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関連審決 無効2004-89129
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  指定役務 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  広義の混同 /  狭義の混同 /  4条1項15号 /  著名商標 /  ただ乗り(フリーライド) /  希釈化(ダイリュージョン) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  無効審判 /  外国 /  継続 /  非類似 /  ハウスマーク / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10106号 審決取消請求事件
原告株式会社ラウンドアバウト
訴訟代理人弁護士藤川義人
同 清水良寛
同弁理士藤川忠司
訴訟復代理人弁護士冨夾真一郎
被告セオリー エル・エル・シー
訴訟代理人弁理士松原伸之
同 村木清司
同 中山健一
同 橋本千賀子
同 松嶋さやか
同 高部育子
同 寺島正己
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/12/19
権利種別 商標権
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2004-89129号事件について平成18年2月6日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,「セオリードライブ」及び「TheoryDrive」の各文字を二段に横書きしてなり,指定商品を第25類「洋服,コート,セーター類,スエットシャツ,その他のワイシャツ類,寝巻き類,下着,運動用特殊衣服,靴下,帽子」とする商標登録第4560528号商標(平成13年6月8日商標登録出願,平成14年2月14日登録査定,同年4月19日設定登録,以下,この商標を「本件商標」,その出願を「本件出願」という。)の商標権者である。
被告は,平成16年12月28日,原告を被請求人として,本件商標につき商標登録無効の審判を請求し,特許庁は,これを無効2004-89129号事件として審理した結果,平成18年2月6日,「登録第4560528号の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月16日,原告に送達された。
2審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件商標は,これをその指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,その構成中の「セオリー」及び「Theory」の文字部分に注目し,周知著名となっている商標登録第4413156号商標(「Theory」の欧文字を標準文字により表してなる構成,指定商品第25類,平成10年6月17日登録出願,平成12年9月1日設定登録,以下「引用商標1」という。)又は商標登録第4436425号商標(「THEORY」の欧文字を標準文字により表してなる構成,指定商品第25類,平成10年12月2日登録出願,平成12年12月1日設定登録,以下「引用商標2」といい,引用商標1及び2を併せて「引用商標」という。)を連想,想起し,当該商品が被告又は被告と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものであるから,商標法4条1項15号に違反して登録されたものであり,無効とすべきものであるとした。
第3原告主張の審決取消事由審決は,引用商標が周知著名であると誤認し(取消事由1),また,商品の出所について混同のおそれがあると誤認し(取消事由2),その結果,本件商標の登録を商標法4条1項15号違反を理由に無効とすべきであるとしたものであって,違法であるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(引用商標の周知著名性の誤認)( ) 審決は,引用商標の周知著名性について,「セオリーブランド(注,被告1の引用商標を使用した被服)は,我が国に導入(平成9年)以来,売上が年々数倍ずつ伸びているように,主として,若い女性需要者の間において人気を博し,短期間に急速に広まっていったものというべきであり,それに伴い,引用商標1及び2は,本件商標の登録出願時(平成13年6月8日)には,既に,請求人(注,被告)の業務に係る商品を表示するものとして,取引者,需要者間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。」(審決謄本15頁下から第2段落)と認定したが,以下のとおり,誤りである。
( ) まず,審決は,「セオリーブランドの日本における売上高は,平成10年2度(平成10年12月〜同11年8月)は約7,300万円,平成11年度(平成11年9月〜同12年8月)は約6億1,900万円,平成12年度(平成12年9月〜同13年8月)は約30億7,100万円,平成13年度(平成13年9月〜同14年8月)は約69億6,100万円と年々飛躍的な伸びを示し,その販売促進費・広告宣伝費も平成12年度が約2,000万円,平成13年度が約3,700万円に達している(甲第12号証の1ないし4)。」(審決謄本15頁第2段落)と認定した。
しかし,平成13年11月発行「よくわかるアパレル業界(第8刷)」(甲15)には,当時のアパレル企業売上高上位30社が掲載されているが,これによると,1位のオンワード樫山のアパレル売上高は1646億円,2位のワールドのそれは1509億円,3位の三陽商会のそれは1362億円となっており,30位のトリンプ・インターナショナル・ジャパンをみても395億円であって,上記の被告の売上高は,業界で極めて低い地位を占めていた。たとえ,全国アパレル企業売上高のトップクラスに入らなくても,ある程度の規模の売上げを長年蓄積させてきた実績があるような場合には,取引者,需要者に広く浸透されるに至るケースがあるかも知れないが,本件は,販売開始からわずか3年未満しか経過していないのである。しかも,販売開始1年目の売上高は数千万円にすぎず,周知性の検討に当たって,販売期間に算入することがはばかられる程度の規模のものである。なお,平成12年度(平成12年9月ないし平成13年8月)のうち本件出願日前の売上高は,20億円程度にとどまる。
