関連審決 | 取消2004-31016 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17行ケ10527審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成17行ケ10504審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10555審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成14行ケ500審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10347審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 包装 / 商標的使用 / 指定商品 / 普通名称(3条1項1号) / 商標の同一性 / 通常使用権 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 国内 / 正当な理由 / パリ条約 / 継続 / |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10043号
審決取消請求事件
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X 原告 訴訟代理人弁護士 黒田健二 同吉村誠 同伊藤幸 Y 被告 訴訟代理人弁理士 稲垣仁義 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/06/29 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が取消2004−31016号事件について平成17年12月19日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
主文同旨 |
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当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯原告は,「速脳速聴」の漢字を標準文字で書して成り,指定商品を第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む),その他の電子応用機械器具」とする商標登録第4436279号商標(平成11年12月21日商標登録出願,平成12年12月1日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。 被告は,平成16年8月5日,原告を被請求人として,本件商標について,本件商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求し,同月23日,その予告登録がされた(以下「本件予告登録」という。)。特許庁は,同請求を取消2004-31016号事件として審理した結果,平成17年12月19日,「登録第4436279号商標の商標登録は取り消す。」旨の審決をし,その謄本は,平成18年1月5日,原告に送達された。 2 審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,原告は,本件商標を継続して,審判請求の予告登録前3年以内に,日本国内において,取消請求に係る指定商品について使用していたことを証明したものと認めることができないのであり,また,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていないので,本件商標の登録は,商標法50条の規定により取り消すべきであるとした。 |
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原告主張の審決取消事由
審決は,通常使用権者が本件商標を使用していた事実を誤認し(取消事由),その結果,本件商標につき,商標法50条によりその登録を取り消すべきであるとの誤った結論を導いたものであるから,違法として取り消されるべきである。 1 有限会社プランニングラボによる本件商標の使用( ) 審決は,原告が提出した審判乙1ないし3(注,本件では提出されていな 1い。)を個別的に取り上げて検討した上,「乙第1号証には,商品名が記載されておらず,また,乙第2号証及び乙第3号証の商標の表示方法は,不自然であり,年月日の記載もない。そして,乙第1号証の納品書と乙第2号証及び乙第3号証の商品との間に何らかの関連性があるという事実も認められない。」(審決謄本5頁第5段落)として,「被請求人は,本件商標を継続して本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,取消請求に係る指定商品について使用していたことを証明したものと認めることができない」(同第6段落)と判断したが,誤りである。 ( ) 有限会社プランニングラボ(以下「プランニングラボ」という。)は,原 2告及び原告の父を共同代表取締役とする会社で,原告は,プランニングラボが本件商標を使用することを承諾しており,プランニングラボは,本件商標の通常使用権者であった。 そして,プランニングラボは,いずれも本件商標の指定商品に含まれる,「元祖 速脳速聴術」という名称の商品(以下「本件商品1」という。),「元祖 ジョイント式ハイパー速読術」という名称の商品(以下「本件商品2」という。)及び「元祖・ハイパー速読術,速脳速聴,最強の話速変換機デジヴォ」という名称の商品(以下「本件商品3」という。)を製造し,これらの商品をウェブサイト等において販売していたところ,以下のとおり,本件予告登録前3年以内に,プランニングラボは,これらの商品について本件商標を使用した。 2 本件商品1についての本件商標の使用( ) 本件商品1(「元祖速脳速聴術」)は,表面(「表面」とは,CD-R 1OMのデータの読み取り等がされる面の反対面をいう。以下同じ)に「速脳速聴基本プログラム」と記載されたCD-ROM(以下「本件CD」という。)及びその取扱説明書(以下「本件取扱説明書」という。)から構成されている。そして,本件CDは,高速の音声を聞き分ける訓練を行うことで,聴力に刺激を与え,脳の機能の活発化や情報処理能力の向上を図るためのパーソナルコンピュータ用プログラムを記憶させたCD-ROMであり,本件CD及び本件取扱説明書から構成される本件商品1は,本件商標の指定商品である「中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器」に含まれる。 ( ) 「速脳速聴術」について 2ア 商標法50条1項は,パリ条約5条C 項の「商標の所有者が一の同 (2)盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には,その商標の登録の効力は,失われず,また,その商標に対して与えられる保護は,縮減されない。」との規定の趣旨を明文化した規定であり,単なる物理的な同一に限らず,社会通念上同一と認識し得る商標の使用についても,登録商標の使用に当たると規定している。そして,登録商標は,自他商品の識別性をその本質的要素として要求されているものであるから,商標が識別性を有するかどうかは,取引者・需要者を基準とし,社会通念に基づいて判断すべきものである。 これを「速脳速聴術」についてみると,「速脳速聴」とほとんどの部分を同じくし,違いは,「術」の記載の有無にすぎない。そして,「術」とは,「(1)わざ。技能。(2)不思議なわざ。妖術。魔術。」(甲27の1),「@わざ。技芸。学問。A不思議なわざ。Bてだて。手段。すべ。Cはかりごと。たくらみ。」(甲28)いう意味であるのに対し,「速脳速聴」は造語であって,造語は本来的に強い自他商品識別力を有する。そこで,「速脳速聴術」に接した一般の取引者・需要者は,自他商品識別表示としての「速脳速聴」という造語と,自他商品識別力のない,わざ,技芸,技能などの観念を生じる。また,登録商標の使用と認められる商標の事例として,登録商標と他の文字,図形又は記号との同時使用の場合があり,「速脳速聴術」も,本件商標である「速脳速聴」と自他商品識別力のない「術」の語を同時に使用しているにすぎない。 したがって,「速脳速聴術」と本件商標である「速脳速聴」は,その要部が同じであり,両者は社会通念上同一である。 イ 商品に商標を付する行為には,商品やその包装に直接付するだけでなく,商品の陳列棚の横または棚の前面に文字商標を表示することも含まれる。 本件商標の通常使用権者であるプランニングラボは,本件予告登録前3年以内に,自らのウェブサイトにおいて,本件商品1の写真を掲示し,その脇に文字商標である「速脳速聴術」を表示し,同商品に標章を付した(商標法2条3項1号)。 また,本件予告登録前3年以内のプランニングラボと顧客との取引において,本件商品1の注文内容を確認する自動配信メール,お買い上げ明細書,発送票には,「元祖 速脳速聴術」との標章が付されている。