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関連ワード 独占的使用 /  識別力 /  包装 /  役務の提供 /  出所表示機能 /  指定商品 /  指定役務 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  品質誤認(4条1項16号) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  補正 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10344号 審決取消請求事件
原告株 式会社アデランス
訴訟代理人弁理士小田治親
同 樋口頼子
被告特許庁長官 中嶋誠
指定代理 人岩本和雄
同 中村謙三
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/11/29
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2004-18960号事件について平成18年6月6日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
第3当事者の主張1請求の原因(1)特許庁における手続の経緯ア原告は,平成15年6月27日,下記 の構成からなる商標(以下「本願商標」という )について商標登録出願をし(以下「本願」という, 。 。)その後,平成16年7月7日付け補正により,指定商品又は指定役務を下記 のとおりとした。
記 本願商標  指定商品又は指定役務(色彩については原本参照)第3類「髪洗い粉,シャンプー,育毛料,その他の頭髪用化粧品,脱毛剤,毛髪脱色剤,かつら装着用接着剤」第5類「育毛剤,毛髪用剤」第44類「美容,理容,育毛,増毛,植毛,育毛・増毛・植毛に関する情報の提供,脱毛の予防に関する情報の提供,育毛・増毛・植毛に関する指導及び助言,脱毛の予防に関する指導及び助言,ファクシミリ・インターネット又は電話による育毛・増毛・植毛に関する情報の提供,ファクシミリ・インターネット又は電話による脱毛の予防に関する情報の提供,頭皮の健康に関する指導及び助言,頭皮のマッサージ,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」イ特許庁は,平成16年8月27日,本願について拒絶査定をしたため,原告は,これを不服として審判請求をした。そこで特許庁は,これを不服2004-18960号事件として審理した上,平成18年6月6日,「本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をし,その謄本は平成1 。
8年6月26日原告に送達された。
(2)審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,本願商標をその指定商品及び指定役務中 「毛」に関,する商品及び役務に使用するときは,これに接する取引者・需要者は商品の品質・用途及び役務の質を図形をもって表現したにすぎないものと理解するに止まり,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないから,商標法(以下「法」という )3条1項3号及び法4条1項16号に該 。
当する,としたものである。
(3)審決の取消事由しかしながら,以下に述べるとおり,審決には誤りがあるから,違法として取消しを免れない。
ア本願商標を構成する図形の認識の誤り(取消事由1)審決は 「…本願商標を構成する図形は,…中心に縦に描かれた黒色の ,棒状体は,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,地に埋まっている下端が毛球のごとく球状であることから,例えば,毛髪等のように,毛根を有してそこから伸びるような「毛」に特有の特徴,形状を顕著に有しているといえるものであり,一見して 「毛」を表してな,るものと看者に容易に把握され,理解させるものである(2頁19行。」〜24行)とする。
しかし,審決のように,黒色の棒状体が上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていくこと,及び,地に埋まっている下端が毛球のごとく球状であることから,毛髪等のように,毛根を有してそこから伸びるような「毛」と把握・理解するのは,指定商品指定役務が毛髪関連商品・役務であることに引きずられた誤った認識である。
本願商標を構成する図形の把握・理解は,看者の主観によって異なるものであり,看者によっては,たとえ「毛」を連想するものであっても,水面に波紋を生じている状態を表したもので,あたかも毛が水面で静かに浮いているような状態を表すと把握・認識したり,あるいは 「毛」を連想,するのではなく,おたまじゃくしのしっぽが水面から飛び出ている状態を表す,黒色の棒状体は指揮棒を表す,全体として宇宙を表す,宗教画である,等と把握・認識したりするものであるから,一見して毛を表すと容易に把握・理解されるものではない。
