関連審決 | 不服2004-16054 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成19行ケ10047審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10280審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成19行ケ10090審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10279審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10391審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 包装 / 役務の提供 / 出所表示機能 / 指定商品 / 指定役務 / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項11号 / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 分離観察 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 全体観察 / 取引の実情 / 出所の混同 / 国内 / 存続期間 / 更新登録 / 類似商標 / 外国 / 継続 / ハウスマーク / |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10191号
審決取消請求事件
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原告チェルシージャパン株式会社 訴訟代理人弁護 士高橋美智留 同 木村耕太郎 訴訟代理人弁理 士下坂スミ子 同 中山俊彦 被告特許庁長官 中嶋誠 指定代理人今田尊恵 同 柳原雪身 同 大場義則 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/09/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2004-16054号事件について平成18年3月10日にした審決を取り消す。 |
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争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯原告は,平成14年12月11日,別紙1のとおりの構成からなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定役務を第35類「ショッピングセンター事業の運営及び事業の管理,広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与」,第36類「店舗その他の建物の貸与,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,土地の有効活用に関する企画及び指導,建物又は土地の情報の提供,預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入のあっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」,第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,船舶の建造,船舶の修理又は整備,航空機の修理又は整備,自転車の修理,自動車の修理又は整備,鉄道車両の修理又は整備,二輪自動車の修理又は整備,映画機械器具の修理又は保守,光学機械器具の修理又は保守,写真機械器具の修理又は保守,荷役機械器具の修理又は保守,火災報知機の修理又は保守,事務用機械器具の修理又は保守,暖冷房装置の修理又は保守,バーナーの修理又は保守,ボイラーの修理又は保守,ポンプの修理又は保守,冷凍機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守,電気通信機械器具の修理又は保守,土木機械器具の修理又は保守,民生用電気機械器具の修理又は保守,照明用器具の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守,電動機の修理又は保守,理化学機械器具の修理又は保守,測定機械器具の修理又は保守,医療用機械器具の修理又は保守,銃砲の修理又は保守,印刷用又は製本用の機械器具の修理又は保守,化学機械器具の修理又は保守,ガラス器製造機械の修理又は保守,漁業用機械器具の修理又は保守,金属加工機械器具の修理又は保守,靴製造機械の修理又は保守,工業用炉の修理又は保守,鉱山機械器具の修理又は保守,ゴム製品製造機械器具の修理又は保守,集積回路製造装置の修理又は保守,半導体製造装置の修理又は保守,食料加工用又は飲料加工用の機械器具の修理又は保守,製材用・木工用又は合板用の機械器具の修理又は保守,繊維機械器具の修理又は保守,たばこ製造機械の修理又は保守,塗装機械器具の修理又は保守,農業用機械器具の修理又は保守,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具の修理又は保守,プラスチック加工機械器具の修理又は保守,包装用機械器具の修理又は保守,ミシンの修理又は保守,貯蔵槽類の修理又は保守,ガソリンステーション用装置の修理又は保守,機械式駐車装置の修理又は保守,自転車駐輪器具の修理又は保守,業務用食器洗浄機の修理又は保守,業務用加熱調理機械器具の修理又は保守,業務用電気洗濯機の修理又は保守,乗物用洗浄機の修理又は保守,自動販売機の修理又は保守,動力付床洗浄機の修理又は保守,遊園地用機械器具の修理又は保守,美容院用又は理髪店用の機械器具の修理又は保守,水質汚濁防止装置の修理又は保守,浄水装置の修理又は保守,廃棄物圧縮装置の修理又は保守,廃棄物破砕装置の修理又は保守,潜水用機械器具の修理又は保守,原子力発電プラントの修理又は保守,化学プラントの修理又は保守,家具の修理,傘の修理,楽器の修理又は保守,金庫の修理又は保守,靴の修理,時計の修理又は保守,はさみ研ぎ及びほうちょう研ぎ,錠前の取付け又は修理,ガス湯沸かし器の修理又は保守,加熱器の修理又は保守,なべ類の修理又は保守,看板の修理又は保守,かばん類又は袋物の修理,身飾品の修理,おもちゃ又は人形の修理,運動用具の修理,ビリヤード用具の修理,遊戯用器具の修理,浴槽類の修理又は保守,洗浄機能付き便座の修理,釣り具の修理,眼鏡の修理,毛皮製品の手入れ又は修理,洗濯,被服のプレス,被服の修理,布団綿の打直し,畳類の修理,煙突の清掃,建築物の外壁の清掃,窓の清掃,床敷物の清掃,床磨き,し尿処理槽の清掃,浴槽又は浴槽がまの清掃,道路の清掃,貯蔵槽類の清掃,電話機の消毒,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものを除く。),医療用機械器具の殺菌・減菌,土木機械器具の貸与,床洗浄機の貸与,モップの貸与,洗車機の貸与,電気洗濯機の貸与,衣類乾燥機の貸与,衣類脱水機の貸与,家庭用ルームクーラーの貸与,鉱山機械器具の貸与,暖冷房装置の貸与」,第39類「車両による輸送,駐車場の提供,駐車場の管理,コインロッカーによる携帯品の一時預かりその他の他人の携帯品の一時預かり,車いすの貸与,鉄道による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越の代行,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,ガスの供給,電気の供給,水の供給,熱の供給,倉庫の提供,有料道路の提供,係留施設の提供,飛行場の提供,荷役機械器具の貸与,自動車の貸与,船舶の貸与,自転車の貸与,航空機の貸与,機械式駐車装置の貸与,包装用機械器具の貸与,金庫の貸与,家庭用冷凍冷蔵庫の貸与,家庭用冷凍庫の貸与,小包郵便物交付事務手続の代理,冷凍機械器具の貸与,ガソリンステーション用装置(自動車の修理又は整備用のものを除く。)