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関連審決 取消2004-30640
関連ワード 包装 /  使用事実 /  指定商品 /  指定役務 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  外観(外観類似) /  国内 /  不使用取消審判 /  継続 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10092号 審決取消請求事件
原告エービーピージャパン株式会社
訴訟代理人弁理士松田雅章
同 松田治躬
同 近藤史代
被告エイビーピー・コーポレーション
訴訟代理人弁護士鈴木修
同 伊達智子
同弁理士鈴木薫
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/09/14
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が取消2004-30640号事件について平成18年1月18日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実1特許庁における手続の経緯原告は,「オーボンパン」の文字と「AUBONPAIN」の文字とを2段に書して成り,指定商品を第32類「食肉,卵,食用水産物,野菜,果実,加工食料品」とする商標登録第1943729号商標(昭和59年11月27日商標登録出願,昭和62年3月27日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は,平成16年5月19日,原告を被請求人として,本件商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求し,同年6月7日,その予告登録がされた(以下「本件予告登録」という。)。特許庁は,同請求を取消2004-30640号事件として審理した結果,平成18年1月18日,「登録第1943729号商標の商標登録は取り消す。」旨の審決をし,その謄本は,同月30日,原告に送達された。
2審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,原告は,本件予告登録前3年以内に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件商標をその指定商品について使用した事実を証明していないから,本件商標の登録は,商標法50条の規定により取り消すべきであるとした。
第3原告主張の審決取消事由審決は,商標権者が,本件予告登録前3年以内に,本件商標をその指定商品中「サンドイッチ」について使用していた事実を誤認し(取消事由),その結果,本件商標につき,商標法50条によりその登録を取り消すべきであるとの誤った結論を導いたものであるから,違法として取り消されるべきである。
1審決は,「被請求人(注,原告)の提出した加工品販売売上票(乙第10号ママ証ないし同第13号証)(注,本訴甲13ないし16)には,店舗あるいは事業者の住所,名称が記載されておらず,作成日の記載もない。また,品名が記載されているが,これらの商品に使用されている商標を特定し得る記載はない。
さらに,乙第2号証(注,本訴甲5)のテーブルに載せられたサンドイッチの写真中の品名と加工品販売売上票(乙第10号証ないし同第13号証)に記載されている品名が一致しない。被請求人は,これらの売上票に品名として記載されている商品は乙第4号証ないし同第9号証(注,本訴甲7ないし12)の写真の商品である旨主張するが,売上票の商品が写真の商品に対応するものであることを示す証拠はない。そうとすれば,乙第1号証ないし同第9号証(注,本訴甲4ないし12)の写真が被請求人の店舗内あるいは被請求人の出張販売先の販売スペースにおいて撮影した写真であると特定し得ると仮定しても,写真の商品が加工品販売売上票(乙第10号証ないし同第13号証)に記載された販売日に販売されたと認め得る証拠はないといわなければならない。したがって,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件商標をその指定商品について使用した事実を証明していないから,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により取り消すべきものである。」(審決謄本4頁第1段落〜第4段落)としたが,誤りである。
