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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ワ11661商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成10ワ4292商標使用差止等請求事件 判例 商標
平成18ワ5272損害賠償請求事件 平成18ワ8460損害賠償請求事件 判例 商標
平成16ワ8092商標権使用差止等請求事件 判例 商標
平成9ワ10409 判例 商標
関連ワード 商標的使用 /  周知性 /  類似性(類否判断) /  損害額 /  使用料相当額 /  権利濫用(権利の濫用) /  商品の類似 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  差止 /  商標権の移転 /  信義則 /  類似商標 / 
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事件 平成 18年 (ネ) 1569号 商標権侵害差止等請求控訴事件
平成 18年 (ネ) 2054号 附帯控訴事件
控訴人・附帯被控訴人(1審被告) 株式会社エスロク (以下「1審被告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 高橋むつき
同 木下正信
同 上原康史
被控訴人・附帯控訴人(1審原告) 株式会社フジモト・ブラザーズ (以下「1審原告ブラザーズ」という。)
同代表者代表取締役 B
被控訴人・附帯控訴人(1審原告) 株式会社 フジモト・コーポレーション (以下「1審原告コーポレーション」という。)
同代表者代表取締役 B
上記2名訴訟代理人弁護士 山本忠雄
同 内藤秀文
同 中橋紅美
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2006/10/18
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 1審被告の1審原告ブラザーズに対する控訴を棄却する。
2 1審原告ブラザーズの附帯控訴に基づき,原判決主文1項を次のとおり変更する。
(1) 1審被告は,同原告に対し,金804万4471円及び内金106万1449円に対する平成16年11月5日から,内金698万3022円に対する平成17年10月4日から各支払済みまで年5分の割合による金2員を支払え。
(2) 同原告のその余の附帯控訴を棄却する。
3 1審被告の1審原告コーポレーションに対する控訴に基づき,原判決主文2項を次のとおり変更する。
(1) 1審被告は,1審原告コーポレーションに対し,金99万2030円及びこれに対する平成17年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 同被告のその余の控訴を棄却する。
4 1審原告コーポレーションの附帯控訴を棄却する。
5 訴訟費用は,1審において,1審原告ブラザーズに生じた費用と1審被告に生じた費用の3分の1とをいずれも4分し,その3を同被告の,その1を同原告の負担とし,1審原告コーポレーションに生じた費用と1審被告に生じた費用の3分の1とをいずれも5分し,その1を同被告の,その4を同原告の負担とし,控訴状貼用印紙の費用を含む控訴状にかかる費用を1審被告の,附帯控訴状貼用印紙を含む附帯控訴状にかかる費用を1審原告両名の各負担とし,当審におけるその余の費用については,これを2分し,その1を1審被告の,その余を1審原告両名の各負担とする。
6 この判決の2,3項の各(1)は仮に執行することができる。
事実及び理由
控訴の趣旨等
1 1審被告の控訴(1) 原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。
(2) 1審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも1審原告らの負担とする。
2 1審原告らの附帯控訴(1) 原判決中,1審原告ら敗訴部分を取り消す。
3(2) 1審被告は,1審原告ブラザーズに対し,1193万8717円及びこれに対する平成16年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 1審被告は,1審原告コーポレーションに対し,4895万0878円及びこれに対する平成17年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。
(5) 仮執行宣言
事案の概要
