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関連審決 無効2005-89130
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10280審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10279審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10061審決取消請求事件 判例 商標
平成22行ケ10332審決取消 判例 商標
平成9ワ26980商標権使用差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 役務の提供 /  出所表示機能 /  品質保証機能 /  質保証機能 /  識別機能 /  指定役務 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項10号 /  4条1項11号 /  4条1項19号 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  ただ乗り(フリーライド) /  希釈化(ダイリュージョン) /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  要部観察 /  取引の実情 /  国内 /  同一の役務 /  外国 /  継続 /  非類似 /  商号 /  同業者 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10356号 審決取消請求事件
原告カブドットコム証券株式会社
訴訟代理人弁護士白石康広
同弁理士土生哲也
被告楽 天証券株式会社
訴訟代理人弁護士笠原英美子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/01/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2005-89130号事件について平成18年6月22日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯被告は,「ワンショットコース」の文字を標準文字により書してなり,指定役務を第36類「前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,税務相談・税務代理に関する情報の提供,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」(以下「本件指定役務」という。)とする登録第4877207号商標(平成16年12月9日登録出願〔以下「本件出願」という。〕,平成17年7月1日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は,本件商標の登録(以下「本件登録」という。)を無効とすることについて審判を請求し,特許庁は,これを無効2005-89130号事件として審理した結果,平成18年6月22日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を同年7月4日に原告に送達した。
2審決の理由審決の理由は,別添審決謄本写し記載のとおりであり,@本件商標と登録第4839373号商標(以下「引用商標」という。)とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしいところがないから,両者は,非類似の商標であり,また,A上記のとおり両商標は非類似である上,引用商標が周知であるとは認められないので,役務の出所について混同を生ずるおそれがなく,さらに,B引用商標に化体した原告の業務上の信用にフリーライドして不正に使用するものでもなく,C公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とも認められないので,本件商標は,商標法4条1項7号,同項10号,同項11号及び同項19号のいずれにも違反して登録されたものではないから,その商標登録を同法46条1項の規定により無効とすることはできないとした。
3引用商標引用商標である登録第4839373号商標は,「ワンショット手数料」の文字を標準文字で書してなり,指定役務を第36類「通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる有価証券の売買,通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる有価証券の売買の仲介・媒介・取次ぎ・代理,通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる投資に関する助言,通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる株式市況に関する情報の提供,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」とするもので,原告が平成16年7月5日に登録出願し,平成17年2月18日に設定登録を受けた。