また,審決の認定する,平成12年度が約2000万円,平成13年度が約3700万円という販売促進費・広告宣伝費は,それが引用商標を付した被告の販売に係る商品(以下「セオリー商品」という。)のみの販売促進費・広告宣伝費ではなく,他のブランドの商品に係る分も相当の割合で含まれていると思われるが,仮に,これがすべてセオリー商品のものであるとしても,この程度の販売促進費・広告宣伝費では,販売促進活動や広告宣伝活動を全くしていないに等しい。日経広告研究所発行「有力企業の広告宣伝費〔平成13年版〕」(平成12年4月から平成13年3月までの決算で集計)(甲27)における307位の企業であるリーバイ・ストラウスジャパン(23億円)の100分の1にも満たない。
なお,審決は,「このように,セオリーブランドは,短期間に急成長し,アパレル分野で注目され,ユニクロのファーストリテイリングが出資し請求人(注,被告)を傘下に納めた(甲第3号証)。」(審決謄本15頁第3段落)と認定したが,甲3は,本件商標の登録後の平成15年9月11日付けの新聞記事であり,本件商標の出願前における引用商標の周知著名性を立証する資料とはなり得ない。
( ) 審決は,「米国ニューヨークで,請求人であるセオリー・エル・エル・シ3ーによって,1997年(平成9年)に発表された引用商標1又は2を使用した被服(以下『セオリーブランド』という。)は,ストレッチ素材を中心としたその着やすさと洗練されたデザインが注目され,急速に人気を集めた(甲第4号証の1ないし3)。」(審決謄本14頁末行〜15頁第1段落)と認定した。
しかし,本件出願の前後において,ファッション・アパレル業界における代表的な新聞社である繊研新聞社がブランド販売企業やブランドの概要を紹介している平成12年12月20日発行「ファッションブランドガイドSENKENFB2001」(甲21),平成13年12月10日発行「ファッションブランドガイドSENKENFB2002」(甲22),毎年のファッションブランドを網羅的に紹介した雑誌である平成13年1月20日株式会社チャネラー発行「別冊チャネラー2001-1ファッション・ブランド年鑑2001年版」(甲24),世界及び我が国の代表的なブランドが掲載されている平成12年10月13日ダイヤモンド社発行「ファッション業界がわかる本」(甲26)等の雑誌には,セオリー商品が全く掲載されていないから,少なくとも,上記各文献に掲載されたころまでは,日本に知られるほどの人気はなかったものというべきである。
( ) 審決は,「セオリーブランドは,本件商標の登録出願(平成13年6月84日)前に発行された女性誌『JJ』,『LASeine(ラ・セーヌ)』,『Grazia(グラツィア)』,『Oggi(オッジ)』,『Domani(ドマーニ)』,『CLASSY(クラッシィ)』,『CanCan(キャンキャン)』,『ef』,『ヴァンテーヌ』等に紹介されているほか,その後も,継続して各種雑誌に紹介されている(甲第4号証の1ないし35及び第13号証の1ないし35)。」(審決謄本15頁第4段落)と認定した。
しかし,審決の引用する上記証拠のうち,本件出願日前に発行された女性ファッション誌は,甲4の1ないし17(審判も同番号)のみ,すなわち,平成11年には5月号,9月号の3誌のみ,平成12年には9誌,平成13年には5誌が発行されたにすぎない。また,甲13の1ないし35(審判も同番号)のうち,甲13の19,23,31及び34については,引用商標が比較的大きく記載されているが,その余の引用商標の記載は,目を皿のようにして注意深く見なければ発見することができない。しかも,引用商標以外に非常に多くの他社の有名なブランド名が混在し,かつ,引用商標に比べて比較的大きく表示されているから,引用商標は,これら他社の多くのブランド名の中に埋没して,見つけることが極めて困難であって,女性ファッション誌の読者である若い女性の注意を引くことはほとんどなかったとみるのがむしろ自然である。
( ) 審決は,「日本には,1998年(平成9年)秋に,その代理店である株5式会社リンクインターナショナルを介して導入されて以来,北海道,東北,関東,甲信越,東海,北陸,近畿,中国,四国,九州に販売店舗を設け全国的に展開している(甲第2号証及び甲第13号証の34)。」(審決謄本15頁第1段落)と認定した。
しかし,セオリー商品で初めて売上高を記録したのは平成11年8月であって,「1998年(平成9年)秋」ではなく,2年ものずれが存する。周知著名性の認定に当たっては,売上高はさることながら,売上期間の長さも非常に重要な要素であると解されるが,セオリー商品は,本件出願時のわずか2年前に初めて売上げが計上されたにすぎないのである。審決は,この期間を4年間と認定していたことになるが,重大な事実誤認である。
また,本件出願時である平成13年6月時点で出店されていたのは,青山ベルコモンズ店,札幌西武百貨店,船橋西武百貨店,池袋西武百貨店,渋谷西武百貨店,恵比寿三越百貨店,新宿高島屋,新宿伊勢丹,京王百貨店,有楽町西武百貨店,玉川高島屋,横浜高島屋,JR名古屋高島屋,京都高島屋,京都阪急デパート,梅田大丸百貨店,心斎橋大丸百貨店,神戸大丸百貨店,小倉井筒屋の19店舗のみである。地域でいうと,札幌に1店舗,東京・千葉・横浜の首都圏に11店舗,名古屋に1店舗,京都・大阪・神戸の近畿圏に5店舗,小倉に1店舗ということになる。すなわち,半分以上が首都圏の店舗であって,これと近畿の店舗を合わせるとほぼすべてとなり,札幌,名古屋,小倉に各1店舗あてとなる。したがって,「北海道,東北,関東,甲信越,東海,北陸,近畿,中国,四国,九州に販売店舗を設け全国的に展開している」という審決の認定は,本件出願時をいうのであれば,明らかに間違っている。
( ) 以上のとおり,引用商標が被告の業務に係る商品を表示するものとして,6取引者,需要者間に広く認識されるに至ったもの,すなわち,周知著名性を獲得したとする審決の認定は,誤りである。
2取消事由2(商品の出所混同のおそれの誤認)( ) 審決は,「本件商標は,上記第1に記載したとおりの構成からなるところ,1その構成中の片仮名文字部分の『セオリー』と『ドライブ』の間に空隙があること,また,当該欧文字部分が『T』及び『D』の文字のみが大文字であること,『セオリー』及び『Theory』と『ドライブ』及び『Drive』とは,いずれも既成語であることから,視覚上,『セオリー』及び『Theory』の各文字部分と『ドライブ』及び『Drive』の各文字部分とに分離されて看取され得るものであり,加えて,両文字部分が結合されて親しまれた熟語を形成するものともいえないことからすると,本件商標は,構成文字全体を常に一体不可分のものとしてのみ認識し,把握されるとはいい難いものである。」(審決謄本16頁第4段落)と認定したが,誤りである。