2原告は,以下のとおり,商標権者として,本件予告登録前3年以内に本件商標をその指定商品中「サンドイッチ」について使用した。
( )平成16年8月28日,原告の本店所在地である東京都豊島区高田所在の1店舗において,原告の取締役であるAにより撮影された写真(甲4)のとおり,同店舗においては,壁に貼られた価格表には「AuBonPain」との文字が記載され,サンドイッチが載せられたトレー前に置かれた値札には,品名,価格とともに「AuBonPain」と記載されている。
また,同日,同人によって,サンドイッチの出張販売先である東京都豊島区目白所在の東京心理音楽療法福祉専門学校内において撮影された写真(甲5ないし12)のとおり,サンドイッチが載せられたトレー上に置かれた値札には,品名,価格とともに「AuBonPain」と記載され,サンドイッチを包むパックには「aubonpain」との文字が印刷されている。
したがって,本件商標と社会通念上同一と認められる商標が,原告により,本件商標の指定商品に含まれる商品であるサンドイッチに使用されている事実は明らかである。
( )「加工品販売売上表」(甲13ないし16)は,原告の平成13年度ない2し平成15年度の売上帳(甲17ないし19)の記載に基づいて作成したものであり,上記売上帳は,各日の日計票(甲20ないし48)から転記して作成したものである。これら日計票及び売上帳は,いずれも,原告の取締役であるAにより作成された。これらによれば,本件予告登録前3年以内に原告がサンドイッチを販売した事実が明らかである。
そして,原告が上記販売を行った場所である東京心理音楽療法福祉専門学校において教職員として勤務する者等の陳述書(甲53ないし58)によれば,本件予告登録前3年以内に,同校の空き教室において,サンドイッチの出張販売が行われ,教職員等がそれを購入したこと,同人らが購入したサンドイッチは,甲5の写真に撮影されたサンドイッチと同じもので,そのパック類には,「aubonpain」との文字が印刷されて表示されていたことが明らかである。
したがって,これら日計票等と陳述書(甲53ないし58)を総合すれば,本件商標の指定商品に含まれる商品であるサンドイッチが,原告により,本件商標と社会通念上同一の商標が表示された包装容器類に入れられて,本件予告登録前3年以内に反復継続的に販売されていたことは明らかである。
( )審決は,「乙第2号証(注,甲5)のテーブルに載せられたサンドイッチ3の写真中の品名と加工品販売売上票(乙第10号証ないし同第13号証〔注,ママ甲13ないし16〕)に記載されている品名が一致しない。」(審決謄本4頁第1段落)とする。
しかし,サンドイッチの写真(甲5)には,商品名として各々「クロワッサンサンドウィッチ」の下に小さく「ハム」又は「ベジタブル」と記載されたもの,「ソフトロールサンドウィッチ」の下に同様に「ハム」又は「ベジタブル」と記載されたもの及び「フレンチサンドウィッチ」の下に「ハム」又は「ベジタブル」と記載されたものが写っている。他方,日計票の記載を基礎とする加工品販売売上表には,「クロワッサンサンドハム」,「クロワッサンサンドベジタブル」,「ソフトロールサンドハム」,「ソフトロールサンドベジタブル」,「フレンチサンドハム」及び「フレンチサンドベジタブル」と記載されているところ,販売に際して包装容器・ラベルその他に表示された商品の品名に関し,これを日計票等に記載する場合には,社内的に認知された略称等を用いることは,社会通念上しばしば行われていて,「ウィッチ」が脱落し,あるいは略されていることにより,写真中の品名と売上表に記載された品名が一致しないとして,その同一性を認めないことは,社会通念上妥当性を欠く。
3原告は,毎日継続的に販売を行っているわけではなく,事業は極めて零細であるが,市販の売上帳や日計票を用いてサンドイッチの売上を記録している。
原告がこのような営業形態で事業を継続しているのは,原告あるいは原告の取締役であるB(以下「訴外B」という。)と,被告(被告の被承継人オウ・ボン・パン・カンパニー・インコーポレーテッドも含む,以下同じ。)との以下のような関係による。
すなわち,訴外Bと被告は,平成4年4月18日,韓国をオプションとして含む日本でのフランチャイズ事業展開の開発に関して契約を締結し,被告は,いわゆるフランチャイザーとして活動し,開発者である訴外Bは,日本において,フランチャイズ事業の開発者として活動することとなった。原告は,被告のフランチャイジーとしての事業を展開するために,同年9月21日に設立された。