これら注文内容を確認するメール,お買い上げ明細書,発送票は,いずれも取引に際し,顧客に交付(自動配信メールに付いては同内容のメールの送付,発送票に付いてはその写しの交付)がされているので取引書類に当たるものであり,プランニングラボは,本件商品1に関する取引書類に本件商標を付して頒布した(同項8号)。 さらに,本件商品1の販売のためのプランニングラボのウェブサイトには,本件予告登録前3年以内に,「速脳速聴をマスターして新しい自分を発見!」,「速脳速聴トレーニングが脳の知的機能の活性化を促進」及び「すっかりおなじみ!ただ聞き流すだけで頭の回転が驚くほど速くなる速脳速聴CD」と記載され,本件商品1の広告に,本件商標が付されていた(同号)。 ( ) 「速脳速聴基本プログラム」について 3ア 「速脳速聴基本プログラム」の標章のうち,「プログラム」は,電子応用機械器具の一種である電子計算機のためのプログラムを示す普通名称の表示であることが明らかであるから,自他商品の識別力がない部分というべきであり,その付加は,社会通念上の商標の同一性を損なわない。また,「基本」の意味は,「物事が成り立つためのよりどころとなるおおもと。 基礎。」(甲27の2),「物事がそれに基づいて成り立つような根本。」(甲28)であって,「速脳速聴基本プログラム」の「基本」は,高速の音声を聞き分ける訓練を行うに当たり,基礎として最初に学ぶべきという意味で,後に「応用」若しくは「発展」等次の段階へと続くことを取引者・需要者に想起,連想させる一般的な記載にすぎないから,自他商品の識別力がない部分である。 したがって,「速脳速聴基本プログラム」の記載のうち,自他商品識別力のある部分は,「速脳速聴」の部分のみであるから,「速脳速聴基本プログラム」は,本件商標と社会通念上同一である。 イ 「速脳速聴基本プログラム」は,本件CDの表面に記載されており,商標として本件商品 に付されていた(商標法2条3項1号)。 1(4) 「速脳速聴 イ 商品自体に直接標章を貼付等しない場合であっても,商品と一体となって用いられているものに標章を付した場合は,商品に標章を用いたのと同視することができることから,商品に標章を付する行為(商標法2条3項1号)には,商品自体に直接標章を貼付等する場合のほか,標章を表示した下げ札を商品にひもで結び付けておく場合や,商品の陳列棚の横又は棚の前面に文字商標等を表示することも含まれる。 本件取扱説明書は,本件商品1ないし3に同梱され,本件取扱説明書のみが販売されたり,独自に定価が定められて,取引の対象となるものではなく,本件登録商標の指定商品である本件CDと一体として販売されることが予定されているのである。このような本件取扱説明書に「速脳速聴 また,本件取扱説明書は,本件予告登録前3年以内に,プランニングラボの販売用ウェブサイトに掲載され,同ウェブサイトにおいて,「速脳速聴 3 本件商品2についての本件商標の使用( ) 本件商品2(「元祖 ジョイント式ハイパー速読術」)は,本件商品1で 1ある本件CD及び本件取扱説明書の他に,「ジョイント式ハイパー速読術」(パソコンの画面上に現れる文字や記号を読むことで,文字を読むスピードがアップするというパーソナルコンピュータ用プログラムを記憶させたCD-ROM)及びトレーニングの解説書等が同梱されているパッケージ商品である。 したがって,本件商品2は,コンピュータ用プログラムを記憶させたCD-ROMを含む商品であり,本件商標の指定商品に含まれる。 (2) 本件商品2の外箱の表面には,「特別限定『速脳速聴 したがって,本件商品2には,本件商標が付されている(商標法2条3項1号)。 被告は,本件商品2に同梱されている本件商品1は,おまけとして付いているものであり,商標法上の商品ということはできない旨主張するが,本件商品1は,定価(9800円)も定められ,独立して取引の対象となるものであり,本件商品2の定価1万9800円との価格のバランスからいっても,本件商品1は単なる景品やおまけでなく,商標法上の商品に当たる。 4 本件商品3についての本件商標の使用( ) 本件商品3(「元祖・ハイパー速読術,速脳速聴,最強の話速変換機デジ 1ヴォ」)は,本件商品1を含む本件商品2及び「最強の話速変換機デジヴォ」で構成されるところ,本件商品3は,コンピュータ用プログラムを記憶させたCD-ROMを含む商品であり,本件商標の指定商品に含まれる。 (2) 本件商品3を構成する本件商品2には,上記のとおり,本件商標が付された本件CD及び本件取扱説明書が同梱され,その外箱には本件商標が付されている。