( ) 引用商標の「Theory」,「THEORY」の語は,「理論」等の意2味合いを有する既成語として親しまれ,いわゆる造語性に乏しい語であって,造語商標と比較して識別力が弱い。一方,本件商標の「セオリー」及び「Theory」と「ドライブ」及び「Drive」とは,いずれも所定の意味を有する既成語からなるものであるが,両既成語が一連一体的に表示されることによって,何らの観念をも有しない一種の造語商標を構成するものである。このことは,被告が本件の商標登録無効審判の請求に先立ってした登録異議の申立てについて,特許庁が平成15年5月14日にした異議の決定(甲17)において,「本件商標は,・・・前半の『Theory/セオリー』の文字と後半の『Drive/ドライブ』の文字とは外観上まとまりよく一体的に構成されており,また,これより生ずる『セオリードライブ』の称呼も格別冗長というべきものでなく,よどみなく一連に称呼し得るものであり,構成中の『Theory/セオリー』の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見出せない。そうとすれば,本件商標はその構成全体をもって,不可分一体の構成からなる一種の造語を表したものと認識し,把握されるとみるのが自然であるから,該構成文字に相応して『セオリードライブ』の称呼のみを生ずるものというのが相当である。」として,本件商標の「セオリードライブ/TheoryDrive」が不可分一体の構成からなる一種の造語を表したものと判断しているとおりである。
したがって,仮に,引用商標が周知著名であったとしても,セオリー商品と「セオリードライブ/TheoryDrive」からなる本件商標に係る商品との間で出所の混同を生ずることはあり得ない。
しかも,前記1のとおり,引用商標は,本件商標の出願日前にいまだ周知著名性を獲得するには至っていないから,より以上に,本件商標は引用商標とは非類似であり,本件商標に係る商品がセオリー商品と出所の混同を生ずることはあり得ない。
( ) 被告の取り扱う商品は,女性ファッション誌にみられるように,若い女性3を対象とした婦人服であるのに対し,原告の取り扱う商品は,紳士服などのメンズウェアであり,その対象とする需要者は男性である。本件商標が使用されて取引される具体的商品と引用商標が使用される商品とは,原材料(服地),用途(男性用と女性用),販売店(男性服店と婦人服店)を全く異にし,この種被服の取引者を含む商品流通経路及び需要者も全く異なり,ファッション関連分野においても女性用と男性用とは全く関連性を有しないものである。
したがって,このような取引の実情を考慮すると,本件商標を原告が取り扱う商品に使用しても,セオリー商品と,その商品の出所の混同を生ずることは全くあり得ない。
( ) 引用商標のように「Theory」,「THEORY」という一般名詞を4使用するのみの事例においては,本来的に識別力が弱いから,第三者がそれに何らかのサブ名称を付け加えて使用した場合,両者間に出所混同のおそれは一般的には生じない。このような場合において出所混同のおそれが生ずるとするには,当該商標が指定商品あるいは役務分野において極めて強い識別力を有する場合,すなわち,売上期間が長く,かつ,その売上高も多く,多額の宣伝広告費をかけているなどの事情があり,取引者,需要者の周知著名性が特に極めて高いことが前提条件になるというべきである。そして,本件において,引用商標が本件出願時において周知著名性を欠くことは前述したとおりであり,したがって,商品の出所の混同のおそれは認められない。
( ) 被告は,被告と同一のファッション・アパレル業界に身を置く原告がセオ5リーブランドについて知らなかったとは思えず,このような引用商標をそっくりそのまま語頭に有する本件商標を偶然に採択したとは考え難いと主張する。
しかし,原告は,主としてアメリカン・カジュアル(いわゆる「アメカジ」)ファッション系の衣類等を取り扱っており,本件出願時において女性用キャリア向け衣類のみを取り扱っていた被告とは,全く別の業界に身を置いていたのであり,引用商標のことを知るはずもなかった。平成13年4月1日株式会社アパレルルーム発行「ファッション界就職読本2002」(甲19の153頁)に専門店売上高で132位,売上高30億円と掲載され,当時,被告の数倍の売上高を有していた原告が,引用商標に便乗する動機やメリットは全くないのであって,被告の指摘は,邪推である。
第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(引用商標の周知著名性の誤認)について( ) 原告は,被告の我が国における売上高が業界で極めて低い地位を占め,し1かも,販売開始からわずか3年未満しか経過しておらず,販売開始1年目の売上高は数千万円にすぎず,周知性の検討にあたって,販売期間に算入することがはばかられる程度の規模のものである旨主張する。
しかし,被告の我が国におけるセオリー商品の売上高は,平成12年度から平成13年度にかけて,約26億8000万円から61億2000万円と2倍以上に増加しており,平成12年度の売上高を見ると,前年度の約4億4000万円から,その6倍以上の約26億8000万円に急増している。
このような数値から,引用商標が急成長したことが分かり,アパレル分野では,本件出願時に最も注目されていたブランドといっても過言ではない。
被告は,1996年(平成8年)8月17日に被服につき,1997年(平成9年)2月に革製品,並びに,履物,バッグ,かばん,時計及び宝飾品を取り扱う小売につき,2003年(平成15年)6月に宝飾品及び時計につき,2005年(平成17年)1月31日にリップバームにつき,引用商標の使用を始めた。セオリー商品は,米国の高級ないし一流百貨店であるブルーミングデール及びニーマンマーカスで,また,2001年(平成13年)当時,全米500以上の店舗において販売されていた。アメリカ合衆国(以下「米国」という。)におけるセオリー商品の宣伝広告の媒体は,雑誌での広告,インターネット上のホームページ,電子メール,ダイレクトメール等であった。日本以外の27か国において45の商標登録がされている。
米国でのセオリー商品の売上高は,1997年(平成9年)に508万2000米ドル,1998年(平成10年)に2080万1000米ドル,1999年(平成11年)に3607万4000米ドル,2000年(平成12年)に4592万7000米ドル,2001年(平成13年)に5505万1000米ドルであり,本件出願時以前の2000年(平成12年)12月31日の時点で日本円にして52億円以上の売上高を米国において上げていたものである。また,その売上高は,1998年(平成10年)から2000年(平成12年)のわずか2年間の間に2倍以上増加しており,1997年(平成9年)の販売当初に比してわずか3年間で9倍以上に増加している。
正にセオリー商品の売上は,まず米国において短期間に急成長し,その後日本でも短期間に急成長したものである。
旅行等の国際的な人的交流を介しての商品情報の国境を越えた盛んな流通等にかんがみ,外国で周知著名なブランドとして,商標出願時に我が国の取引者,需要者間で知られている場合には,商標法4条1項15号が適用されることとなる。特に我が国の服飾等に関するファッション業界では,米国を含む海外の流行や事情に敏感であり,服飾の分野において米国において著名な商標は,日本国内においても一般的に周知なものということができ,混同を生ずるおそれがあれば,商標法4条1項15号の適用されることは,裁判例においても認められているところである。
