関連審決 | 取消2004-31584 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成15行ケ488審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 包装 / 出所表示機能 / 品質保証機能 / 質保証機能 / 使用事実 / 指定商品 / 不使用 / 通常使用権 / 国内 / 使用許諾 / 存続期間 / 更新登録 / 正当な理由 / 継続 / 商号 / |
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事件 |
平成
17年
(行ケ)
10826号
審決取消請求事件
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X 原告 訴訟代理人弁理士 森脇康博 同 森脇正志 被告 シチズン時計株式会社 訴訟代理人弁護士 渡辺正造 同 弁理士 稲木次之 同 加藤和彦 同宮島明 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/05/30 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が取消2004-31584号事件について平成17年10月24日にした審決を取り消す。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯原告は,「CITIZEN」の欧文字と「シチズン」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり,指定商品を旧第36類「被服,手巾,釦紐及び装身用『ピン』の類,但し,帯止,釦紐及び装身用ピンを除く」とする登録第497847号の1商標(昭和31年5月4日登録出願,昭和32年3月8日設定登録,昭和52年9月5日,昭和62年8月20日及び平成9年10月31日に商標権存続期間の更新登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。 被告は,平成16年12月9日,原告を被請求人として,本件商標の指定商品中「被服」について,本件商標の商標登録を取り消すことについて審判(以下「本件審判」という。)を請求し,平成17年1月7日,その予告登録がされた(以下「本件予告登録日」ともいう。)。特許庁は,同請求を取消2004-31584号事件として審理をした結果,同年10月24日に「登録第497847号の1商標の指定商品中『被服』については,その登録を取り消す。」との審決をし,同年11月4日,その謄本を原告に送達した。 2 審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件商標は,原告又は通常使用権者により,継続して,本件審判請求の予告登録前3年以内に,日本国内において,請求に係る商品について使用していなかったものと認められるので,本件商標の登録は,その指定商品中「被服」について,商標法50条の規定により取り消すべきであるとした。 |
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原告主張の審決取消事由
審決は,原告及び通常使用権者が本件商標を使用していた事実を誤認し(取消事由1),商標法50条2項ただし書該当性判断を誤り(取消事由2),その結果,指定商品中「被服」に係る本件商標につき,商標法50条によりその登録を取り消すべきであるとの誤った結論を導いたものであるから,違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(本件商標の使用の事実の誤認)( ) 審決は,原告が提出した審判乙1,2と甲3ないし24(審判乙3〜2 14)を個別的に取り上げて検討した上,「被請求人(注,原告)が提出したいずれの証拠も,本件商標がその請求に係る商品について,被請求人又は通常使用権者により使用されていたことを証明する証拠とはなり得ないものであるから,本件商標は,被請求人又は通常使用権者により継続して本件審判の請求の登録(平成17年1月7日)前3年以内に日本国内において,請求に係る商品について使用していなかったものといわざるを得ない。」(審決謄本8頁下から第2段落)と判断したが,誤りである。 ( ) 審決が指摘するとおり,平成17年3月15日付け日清紡績株式会社(以 2下「日清紡」という。)作成の証明書(甲3,審判乙3,以下「甲3証明書」という。)が本件審判請求日以後に作成されたものであり,原告作成の登録商標の使用説明書(甲4ないし10,審判乙4〜10,以下,順に「甲4説明書」等という。)の写真の撮影日及び資料の作成年月日が平成16年10月15日又は平成17年3月3日であり,被告が代理人を通じて,本件商標の譲受けを申し入れた平成16年9月15日付けの内容証明郵便(平成16年9月17日配達)より後のものであることは認める。