また,本件商品3は,「元祖ハイパー速読術,速脳速聴,最強の話速変換機デジヴォ」という名称であり,本件商品3が,本件商品1を含む本件商品2及び最強の話速変換機デジヴォのセット商品であることからすれば,この「元祖ハイパー速読術,速脳速聴,最強の話速変換機デジヴォ」は,一体としてではなく,読点で区切られたそれぞれの部分が自他商品識別力を有しているというべきであり,「速脳速聴」が,はっきりと他の語から独立し,1つの商品の自他商品識別表示となっている。 そして,「元祖ハイパー速読術,速脳速聴,最強の話速変換機デジヴォ」との語は,発送票(甲11の2),注文確認メール(甲11の1)に記載されているところ,発送票は,「取引書類」であって,発送票の送付は「頒布」であり,注文確認メールは「これらを内容とする情報」であって,注文確認メールの送信は「電磁的方法により提供する行為」(いずれも商標法2条3項8号)に該当する。 |
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被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。 1 本件商品1についての本件商標の使用について( ) 商標法50条においては,登録商標の識別性に影響を与えることなく構成 1部分に変更を加えた商標のみが,登録商標と社会通念上同一と認められる。 本件商品1の「元祖速脳速聴術」という標章においては,「元祖」と「速脳速聴術」とは,間にすきまをへだてて横に配置され,外観上から,「元祖」と「速脳速聴術」とが分離されていることから,「速脳速聴術」を要部であるとみることができたとしても,本件商標は,「速脳速聴」であり,「速脳速聴術」とは同一でない。 そして,「速脳速聴術」は,漢字5文字が一体となり,「速脳速聴」とは別異の観念を表わすものであり,称呼,外観も異にするものであるから,「速脳速聴」と「速脳速聴術」とでは,識別力のある要部が変わったというべきであり,本件商標と「元祖速脳速聴術」とが,社会通念上同一と認められる商標でないことは,明らかである。 原告は,「速脳速聴術」の「術」には,自他商品識別力がないと主張するが,「術」は単独で自他商品識別力を有し,「術」単独で商標出願しても登録適格性を有するものである。また,「術」は,これ単独では意味が特定されず,他の語と一緒になって特定の意味を表わすものであり,本件においても,「速脳速聴」と「術」とが一体となって「速脳速聴術」という特定の観念を表わすものである。したがって,「速脳速聴」と「術」とは一体不可分のものであるから,「速脳速聴術」に接した一般の取引者・需要者は,原告が主張するような,自他商品識別表示としての「速脳速聴」という造語と,自他商品識別力のない,わざ,技芸,技能などの観念を生じるということはありえない。 ( ) 原告は,本件商品1は,「速脳速聴基本プログラム」という記載のある本 2件CD及びその取扱説明書(本件取扱説明書)から構成されていると主張する。 しかし,本件CDの「速脳速聴基本プログラム」という語は,「速脳速聴の基本プログラム」という商品の内容を表示するものであり,自他商品識別標識として機能するような態様での使用,すなわち,「商標的使用」がされているものではない。 また,取扱説明書は,本件商標の指定商品に含まれない。 さらに,原告は,「速脳速聴基本プログラム」の記載のうち,自他商品識別力のある部分は,「速脳速聴」部分のみであるから,「速脳速聴基本プログラム」は,本件商標と社会通念上同一であると主張する。しかし,本件CDに付されている商標は,「速脳速聴基本プログラム」であるから,本件商標「速脳速聴」とは,同一の商標ではないし,「速脳速聴基本プログラム」は,一体として「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生じるものであり,当然,一連一体として観察,称呼しなければならず,本件商標とは,称呼,外観,観念のすべてを異にするものであって,識別力を異にすることが明らかであるから,本件商標と社会通念上同一と認められる商標でない。 ( ) 本件商品1は,速脳速聴基本プログラムを記憶させた本件CDと本件取扱 3説明書とから構成されているが,本件CD及び本件取扱説明書には,いずれも,本件商標である「速脳速聴」も「元祖速脳速聴術」も付されていないので,本件商品1には,本件商標につき,「商品又は商品の包装に標章を付する行為」(商標法2条3項1号)は行われていない。 