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関連審決 取消2004-31516
関連ワード 指定商品 /  通常使用権 /  国内 /  警告 /  パリ条約 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10052号 審決取消請求事件
原告 中環股(偏は「イ」,つくりは「分」という文字)有限公司
訴訟代理人弁護士 高松薫
同 土屋奈生
同 大澤俊行 最上正太郎 訴訟代理人弁理士
被告リッタルゲゼルシャフトミットベシュ レンクテル ハフツング ウント コン パニー コマンディトゲゼルシャフト
訴訟代理人弁護士 加藤義明
同木村育代
訴訟代理人弁理士アインゼル・フェリックス=ラインハルト
同 山崎 和香子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/08/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が取消2004-31516号事件について平成17年9月28日にした審決を取り消す。
争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯被告は,指定商品を第9類「測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」とし,「CMC」の文字を標準文字で横書きしてなる登録第4240483号商標(平成9年9月12日登録出願(パリ条約による優先権主張・1997年3月12日,ドイツ連邦共和国),平成11年2月12日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は,平成16年11月24日,商標法50条1項に基づいて,本件商標につき,その指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」についての商標登録の取消しを求める審判を請求し,同請求は,同年12月13日登録された(以下「本件予告登録」という。)。
特許庁は,上記審判請求を取消2004-31516号事件として審理した結果,平成17年9月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年10月11日原告に送達された。
2 審決の理由別紙審決書の写し記載のとおりである。要するに,本件予告登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者であるリタール株式会社(以下「リタール社」という。)が請求に係る指定商品「電子応用機械器具」に含まれる「ラック内監視システム」(以下「本件商品」という。)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことが認められるので,その商標登録を取り消すことができないというものである。
当事者の主張
1 原告主張の審決の取消事由本件商品は,本件商標の指定商品である「電子応用機械器具」に該当しないから,本件商標が通常使用権者によって上記指定商品について使用されているとした審決の認定判断は誤りである。なお,リタール社が,本件商標の通常使用権者であり,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商品に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたとの審決の認定事実は認める。
(1) 審決は,「使用商品を,ICカードリーダー,磁気カードリーダー,各種センサーなどの電子応用機器を用いてラック内に収納された機器のセキュリティをトータルに監視するシステムと捉え,システムの本質的な機能が電子の作用を応用したものであるか否かという観点から見れば,使用商品を「電子応用機械器具」の範疇に属する商品であると認めて差し支えない」(審決書9頁7行〜12行)として,本件商品が「電子応用機械器具」に該当すると判断しているが,以下に述べるとおり誤りである。
ア 「電子応用機械器具」とは,電子の作用を応用したものでその機械器具の機能の本質的な要素としているもの,言い換えれば,電子の物理的性質,挙動を直接に利用し,所期の目的を達成する機械器具をいうところ,本件商品のICカードリーダー及び磁気カードリーダーは,ドアロック解錠用のものであり,あくまでドア開閉のための鍵の一部として使用されているにすぎないから(甲1の3頁「ドア開閉の権限」等),電動式扉自動開閉装置にあたるものであって,電子応用機械器具にはあたらない。