しかし,原告は,遅くとも昭和31年からつい最近まで,実に半世紀にわたって,そして,本件予告登録日の前3年以内においても,継続して本件商標を使用していたのであり,原告が提出した証拠,特に甲4ないし10説明書は,いずれも原告による本件商標の継続的な使用状況を示すためのものであって,これらの証拠を個別的に取り出し,他の証拠を無視して判断することは,本件商標の使用の事実を曲解するものであり,極めて不当な事実認定というべきである。 ( ) 原告から本件商標の使用許諾を受けた熊野莫大小株式会社(以下「熊野莫 3大小」という。)は,その顧客である日清紡に対して,ニッシン・トーア株式会社(以下「ニッシン・トーア」という。)を介して自己の商品を販売する際,商品自体に本件商標を付していなかったが,商品を納品する際,商品を運搬するためのダンボール箱には,本件商標を付していた。したがって,本件商標の通常使用権者である熊野莫大小は,本件商標をその指定商品中「被服」について「使用」をしていたというべきである。 そして,熊野莫大小は,本件予告登録日の平成17年1月7日より前3年以内に,同社の製品である紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品を,本件商標「CITIZEN」を付したダンボール箱(以下「本件ダンボール箱」という。)に梱包して,その主要な顧客である日清紡に納品していたものである。昭和63年10月から上記3年間を含む現在に至るまで,熊野莫大小の製造に係る上記製品を,日清紡の注文に応じて,本件ダンボール箱に梱包して納品していたことは,甲3証明書のほか,平成17年5月17日付けヤマトシステム株式会社作成の証明書(甲22,以下「甲22証明書」という。),同日付け熊野莫大小作成の証明書(甲23,以下「甲23証明書」という。),同年5月25日公証人 作成の登録商標の使用状況に関 Aする事実実験公正証書(甲25,以下「甲25公正証書」という。),平成18年2月24日付けニッシン・トーア作成の証明書(甲27,以下「甲27証明書」という。)等から明らかである。 なお,甲3証明書には,「添付写真のとおり」との記載があるところ,その写真が添付されていなかったが,甲11の写真に示すものと同様の日清紡指定の上記ダンボール箱を指すことが前提となっていたものである。 また,甲25公正証書によれば,熊野莫大小は,日清紡と昭和63年10月から今日に至るまで取引を継続して行っており,日清紡から注文を受けると,これに応じて紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品を製造して納品していたもので,その手順が,平成16年4月30日に納品した例に従って説明されている。それによると,熊野莫大小は,本件商標,会社の所在と商号及び電話番号を印刷,表示した本件ダンボール箱に梱包して納品した事実が示されている。 さらに,甲27証明書によれば,昭和63年10月より現在に至るまで,熊野莫大小が製造に係る紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品をニッシン・トーアを通して日清紡に納品していたことが認められ,同証明書中の「商品番号14347」,すなわち,平成15年11月29日に「ラウンドネックプルオーバー」(商品番号14347)を818着,熊野莫大小から,ニッシン・トーアを通じて,注文主である日清紡に納品されている。 ( ) その他,熊野莫大小は,現在の主要な顧客である日清紡の要求に従い,商 4品自体に本件商標を付していないが,日清紡との取引は,独占的なものではないから,熊野莫大小の商品に本件商標を付して自由に販売することができ,現に,原告あるいは熊野莫大小は,小売りを行っていたのである。 ( ) 被告は,本件ダンボール箱には商品の表示がなく,中身が分からないから, 5原告が主張する本件ダンボール箱は商品の包装ではない旨主張する。 しかし,本件ダンボール箱には,蓋付小ケース10ないし10数ケース分がひとまとめにして収容され,封かんされるものであり,その梱包時に,商品標識ラベルが貼付される。このラベルには,発注番号(KU-○○。「KU」は熊野莫大小を示す略号である。)や商品番号,色,サイズ,数量等が記載され,このラベルによって商品名その他の必要事項が一目で分かるようになっているので,本件ダンボール箱に貼り付けられたラベルを見れば,取引業者は,中身を容易に識別できるようになっている。 また,被告は,本件ダンボール箱は,輸送用の箱であり,そこに表示されている文字は,何ら取引上の機能を果たしていないものであるから,熊野莫大小がダンボール箱に本件商標を付する行為は「商標の使用」に当たらない旨主張する。 しかし,商標の不使用を理由とする商標登録の取消しを論ずる場合,その制度の存在理由にかんがみると,商標法50条所定の登録商標の使用は,商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば十分であって,識別標識としての使用に限定しなければならない理由はないのである(東京高裁平成3年2月28日判決・平成2年(行ケ)第48号参照)。 