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事件 平成 18年 (ネ) 10043号 商標権侵害差止等請求控訴事件
控訴人 株式会社マルタ
同訴訟代理人弁護士 今川忠
同 西山宏昭
同 木村智彦
同中澤構
同訴訟代理人弁理士 佐藤英昭
被控訴人 株式会社ラック・プロダクツ(旧商号 株式会社グリーンメイト)
同訴訟代理人弁護士 堀越靖司
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/09/28
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原判決中,控訴人敗訴部分を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は,原判決別紙被告商品目録5記載の商品又はその包装に,原判決別紙被告商標目録1又は2記載の商標を付したものを生産し,譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,又は輸入してはならない。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は第1,2審を通じこれを5分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
事案の概要
1 事案の要旨本件は,被服(運動用特殊衣服を除く),布製身の回り品(他の類に属するものを除く)を指定商品とする商標登録第907295号の商標権(以下「原告商標権」といい,その対象である登録商標を「原告商標」という。)を有する被控訴人が,運動用特殊衣服等を指定商品とする原告商標に類似する商標登録第4178406号の商標権(以下「被告商標権」といい,その対象である登録商標を「被告商標」という。)を有するドイツ法人である訴外Derbystar Sportartikelfabrik GmbH(以下「ダービースター社」という。)からその使用許諾を受けた控訴人に対し,原判決別紙被告商標目録1又は2記載の商標(以下「被告商標1」,「被告商標2」という。)を付した原判決別紙被告商品目録1ないし5記載の商品(以下「被告商品」といい,各商品は,同目録記載の番号により「被告商品1(1)」のように表記する。)の製造,販売等の差止め及び廃棄並びに損害賠償(新聞記事の掲載による損害13万9530円及び被告商品2,3(2),3(3)に係る商標法38条2項の損害808万円)及び遅延損害金の支払を求めたのに対し,控訴人が,被告商品(被告商品5を除く。)は運動用特殊衣服であり,被服(運動用特殊衣服を除く)には当たらない,原告商標権には商標法4条1項7号(公序良俗)又は19号(不正の目的)違反の無効理由が存在するなどと主張して争った事案である。
原判決は,@被告商品2,3(2),3(3)は原告商標権の指定商品である「被服(運動用特殊衣服を除く)」に,被告商品5は同じく「布製身の回り品(他の類に属するものを除く)」にそれぞれ該当するとして,控訴人の侵害行為ないしそのおそれを認めて,被控訴人の差止め等請求(被告商品5に係る廃棄請求を除く。)及び商標法38条2項に基づく損害賠償請求の一部を認容する一方,A被告商品1,3(1),3(4),4については上記指定商品に該当しないとして,それらの商品に係る差止め等請求を棄却し,B被告商品5は製造されていないとして,その廃棄請求を棄却し,C新聞記事の掲載による損害賠償請求は理由がないとして棄却した。
そこで,控訴人が,上記@の敗訴部分を不服として本件控訴を提起したものである。
したがって,原判決中,上記棄却に係るA,B,Cの各請求については,当審における審理の対象となっていない。
2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張本件の前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし5(原判決3頁9行〜22頁13行)記載のとおりであるから,これを引用する。
なお,本判決においても,上記「原告商標権」,「被告商品」など原判決において用いられた略称について,原判決の用法に従って用いる。
3 当審における控訴人の主張の要点(1) 争点(1)(被告商品2,3(2),3(3)の指定商品該当性)についてア 被告商品2,3(2),3(3)は,いずれもサッカーの練習(主にウォーミングアップ)の際にのみ着用されるものであって,日常使用されるものではないから,運動用特殊衣服に該当し,原告商標権の指定商品に属するものでない。
(ア) 被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも控訴人が原審において主張したとおりの模様,生地の素材等を用いたものであること,サッカーの練習の際に着用されるものであることは,いずれも原判決(25頁)において認定されたとおりである(特に被告商品3(2)は,足首部分にジッパーがあり,そのジッパーはボールを蹴るときに邪魔にならないよう後部(かかと部)に付いている。)。