すなわち,本願商標は 「上端から下端に行くにしたがってだんだんと ,太くなっていく黒色の棒状体」だけで構成されているのではなく,黒色の棒状体の下部は丸く膨らんでその曲面の一部が透き通った灰色の液体に浸かっており,その曲面が水面に潜った瞬間に生じた柔らかな波紋のごとき灰色又は青色の多数の円が水面に表れているものであるから,本願商標においては,黒色の棒状体,及び,波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等を結合したものが商標として認定されるべきである。
また,審決は 「一見して 『毛』を表してなるものと看者に容易に把 ,,握され,理解させるもの」とするが,そうであれば,例えることなく,一義的に「毛」と認識されるのが通常であるにもかかわらず,審決は,一方で「例えば,毛髪等のように,毛根を有してそこから伸びるような」としており,矛盾している。
イ法3条1項3号該当性判断の誤り(取消事由2)(ア)審決は 「…本願商標を,その指定商品及び役務中,該「毛」に関 ,する商品及び役務…に使用するときは,これに接する取引者・需要者は,商品の品質,用途及び役務の質を図形をもって表現したにすぎないものと理解するに止まり,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない(2頁27行〜38行) 。」とするが,これは,上記ア(取消事由1)で述べたとおり,本願商標を構成する図形の認識を誤ったものであり,その結果,法3条1項3号該当性の判断を誤ったものである。
(イ)すなわち,上記のとおり,本願商標を構成する図形は,看者の主観によって色々な把握・認識ができる図形であるから,たとえ,毛髪に関する商品又は役務を漠然と暗示させるものであったとしても,直ちに,毛髪用の商品の品質若しくは用途,又は,毛髪に関する役務の質を表示したものと認識させることはなく,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有するものである。
(ウ)また,上記のとおり,本願商標を構成する図形は,看者の主観によって色々な認識・把握ができる図形であることから,その商品,例えば「シャンプー」の品質,用途等を「普通に用いられる方法で表示する」標章「のみからなる」商標とはいえず,法3条1項3号該当性を満たさない。
(エ)さらに,本願商標は,上記のとおり,黒色の棒状体のみで構成されているものではなく,黒色の棒状体,及び,波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等が結合したものであるから,看者が自他商品等を識別する標識として認識しないとはいえないし,これを特定人に独占させることが公益上適当でないともいえない。
ウ法4条1項16号該当性の判断の誤り(取消事由3)審決は,毛髪用の商品,毛髪に関する役務以外の商品又は役務に使用するときは,商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,法4条1項16号に該当するとした拒絶査定は妥当とする。
しかし,原告は,審査段階において,本願商標の指定商品・役務を,毛髪に関連すると思われる指定商品及び役務に限定したものであるから,本願商標には,法4条1項16号に該当する事由はない。
被告は,補正後の指定役務には第44類「美容」が含まれているところ,当該役務中には,例えば 「マニキュア及びペディキュア「フェイシャ , 」,ル・トリートメント」等 「毛」に直接関係しない美容の役務も存在する ,(広辞苑第五版〔乙23 ,財団法人全国生活衛生営業指導センター「美 〕容業に関する標準営業約款規程集〔乙24,そうすると,本願商標が 〕)これら「毛」に関係しない美容の役務に使用された場合,これに接する需要者をして,いまだ役務の質を誤認させるおそれがある,と主張する。
しかし,近時の美容サービスにおいては,毛髪・爪・顔に関するサービスが一連で行われていることから,需要者は,たとえ 「毛髪を含む商,標」が使用された美容院に入って,これらの一連のサービスが行われていてもいなくても 「毛髪」という主要なサービスが提供されている限り, ,役務の質の誤認を生ずるというものではない。
さらに,特許庁における登録例においても,登録第3165444号商標「(甲13 ,登録第4233805号商標「Hair Fitter\ヘ 」)アフィッター (甲14)のように,役務「美容」において取得された商 」標が 「毛髪」に関連すると思われる図形又は言葉(Hair)を含むもので ,あっても 「美容(但し,毛髪に関するものに限る 」又は「毛髪に関す , )る美容」等に役務を限定されることなく登録されている事実もある。
エ過去の商標登録例違反(取消事由4)審決は 「…請求人(出願人)は,過去の登録例を挙げて,本願商標も ,登録されるべきであると主張しているが,請求人(出願人)の挙げる登録例は,毛の図形と他の図形とを結合した図形商標であるから,本願商標とはその構成態様を異にするものであり,同一に論ずることはできない 」。
(3頁1行〜4行)とする。
しかし,本願商標も 「毛にも見える図形」と「水面に波紋を生じてい ,る状態を表したような 「色彩のある」図形を全体として結合した図形で 」あるから,本願商標とはその構成態様を異にするとの理由が明確でないことになる。