したがって,引用商標の周知著名性は明らかである。
( ) 原告は,本件出願時前後において,「ファッションブランドガイドSE2NKENFB2001」,「ファッションブランドガイドSENKENFB2002」,「別冊チャネラー2001-1ファッション・ブランド年鑑2001年版」,「別冊チャネラー2002-2ファッション・ブランド年鑑2002年版」,「ファッション業界がわかる本」等の雑誌には,全く引用商標が紹介されていないから,少なくとも,上記各文献に掲載されたころまでは,日本に知られるほどの人気はなかった旨主張する。
しかし,「ファッションブランドガイドSENKENFB2001」,「ファッションブランドガイドSENKENFB2002」を発行する繊研新聞社がファッション・アパレル業界における代表的な新聞社であることは事実であり,同新聞社は,20年以上主催し,全国の有力百貨店のバイヤーによる投票によって選考される権威ある賞として「百貨店レディスバイヤーズ賞」があって,受賞者が同新聞紙上において大々的に報じられるところ,セオリー商品は,平成12年度の「話題賞」を獲得,翌年度以降平成16年度まで連続して「ベストセラー賞」を受賞している(乙6のないし15)。このような事実が存在するにもかかわらず,同社発行の上記ブランドガイドに引用商標が記載されていないのは,このようなブランドガイド,年鑑類が一般的に編集者側が積極的に情報収集するのではなく,ブランド側からの情報提供に頼った編集を行う傾向が極めて強いためである。したがって,このようなブランドガイド,年鑑類への不掲載をもって引用商標の周知著名性を否定することはできない。
( ) 平成11年1月から本件出願日までの約29か月に,実に111冊の女性3ファッション誌にセオリーブランドの取材編集記事が掲載されており,月平均3ないし4冊の女性ファッション誌にセオリーブランドが取材編集記事として掲載され,平成11年1月から平成13年6月までの2年半の間に,ほぼすべての月にわたり複数の雑誌の取材を受けて編集記事が掲載されている(甲4の1ないし17,甲13の1ないし35,乙1,乙2の1ないし59)。いずれの掲載も,ブランドオーナーが費用を負担したものではなく,ファッション雑誌社がその独自の判断でセオリーブランドの取材価値を認めて,雑誌社の費用負担で取材し,編集し,掲載したものである。しかも,このような取材編集記事がほぼ毎月,平均3冊ないし4冊の雑誌に掲載されていたものである。
また,本件出願時から登録査定時である平成14年2月までの9か月の間に107回女性ファッション誌に取材編集記事が掲載され,月平均にすると実に約12冊の女性ファッション誌に毎月取材編集記事が掲載されていたものである(乙2の60ないし138及び乙3の1ないし29)。
しかも,セオリー商品の特集では,その女性ファッション誌のメインモデル(例えば,「Oggi」のA)が着用して数ページにわたって掲載されるなどしており,その取り上げられ方は,雑誌において非常に大きい比重を占めるものである。
原告は,甲13の19,23,31及び34を除く女性ファッション誌における引用商標の記載は,目を皿のようにして注意深く見なければ発見することができない旨主張する。
しかし,このような女性ファッション誌の掲載記事の読者は,目を皿のようにして,モデルが着用している被服のブランドに注意を向けるのが常であり,したがって,ブランドの表記が小さいからといって,読者の注意を引くことがほとんどあり得ないとすることは,記事の性質上,むしろ,実情からかい離した主張といわざるを得ない。
( ) 原告は,周知著名性には,売上期間の長さも非常に重要な要素であると解4されるが,セオリー商品は,本件出願時よりも,わずか2年前に初めて売上げが計上されたにすぎない旨主張する。
しかし,上記のとおり,服飾の分野において,米国において著名な商標は,日本国内においても一般的に周知なものということができるところ,引用商標は,本件出願時において,既に米国において周知著名性を獲得していた。
本件出願前の平成11年9月4日付け日本経済新聞夕刊(乙13)には,「セオリー(有楽町西武)-ストレッチ性の素材(人気上昇中)」との見出しで,引用商標は平成9年にニューヨークで生まれた海外ブランドで,株式会社リンク・インターナショナル(以下「リンク・インターナショナル」という。)が日本で販売している旨紹介する記事が掲載されている。米国での引用商標の周知著名性を考慮すれば,本件出願時において,引用商標は,我が国の取引者,需要者の間で周知著名となっていたものであることは明白である。
2取消事由2(商品の出所混同のおそれの誤認)について( ) 原告は,引用商標の「Theory」,「THEORY」の語は,「理1論」等の意味合いを有する既成語として親しまれ,いわゆる造語性に乏しい語である旨主張する。
確かに,引用商標は,「理論」等の意味合いを有する既成語であるが,識別力の強さは,当該商標が使用される商品との関係で相対的に決まる。引用商標を構成する既成語である「Theory」,「THEORY」は,指定商品である被服等との関係では,その商品の特質等を示唆するものではなく,指定商品との関係では意味を有しないいわゆる恣意的商標であって,識別力の高さは,造語商標に準ずるものである。
したがって,引用商標は,周知著名性を考慮しなくても,その構成自体から商品被服等との関係で識別力の強い商標であるといえる。
( ) 原告は,本件商標の「セオリー」及び「Theory」と「ドライブ」及2び「Drive」という既成語が一連一体的に表示されることによって,何らの観念をも有しない一種の造語商標を構成する旨主張する。
しかし,本件商標の構成をみると,上段の片仮名表記では「セオリー」と「ドライブ」との間に他の文字間に比して大きく間隔が空いており,下段の欧文字表記では,語頭の「T」と中間部の「D」とが大文字であり,その他は小文字で表記されており,「Theory」と「Drive」とに明りょうに区別して認識される構成となっている。また,本件商標の指定商品である被服等の関係で上記「セオリー」及び「Theory」と「ドライブ」及び「Drive」との語は,観念的に特に関係のあるものでもなく,観念的に結合しているものではない。さらに,審決が認定しているように,「セオリー」及び「Theory」と「ドライブ」及び「Drive」とがいずれも既成語であることから,視覚上,「セオリー」及び「Theory」の各文字部分と「ドライブ」及び「Drive」の各文字部分とに分離されて看取され得るものであり,加えて,両文字部分が結合されて親しまれた熟語を形成するものともいえない。したがって,審決での認定のとおり,本件商標は構成文字全体を常に一体不可分のものとしてのみ認識し,把握されるとはいい難いものである。