(イ) 乙68(平成18年1月31日付けA作成の陳述書)は,今から20年以上前にトライアルコート及びトライアルパンツを開発した人物の陳述書であって,極めて信用性の高い証拠であるが,これによれば,次の事実が裏付けられる。
被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも,ウォーミングアップの際に身体を温めるスピードを速める目的で開発されたものであって,使用素材にポリエステルを90%使用し,通気性を持たないため,身体がすぐに温まり汗がたまるが,アクライナーのような特殊な生地を用いて吸水速乾性を持たせているものではないから,汗を吸収することはなく,蒸れて生地が肌にくっつくものであるが,保温効果を期待できる素材を使用しておらず,ウォーミングアップをやめれば,すぐに衣服内の温度が低下することになるものである。
被告商品2は,サッカーの練習の際に着用されるものであり,主としてウォーミングアップを目的とするものであるが,試合の待機や寒い日の練習の際に限って着用されるものではない。また,被告商品3(2),3(3)は,被告商品2とセットで着用されるものであり,サッカーの練習,主にウォーミングアップの際に着用されるものである。
被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも1枚か2枚の生地で構成され,ファッション性に乏しい。
(ウ) 乙72(平成18年5月30日付けA作成の陳述書)によれば,被告商品2は,商標法施行規則別表が「運動用特殊被服」として例示するスキー用の「ヤッケ」をサッカー用に転用するという開発過程を辿った商品である。「ヤッケ」はスキーの際に用いられる防寒用の上着を指すところ(乙73,74),被告商品2は「ヤッケ」と異なり,保温効果がないため防寒用にならず,「ヤッケ」よりも日常使用に適さないものである。
(エ) 大手スポーツ用品メーカーにおいて,被告商品2と同種の商品がピステやウィンドブレークピステとして,また,被告商品3(2),3(3)と同種の商品がピステパンツやウィンドブレークパンツとして販売されており(乙75,76),サッカー専用品として強調されている。
(オ) 被告商品2,3(2),3(3)は,いずれもウォーミングアップの際に使用するサッカー用品として特化しており,それに合わせた機能が持たされているものであって,機能的にも,デザイン的にも,日常使用に適しておらず,このような商品を日常生活において着用する者はいない。
被告商品3(2),3(3)は,被告商品2とセットで着用するためのものであるため,被告商品2を着用することなく,被告商品3(2)又は3(3)のみを着用するということも考えにくい。
(カ) 以上のとおり,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも,その用途及び機能や,開発過程,大手スポーツ用品メーカーの販売方法等からして,サッカーの練習,ウォーミングアップの際に限って着用されるものであり,日常使用されるものでないから,運動用特殊衣服に該当するものであって,原告商標権の指定商品に属するものではない。
イ 原判決は,被告商品2,3(2),3(3)は,試合そのもので使用されることを予定していないから「ユニフォーム」に該当せず,サッカーの試合の待機又は寒い日の練習の際に使用されることを用途とし,それに合った機能を有するように素材の選択やデザインがされ,チーム単位で採用されることを予定しているものではあるが,それだけでは原告商標権の指定商品に含まれる「ジョギングパンツ スウェットパンツ」と差がないから,運動用特殊衣服には当たらないとしたが,以下のとおり,誤りである。
(ア) 原判決は,運動用特殊衣服とは,スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服のことをいい,サッカー用のユニフォームといえるものは運動用特殊衣服に含まれ,このようなスポーツをする際に限って着用する特殊な衣服は,「被服(運動用特殊衣服を除く)」には含まれないとしているが,乙68によれば,原判決の上記解釈によっても,被告商品2,3(2),3(3)は,運動用特殊衣服であるというべきである。
また,原判決は,被告商品が「いずれも小学生以下のジュニアサッカーチームのメンバーがサッカーの試合又は練習の際に着用するものとして販売されて」いる事実を認めており,この点からすると,被告商品が,需要者に,「被服」に属するものであるという認識を与えていないことは優に認められるところである。
原判決は,結局,「運動用特殊衣服」に含まれるか否かにつき,「試合そのもので使用されることを予定しているか否か」を基準としているように思われるが,これは狭きに失するものである。
(イ) 原判決は,証拠に基づかずに,被告商品2,3(2),3(3)が「ジョギングパンツ スウェットパンツ」と差がなく,また,スポーツをする際に限って着用するものでないと認定したものである。
本件において,被告商品2,3(2),3(3)が原告商標権の指定商品に含まれることは,被控訴人が主張立証すべき事項であるが,被控訴人は,被告商品2,3(2),3(3)がサッカーの練習以外にも着用されるものであって,ジョギングパンツやスウェットパンツと差がないことについて,何ら主張立証していない。