の貸与」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,当せん金付証票の発売,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」として,商標登録出願(商願2002-104842号)をしたが,平成16年7月5日,拒絶査定を受けたので,同年8月3日,これを不服として審判請求をした。 特許庁は,上記審判請求を不服2004-16054号事件として審理した結果,平成18年3月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月27日,原告に送達された。 2 審決の理由別紙審決書の写し記載のとおりである。要するに,本願商標と登録第3010952号商標(以下「引用商標1」という。),登録第3042687号商標(以下「引用商標2」という。),登録第3042688号商標(以下「引用商標3」という。),登録第3090692号商標(以下「引用商標4」という。),登録第3137359号商標(以下「引用商標5」という。),登録第3333997号商標(以下「引用商標6」という。),登録第3352212号商標(以下「引用商標7」という。),登録第4011170号商標(以下「引用商標8」という。),登録第4030207号商標(以下「引用商標9」という。),登録第4073579号商標(以下「引用商標10」という。),登録第4237563号商標(以下「引用商標11」という。),登録第4237564号商標(以下「引用商標12」という。),登録第4243683号商標(以下「引用商標13」という。),登録第4243685号商標(以下「引用商標14」という。),登録第4243687号商標(以下「引用商標15」という。),登録第4243688号商標(以下「引用商標16」という。)及び登録第4386417号商標(以下「引用商標17」といい,引用商標1ないし17を総称して,単に「引用商標」という。)とは,外観において差異を有し,観念においては,比較することができないとしても,「リンク」の称呼を共通にする全体として相紛れるおそれのある類似する商標であり,本願商標の指定役務は,引用商標の指定役務と同一又は類似のものを含むから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,その商標登録を受けることができないというものである。 なお,審決は,本願商標は別紙1のとおり彩色された図形の下に「RINKU」の文字を書し,該欧文字の上下に平行する2本直線を配した構成からなり,引用商標1ないし4,6,10は別紙2に示すとおりの構成からなり,引用商標5,7,9は「LINK」の欧文字を書してなり,引用商標8,11ないし17は「LINK」及び「リンク」の文字から構成されていると認定した。 |
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当事者の主張
1 原告主張の審決の取消事由審決は,引用商標2ないし4は,商標法4条1項11号の「他人の商標登録」に該当しないのに,これに該当するものとして本願商標との類否判断を行った上,本願商標と引用商標との類否判断を誤った結果,本願商標が商標法4条1項11号に該当すると誤って判断したものであるから,違法として取り消されるべきである。 なお,本願商標及び引用商標の各構成に関する審決の認定事実,引用商標(引用商標2及び3を除く。)から「リンク」の称呼が生じること,本願商標の指定役務が引用商標の各指定役務と同一又は類似のものを含むことは認める。 (1) 取消事由1(不適格な引用商標との対比)ア引用商標2,3は平成17年5月31日に,引用商標4は同年10月31日にそれぞれ存続期間が満了し,審決時(平成18年3月10日)には,いずれも存続期間の更新登録の申請がされずに権利が消滅しているから,引用商標2ないし4は,商標法4条1項11号の「他人の登録商標」に該当しない。 したがって,引用商標2ないし4は,本願商標との類否判断を行う対象としての適格性を欠くにもかかわらず,本願商標が引用商標2ないし4と類似することを本願商標の登録出願の拒絶の根拠とした審決は,違法である。 イこれに対し被告は,引用商標4について,存続期間経過後6月以内であれば,商標法4条1項11号の「他人の商標登録」に該当する旨主張するが,当該期間中に更新登録の申請がされた事実がない以上,当該商標権は,存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされるのであるから,引用商標4が不適格なものであることに変わりはない。 また,被告は,引用商標2,3は,商標法4条1項13号の商標権が消滅した日から1年を経過していない「他人の商標」に該当し,これに類似する本願商標は登録をすることができない旨主張するが,審決は,引用商標2,3が同条1項11号の「他人の登録商標」に該当することを前提として本願商標との類否判断を行っているだけで,引用商標2,3の「他人の商標」(同条1項13号)該当性についての審理及び判断をしていないから,引用商標2,3が「他人の商標」(同条1項13号)に該当するかどうかは,引用商標2,3が「他人の登録商標」(同条1項11号)に該当するものとして類否判断を行った審決が違法であることに何ら影響するものではなく,被告の上記主張は失当である。 (2) 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)ア 本願商標の観念,称呼の認定の誤り審決は,本願商標について,「「RINKU」の文字は,特定の語義あるいは特定の読み方を有する語として一般に普及しているとは認められない一種の造語と解されるものというべきであるところ,造語と理解される語が欧文字で表記されている場合にあっては,これに接する取引者,需要者は,我が国で馴染まれた外国語である英語風又はローマ字風の読みで称呼することが多いといえるものであるから,本願商標は,その構成文字全体を「リンク」と読み,その称呼をもって取引に資するのが自然であるというべきである。」(審決書10頁6行〜12行)と認定しているが,次に述べるとおり誤りである。 (ア)@「RINKU」は,「りんくうタウン」という地名(の略称)又は地域名称であり,「RINKU」から「りんくうタウン(及びその周辺地域)」という観念を生じる。 「りんくうタウン」とは,関西国際空港の開発の際に空港島の対岸地域に新たに開発された商工業地域であり,このことは,一般的な学校教育を受けた平均的な日本人であれば当然に知っているはずの公知の事実であり,「りんくう」が「臨空」に由来することも容易に理解するところである。 Aりんくうタウンないしその周辺地域には,「りんくうゲートタワービル」,JR西日本及び南海電鉄の「りんくうタウン駅」,「りんくう公園」など,「りんくう」の名を冠した施設が多数存在する。 そして,りんくうタウンの開発主体である大阪府が自ら「りんくう」のローマ字表記として「RINKU」の文字を使用し,りんくうタウンに所在する多数の施設の名称の英語表記でも,「RinkuTownStation」,「RinkuConventionCenter」,「RinkuGateTowerBuilding」,「RinkuERGABuilding」,「RinkuGeneralMedicalCenter」,「RinkuInternationalLogisticsCenter」,「RinkuPapara」,「RinkuPark」等,「RINKU」を使用しており,そのため他の公的機関や民間事業者も一様に「RINKU」の表記を使用し,実際に施設の看板,パンフレットの資料,施設を紹介するホームページにおいて「RINKU」の英語表記を使用し,地名としての「りんくう」の英語表記として「RINKU」は定着している。 