( ) 上記のとおり,引用商標は,本件出願時に,被服等の分野において周知著3名となっていたものであり,その自他商品識別力は強いものであるところ,本件商標は,引用商標をそっくりそのまま語頭に有するものであるから,本件商標に接した取引者,需要者は,その構成中の「セオリー」及び「Theory」の部分に注目し,引用商標を連想,想起し,被告又は被告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認することによってその出所について誤認することは明らかである。
被服を中心とするファッションブランドの展開においては,いわゆるサブブランドというブランド名の一部にメインブランドの名称を入れることが多く行われているという取引の実情がある。ちなみに,引用商標においても,本件出願後であるが,「TheoryLuxe」,「TheoryPetit」,「TheoryMen」のように,引用商標「Theory」に他の語を併記してブランドを展開している。このような取引の実情を勘案すれば,本件商標に接した取引者,需要者は,その構成中の「セオリー」及び「Theory」の部分に注目し,周知著名商標である引用商標を連想,想起し,被告又は被告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認することによってその出所について誤認することは明らかである。
なお,前記1( )のとおり,平成13年3月29日付けの繊研新聞(乙62の1)は,セオリー商品が平成12年度百貨店「レディスバイヤーズ賞」の「話題賞」を受賞したことを報じており,被告と同一のファッション・アパレル業界に身を置く原告がセオリーブランドについて知らなかったとは思えず,このような引用商標をそっくりそのまま語頭に有する本件商標を偶然に採択したと考え難い。
第5当裁判所の判断1取消事由1(引用商標の周知著名性の誤認)について( ) 原告は,引用商標の周知著名性について,「引用商標1及び2は,本件商1標の登録出願時(平成13年6月8日)には,既に,請求人(注,被告)の業務に係る商品を表示するものとして,取引者,需要者間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。」(審決謄本15頁下から第2段落)」とした審決の認定の誤りを主張するので,検討すると,証拠(各項目ごとに括弧内に摘示する。なお,枝番のあるものは,特に断らない限り,各枝番を含む。以下同じ。)によれば,次の事実が認められる。
ア被告は,1996年(平成8年)8月17日,米国のニューヨークを中心として,主として婦人向けの被服類に引用商標を付して販売を開始し,その後,1997年(平成9年)2月には,革製品,履物,バッグ,かばん,時計,宝飾品についても,それぞれ引用商標を付して販売を開始した。
引用商標は,被告(セオリー エル・エル・シー)のいわゆるハウスマークであった。(乙9,弁論の全趣旨)。
イ被告の主な宣伝広告の媒体は,店頭での展示,米国の女性ファッション誌等であったが,セオリー商品は,ストレッチ性の素材を使用しており,着やすさとデザインにざん新なところがあったことから,女性の消費者層の注目を集め,米国におけるセオリー商品の売上高は,1997年(平成9年)が約508万米ドルであったのが,1998年(平成10年)には約2080万米ドル,1999年(平成11年)には約3607万米ドル,2000年(平成12年)には約4593万米ドル,2001年(平成13年)には約5505万米ドルと,毎年2倍ないし4倍程度に増加した。
セオリー商品を扱う店舗は,2001年(平成13年)には,ブルーミングデール及びニーマンマーカスといった米国の高級ないし一流百貨店を含めて米国内で500前後の店舗となった。また,本件出願時(平成13年6月8日)までに,被告は,世界16か国において引用商標の登録をし,また,9か国において登録出願中であり,少なくともそのころには,諸外国にも広く販路を広げていたものと推認される。
(乙9,10,13,弁論の全趣旨)ウリンク・インターナショナルは,我が国における被告の販売代理店として,平成11年8月から,渋谷西武百貨店,恵比寿三越百貨店,有楽町西武百貨店,心斎橋大丸百貨店,京都阪急百貨店,神戸大丸百貨店でセオリー商品の販売を開始した(乙4,9,13,弁論の全趣旨)。
エセオリー商品の我が国における販売開始と前後して,平成11年5月1日光文社発行「JJ(ジェイ・ジェイ)」5月号(甲4の1)において,3頁にわたるセオリー商品の特集記事が組まれ,そこに,「N.Y.キャリアのお助け服『theory』いよいよ日本上陸さすが本場の“キャロリン・スタイル”」との見出しで,「N.Y.で今,大ブレイクのブランドがこの『theory』。OLだけじゃなくて女優もモデルも普段はここの,というぐらいの完売服なのです。」,「その人気の秘密は,素材,フィット感,デザイン全てにおいて,徹底的なマーケティングがなされているということ。」,「スーパーモデルも女優も私生活でセオリーを着用」,「あの人も着ている最愛ブランド。今一番支持されるセオリー」などと紹介され,同年9月1日学習研究社発行の「LASeine(ラ・セーヌ)」9月号(甲4の2)において,モデルを利用した1頁のセオリー商品に関する記事が組まれ,「’97年に誕生したセオリーは,ストレッチ素材を中心としたその着やすさと,シンプルだが洗練されたデザインがニューヨーカーの間で注目のブランド。」などと紹介され,同月講談社発行「Grazia(グラツィア)」(甲4の3)において,モデルを利用した1頁のセオリー商品に関する記事が組まれ,「セオリーは,ニューヨークで爆発的な人気を得ているブランドです。」などと紹介された。
オまた,販売開始直後の平成11年9月4日付け日本経済新聞夕刊(乙13)には,「セオリー(有楽町西武)-ストレッチ性の素材(人気上昇中)」との見出しで,「すべての服がストレッチ性の素材なので,体にフィットした細身のライン。それでいて動きやすく,シワにもなりにくい。
そんな着心地の良さが人気を呼んでいる。」,「97年にニューヨークで生まれた海外ブランド。アパレルのリンク・インターナショナル(東京・港,B社長)が昨年から日本で販売している。」「30歳前後が中心購買客。」などといった記事が掲載された。