また,本件商品の各種センサーは,温度等の物理量の計測器又は変換機であり,測定機械器具,すなわちデータや数値を測定する機械器具にあたるものであって,電子応用機械器具とはいえない。
審決は,実質的な理由を一切示さないまま,上記ICカードリーダー,磁気カードリーダー及び各種センサーが電子応用機械器具に該当すると判断し,更に上記カードリーダー,各種センサーを利用した本件商品が「電子応用機械器具」の範疇に属する商品であると判断しているが,本件商品が電子の作用を応用したものであることについて,合理的な理由を示していないから,審決の判断には不当・不備がある。
イ 本件商品は,プロセシングユニット,センサーユニット,各種センサー,さらに必要に応じてマスターユニットの組合せから構成されるもので,ラック内の機器の監視,セキュリティという機能をその本質とするものであり,これらの機能は各種センサーによる異常の感知,それに対する警告及びファン制御による温度,湿度調節という各種の機能を組み合わせることで成立し,その全体としてのシステムをみれば,それは電子の作用を応用しない方法によって構成されている。
また,本件商品の本質的機能は,データ,数値の測定と,それを離れた場所から目的どおりに作動させることにあり,それは,遠隔地からデータを測定し,機械や装置を目的どおり作動させるための遠隔測定制御機械器具の性質そのものであるから,本件商品は,「電気通信機械器具」中の「遠隔測定制御機械器具」又は「測定機械器具」と分類すべきものである。
本件商品の機能の本質的な要素が電子の作用を応用しないものである以上,本件商品はあくまで「電子計算機を利用した機械器具」にすぎず,電子応用機械器具には該当しない。これは,例えば,家庭用の空調機,冷蔵庫,電話,各種調理器,テレビ,自動車,保安設備などに多数の電子計算機が組み込まれていたとしても,それらが市場において需要者により電子計算機ないし電子応用機械器具として扱われることはなく,それぞれ,空調機,冷蔵庫,電話,各種調理器,テレビ,自動車,保安設備と認識され,当該商品区分に分類されていることと同じである。
今日全てのプラント,工作機械,公共の各種管制システム,行政システム,運輸交通システム,金融決済システム等ほとんど全ての機械器具及びシステムはコンピュータに依存しているが,それらの中で用いられている監視システムが電子応用機械器具として取引されることはない。
ウ 被告は,本件商品を構成する各機器のうちプロセシングユニットが,全ての組合せに欠かせないものであり,本件商品の本質的機能を果たす部分であると主張する。
しかし,本件商品においては,プロセシングユニットのほかにも,センサーユニット,各種センサー等もプロセシングユニットと同様に本件商品の最小単位を構成するものであり,プロセシングユニットが本件商品の最小単位を構成するものであるからといって,それが本件商品の本質的機能を果たす部分ということにはならない。
また,本件商品はラック内の監視・保護・セキュリティをその目的とするものであるから,その機能の本質は,各種センサーによる状況の監視,それに対するアラームによる警告,ファン等による温度,空調調整,ロックシステムによる盗難防止等,実際にラックに取り付けられているセンサーや冷却装置,アラーム等がその機能の中枢にあり,センサーから送られてきた情報に応じた動作をさせること自体は機能の本質とはいえない。審決も,本件商品を「ICカードリーダー,磁気カードリーダー,各種センサーなどの電子応用機器を用いてラックに収納された機器のセキュリティをトータルに監視するシステムと捉え」として,本件商品で中心的な機能を果たすのが各種センサー等であるとしており,プロセシングユニットについては特に触れていない。
このように本件商品の機能の本質は,ラックの監視,セキュリティを行うことにあり,それは各種センサー等の働きによって行われているのであって,プロセシングユニットによって行われているわけではなく,プロセシングユニットは,与えられた情報に基づき,行うべき動作の判断を行っているのみであって,実際に監視,セキュリティという機能を行っているのはセンサー等による電子を応用しない方法によってなされているから,本件商品は,電子応用機械器具には該当しない。
仮に,本件商品が電子応用機械器具にあたるとすると,動作の判断をコンピュータが行っている機械器具の全てが電子応用機械器具に該当するということにもなりかねないが,この結論が不当であるのは明らかである。
(2) 以上のとおり,本件商品は,電子の作用を応用したものでその機械器具の機能の本質的な要素としているものとはいえず,電子応用機械器具に該当しないから,これが電子応用機械器具に該当するとした審決の認定判断は誤りである。
