関連審決 | 不服2004-12623 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成16ワ11265損害賠償等請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 包装 / 識別機能 / 指定商品 / 指定役務 / 記述的商標(3条1項3号) / 品質誤認(4条1項16号) / 取引の実情 / 補正 / 外国 / |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10100号
審決取消請求事件
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原告 株式会社ゼイヴェル 訴訟代理人弁理士網野友康 同 初瀬俊哉 同網野誠 同 石井茂樹 被告 特許庁長官中嶋 誠 指定代理人 橋本浩子 同 野本登美男 同 伊藤三男 同 青木博文 同 小林和男 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/07/31 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2004-12623号事件について平成18年1月23日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
本件は,原告が後記商標登録出願をしたところ,特許庁から拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,同庁が請求不成立の審決をしたので,その取消しを求めた事案である。 |
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当事者の主張
1 請求原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成15年7月31日,後記本願商標につき商標登録出願(以下「本願」という。)をなし,その後,平成16年4月21日,指定商品について補正をしたが,平成16年5月24日に特許庁から拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求した。 特許庁は,同請求を不服2004-12623号事件として審理した上,平成18年1月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成18年2月3日原告に送達された。 (2) 本願の内容ア商標イ 指定商品・指定役務前記平成16年4月21日付け補正(甲12)による変更後の本願の指定商品・指定役務は,下記のとおりである。 記事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青【第16類】写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立てペットに関する知識の教授,ペットの美容・手入れ・運動・世話の教授,【第41類】技芸・スポーツ又は知識の教授,ペットに関する知識の教授に関する情報の提供,ペットの美容・手入れ・運動・世話の教授に関する情報の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供,研究用教材に関する情報の提供およびその仲介,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナー・研修会・講習会の企画・運営又は開催,セミナー・研修会・講習会の企画又は運営に関する情報の提供,ペットの調教,ペットの調教に関する情報の提供,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,電子書籍の制作,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,動物に関する映画の企画・運営・上映・制作又は配給,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオ・コンパクトディスク・光学式ビデオディスクの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,キャンプの企画・運営又は開催,その他のスポーツの興行の企画・運営又は開催,パーティーの企画又は運営,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,フリーマーケットの企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供又はこれらに関する情報の提供,通訳,翻訳,書画の貸与,写真の撮影,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,美術品の貸与,メガホンの貸与,舞台用小道具の貸与,インターネットを利用した興行場の座席の手配その他の興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,録画済みマイクロフィルムの貸与,おもちゃの貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,美術用モデルの提供,電子計算機端末による通信を用いて行うゲーム又はカラオケのための映像及び楽曲・歌詞の提供,ビデオテープの編集,インターネット又はコンピュータネットワークを通じた対戦ゲームの提供,通信回線を利用したゲームの提供,インターネット上のゲーム大会の企画・運営・開催,インターネット上で遊戯する電子ゲームの提供,対戦ゲーム大会の企画・運営・開催,録音・録画済CD-ROM原盤の制作,家庭用テレビゲームおもちゃ専用のプログラムを記憶させた磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM・RAM及び磁気テープの貸与,テレビゲームイベントの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営に関する情報の提供,ビデオテープ映画の上映に関する情報の提供,コンピュータグラフィックスによる映画の制作,動物に関する映画の企画・運営・上映・制作又は配給に関する情報の提供,映画の上映・制作又は配給に関する情報の提供,演芸の上演・演劇の演出又は上演・音楽の演奏に関する情報の提供,放送番組の制作に関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)又はこれらに関する情報の提供,放送番組の制作における演出に関する情報の提供,テレビジョン受信機の貸与に関する情報の提供,ラジオ受信機の貸与に関する情報の提供,図書の貸与に関する情報の提供,レコード又は録音済み磁気テープの貸与・録画済み磁気テープの貸与に関する情報の提供(3) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商標の「ペット」「pet」は「愛玩動物」を,「コレクション」「collection」は「収集・収集品」等を意味するから,全体として「愛玩動物を集めたもの」の意味合いを有するところ,これを指定商品又は指定役務のうち,例えば,印刷物,電子出版物の提供等に使用したときは,その品質及び内容を表示するものであって自他商品・役務識別標識としての機能を果たし得ないから商標法3条1項3号に該当し,それ以外の商品又は役務に使用するときは,商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから商標法4条1項16号に該当する,としたものである。 (4) 審決の取消事由しかしながら,審決は,以下に述べる理由により,違法として取り消されるべきである。 ア 本願商標から生ずる意味についての認定の誤り「本願商標は,……これに接する取引者,需要者をして,……全体と(ア) 審決は,して『愛玩動物を集めたもの』の意味合いを把握,認識させるものである」(3頁第と認定した。 2段落)しかし,本願商標が,「愛玩動物」を意味する「pet」と「収集」を意味する「collection」という平易な英単語を結合させて成るとしても,愛玩動物を収集することを内容とする商品又は役務について「愛玩動物を集めたもの」であることを表示するために使用されるとは,直ちに認めることはできない。わが国において「コレクション」の語は,英語の「collection」が有する広い意味の「収集」ではなく,むしろ,「蒐集」すなわち「趣味として集めること」を第一義的に意味するものとして用いられているから,「○○コレクション」は,利益を得るという商業的な目的をもって他人に販売するために同種のものを集めた商品等を連想させるものではない。 現に,原告の調査によれば,「pet collection」や「ペットコレクション」の文字が,本願商標の指定商品である「印刷物」や,第41類の役務に関わりの深い録画済ビデオ等に使用されている事実は存在しなかった。代表的なネット書店(DVD等も取り扱う。)のサイトにてキーワード「ペットコレクション」を検索子として検索したところ,愛玩動物を集めた内容の商品は,1件たりともヒットしなかった。 このように,本願商標が,商品の品質又は役務の質を表すものとして使用されている事実は存在しないにもかかわらず,審決が,本願商標は自他商品(役務)識別標識として機能しないと認定したのは,明らかに誤りである。 (イ) 上記(ア)のとおり,本願商標が「愛玩動物を集めたもの」の表示として一般に使用されていない以上,本願商標が登録されたとしても,愛玩動物の写真を集めた写真集等の商品や電子出版物の提供等の役務には,内容をより直接的に表す題号や名称(例えば「ペット収集」「愛玩動物集合」「ペット集結」「愛玩動物写真集」「ペット大全」「愛玩動物目録」「ペット全書」「愛玩動物一覧」等)を使用すれば足りるので,原告にその使用を独占させたとしても何らの不都合は生じない。 (ウ) 審決は,本願商標が「愛玩動物を集めたもの」の意味を生ずることインターネット検索(2006年1月5日)においても,例えば「人形」+「コは,「レクション」が人形を集めたもの………,「動物」+「コレクション」が動物を集めたもの………,「着物」+「コレクション」が着物を集めたもの………,「カメラ」+「コレクション」がカメラを集めたもの………として普通に使用されている事実かと判断した。 らも認められるところである」(2頁第2段落)しかし,このインターネット検索の結果は,審判手続中に原告に示されておらず,これに対する反論の機会さえ与えずに審決を行ったのであるから,審決には審理不尽の違法がある。 イ 過去の登録例に反することの誤り審決は,審判請求人である原告が「ホースコレクション」,「RAILWAYCOLLECTION」,「アニメコレクション」が商標登録されていることを指摘「本願商標は,………該登録例とは商標の態様等を異にするものであしたのに対し,り,それをもって本願商標における判断の基準とすることは適当でない」(3頁8行以と判断した。 下)しかし,本願商標は,前記のとおり,通常の字体の欧文字と片仮名文字とを二段併記したありふれた態様のものであり,各登録例は標準文字で書されて成るものであるから,態様の上で登録例との間に顕著な差があるとは到底いえない。このような曖昧な判断基準でなされた審決には事実認定に誤りがあり,かつ審理不尽の違法がある。 また,「ホースコレクション」,「RAILWAY COLLECTION」,「アニメコレクション」は,現実に馬,鉄道,アニメを多数集めた写真集や解説書等の書籍,カレンダー,カタログ,録画済ビデオテープ,録画済DVD等が存在するにもかかわらず,自他商品識別機能を有すると認められて登録されたもので,本願商標もこれらの登録商標とは事情において大きな差異はなく,審査の衡平及び法適用の予測可能性の観点からしても,本願商標は登録されてしかるべきである。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)(2)(3)の各事実は認める。同(4)は争う。 3 被告の反論審決の認定判断は正当であり,審決に原告主張の違法性はない。 (1) 本願商標から生ずる意味についての認定の誤りをいう主張に対しア 本願商標は,「ペットコレクション」の文字と「pet collection」の文字を上下二段に表して成るものであるところ,その構成中「pet」「ペット」の文字は,「愛玩動物」を意味する平易な英語及び外来語であり,「collection」「コレクション」の文字は,「集めること。収集。収集物。」等を意味する平易な英語及び外来語であるから,これに接する取引者,需要者をして,全体として「愛玩動物を集めたもの」の意味合いを把握,認識させるものである。このことは,事物等を表す語と「コレクション」を結合した語が,その事物等を集めたものの意味合いを有する語として普通に使用されている事実からもいえることである。 また,本願の指定商品である「印刷物」に属する書籍,カレンダー等や,本願の指定役務である録画済み磁気テープの貸与等において,愛玩動物を集めた内容のものが販売・提供されていることは周知の事実である。 そうすると,本願商標を第16類の指定商品の「印刷物」中の例えば,「絵はがき,カタログ,カレンダー,書籍,パンフレット」等に使用したときは,取引者,需要者によって,愛玩動物を集めた内容のカレンダー等を表したにすぎないものと一般に認識されるというべきであり,また,本願商標を第41類の指定役務中,例えば,「電子出版物の提供,電子書籍の制作,書籍の制作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),映写フイルムの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ビデオテープの編集」に使用したときは,取引者,需要者によって,愛玩動物を集めた内容の録画済み磁気テープ等を提供する役務を表したにすぎないものと一般に認識されるというべきである。 したがって,本願商標は,前記指定商品又は指定役務について使用したときは,単に,商品の品質又は役務の質を表示するものであり,また,それ以外の商品又は役務に使用したときは,その商品の品質又は役務の質について誤認を生ずるおそれがあり,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。これと同旨の審決に誤りはない。 イ 原告の主張は,以下のとおりいずれも失当である。 (ア) 原告は,仮に本願商標が登録されたとしても,愛玩動物の写真を集めた写真集のような商品や電子出版物の提供のような役務には,例えば「ペット収集」「愛玩動物集合」のような題号や名称を使用すれば足りるので,原告にその使用を独占させたとしても何の不都合も生じることはない旨主張する。 しかし,他の用語をもって代替できることと,商品又は役務の品質又は質,内容を表示するものと認識させる商標を一私人に独占させることが妥当でなくその登録を認めないこととは別の問題である。 (イ) 原告は,本願商標が商品の品質又は役務の質を表示するものとして使用される可能性が存在せず,かつ本願商標を使用させたとしても取引の混乱を招くことはないにもかかわらず,審決は誤った事実認定を行った旨主張 る。すしかし,近い将来において,本願商標が商品の品質又は役務の質を表示するものとして使用される可能性が存在しないとはいえない。上述のとおり,「ペット」及び「コレクション」の文字が平易な用語であって,指定商品及び指定役務に関連する用語であることから,商品等の内容を簡潔に表すために何人もその使用を欲するということができる,このことは,現に,書籍について,「ペット動物コレクション」のように,同一の題号の中に「ペット○○コレクション」の文字が採択使用されている事実(乙10-4)からも窺い知れる。そうすると,近い将来,「ペットコレクション」のみの題号が使用される可能性も十分にあるといえる。そして,このような,指定商品及び指定役務との関係において,当該商品の品質又は役務の質・内容等を表示するために,取引に際し必要適切な標章として何人もその使用を欲するものについて,特定人によるその独占使用を認めるのは妥当でない。 (ウ) 原告は,「コレクション」の語は「蒐集」すなわち「趣味として集めること」を第一義的に意味する語として汎用されているのであり,他人に販売するために同種のものを集めたという内容の商品(役務)のことを表す場合には,「コレクション」「collection」の語では商品(役務)の品質(質)を需要者,取引者に的確に了知させ難いために,意図的に使用が避けられている旨主張する。 しかしながら,「コレクション」の語は,「趣味としての収集」を意味する語に限って知られているものではない。このことは,各種の辞書・辞典類において,必ずしも「趣味としての収集」に限定して説明されていないことから明らかであるし,現に,「コレクション」の語が事物等を集めたものの意味合いを有する語として「○○コレクション」のように普通に使用されている事実がある。 したがって,原告の主張はその前提において妥当でない。 (エ) 原告は,審決が判断の根拠の一つとして採用したインターネット検索の結果について原告に通知せず,反論の機会さえ与えずに審決を行ったのは違法である旨主張する。 しかし,審決の判断は,上記アのとおり「ペット」「pet」の文字が「愛玩動物」を,「コレクション」「collection」の文字が「趣味として集めること。収集。収集品。」等をそれぞれ意味する(平易な)語であることを理由にしているのであって,その判断に妥当性があることの一根拠として,一般に使用されている事実をインターネット検索によって挙げたものであり,インターネット検索の結果のみに基づいて判断したものではない。 (2) 過去の登録例に反することの誤りをいう主張に対し登録出願された商標が登録され得るものであるか否かの判断は,個々の商標ごとに個別具体的に検討判断されるものであり,本願商標が商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するか否かの判断が,他の登録例に拘束されるものでない。したがって,原告の挙げた登録例等があることによって,本願商標が登録され得ないものであるとの審決の判断の当否が左右されるものではない。 |
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当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(本願の内容)及び(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 そこで,以下において,原告の主張する取消事由について審決の当否を判断する。 2 本願商標から生ずる意味についての認定の誤りをいう主張について(1) 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,このような商標は,商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであるとともに,ことによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔判例時報927号233頁〕参照)。 (2) そこで,まず,本願商標を構成する「pet collection」又は「ペットコレクション」の文字が,自他商品識別力を有するか否かについて検討する。 ア 本願商標の構成中「pet」「ペット」の文字が,「愛玩動物」を意味する平易な英語及び外来語であり,「collection」「コレクション」の文字が,「集めること。収集。収集物。」等を意味する平易な英語及び外来語であることは,いずれも公知の事実である。 イ そして,インターネット上のウェブサイトには,事物等を表す語と「コレクション」を結合した語について,以下のような記載が存在する。 (ア) 「人形コレクション」の語につき,「Hello Kitty Collection」の見出しの下,「ハローキティの歳時記/高級陶人形コレクション/全十二組」と記載されたもの。 ( 乙8-3〕)http://www.iei.co.jp/kitty/okazari1.html〔(イ) 「動物コレクション」の語につき,「驚異の未知動物コレクション(大型本)」の見出しの下,「本書は,数世紀にもわたる未知動物たちの記録を集めた一大博物学的コレクションである」と記載されたもの。 ( 〔乙10-2〕)http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4766113608(ウ) 「着物コレクション」の語につき,「伝統文様から知る着物コレクション」の見出しの下,「飛び鶴」「扇面」等の18種類の文様の写真が掲載されたもの。 (〔乙12-3〕)http://shibori.jp/monyous2.htm(エ) 「カメラコレクション」の語につき,「カメラコレクション」の見出しの下,「当館が所蔵する日本有数の映像機器(カメラ)コレクションのうち,約1,600点を写真付きで紹介」と記載されたもの。 ( 〔乙14-3〕)http://www.museum.city.nagoya.jp/jigyo/book.html(オ) 「時計コレクション」の語につき,「英国In House(イン・ハウス)社時計コレクション」の見出しの下,6種類の時計の写真が掲載されたもの。 ( 〔乙15-4〕)http://store.yahoo.co.jp/3df/inhouse.htm(カ) 「カップコレクション」の語につき,「マグカップコレクション」の見出しの下,30種類のマグカップの写真が掲載されたもの。 http://www.noritake.co.jp/tableware/system/shopping/a.cgi?mode(〔乙16-4〕)=productlist&shap_group=35240ウ 上記イの諸例によれば,事物等を表す語と「コレクション」を結合した語は,その事物等を集めたものの意味合いを有する語として普通に使用されているものと認められる。そうすると,本願商標の「ペットコレクション」及び「petcollection」の語に接した取引者,需要者も,「愛玩動物を集めたもの」の意味合いを把握,認識するというべきである。 エ 一方,本願の指定商品中の「印刷物」に属する商品であるカレンダーには,以下のとおり愛玩動物についての記録や写真を集めたものの例が存在する。 (ア)「わんにゃん ペットのカレンダー」(http://www.age.jp/~hakubund/karenda/index.html〔乙17-2〕)(イ)「ペットカレンダー 2006 Cats」http://www.amazon.co.jp/gp/product/4635847063/503-9614812-5931102(〔乙17-3〕)?v=glance&n=465392(ウ)「あなたのペットの写真で作るラブリーカレンダー」(http://www.forestowl.com/Calender.html〔乙17-4〕)(エ)「オリジナルカレンダーペット版」(http://www.b-cause.info/03interior/05calendar_pet/index.html〔乙17-5〕)オ そうすると,「ペットコレクション」及び「pet collection」の文字から成る本願商標を,例えば,本願の指定商品第16類中の「印刷物」に属する商品であるカレンダーに用いた場合,これに接する取引者,需要者は,当該カレンダーが,上記エの例のような愛玩動物の記録や写真を集めたものであると認識するものと認められる。このように,本願商標は,商品の品質を表示するものとして認識されるにとどまり,自他商品識別力を有しない。 また,「ペットコレクション」及び「petcollection」の語は,愛玩動物の記録や写真を集めたカレンダー等を製作・販売しようとする者が,当該商品の内容を適切に表現するために用いようとするものであるから,これを特定人に独占させることは公益上適当でないものというべきである。 (3) したがって,上記(2)アに述べた商標法3条1項3号の趣旨に照らして,本願商標が同号に該当することは明らかであって,これと同旨の審決の判断に誤りはない。 (4) 審決の上記判断が誤りであるとして原告が主張する点は,以下のとおり,いずれも採用することができない。 ア 原告は,「コレクション」の語は「趣味として集めること」を第一義的に意味する語として汎用されているから,他人に販売・提供するために同種のものを集めたという内容の商品又は役務のことを表示するものではないと主張する。 しかし,我が国において「collection」ないし「コレクション」の語は,「趣味としての収集」の意味に限って用いられているものではない。 このことは,広辞苑第5版(甲7)に,「コレクション」の語義として「A収集品。