カ平成12年には,小学館発行「Oggi(オッジ)」の4月号(甲4の5),5月号(甲4の6)及び8月号(甲4の7)において,モデルを利用した1頁のセオリー商品を中心とした記事が,9月号(甲4の9)において,モデルを利用した2頁にわたるセオリー商品を中心とした記事が,同社発行「Domani(ドマーニ)」の8月号(甲4の8)において,モデルを利用した1頁のセオリー商品を中心とした記事が,9月号(甲4の10)において,モデルを利用した8頁にわたるセオリー商品の特集記事が,講談社発行の「Grazia(グラツィア)」9月号(甲4の11)において,光文社発行の「CLASSY(クラッシィ)」の12月号(甲4の12)において,それぞれモデルを利用した1頁のセオリー商品を中心とした記事が掲載された。平成13年になると,「Oggi(オッジ)」の3月号(甲4の13)において,モデルを利用した1頁のセオリー商品の記事,小学館発行「CanCan(キャンキャン)」の3月号(甲4の14)においては,モデルを利用した3頁にわたるセオリー商品の特集記事が,光文社発行「CLASSY(クラッシィ)」の4月号(甲4の15)においては,モデルを利用した5頁にわたるセオリー商品の特集記事が,ブシェット婦人画報社発行「LaViede30ans(ラヴィドゥトランタン)」の5月号(甲4の16)には,モデルを利用した2頁にわたるセオリー商品の特集記事が,マガジンハウス発行「an.an(アンアン)」の6月8日号(甲4の17)においては,モデルを利用した1頁のセオリー商品の記事が,それぞれ掲載された。
その他にも,本件出願時までに,平成11年1月には4種類,2月,3月には1種類,5月には2種類,7月には5種類,8月には2種類,9月には5種類,10月には7種類,11月には4種類,12月には5種類,平成12年1月には1種類,2月には2種類,3月には1種類,4月には3種類,5月には5種類,6月には4種類,7月には1種類,8月には3種類,9月には2種類,10月,11月には5種類,12月には3種類,平成13年の1月には6種類,2月,3月には9種類,4月には10種類,5月には14種類の女性ファッション誌に,セオリー商品に関するファッション記事が掲載された(甲13の1ないし35,乙1,2の1ないし48)。
キセオリー商品を販売する店舗は,我が国の国内で短期間に急激に増加し,平成13年6月の時点で出店されていたのは,当初の6店舗のほか,青山ベルコモンズ店,札幌西武百貨店,船橋西武百貨店,池袋西武百貨店,新宿高島屋,新宿伊勢丹,京王百貨店,日本橋三越百貨店,玉川高島屋,横浜高島屋,名古屋三越百貨店,JR名古屋高島屋,JR京都伊勢丹,京都高島屋,梅田大丸百貨店,小倉井筒屋,岩田屋であった(乙4)。
ク我が国におけるセオリー商品の売上高は,平成11年8月には1か月で約741万円,平成11年度(平成11年9月ないし平成12年8月)が約4億4114万円であったのが,平成12年度(平成12年9月ないし平成13年8月)には約26億7838万円,平成13年度(平成13年9月ないし平成14年8月)には約61億1933万円と,急激に売上高が増大していった(乙5)。
ケ平成13年3月29日付け繊研新聞(乙6の1)には,「雑誌効果で大ブレーク。キャリアからの問い合わせが殺到した店も。フィット感,シャープ感のあるこだわり派」,「『セオリー』は雑誌と提携して効果的な打ち出しをし,若い消費者を引き付けた。」との記事が掲載された。
コセオリー商品は,平成14年2月株式会社チャネラー発行「別冊チャネラーファッション・ブランド年鑑2002」(甲25,乙7の1)に掲載されており,2003年,2004年の同年鑑(乙7の2,3)にも同様にセオリー商品が掲載されているが,セオリー商品の被服の種類は,「シャツ,ジャケット,パンツ,スカート,ワンピース,セーター,コート,カットソー」,購買の対象者は,「レディス,27〜43歳中心(ファッションを熟知したキャリア女性)」,商品の特徴は,「上質なストレッチ素材による着心地の良さと完璧なシルエット。シンプル・ベーシックでありながらトレンドも上手く加味されたデザインが人気」とされている。
( ) 上記認定の事実によると,セオリー商品は,米国において,ストレッチ性2の素材を使用し,着やすさとデザインにざん新なところがあったことから,ニューヨークを中心に急速に人気を集め,短期間で急激に売上高を伸ばし,全米及び諸外国に店舗数を広げていたところ,我が国では,リンク・インターナショナルが被告の販売代理店としてセオリー商品の販売を開始し,それと前後して,米国の流行の情報が多数の女性ファッション誌に掲載され,このような女性ファッション誌の掲載により,全国的に急速に引用商標の知名度が広がり,売上高も増大したものと認められる。セオリー商品の売上期間は,米国で1997年(平成7年)から始まり,我が国で平成11年8月から始まったものであって,その期間は,長いとはいえないが,セオリー商品においては,米国での流行,ストレッチ性の素材を使用したその着やすさとざん新なデザインが注目され,我が国において発行されていた多数の女性ファッション誌にひんぱんに掲載され,店舗が急増し,平成11年度(平成11年9月ないし平成12年8月)の売上高が約4億4114万円であったのが,平成12年度(平成12年9月ないし平成13年8月)には6倍の約26億7838万円となっているのである。ちなみに,13年度には,12年度の2倍以上の約61億1933万円となっており,このデータそのものは,本件出願後のものであるが,前年までの売上高の急増の傾向を裏付けるものである。
なお,原告は,平成12年度のうち本件出願日前の売上高は20億円程度にとどまる旨主張するが,平成12年度の売上高は,前年度のそれとの比較で,当該年間にどれほどの売上があったかを問題にしているのであるから,平成13年6月以降を切り捨てたものを同年度の売上高とするのは,失当である。
また,我が国におけるセオリー商品の販売店は,上記のとおり,いずれも,主要都市に店舗が置かれている著名なデパートないし百貨店であり,セオリー商品の取材記事を掲載する多数の女性ファッション誌とともに,引用商標の知名度が全国的に広がったものと認められる。
以上を総合すると,引用商標は,まず,米国において,セオリー商品を表示する標章として使用されて周知著名となり,それが我が国に紹介され,我が国においても同様の標章として使用された結果,本件商標の登録査定時はもとより,本件出願時においても,若い女性を中心とする幅広い女性消費者の間に,被告又は被告と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品(セオリー商品)を表示するものとして周知著名となっていたものと認められる。
( ) 原告は,平成13年11月発行「よくわかるアパレル業界(第8刷)」3(甲15)によると,1位のオンワード樫山のアパレル売上高は1646億円,2位のワールドのそれは1509億円,3位の三陽商会のそれは1362億円となっており,30位のトリンプ・インターナショナル・ジャパンをみても395億円であって,上記の被告の売上高は,業界で極めて低い地位を占めていた旨主張する。