第3原告主張の審決取消事由審決は,本件商標と引用商標とが非類似の商標であるとして,商標法4条1項11号該当性の判断を誤り(取消事由1),引用商標が周知ではないとして,同項10号該当性の判断を誤り(取消事由2),さらに,引用商標に化体した原告の業務上の信用にフリーライドして不正に使用するものでもないとして,同項19号該当性を誤り(取消事由3),その結果,本件登録を無効にすることはできないとの結論を導いたものであって,違法であるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)( ) 類否判断の誤り1ア審決は,「本件商標は,前記のとおり『ワンショットコース』の文字よりなるところ,該文字は,標準文字をもって外観上まとまりよく一体的に構成されていて,全体の文字数も長音符号を含めても9文字と一語を形成しているとみて何ら不自然なものということはできず,また,これより生ずる称呼もさほど冗長というべきものではなく,よどみなく一連に称呼し得るものであるから,かかる構成においては,全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然であるといわなければならない。
してみれば,本件商標は,その構成文字の全体に相応して『ワンショットコース』の称呼のみを生ずるものと認めるのが相当である。」(審決謄本15頁第2ないし第3段落)とし,一方で,「引用商標は,全体の構成文字に相応して『ワンショットテスウリョウ』の称呼のほか,『ワンショット』の文字部分に相応して『ワンショット』の称呼をも生ずるものと認められる。」とし,「そうとすれば,本件商標より生ずる『ワンショットコース』の称呼と引用商標より生ずる『ワンショットテスウリョウ』,『ワンショット』の称呼とは,構成音数の差異及び相違する音の音質の差異により明瞭に区別し得るものというべきであるから,本件商標は,引用商標と称呼上相紛れるおそれのない非類似のものといわなければならない。それぞれの構成よりして,両商標は,外観及び観念においても類似するものではない。」(審決謄本16頁下から第3ないし第2段落)と認定判断したが,誤りである。
イ一般に,商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり,誤認混同を生ずるおそれがあるか否かは,そのような商品又は役務に使用された商標がその外観,観念,呼称等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を考察し,これらに加え,その商品又は役務についての取引の具体的な実情に照らし,その商品又は役務の取引者,需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すべきものとされている(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
これを本件についてみると,本件商標は,「ワンショット」の文字部分と「コース」の文字部分が一体として表されているものの,「コース」の語は,普通名詞であり,指定役務である有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等において,株式売買等の取引委託手数料などの料金体系を示すものとして慣用される文字となっているので,本件商標を有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,通常,「コース」の文字部分は,当該役務の料金体系を意味する普通名詞として認識し,「ワンショット」の文字部分を自他役務の識別機能を果たすものとして認識するものである。
したがって,本件商標において自他役務の識別機能を果たす要部は,「ワンショット」の文字部分である。
一方,引用商標は,「ワンショット」の文字と「手数料」の文字が一体として表されているものの,「手数料」が他人の求めに応じてした一定の行為の報酬として受け取る金銭を意味する普通名詞であり,指定役務である有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等においては,株式売買等の取引委託手数料自体又は株式売買等の取引委託手数料体系を示すものとして使用される文字となっているので,引用商標を有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,通常,「手数料」の文字部分は,当該役務の料金自体又は料金体系を意味する普通名詞として認識し,「ワンショット」の文字部分を自他役務の識別機能を果たすものとして認識するものである。
その意味で,引用商標において自他役務の識別機能を果たす要部は,「ワンショット」の文字部分である。
本件商標と引用商標を対比すると,いずれも,要部が「ワンショット」であるから,要部において外観,呼称が同一であり,観念においても「コース」及び「手数料」の語が,通常,役務に対する料金体系又は料金自体を意味することからすれば,本件商標と引用商標とは,いずれも,取引者,需要者に,「ワンショット」という名称の料金体系との観念を生じさせるものであって,観念においても同一であり,結局,本件商標と引用商標とは,外観,呼称及び観念において類似するというべきである。