(2) 争点(2)(権利行使の制限)についてア 原判決は,乙24の1(ドイツ国ニーダーライニッシェ商工会議所発行周知性証明書)について,根拠となる具体的事実の裏付けを欠くとして,その信用性を否定し,結局,サッカー用のユニフォームやトレーニングウェアについては,DERBYSTAR標章は,西ドイツ国内において,昭和44年6月当時においても,昭和50年11月当時においても,周知性を獲得したとはいえないとした。
しかし,乙24の1は公的機関が作成したものであるから,これに記載された事実は真実であるとするのが経験則に合致するところ,被控訴人は乙24の1の記載内容が誤りであることを何ら立証していない。しかも,昭和48年(1973年)以降のダービースター社の活動や評判と,DERBYSTAR標章が昭和44年(1969年)までにドイツにおいて周知性を獲得していたことは,よく符合するのであって,乙24の1の信用性を否定する事情は存在しない。
したがって,DERBYSTAR標章は,ダービースター社の商品を示すものとして,昭和44年までに周知性を獲得していたものというべきである。
イ 原判決は,以下のとおり,@原告商標権の出願人である訴外東洋紡績や,譲受人である訴外楽屋被服の不正の目的を検討する上で,DERBYSTAR標章が造語であって,これを知らなければ同標章を考案するのが容易でないにもかかわらず,その評価を誤り,また,A必ずしも不正の目的の有無を左右しない間接事実の存否にわざわざ言及して不正の目的を否定しており,事実認定に誤りがある。
(ア) 原判決は,「ダービー」と「スター」はいずれもありふれた単語であり,DERBYSTAR標章を知らなければ考案することができないほどのものではないとするが,「ダービー」と「スター」がいずれもありふれた単語であるとしても,これらを組み合わせることまで容易であるということはできない。「DERBYSTAR」が普通名詞ではなく,造語である以上,不正の目的を推認すべき事情としての性質は失われないというべきである。
また,原判決は,原告商標がDERBYSTAR標章の特徴である星の図形を含んでいないとするが,モチーフとなる標章に接した者が,より単純化した標章をもって商標出願を行うことは十分にあり得ることであり,これをもって,不正の目的を否定するべき事情として斟酌することは許されないというべきである。
(イ) 原判決は,原告商標権の歴代保有者が学校用衣料を中心に,原告商標を付したスポーツウェア等を販売してきたとか,歴代保有者がダービースター社との間で原告商標権の買取り交渉を行った事実が主張されていないと指摘する。
しかし,これらの事実が存在する場合は,不正の目的が推認される事情として斟酌されるものであるが,これらの事実が存在しない場合に,不正の目的が否定されるわけではない。換言すれば,原告商標権の歴代保有者が正当な営業の中で商標を使用してきたことやダービースター社との買取り交渉の存在が,不正の目的を推定するための必須の間接事実になるわけではない。
(3) 被告商品5(チェンジタオル)について控訴人は,被告商品5を販売したことはなく,その製品化を断念したものであって,侵害行為が存在せず,そのおそれも立証されていないから,差止請求が認められる余地はない。
4 当審における被控訴人の主張の要点(1) 争点(1)(被告商品2,3(2),3(3)の指定商品該当性)についてア 控訴人は,原判決が,被告商品2,3?,3?について,被控訴人から何ら証拠が提出されていないのに,スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服ではないと認定したのは,証拠に基づかない事実認定であると主張する。
しかし,被告製品のパンフレットの記載及び控訴人の主張等から原判決の認定事実は明らかに認められるところであり,また,そのような性能を有する被服が多種・多様に存在することは,一般人にも周知のことであって,裁判所に顕著な事実であるから,被控訴人が改めて証拠を提出する必要はなかったものである。
イ 控訴人の主張は,要するに,@被告商品2,3(2),3(3)の開発の目的が主にウォーミングアップ用であること,A被告商品2,3(2),3(3)は,ウォーミングの際に身体を温めるスピードが早く,保温性や通気性がないこと,B被告商品2はヤッケよりも日常使用に適さず,また,被告商品3(2),3(3)は,被告商品2とセットで着用されるものであること,C被告商品2,3(2),3(3)に類する商品が,メーカーにおいてサッカー専用品として強調されていること,D被告商品2,3(2),3(3)の機能やデザインの特徴に照らせば,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれもスポーツをする際に限って着用する特殊な衣服であるというものと理解される。
しかし,開発の目的にかかわらず,完成した商品がスポーツをするときに限って使用されるものではなく,日常生活に使用できるものであれば,運動用特殊衣服とはいえないのであり,目的や宣伝方法ではなく,商品そのものがスポーツをするときに限らず,日常生活に使用できるかどうかによって判断すべきであるから,控訴人の主張はいずれも失当である。