また,本件CDの表面には,「速脳速聴 2 本件商品2についての本件商標の使用について本件商品2の外箱の表面には,「特別限定『速脳速聴 また,「速脳速聴 3 本件商品3についての本件商標の使用について本件商品3は,「速脳速聴基本プログラム」(本件商品1),「元祖ジョイント式ハイパー速読術」(本件商品2)及び「最強の話速変換機デジヴォ」で構成されているところ,本件商品3は,上記3種類の商品を含んだ商品の名称であるから,一連一体として観察し,称呼しなければならないものであり,これが,本件商標「速脳速聴」と社会通念上同一と認められる商標の使用でないことは明らかである。 また,本件商品3の商標は,「速脳速聴」を含んでいるが,これは,本件商品2に付された「速脳速聴基本プログラム」を略したものと考えられるところ,「速脳速聴基本プログラム」は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできない。 |
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当裁判所の判断
1 プランニングラボと本件商品1ないし3について前記第2の1の当事者間に争いがない事実と,甲4,7ないし14,16ないし18,24,25(枝番を付したものは各枝番を含む。)によれば,プランニングラボは,原告及び原告の父を共同代表取締役とする書籍の出版,電子計算機及びその利用技術の開発,設計,製造,販売並びに輸出入,進学塾の経営,教育セミナーの開催並びにこれらのための教材の企画,製作及び販売等を目的とする会社であること,プランニングラボは,平成15年5月,楽天株式会社に対し,インターネット上の仮想マーケットである楽天市場への出店申込みをし,遅くとも同年9月ころまでには,楽天市場においてウェブサイトを開設して,商品の販売を開始したこと,本件商標の商標権者である原告は,プランニングラボに対して本件商標の使用を許諾し,プランニングラボは本件商標の通常使用権者の地位にあったこと,本件商品1は,本件CDと本件取扱説明書から構成される特別価格9800円の商品であること,本件商品2は,「元祖 ジョイント式ハイパー速読術」という名称の特別価格1万9800円の商品であり,本件CDと本件取扱説明書のほか,「速脳速読のすすめ」と題するマンガ,トレーニングの解説書等が梱包されていること,本件商品3は,「元祖・ハイパー速読術,速脳速聴,最強の話速変換機デジヴォ」という名称の価格5万9800円の商品であり,本件CD,本件取扱説明書,「速脳速読のすすめ」と題するマンガ,トレーニングの解説書等のほか,「最強の話速変換機デジヴォ」が含まれていること,プランニングラボは,本件予告登録前3年以内に,上記楽天市場の自社のウェブサイトを通じて,本件商品1ないし3を販売したことが認められる。 2 本件商品1についての本件商標の使用について( ) まず,プランニングラボが,本件予告登録前3年以内に,本件商品1につ 1いて本件商標を使用していたかどうかを検討すると,甲5,6,16,17(枝番を付したものは各枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア 本件商品1は,上記のとおり,「元祖 速脳速聴術」との名称を付し,本件CD(甲5の1)と本件取扱説明書(甲5の2)とから構成されている商品である。本件CDの表面の上段には,ゴシック体で「速脳速聴基本プログラム」,下段には「新日本速読研究会」(なお,10時10分ころを指している時計の図柄をもって「日」を表現している。)と記載され,本件取扱説明書の表紙には,上段中程に,大きめのゴシック体で「速脳速聴 また,本件取扱説明書の裏表紙には,「『速脳』『速脳速読』『速脳速聴』等は新日本速読研究会( 〔注,原告〕)が保有する商標です。」等 Xと記載されている。 イ 本件商品1は,音声を高速で再生して聴くことで,聴力を刺激し,脳の知的機能を活発化させることを目的とするものである。本件CDには同目的達成のためのトレーニングを行うためのコンピュータープログラムが記録されている。本件取扱説明書は,本件CDの操作方法等が記載された取扱説明書であり,本文においては,「『速脳速聴 ウ 「 」により保存されている,平成16年4月30日(甲 Internet Archive17の3)及び同年7月10日(甲17の4)の楽天市場のプランニングラボのウェブサイトには,本件商品1の広告が掲載され,そこには,「元祖 速脳速聴術」,「聴くだけで頭がよくなる!