2 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 本件商品は,プロセシングユニット,センサーユニット,各種センサー,又は必要に応じてマスターユニットの組合せから構成され,サーバーラック内に収納されたコンピュータのセキュリティを行う。この監視システムの最小単位は,用途に応じたセンサー,センサーユニット,プロセシングユニット,及びそれらに対応した電源ユニットである。本件商品は,上記に述べる複数の機器の組合せにより,コンピュータのラック内の監視,セキュリティという機能を果たすが,各機器のうち,プロセシングユニットは,全ての組合せに欠かせないものであり,本件商品の本質的機能を果たす部分である。
すなわち,本件商品は,各種センサーやカードリーダーが感知した情報を,電気信号に置き換え,プロセシングユニットに送り,プロセシングユニットが送信された情報をプログラミングに従って機械内部で演算し,その結果を,ネットワークを通じてパーソナルコンピュータやワークステーションに送信することによって,管理者が,ラック内の状況を確認することを可能にするという仕組みを持つ。逆に,管理者の側から,情報を入力して各種センサーや扉の開閉装置に動作を行わせることもできる。この場合,入力された情報は,プロセシングユニットに送信され,その内部で演算され,その結果が各種センサー等に送信され,各種センサーは送信された命令に従って作動する。このように,本件商品は,ラック内に生じ得る様々な状況を監視し,安全な環境を保つことをその本質的機能とするものであり,その機能を果たす中枢部分であるプロセシングユニットは,監視を行うためのプログラミングを実行する演算装置,すなわちコンピュータであるから,電子の作用の応用をその機能の本質的な要素とするものである。
したがって,本件商品が電子応用機械器具に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。
(2)ア 原告は,本件商品はラック内の機器の監視,セキュリティという機能を本質とし,全体としてのシステムをみれば,電子の作用を応用しない方法によって構成されていると主張する。
確かに,本件商品は,各種センサーによる異常の感知,それに対する警告及びファン制御による温度,湿度調節という各種の機能を組み合わせることで成立しているが,本件商品の本質的な機能は,データの測定や,扉の開閉などという個々のセンサーの動作自体や機械器具の遠隔制御ではなく,各種センサーから情報を集め,種々の状況,情報に応じた動作をさせて,監視とセキュリティという目的に応じてラック内を一定の状態に保つことにあるから,個々のセンサー等の働きを統合させる機能がその中核となり,その役目を果たすのがプロセシングユニットである。各種センサー等によって感知された情報を,電子の作用を応用した演算装置によって,プロセシングユニットが集約して,ラック内の状態を把握し,プログラミングに従った情報処理を行って,各種センサーに個別の動作をさせることによって,本件商品の本質的な機能であるラック内の監視,セキュリティという機能が果たされるのである。
したがって,本件商品の全体としてのシステムをみれば,ラック内の監視,セキュリティ機能を果たすという本件商品の機能は,電子の作用を本質的な要素としている。
また,電子応用機械器具には,電子計算機そのもののみならず,それらの周辺機器も含まれる。本件商品の監視対象は,ラック内に収納されたコンピュータであるから,本件商品はコンピュータの周辺機器として扱われるべきものである。したがって,その意味においても,本件商品は,「電子計算機」と同様,電子応用機械器具に該当する。
イ 原告は,審決は,実質的な理由を一切示さないまま,本件商品のICカードリーダー,磁気カードリーダー及び各種センサーが電子応用機械器具に該当すると判断し,更に上記カードリーダー,各種センサーを利用した本件商品が「電子応用機械器具」の範疇に属する商品であると判断しているが,本件商品が電子の作用を応用したものであることについて,合理的な理由を示していないから,審決の判断には不当・不備があると主張する。
しかし,審決は,ICカードリーダー,磁気カードリーダー及び各種センサーが電子応用機械器具に該当することを直接の理由として本件商品が電子応用機械器具に該当すると判断しているわけではなく,システムの本質的な機能が電子の作用を応用したものであるか否かという観点からみて本件商品を電子応用機械器具の範疇に属する商品と認められると判示したものであって,ICカードリーダー,各種センサー等が電子応用機械器具に該当するか否かは,本件商品が電子応用機械器具に属するか否かの議論とは直接関係がない。