また,被告商品2,3(2),3(3)が,控訴人主張のデザインや機能を有するとしても,これらはいずれも試合そのもので使用される商品ではないから,運動用特殊衣服である「ユニフォーム」には当たらず,被服である「ジョギングパンツ スゥエットパンツ」と差がない,とした原判決の認定判断を左右するものではない。
なお,控訴人は,被告商品3(2),3(3)について,被告商品2とセットで着用されるものであると主張するが,必ずしもセットで着用するとはいえず,日常生活に着用できるものであるから,運動用特殊衣服ではなく,被服に当たるというべきである。
(2) 争点(2)(権利行使の制限)についてア 控訴人は,乙24の1があるのに,原判決が「DERBYSTAR標章の周知性を認めなかったのは不当であると主張するが,商工会議所が,具体的根拠を示すことなく,自国の業者の商標が周知商標であるとしただけで,これを直ちに信用することができないのは当然である。
イ 控訴人が原告商標を取得したことについて,何らの不正の目的はなく,さらに遡って訴外東洋紡績が,原告商標を取得したことについても,何らの不正の目的はなく,無効事由もない。
「DERBYSTAR」は,ありふれた単語の組合せであって,ダービースター標章を知らなければ考案することができなかったほどのものではない。
当裁判所の判断
当裁判所は,被告商品2,3(2),3(3),5に係る被控訴人の差止め等請求及び商標法38条2項に基づく損害賠償請求は,被告商品5又はその包装に被告商標1又は2を付したものの生産,譲渡,引渡し,譲渡若しくは引渡しのための展示,又は輸入の各差止めを求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,次のとおりである。以下,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」について,当審において,内容的に付加訂正した主要な箇所をゴシック体太字で記載する。
1 争点(1)(被告商品2,3(2),3(3)の指定商品該当性)について(1) 運動用特殊衣服ア 商品及び役務の区分を定める商標法施行令別表は,第25類として被服及び履物を定め,商標法施行規則別表は,第25類被服中の「洋服」に属するものとして,「イブニングドレス学生服 子供服 作業服 ジャケット ジョギングパンツ スウェットパンツ スーツ スカート スキージャケット スキーズボン ズボンスモック 礼服」を,第25類運動用特殊衣服に属するものとして,「アノラック 空手衣 グランドコート剣道衣 柔道衣 スキー競技用衣服 ヘッドバンド ヤッケ ユニフォーム及びストッキング リストバンド」を定めている。
「被服」につき, 特許庁商標課編集に係る「商品及び役務区分解説」は,「スポーツをする際に限って着用する運動用特殊衣服は含まれない。」,「運動用特殊衣服」につき,「この概念には,スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服が含まれる。」,「なお,『トレーニングパンツ』『ランニングシャツ』等は,スポーツ以外の日常生活でも使用され,特殊なものでもないことから,この概念には含まれず,本類被服に属する。」と説明している 。(甲17)「運動用特殊衣服」を除く「被 これらの規定及び解説を参酌すると,服」(以下,単に「被服」というときは,「運動用特殊衣服」を除く「被服」をいう。)の概念には「スポーツをする際に限って着用する運動用特殊衣服は含まれない」と解され,「運動用特殊衣服」の概念には「スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服が含まれる」と解されるところでサッカー用のユニフォームといえるものは運動用特殊衣服に含まれ あり,また,「ユニフォーム」には該当しないものであっても,ス ると解され,ポーツ以外の日常生活では使用されない特殊なものであれば,運動用特殊衣服に含まれると解される。
したがって,原告商標権の指定商品「被服(運動用特殊衣服を除く)」は,このようなスポーツをする際に限って着用する特殊な衣服を含んでいないと解される。
イ 被控訴人は,商標法施行規則別表第25類運動用特殊衣服中の「ユニフォーム及びストッキング」は,野球用のユニフォームや柔道衣などのように形状,機能及び品質の面で特殊なもののみをいい,サッカー,ラグビー用のユニフォームのように汎用性のあるスポーツシャツは含まない旨主張する。