当時は,株式会社ロックフィールド(以下「ロックフィールド」という。)が本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)を有していたので,訴外Bは,その旨を被告に連絡して被告から本件商標権の取得を一任され,その後,C(以下「C」という。)の協力を得て,平成6年7月25日,本件商標権がロックフィールドからCに移転された旨の登録がされた。原告は,Cから,本件商標に関する通常使用権の許諾を受けていたが,平成14年3月19日に同人から本件商標権の譲渡を受け,同月29日,その旨の移転登録がされた。
上記経緯により,原告は,フランチャイジーとしての事業活動に差しさわりがなくなり,被告から,フランチャイズ展開に際して必要なマニュアル類,包装容器類,什器,冷凍パン種等の提供を受け,原告本店所在地で,サンドイッチ等の製造販売や店舗内でのサンドイッチ等の提供事業を展開すると同時に,他の地域でも同事業の展開を図るための準備を行っていた。
他方,平成7年から平成8年にかけて,訴外B及び原告を仲介して,被告と当時本件商標の商標権者であったCとの間で,本件商標の被告への移転についての協議がされたが,双方の提示した条件が折り合わず,協議は不調に終わった。そして,上記協議の不調等が影響して,原告と被告の関係が疎遠になり,フランチャイジーとしての原告の事業展開が頓挫することとなり,原告は,事業の縮小を余儀なくされ,本店所在地店舗での製造小売やデリバリー,あるいは,出張販売等という事業形態に移行して,現在に至っている。
第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
1原告は,本件予告登録前3年以内に,原告本店所在地及び東京心理音楽療法福祉専門学校(東京都豊島区)において,サンドイッチを販売し,本件商標を指定商品に使用した旨主張するが,失当である。
原告提出の証拠の証明力は低いものであり,原告が,原告本店所在地及び東京心理音楽療法福祉専門学校においてサンドイッチを販売した事実は疑わしく,また,販売に際し,本件商標を使用した事実を立証するに足りる証拠は存在しない。
(1)原告は,本件商標の使用の事実を立証するため陳述書(甲53ないし58)を提出するが,以下のとおり,その陳述内容は信用性に欠ける。
ア訴外Bは,原告の取締役であるとともに,学校法人中央育英学園及び学校法人東京育英学園の理事であり,東京心理音楽療法福祉専門学校等の学校長である。
そして,原告が提出する陳述書(甲53ないし58)は,訴外Bの強い影響下にある専門学校の職員,生徒により作成されているものであり,信用性が低い。
イ甲57及び58の陳述書の作成者は,いずれも東京心理音楽療法福祉専門学校の生徒として,平成17年3月までの期間中に,サンドイッチを10回又は5回購入した記憶があり,日付や内容の詳細は覚えていないというものであるから,サンドイッチを購入したのが本件予告登録日である平成16年6月7日以後である可能性を否定できず,本件予告登録前の本件商標の使用を立証する内容になっていない。
ウ上記陳述書は,いずれもあらかじめタイプされた,同一内容の原稿に,空欄を手書きで埋めて作成されたものであり,その中には,陳述内容の印字部分が同文の原稿であるものもあるなど,これらの陳述書が,各陳述者の記憶を確認した上で,その記憶に沿って用意されたものでないことは明らかであり,陳述内容の細部にわたり,陳述者の正確な記憶に基づき作成されたものであるかについて,甚だ疑問が残るものである。
また,陳述書は,いずれも本訴提起後の平成18年5月に作成されたものであるが,2年以上も前に購入したサンドイッチのパック類の形状を記憶しているというのは信じ難いことなどから,その陳述者は,あらかじめ用意された陳述書の記載の中身を十分検討しないまま署名した可能性が高い。
さらに,陳述書には,サンドイッチが販売されていた具体的な教室名,購入の動機や味や値段についての感想等の記載も全くなく,内容に具体性がない。
エ陳述書によれば,陳述書作成者6名のサンドイッチの購入回数は合計で235回であるのに対し,加工品販売売上表に記載された販売個数は合計で184個であり,購入個数が販売個数を大幅に超過する。そして,陳述書作成者のほかにも購入者がいれば,購入個数と販売個数との不整合はさらに拡大するなど,加工品販売売上表(甲13ないし16)に記載されたサンドイッチの販売個数と,陳述書に記載されたサンドイッチの販売個数とが矛盾する。
また,甲53ないし55の陳述書の作成者は,出張販売先の東京心理音楽療法福祉専門学校から所在地が離れている別の専門学校の教員であり,これらの陳述者が原告の販売するサンドイッチを購入できたかは疑わしい。