したがって,「RINKU」は,審決がいうような「一種の造語」ではない。 これに対し被告は,上記各施設において「RINKU」と他の欧文字を組み合わせた表示がされているが,「RINKU」単独で表示されたものは存在しないから,「RINKU」から「りんくうタウン」の観念が生じる根拠とならない旨主張するが,りんくうタウン近辺の多数の施設において「RINKU」と他の欧文字を組み合わせた表示がされているのであれば,一般需要者は「RINKU」が「りんくうタウン」の略称の「りんくう」であると理解するはずであり,また,「RINKU」単独で表示されたものがないのは,誰もが「RINKU」を地名(の略称)である「りんくう」の英語表記であると認識するため,「RINKU」単独では識別力がないか又は極めて弱いと考えているからにほかならないのであり,被告の上記主張は失当である。 Bしたがって,一般需要者は,本願商標の「RINKU」の文字列を「りんくう」と読み,かつ,「りんくうタウン」ないしその周辺地域を想起するものである。 (イ)@原告は,著名な「プレミアム・アウトレット(Premium Outlets)」のブランドでアメリカ合衆国の各地においてアウトレットモールを運営するチェルシー・プロパティー・グループと日本企業2社との合弁企業である。 原告が平成12年11月23日にりんくうタウン地区内に開業した「りんくうプレミアム・アウトレット」(大阪府泉佐野市りんくう往来南所在)は,西日本最大級の我が国の主要なアウトレットモールの一つである。 原告は,「りんくうプレミアム・アウトレット」のほかに,平成12年7月に静岡県御殿場市に「御殿場プレミアム・アウトレット」,平成15年3月に栃木県佐野市に「佐野プレミアム・アウトレット」を開業し,以後,佐賀県鳥栖市に「鳥栖プレミアム・アウトレット」,岐阜県土岐市に「土岐プレミアム・アウトレット」を開業し,全国において「プレミアム・アウトレット」事業を展開中である。原告は,その事業展開の中で,各地の「プレミアム・アウトレット」の出所を表示する商標として,地名のローマ字表記に色彩の付された図形を組み合わせた商標を使用しており,例えば,「御殿場プレミアム・アウトレット」については「GOTEMBA」の文字列と図形を組み合わせた商標(商標登録第4703541号)を,「佐野プレミアム・アウトレット」については「SANO」の文字列と図形を組み合わせた商標(商標登録第4703542号)を使用している。 A原告は,平成12年11月23日の「りんくうプレミアム・アウトレット」の開業前後から少なくとも平成16年3月ころまで,「りんくうプレミアム・アウトレット」の施設の内外において本願商標を継続して使用してきた。 「りんくうプレミアム・アウトレット」には,年間数百万人が来場しているが,入場者は,必ず「パスポート」と呼ばれる案内用小冊子(甲21)や,クーポンブック(甲22),クーポンシート(甲23)の表紙に印刷された本願商標を目にする上,施設内の至る場所で本願商標を使用した看板や本願商標を付したポスターを目にし,また,施設内の建物外壁やフラッグに表示されている本願商標を目にする(甲24,25,29,30の1・2)。 加えて,原告は,「りんくうプレミアム・アウトレット」の開業(平成12年11月23日)の前後から少なくとも平成15年にかけてテレビ広告(甲30の1・2)を実施した。 このような原告の継続的な本願商標の使用により,「りんくうプレミアム・アウトレット」の周知性の獲得とともに,本願商標は一般消費者の間で「りんくうプレミアム・アウトレット」の出所を表示するものとして遅くとも審決時には既に広く知られたものとなっていたものである。 Bこれに対し被告は,原告提出の証拠中には,「PREMIUMOUTLETS」又は「PREMIUM OUTLETS記TM号(登録商標であることを示すマルアール)」の各文字がそれぞれ付加された態様の他人の登録商標が示されているだけであり,これらは本願商標の態様とその構成を異にするものであるから,これらの証拠からは,本願商標の使用を立証したものとはいえない旨主張する。 しかし,本願商標の使用態様は,他人の登録商標(乙1の1ないし5)が本願商標と同時に使用されているだけのことであり,本願商標を使用している事実に何ら変りはないし,もとより,登録商標の使用に当たっては,他の文字,図形又は記号と同時に使用する場合(例えば,ハウスマークとペットマークを同時に使用する場合,他の登録商標を同時に使用する場合)が多く,このような態様で登録商標が使用される場合であっても,当該登録商標の使用と認めることに何らの障害もないことは明らかである。このことは,被告自身がその審査基準(商標審査基準[改定第5版]第103.(1)B登録商標と他の文字,図形又は記号との同時使用の場合)において自ら認めていたところであるから,被告の上記主張は失当である。なお,「PREMIUM OUTLETSプレミアム・アウトレッツ」及び「RINKUPREMIUM OUTLETSリンクウ・プレミアム・アウトレッツ」の登録商標(乙1の1ないし5)の権利者は「シーピージーパートナーズエルピー」であり,同社は,原告の主要な株主であり,かつ,世界的にプレミアム・アウトレット事業を展開するチェルシープロパティグループの関連会社である。 (ウ)そして,本願商標は,彩色された図形の下に「RINKU」の文字を書し,該欧文字の上下に平行する2本直線を配した構成からなるものであるところ,その図形部分及び2本の直線のみからは直ちに特定の称呼,観念が生じないとしても,原告の運営する「りんくうプレミアム・アウトレット」の周知性と相まって,一般需要者は,文字部分を分離して観察することなく,本願商標の全体から「りんくうプレミアム・アウトレット」の観念を看取し,図形部分がりんくうタウンの前に広がる海面から朝日が昇る(又は夕日が沈む)様子をイメージしたものであることを容易に理解し,「りんくうプレミアム・アウトレットのマーク」であると認識するものである。 仮に「RINKU」の文字列に着目するとしても,「りんくうタウン(及びその周辺地域)」という観念が生じるものである。 (エ)また,本願商標に接した一般需要者は「りんくうプレミアム・アウトレット」又は「りんくうタウン」ないしその周辺地域を想起する以上,「RINKU」の文字部分は「りんくう」としか読みようがなく,本願商標からは,「りんくう」という称呼のみが生じる。 (オ)したがって,審決が,「「RINKU」の文字は,特定の語義あるいは特定の読み方を有する語として一般に普及しているとは認められない一種の造語」であり,「本願商標は,その構成文字全体を「リンク」と読み,その称呼をもって取引に資するのが自然である」と認定したのは誤りである。 イ 類否判断の誤り審決は,本願商標につき「かかる構成にあっては,図形部分と文字部分とが視覚上分離して看取されるばかりでなく,これらを常に一体不可分のものとして認識,把握しなければならない特段の事情も見いだし得ない」(審決書9頁36行〜38行),引用商標につき「上記引用商標1ないし引用商標5,引用商標7ないし引用商標9及び引用商標11ないし引用商標17は,それぞれの構成文字に相応して,「リンク」の称呼が生ずるというべきである。また,引用商標6及び引用商標10は,・・・全体として「LINC」及び「Linc」の欧文字を表したものであると容易に認識できるものといわざるを得ない。そして,該「LINC」「Linc」の文字は,特定の観念の生じない造語であるというべきであるから,・・・「リンク」の称呼を生ずるというのが相当である。」(同10頁31行〜11頁2行)とした上で,「してみれば,本願商標と引用商標とは,外観において差異を有し,観念においては,比較することができないとしても,「リンク」の称呼を共通にする全体として相紛れるおそれのある類似する商標」である(同11頁3行〜5行)と判断している。 