しかしながら,商標法施行規則別表の運動用特殊衣服に「ユニフォームおよびストッキング」が掲げられたのは昭和35年であるが,その後,平成8年に「洋服」につき「ジョギングパンツスウェットパンツ スキージャケット スキーズボン」と定め,「運動用特殊衣服」につき「ユニフォーム及びストッキング」のほかに,被控訴人が指摘する「柔道衣」だけでなく,「アノラック 空手衣グランドコート 剣道衣 スキー競技用衣服 ヘッドバンド ヤッケ リストバンド」を掲げ,各品目ごとに綿密な検討が行われていることがうかかわれること 「ユニフォ を考慮しても,ーム及びストッキング」は,サッカー,ラグビー用のものを含んでいると(なお,甲1〜3及び弁論の全趣旨によれば,原告商標権は,指 解される定商品を旧々々類第17類「被服,布製身回品,寝具類」として,昭和44年6月2日に出願され,昭和46年7月8日に登録され,その後,平成15年7月2日に,指定商品を第24類「布製身の回り品(他の類に属するものを除く)」,第25類「被服(運動用特殊衣服を除く)」として,書換え登録されたものであることが認められるところ,書換え登録により指定商品の範囲を拡張することはできないというべきであるから,「ジョギングパンツ」,「スウェットパンツ」,「スキージャケット」,「スキーズボン」が,平成8年に商標法施行規則別表の「洋服」に新たに加えられたことを理由として,原告商標権の指定商品に含まれる範囲が拡大したものと解釈することが相当でないことは,いうまでもない。)。
洋服その他の被服と運動用特殊衣服との境 さらに,時代の変遷とともに本件に関係するものに 界が不明確となる場合があることは否定できない。
ついても,サッカーのサポーターが選手用のゲームシャツを着て応援したり(裁判所に顕著な事実),商標法施行規則別表で「運動用特殊衣服」に属するものとして例示されている「グランドコート」がファッションの一部としてオーバーコートのように使用されることが多くなっている(弁論サッカ の全趣旨)。しかしながら,上記程度の使用態様の変化のみでは,ー用のユニフォームに当たるものや,スポーツ以外の日常生活では使用されない特殊なものを,「被服」に属するものと解することはできない。
よって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) 具体的検討ア用途(ア) 甲4,乙6〜8及び12並びに弁論の全趣旨によれば,控訴人の認否及び反論ウ(ア)b(控訴人のパンフレットの記載),c(チーム名等のマーキング),d(在庫の常備の記載),e(需要者)及びf(販売場所)の事実 が認められる。 (原判決8頁13行〜9頁15行)以上の事実,乙68及び72に示されたトライアルコート及びトラ (イ)イアルパンツの開発者の意見,並びに弁論の全趣旨によれば,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも小学生以下のジュニアサッカーチームのメンバーがサッカーの練習の際のウォーミングアップ等に着用するものとして販売されていることが認められる。
イ機能(ア) 被告商品2(V首トライアルコート(シャドーストライプ))乙6,9,10及び18〜20,検乙3並びに弁論の全趣旨によれば,控訴人の認否及び反論ウ(イ)f(a)(模様),(b)(生地の素材),(c)(首廻り),(d)(ロゴマークの位置)及び(e)(形状)の事実が認められる。 (原判決11頁13行〜26行)(イ) 被告商品3(2)(トライアルパンツ(シャドーストライプ))乙6,18及び19,検乙4並びに弁論の全趣旨によれば,控訴人の認否及び反論ウ(イ)h(a)(模様),(b)(生地の素材)及び(c)(ジッパー)の事実 が認められる。 (原判決12頁3行〜13行)(ウ) 被告商品3(3)(トライアルハーフパンツ(シャドーストライプ))乙6及び弁論の全趣旨によれば,控訴人の認否及び反論ウ(イ)i(a)(原判決12頁14行〜18 (模様)及び(b)(生地の素材)の事実が認められる。行)(エ) まとめ以上の事実によれば,被告商品2,3(2),3(3)は,サッカーの練習使用されるという用途に合致するように, の際のウォーミングアップ等に素材の選択やデザインを行った商品であることが認められる。
被告商品2,3(2),3(3)の指定商品該当性 ウ「被服」の概念には「スポーツをする際に限って着用する運動用特殊衣服は含まれない」と解され,「運動用特殊衣服」の概念には「スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服が含まれる」と解されることは,前記(1)のとおりであるところ,上記ア及びイに認定の事実,並びに弁論の全趣旨によれば,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれもサッカーの試合中に使用されるものではないが,サッカーの練習の際のウォーミングアップ等に使用されること等を用途とし,それに合った機能を有するように素材の選択やデザインがされ,チーム単位で採用されることを予定しているものであって,運動に用いるために特に好適な構成を有することが認められ,日常生活で用いられものとは異なる「特殊なもの」であることがうかがわれる。特に,被告商品3(2)は,スパイクを着用したままパンツの着脱を可能にするため,足首部分にジッパーが設けられ,その位置にも工夫がなされているところであり,日常生活で用いられものとは異なる「特殊なもの」であることが認められる。そして,本件記録を検討しても,被告商品2,3(2),3(3)が日常生活にも用いられることを認めるに足る証拠は見当たらない。