さらに,最高裁昭和46年7月20日第三小法廷決定(刑集25巻5号739頁)によると,商品を収容している容器としてのダンボール箱は,商標法37条2号にいう「商品の包装」に当たると判示しているから,本件においても,熊野莫大小が,本件ダンボール箱に本件商標を付して商取引を行っている以上,「商品の包装に標章を付する行為」あるいは「商品の包装に標章を付したものを譲渡等する行為」を「使用」と定義した商標法2条3項1号あるいは同項2号の規定により,熊野莫大小は,本件商標をその指定商品について使用しているというべきである。 2 取消事由2(商標法50条2項ただし書該当性判断の誤り)熊野莫大小は,今後も本件商標を使用して事業を継続する意思があることにかんがみれば,万一,本件ダンボール箱に梱包する行為が本件商標の「使用」に該当せず,本件商標を本件予告登録日より前に継続して3年以上日本国内において使用していないとの認定がされたとしても,それは現在の販売形態が,その主要な顧客である日清紡の要求に応じて,たまたま商品に登録商標を付していない状態にあるにすぎないのであり,それは商標法50条2項ただし書にいう「登録商標の使用をしていないことについて正当な理由」に当たるというべきである。 熊野莫大小は,日清紡との取引において,その商品自体に商標を付していないことは否定し得ないが,現在又は将来他の顧客に販売する場合には,検甲2の1及び2のように,自己の登録商標を付して販売し又は販売する準備をしている。現在の主要な顧客が日清紡であるという点についても,その事実を否定し得ないが,将来,他の顧客との取引においては本件商標を商品に付して使用する必要性及びその可能性があり,原告が先代から受け継いだ本件商標の商標権を無条件で放棄する意思は全くない。 |
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被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。 1 取消事由1(本件商標の使用の事実の誤認)について( ) 原告は,遅くとも昭和31年からつい最近まで,実に半世紀にわたって継 1続して本件商標を使用していたとし,原告が提出した甲4ないし10説明書は,いずれも原告による本件商標の継続的な使用状況を示すためのものであって,審決は,これらの証拠を個別的に取り出し,他の証拠を無視して判断している旨主張する。 しかし,原告は,甲4ないし10説明書が,被告において,本件商標の譲受けを申し入れた平成16年9月15日付け内容証明郵便(平成16年9月17日配達)より後に作成されたものであることを認めている。そして,上記説明書には「現在使用中」と記載されているから,撮影年月日とされる平成16年10月15日又は平成17年3月3日を指すことが明らかであり,本件商標につき不使用による取消しを求める本件審判の請求がされることを知った後であるから,その時点での本件商標の使用は,商標法50条3項の規定により,同条1項の本件商標の使用には該当しない。 ( ) 原告は,昭和63年10月から現在まで,熊野莫大小の製造に係る紳士・ 2婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品を,日清紡の注文に応じて,本件商標を付した本件ダンボール箱に梱包して納品していたことは,甲3,22,23,27証明書,甲25公正証書等から明らかである旨主張する。 しかし,甲3証明書には「添付写真の通り」との記載があるが,その証明書には写真が添付されておらず,また取引書類も示されていないので,本件商標が指定商品中「被服」につき使用されていたことを証明するものとはいえない。この点について,原告は,甲3証明書に「添付写真のとおり」と記載したものは甲11の写真に示すものと同様であるというが,添付されていない以上,甲3証明書は証拠価値を欠くものである。また,甲22証明書添付の写真に写っているのは,運送用の箱であり,伝票には商品が示されておらず,何の商品を運搬したか不明であるから,本件商標の使用事実を示すものとはいえない。 甲23証明書は,熊野莫大小の作成であって,それ自体信用性に欠けるものである。しかも,添付された納品伝票,請求書(控)の熊野莫大小の電話番号の局番は「371」となっているが,平成16年4月当時には「6371」に変わっていたはずであり,その意味でも信用性に欠けている。 甲25公正証書は,嘱託人から関係資料等の提示を受け嘱託人より事情を聴取したと記載されているから,嘱託人である原告の述べたことを記載したにすぎないものである。そして,「日清紡績株式会社などから受注して生産する場合は,注文に応じて製品を作り納品することとなるので,商品自体に本商標を付することはしていない。」と記載されており,末尾に示された二次製品申込書,納品伝票,請求書は,甲23証明書に添付されたものと同様である。さらに,この公正証書には,本件ダンボール箱等の写真が添付されていない。 甲27証明書に添付されている納品伝票には本件商標は示されておらず,日清紡コンフォートプロポーザル事業部と熊野莫大小間において,本件商標は,商品の出所標識として用いられていない。 ( ) 原告は,商品を納品する際,商品を運搬するためのダンボール箱に本件商 3標を付していたから,熊野莫大小は,本件商標をその指定商品について使用していた旨主張する。 しかし,本件ダンボール箱には商品の表示もなく,中身が分からない。原告は,本件ダンボール箱に製品梱包時に製品標識ラベルが貼付されるというが,甲7,11,22,23のいずれの写真にも「商品標識ラベル」と称するものは貼付されていない。 商標の使用とは,商品の包装に使用することが含まれることは当然である。 しかし,原告が主張する本件ダンボール箱は,商品の包装とはいえない。商品の包装であるためには,少なくとも取引者・需要者が,商品が何であるか分かることが必要であり,それでこそ商標が商品の品質保証機能,広告機能及び商品の出所表示機能を発揮することができるものである。 甲23証明書に添付されている納品伝票及び請求書,甲25公正証書に添付されている納品伝票及び請求書,甲27証明書に添付されている納品伝票には,いずれも本件商標が表示されておらず,また,日清紡の発行した二次製品申込書(甲7〜21),甲23証明書,甲25公正証書に添付された二次製品申込書においても,本件商標が表示されていない。このことは,通常使用権者である熊野莫大小も,その取引者も,熊野莫大小から規格を指定した商品を購入することのみが目的であって,特定の商標を目指して取引を行っていないことを示している。 したがって,本件ダンボール箱は,輸送用の箱にすぎず,そこに表示されている文字は,何ら取引上の機能を果たしていないものというほかない。 2 取消事由2(商標法50条2項ただし書該当性判断の誤り)について原告は,現在の販売形態が,主要な顧客の要求に応じて商品に本件商標を使用していない状態であると述べ,本件商標が取引者間において使用されていないことを認めている。当然のことながら,それらの事情は,商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」に該当するものではない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(本件商標の使用の事実の誤認)について( ) 原告による本件商標の使用について 1原告は,少なくとも本件予告登録日の前3年以内においても,継続して本件商標を使用していたのであり,原告が審判段階で提出した証拠,特に甲4ないし10説明書は,いずれも本件商標の継続的な使用状況を示すためのものであって,これらの証拠を個別的に取り出し,他の証拠を無視して判断することは,本件商標の使用の事実を曲解するものであり,極めて不当な事実認定である旨主張するので,検討する。 確かに,甲4ないし10説明書の商標の使用時期の欄には,いずれも,「現在使用中」と記載され,本件商標の付された衣類を撮影した写真が添付されており,その撮影日は,平成16年10月15日又は平成17年3月3日であるとされている。甲4ないし8,10説明書添付の写真が撮影されたのが平成16年10月15日,甲9説明書添付の写真が撮影されたのが平成17年3月3日であるから,甲4ないし8,10説明書添付の写真に写っている衣類ないし本件ダンボール箱は,本件予告登録日の前3年以内に存在したものと推認することができる。 しかし,証拠(乙1の1,2)によると,被告代理人稲木次之弁理士は,平成16年9月15日付けで,原告に対し,「この度,私共はシチズン時計株式会社より依頼を受け,あらためて,上記商標権(注,本件商標の商標権)を譲り受けたく,お願い申し上げる次第であります。譲渡いただけるかどうか,およびその条件につきできるだけ早く代理人あてご連絡下さるようお願い申し上げます。なお,この書面を内容証明郵便といたしましたのは,この交渉がまとまらなかった場合に私共の依頼人が商標法第50条第1項の規定による取消審判を請求する用意があることをお知らせし,同条第3項の規定による日付を確認するためであり,他意のないことをご了承下さい。」などといった内容の書簡を送り,これが同月17日,原告に配達されたことが認められ,その後,同年12月9日に本件審判の請求がされたことは,上記第2の1のとおりである。 したがって,本件審判請求の前3か月から本件予告登録日の平成17年1月7日までの間に,仮に,原告がその請求に係る指定商品について本件商標の使用をしたとしても,その審判の請求がされることを知った後の使用であるから,商標法50条3条により,同条1項に規定する登録商標の使用の対象にはなり得ない。 ( ) 熊野莫大小による本件ダンボール箱の使用について 2ア 原告は,熊野莫大小が,本件予告登録日より前3年以内に,同社の製品である紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品を,本件商標を付した本件ダンボール箱に梱包し,その主要な顧客である日清紡に納品しており,この事実は,甲3,22,23,27各証明書,甲25公正証書から認められる旨主張するので,検討する。 