(2)原告は,本件商標を使用した事実の証拠として,写真(甲4ないし12)を提出するが,いずれも,本件予告登録後である平成16年8月28日に撮影されたものにすぎず,また,被写体の店舗の様子,張り紙の態様など,いずれも不自然であり,信用できない。
ア店舗内の写真(甲4)には,以下のような不自然な点があり,当該写真は,本件予告登録日以前の店舗の状況を正しく表したものとはいえない。
すなわち,写真によれば,@調理人や販売員の姿がなく,包丁やまな板,ふきん,エプロン等,サンドイッチの製造・販売に通常使用される調理道具が見当たらないなど,調理場が整然としすぎていて不自然であり,Aパンやサンドイッチは乾燥を防ぐためにラップフィルムなどに包んで陳列するのが通常であるにもかかわらず,サンドイッチや未調理のパンが何の包装もされずに置かれているのは不自然であり,B飲料は利益率が高く,かつ,サンドイッチの購入者は飲料も購入する可能性が高いから,サンドイッチの販売と併せて飲料を販売するのが通常であり,飲料用設備を設置しているにもかかわらず,飲料を販売している様子がないのは不自然であり,C店舗の壁に貼られた張り紙も,店舗の名称を記載するにしては極めて簡易なものであり,しかも,見かけが非常に新しい印象のあるものであって,張られてから撮影日まで日が経っているようには見えない。
イ出張販売における商品等の写真(甲5ないし12)も,以下のような不自然な点があり,本件予告登録前の出張販売の際の販売状況を正しく表わしたものとは到底いえない。
すなわち,@サンドイッチは,乾燥を防ぐとともに,出張販売のための運搬の便宜や衛生面の必要性からラップフィルムなどに包装するのが通常であるにもかかわらず,サンドイッチが何の包装もされずに陳列されているのは不自然であり(甲5),A原告が販売するサンドイッチはテイクアウト用であって皿ごと購入者に引き渡すのではないからわざわざ皿に載せる必要がなく,あらかじめ包装して購入者に素早く引き渡すことができるように準備しておくのが通常の販売方法であるにもかかわらず,サンドイッチが皿に載せられているのは不自然であり(甲7ないし12),Bサンドイッチをラップフィルムなどに包装することなく直接紙袋や紙箱に入れるとサンドイッチが崩れて食べにくくなったり,油分が紙袋や紙箱に染み出したりするおそれがあるので,サンドイッチを直接紙袋等に入れて販売することは通常あり得ないにもかかわらず,サンドイッチを包装せずに直接紙袋や紙箱に入れるのは不自然であり(甲7ないし12),C甲5の写真は,同じトレイに同じ皿を並べ,その上に種類の異なるサンドイッ3チを載せて撮影したようにみえるが,サンドイッチという商品を置き換えながら販売していたとは考えられない。
(3)日計票等(甲13ないし48)は,独立して証拠価値を有するものではないか,証拠価値の低いものである。
すなわち,加工品販売売上表(甲13ないし16)は,売上帳(甲17ないし19)の記載を電子計算機に入力し出力したものにすぎず,独立して証拠価値を有するものではなく,売上帳(甲17ないし19)も,日計票の記載を転記したものにすぎないから,独立して証拠価値を有するものではない。そして,日計票(甲20ないし48)は,原告取締役であるAが作成したものとされるが,異なる日時に作成されたものにもかかわらず,同一の書体,同一の筆運びで記載されている。日々作成される書類は,同一人が作成したとしても書体,筆運びが異なることが通常であり,日計票が販売当時に作成されたものか,疑問が残る。また,そもそも,日計票には,本件商標が付されたことを示すものは何もなく,原告による本件商標の使用事実を直接示すものではない。
2商標法50条1項は,「継続して三年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標・・・の使用をしていないときは」と規定する。「商標」とは「業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」(商標法2条1項1号)であるから,商標法50条の登録商標の使用といい得るためには,業としての使用でなければならない。
原告の本件商標の使用は,その主張に従っても,3年間の断片的な,通算わずか24日の販売についてのものであり,しかも営業許可もなく,店舗の販売ではなく出張販売において使用されたものにすぎない。しかも,この出張販売の顧客は,原告の取締役である訴外Bの強い影響力下にある専門学校の職員等に対する販売に限定されている。