1 本件は,@1審原告ブラザーズが,1審被告が後記本件合意(1審被告が販売していた後記旧・現商標商品の製造販売等の禁止や違反があった場合の違約金支払と謝罪広告掲載等を定めた合意)に違反して後記被告製品を販売したとして,本件合意に基づき,1審被告に対し,被告製品の販売差止め及び謝罪広告並びに違約金の支払を,また,同原告が後記本件商標権を有していた期間における商標権侵害に基づく使用料相当額の不当利得の返還を請求し,A1審原告コーポレーションが,後記被告標章を使用して被告製品を販売する1審被告の行為が,同原告の有する本件商標権を侵害するとして,商標法36条1項及び2項に基づき被告製品の販売差止め及び廃棄を求めるとともに,商標権侵害に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めた事案である。
原審は,@1審原告ブラザーズの請求のうち,本件合意に基づく請求につき,1審被告に対し,被告製品(後記新商標商品)の販売停止,及びその販売中止のお知らせと謝罪文を原判決別紙目録1記載の新聞の各全国版の広告欄に,標題部の写植を13級活字,その余の部分を写植11級の活字でもって,各1回掲載すること(ただし,後記原告商品表示に周知性は認められないので,謝罪文の文面は同原告の請求にかかる原判決別紙目録3ではなく,同2のとおりとするのが相当とした。)を求め,さらに,698万3022円(約定違約金7400万円から1審被告による平成12年8月1日から同年11月1日までの間の14回の旧商標商品の販売行為に関する商標使用料相当額の不当利得返還請求認容額と重複する1万6978円を控除した額)及びこれに対する平成17年10月4日(原審同年9月30日付け請求の追加申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,並びに,本件商標の使用料相当額の不当利得返還請求につき,106万1283円及びこれに対する平成16年11月5日(原審同月1日付け請求の趣旨の変更及び請求の追加申立書の送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるとして認容し,A1審原告コーポレーションの本件商標権侵害に基づく損害賠償請求につき,104万9122円及びこれに対する平成17年6月17日(原審同月14日付け請求の追加申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして認容し,その余をいずれも棄却した。
1審被告はこれを不服として本件控訴を提起し,1審原告らも附帯控訴を提起した。
2 1審原告ブラザーズは,本件商標の使用料相当額1300万円の不当利得返還請求につき,原審で認容された106万1283円を控除した1193万8717円及びこれに対する平成16年11月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する(原審で棄却された本件合意に基づく請求である,@違約金支払請求が本件商標の使用料相当額の不当利得返還請求認容額と重複するとされた1万6978円の部分,及びA謝罪文掲載請求が原告商品表示に周知性は認められないから同原告の請求にかかる原判決別紙目録3によらないとされた部分については,いずれも原判決主文に対応した請求の減縮がなされた。)。
1審原告コーポレーションは,本件商標権侵害に基づく5000万円の損害5賠償請求につき,原審で認容された104万9122円を控除した4895万0878円及びこれに対する平成17年6月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する。
なお,上記控訴提起前の1審原告藤本製薬株式会社(以下「藤本製薬」という。)は,上記1審原告らの訴えと併合して,被告標章が原告製品の周知商品表示である原告商品表示と類似し,被告標章を使用した被告製品を販売する1審被告の行為は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するとして,同法3条1項及び2項に基づく被告製品の販売差止め及び廃棄並びに同法4条に基づく損害賠償を求めていたところ,原審においていずれも請求を棄却され,控訴の提起をせず,敗訴が確定した。
3 争いのない事実等は,原判決3頁14行目から8頁25行目までに,並びに,争点及び当事者の主張は,原判決9頁26行目から43頁4行目まで,及び49頁15行目から50頁2行目まで(1審原告コーポレーションが引用する藤本製薬の無形損害に関する主張部分)に各記載のとおりであるからこれを引用する。ただし,32頁21行目「(3)」を「(2)」に,同23行目「4126万5558円」を「4090万7187円」に各改め,33頁19行目「及び同コーポレーション」を削除する(以下,「本件商標」,「本件商標権」,「原告製品」,「原告商品表示」,「被告製品」,「旧商標」,「旧商標商品」,「被告標章」,「本件合意」,「現商標」,「現商標商品」,「新商標」,「新商標商品」等の語を,原判決の用法に従って用いる。)。