イ 甲3証明書甲3証明書には,「1 貴社,熊野莫大小株式会社と,当社(注,日清紡)とは昭和63年10月より現在に至るまで継続して取引関係にあり,貴社が製造に係る紳士肌着類,婦人用肌着類等のメリヤス及びニット製品を当社の注文に応じて納品している事実。2 上記の製品を貴社から当社へ納品する際には,添付写真の通り『CITIZEN』及び『シチズン』のマークの表示と,貴社の社名『熊野莫大小株式会社』及び住所,電話番号を表示した当社指定の,サイズが51cm×64cm×51cm及び51cm×63cm×46cmの段ボール製パッケージ箱に梱包して出荷され,ニッシン・トーア株式会社大阪支店(大阪市中央区北久宝寺町2丁目2番9号)を通して,当社の日清紡コンフォートプロポーザル事業部(大阪市中央区北久宝寺町2-4-2)の指定する物流倉庫,ヤマトシステム開発株式会社(大阪府門真市松生町6-19)へ納品されている事実・・・上記の通り相違ないことを証明いたします。」との記載がある。しかし,上記記載によれば,原告が本件ダンボール箱を使用していた根拠としているのは,甲3証明書に添付写真されている写真であるはずのところ,その写真の添付はないから,熊野莫大小において本件ダンボール箱を使用していたことの裏付けを欠くものというほかない。また,甲3証明書は,上記の記載内容から明らかなとおり,証明すべき事項を列挙し,末尾において「上記の通り相違ないことを証明いたします。」としているのみであって,具体性を欠いており,にわかに信用することは困難である。 原告は,甲3証明書に写真の添付はされていなかったが,甲11の写真に示すものと同様の日清紡指定の本件ダンボール箱を指すことが前提となっていた旨主張するので,さらに検討する。 証拠(甲3,11,12)及び弁論の全趣旨によると,熊野莫大小は,同じく大阪市北区豊崎1丁目5番18号に事業所を置く熊野メリヤス株式会社の名義で,平成17年2月28日,日清紡から発注された紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品を,本件ダンボール箱に梱包して,福山通運に運送を依頼し,日清紡コンフォートプロボーザル事業部の指定するヤマトシステム株式会社大阪物流支店の物流倉庫に納品したことが認められる。 上記認定の事実によれば,平成17年2月28日に,熊野莫大小あるいは熊野メリヤス株式会社が,「CITIZEN」の標章の付されたダンボール箱に指定商品である被服を梱包して出荷したという限りで,本件ダンボール箱の使用の事実を認めることができるが,それを超えて,本件予告登録日の前3年以内に,かつ,本件審判請求の前3か月である平成16年9月9日以前に,熊野莫大小が本件ダンボール箱に被服を梱包して出荷したことを認めるに足りない。 ウ 甲22証明書甲22証明書には,「1 当社(注,ヤマトシステム株式会社)は,貴社(注,熊野莫大小)の注文先である日清紡績株式会社(大阪市中央区北久宝寺町2-4-2)の指示により,貴社の製造に係るメリヤス及びニット製品を,1997年2月より継続的に現在に至るまで日清紡績株式会社へ納品している事実。2 上記の製品を貴社から受け取って日清紡績株式会社へ納品する際には,添付写真@Aの通り,「CITIZEN」のマークと,貴社の社名「熊野莫大小株式会社」及び住所,電話番号を表示したサイズが51cm×64cm×51cm,及び51cm×63cm×46cmの段ボール製パッケージ箱に梱包して福山通運株式会社のトラックで出荷され,貴社の注文先である日清紡績株式会社の日清紡コンフォートプロポーザル事業部(大阪市中央区北久宝寺町2-4-2)の指定する当社の物流倉庫へ納品されている事実。・・・上記の通り相違ないことを証明いたします。」との記載がある。 甲22証明書も,甲3証明書と同様,証明すべき事項を列挙し,末尾において「上記の通り相違ないことを証明いたします。」としているのみであって,全く具体性欠いており,にわかに信用することは困難である。そして,本件ダンボール箱を使用していた根拠としているのは,「添付写真@A」のみであるところ,上記写真に写っているダンボール箱には,「CITIZEN」の標章が付されているが,撮影された年月日は明らかでない。なお,写真Aは,甲11の写真の一部を拡大したもののようであり,年月日の部分が入っていない。 エ 甲23証明書甲23証明書には,「1 私は, (注,原告)といい,熊野莫大小株 X式会社(大阪市北区豊崎1-5-18)の代表取締役です。2 熊野莫大小株式会社(以下『当社』といいます)は,日清紡績株式会社(以下『日清紡』といいます。)とは昭和63年10月より現在に至るまで継続して取引関係にあり,当社が製造に係る紳士肌着,婦人用肌着類等のメリヤス及びニット製品を日清紡の注文に応じて誠実に納品しています。3 当社から日清紡へ上記の製品を納品する際には,別紙写真の通り当社の登録商標である「CITIZEN」又は「CITIZEN/シチズン」のマークと,当社名「熊野莫大小株式会社」及び住所,電話番号を表示したサイズが51cm×64cm×51cm,及び51cm×63cm×46cmの段ボール製パッケージ箱に梱包して福山通運株式会社のトラックで出荷し,日清紡のコンフォートプロポーザル事業部(大阪市中央区北久宝寺町2-4-2)の指定するヤマトシステム開発株式会社の物流倉庫(大阪府門真市松生町6-19)へ納品しています。