したがって,原告主張のとおり,原告がサンドイッチの販売をしていたとしても,本件商標の使用は業としての使用に当たらず,商標法50条1項にいう登録商標の使用に当たらない。
3商標法50条による登録商標不使用取消審判の制度趣旨は,商標法上の保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であって,一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないか,あるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなるし,他方,不使用の登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し,かつ,その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めるから,このような商標登録を取り消させることにある。
原告による販売は,従前,原告が,被告から不使用取消審判の請求を受けていることから,再度の不使用取消審判の請求を受けることを予想し,取消しを免れるための証拠作りが目的であったといわれても仕方がない程度の,事業としての体をなさないものである。したがって,原告による販売に付随した本件商標の使用も,商標を使用するような外観を呈したものにすぎない。
このような名目的な商標の使用は,商標法50条1項の登録商標の使用ではない。
4本件商標の登録について,原告に保護されるべき利益は認められない。
すなわち,平成4年,被告は,フランチャイザーとして日本でのフランチャイズ事業の展開を計画し,当時本件商標の商標権者であったロックフィールドから本件商標を譲り受けるため,訴外Bにその譲渡交渉を委任した。ところが,訴外Bは,被告の信頼を裏切り,被告ではなく,訴外Bの関係者であるC名義に移転登録し,この訴外Bの背信行為により原告と被告との信頼関係は崩壊し,被告は,原告をフランチャイジーとするフランチャイズ事業の計画を撤回せざるを得なくなった。
したがって,本件商標は,日本におけるフランチャイズ事業の展開をするために被告が取得する必要があったもので,原告は,単に被告のフランチャイジーとしての活動を予定していたにすぎず,本件商標を取得する必要はまったくなかった。それにもかかわらず,原告は,本件商標を第三者であるC名義に移転登録して被告の事業を妨害しただけでなく,現在も,自らの名義に移転登録して名目的使用によって本件商標の登録を維持し,日本における被告の円滑な事業展開を妨害しようとして,本件商標が本来被告の取得すべき商標であることを十分承知しながら背信行為を重ねているのであり,原告が本件商標の登録を維持しなければならない合理的な理由はない。
第5当裁判所の判断1原告は,商標権者として,本件予告登録前3年以内に,原告本店及び東京心理音楽療法福祉専門学校(東京都豊島区)において,本件商標をその指定商品に含まれるサンドイッチの価格表等に付して使用していた旨主張し,写真(甲4ないし12),加工品販売売上表(甲13ないし16),売上帳(甲17ないし19),日計票(甲20ないし48)及び上記写真に撮影されたサンドイッチが「aubonpain」との文字が印刷されたパック類に入れられて平成13年6月ないし平成16年6月に販売されたことなどを述べる第三者作成名義の陳述書(甲53ないし58)を提出する。
しかし,以下のとおり,上記の証拠によっても,原告主張の事実を認めることはできない。
2原告は,本店所在地の店舗の写真として,「AuBonPain」等の文字が記載された価格表が壁に貼られ,サンドイッチが載せられたトレー前には,品名,価格とともに「AuBonPain」と記載されている値札が置かれ,飲料の提供機器等が設置されている部屋の写真(甲4)を提出する。
しかし,原告の主張によっても,同写真は,本件予告登録後である平成16年8月28日に撮影されものであり,本件予告登録前3年以内の本件商標の使用の証拠となるものではないし,同写真を精査しても,本件予告登録前から,同店舗において,本件商標が,写真に撮影されたような態様により使用されていたことを認めることはできない。かえって,同写真は,人物はだれも写っておらず,また,価格表や値札,機器類等には,使用の形跡や汚れ等が全く見いだせないのであり,撮影日以前から,写真に撮影されたような態様で,店舗として使用されていたことについて疑いを生じさせるものである。
また,原告は,出張販売における商品の写真として,サンドイッチが載せられたトレー上に,サンドイッチと品名,価格とともに「AuBonPain」と記載された値札が置かれている状況が写っている写真(甲5)や,サンドイッチを包むパックに「aubonpain」との文字が印刷されているパック類が写っている写真(甲6ないし12)を提出する。