4 当審における補充主張〔1審被告〕(1) 争点2(1審被告が使用する被告標章の本件商標との類否)について原判決別紙被告商標目録記載2,6,19の各被告標章は,いずれも本件商標に類似せず,上記各標章を使用する行為は,本件商標権を侵害しない。
原告商品は処方薬であり,医師の処方がなければ消費者は購入・使用が一6切できないのに対し,被告製品は健康補助食品であり,誰でも購入できるものであって,両製品の用途・需用者の範囲・販売方法が異なる以上,商品の類似性は認められない。店頭でそのまま販売されるのか,処方薬かという点は需要者において決定的な相違である。
(2) 争点3,4(1審原告らの損失額等)についてホームページにおける本件商標の使用料相当額は,1審被告のホームページに宣伝広告効果がないこと,及び本件商標に周知性がないことから,一切発生しない。被告製品の宣伝広告効果は,専ら雑誌広告とテレビコマーシャルによってもたらされたものである。
この点,1審原告らは,平成18年7月現在のインターネット広告企業の高売上げを基に原判決認定における相当使用料率が低率であると主張するが,平成12,13年当時の1審被告のホームページでの広告宣伝の寄与度について上記時点の状況を根拠とする主張は何ら合理的理由がなく失当である。
(3) 争点7(1審原告ブラザーズの1審被告に対する権利行使が権利濫用又は信義則違反に該当するか)についてア 本件合意に基づく違約金700万円は,権利濫用及び公平の観念から,認められるべきでない。違約の対象となった14回の旧商標商品の売買代金についての原判決認定の使用料相当額はわずか1万6978円にすぎず,その412倍にも上る違約金を認容することは許されない。
イ 原判決が,被告現商標が本件商標権を侵害しないと認定しつつ,本件合意に基づく販売禁止や謝罪広告を認めるのは,一種の自己矛盾であると共に,1審被告の企業活動そのものを停止させかねない重大な事柄であり,公平の観念や正義の観念に著しく反し,認められるべきではない。
〔1審原告ら〕(1) 1審被告の主張はいずれも争う。
(2) 争点3,4(1審原告らの損失額等)について7原判決認定における相当使用料率0.15%は,現代のインターネット社会における消費者の商品購入行動を過小評価した余りにも低率なものであり不当である。1審被告の主たる顧客層の1つと考えられる若年女性は,インターネットを活用して商品を検索・比較検討し,その後に注文するとの購入行動が一般的である。
当裁判所の判断
(1審原告らの商標権侵害に基づく請求について)1 争点1(1審被告による被告標章使用の有無及び商標的使用の有無)原判決50頁9行目から55頁18行目までに認定,説示されたとおりであるから,これを引用する。ただし,55頁12行目「山元」を「山本」に改める。
2 争点2(1審被告が使用する被告標章の本件商標との類否)原判決55頁20行目から60頁14行目までに認定,説示されたとおりであるから,これを引用する。
この点,1審被告は,原告商品は処方薬であるのに対し,被告製品は健康補助食品であり,両製品の用途・需用者の範囲・販売方法が異なる以上,商品の類似性は認められず,原判決別紙被告商標目録記載2,6,19の各被告標章は,いずれも本件商標に類似せず,上記各標章を使用する行為は,本件商標権を侵害しないと主張する。
しかるに,商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであって,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,右三点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,8何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められないものについては,これを類似商標と解することはできないというべきである(最高裁第三小法廷平成9年3月11日判決・民集51巻3号1055頁)。
そして,原判決認定のとおり,被告標章2,6,19はいずれも外観,観念及び称呼が類似するものであり,そのいずれかの点において著しく相違するものではないし,また,便通をよくする効果を企図する健康補助食品である被告製品は,同様の効果を企図する薬剤である原告製品と同じく薬局等で販売されるものであり,原告製品の販売において処方箋を要するにしても,両製品の取引者,需用者において,何らその出所を誤認混同するおそれが認められないものとはいえないから,上記主張は採用することができない。
3 争点3(1審原告ブラザーズに生じた損失額)(1) 本件合意に基づく和解金200万円の支払により平成12年7月31日までの旧商標商品の販売に関して,1審原告ブラザーズが本件商標権侵害に基づくその余の不当利得返還請求権を放棄したか否か,同原告が通常実施料相当額の不当利得返還を請求しうる範囲,本件商標の使用料相当額については,原判決60頁16行目から65頁23行目まで(原判決第4・3(1)〜(4))に認定,説示されたとおりであるから,これを引用する。ただし,63頁26行目「7169万4000円」を「約7000万円」に改める。