しかし,商標の類否の判断に際しては,「商標の外観,観念または称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,従って,右三点のうちその一において類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきではない。」(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)と解されるところ,審決は,以下のとおり,本願商標と引用商標との外観及び観念の明らかな相違について一顧だにすることなく,かつ,原告が提出した取引の実情に関する証拠についてまったく検討することなく,「リンク」との共通の称呼が生じるとの形式的理由のみによって本願商標と引用商標とが類似すると簡単に結論づけており,外観,観念,称呼の総合的判断を怠った点において明らかな違法がある。 (ア)審決は,本願商標について「図形部分と文字部分とが視覚上分離して看取されるばかりでなく,これらを常に一体不可分のものとして認識,把握しなければならない特段の事情も見いだし得ない」として,本願商標の図形部分を特段の理由もなく無視ないしは軽視し,文字部分を要部と認定している。 しかし,図形部分と文字部分との結合商標の場合に,両部分が外観上概念上不可分一体の関係にあるものと認めるべき事由がある場合のみにこれを一体のものとし,これに当てはまらない場合は別個のものとして,文字部分に依拠して商標の要部をとらえるとの考察方法は,安易にすぎる。図形部分と文字部分とを分離観察すべきかどうかという点については,「当該結合商標の文字と図形が,構成上どのような結合商標となっているか,外観,称呼,観念において関連性を有しているか否か,識別力の点で一方が特に顕著性を有してないか否かなどの点を考慮するとともに,当該結合商標が使用されている場合には,その使用されている商品の取引の実情,あるいは取引者や需要者に当該結合商標が著名,周知であるか否かなどを考慮して,当該結合商標の文字と図形の両者が不可分一体をなして一個の外観,称呼,観念を形成するもの」であるかどうかで判断されるべきである(東京高裁平成7年3月29日判決・判例時報1565号131頁,東京高裁平成6年10月25日判決・判例時報1523号145頁参照)。 そして,本願商標については,@図形部分と文字部分は構成上,上下に相接して位置していること,A海あるいは波及び太陽を図案化した図形部分と「りんくう」という地名を示す文字部分とは,当該地域が海岸地域に位置していることも相まって観念的にも自然な結合をなしているというべきであること,B図形部分が青,緑,赤,紫の4色を鮮やかに配した印象的な図形であり決してありふれたものでないのに対し,「RINKU」の文字部分は特徴のない標準文字で,しかも黒色であること,C図形部分が「RINKU」の文字部分に比べて同程度以上の大きさを有していること,D文字部分「RINKU」は地名の略称である「りんくう」の英語表記であり,それ自体の識別力はないか若しくは極めて弱いこと,以上の@ないしDの点に鑑みると本願商標の文字部分が識別力の点で特に顕著なものであるということはできない。 また,本願商標は,日本最大規模のアウトレットモールとして周知の「りんくうプレミアム・アウトレット」を示すものとして,平成12年11月ころから宣伝広告などに使用されてきたものであり,本願商標は一般消費者の間で「りんくうプレミアム・アウトレット」の出所を表示するものとして遅くとも審決時において既に広く知られたものとなっていたものである。 そうすると,本願商標は,取引者,需要者において図形と文字が不可分一体のものとして認識されるものと認めるのが相当であり,安易に文字部分を要部と認めて,そこから生じる称呼のみを問題として引用商標との対比を行うことは,余りにも形式的な判断であるといわざるを得ない。 (イ)前記のとおり「RINKU」の文字列からは「りんくうタウン(及びその周辺地域)」との観念が生じるのに対し,「Link」,「Linc」等からは「つながり,連結」等の観念が生じるものであり,これらは著しく異なっている。 さらに,本願商標の全体と引用商標とを対比したときには,本願商標からは「りんくうプレミアム・アウトレット」又は「りんくうタウン(及びその周辺地域)」との観念が生じるのに対し,引用商標からは「つながり,連結」等の観念が生じるものであるから,観念において著しく異なっている。仮に百歩譲って本願商標から特定の観念が生じないとしても,「Link」,「Linc」等からは,「つながり,連結」等の明確な観念が生じるから,本願商標と引用商標とは観念において明瞭に相違するものである。なお,東京高裁平成13年12月12日判決(判例時報1780号137頁参照)は,「痛快!」(本願商標)と,図案化された「Tsu」と「Kai」を二段に併記してなる「TsuKai」(引用商標)とについて,「「痛快!」(本願商標)からは「『痛快』,『とても気持ちのよいこと』,『大変愉快なこと』等の明確な観念を生ずるのに対し」,「TsuKai」(引用商標)からは「特定の観念が生じないことはもとより,引用商標が何らかの意味合いをもって把握されることもないから,両者は観念においても明りょうに相違するものと認められる。」と判断しており,上記判決の基準によれば,本件において,本願商標と引用商標との観念の相違は明瞭である。 (ウ)また,「RINKU」と「Link」,「Linc」等とでは,商標に接した取引者・需要者の注目度が一般に最も高いと言われている第1文字において「R」と「L」との顕著な差があり,仮に百歩譲って「RINKU」から「リンク」との称呼が生じるとしても,「R」と「L」との外観の違いのほか,「RINKU」は末尾に「U」の文字を有し5文字の欧文字から構成されるのに対し,「Link」,「Linc」はいずれも末尾に「U」の文字を有しないため,4文字のみより構成される違いがあり,このような短い単語における1文字の差がもたらす外観の相違は顕著である。このように文字部分のみに着目しても本願商標と引用商標との外観には大きな相違が認められるものである。さらに図形部分の有無という決定的な違いによって,全体として本願商標と引用商標とでは,外観において著しく異なっている。 (エ)そうすると,本願商標と引用商標とでは,外観において著しく異なり,また,観念においてもその相違は明瞭であるから,審決が,本願商標と引用商標とが,「「リンク」の称呼を共通にする全体として相紛れるおそれのある類似する商標」であると判断したのは誤りである。 2 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。 (1) 取消事由1に対しア商標法20条2項ないし4項によれば,商標法20条2項に規定する更新登録の申請手続期間(存続期間の満了前6月から満了の日までの間)を経過しても当該商標権は当然には消滅せず,存続期間は更新されたものとし,存続期間の満了後6月内に更新登録の申請がないときに初めてその商標権は遡及して消滅することとなる。 そうすると,引用商標4については,審決時には,存続期間経過後6月以内の期間中であり,その商標権者は更新登録の申請がなくとも商標権者としての地位が認められていたから,引用商標4は,商標法4条1項11号の「他人の登録商標」に該当するというべきである。 イ引用商標2,3については,審決時には,商標権の存続期間の満了の日から6月以上経過していたが,未だその商標権が消滅した日から1年を経過していなかったため,本願商標は,商標法4条1項13号の「商標権が消滅した日から1年を経過していない他人の商標に類似する商標」であって,「その商標権に係る指定役務又はこれに類似する役務について使用をするもの」に該当し,審決時には,本願商標の登録をすることができなかったものである。 (2) 取消事由2に対しア(ア)文字,図形,記号等の結合よりなる結合商標の類否の判断に当たっては,一般に,簡易,迅速を尊ぶ取引の実際において,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していない限り,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されるというわけではなく,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,その結果,1個の商標から2個以上の称呼,観念の生じることがあるのは,経験則の教えるところであり,この場合,一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一又は類似であるとはいえないとしても,他の称呼,観念が他人の商標のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解される(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。そうすると,結合商標の各構成要素に上記のような不可分的結合が認められない限り,全体観察を実態に即して行うための必須の手法として,分離観察をし,商標の要部を抽出して,引用商標と対比し,類否判断すべきであるところ,本願商標は,別紙1のとおり,文字と図形とからなる結合商標であるが,その外観上の構成自体から,各構成部分はそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとは認めがたい。 (イ)本願商標の構成中の図形部分及び2本の直線については,直ちに特定の称呼,観念が生じるものではない。 本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分については,審決が認定するように,特定の語義あるいは特定の読み方を有する語として一般に普及しているとは認められない一種の造語と解されものであり,造語と理解される語が欧文字で表記されている場合にあっては,これに接する取引者,需要者は,我が国で馴染まれた外国語である英語風又はローマ字風の読みで称呼することが一般的であるといえるから,本願商標の構成文字全体をローマ字風に「リンク」と読み,その称呼をもって取引に資すると見るのが自然であり,「RINKU」の文字部分それ自体が自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。したがって,たとえ「リンクウ」として読まれる場合があるとしても,それゆえをもって,本願商標の文字部分の「RINKU」から「リンク」の称呼は生じないということはできない。 (ウ)本願商標は,何かをかたどったものとは認識しがたい幾何学的図形と,既製語とは認められない「RINKU」の文字から構成されるものであるから,本願商標から,特定の観念は生じないというべきである。 もっとも,「臨空」,「りんくう」が関西国際空港の対岸地域に開発された商工業地域の「りんくうタウン」を指称するものであることは,関西地方のみならず,他の地方でも知られていることを否定するものではないが,本願商標の文字部分の「RINKU」が「りんくうタウン」等の「りんくう」を指し,「りんくうタウン」等を直ちに連想,想起させるものであるとはいえない。 原告提出の甲5,6,9ないし12中には,「RINKU」の文字と他の欧文字とを組み合わせた表示や,「りんくう○○」に対応する英訳として「RINKU○○」が併記された表示があり,また,「RINKU」の文字は,「臨空」に由来する平仮名の英語表記として,「りんくう」の平仮名と共に併記されることの多い文字であるとしても,上記甲号各証中には,「RINKU」の文字がそれのみで使用された表示はなく,「りんくう」の平仮名文字又は「RINKU」の後に続く「TOWN」,「PARK」等の語と一体となって,構成全体として「りんくうタウン」内の施設名としての観念が生じるものというべきであって,「RINKU」の語のみで独立して「りんくうタウン」等の観念が生じるとする裏付けにはなっていないというべきである。 また,原告主張の本願商標の使用態様(甲21ないし25,29,30の1・2)は,本願商標の下部に,「PREMIUMOUTLETS」,「PREMIUMOUTLETS」又は「PREMITMUMOUTLETS記号(登録商標であることを示すマルアール)」の各文字が付加された態様や,本願商標の下部に,「RINKU」,「PREMIUM」及び「OUTLETS」の文字を三段に書した態様などであって,いずれも本願商標とはその構成自体を異にするものであり,これらをもって本願商標が使用されたものとはいえず,さらに,本願商標に接した一般の需要者が,本願商標より「りんくうプレミアム・アウトレット」を想起し,「RINKU」の文字自体が,「りんくうプレミアム・アウトレット」又は「りんくうタウン」の「りんくう」の英語表記であると理解するものであるということはできない。 加えて,本願商標に併記されている「PREMIUMOUTLETS」又は「RINKUPREMIUMOUTLETS」の文字部分は,それのみで商標としての出所表示機能を有する部分であることから,一般需要者が,それら「PREMIUMOUTLETS」又は「RINKUPREMIUMOUTLETS」の文字の併記されていない本願商標に接した際に,本願商標より直ちに「りんくうプレミアム・アウトレット」を想起し,「RINKU」が,「りんくうプレミアム・アウトレット」又は「りんくうタウン」の「りんくう」の英語表記であると理解するということはできない。 なお,「PREMIUMOUTLETS」又は「RINKUPREMIUMOUTLETS」の文字については,他人の登録商標として,現に有効に存続している(乙1の1ないし5)。 (エ)以上によれば,本願商標に接した取引者・需要者は,本願商標から,「りんくうプレミアム・アウトレット」又は「りんくうタウン」ないしその周辺地域を想起し,「RINKU」の文字部分は「りんくう」としか読みようがなく,本願商標からは,「りんくう」という称呼のみが生じるとの原告の主張は,失当である。 イ(ア)商標の類否の判断は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきであり,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであって,決して上記3要素の一つの対比のみによってなされるべきでないが,少なくとも,その一つが類似している場合には,当該具体的な取引の下では商品の出所の混同を生じるおそれはないと考えられる特別の事情が認められる場合を除いて,出所の混同を生じるおそれがあるというべきである。 前記のとおり,本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分が,地域名称としての「りんくう」に当てた欧文字であるとしても,「RINKU」の文字部分のみで未だ地域名称としての「りんくう」を想起させる機能を有するものということはできず,特定の語義を有するものとして一般に普及していると認められない一種の造語であるから,観念において,比較するところがないというべきである。一方,引用商標のうち,引用商標6,10は,全体として「LINC」及び「Linc」の欧文字を表したものと容易に認識されるものであるが,上記各文字も特定の観念を生じない造語である。 また,本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分は,独立して取引に資される部分であり,本願商標を分離観察した結果,「リンクウ」と称呼される場合があるとしても,「RINKU」の文字部分によって「リンク」の称呼は生じないとする理由にはならないから,本願商標より「リンク」の称呼が生じるというべきである。 そして,この称呼を手がかりとした場合,本願商標と引用商標とは,その外観に差異を有し,観念において比較できない事情を考慮したとしても,「リンク」の称呼において類似しており,かつ,指定役務の取引の実情等において,役務の出所の混同をきたすおそれはないと考えられる特別の事情が存在するものとは認められないから,本願商標と引用商標は類似するというべきである。 そして,本願商標と引用商標とは,商標において類似するばかりでなく,その指定役務も同一又は類似するものであるから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはない。 (イ)なお,原告が引用する「GOTEMBA」の文字列と図形を組み合わせた商標(商標登録第4703541号),「SANO」の文字列と図形を組み合わせた商標(商標登録第4703542号)が登録されているが,登録出願に係る商標が登録され得るか否かの判断は,当該商標の構成態様と指定商品,指定役務とに基づいて,個別具体的に判断されるべきものであり,上記登録例等の事実関係は,本件とは異なるものであるから,本願商標が商標登録の要件を満たすかどうかの判断を左右するものではない。 |