( ) 誤認混同のおそれ2ア原告及び被告は,ともにインターネットを利用した有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等を専業で行う証券会社(以下「インターネット専業証券会社」という。)の大手の証券会社であり,インターネット上のウェブサイト,新聞,雑誌等を利用して,その役務の宣伝広告を行っているものであり,インターネットを経由した株式売買は,株式取引を専門的に行う取引者のみならず中高年齢者を含めた幅広い年代の一般消費者に浸透している。原告及び被告を含むインターネット専業証券会社は,いずれも,株式売買委託手数料の値下げ競争を継続的に行っており,その際,株式売買委託手数料の安さが比較のための重要なポイントとなるため,株式売買委託手数料体系を工夫し,それぞれの手数料体系に名称を付して需要者にアピールしているところである。
被告が本件商標を用いて取引者,需要者に提供する株式売買委託の手数料体系は,株式売買の約定成立ごとに手数料が発生するというもので,インターネットを経由した株式売買が登場する以前から証券会社における株式売買委託の手数料体系の基本とされてきたものであり,現在でも基本となる料金体系である。
これに対して,原告が引用商標を用いて取引者,需要者に提供する株式売買委託の手数料体系は,株式売買の約定成立ごとではなく,1回の注文で株式売買の約定が複数に分かれたとしても,一つの約定として株式売買委託手数料を計算するという料金体系であり,取引者,需要者にとって有利な料金体系である。
これらの取引事情からすれば,被告がその料金体系に本件商標を使用した場合,取引者,需要者において,原告の料金体系と誤解するおそれがあり,役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。
イ被告は,「いちにち定額」という標章について商標登録を受けているところ,被告のウェブサイトのホームページにおいて,「いちにち定額コース」と「ワンショットコース」を並べて表示していることにかんがみると,本件指定役務と同一又は類似の役務を取り扱う証券業界においては,「コース」を省略して「いちにち定額」,「ワンショット」と略称する取引の実情にあることが明らかであって,「ワンショットコース」全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとはいえない。
したがって,取引の実情を考慮すると,「コース」を省略して「ワンショット」と略称される本件商標と,「ワンショット」の文字部分が要部である引用商標とは,外観,称呼及び観念において同一であるから,誤認混同を生ずるおそれがある。
( ) 以上によれば,本件商標が商標法4条1項11号に違反して登録された3ものではないとした審決は,違法として取り消されるべきである。
2取消事由2(商標法4条1項10号該当性判断の誤り)( ) 審決は,「『ワンショット手数料』の文字は,請求人(注,原告)の手数1料の料金体系を端的に表現したものであろうと理解するに止まるものというべきである。請求人の提出に係る証拠には,これら以外に請求人が『ワンショット手数料』の文字を使用している事実を示すものはない。」(審決謄本17頁第3ないし第4段落)と認定した上,「請求人の提出したこれらの証拠によっては,本件商標の登録出願時あるいは登録査定時において,『ワンショット手数料』の文字からなる商標が請求人の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。」(同頁第5段落)と判断したが,誤りである。
原告は,平成14年11月20日,原告のウェブサイトのプレスリリースによって,引用商標を発表するとともに,同日以降,原告のウェブサイトのホームページ上で引用商標を使用しているのみならず,新聞広告等においても継続的にこれを使用しているところ,原告を含む大手のインターネット専業証券会社は,互いの会社のインターネット・ホームページを参照してサービス水準を競争しているのが日常であり,また,インターネットを利用した有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等が全国レベルで行われているから,平成16年12月9日に本件商標が登録出願された時点で,引用商標は,全国にわたる主要証券の役務取扱業者の間に相当程度認識されていたものである。そして,取引者,需要者においても,原告のウェブサイトのホームページ及び引用商標を表示した原告の新聞広告を閲覧することができ,また,インターネット上の比較サイトやマネー雑誌の特集記事でインターネット専業証券会社の料金体系やサービスを比較して取引証券会社を選択することが一般であるから,引用商標は,上記時点で,取引者,需要者に広く認識されていたものである。
ちなみに,引用商標を使用している原告のウエブサイトのホームページに対するアクセス件数は,本件商標が登録出願された時点で月間5万6780件,本件商標が商標登録された時点で月間7万0150件に及んでいる。
( ) 本件商標と引用商標とが類似することについては,前記1( )イのとおり2 1であるから,本件商標は,原告の業務に係る役務を表示するものとして周知となっている引用商標に類似する商標というべきであり,かつ,その役務又はこれらに類似する役務について使用をするものであって,商標法4条1項10号に該当するものであるから,本件商標が同号に違反して登録されたものではないとした審決は,違法として取り消されるべきである。