(2) 1審原告ブラザーズに生じた損失額(以下,原判決65頁24行目から67頁7行目(原判決第4・3(5))を引用した上で,原判決と異なる部分〔細かな表現についての訂正等を除く。〕は,ゴシック体で表記する。)原判決第4・6エのとおり,1審被告は,平成12年8月1日以降,同年11月1日までの間に旧商標商品を14回,合計56万5954円で販売した(4万2209円×12回+4万1962円×1回+1万7484円×1回=56万5954円)。よって,1審被告による旧商標商品の販売行為に9ついての本件商標の使用料相当損害金は,下記のとおり1万6978円である。
56万5954円×3%=1万6978円(1円未満切捨て)また,証拠(乙83ないし )によれば,1審被告は, 85 及び弁論の全趣旨チカミ,大三及 平成12年8月1日から平成13年6月10日までの間に,6億4663万1083円の売上げを上げている び白元に対する販売によりことが認められる(平成12年8月20日締切分から平成13年6月30日締切分までの請求書〔乙83〕上のチカミ及び大三に対する売上げは平成12年7月21日から同月31日までと平成13年6月11日から同月末までの売上げを含むので,これを除外した売上げが2億8900万9123円となる。また,平成13年2月6日から同年6月19日付までの納入書控〔乙85〕上の白元に対する売上げは同月11日から同月19日までの売上げを含むので,同月19日付の売上げ3119万4000円から日数で案分してこれを除外した売上げ小計が3億5762万1960円となる。その合計は。 6億4663万1083円となる。)フリーダイヤルによ さらに,証拠(乙86)及び弁論の全趣旨によれば,る直接販売において,被告製品及び「システム・シックス」なる商品につきことが認められる(平成1 合計5551万2052円の売上げを上げている2年7月29日から平成13年6月15日までのヤマトコレクトサービス株式会社精算書〔乙86〕上の売上げは平成12年7月29日から同月31日までと,平成13年6月11日から同月15日までの売上げを含むので,平成12年7月29日から同年8月4日までの売上げ262万3608円と,平成13年6月9日から同月15日までの売上げ88万3530円から,それぞれ日数で案分してこれを除外した売上額が合計5551万2052円と。証拠(乙87)によれば,上記期間の各商品別の売上額は,販売 なる。)を代行していたヤマトロジスティクス株式会社の当該資料の保管期間を経過10しているものと認められるが,平成13年7月1日から平成14年7月31日までの間のフリーダイヤルの受注件数(顧客1名の1回の注文を1件とするもの)一覧表(乙92)によれば,全注文件数に占める被告製品の注文件数は約88%であり,1審被告における「システム・シックス」の販売価格が3762円ないし3600円程度,被告製品の販売価格が4364円ないし4200円程度であること(乙83)によれば,販売価格の中間値(3681円と4282円)とそれぞれの商品の全売上げに占める割合によれば,上記期間の被告製品の販売価格の約 が被告製品の売上げであると 89.5%推計できる(88%×4282/88%×4282+12%× )。3681そうすると,フリーダイヤル販売による上記期間の売上額5551万2052円の に相当する (1円未満切捨て)が, 89.5% 4968万3286円被告製品の売上げであると推計できる。なお,1審原告らは,民事訴訟法224条3項を適用し,フリーダイヤル販売による売上額全額を被告製品の売上額と認めるべきであると主張するが,上記推計が可能であるのでその必要はない。
おける ,下記のとおり6 以上によれば,上記期間内に 被告製品の売上げはである。 億9631万4369円4968万3286円 6億9631万4 6億4663万1083円+ =369円104万4471円(1円未満 そして,この売上額に0.15%を乗じたが,本件商標の使用料相当額であり,1審原告ブラザーズが1審被 切捨て)告に請求しうる本件商標の使用料相当額は同金額に上記1万6978円を加えた となる。 106万1449円4 争点4(1審コーポレーションに生じた損害額又は損失額)(以下,原判決67頁9行目から68頁15行目まで(原判決第4・4)を引用した上で,原判決と異なる部分〔細かな表現についての訂正等を除く。〕は,11ゴシック体で表記する。また,後記(2)で「後記10のとおり」とする部分に対応する原判決89頁22行目から91頁8行目までを引用する。)(1) 1審原告コーポレーションは,主位的請求として,商標権侵害による不法行為に基づく使用料相当額及び無形損害の損害賠償を請求している。