また,前記「商品及び役務区分解説」には,「『トレーニングパンツ』『ランニングシャツ』等は,スポーツ以外の日常生活でも使用され,特殊なものでもないことから」,「運動用特殊衣服」の概念には含まれず,「被服」に属すると解説されているが,上記のとおり,被告商品2,3(2),3(3)が日常生活で使用されるものと認めるに足る証拠はなく,また,運動に用いるために特に好適な構成を有する特殊なものというべきであるから,これらを「トレーニングパンツ」あるいは「ランニングシャツ」と同視することはできない。
さらに,商標法施行規則別表には,第25類被服中の「洋服」に属するものとして,「ジョギングパンツ」及び「スウェットパンツ」が挙げられているが,上記のとおり,「被服」の概念には「スポーツをする際に限って着用する運動用特殊衣服は含まれない」と解され,「運動用特殊衣服」の概念には「スポーツをする際に限って着用する特殊な衣服が含まれる」と解されるのであるから,上記別表にいう「ジョギングパンツ」及び「スウェットパンツ」は,いずれも日常生活で使用されるものであって,特殊なものではないものをいうと解すべきである。しかるところ,被告商品2,3(2),3(3)が日常生活で使用されるものと認めるに足る証拠はなく,また,運動に用いるために特に好適な構成を有する特殊なものというべきことは,上記のとおりであるから,これらが上記別表にいう「ジョギングパンツ」又は「スウェットパンツ」に該当するということもできない。
以上によれば,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも「運動用特殊衣服」に該当し,原告商標権の指定商品である「被服(運動用特殊衣服を除く)」には該当しないものというべきである。
被控訴人は,被告商品のパンフレットの記載及び控訴人の主張等から被告 (3)商品2,3(2),3(3)がスポーツをする際に限って着用する特殊な衣服でないことは明らかに認められるところであり,また,そのような性能を有する被服が多種・多様に存在することは,一般人にも周知のことであって,裁判所に顕著な事実である旨主張する。
しかし,前記のとおり,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれもサッカーの練習の際のウォーミングアップ等に使用されることを用途とし,それに合った機能を有するように素材の選択やデザインがされ,チーム単位で採用されることを予定しているものであって,運動に用いるために特に好適な構成を有することが認められ,日常生活で用いられるものとは異なる「特殊なもの」であることがうかがわれることからすれば,スポーツ用の衣服がスポーツ以外の日常生活において使用される例があるとしても,被告商品2,3(2),3(3)について,具体的にこれが日常生活にも用いられることを認めるに足る証拠が見当たらない以上,それらがスポーツをする際に限って着用する特殊な衣服でないと認めることは困難であり,被控訴人の主張は採用することができない。
また,被控訴人は,開発の目的や宣伝方法にかかわらず,商品そのものが,スポーツをするときに限らず,日常生活に使用できるものであれば,運動用特殊衣服とはいえないとも主張するが,被告商品2,3(2),3(3)が日常生活にも用いられることを認めるに足る証拠は見当たらないことは,前記のとおりであり,被控訴人の主張は,その前提を欠くものであって,採用することができない。
さらに,被控訴人は,被告商品2,3(2),3(3)が,控訴人主張のデザインや機能を有するとしても,これらはいずれも試合そのもので使用される商品ではないから,運動用特殊衣服である「ユニフォーム」には当たらず,被服である「ジョギングパンツ スウェットパンツ」と差がない旨主張する。
しかし,「ユニフォーム」に該当しないものであっても,スポーツ以外の日常生活では使用されない特殊なものであれば,運動用特殊衣服に含まれるものであり,また,被服に属するとされる「ジョギングパンツ」及び「スウェットパンツ」は,いずれも日常生活で使用されるものであって,特殊なものではないものをいうと解すべきであるところ,被告商品2,3(2),3(3)が運動に用いるために特に好適な構成を有するものであり,日常生活でも使用されるものと認めるに足る証拠がないことは,すでに説示したとおりであるから,被控訴人の主張は採用することができない。
(4) まとめ以上によれば,被告商品2,3(2),3(3)は,いずれも原告商標権の指定商品である被服(運動用特殊衣服を除く)に当たらない。
2 争点(2)(権利行使の制限)について(1) 周知性についてア 事実認定(ア) 商標登録等乙23及び24によれば,ダービースター社は,スポーツ用品,特に皮製ボールの製造及び販売を目的として,昭和43年(1968年)若しくは昭和44年(1969年)に設立されたものであり,乙27の1によれば,訴外ジョセフ・モル・コマンディッドゲゼルシャフト(以下「ジョセフ社」という。)が,DERBYSTAR標章につき,西ドイツにおいて,昭和36年(1961年)に商標登録出願し,昭和38年(1963年)に指定商品をスポーツ用ボール,特にサッカー用のボールとして商標登録を受けたこと,更にDERBYSTAR標章が欧州各国を指定国とする商標国際登録を受けたこと,その後ダービースター社が上記商標登録について権利者となったことが認められるが,ダービースター社が権利者となった経緯は明らかでない。