3取消事由3(商標法4条1項19号該当性判断の誤り)( ) 審決は,「本件商標は,引用商標に化体した請求人の業務上の信用にフリ1ーライドし不正に使用する商標ではなく,さらに,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とも認められない。」(審決謄本17頁下から第2段落)と判断したが,誤りである。
( ) 前記1( )イのとおり,本件商標と引用商標は類似するものであり,また,21前記2( )のとおり,引用商標は,遅くとも本件出願時において,本件指定1役務である有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等について,同業者のみならず,取引者,需要者の間でも広く認識されていたところ,被告は,本件商標が原告の業務に係る役務を表示するものとして需要者らの間において広く認識されていた引用商標と類似であることを知りながら,引用商標の顧客吸引力希釈化させ,又は,引用商標に便乗して自己の収益拡大を図って不当な利益を得る等の目的のもとに,本件商標を出願し,設定登録を受けたものと推認せざるを得ない。
その理由としては,@本件商標の登録出願時点において,インターネット専業証券会社は既に寡占状態にあったこと,A引用商標に係る料金体系は,証券会社における従前の料金体系にはなかったものであるが,本件商標に係る料金体系は従前の証券会社における料金体系と変わらないものであること,B被告は,平成16年7月4日に現在の商号に変更しているにもかかわらず,例えば,被告の商標「マイサーバー」に関しては登録名義人の表示を現在の被告の商号としながら,「いちにち定額」については現在に至るも登録名義人の表示を変更しておらず,原告による要部観察の主張を封じていたこと,C被告は,本件商標の登録出願と同時に「ワンショット」の文字を標準文字で表してなる商標を登録出願していること,D被告は,「ワンショット」の商標登録出願に対する平成17年5月12日付け拒絶理由通知書に対して意見書を提出していないが,このことは,原告が引用商標を使用して役務を提供していたことを知りながら「ワンショット」及び本件商標の登録出願を行ったことの徴表といえることなどが挙げられる。
( ) 以上によれば,本件商標が商標法4条1項19号に違反して登録されたも3のではないとした審決は,違法として取り消されるべきである。
第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について( ) 類否判断の誤りについて1ア引用商標の要部が「ワンショット」の文字部分にあるとしても,「ワンショット」という語は,証券業界において,顧客による株式等の「一回の注文」あるいは「一回の約定」といった意味で,比較的,日常的に使用されているから,「ワンショットコース」という標章に接した取引者,需要者は,「一回当たりの注文や約定の手数料を支払うことを選択するコース」という認識を持つ程度であり,殊更,「ワンショット」の部分を役務の出所として認識することはなく,「ワンショットコース」という全体をもって,その役務の内容を認識するのであって,本件商標は,「ワンショットコース」としてのみ,出所の識別機能を果たすものである。
確かに,「ワンショット」という語は,証券業界における,いわゆる業界標準語ではないが,正式な用語でないことを理由に,日常的にしばしば使用されている語でないとか,引用商標の「ワンショット」の部分が自他商品の識別機能を有するとの結論を導くことはできない。
イ原告は,本件商標と引用商標とは,いずれも,取引者,需要者に,「ワンショット」という名称の料金体系との観念を生じさせるものであるから,本件商標と引用商標とは,呼称,外観及び観念において類似する旨主張する。
しかし,原告の引用に係る前記判例のいうように,「普通に払われる注意力を基準」とすれば,本件商標からは,「一回当たりの注文あるいは約定の手数料を支払うことを選択するコース」といった観念が生ずるのに対し,引用商標からは,「一回当たりの注文の手数料そのもの」といった観念が生ずるものであり,本件商標と引用商標とでは,観念が相違することが明らかである。
( ) 誤認混同のおそれについて2原告は,原告と被告の株式売買委託手数料の料金体系について述べ,原告の料金体系が取引者,需要者にとって有利な料金体系であること,インターネットを経由した株式売買が,株式取引を専門的に行う取引者のみならず中高年齢者を含めた幅広い年代の一般消費者に浸透していることなどの取引事情からすれば,本件商標と引用商標は役務の出所につき誤認混同を生ずるものである旨主張する。
しかし,原告の主張は,本件商標と引用商標が役務の出所の誤認混同を生ずるか否かという点において,納得のいく説明をしていないため,両商標の役務の出所につき誤認混同を生じ,したがって,両商標が類似することになるかについての因果関係が不明であり,主張自体として成り立たない。