そして,前記認定事実のとおり,1審被告が平成14年4月10日まで開設していたホームページにおいて被告標章2及び6を使用していたことが認められるので,これらの本件商標権侵害行為について,1審原告コーポレーションは,1審被告に対して損害賠償を請求することができる。
ただし,1審原告ブラザーズから1審原告コーポレーションに対する本件商標権の移転の効力が生じるのは,移転がなされた旨の登録がなされた平成13年7月25日であるから,1審原告コーポレーションが1審被告による商標権侵害行為について生じた損害の賠償を請求をすることができるのは,同日以降の商標権侵害行為に基づき発生した損害についてである(商標法35条,特許法98条1項1号)。
そして,本件商標の使用料率は,前記3において判示したのと同様の理由により0.15%とするのが相当である。
証拠(乙88 ) によれば, 平成13 ,89 及び弁論の全趣旨 1審被告は,によ 年7月25日から平成14年4月10日までの間に,白元に対する販売り6億1605万3192円の売上げを上げていることが認められる(平成13年8月2日から平成14年4月9日付までの納入書控〔乙89〕上の売上げは平成13年7月19日から同月24日までの売上げを含むので,同年8月2日付の売上げ3119万4000円から日数で案分してこれを控除し。 た売上げ合計が6億1605万3192円となる。)上記期間におけるフ さらに,証拠(乙90)及び弁論の全趣旨によれば,ことが認め リーダイヤル販売による売上額は,5061万4718円であるられる(平成13年7月21日から平成14年4月5日までのヤマトコレク12トサービス株式会社精算書〔乙90〕上の売上げは平成13年7月21日から同月24日までの売上げを含むので,平成13年7月21日から同月27日までの売上げ136万7975円から日数で案分してこれを除外した売上。 額が5061万4718円となる。)3 89.5% 4530万0172円(1円未 前記 と同様,この に相当するが,被告製品による売上額であると推計できる。 満切捨て)下記のとおり6億 以上によれば,上記期間における被告製品の売上げは,である。 6135万3364円6億1605万3192円+4530万0172円=6億6135万3364円99万203 これに,本件商標の使用料率として0.15%を乗じると,となる。 0円(1円未満切捨て)(2) さらに,1審原告コーポレーションは,1審被告の本件商標権侵害行為により無形損害を被ったと主張する しかし,1審被告による本件商標権侵 。
害行為として把握し得るのは,前記のとおり,1審被告のホームページにおいて被告標章2及び6を使用したこと並びに平成12年8月1日から同年11月1日までの間に旧商標商品を合計14回,合計161個を販売したことにとどまる。このことに加え,後記10のとおり,本件商標が原告製品の商品表示として周知なものであったとは認められず,本件商標に1審原告らの高度な信用が化体していたとはいえないことを併せ考慮すると,上記のような1審被告の本件商標権侵害行為によっては,1審原告コーポレーションに無形損害が発生したとは認めるに足りない。
(3) したがって,1審原告コーポレーションの主位的請求は上記(1)の限度で理由があり,その余の主位的請求及びこれにかかる予備的請求はいずれも理由がない。
5 前記3,4について,1審被告は,ホームページにおける本件商標の使用料13相当額は,1審被告のホームページに宣伝広告効果がないこと,及び本件商標に周知性がないことから,一切発生しないと主張するが,上記原判決引用部分が判示するとおり,1審被告のホームページに被告標章2,6を使用して旧商標及び旧商標商品を掲載していたこと,平成15年9月以降ではあるが,自社のホームページ上で行った消費者に対する直接販売で相応の売上があったこと,他方,平成14年4月10日までの間に,雑誌での広告において,フリーダイヤルの番号はほぼ掲載し,取扱店舗も紹介しているものの,自社のホームページのURLを表記していたことはないこと等からすれば,1審被告のホームページの宣伝効果はさほど高いものではないが皆無とはいえないから,かかる主張は採用することができない。
また,1審原告らは,原判決認定におけるホームページの本件商標の相当使用料率0.15パーセントは,現代のインターネット社会における消費者の商品購入行動を過小評価した余りに低率なものであると主張するが,上記原判決判示のとおり1審被告のホームページの宣伝効果はさほど高いとはいえないこと,平成15年9月より前は自社のホームページでの直接販売は行っておらず,インターネット広告企業が高い売上げをあげているとの現在の状況がそのまま妥当するものではないこと等からすれば,かかる主張は採用することができない。