さらに原告は,本願商標と同一のコンセプトの下に 「毛にも見える」,図形商標を他に2件創作し(甲11 ,本願商標と同日に出願したが,特 )許庁は,これらについては,不服2004-18958号審決(甲1)及び不服2004-18959号審決(甲2)においていずれも登録すべきものと判断している(甲1,2 。審決は,これらの登録事例とも矛盾す )る。
2請求原因に対する認否請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,同(3)は争う。
3被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1)取消事由1に対し原告は,本願商標を構成する図形の認識について誤りがある旨主張するが,失当である。
アすなわち,一般に「毛」を図形で表す場合には,一本又は数本程度の少量の「毛」が,皮膚から生えている様子を表すことが多く行われている。
そして 「毛」は,上端から下端に行くにしたがってだんだん太くなって ,いき,皮膚に埋まっている下端の毛球は丸みを帯びた形に表されており,その場合には,この形状の特徴を誇張し,拡大して表される場合が少なくない(乙1〜6 。そうすると,本願商標に接する取引者・需要者は,本 )願商標を構成する図形が,多少図案化されているとしても,中心に縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,地に埋まっている下端が毛球のごとく球状であることから,「毛」を表してなるものと容易に把握,理解し得るといえる。
イまた,原告は,本願商標は 「上端から下端に行くにしたがってだんだ ,んと太くなっていく黒色の棒状体」だけで構成されているのではなく,これと,波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等を結合したものが商標として認定されるべきである,と主張する。
しかし,審決は 「地に埋まっている下端が毛球のごとく球状であるこ ,とから (2頁21行〜22行)と記載しているように,黒色棒状体の下 」端が地に埋まっているように表されていることをもって,当該黒色棒状体を「毛」と判断したものであって,単に本願商標の構成中の「上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなってい」く「黒色の棒状体」の図形のみをもって判断したものではないから,原告の上記主張は失当である。
ウさらに,本願商標の指定商品指定役務は,第44類「美容」の役務中,例えば 「マニキュア及びペディキュア「フェイシャル・トリートメン , 」,ト」等,ごく一部の役務を除いたすべての指定商品及び指定役務が専ら「毛」に関するものであり,その取引者・需要者は,育毛,増毛等「毛」に関心を持つ者といえるから,これらの者は,本願商標について,一義的に「毛」を表したものと理解するというべきであり,本願商標が,水面に波紋を生じている状態を表したもので,全体として宇宙を表す,宗教画である,とも把握・認識され得るとする原告の主張は,本願商標の具体的構成と,その指定商品及び指定役務との関係を無視したものであって,妥当でない。
(2)取消事由2に対し原告は,審決は法3条1項3号該当性判断を誤った,と主張するが,失当である。
アそもそも,法3条1項3号が,記述的商標は商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は 「このような商標は,商標の産地,販売地その ,他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによる (最高裁昭和54年4月10日判 」決(昭和53年(行ツ)第129号 )と解される。)イしかるに,審決のとおり 「医薬品に限らず,食料品,電気製品その他 ,の各種の商品を取り扱う業界においては,例えば,商品カタログ,商品説明書或いは商品の包装等に当該商品の特徴,又は取り扱い方法,使用の方法等を説明する場合,説明をより理解し易くするため図解により補足的に説明することが普通に行われているところである(2頁14行〜18。」行 。そして 「毛」に係る本願商標の指定商品及び指定役務に関しても, ),商品及び役務の特徴等を説明する場合 「毛」の図解(皮膚から生えてい ,る「毛」が,上端(上方)から下端に行くにしたがってだんだん太くなっていき,皮膚に埋まっている下端が丸みを帯びた形に表されている図形)をもって補足的に説明することが,書籍,新聞,インターネット掲載情報及びカタログ等で,普通に行われている(乙7〜20 。)そうすると 「毛」を表した図形商標については 「毛」に関する商品 , ,又は役務に使用されている場合 「毛」を表示したものと認識される程度 ,のものであれば,たとえ多少図案化されていたとしても,これに接する取引者・需要者は,単に「毛」を図解により表示したものと理解するに止まり,自他商品及び自他役務を識別する標識としては認識しないというべきである。そして,取引の実情を考慮すると,本願商標の構成態様が格別に特異なものとも認め難く,この程度の図案化,彩色の方法は,いまだ普通に用いられる方法の域を脱していないものというべきであって,本願商標が「毛」を表したものとして認識される以上にかかる構成態様が看者に強く印象づけられるほど特徴的なものとはいえない。