元祖 速脳速聴術」,「速脳速聴をマスターして新しい自分を発見!」,「速脳速聴トレーニングが脳の知的機能の活性化を促進」,「聴くだけで頭がよくなる速脳速聴術なら年齢に関係なく,だれでも取り組め,脳の老化も防げる」,「特別価格9,800円(税込)送料込」あるいは「特別価格9,800円(税込)送料別」等の記載があり,かつ,「速脳速聴基本プログラム」と記載された本件CDと,「聴くだけで頭がよくなる 速脳速聴 エ プランニングラボは,上記ウの当時,本件CD及び本件取扱説明書から構成される本件商品1を直ちに販売できる状態にあり,一般消費者は,上記ウェブサイト上の「買い物かごに入れる」と記載された部分をクリックし,その後必要な手続をすることで,本件商品1を購入することができた。 ( ) 上記事実によれば,本件CDは,トレーニングを行うためのコンピュータ 2プログラムを記録したものであり,本件取扱説明書は,同プログラムの操作方法を記載したものであって,本件CD及び本件取扱説明書は,併せて,音声を高速で再生して聴くことで,聴力を刺激し,脳の知的機能を活発化させることを目的とする本件商品1を構成しており,これらは,「中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器」に含まれるから,本件商品1は,本件商標の指定商品に当たる。 なお,被告は,本件取扱説明書は,本件商標の指定商品に含まれない旨主張する。しかし,商品が商取引の目的となり得る物である以上,指定商品に含まれる「中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器」の本体のほか,取扱説明書等を含んで一つの商品を形成し,それが包装されて流通するのが通常であることは,当裁判所に顕著である。本件取扱説明書は,上記のとおり,楽天市場のプランニングラボの販売用ウェブサイトにおける本件商品1の広告において,本件CDとともに掲載されており,本件CD又は本件取扱説明書のみが独立して流通するということも考えにくいから,本件CDと一体のものとして市場において取引がされるものであって,本件取扱説明書もまた本件商品1の一部を構成しているものと認めるのが相当である。被告の主張は,採用の限りではない。 ( ) そこで,本件CDに記載されている「速脳速聴基本プログラム」(以下 3「本件関連標章1」という。)について検討する。 ア 甲5の1によると,本件CDの表面の上段には,「速脳速聴基本プログラム」と記載されているところ,同記載方法に照らして,「速脳速聴基本プログラム」の文字が商標法2条1項にいう標章であることは明らかであり,この標章は,本件商品1である本件CDの表面に付されているのであるから,本件関連標章1は,本件CDの商標として使用されているということができる。 被告は,この「速脳速聴基本プログラム」という語は,「速脳速聴の基本プログラム」という商品の内容を表示するものであり,自他商品識別標識として機能するような態様での使用,すなわち,商標的使用がされているとはいえない旨主張する。 しかし,「速脳速聴基本プログラム」の語が,商品の内容を表示する一面を有するとしても,後記のとおり,「速脳速聴」という新たな造語を含み,当該部分それ自体が,自他商品識別力を有するのであるから,本件関連標章1について商標的使用がされていないということはできず,被告の上記主張は採用できない。 イ 進んで,本件関連標章1が,本件商標と社会通念上同一といえるかについて検討する。 本件関連標章1は,「速脳速聴」(本件商標)と「基本プログラム」とが結合した語から成るものである。この構成中の「速脳速聴」の部分は,高速で聴くことによって脳の回転を高めるといった程度の意味を有するものと理解されないこともないが,明確な意味を有するとまではいえず,取引者・需要者において,既存の明確な観念を伴わない新たな造語であると認識するものと認められる。一方,「プログラム」の語は,本件商標の指定商品である電子応用機械器具の分野において,その一種である電子計算機のためのプログラムを示す普通名称であり,これに冠して付加されている「基本」の語は,「物事が成り立つためのよりどころとなるおおもと。 基礎。」(甲27の2,ウェブサイトの「 辞書」),「物事がそれに goo基づいて成り立つような根本。」(甲28,株式会社岩波書店平成3年11月15日発行「広辞苑第4版」)を意味し,後に「応用」若しくは「発展」など次の段階へと続くことを想起,連想させる一般的な記載にすぎないから,本件関連標章1に接した取引者・需要者は,通常,その構成中の「基本プログラム」の部分は,商品の特定のために当該商品の用途等を表示したものと理解して,それ自体を自他商品の識別力を有する部分とは考えないと認めるのが相当である。 そして,「速脳速聴」と「基本プログラム」とは,一体不可分の密接な関係にあるとはいえないし,「速脳速聴基本プログラム」の称呼は,「ソクノウソクチョウキホンプログラム」と著しく冗長であって,この一連一体の称呼によることが取引の実情に即したものであるとは言いがたく,むしろ,取引の実際においては,冒頭の「速脳速聴」の部分に即して「ソクノウソクチョウ」との称呼を生ずるのが通常であるということができる。 