しかし,上記のとおり,売上高の多寡は,周知著名性を推定するための重要な資料の一つではあるが,売上高の順位が直ちに周知著名性を決するものではない。周知性,すなわち,特定の者の業務に係る商品を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されるとは,高い知名度を獲得しているということであって,情報あるいは報道等によって当該商品を知ったため,購買に至るまでもなく高い知名度を獲得することは,十分あり得ることである。
本件においては,セオリー商品は,女性用の「シャツ,ジャケット,パンツ,スカート,ワンピース,セーター,コート,カットソー」という限定された被服の分野であるところ,その売上高は,我が国において平成12年度に約26億7838万円であり,米国では2001年(平成13年)に約5505万米ドルであって,我が国の売上高の2倍程度であったと認められ,原告指摘の大企業に比べると,売上高が高いとはいえないが,上記のとおり,セオリー商品が米国で若い女性を中心とする消費者層において流行し,その流行が,多数の女性ファッション誌を媒介として我が国にもたらされたものであって,引用商標は,高い知名度を獲得し,取引者,需要者の間に広く認識されたものと認めるのが相当である。
したがって,被告の売上高の多寡が引用商標の周知著名性を左右するものとはいえないから,原告の上記主張は,採用することができない。
また,原告は,被告の販売促進費,広告宣伝費の程度では,販売促進活動や広告宣伝活動を全くしていないに等しい旨主張する。
確かに,宣伝広告費の多寡については,原告主張のとおり,被告の宣伝広告費は少ないということができるが,上記認定のとおり,米国での流行を受けて,女性ファッション誌がひんぱんに取材記事を掲載していたために,被告がさほど費用負担する必要がなかったというにすぎず,被告自身の負担する宣伝広告費が少なかったことが,引用商標の周知著名性の認定を左右するものとはいえない。
したがって,原告の上記主張も採用できない。
( ) 原告は,本件出願時前後において,「ファッションブランドガイドSE4NKENFB2001」,「ファッションブランドガイドSENKENFB2002」,「別冊チャネラー2001-1ファッション・ブランド年鑑2001年版」,「ファッション業界がわかる本」等の雑誌には,全く引用商標が紹介されていないから,少なくとも,上記各文献に掲載されたころまでは,日本に知られるほどの人気はなかった旨主張する。
確かに,証拠(甲21,22,24,26)を検討しても,上記各雑誌には,引用商標の記載は見当たらない。しかし,上記( )コのとおり,セオリ1ー商品は,2002年,2003年及び2004年の「ファッション・ブランド年鑑」に掲載されており,多数の女性ファッション誌による継続的なセオリー商品の記事の掲載とを併せ考えると,本件出願時ころまでの周知著名性が,2002年以降の「ファッション・ブランド年鑑」の記載に反映しているものと考えられる。
また,「ファッションブランドガイドSENKENFB2001」,「ファッションブランドガイドSENKENFB2002」を発行する繊研新聞社がファッション・アパレル業界における代表的な新聞社であることは当事者間に争いがなく,また,乙6の1及び弁論の全趣旨によれば,同新聞社が20年以上主催し,全国の有力百貨店のバイヤーによる投票によって選考される権威ある賞として「百貨店レディスバイヤーズ賞」があって,受賞者が同新聞紙上において大々的に報じられるところ,セオリー商品は,平成12年度の「話題賞」を獲得していたことが認められる。したがって,上記「ファッションブランドガイド」等は必ずしも網羅的なものではないことがうかがわれ,上記「ファッションブランドガイド」等をもってする原告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。
( ) 以上のとおりであるから,「セオリーブランドは,我が国に導入(平成95年)以来,売上が年々数倍ずつ伸びているように,主として,若い女性需要者の間において人気を博し,短期間に急速に広まっていったものというべきであり,それに伴い,引用商標1及び2は,本件商標の登録出願時(平成13年6月8日)には,既に,請求人(注,被告)の業務に係る商品を表示するものとして,取引者,需要者間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。」(審決謄本15頁下から第2段落)とした審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は,理由がない。
2取消事由2(商品の出所混同のおそれの誤認)について( ) 審決は,「本件商標をその指定商品に使用するときは,これに接する取引1者,需要者は,その構成中の『セオリー』及び『Theory』の文字部分に注目し,上記周知著名となっている引用商標1又は2を連想,想起し,該商品が申立人(注,被告)又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。」(審決謄本17頁第2段落)と判断したのに対し,原告は,本件商標をその指定商品に使用した場合に,商品の出所の混同を生ずるおそれはない旨主張するので,前記1認定の事実を基礎として検討する。
( ) 本件商標は,「セオリー」と「ドライブ」の2語を組み合せて「セオリー 2ドライブ」とし,英語の「Theory」と「Drive」の2語を組み合せて「TheoryDrive」とした文字標章であることは,それ自体で明らかである。上段の片仮名表記では,「セオリー」と「ドライブ」との間に他の文字間に比して大きく間隔が空いており,下段の欧文字表記では,語頭の「T」と中間部の「D」とが大文字,その他は小文字で表記されており,「Theory」と「Drive」とに明りょうに区別して認識される構成となっている。
「セオリー」及び「Theory」は,「理論。学説」(広辞苑第五版),「@理論。学説。仮説。A持論。私見。」(大辞林第三版)などといった意味を有する英語とその称呼であり,「ドライブ」及び「Drive」は,「自動車で遠乗りすること。」(広辞苑第五版),「自動車を運転すること。
また,自動車に乗って郊外・観光地などに遊びに行くこと。」(大辞林第三版)などといった意味を有する英語とその片仮名表記であるところ,相互に格別の関連性を有する語ではなく,結合することによって一体のまとまった観念が生ずるものともいえない。
また,「ドライブ」及び「Drive」は,我が国で日常的に親しまれている平易な内容を有する語であるところからすると,これを,必ずしも日常的な語とはいえない「セオリー」及び「Theory」の語の次に位置させた場合,「セオリー」及び「Theory」と比べて識別力がはるかに弱いことは明らかである。
そうすると,「セオリー」及び「Theory」の部分と,「ドライブ」及び「Drive」の部分が上記のとおりのものであることからすれば,指定商品の取引者,需要者は,本件商標のうち「セオリー」及び「Theory」の部分を,自他商品の識別標識として認識するものと認められるというべきである。