ウまた 「毛」に関する商品及び役務を図解して表す場合,商品及び役務 ,の品質,用途,質を表すために,本願商標のような毛の図形商標の構成態様にならざるを得ないから,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともこれを使用する必要があり,かつ,なんぴとも使用を欲するものであって,特定人による独占使用を認めるのは公益上適当としないというべきである。
エしたがって 「毛」を表したと認識されるものからなる本願商標は,商 ,品の品質,用途及び役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,法3条1項3号に該当するものである。
(3)取消事由3に対し原告は,審決は法4条1項16号該当性の判断を誤ったと主張するが,失当である。
ア法4条1項16号該当性の有無,すなわち 「役務の質の誤認を生ずる ,おそれがある商標」かどうかは,その商標の外観,称呼,観念などから判断して,その指定役務について,その役務が現実に有する質と異なるものであるかのように需要者をして誤認させるおそれがあるかどうかに照らして判断すべきである。
これを本願商標についてみると,補正後の指定役務には,第44類「美容」が含まれているところ,当該役務中には,例えば 「マニキュア及び,ペディキュア「フェイシャル・トリートメント」等 「毛」に直接関係 」, ,しない美容の役務も存在する(乙23,24 。そうすると,本願商標が )これら「毛」に関係しない美容の役務に使用された場合,これに接する需要者をして,いまだ役務の質を誤認させるおそれがある。
したがって,本願商標は,役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標であり,法4条1項16号に該当するものというべきである。
イ原告は,近時の美容サービスにおいては,毛髪・爪・顔に関するサービスが一連で行われていることから,需要者は,たとえ 「毛髪を含む商,標」が使用された美容院に入って,これらの一連のサービスが行われていてもいなくても 「毛髪」という主要なサービスが提供されている限り, ,役務の質の誤認を生ずるというものではない,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,美容の役務が「毛髪・爪・顔に関するサービスが一連で行われている」提供場所及び「美容院」においてのみ提供されることとしている点において,誤りがある。すなわち,美容の役務が細分化している近年においては,例えば,爪の美容を専門に行う「ネイルケア専門店」等のように,毛髪や体毛等の「毛」に関係のないサービスのみを提供する店等も存在するところである。
さらに原告は,特許庁における登録例として,登録第3165444号) , 商標(甲13 ,登録第4233805号商標(甲14)を取り上げるがこれらは,いずれも「毛髪」のみを表したものではなく,また,本願商標とはその構成態様を異にするものであるから,本願商標と同一に論ずることはできない。
(4)取消事由4に対し出願に係る商標が登録され得るか否かは,当該商標の構成態様と指定商品指定役務とに基づいて,個別具体的に判断されるものである。
しかるに,原告の平成16年11月2日付け手続補足書(甲8)中の各商標は,いずれもその構成中に黒色の棒状体の図形を有するとしても,その他に,六角形を連ねた化学式のような図形と欧文字(登録第4298605号商標及び登録第4490840号商標 ,六角形を重ねた図形(登録第44 )86303号商標 ,楕円とその楕円に重ねるように3つの矢印を連ねた楕 )円状の図形(登録第4111718号商標及び登録第4126420号商標 ,上から下にいくにしたがって小さくなっていく,中央部分に穴の開い )た4つの黒色の円盤状の図形(登録第4257589号商標 ,上部を下向)きのU字状に切り取ったような黒塗りの長方形図形(登録第4275180号商標)をそれぞれ有するものであるから,これらを本願商標と同一に論ずることはできない。
また,原告が指摘する不服2004-18958号審決における商標(甲1)及び不服2004-18959号審決における商標(甲2)は,毛を暗示させる黒色の棒状体の図形を有するとしても,甲1の商標は 「…棒状図,形の末端付近を丸く囲むように白色の球体・正方体・三角錐等の図形を不規則に複数配してなる点等において,特徴を有する… (甲1の2頁17行〜 」19行)ものであり,また,甲2の商標は 「…棒状図形の末端を赤色に彩 ,色し,末端付近を丸く囲むように赤っぽくぼかして彩色している点等において,特徴を有する… (甲2の2頁17行〜19行)ものであるから,商標 」中に明らかに他に特徴的な構成要素を有した商標又は明らかに構成態様を異にする商標であり,本願商標とは同一に論ずることはできない。
第4当裁判所の判断1請求の原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(審決の内容)の各事実 )は,いずれも当事者間に争いがない。