2取消事由2(商標法4条1項10号該当性判断の誤り)について原告は,引用商標の周知性を立証するために,平成14年11月20日付けの原告のウェブサイトのプレスリリース,平成17年6月21日付けの原告のウェブサイトのホームページ,日経金融新聞及びオール投資の掲載広告の原稿(広告掲載の時期及び広告掲載の事実不明)を証拠として提出するが,インターネット上でプレスリリースをしたことなどをもって,当然に,取引者,需要者の間に広く認識されたとする原告の主張及び立証方法は,インターネットが一般に広く普及している現在において,商標の周知性の主張・立証の在り方としては,余りにも安易なものといわざるを得ない。また,上記掲載広告の原稿は,よく目を凝らさないと「ワンショット手数料」の文字は認識できない。
結局,原告が提出したこれらの証拠をもってしては,引用商標が,本件出願時に,原告の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていたものとは,到底,認めることができない。
したがって,本件商標は,商標法4条1項10号に該当する商標ではない。
3取消事由3(商標法4条1項19号該当性判断の誤り)について本件商標と引用商標は非類似の商標であり,引用商標が本件商標の出願時において需要者の間で広く認識されていたという事実は存在しないのであるから,被告が,これら事実を知りながら,原告の引用商標に便乗して不当な利益を得る目的で,本件商標を出願し,設定登録を受けたとする原告の主張は失当である。
そもそも,インターネット専業証券会社の場合,手数料における競争もさることながら,顧客に提供する情報のスピード,その豊富さ,投資支援のためのソフトの提供などのサービスで他社との識別を図っているものであるが,被告は,原告をはるかに上回る業務を展開しており,原告の業務上の利益を利用しようなどという意図は全くなかったものである。被告は,従来の「ひとつき割引コース」のサービスの内容を変更し,新たなサービスを提供するに当たり,当該サービスの周知徹底を図るため,その名称として本件商標を採択し,出願するに至ったものであり,被告において,自己が不正の利益を得る目的あるいは原告に損害を加える目的など一切有するものではない。
原告は,「いちにち定額」については現在に至るも登録名義人の表示を変更しておらず,原告による要部観察の主張を封じていたことを,被告において,不正な利益を得る目的で,本件商標を出願し,権利を取得したことを推認する理由の一つに挙げているが,被告(旧商号・ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券株式会社)は,「いちにち定額」という標準文字からなる商標につき,登録商標(平成13年12月3日出願,平成14年11月22日設定登録)を有しているから,原告の上記主張は,事実に反している。
また,被告が,「ワンショット」という商標の登録出願の拒絶理由に対し意見書を提出しなかったのは,原告主張のとおり,引用商標の「ワンショット手数料」の要部である「ワンショット」が,被告の出願商標「ワンショット」と同一であることから,反論の余地がないものと判断したからである。
第5当裁判所の判断1取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について( ) 類否判断の誤りについて1ア商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品又は役務に使用された商標がその外観,称呼,観念等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。したがって,外観,称呼,観念において類似するとはいえない商標であっても,具体的な取引の実情いかんによっては誤認混同を生ずるおそれがある場合があり,また,逆に,外観,称呼,観念において一応類似するといえる商標であっても,具体的な取引の実情いかんによっては誤認混同を生ずるおそれがない場合があることを念頭に置いて類否の検討をする必要があるものと解すべきである(原告の引用に係る前記最高裁昭和43年2月27日判決のほか,最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決・判時1437号139頁,最高裁平成9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。
イ本件商標は,「ワンショットコース」の文字を標準文字により書してなるところ,英語の「OneShotCourse」を片仮名表記したものである。
本件商標の上記文字は,同一書体,同一字体の片仮名文字が等間隔に配列されており,外観上まとまりよく一体的に構成され,本件商標から生ずる「ワンショットコース」の称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に称呼し得るものということができる。
ところで,「ワン」は,「一。ひとつ」(広辞苑第五版),「ひとつ。
