち,通常の語義解釈によって定まるべきものであって,原告が恣意的に拡大解釈してよいというものではない。
「食料品」は,食料品店を通じて販売されるものである。「食料品」は「健康食品」のようにその大部分が薬系販売ルートに乗るものではない。一方,本件商標の指定商品である「薬剤」は,主に薬局,薬店,ドラッグストア等で販売されるものである。また,両者は,商品の用途,製造主体も異なる。したがって,両商品間に出所の誤認混同のおそれは生じ得ない。
当裁判所の判断
1 商標の類否判断の誤りについて( ) 本件商標が,「源気」の文字を大きく横書きし,その上段に「げんき」の 1文字を振り仮名風に小さく併記した構成からなる登録商標であること,引用商標が,「元気」の文字を横書きしてなる登録商標であることは,当事者間に争いがない。
( ) ところで,一般に,商標の類否は,対比される二つの商標が同一又は類似 2の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである。その場合,考察は,上記のような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼によって取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的にされるべきであり,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきである。また,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎないから,外観,観念,称呼の三点のうち一点において一致あるいは類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品の出所に誤認混同を生ずるおそれの認め難い事情があると認められるときには,類似商標に当たらないと解すべきである(上記最高裁判決参照)。
この点について,原告は,商標登録の実務を理由に,商標の類否の判断は,判断者の主観又は恣意を排除するために,外観,称呼及び観念の三点に分けて商標間の類否を考察するいわゆる三点観察によることとし,この三点観察において,指定商品の抵触する両商標が,その外観,称呼及び観念のうち一点において類似する場合,原則として,両者は相類似するものとすべきである旨主張する。
確かに,原告のいう三点観察において,指定商品の抵触する両商標が,その外観,称呼及び観念のうち一点において類似する場合に,両者が類似すると認め得る場合が存在することを否定するものではないが,実務が外観,称呼及び観念の三点に分けて商標間の類否を考察する三点観察によることとしているのは,それが,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれを推測させる一応の基準として合理的であるからであって,一点観察において類似することが直ちに商品の出所につき誤認混同をきたすことになるわけではない。
商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかの考察は,上述したとおり,商品に使用された商標がその外観,観念,称呼によって取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的にされるべきであって,例えば,当該取引が,外観,観念,称呼のうち一点のみに基づいて行われるなどといった特段の事情がある場合等において,はじめて一点観察において類似することが直ちに商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれに結び付くものというべきである。
したがって,原告の上記主張は,採用できない。
( ) 本件についてみると,外観においては,本件商標及び引用商標は,いずれ 3も,漢字2文字を横書きしてなるところ,2文字目は「気」で共通しているが,1文字目が前者は「源」であるのに対し,後者は「元」であって,2文字からなる語句のうち一文字が著しく異なるのであるから,両商標は,外観において,全く非類似の商標というべきである。
次に,観念についてみると,本件商標は,「源(みなもと)」の単語と「気(き)」の単語を結合させた,なじみのない造語であり,上記結合に照応して,「気(き)の源(みなもと)」といった程度の観念を生ずるものということができるが,「気」という語は,例えば,天地,宇宙,自然現象から,心の動き,精神等に至るまで,極めて多義的な意味を有する語であるから,その「源(みなもと)」といっても,ぼう漠とした観念が生ずるのみである。これに対して,引用商標の「元気」の語は,日本人にとって極めて親しまれている2文字の熟語であって,「活動のみなもととなる気力。健康で勢いのよいこと」(広辞苑第5版,甲16),「活動のもとになる気力。また,いきいきとして活力の盛んなさま」(大辞林第2版)などといった観念を生ずるものである。したがって,両商標は,観念において,非類似というべきである。
原告は,外観について,本件商標と引用商標は,相違してはいるが,ともに漢字2文字からなり,しかも,2文字目の「気」は共通しており,普通に横書きしたものである点も同一であるから,外観が著しく異なるとはいえないと主張する。
しかし,見方を変えれば,多数の文字からなる語句のうちの一語が相違するというのと異なり,2文字のうちの1文字,すなわち,文字標章の半分が相違するのであって,外観の相違を過小評価することはできない。したがって,原告の上記主張は,採用できない。
また,原告は,本件商標「源気」が「みなもととなる気力」,「気力のみなもと」の観念を生じ,「元気」の観念と類似する旨主張する。
しかし,上記のとおり,本件商標は,「気(き)の源(みなもと)」といった程度の観念を生ずるとしても,ぼう漠とした観念であって,そこから「気力」の観念を読み取ることはできず,したがって,「みなもととなる気力」,「気力のみなもと」の観念を生ずるものとはいえない。一方,引用商標「元気」においては,「活動のみなもととなる気力」,「活動のもとになる気力」などといった観念が生じ,「気力」等の積極的な精神状態を包含するものであるから,本件商標「源気」とは明らかに相違している。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
( ) 一方,称呼についてみると,両商標は,いずれも「ゲンキ」という称呼が 4生ずるものである。
そこで,指定商品に付された両商標の外観,称呼及び観念を総合して全体的に観察した場合,両者の外観において,一見して異なる語であることが認識され,しかも,観念も明らかに相違している。そして,称呼において同一であっても,わずか2文字であって一見して把握しやすいものであるところ,外観及び観念において全く非類似であるといい得る場合,取引者・需要者は,両者について,異なった印象を抱き,それが記憶されるのが通常であり,本件商標「源気」と引用商標「元気」とを誤解する者はいないとみるのが自然である。したがって,本件商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはないと解するのが相当である。
( ) 原告は,電話等による口頭の取引では商標の称呼をもって商品を特定す 5ることになり,称呼が他の2要素の外観及び観念に比べて重要性が低いというようなことはないとし,本件商標と引用商標は,称呼が完全に共通であり,それによって生ずる両商標の誤認混同のおそれは明らかであって,両商標の外観,観念の差異によって覆されるようなものではない旨主張する。
しかし,本件商標や引用商標につき,商標の称呼のみによって商品を特定することによる取引がされていることをうかがわせる証拠は,本件全証拠を検討しても見当たらない。かえって,証拠(甲13,20,21)によれば,引用商標の商標権者自身は,「元気」という商標を使用しておらず,「ハイ・ゲンキ」という標章を自社商品に付して販売していること,また,本件商標の商標権者も,「ナンパオ源気」という標章を自社商品に付して販売しており,いずれも,「元気」,「源気」を単独で商標として使用していないことが認められる。
また,健康食品は,一般消費者にとって,自己の健康にかかわる重要なものであるから,その商標が当該商品を示すものとして周知となっているなどといった特段の事情の認められない限り,現物を手にとって慎重に選ぶのが通常であり,単に称呼のみで購入することはまれであると考えられる。そして,本件において,そのような特段の事情を見いだすことはできない。
したがって,称呼の同一のみをもって両商標の誤認混同に結び付ける原告の主張は,採用することができない。
2 以上によると,本件商標と引用商標とで商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといえないから,指定商品の類否について検討するまでもなく,本件商標が商標法4条1項11号に該当するとはいい難い。原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明