2取消事由1(本願商標を構成する図形の認識の誤り)について(1)本願商標の構成は,前記第3の1(1)アにおいて掲げたとおりのものであって,その態様をみると,中心にほぼ縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,埋まっている下端が毛球のごとく球状となっているような図形からなるものであることが認められ,一方,証拠(乙1〜6)及び弁論の全趣旨によれば,一般的な図鑑,百科事典等において,上記のような黒色の棒状体が下から生えている図形が,「毛」を表すものとして図示されていることが認められる。これらによれば,, , 本願商標を構成する図形が 「毛」に特有の特徴,形状を顕著に有しており一見して 「毛」を表してなるものと看者に容易に把握され,理解させるも ,のであることは明らかである。
(2)原告の主張に対する補足的説明ア原告は,黒色の棒状体が上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていくこと,及び,地に埋まっている下端が毛球のごとく球状であることから,毛髪等のように,毛根を有してそこから伸びるような「毛」と把握・理解するのは,指定商品指定役務が毛髪関連商品・役務であることに引きずられた誤った認識である,と主張する。
しかし,前記のとおりの構成を有する本願商標に接した取引者・需要者が,黒色の棒状体が上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていくこと,及び,埋まっている下端が毛球のごとく球状であることから,これが「毛」を図示したものと把握・理解するとみるのは,上記(1)に説示したように,一般的な図鑑,百科事典等において,このような図形が「毛」を表すものとして図示されていることに照らして,自然かつ合理的というべきである。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
イ次に原告は,本願商標を構成する図形の把握・理解は,看者の主観によって異なるものであり,看者によっては,あたかも毛が水面で静かに浮いているような状態,おたまじゃくしのしっぽが水面から飛び出ている状態,指揮棒,宇宙,宗教画,などと把握・認識するから,一見して毛を表すと容易に把握・理解されるものではない,と主張する。
しかし,上記(1)に説示したように,本願商標の構成は,中心に縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,埋まっている下端が毛球のごとく球状となっているような図形からなるものであり,一方,一般的な図鑑,百科事典等においては,このような黒色の棒状体が地から生えている図形が 「毛」を表すものとし ,て図示されているのである。そうすると,本願商標を構成する図形は,一見して何を表すか容易に把握・理解がされなかったり多義的な把握・理解がされるような性質の図形とは異なり,当該図形全体が,一見して,通常の生えている状態の「毛」を表していることが明らかであり,多少図案化されているとはいえ,それ以外に表していると見るべき特徴はない。したがって,本願商標の構成を,あたかも毛が水面で静かに浮いているような状態,おたまじゃくしのしっぽが水面から飛び出ている状態,指揮棒,宇宙,宗教画,などと把握・理解するのは無理があり,原告の上記主張は採用することができない。
ウ次に原告は,本願商標は 「上端から下端に行くにしたがってだんだん ,と太くなっていく黒色の棒状体」だけで構成されているのではなく,これと,波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等を結合したものが商標として認定されるべきである,と主張する。
しかし,上記(1)に説示したように,本願商標の構成は,中心に縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,埋まっている下端が毛球のごとく球状となっているような図形からなると認められるところ,かかる認定は,原告が指摘する「波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等を結合したもの」という部分を除外して行ったものではなく,かかる部分を含んだ全体の図形について判断したものである。そして,原告の指摘する当該部分が,単なる「地」を表しているという域を超えて何らかの特徴的な意味を持つ識別力のある図形と評価するのが困難であることは,後記3(2)ウに説示するとおりである。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
エさらに原告は,審決は 「一見して 『毛』を表してなるものと看者に ,,容易に把握され,理解させるもの (2頁23行〜24行)とするが,そ 」うであれば,例えることなく,一義的に「毛」と認識されるのが通常であるにもかかわらず,審決は,一方で「例えば,毛髪等のように,毛根を有してそこから伸びるような (2頁22行)としており,矛盾している, 」と主張する。
しかし,審決の「例えば,毛髪等のように 」とある記載部分は,その ,文章自体から,体の各所に生える「毛」の種類を例示したに過ぎないことが明らかであり,また,本願商標に接する看者の認識については,例えることなく,一義的に「毛」と認識される旨述べているものである。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