この点につき,原告は,本件商標の「セオリー」及び「Theory」と「ドライブ」及び「Drive」という既成語が一連一体的に表示されることによって,何らの観念をも有しない不可分一体の一種の造語商標を構成するものであり,このことは,被告が本件の商標登録無効審判の請求に先立ってした登録異議の申立てに対する決定(甲17)において,特許庁も同旨の判断をしている旨主張する。
しかし,上記のとおり,本件商標は,上段の片仮名表記では,「セオリー」と「ドライブ」,下段の欧文字表記では,「Theory」と「Drive」とが明りょうに区別して認識される構成となっており,また,結合することによって一体のまとまった観念が生ずるものともいえないのであって,一連一体的に表示される標章であるとも,不可分一体の一種の造語標章であるともいえない。しかも,何らの観念をも有しない一種の造語であるからといって,「セオリー」及び「Theory」と「ドライブ」及び「Drive」とは,緊密に結合すべき理由がなく,むしろ,別々に認識され,把握される可能性が高いものというべきである。
確かに,原告が指摘するとおり,本件商標に係る登録異議の申立てに対する決定において,一体的に構成され,よどみなく一連に称呼し得るとの理由で,「本件商標はその構成全体をもって,不可分一体の構成からなる一種の造語を表したものと認識し,把握されるとみるのが自然であるから,該構成文字に相応して『セオリードライブ』の称呼のみを生ずるものというのが相当である。」と判断しているが,異議決定における特許庁の判断を唯一の正しいものとすべき根拠を見いだすことはできず,現に,その後の本件の商標登録無効審判において,特許庁は,逆の結論を導いているのである。
したがって,原告の主張は失当というほかない。
( ) 一方,引用商標は,「Theory」(引用商標1),「THEORY」3(引用商標2)の欧文字を標準文字により表してなる文字標章であるから,これを本件商標と比較すると,「セオリー」という称呼,「セオリー」及び「Theory」,「THEORY」の語から自然に生じる「理論,学説」などといった観念において共通するものであり,外観において異なるところはあるが,その差異は,本件商標が,引用商標である「Theory」,「THEORY」及びその読みである「セオリー」を語頭に置き,その後に,「Drive」及び「ドライブ」を付加したものであって,周知著名な引用商標の欧文字をその構成の一部に有し,一見して,引用商標のいわゆるサブブランドであるかのような印象を与えるものということができる。
そして,前記1( )の認定事実及び弁論の全趣旨によれば,原告及び被告1は,いずれもファッション・アパレル業界に属する会社であり,原告は,主として男性用のアメリカン・カジュアルファッション系の衣類等を取り扱っているのに対し,被告は,ニューヨークで流行が始まった女性の被服類を取り扱っているのであり,同業界において,男性,女性いずれの被服をも取り扱う場合が多いことは,当裁判所に顕著であって,原告の業務と被告の業務との間に密接な関連性があることは明らかである。このような場合に,本件商標をその指定商品に使用するならば,本件商標に接した取引者,需要者は,その構成中の「セオリー」及び「Theory」の部分に注目し,被告のいわゆるハウスマークでもある引用商標を連想,想起し,被告又は被告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように誤信し,その出所について混同を生ずるおそれがあると認められる。
( ) 原告は,原告と被告の取り扱う商品の種類が異なり,取引者,需要者,商4品流通経路が異なるという取引の実情を考慮すると,本件商標を原告が取り扱う商品に使用しても,セオリー商品との出所の混同を生ずることはあり得ない旨主張する。
しかし,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品等が他人の商品又は役務に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等がその他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ,すなわち,広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むものと解される(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。したがって,取引の実情についても,本件商標がその指定商品に使用された場合に,被告又は被告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあるかどうかが考慮されるべきである。
原告の主張は,狭義の混同のみを前提とするものであって,前提において既に誤っており,採用の限りでない。
( ) 原告は,商標法4条1項15号該当性が問題となる場合において出所混同5のおそれが生ずるとするには,当該商標が指定商品あるいは役務分野において極めて強い識別力を有する場合,すなわち,取引者,需要者の周知著名性が特に極めて高いことが前提条件になると解すべきところ,本件において引用商標が本件出願時において周知著名性を欠いており,商品の出所の混同のおそれは認められない旨主張する。
商標法4条1項15号は,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,取引者,需要者の利益を保護することを目的とするものであるから,保護されるべき商標が周知著名であることを要すると解すべきであるが(上記判例参照),その周知著名性を,特に極めて高いものに限定しなければならない格別の理由は存在しない。
しかも,本件においては,引用商標は被告のハウスマークであり,引用商標の付されたセオリー商品が米国その他諸外国,我が国に流行しており,多数の女性ファッション誌に引用商標が掲載されているのであるから,このような状況下において,引用商標の欧文字をその構成の一部に有し,一見して,引用商標のいわゆるサブブランドであるかのような印象を与える本件商標が,指定商品に付されて使用された場合には,原告の業務と被告の業務との密接な関連性からも,商品の出所の混同のおそれは著しく高いものというべきである。
したがって,原告の上記主張は,採用の限りでない。
( ) 以上によれば,本件商標をその指定商品に使用したときの商品の出所混同6のおそれを肯定した審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は,採用することができない。
3以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
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