・・・上記の通り相違ないことを証明します。」との記載がある。 甲23証明書は,熊野莫大小作成名義であるが,実質的には,原告本人が作成した陳述書ともいうべき書類であり,原告の主張に沿った内容となっているところ,甲3証明書と同様,証明すべき事項を列挙し,末尾において「上記の通り相違ないことを証明します。」としているのみであって,具体性欠いており,信用性を認め難いものである。 本件ダンボール箱を使用していた根拠としているのは,「添付写真」であるところ,添付の写真に写っているダンボール箱には,「CITIZEN」の標章が付されているが,撮影された年月日は明らかでない。 オ 甲25公正証書甲25公正証書には,「第2 本公証人は,平成17年4月21日,大阪市北区豊崎1丁目5番18号,会社本店事務所及び縫製工場において,嘱託人(注,原告)から関係資料等の提示を受けながら下記の事項を目撃するとともに嘱託人より事情を聴取した。・・・3 会社と日清紡との取引は,昭和63年10月から今日に至るまで継続して行っており,日清紡から毎月のように注文を受けると,これに応じて紳士・婦人用肌着などメリヤス及びニット製品を製造して納品している。その手順を平成16年4月30日に納品した例に従って説明すると次のようになる。( )平成161年4月15日から同月21日までの間に日清紡から12回にわたり二次製品申込書(注文書)が届けられたのでその記載内容即ち商品名,色名,サイズ,数量などに従い商品を製造し,これらを本商標,会社の所在と商号及び電話番号を印刷,表示したサイズ51cm×64cm×51cm若しくは51cm×63cm×46cmの段ボール製パッケージ箱に梱包して納品した。その結果によって納品書及び請求書を作成して客先の日清紡に提出したが,製品の納品自体は,日清紡の指示に従い,運送業者のヤマトシステム株式会社大阪物流支店に託して,日清紡コンフォートプロポーザルに宛てて行っている。( )嘱託人は,上記取引を明らかにするため注文 2書等の写しを提出したので,本証書末尾に添付することとした。なお,先に説明した段ボール製パッケージ箱の全てに本商標等を印刷して表示していたことは,納品先あるいは運送業者に確認してもらえば明らかである。 ( )一例として,上記取引を取り上げたが,会社の全取引に本商標を使用 3していることは,疑う余地もなく,会社としてあるいは,嘱託人としては,先代から受け継いだ本商標に関する商標権を放棄するなどの意思は全くない。」などといった記載がある。 甲25公正証書の上記記載によると,「平成16年4月15日から同月21日までの間に日清紡から12回にわたり二次製品申込書(注文書)が届けられたのでその記載内容即ち商品名,色名,サイズ,数量などに従い商品を製造し,これらを本商標,会社の所在と商号及び電話番号を印刷,表示した・・・段ボール製パッケージ箱に梱包して納品した。」との記載があるが,一方,「本公証人は・・・嘱託人より事情を聴取した」とされており,嘱託人である原告からの事情聴取の結果を記載したにすぎないものである。 そして,本件ダンボール箱を被服の出荷に使用していたことについては,「先に説明した段ボール製パッケージ箱の全てに本商標等を印刷して表示していたことは,納品先あるいは運送業者に確認してもらえば明らかである。」とされているから,その証明力は甲3,22証明書に依存するというのであり,当該公正証書自体で,熊野莫大小が本件ダンボール箱を使用していたことを裏付けるものとはなっていない。 カ 甲27証明書甲27証明書には,「1 貴社,熊野莫大小株式会社と日清紡績株式会社(大阪市中央区北久宝寺町2-4-2)とは当社(注,ニッシン・トーア)を通して昭和63年10月より現在に至るまで継続して取引関係にあり,貴社が製造に係る紳士肌着類,婦人用肌着類等のメリヤス及びニット製品を当社を通して納品している事実。2 上記の製品を貴社から当社を通して日清紡績株式会社に納品する際には,『CITIZEN』のマークの表示と,貴社の社名『熊野莫大小株式会社』及び貴社の住所,電話番号を表示したサイズが51cm×64cm×51cm,及び51cm×63cm×46cmの段ボール製パッケージ箱に梱包して出荷され,当社を通して,日清紡績株式会社の日清紡コンフォートプロポーザル事業部(大阪市中央区北久宝寺町2-4-2)の指定する物流倉庫,ヤマトシステム開発株式会社(大阪府門真市松生町6-19)へ納品されている事実。・・・上記の通り相違ないことを証明いたします。」との記載がある。 