(イ) サッカーボールa 控訴人の主張イ(イ)a(販売数量)を認めるに足りる的確な証拠はない。
b 乙25及び26によれば,同b(雑誌の紹介記事)の事実が認められる。
c 乙29及び弁論の全趣旨によれば,同c(FIFA公認球)の事実が認められる。
d 乙48〜50によれば,同d(他社へのOEM供給)の事実が認められる。
(ウ) その他のサッカー用品等乙29,31,32及び35〜47によれば,控訴人の主張イ(ウ)(その他のサッカー製品),(エ)(宣伝広告)及び(オ)(プロサッカー選手の評価)の事実が認められる。
(エ) 商工会議所の証明書乙24の1(ドイツ国ニーダーライニッシェ商工会議所発行の周知性証明書)には,昭和44年6月当時,DERBYSTAR標章は西ドイツ国内において需要者の間に広く認識されていた商標である旨の記載があるが,その根拠となる具体的事実の裏付けを欠いているから,直ちに採用することができない。
控訴人は,乙24の1は公的機関が作成したものであるから,これに記載された事実は真実であるとするのが経験則に合致する旨主張する。
@ 乙24の1には,「下記ドイツ法人(判決注:ダービースター社)は,……西暦1969年までには,サッカーボール及びその他のサッカー用品,スポーツ用品等を製造販売する法人として,ドイツ国内における需用者の間に広く認識されていたことを証明します。」,「下記の標章(判決注:DERBYSTAR標章)は,西暦1969年までに下記ドイツ法人(判決注:ダービースター社)の業務に係る商品を表示するものとして,ドイツ国内における需用者の間に広く認識されていたことを証明します。(1968年10月29日設立申請,1969年1月29日登記)」とのタイプ打ちされた英文の記載に引き続き,法人名(ダービースター社),標章(DERBYSTAR標章),日付(2005年4月6日),ダービースター社の名称及び住所がタイプ打ちされ,その左下にダービースター社のジェネラルマネージャーの署名がなされるとともに,その右下に,「当該文書に書かれた内容について,当方が知る限りにおいて,その内容に相違ないことを証明いたします。」「クレーヴェにて,2005年4月6日」との独文の記載がスタンプにより押捺され,ドイツ国ニーダーライニッシェ商工会議所の執行部代理の署名がなされている。
A 乙24の1の上記体裁は,ダービースター社作成の英文の文書を上記商工会議所が認証したにすぎないものであることを推認させるものである。
また,乙24の1の上記記載は,ダービースター社ないしDERBYSTAR標章が昭和44年(1969年)までにドイツ国内における需用者の間に広く認識されていたとするものであるが,他方で,ダービースター社が昭和43年(1968年)10月29日に設立申請され,昭和44年(1969年)1月29日設立登記されたとするものであるから,ダービースター社ないしDERBYSTAR標章が周知になった時期と同社の設立の時期が極めて近接していることになるが,乙24の1には,この点について何らの説明もない(前記のとおり,乙27の1によれば,ジョセフ社が,DERBYSTAR標章につき,西ドイツにおいて,昭和36年(1961年)に商標登録出願し,昭和38年(1963年)に指定商品をスポーツ用ボール,特にサッカー用のボールとして商標登録を受けたこと,更にDERBYSTAR標章が欧州各国を指定国とする商標国際登録を受けたこと,その後ダービースター社が上記商標登録について権利者となったことが認められるが,ダービースター社が権利者となった経緯は明らかでない。)。
なお,乙24の1と同一の作成者により一日違いで作成されたとされる乙23の1(ドイツ国ニーダーライニッシェ商工会議所発行の登記証明書)には,「1968年10月29日以来,会員証明番号0011078319で当ニーダーライニッシェ商工会議所デュィスブルグ・ヴェーゼル・クレーヴェに登録されており,クレーヴェ区裁判所に商業登記番号392号で登記されていることを証明いたします。」と記載されており,上記商工会議所が証明しようとするダービースター社の設立登記日については,乙23の1と乙24の1とで記載に齟齬があることが認められる。
B 控訴人は,昭和48年(1973年)以降のダービースター社の活動や評判と,DERBYSTAR標章が昭和44年(1969年)までに周知性を獲得していたことは符合するから,乙24の1の信用性を否定する事情は存在しない旨主張するが,昭和48年以降の事実をもって,直ちに昭和44年(1969年)当時の周知性が裏付けられるわけでないことは明らかであり,控訴人の主張は採用することができない。
C 以上のとおり,乙24の1は,根拠となる具体的事実の裏付けを欠くのみならず,それ自体が客観性に乏しいものといわざるを得ない。
なお,控訴人は,ダービースター社との間で本件ライセンス契約を (オ)締結しているほか(乙1の1,2の1,3の1,弁論の全趣旨),原告商標権についての無効審判を共同して請求するなど(乙22,弁論の全趣旨),同社の協力を得られる立場にあることがうかがわれるが,乙24の1の記載の根拠となる具体的事実について何ら主張立証するものではなく,また,本件記録を検討しても,DERBYSTAR標章がダービースター社の商品を示すものとして,昭和44年までに西ドイツで周知性を獲得したことを認めるに足る証拠は見当たらない。