なお,ICカードリーダー,磁気カードリーダーは,電磁誘導など電子の作用を応用したものであるから,電子応用機械器具に該当し,また,これらを利用した扉自動開閉装置は,電動式扉自動開閉装置ではなく,電子応用扉自動開閉装置として,電子応用機械器具に該当するものである。
当裁判所の判断
1 本件商品の指定商品「電子応用機械器具」該当性について(1)ア 甲1(リタール社発行の「CMC-TC 監視システム 画期的なラックセキュリティを提案」と題するカタログ(平成15年8月発行)。
審判乙4)には,本件商品について,以下の記載がある。
(ア) 「ネットワークおよび生産設備におけるデータの損失やシステム障害は,・・・企業の存続すらも危ぶまれるような事態を引き起こす場合があります。そのため,安定した情報と生産の流れを確立して,企業の「生命線」を守ることが重要となってきます。・・・リタールが,新世代のラック内監視システムを発表いたしました。リタールCMC-TC監視システムです。自在性,使い易さ,経済性において,これまでのラックの常識を覆すセキュリティを実現します。」,「部外者によるドアの開閉を集中監視 サーバーユニットに対する部外者の侵入を集中監視することは,コンピューターセンターやオフィスシステムのセキュリティを守る上で重要な要素といえるでしょう。ICカードリーダー,磁気カードリーダー,テンキー入力装置が,関係者に関する必要な情報を提供する一方で,部外者がラックのドアやパネルを開けることのないようにドア開閉センサーが監視します。」,「...優れた冷却効果で最大限の性能を引き出します ネットワークにおいても,生産工程においても,・・・ラック内部温度の監視および空調管理によって機器から発生する熱を効果的に排出することはきわめて重要な要素といえるでしょう」(2頁)(イ) 「CMC-TC監視システム-リタールの画期的なラック監視システム」との見出しの下に,「新たに導入された非集中管理型の機能ユニットにより,お客様はそのご要望に応じて製品をお選びいただけます。・・・自由度の高いモジュールシステムにより,お客様が求めるセキュリティ要件を満たすべく,システムを理想的に拡張してゆくことが可能です。」,「さらに自在に」の見出しの下に,「CMC-TCは,プロセシングユニットを単体で使用した非集中管理型の監視方法から,マスターユニットによるシステム全体の制御まで,お客樣の要件に応じて自由に組み合わせることが可能です。」(3頁)(ウ) 「ネットワークインターフェイスを備えたプロセシングユニットがそのベースとなります。監視システム(PU)は,センサーユニット,各種センサーとの組み合わせで構成されます。その機能は,この組み合わせによって決まります。監視システム(PU)をマスターユニット経由で操作することによって機能強化を図ることも可能です(オプション)」(4頁)(エ) 「プロセシングユニットは,CMC-TCシステムのベースとしての役割を果たします。このユニットは,すべての監視システムで必要になります。」,「プロセシングユニットは10BaseTを介してお客様のネットワークに直接接続できます。」,「プロセシングユニットには,センサーユニット用に4つの空きポートが装備されています。接続するセンサーユニットによって,プロセシングユニットの機能が決まります。3種類のセンサーユニット(入出力,ドア制御,空調)からお選びいただき,さまざまな用途に対応できます。このように,監視の機能は自由に組み合わせることが可能です。」(12頁)(オ) 「内部セキュリティ」の表題の下に,「温度センサー」について,「温度監視機能を備えたセンサーです。識別モジュールを備え,CMC-TCシステムによる検出と設定が自動で行われます。接続ケーブル(同梱)でセンサーユニットに接続します。」,「スモークアラーム」について,「スモークアラームは,測定スペースにおける煙の粒子を光電子工学的に検出します。このアラームは識別モジュールを備え,CMC-TCシステムによる検出と設定が自動で行われます。センサーユニットに対する電源供給とアラームリレーは,接続ケーブル(同梱)を介して行われます。」,「湿度センサー」について,「このセンサーは相対湿度を測定して,その値を周波数信号に変換します。識別モジュールを備え,CMC-TCシステムによる検出と設定が自動で行われます。電源供給とデータの通信は,入出力センサーユニットと接続ケーブル(同梱)を介して行われます。」(19頁)(カ) 「外部セキュリティ」の表題の下に,「ドア開閉センサー」について,「ドア開閉センサーはネットワークラック内のドア,サイドパネル,窓などを監視します。