ところで,熊野莫大小は,ニッシン・トーアを通して日清紡に納品しているのであるから,日清紡作成の甲3証明書とニッシン・トーア作成の甲27証明書における納品状況は一致していなければならないはずであるところ,甲27証明書によるニッシン・トーアの納品状況についての記載は,「特に,@平成15年11月29日に『ラウンドネックプルオーバー』(商品番号 14347)818着と,A平成15年12月8日『メルテアスハイネックTシャツ』(商品番号15133)を127着及び,B平成16年7月30日に『シルキー天竺ラウンドネックプルオーバー』(商品番号 14347)を500着を,それぞれ当社(注,ニッシン・トーア)を通して添付の納品伝票・・・の通り納品している」となっているのに対し,甲3証明書による日清紡の納品状況についての記載は,「特に・・・平成15年12月24日に『ラウンドネックプルオーバー』815着,と『メルテアスハイネックTシャツ』111着,平成16年8月20日に『シルキー天竺ラウンドネックプルオーバー』491着を,それぞれ当社(注,日清紡)へ納品している」となっており,数量に相違が認められる。しかも,甲27証明書に添付されている納品伝票の熊野莫大小の電話番号の局番は「371」となっているが,甲22,23証明書に添付されている本件ダンボール箱に印刷された熊野莫大小の電話番号の局番は「6371」となっている。そして,本件全証拠によっても,上記相違,矛盾を解消するような何らの資料をも見いだすことはできない。 キ 以上のとおり,甲3,22,23,27各証明書及び甲25公正証書を検討しても,熊野莫大小が,本件予告登録日の前3年以内に,同社の紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品を日清紡に納品するに当たり,梱包に本件商標を付した本件ダンボール箱を使用したことを認めるに足りない。 ( ) 本件商標の商標法2条3項1,2号による「使用」について 3ア 上記のとおり,熊野莫大小が,本件予告登録日の前3年以内に,梱包に本件商標を付した本件ダンボール箱を使用した事実の的確な証拠がなく,原告が商標法50条2項の規定による証明を尽くしていないとの理由で,既に本件商標登録は取消しを免れないことになるが,本件においては,本件ダンボール箱を使用した事実の証明が成功したと仮定しても,そもそも,熊野莫大小による本件ダンボール箱の使用が同法2条3項1,2号による商標の「使用」に当たらない疑念があるので,事案にかんがみ,念のため検討しておく。 イ 原告は,熊野莫大小が,本件ダンボール箱に本件商標を付して商取引を行っている以上,「商品の包装に標章を付する行為」あるいは「商品の包装に標章を付したものを譲渡等する行為」を「使用」と定義した商標法2条3項1号あるいは同項2号の規定により,熊野莫大小は,本件商標をその指定商品について使用しているというべきであると主張する。 証拠(甲3,14〜23,25,検甲1,2の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 熊野莫大小は,昭和35年1月22日に原告の先代 によって設立Bされた株式会社であり,住所地所在の工場において,紳士・婦人肌着,Tシャツ,外着類等の被服商品を製造している。 (イ) 熊野莫大小は,昭和63年10月ころから,日清紡との取引が始まった。熊野莫大小は,日清紡から,所定の種類,数量の紳士・婦人肌着,Tシャツ,外着類等の注文を受けると,この注文に従って商品を製造し,完成したものを,ニッシン・トーアを通して,日清紡コンフォートプロポーザル事業部の指定する物流倉庫ヤマトシステム開発株式会社へ納品する。 (ウ) 日清紡は,熊野莫大小に対し,日清紡の発注した商品には,原告のネームを入れないように指示しており,そのため,熊野莫大小は,製造した商品自体に本件商標を付することはできず,その商品を入れる蓋付小ケースも,全く標章のない無地の箱にしていた。 (エ) 熊野莫大小は,製造した商品を入れた上記蓋付小ケースをひとまとめにして本件ダンボール箱に収納し,これを運送会社に依頼して出荷し,日清紡に納品していた。 上記認定の事実に照らすと,本件ダンボール箱は,被服商品の製造会社が発注者に注文品を納品するためだけに使用されており,そのダンボール箱には,中身が何であるかを示す表示が存在せず,収納されている商品自体にはネームを付することが禁じられ,これを入れる蓋付小ケースも無地の箱であるというのであって,このような事情の下では,本件ダンボール箱に「CITIZEN」の標章があっても,収納されている商品との結びつきが著しく希薄であり,収納されている商品について商標として付されたと解するのは困難である。 そうすると,商品が収納されている本件ダンボール箱に「CITIZEN」の標章を付しても,商標法2条3項1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」には当たらず,また,これを発注者に納品しても,同項2号の「商品の包装に標章を付したものを譲渡等する行為」には当たらないから,これらは商標としての「使用」に該当しないものというべきである。 ウ 原告は,本件ダンボール箱には,製品梱包時に製品標識ラベルが貼付され,このラベルには,発注番号(KU-○○。「KU」は熊野莫大小を示す略号である。)や商品番号,色,サイズ,数量等が記載され,このラベルによって商品名その他の必要事項が一目で分かるようになっていたから,本件ダンボール箱は「商品の包装」に当たる旨主張する。 