イ判断上記の事実によれば,DERBYSTAR標章は,昭和50年11月当時,西ドイツ国内において,ダービースター社のサッカーボールを示す商標として周知であったことは認められるが,昭和44年6月当時にも同様に周知であったとまで認めることはできない。また,サッカー用のユニフォームやトレーニングウエアについては,DERBYSTAR標章は,昭和50年11月当時においても周知であったと認めることはできない。
(2) 不正の目的ア 事実認定(ア) 弁論の全趣旨によれば,「ダービー」は,競争又は首位争いといった意味を有する単語であり,「スター」は,人気の役者,歌手,運動選手又は花形といった意味を有する単語であることが認められ,両者を組み合わせることにより運動選手の花形又は競技のスターといった観念が生じるが,ありふれた単語の組合せであり,DERBYSTAR標章を知らなければ考案することができないほどのものではないと認められる。
控訴人は,「ダービー」と「スター」がありふれた単語であるとしても,これらを組み合わせることまでは容易ではないなどと主張するが,上記のとおり,その組合せが困難であるとはいえず,控訴人の主張は採用できない。
(イ) 東洋紡績が取得した原告商標権は,DERBYSTAR標章の特徴である星の図形を含んでいないし,サッカーボールではなく,衣服等を指定商品とするものである。
(ウ) 甲23〜27及び弁論の全趣旨によれば,東洋紡績から原告商標権を取得した楽屋被服,その地位を承継したジーアールエス及び被控訴人は,以後,学校用衣料品を中心に,原告商標を付したスポーツウェア等を数多く販売してきたことが認められる(地位の承継の点は,当事者間に争いがない。)。
(エ) 東洋紡績又は楽屋被服,ジーアールエス若しくは被控訴人がダービースター社と原告商標権の買取り等について交渉した等の事実は,控訴人も主張していない。
イ判断仮に,昭和44年6月にDERBYSTAR標章がダービースター社のサッカーボールを示すものとして西ドイツ国内で周知であったとしても,上記アに事実によれば,東洋紡績による原告商標の出願時点である昭和44年6月において商標法4条1項19号不正の目的があったものと認めることはできない。
同様の不正の目的は,楽屋被服の譲受時点においても認めることはできない。
なお,控訴人は,原告商標が星の図形を含んでいないこと,原告商標権の歴代保有者が原告商標を付したスポーツウェア等を販売してきたこと,原告商標権の買取り交渉の事実がなかったことは,不正の目的を否定すべき事情となるものではない旨主張するが,上記の各事実は,いずれも不正の目的の存否に関する間接事実として評価し得るものであることは明らかであり,また,本件記録を検討しても,東洋紡績又は楽屋被服が原告商標権の出願又は譲受けに先だって,DERBYSTAR標章に接したことをうかがわせる証拠は見当たらない。
(3) まとめ以上によれば,原告商標権について商標法4条1項7号又は19号違反の無効理由が存在し,被控訴人は同法39条,特許法104条の3により原告商標権を行使することができない旨及び楽屋被服は不正の目的をもって原告商標権を譲り受けたものであり,その承継者である被控訴人が原告商標権を行使することは権利の濫用として許されない旨の控訴人の主張は,いずれも採用することができない。
3 被告商品5(チェンジタオル)について前提事実(4)ウ(カタログ掲載),(5)(商標の類似)及び(6)(被告商品5の指定商品該当)によれば,被告商品5に被告商標1又は2を付する行為等の差止めを求める被控訴人の請求は理由がある。
乙67(控訴人担当者の陳述書)には,控訴人は被告商品5の製品化を断念した旨の記載があるが,暫定企画書の段階で作成されたとはいえ,控訴人の作成したカタログに被告商品5が掲載され(乙6,67),控訴人が原告商標権の登録無効等を主張して侵害の成否を争っている以上,侵害行為がされるおそれは依然として残っているといわなければならない。
控訴人は,被告商品5を販売したことはなく,その製品化を断念したものであって,侵害行為が存在せず,そのおそれも立証されていないから,差止請求が認められる余地はない旨主張するが,カタログに被告商品5が掲載されているにもかかわらず,控訴人において,例えば,今後被告商品5を販売等しないことを取引先等に表明する措置をとったなど,具体的な事実関係についての主張立証はなく,本件記録を検討しても,侵害行為がされるおそれは依然として残っているとの上記認定を覆すに足る証拠は見当たらない。控訴人の主張は採用することができない。
4結論以上によれば,被告商品2,3(2),3(3),5に係る被控訴人の差止め等請求及び商標法38条2項に基づく損害賠償請求は,被告商品5又はその包装に被告商標1又は2を付したものの生産,譲渡,引渡し,譲渡若しくは引渡しのための展示,又は輸入の各差止めを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。
したがって,これと異なる原判決を上記のとおり変更することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