3取消事由2(法3条1項3号該当性判断の誤り)について(1)法3条1項3号が 「その商品の産地,販売地,品質,…用途,…又は ,その役務の…質…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は,このような商標は,商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔判例時報927号233頁〕参照 。)しかるに,本願商標の構成は,前記2(1)において認定したとおり,中心に縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,埋まっている下端が毛球のごとく球状となっているような図形からなるものであり,シャンプー(乙15 ,脱毛剤(乙9,10 , ))育毛剤(乙7,8,11,13,14,16,20 ,毛髪用剤(乙18, )21 ,育毛等に関する情報の提供(乙12,17,19 ,頭皮の健康に ) )関する指導及び助言(乙22)等の,本願商標の指定商品指定役務に含まれる商品・役務の広告において,実際に,商品・役務の品質,用途の文章による説明とともに,その理解を助ける補足的な説明として,上記のような図形が多数掲載されていることが認められる。
そうすると,本願商標を構成する図形は,その指定商品指定役務との関係上,その商品・役務の特性そのものを記述するに止まるものであって,それ以上に,特定の者によって製造販売されたことを明らかにするという出所表示機能を果たしにくいものであり,また,このような図形については,その使用の機会を当該商品を製造販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって,その中の一部の事業者に当該商標の商標登録を許し当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。
以上によれば,本願商標を法3条1項3号に該当するものとした審決の判断に誤りはない。
(2)原告の主張に対する補足的説明ア原告は,本願商標を構成する図形は,看者の主観によって色々な把握・認識ができる図形であるから,たとえ,毛髪に関する商品又は役務を漠然と暗示させるものであったとしても,直ちに,毛髪用の商品の品質若しくは用途,又は,毛髪に関する役務の質を表示したものと認識させることはなく,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有すると主張する。
しかし,本願商標を構成する図形は,前記のとおり,一見して,通常の生えている状態の「毛」を表していることが明らかであり,それ以外に表していると見るべき特徴はないものであって,患者の主観によって色々な把握・認識ができる図形であるとの前提自体が成り立たないものであるから,原告の上記主張は採用することができない。
イ次に原告は,本願商標を構成する図形は,看者の主観によって色々な認識・把握ができる図形であることから,その商品,例えば「シャンプー」の品質,用途等を「普通に用いられる方法で表示する」標章「のみからなる」商標とはいえないと主張する。
しかし,上記アと同様,本願商標を構成する図形は,一見して,通常の生えている状態の「毛」を表していることが明らかであり,それ以外に表していると見るべき特徴はないものであって,患者の主観によって色々な把握・認識ができる図形であるとの前提自体が成り立たないものである。
また本願商標を「シャンプー」の容器に付した場合を考えても,これ自体まさに,黒髪にするというその特性を普通に用いられる方法で表示するものということができる(讀賣新聞京葉版平成18年8月19日広告記事〔乙15 )のであるから,原告の上記主張は採用することができない。 〕ウさらに原告は,本願商標は,黒色の棒状体のみで構成されているものではなく,黒色の棒状体,及び,波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等が結合したものであるから,自他商品等を識別する標識として認識しないとはいえないし,これを特定人に独占させることが公益上適当でないともいえない,と主張する。
しかし,上記2(2)イで説示したように,本願商標を構成する図形は,一見して何を表すか容易に把握・理解がされなかったり多義的な把握・理解がされるような性質の図形とは異なり,当該図形全体が,一見して,通常の生えている状態の「毛」を表していることが明らかであるし,原告が指摘する「波紋のごとき灰色又は青色の多数の円等」を観察しても,多少の図案化はされているが,その程度は高いものとはいえず,これ自体,黒色の棒状体が生える単なる「地」とみられるに止まるものというべきであり,かかる域を超えて,何らかの特徴的な意味を持つ識別力のある図形と評価することは困難である。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
4取消事由3(法4条1項16号該当性判断の誤り)について(1)本願商標の指定役務中には,第44類「美容」が存在するところ,「美容」とは「容貌・容姿・髪型を美しくすること。美粧 」のことであ。
り,また「美容術」とは「容貌を美しくするために施す術。美顔・美髪・美爪(マニキュア)など。美容法 」のことである(新村出編「広辞苑第 。