開閉部(サイドパネルなど)側に磁石を,固定部(本体フレーム)側にリード付きのセンサーを取付けます。リードは閉鎖時には,永久磁石で固定されます。ドアが開かれるかサイドパネルが取外されると,リードが外れ,回路が作動し,CMCでアラームが発生します。ドア開閉センサーは識別モジュールを備え,CMC-TCシステムによる検出と設定が自動で行われます。接続ケーブル(同梱)でセンサーユニットに接続します。」(21頁)(キ) 「ドア開閉システム」の表題の下に,「ICカードリーダー/磁気カードリーダー/テンキー入力装置」について,「ドアハンドルのロック解除は,ICカード/磁気カード/暗証番号による個人認証式となっています。ICカードリーダー/磁気カードリーダー/テンキー入力装置はラックハンドルの上部に設置でき,複数ドアの内のどれか1つに中央に取付けることもできます(共用時)。ネットワーク接続により,アクセス手順全体をCMC-TCに登録することもできます。」,「ICカードリーダー/磁気カードリーダー/テンキー入力装置は,CMC-TCおよび電磁式ロックとの組み合わせた時のみ使用できます。」(25頁)(ク) 「CMC監視システム CMC用ソフトウェア」の表題の下に,「CMC-TCマネージャー」について,「最新のCMC-TCマネージャーで,すべてのリタールSNMPエージェントを単一のソフトウェアパッケージで管理できるようになりました。」,「タイプまたはロケーションごとに各種製品(PCU,CMCU,CMC-TC)を並べ替えて表示できます。」(27頁)イ 上記記載によれば,@本件商品(ラック内監視システム)は,ラック内に収納された機器のセキュリティをネットワークを介して管理するシステムであること,A本件商品は,プロセシングユニットをベースとし,プロセシングユニットに3種類のセンサーユニットの一つ以上を組み合わせ,センサーユニットに各種センサー(温度センサー,スモークアラーム,湿度センサー,ドア開閉センサー等)を接続させて構築した監視システムであり,更に必要に応じてマスターユニットを経由させ複数の監視システムを集中管理させることができること,B本件商品は,プロセシングユニットに接続するセンサーユニット及び各種センサーを組み合わせることによって,セキュリティ機能(ラック内の温度,湿度,発煙,ラックドアの開閉の監視・制御等)を適宜選択し,様々な用途に使用することができること,Cベースとなるプロセシングユニットは,ネットワークインターフェイスを備え,監視のための各種プログラミングを実行するコンピュータ(電子計算機)であること,D各種センサーは,センサーユニットに接続され,更にセンサーユニットがプロセシングユニットに接続されることにより,システムによる検出と設定が自動で行われ,また,ラックドアの開閉の制御のためICカードリーダー,磁気カードリーダーを設置することができ,ネットワーク接続によりアクセス手順全体をCMC-TCに登録できることが認められる。
以上の認定事実を総合すれば,本件商品は,プロセシングユニット,センサーユニット,各種センサーの組合せ(又はこれらと必要に応じマスターユニットの組合せ)によって構成され,ラック内に収納された機器のセキュリティ管理を行うため各種セキュリティ機能(ラック内の温度,湿度,発煙,ラックドアの開閉の監視・制御等)を適宜選択し,様々な用途に使用することができる監視システムであって,そのベースとなるのは,ネットワークインターフェイスを備え,監視のための各種プログラミングを実行するコンピュータ(電子計算機)であるプロセシングユニットであると認めるのが相当である。
そうすると,商品区分上の「電子応用機械器具」は,「電子の作用を応用したもので,その機械器具の機能の本質的な要素としているもの」である(甲4)ところ,上記のとおり,本件商品は,監視のための各種プログラミングを実行するプロセシングユニット(コンピュータ)をベースとしてこれに各種センサー等を組み合わせてラック内に収納された機器の様々なセキュリティ管理を行うことを本質的機能とするものであるから,その機能の本質的な要素として電子の作用を応用した機械器具ということができ,「電子応用機械器具」に該当するものと認められ,これと同旨の審決の判断に誤りはない。
(2)ア 原告は,本件商品のICカードリーダー,磁気カードリーダー及び各種センサーはいずれも電子応用機械器具といえないのに,審決は,実質的な理由を一切示さないまま,上記カードリーダー,各種センサーが電子応用機械器具に該当すると判断し,これらを利用した本件商品が「電子応用機械器具」の範疇に属する商品であると判断しているとして,審決を非難する。