しかし,甲11及び甲22,23証明書添付の写真によると,本件ダンボール箱には,原告主張のラベルは貼付されていない。また,検甲1によると,熊野莫大小が日清紡に納品する肌着の透明な包装袋には,商品種別,商品番号,色,サイズの記載されたラベルが貼付されているが,上記包装袋を蓋付小ケースに収納し,これを更に本件ダンボール箱に収納して梱包しているので,外部から上記ラベルを見ることはできないから,このラベルをもって,本件ダンボール箱に製品標識ラベルが貼付されているのと同視することができないことは,明らかである。そのほか本件全証拠を検討しても,原告が本件ダンボール箱に上記ラベルを貼付していたことを裏付ける証拠を見いだすことができない。 なお,平成17年3月22日付け審判事件答弁書(甲1の1),同年5月25日付け審判事件答弁理由補充書(甲1の2),同年7月20日付け審判事件答弁書(第2回)(甲1の3)においては,原告は,ラベルのことを全く述べておらず,日清紡の注文を受けると,本件ダンボール箱に製品を梱包して送る旨述べていたものである。ところが,本件訴訟において,被告の,ダンボール箱に商品の表示がなく,中身が分からないとの反論に対して,平成18年3月8日付け第3準備書面において,初めて,本件ダンボール箱にラベルを貼付していると述べるに至ったのであって,にわかに信用することができない。 エ 原告は,商標の不使用を理由とする商標登録の取消しを論ずる場合,その制度の存在理由にかんがみると,商標法50条所定の登録商標の使用は,商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば十分であって,識別標識としての使用に限定しなければならない理由はない旨主張する。 しかし,本件においては,上記のとおり,本件ダンボール箱の「CITIZEN」の標章の使用が商標法2条3項1号の商標としての「使用」に当たらないのであるから,原告の主張は,失当である。 また,原告は,その引用する最高裁昭和46年7月20日第三小法廷決定によると,商品を収容している容器としてのダンボール箱は,商標法37条2号にいう「商品の包装」に当たると判示しており,本件においても,熊野莫大小が,前記ダンボール箱に,本件商標を付して商取引を行っている以上,本件商標をその指定商品について使用しているというべきである旨主張する。 上記最高裁決定は,指定商品の包装に登録商標を付したものを販売する目的で所持する場合に,商標法37条2号,78条の罪が問われた刑事事件の上告審であり,その判示の中で,「特段の美観要素がなく,もっぱら,運搬用商品保護用であるとしても,商品を収容している容器としての段ボール箱は同法37条2号にいう『商品の包装』にあたり,また,同条号の行為は必ずしも業としてなされることを必要としないものというべきである。」としているところ,本件においては,商標法2条3項にいう商標の「使用」に当たるかが問題となるものであるから,上記判例とは事案を異にするものである。原告の主張は,独自の見解に基づくものであって,採用の限りでない。 ( ) なお,原告は,熊野莫大小は,現在の主要顧客である日清紡,あるいは, 4ニッシン・トーアの要求に従い,商品自体に本件商標を付していないが,日清紡,あるいは,ニッシン・トーアとの取引は,独占的なものではないから,熊野莫大小の商品に本件商標を付して自由に販売することができ,現に小売りを行っていた旨主張するが,本件全証拠を検討しても,本件審判請求の前3か月である平成16年9月9日以前に,自己の商品に本件商標を付して販売していたことを認めるに足りる証拠を見いだすことはできないから,原告の上記主張は,根拠のない主張というほかなく,失当である。 2 取消事由2(商標法50条2項ただし書該当性判断の誤り)について原告は,熊野莫大小は,今後も本件商標を使用して事業を継続する意思があることにかんがみれば,万一,本件ダンボール箱に梱包する行為が本件商標の「使用」に該当せず,本件商標を本件予告登録日より前に継続して3年以上日本国内において使用していないとの認定がされたとしても,それは現在の販売形態が,その主要な顧客である日清紡の要求に応じてたまたま商品に登録商標を付していない状態にあるにすぎないだけであり,それは商標法50条2項ただし書にいう「登録商標の使用をしていないことについて正当な理由」に当たる旨主張する。 しかし,熊野莫大小は,いわゆる自社ブランドで,その製造する紳士・婦人用肌着等のメリヤス及びニット製品に本件商標を付して販売することを妨げる何らの事情も存在しなかったところ,自らの選択によって,日清紡のいわゆる下請会社として,日清紡とのみ取引をしていたのであるから,本件商標を使用しない主な原因は,熊野莫大小あるいは原告にあるものというべきである。 このような状態が,商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」に当たらないことは,いうまでもないところである。 3 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 宍戸充 |
裁判官 | 柴田義明 |