特に,・・・書物などの収集品」が挙げられ,また,複数の「第2版外来語辞典」角川書店1977年1月30日発行〔乙4〕,「増補外外来語辞典(来語辞典」東京堂出版昭和47年1月10日発行〔乙5〕,「日本語になった外国語辞典第)においても,「コレクション」は3版」集英社1994年3月15日発行〔乙6〕「収集」又は「収集品」を意味するものとされ,「趣味としての収集」に限定されていないことからも明らかである。 そして,現に,上記(3)イのとおり,「コレクション」の語は,事物等を集めたものの意味合いを有する語として「○○コレクション」のように普通に使用されているものである。 イ 原告は,「pet collection」又は「ペットコレクション」が「愛玩動物を集めたもの」の表示として使用されている実例はないから,仮に本願商標が登録されたとしても,愛玩動物の写真を集めた写真集のような商品等には,例えば『ペット収集』『愛玩動物集合』のような名称を使用すれば足りるので,原告にその使用を独占させたとしても不都合は生じない旨主張する。 しかし,「pet collection」又は「ペットコレクション」が「愛玩動物を集めたもの」の表示として使用されている例が仮に見当たらないとしても,将来において,本願商標が商品の品質又は役務の質を表示するものとして使用される可能性が存在しないと断定できるものではない。上記のとおり,「ペット」及び「コレクション」の文字が平易な用語であって,指定商品に関連する用語であることから,商品の内容を簡潔に表すために何人もその使用を欲するということができるから,将来,「ペットコレクション」のみから成る表示が使用される可能性も十分にあるといえる。そして,このように,指定商品及び指定役務との関係において,当該商品の品質又は役務の質を表示するために,取引に際し必要適切な標章として何人もその使用を欲するものについて,特定人によるその独占使用を認めることは妥当でない。 また,他の用語をもって代替できるからといって,商品の品質又は役務の質を表示するものと認識される商標を一私人に独占させることが妥当でないことに変わりはないから,その商標登録を許すことを相当とするための理由にはなり得ない。 ウ 原告は,審決が判断の理由にインターネット検索の結果を記載していることを取り上げ,原告にこれを示すことなく反論の機会を与えずに行われた審決には審理不尽の違法があると主張する。 しかし,審決の判断において,本願商標の「ペットコレクション」及び「pet collection」が,全体として「愛玩動物を集めたもの」の意味合いを把握,認識させるものであると判断したのは,その構成中の「ペット」「pet」の文字が「愛玩動物」を,「コレクション」「collection」の文字が「収集」「収集品」等をそれぞれ意味する平易な常用語であることを根拠にしているのである。審決が,インターネット検索の結果に言及しているのは,事物を示す平易な常用語の例としての「動物」「人形」「カメラ」等と「コレクション」とを結合した「動物コレクション」等が,当該事物を収集したものという意味合いを有することを明らかにすることによって,上記判断の根拠を補強しているにすぎない。 したがって,インターネット検索の結果について,審判請求人たる原告に検討・反論の機会を与えなかったことは,審判手続上の違法の問題を生ぜしめるものではない。また,本件訴訟における原告の主張を踏まえても,インターネット検索の結果が,審決の判断が正しいことを裏付けるものであることは上記(2)のとおりである。 3 過去の登録例に反することの誤りをいう主張につき原告は,「ホースコレクション」,「RAILWAY COLLECTION」,「アニメコレクション」の文字から成る商標が現に登録されていることに照らして,審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,特許庁の手続により登録された商標であっても,無効原因を内包していれば無効となることもあり得る。また,出願された商標が法3条1項3号に該当するか否かは,当該商標の査定時又は審決時において,指定商品又は指定役務の取引の実情等を考慮し,個別具体的に判断されるものであるから,原告の挙げた商標登録の例があるからといって,本願商標が登録されるものであるということにはならない。本願商標が,商品の品質又は役務の質を表示すると一般に認識されるものであって,自他商品識別標識としての機能を果たし得ないことは上記2のとおりであり,このことは,原告の挙げた商標登録の例が存在することによって左右されるものではない。 4結語以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本願商標は商標法3条1項3号又は4条1項16号に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
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裁判官 | 岡本岳 |
裁判官 | 上田卓哉 |