6 以上によれば,1審原告ブラザーズの1審被告に対する本件商標の使用料相当額の不当利得返還請求は,106万1449円及びこれに対する平成16年11月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,また,1審原告コーポレーションの本件商標権侵害に基づく損害賠償請求は,99万2030円及びこれに対する平成17年6月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がない。
(1審原告ブラザーズの本件合意に基づく請求について)141 争点5(本件合意の効力)原判決68頁24行目から86頁17行目までに認定,説示されたとおりであるから,これを引用する。ただし,79頁18行目「45」を「乙45」に,83頁12,15行目各「3」を「2」に改める。
2 争点6(1審被告及び小売店における被告標章使用行為が本件合意に違反するか)原判決86頁20行目から88頁17行目までに認定,説示されたとおりであるから,これを引用する。
3 争点7(1審原告ブラザーズの1審被告に対する権利行使が権利濫用又は信義則違反に該当するか)原判決88頁20行目から89頁13行目までに認定,説示されたとおりであるから,これを引用する。ただし,89頁12行目「(698万3022円)」を「(1万6978円)」に改める。
この点,1審被告は,本件合意に基づく違約金700万円は高額に過ぎ,権利濫用及び公平の観念から認められるべきでないし,原判決が,被告現・新商標が本件商標権を侵害しないと認定しつつ,本件合意に基づく販売禁止等を認めるのは,自己矛盾であると共に,1審被告の企業活動そのものを停止させかねない重大な事柄であり,公平の観念や正義の観念に著しく反し,認められるべきではないと主張する。
しかし,前記各原判決引用部分が判示するとおり,本件合意は,1審原告ブラザーズが本来請求可能な損害賠償額よりも低額の和解金の支払によって一定限度で旧商標商品の販売を許容した経緯で締結したものであり,合意内容の全てが1審被告に不利益な内容とはいえないこと,違反行為1回当たりの違約金50万円との金額は,1審被告から同原告に提案した額であること,1審被告は相当な交渉を重ねた末に成立した本件合意に違反する販売行為を14回にわたって行ったものであって,その販売額が多額とはいえないものであっても,15違反の程度は軽微とはいえないこと等からすれば,違約金額が権利濫用を構成する程度に高額に過ぎるとはいい難い。また,これに加えて,上記違反行為があった場合に販売禁止や謝罪文を掲載することは,相当な交渉を重ねた末に1審原告ブラザーズと1審被告が明確に合意して,同原告にかかる請求権を付与したものであるから,本件訴訟において結果として被告現・新商標が本件商標権を侵害しないものと認定されたものであっても,本件合意に基づく同原告の請求が自己矛盾として妨げられるべきものではないこと等に照らせば,上記主張は採用することができない。
4 以上によれば,1審原告ブラザーズの1審被告に対する本件合意に基づく請求は,被告製品(新商標商品)の販売の停止及びその販売中止のお知らせと謝罪文を全国紙各紙に掲載(本件合意第7条。ただし,原判決89頁22行目から91頁8行目までのとおり,原告商品表示に周知性は認められないので,謝罪文の文面は原判決別紙目録2のとおりとするのが相当である。)を求め,さらに,違約金698万3022円及びこれに対する平成17年10月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
結論
その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,以上の認定,判断を覆すほどのものはない。
以上によれば,1審原告らの請求は,@1審原告ブラザーズの本件合意に基づく請求は,原判決別紙目録2のとおりの謝罪文等の掲載,並びに違約金698万3022円及びこれに対する平成17年10月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,また,同原告の本件商標の使用料相当額の不当利得返還請求は,106万1449円及びこれに対する平成16年11月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ16る遅延損害金の支払を求める限度で,A1審原告コーポレーションの本件商標権侵害に基づく損害賠償請求は,99万2030円及びこれに対する平成17年6月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がない。
訴訟費用につき民事訴訟法67条1項,2項,64条本文,ただし書,仮執行宣言につき同法259条1項を適用し,主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成18年7月28日)
裁判長裁判官 若林諒
裁判官 小野洋一
裁判官 菊地浩明