しかし,これらの写真も,本件予告登録後である平成16年8月28日に撮影されたものであり,本件予告登録前3年以内の本件商標の使用の証拠となるものではないし,同写真を精査しても,本件予告登録前から,本件商標が写真に撮影されたような態様により使用されていたことを認めることはできない。
3原告は,日計票(甲20ないし48)を提出するが,これらは,市販の「日計票」と題された細長い用紙の年月日欄に日付を,摘要欄に「ソフトロールサンドハム」等の品名を,金額欄に「500」等と売上額と考えられる数字をそれぞれ手書きで記載したものであり,平成13年9月27日分(甲20)から,断続的に平成16年8月28日分(甲48)までの合計29日分である。
上記証拠は,立証趣旨を「原告が販売したサンドイッチの各日の売上の内容」とするものであり,各日計票に記載された日に,そこに記載された商品を売り上げたことを立証するものとして提出され,各日計票は売上げがあった日にその都度,作成されたものとして提出されていると考えられる。しかし,1日に1品ないし3品しか販売していない日が複数あるなど(甲20ないし22,25,34,35),その内容自体,にわかには信じ難いものであるだけでなく,3年の期間にわたって作成されたとするものであるにもかかわらず,同一様式の用紙に,同一書体で文字及び数字が記入されているなど,その字体や記入方法等に変化が認められない。また,上記日計票は薄い用紙であるにもかかわらず,いずれも折れや汚れ等が全くないものであり,同一の機会にまとめて作成されたと考えるほかないものであって,到底,3年間にわたって,売上げがあった日に,その都度,作成されたものとは認められない。したがって,同日計票は,そこに記載された日にそこに記載された内容の売上があることの証拠とは到底なり得ない。
また,以上のとおり,上記日計票が真実の売上を示しているとは認められないのであるから,これに基づいて作成されたものであるとする売上帳(甲17ないし19),加工品販売売上表(甲13ないし16)により,原告主張のサンドイッチの販売がされたことを認めることはできない。
4原告は,本件商標が付された商品のサンドイッチが,東京心理音楽療法福祉専門学校において,出張販売されたとして,同専門学校の教職員及び生徒の陳述書(甲53ないし58)を提出する。
上記陳述書は,本件商標の使用に係る部分については,いずれも,上記専門学校の講義を行っていない教室において,サンドイッチの出張販売が行われたこと,その際,日付や内容などの詳細は記憶していないが,陳述書の作成者が幾度かサンドイッチを購入したこと,そのサンドイッチは,甲6の写真に写っているような紙袋に入っていたことを述べるもので,勤務,通学の期間や日数,サンドイッチを購入した期間と同購入回数の欄以外は,いずれも同一内容の文章がワープロで印刷され,上記の欄についてのみ,手書きで数字が記入されているものである。
これらの陳述書は,その記載の形式・態様からも,原告側で,自己の主張に沿った陳述内容を作成し,陳述書の作成名義人において,内容部分につき,該当部分の数字を記入しただけであることが容易に推測されるものである。また,その記載内容も,サンドイッチの購入に関する詳細な事実関係は一切記載せず,サンドイッチを購入したという日付や内容等を覚えていないというものであるから,サンドイッチの購入を裏付ける証拠としての価値はそもそも非常に低いものである。さらに,陳述書には,平成13年から平成16年にかけて,80回ほど(甲53),90回ほど(甲54)サンドイッチを購入したことがあると記載されているところ,原告の主張によっても同期間のサンドイッチの販売日数は合計29日なのであり,このことは,上記のような形式,内容の陳述書が,真に作成者の記憶に従って作成されたものでないことを推測させるものである。そして,これらに照らせば,原告提出の陳述書(甲53ないし58)によって,原告主張のサンドイッチ販売の事実を認めることは到底できない。
5以上によれば,原告提出の証拠によっても,本件商標が本件予告登録前3年以内に指定商品中「サンドイッチ」について使用された事実を認めることはできず,他に原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の取消事由の主張は,失当である。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明