いち。」(大辞林第三版)の意味を有する普通名詞(数詞)であり,「ショット」は,「@球を打つこと。また,打球。Aバスケットボールで,シュートの意味。B映画・テレビ撮影で,一つの場面を撮るひとつづきの操作。また,それにより写したフィルム・ビデオ-テープ。C散弾。D一杯の強い酒。」(広辞苑第五版),「@テニスやゴルフで球を打つこと。また,その球。打球。・・・A映画の撮影でカメラが回り始めてから止まるまで連続撮影された一連の画像。B射撃。Cウィスキーなど,強い酒のひとくち。一杯」(大辞林第三版)の意味を有する普通名詞であるところ,「ワン」は,上記のとおりの意味であって,普通名詞である「ショット」と結合して,例えば,「ワンショット」,「ツーショット」などというように,当該名詞を数量をもって表すものであるから,「ワンショット」は,語頭に数詞を伴う不可分一体の語であるというべきである。
次に,「コース」は,英語の「Course」を片仮名文字で表したものであるが,「@道すじ。行路。道程。進路。・・・A経過。順序。・・・B学科。課程。・・・C競走・競泳・競漕・ゴルフなどで,定められた競技路。」(広辞苑第五版),「@進んで行く時にたどる一定の道筋や順序。進路。・・・Aスポーツの競技を行う,区分けされた進路。Bその中から選択するように設定された枠組みや過程。・・・C物事が進行する道筋。」(大辞林第三版)といった意味を有する語として日本語化し,普通名詞となっている。
以上のとおり,いずれも普通名詞である「ワンショット」の語と「コース」の語を結合させた場合,上記のとおり,「ワンショット」も「コース」もスポーツに関連があり,特に,「ワンショット」のテニス,ゴルフ等の球技における打撃又は射撃の印象と,「コース」のスポーツの競技における進路,順序,過程等の印象とは親近性が高いものであるため,「コース」の語は,「ワンショット」の語を受けて,一まとまりの「ワンショットのコース」として,球技,射撃等のスポーツに関連する進路,順序,過程等の観念を生じ,又は,そのようなことを連想させるものというべきである。
そして,上記のとおり,本件商標は,外観,称呼において一体的に観察されることも考慮すると,「ワンショットコース」の語に接した取引者,需要者は,これを一まとまりの「ワンショットコース」という語句として把握するのが通常であると認められる。
ウ引用商標は,「ワンショット手数料」の文字を標準文字で書してなるものであり,「ワンショット」と「手数料」の語からなる結合語である。引用商標は,「ワンショット」が片仮名文字,「手数料」が漢字であって,明らかに外観上区分されている。引用商標から生ずる称呼は,「ワンショットテスウリョウ」とやや冗長であり,しかも,前半は英語の表現であるのに対して,後半は日本語の表現であって,よどみなく一連に称呼し得るものとはいい難い。「手数料」の文字部分は,周知の普通名詞であり,役務の提供に関する手数料を表すものと容易に理解されるから,「ワンショット手数料」との標章は,「ワンショットの手数料」という観念を生ずる。
以上のとおり,いずれも普通名詞である「ワンショット」の語と「手数料」の語を結合させた場合,両者は,相互に関連付けるような要素がないから,「ワンショット」の観念を有する語と,「手数料」の観念を有する語とが,単に結合されたというのみであり,一つのまとまった語句として把握することは,困難である。そして,上記のとおり,本件商標は,外観,称呼において必ずしも一体的に観察されるものでないことをも併せ考慮すると,「ワンショット手数料」の語に接した取引者,需要者は,「ワンショット手数料」と把握するほか,これを「ワンショット」として把握することがあり得るものである。
エ以上のとおり,本件商標は,「ワンショット手数料」又は「ワンショット」として把握されるのに対し,引用商標は,一つのまとまった「ワンショットコース」という語句として把握されるから,外観,称呼,観念の全体的観察において非類似であると認められるので,さらに,取引の実情により誤認混同のおそれがあるといった格別の事情のない限り,本件商標と引用商標とは,非類似であるということができる。
( ) 取引の実情2ア原告は,引用商標を用いて取引者,需要者に提供する原告の株式売買委託手数料体系と,本件商標を用いて取引者,需要者に提供する被告の株式売買委託手数料体系とが類似しているという取引の実情があるから,本件商標と引用商標は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある旨主張する。
イ証拠(各項目ごとに括弧内に摘示する。)によれば,本件商標の登録出願時である平成16年12月9日から登録査定時と推定される平成17年6月ころまでの取引の実情について,次の事実が認められる。
(ア) 原告及び被告は,いずれも,インターネット専業証券会社,すなわち,インターネットを利用した有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等を専業で行う証券会社として大手の会社であり,相互にサービスレベルを競争してしのぎを削っていた(甲18,32,33,34,38)。
(イ) 上記証券会社における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等は,インターネットを利用した有価証券市場において,全国規模で行われており,平成17年3月時点のインターネット取引の口座数は約694万口座であり,インターネットを経由した株式現金取引及び信用取引の売買代金は,約15兆0970億円(月間)という巨額なものであり,上記売買は,株式取引を専門的に行う取引者のみならず中高年齢者を含めた幅広い年代の一般消費者にまで浸透している状況にある(甲43,49,50,弁論の全趣旨)。