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当裁判所の判断
1 不適格な引用商標との対比(取消事由1)について(1)ア原告は,引用商標2ないし4は,審決時には,いずれも存続期間が満了し,存続期間の更新登録の申請がされずに権利が消滅しているから,本願商標との類否判断を行う対象としての適格性を欠くにもかかわらず,本願商標が引用商標2ないし4と類似することを本願商標の登録出願の拒絶の根拠とした審決は,違法である旨主張する。 そこで検討するに,甲28の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,@引用商標2,3は,平成7年5月31日に商標権の設定登録がされた後,平成18年2月22日,平成17年5月31日存続期間満了を原因として,商標権の抹消登録がされたこと,A引用商標4は,平成7年10月31日に商標権の設定登録がされた後,その存続期間の更新登録の申請がされていないことが認められる。 イ上記@の認定事実によれば,引用商標2,3は,審決時(平成18年3月10日)には,存続期間経過後6月以内に更新登録の申請がなく,商標権が消滅していたのであるから,商標法4条1項11号の「他人の登録商標」に該当しないというべきである。 ウところで,商標法19条1項は,商標権の存続期間は,設定登録の日から10年をもって終了する旨,同条3項は,商標権の存続期間を更新した旨の登録があったときは,その満了の時に存続期間が更新されたものとする旨規定し,同法20条2項は,商標権の存続期間の更新登録の申請は,その存続期間の満了前6月から満了の日までの間にしなければならない旨,同条3項は,存続期間が満了しても,満了後6月以内であれば更新登録の申請をすることができる旨,同条4項は,存続期間の満了後6月内に更新登録の申請がない場合に,その商標権は存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなす旨規定している。 これらの規定によれば,商標権の存続期間は設定登録の日から10年であり,その存続期間の更新登録の申請は存続期間の満了前6月から満了後6月までの間とし,存続期間の満了後6月内に更新登録の申請がないときに初めてその商標権は満了の時に遡及して消滅するのであるから,商標権の存続期間が満了しても,当該商標権は当然には消滅せず,満了後6月を経過する前の期間中であれば,更新登録の申請がなくとも,当該商標権が存続するものとして扱うのが相当であると解される。 そして,上記Aの認定事実によれば,引用商標4の商標権の存続期間は,平成17年10月31日の経過により満了したが,審決時(平成18年3月10日)には,上記満了後6月を経過していなかったのであるから,引用商標4は,商標法4条1項11号の「他人の商標登録」に該当するというべきである。本件においては,引用商標4について,結果的には,存続期間満了後6月以内に更新登録の申請がされなかったものであり,その商標権は満了の時(平成17年10月31日)にさかのぼって消滅したものとみなされるものではあるが,審決が違法かどうかは審決時を基準として判断すべきであるから,上記の点は審決を違法ならしめる理由となるものではない。 (2)以上に説示したところによれば,審決が引用商標2,3を商標法3条1項11号の「他人の登録商標」に該当するとした点は誤りであるが,審決は,本願商標と引用商標1ないし17とをそれぞれ対比して類否判断を行っているのであるから,引用商標2,3が類否判断を行う対象としての適格性を欠くとしても,その余の引用商標との類否判断に誤りがなければ,本願商標に係る出願は拒絶されるべきものであるところ,その余の引用商標との類否判断に誤りがないことは,後記のとおりであるから,審決の上記誤りは,審決の結論に影響を及ぼすものではないというべきである。 したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 本願商標と引用商標の類否判断の誤り(取消事由2)について(1) 本願商標の観念,称呼について原告は,審決は,本願商標の構成中の「RINKU」の文字は,「特定の語義あるいは特定の読み方を有する語として一般に普及しているとは認められない一種の造語」であり,「リンク」と読まれ,本願商標から「リンク」の称呼が生じると認定しているが,「RINKU」は,関西国際空港の対岸地域に新たに開発された商工業地域である「りんくうタウン」という地名又は地域名称の「りんくう」に相当する部分の英語表記であって,造語ではなく,「RINKU」から「りんくうタウン(及びその周辺地域)」という観念を生じ,本願商標に接した一般需要者は「りんくうプレミアム・アウトレット」又は「りんくうタウン」ないしその周辺地域を想起する以上,「RINKU」の文字部分は「りんくう」としか読みようがなく,本願商標からは「りんくう」という称呼のみが生じるから,審決の上記認定は誤りである旨主張する。 ア証拠(甲1,4ないし25,29,30(いずれも枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア)大阪府は,関西国際空港の対岸部(大阪府泉佐野市,泉南市及び田尻町)の地域について,空港と地域が共に繁栄することを目指し,関西国際空港と一体となって地域を整備する計画をし,その計画の対象とした地域を「りんくうタウン」の愛称で呼ぶこととした。 関西国際空港は平成6年9月に開港したが,「りんくうタウン」(面積・約320ヘクタール)は,その開港前から,商業業務ゾーン,流通・製造・加工ゾーン,住宅関連ゾーン,空港関連産業ゾーン及び工業団地ゾーンの5ゾーンを中心にまちづくりが進められてきた。 りんくうタウン内には,JR「りんくうタウン駅」及び南海電鉄「りんくうタウン駅」,「りんくうゲートタワービル」,「りんくうエルガビルディング」,「りんくうパパラ」,「りんくう公園」等の施設がある。 原告は,平成12年11月23日,りんくうタウン内(商業業務ゾーン)に,国内外の「ブランド」の直営店72店舗,飲食店7店舗の合計79店舗のテナントが出店する「りんくうプレミアム・アウトレット」という名称のアウトレットモール(大阪府泉佐野市りんくう往来南所在)を開業した。「りんくうプレミアム・アウトレット」は,西日本最大規模のアウトレットモールであり,開業当時からりんくうタウンの人気施設の一つとなり,年間数百万人が来場している。 平成14年3月8日には,新たに40店舗を加え,「りんくうプレミアム・アウトレット」の総店舗数は119店舗となった。 (イ)大阪府,財団法人大阪府臨海・りんくうセンター発行の広報誌等(甲6ないし10)には,「りんくうタウン」は「RINKUTOWN」又は「RinkuTown」,「りんくうタウン駅」は「RinkuTownStation」,「りんくうゲートタワービル」は「RinkuGateTowerBuilding」,「りんくうエルガビルディング」は「RinkuERGABuilding」,「りんくうパパラ」は「RinkuPapara」,「りんくう公園」は「RinkuPark」とそれぞれ表記されている。 なお,りんくうタウン内の「りんくう総合医療センター」の看板には,「RINKUGENERALMEDICALCENTER」(甲14の写真H)の表示がともに付されている。 (ウ)@原告が作成した「OUTLETS 原告が作成した「PASSPORT」と題する小冊子(甲21)の表紙及び裏表紙の各中央,本文末尾には,本願商標及びその真下の位置に「PREMIUMOUTLETS」の文字が記載されTMている。また,原告が作成した「COUPONBOOKJanuary-March 2001」と題するクーポンブック(甲22)の表紙及び裏表紙には,本願商標及びその真下の位置に「PREMIUMOUTLETS 上記リーフレットは,「りんくうプレミアム・アウトレット」において無償で配布されており,各店舗の所在位置,「りんくうプレミアム・アウトレット」へのアクセスの手段等が記載されている。 上記小冊子は,「りんくうプレミアム・アウトレット」の各店舗で発行された一定金額以上のレシートを提示することにより入手することができ,各店舗の割引,近隣施設の割引情報等が掲載されている。上記クーポンブック及びクーポンシートは,各店舗で割引やギフトの特典が得られるクーポン券である。 Aさらに,原告が作成した「1stアニバーサリーセール開催!2001年11月16日(金)〜25日(日)」との大見出しの「りんくうプレミアム・アウトレット」のポスター(甲24)には,その下部右隅に,本願商標及びその真下の位置に「PREMIUM OUTLETS (エ)@平成12年10月3日,18日,25日,31日,同年11月1日ないし5日,7日ないし14日,16日ないし18日,20日ないし29日,同年12月1日ないし6日,8日ないし16日,18日ないし22日,24日ないし28日,31日,平成13年1月1日,3日ないし5日,8日ないし12日,14日,16日,17日,19日,20日,22日,23日,25日,28日,同年2月1日,3日,5日,7日ないし9日,13日ないし15日,19日ないし23日,25日,27日,同年3月1日,4日ないし13日,16日,19日,20日,22日の各日付けの日刊紙(毎日新聞,日本経済新聞,読売新聞等),スポーツ紙(日刊スポーツ,報知新聞,デイリースポーツ,サンケイスポーツ等),業界紙(日経流通新聞,繊研新聞,日本繊維新聞等)又は雑誌(関西ウォーカー,るるぶジャパン,じゃらん等)において,「りんくうプレミアム・アウトレット」の紹介記事ないし広告記事が掲載された。 A平成12年11月18日,21日ないし24日,同年12月11日,16日,23日,平成13年1月18日,同年3月1日,6日ないし8日,14日,20日には,「りんくうプレミアム・アウトレット」のテレビ広告が,テレビ大阪,関西テレビ,毎日放送,朝日放送,読売テレビ及びその系列局等で放映された。平成12年11月23日,24日,平成13年3月7日には,NHKのテレビニュースで,「りんくうプレミアム・アウトレット」が取り上げられた。 Bさらに,平成14年7月17日,18日,同年11月8日ないし13日,同年11月12日,同年12月16日,17日,19日,平成15年3月17日,18日,同年10月,同年11月12日,平成16年11月26日ないし30日,同年12月1日ないし12日,平成17年2月28日ないし3月31日,同年7月ないし12月(1週間に1本),同年11月28日ないし12月4日,平成18年1月16日ないし22日に,関西テレビ,毎日放送,朝日放送又は読売テレビで,「りんくうプレミアム・アウトレット」のテレビ広告が放映された。これらの広告を収録したビデオ中には,本願商標及びその真下の位置に「PREMIUMOUTLETS イ上記認定事実によれば,審決時(平成18年3月10日)には,「りんくう」という語が,関西国際空港の対岸部に開発整備された地域である「りんくうタウン」又はその略称の意味を持つことは,関西地方のみならず,全国的にも知られており,また,大阪府は,「りんくうタウン」の英語表記として「RINKUTOWN」又は「RinkuTown」を使用し,りんくうタウン内の各施設を英語表記する場合には,例えば,JR及び南海電鉄の各「りんくうタウン駅」は「RinkuTownStation」,「りんくうゲートタワービル」は「RinkuGateTowerBuilding」,「りんくう公園」は「RinkuPark」とし,「りんくう」の語に対応する部分は「RINKU」と表記されていることが認められる。 しかし,@ローマ字によって国語を書き表す場合には,一般には,長音はローマ字の母音字の上に「^」をつけて表すが,大文字の場合は母音字を並べてもよいとされているので(昭和29年12月9日内閣告示第1号),「りんくう」の語は「RINK 」又は「RINKUU」とつづUることになり,一方,ヘボン式のつづり方によれば,長音に長音記号を付さないので,「りんくう」の語は「RINKU」とつづることになるが,Aヘボン式のつづり方によっても,「りんく」は「RINKU」とつづることになるので,「RINKU」とローマ字でつづった場合には,「りんく」又は「りんくう」と読むことができる。加えて,B本件においては,「RINKU」又は「Rinku」の語それ自体が特定の意味を表す英単語その他の外国語の単語として一般の辞書に掲載されていることの立証はされておらず,「RINKU」の語それ自体は,特定の語義を有しない一種の造語であると認められる。 以上の@ないしBを前提とすると,本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分は,ローマ字読みで,「りんくう」の称呼が生じるほかに,「りんく」(「リンク」)の称呼も自然に生じるものと認められる。もっとも,りんくうタウンの英語表記として「RINKUTOWN」又は「RinkuTown」が使用され,りんくうタウン内の各施設を英語表記する場合に「りんくう」の語に対応する部分は「RINKU」と表記されていることは前記のとおりであるが,「RINKU」の文字が単独で使用されている例はなく,「RINKU」の文字の後に続く文字部分と相まって「りんくうタウン」などの称呼が生じるものというべきである。 そうすると,本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分から「りんくう」の称呼のみが生じるということはできない。 ウこれに対し原告は,平成12年11月23日にりんくうタウン内に「りんくうプレミアム・アウトレット」を開業して以来,その施設の内外で本願商標を継続して使用し,更に多数の来場者,テレビ広告等を通じて獲得した「りんくうプレミアム・アウトレット」の周知性と相まって,本願商標は広く知られたものとなり,一般需要者は,本願商標の構成中の文字部分を分離して観察することなく,本願商標の全体から「りんくうプレミアム・アウトレット」の観念を看取し,本願商標の構成中の図形部分がりんくうタウンの前に広がる海面から朝日が昇る(又は夕日が沈む)様子をイメージしたものであることを容易に理解し,「りんくうプレミアム・アウトレットのマーク」であると認識するものであり,仮に「RINKU」の文字列に着目するとしても,「りんくうタウン(及びその周辺地域)」という観念が生じる以上,本願商標からは,「りんくう」という称呼のみが生じる旨主張する。 そこで検討するに,前記アの認定事実によれば,原告が運営する「りんくうプレミアム・アウトレット」は,西日本最大規模のアウトレットモールであり,開業当時からりんくうタウンの人気施設の一つとなり,その存在は,年間数百万人の来場者や新聞,雑誌,テレビにおける宣伝広告等を通じて広く知れわたっていたことは認められる。 しかし,一方で,@その宣伝広告においては,本願商標を単独で使用したものはなく,本願商標の真下の位置に「PREMIUMOUTLETS」,「PREMIUMOUTLETS また,「りんくうプレミアム・アウトレット」のリーフレット,「PASSPORT」と題する小冊子,クーポンブック,クーポンシート,ポスターや,施設内の看板,建物外壁及びフラッグについても,本願商標が単独で使用されているものはなく,本願商標とともに,その真下の位置に「PREMIUMOUTLETS」,「PREMIUMOTMUTLETS したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エそうすると,本願商標の構成中の「RINKU」の文字は,「特定の語義あるいは特定の読み方を有する語として一般に普及しているとは認められない一種の造語」であり,「リンク」と読まれ,本願商標から「リンク」の称呼が生じると認定した審決に誤りはないというべきである。 (2) 本願商標と引用商標1,4ないし17との類否についてア(ア)前記(1)イ認定のとおり,本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分からは「りんく」(「リンク」)の称呼も自然に生じるものであり,引用商標1,4ないし17の各文字部分から原告も認めているように「リンク」の称呼が生じるものである。 そうすると,本願商標と引用商標1,4ないし17は「リンク」という称呼を共通にするというべきである。 (イ)前記(1)イ,ウ認定のとおり,本願商標の構成中の「RINKU」の文字部分それ自体は特定の語義を有しない一種の造語であり,その構成中の図形部分からも特定の観念を想起するものではなく,文字部分及び図形部分(2本の直線を含めて)を結合した本願商標全体としてみても特定の観念が生じるものではない。 そして,「LINK」又は「Link」の文字部分を構成中に含む引用商標1,4,5,7ないし9,11ないし17については,上記文字部分から英単語の「link」を想起し,「つながり,連結」等の観念が生じるものと認めれられるものの,「LINC」又は「Linc」の文字部分を構成中に含む引用商標6,10については,「LINC」又は「Linc」は特定の意味を有しない造語であるため,特定の観念が生じないというべきである。 そうすると,本願商標と引用商標1,4ないし17とを観念において対比しようとしても,本願商標には対比の対象となる特定の観念が存しないのであるから,本願商標と「つながり,連結」等の観念が生じる引用商標1,4,5,7ないし9,11ないし17は,観念において比較することができないというべきであり,また,本願商標と特定の観念が生じない引用商標6,10も,観念において比較することができないというべきである。 (ウ)さらに,上記のとおり,本願商標の構成中の図形部分からは特定の観念を想起するものではなく,本願商標全体からも特定の観念を生じないのであるから,本願商標がその指定役務に使用された場合には,本願商標に接する取引者,需要者としては,「RINKU」の文字部分に着目し,その部分から生じる称呼によって取引に当たるとみるのが自然であり,本願商標の構成中「RINKU」の文字部分が取引者,需要者に対して役務の提供者の識別標識として支配的な印象を与えるというべきである。そして,「RINKU」の文字部分からは,「りんく」(「リンク」)の称呼も生じることは,前記のとおりである。 (エ)以上の(ア)ないし(ウ)を前提として本願商標と引用商標1,4ないし17を対比するに,本願商標と引用商標1,4ないし17とは,それぞれ外観において差異を有するが,観念においては比較することができないこと,本願商標と引用商標1,4ないし17は「リンク」の称呼を共通にすること,本願商標においては「リンク」の称呼が役務の提供者の識別標識としての機能を有すること,前記(1)で認定した原告による本願商標の使用の態様等取引の実情を総合し,本願商標を全体的に考察すると,本願商標と引用商標1,4ないし17は,本願商標の指定役務と同一又は類似の役務に使用された場合には,その役務の提供者につき誤認混同を生じるおそれがあるものと認められるから,本願商標は,上記各引用商標とそれぞれ類似するというべきである。これと同旨の審決は是認することができる。 イ(ア)これに対し原告は,審決は,本願商標と引用商標との外観及び観念の明らかな相違について一顧だにすることなく,かつ,原告が提出した取引の実情に関する証拠についてまったく検討することなく,「リンク」との共通の称呼が生じるとの形式的理由のみによって本願商標と引用商標とが類似すると簡単に結論づけており,外観,観念,称呼の総合的判断を怠った点において明らかな違法がある旨主張する。 しかし,審決は,前記ア(エ)における説示と同旨の判断をし,結論として,「本願商標と引用商標とは・・・全体として相紛れるおそれのある類似する商標」(審決書13頁3行〜5行)であると判断したものであり,審決は外観,観念,称呼の総合的判断を行っているから,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,図形部分と文字部分との結合商標である本願商標は,取引者,需要者において図形と文字が不可分一体のものとして認識されるものと認めるのが相当であるのに,審決は,本願商標の図形部分を特段の理由もなく無視ないしは軽視し,安易に文字部分を要部と認定し,そこから生じる称呼のみを問題として引用商標との対比判断を行っており,このような審決の判断は,余りにも形式的である旨主張する。 しかし,前記ア(ウ)で説示したとおり,本願商標全体から特定の観念を生じるものでなく,その構成中の図形部分からも特定の観念を想起するものではないため,その構成中の「RINKU」の文字部分が取引者,需要者に対して役務の提供者の識別標識として支配的な印象を与えるものであり,審決は,このような趣旨から「RINKU」の文字部分を本願商標の要部と認定した上で,上記のとおり外観,観念,称呼の総合的判断を行っているというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。 (イ)さらに,原告は,本願商標から特定の観念が生じないとしても,引用商標1,4ないし17の文字部分の「Link」,「Linc」等からは,「つながり,連結」等の明確な観念が生じ,本願商標と上記各引用商標とは観念において明瞭に相違し,本願商標と上記各引用商標は類似しない旨主張する。 しかし,前記ア(イ)のとおり,「LINC」又は「Linc」の文字部分を含む引用商標6,10からは特定の観念が生じないのみならず,そもそも本願商標から特定の観念が生じない以上,本願商標の観念と引用商標1,4ないし17の観念とを比較することはできないから,本願商標と上記各引用商標とは観念において明瞭に相違するものということはできず,原告の上記主張は,その前提において採用することができない。 なお,原告の引用する裁判例(東京高裁平成13年12月12日判決)は,対比される両商標の主要な部分の構成が異なる上,出願に係る商標から明確な観念が生じることを前提とするものであるから,本件とは事案が異なり,本件に適切ではない。 (ウ)また,原告は,「RINKU」と「Link」,「Linc」等とでは,外観の相違が顕著であるなど,本願商標と引用商標1,4ないし17とは外観において著しく異なっている旨主張する。 しかし,本願商標と引用商標1,4ないし17とは,外観において原告主張のような差異を有するものではあるが,そのことを考慮してもなお,本願商標が,上記各引用商標と称呼を共通にし誤認混同を生じるおそれのある類似する商標というべきであることは,前記のとおりである。 (3) したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 結論以上によれば,本願商標は,引用商標1,4ないし17と類似する商標であり,しかも,本願商標の指定役務は,上記各引用商標の指定役務と同一又は類似のものを含むことは原告も認めるところであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはないというべきである。 よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 佐藤久夫 |
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裁判官 | 大鷹一郎 |
裁判官 | 嶋末和秀 |