そうすると,本件関連標章1の「速脳速聴基本プログラム」の語は,「速脳速聴」の部分において,取引者・需要者の注意を引くものであり,その部分が自他商品の識別力を有するものというべきである。 もっとも,本件関連標章1の「速脳速聴」の部分について,高速で聴くことによって脳の回転を高めるといった程度の意味のものととらえ,本件関連標章1について,一体として「速脳速聴の基本的なプログラム」,あるいは,「速脳速聴に関する基本的なプログラム」との観念を生ずることもあり得ないものではない。しかし,一般には,「速脳速聴」の観念が必ずしも明確でないことに照らしても,「速脳速聴の基本的なプログラム」等の観念が生ずる可能性がないわけではないことによって,「速脳速聴」の部分の自他商品識別力が否定されるものではないというべきである。 そして,この「速脳速聴」は,本件商標と同一なのであるから,本件関連標章1は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標とみるのが相当であり,上記1及び2( ),( )に照らせば,プランニングラボは,本件予 12告登録前3年以内に,本件関連標章1により,本件商標の指定商品である本件商品1につき,商標法2条3項1号及び8号にいう本件商標の「使用」をしていたというべきである。 ウ ところで,被告は,本件CDに付されている商標は,「速脳速聴基本プログラム」であるから,本件商標「速脳速聴」とは,同一の商標ではないし,「速脳速聴基本プログラム」は,一体として「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生じ,当然,一連一体として観察,称呼しなければならず,本件商標とは,称呼,外観,観念のすべてを異にするものであり,識別力を異にすることが明らかであるから,本件関連標章1は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標でないと主張する。 しかし,「速脳速聴基本プログラム」がそれ自体一つの商標であるとしても,上記のとおり,取引の実際においては,「速脳速聴」の部分,すなわち,本件商標に相当する部分が商標として自他商品識別力を有しているものというべきである。また,「速脳速聴基本プログラム」から,一体として「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることは,上記のとおりであるが,そのことから,このような結合語を,直ちに一連一体として観察,称呼しなければならないものとはいえず,一体として「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることによって,「速脳速聴」の部分の自他商品識別力が否定されるものではないことも,上記のとおりである。 ( ) 次に,本件取扱説明書の表紙に記載されている「速脳速聴 ア 本件関連標章2が,本件商標と社会通念上同一といえるかについてみると,本件関連標章2は,「速脳速聴」と「基本プログラム」とが そうすると,本件関連標章2は,本件関連標章1以上に,「速脳速聴」の部分に自他商品識別力があるということができるから,本件商標と社会通念上同一と認められる商標であり,プランニングラボは,本件関連標章2によっても,本件関連標章1と同様,本件商標の使用をしていたといわなければならない。 イ 被告は,本件CDの表面には,「速脳速聴基本プログラム」と記載されており,「速脳速聴 しかし,前記のとおり,本件CDと本件取扱説明書から本件商品1が構成されており,本件CDの表面に「速脳速聴基本プログラム」と,本件取扱説明書の表紙に「速脳速聴 (5) 以上検討したところを総合すると,本件商標の通常使用権者であるプランニングラボは,本件予告登録前3年以内に,本件商標の指定商品につき,本件商標を使用していたものと認めることができる。したがって,これと異なる審決の判断は誤りであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。 3 以上によれば,本件商品2及び3に付された標章について検討するまでもなく,原告の取消事由の主張は理由があるから,審決は違法として取消しを免れない。 よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 宍戸充 |
裁判官 | 柴田義明 |