しかし,審決は,ICカードリーダー,磁気カードリーダー及び各種センサーをもって電子応用機械器具にあたるとしているものではなく,本件商品を,それらの機器を用いてラック内に収納された機器のセキュリティをトータルに監視するシステムととらえた上で,そのシステムの本質的な機能が電子の作用を応用したものであると判断していることは,その説示に照らして明らかであり,原告の非難は,審決を正解しないものであって,その前提において失当である(ちなみに,ICカードリーダー,磁気カードリーダーは,その機能の本質は電子の作用を応用したものであり,また,本件商品を構成し得る各種センサーは,センサーユニットに接続され,更にセンサーユニットがプロセシングユニットに接続されることにより,システムによる検出と設定が自動で行われものであるから,これらは電子応用機械器具又はその部品に該当するものともいえる。)。
イ また,原告は,本件商品は,ラック内の機器の監視,セキュリティという機能をその本質とするものであり,これらの機能は各種センサーによる異常の感知,それに対する警告及びファン制御による温度,湿度調節という各種の機能を組み合わせることで成立し,その全体としてのシステムをみれば,それは電子の作用を応用しない方法によって構成されていると主張する。
しかし,前記のとおり,本件商品は,監視のための各種プログラミングを実行するプロセシングユニット(コンピュータ)をベースとしてこれに各種センサー等を組み合わせてラック内に収納された機器の様々なセキュリティ管理を行うことを本質的機能とするものであるから,単に各種センサーの個々の機能のみに着目するのは相当でなく,プロセシングユニットをベースとして構成された全体としての監視システムとして本件商品をとらえるのが相当であり,その機能の本質的な要素は電子の作用を応用したものであるというべきであるから,原告の上記主張は採用できない。
なお,原告は,本件商品の本質的機能は,遠隔地からデータを測定し,機械や装置を目的どおり作動させるための遠隔測定制御機械器具の性質そのものであるとも主張するが,本件商品において,離れた場所からデータを測定し,機械や装置を目的どおり作動させるための機能を有するよう監視システムを構成することができるとしても,それはセンサーユニット及び各種センサー等の組合せにより適宜選択し得る機能の一つにすぎず,それが本件商品の本質的な機能であるとは認め難い。
ウ さらに原告は,プロセシングユニットが本件商品の最小単位を構成するものであるからといって,それが本件商品の本質的機能を果たす部分ということにはならず,プロセシングユニットは,与えられた情報に基づき,行うべき動作の判断を行っているのみで,実際にラックの監視,セキュリティという機能を行っているのはセンサー等による電子を応用しない方法によってなされているから,本件商品は電子応用機械器具には該当しないなどと主張する。
しかし,前記のとおり,本件商品においてプロセシングユニットは,CMC-TCシステムのベースとしての役割を果たすもので,各種センサーは,センサーユニットに接続され,更にセンサーユニットがプロセシングユニットに接続されることにより,システムによる検出と設定が自動で行われるなど,本件商品は,プロセシングユニットをベースとしてこれに各種センサー等を組み合わせてラック内に収納された機器の様々なセキュリティ管理を行うことに,その本質的な機能があるというべきであるから,原告の上記主張は採用できない。
なお,原告は,審決も,本件商品で中心的な機能を果たすのが各種センサー等であるとしている旨主張しているが,審決は,本件商品に関する前記カタログ(甲1,審判乙4)におけるプロセシングユニットの役割等の説明についても認定し,本件商品は,「ラックに収納された機器のセキュリティをネットワークを介して集中管理するシステムであり,プロセシングユニット,センサーユニット及びこれらと必要に応じマスターユニットで構成され,・・・ICカードリーダー,磁気カードリーダー,各種センサーなどを用いてトータルに監視する装置ということができる。」(審決書9頁1行〜7行)とした上で,「システムの本質的な機能が電子の作用を応用したものであるか否かという観点から見れば」,本件商品は「電子応用機械器具」に該当する旨判断しているものであって,原告が主張するように,本件商品で中心的な機能を果たすのが各種センサー等であるとしているものではない。
(3) 以上に説示したところによれば,本件商品が本件商標の指定商品である「電子応用機械器具」に該当するとした審決の判断に誤りはない。
原告主張の取消事由には理由がなく,他に審決を取り消すべき誤りは認められない。
2結論よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