5版」平成10年11月発行〔乙23。また,財団法人全国生活衛生 〕)営業指導センター「美容業に関する標準営業約款規程集 (乙24)によ」れば,生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律の規定に基づき定められた「美容業に関する標準営業約款」において,美容の業を行う者が提供する役務の中に 「シャンプー」などのほか 「マニキュア及 , ,びペディキュア (第3条(1)ケ「フェイシャル・トリートメント (同 」), 」サ)等が規定されている。
しかるに,このような「マニキュア及びペディキュア」等の役務の提供を受けようとする需要者が,前記構成からなる本願商標に接した場合,前記2(2)イに説示したように,本願商標の構成が,一見して,通常の生えている状態の「毛」を表していることが明らかであり,それ以外に表していると見るべき特徴はないことに照らし 「マニキュア及びペディキュ ,ア」等の内容,品質も「毛」に関係するものであって,単なるマニキュア,ペディキュア等ではないと認識するのが自然である。そうすると,本願商標が,上記のような「毛」に関係しない役務において使用された場合には,需要者はその役務の内容,品質が「毛」に関係すると誤認するおそれがあるというべきである。
したがって,本願商標が法4条1項16号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
(2)原告は,審査段階において,本願商標の指定商品・役務を,毛髪に関連すると思われる指定商品及び役務に限定したと主張するが,上記(1)の説示に照らし,採用することができない。
次に原告は,近時の美容サービスにおいては,毛髪・爪・顔に関するサービスが一連で行われていることから,需要者は,たとえ 「毛髪を含む,商標」が使用された美容院に入って,これらの一連のサービスが行われて, , いてもいなくても 「毛髪」という主要なサービスが提供されている限り役務の質の誤認を生ずるというものではない,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,マニキュアやペディキュアを専門に行う店等 「毛髪」のサービスが提供されていない態様の役務においては妥当し ,ないことが明らかであるから,採用することはできない。
さらに原告は,登録第3165444号商標「(甲13 ,登」)録第4233805号商標「Hair Fitter\ヘアフィッター (甲14)」のような登録例があると主張する。
しかし,これらの登録例は,本願商標のように一見して通常の生えている状態の「毛」を表しているとみられそれ以外に表していると見るべき特徴がないものとは,構成が異なっていることが明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。
5取消事由4(過去の商標登録例違反)について(1)原告は,本願商標も,過去の商標登録例と同様に 「毛にも見える図,形」と「水面に波紋を生じている状態を表したような 「色彩のある」図」形を全体として結合した図形であるから,その構成態様を異にするとの理由が明確でない,と主張する。
しかし,本願商標は,前述のとおり,一見して,通常の生えている状態の「毛」を表しており,たとえ「水面に波紋を生じている状態を表したような 「色彩のある」部分が存在することにより多少図案化されていると 」, しても,前記3(2)ウで説示したとおり,その程度は高いものとはいえずこれ自体,黒色の棒状体が生える単なる「地」とみられるに止まるものというべきであり,かかる域を超えて,何らかの特徴的な意味を持つ識別力のある部分と評価することは困難であって,原告の平成16年11月2日付け手続補足書(甲8)中の7つの商標(登録第4298605号商標,登録第4486303号商標,登録第4490840号商標,登録第4111718号商標,登録第4126420号商標,登録第4257589号商標及び登録第4275180号商標)のように,他に識別力ある表示と結合したとみられる場合とも異なるというべきである。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
(2)さらに原告は,本願商標と同一のコンセプトの下に 「毛にも見え,) , る」図形商標を他に2件創作し(甲11 ,本願商標と同日に出願したが特許庁は,これらについては,不服2004-18958号審決(甲1)及び不服2004-18959号審決(甲2)においていずれも登録すべきものと判断しているところ,審決は,これらの登録事例とも矛盾する,と主張する。
しかし,たとえ本願商標と同一のコンセプトの下に創作された他の図形商標がいずれも登録されたとしても,本願商標と,登録された他の図形商標(甲1,2)とは,その構成が異なっている以上,その登録の許否につき判断が分かれることはやむを得ないものであるところ,登録された他の図形商標の構成(甲1,2)をみると,本願商標とは異なり,他に識別力ある表示と結合したものであることが明らかである。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
6結論以上によれば,本願商標が法3条1項3号及び法4条1項16号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 田中孝一