(ウ) 原告は,平成14年11月20日,原告のウエブサイトのプレスリリースのページに,「『ワンショット手数料』&出合注文を3週間に延長〜複数日にわたる内出来約定も一つの注文として手数料計算〜」との見出しの下に,「カブドットコム証券株式会社は,複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算する独自の手数料計算方式を『ワンショット手数料』という名称で提供することとしました。」,「ワンショット手数料とは?複数単元の注文を発注し,その約定が複数日にまたがる内出来での約定となる場合,他の証券会社では,各々の日付ごとに単独の注文・約定として手数料が必要となり,予期せぬ割高な手数料となるケースがあります。しかし,カブドットコム証券のワンショット手数料では,初めに複数単元で発注した一つの注文として手数料を計算しますので,約定が複数日にまたがった内出来となっても手数料が変わりません。」,「ワンショット手数料の意義他の証券会社のように,約定が複数日にまたがってしまうと予期せぬ割高な手数料となってしまう計算方法では,安心してまとまった単位での発注ができません。弊社のリスク管理追求型信用取引の『ワンウェイ手数料』における『発注時にコストが確定していないのはリスクである』という発想と同様に,まとまった単位での注文や流動性の低い銘柄への複数単位での発注が,複数日にまたがって約定してしまい手数料が割高となるのも同じリスクであるとカブドットコム証券は考えました。手数料体系も他証券と比べ高額でのお取引における手数料が特に割安ですので,まとまった単位でのご注文がさらに有利になります。」などという記載をし,その後も,同旨の記載を継続した。ちなみに,平成16年12月1日から同月31日までに原告の上記ウェブサイトのホームページの手数料に係るページに対するアクセス件数は5万6780件,平成17年7月1日から同月31日までの同ページへのアクセス件数は7万0150件であった。(甲14,40,弁論の全趣旨)。
(エ) 平成15年1月11日東洋経済新報社発行「週刊東洋経済」迎春特大号には,原告に関する特集記事が組まれており,「現物取引での『ワンショット手数料』も同様に,コストにおけるリスクを抑えた画期的な手数料体系です。」などといった記載がされていた(甲42の1)。
(オ) 原告は,平成16年4月13日付け日経金融新聞に,「カブドットコム証券」,「kabu・com」の標章を付し,原告の提供している現物株式取引,信用取引等の委託についての宣伝広告をしたが,そこには,「【リスク管理】をとことん追求して,手数料を引き下げます!」との見出しの下に,「【リスク管理追求型】の新手数料体系(消費税込みの手数料です。)」として価格表が示され,その下に,「しかも,カブドットコム証券独自の,ワンショット手数料での計算だから,約定が複数日にまたがる内出来でも,手数料は最初の一回のみ!まとまった単位のご注文時も安心。」などといった記載がされていた(甲16)。
(カ) 原告は,遅くとも平成16年9月17日までに,「カブドットコム証券」,「kabu・com」の標章を付し,原告の提供している現物株式取引,信用取引等の委託についてのパンフレットを頒布したが,そこには,「手数料体系低コストかつリスク管理に優れた手数料体系!」との見出しの下に,「株取引をもっと身近なものにしたいから。手数料は国内最低水準を実現。ワンショット手数料で,出合注文もさらにおトク。ここまでできて,この手数料!お取引いただくほどに,カブドットコム証券ならではのリーズナブルさをご実感いただけることでしょう。」,「ワンショット手数料カブドットコム証券では,出合注文(最長3週間有効)の手数料について,他社にはないユニークな計算方法を採用しています。その名も『ワンショット手数料』。複数単位の注文を発注し,その約定が複数日にまたがる内出来での約定となった場合でも,手数料は最初の注文1回分のみ!・・・割安に見せることより,余計なリスクをお客様におかけしないことを優先したワンショット手数料なら,長期にわたる出合い注文も安心してじっくりとお取引いただけます。」などといった記載がされていた(甲15,弁論の全趣旨)。
(キ) 原告は,平成15年1月28日以降平成17年6月ころまでの間に,日本経済新聞,産経スポーツ,日刊スポーツ,スポーツニッポンなどといった新聞,並びに,日経ホーム出版社発行「日経マネー」,リクルート社発行「あるじゃん」,ダイヤモンド社発行「週刊ダイヤモンド」,東洋経済新報社発行「週刊東洋経済」,同「オール投資」などの雑誌に,「カブドットコム証券」,「kabu・com」の標章を付し,原告の提供している現物株式取引,信用取引等の委託についての広告を掲載して,原告の上記役務について宣伝広告をし,そこにおいて,原告の手数料計算の一つとして,「ワンショット手数料」が紹介されていた(甲17,甲41の1ないし13,甲42の1ないし14)。
(ク) 日興ビーンズ証券株式会社(以下「日興ビーンズ証券」という。)は,平成16年7月2日,報道関係者に対して,「投資スタイルに応じた選択制の手数料体系導入について」と題する書面を頒布したが,そこには,「日興ビーンズ証券株式会社・・・は,従来の定額制の手数料体系(「1dayパスポート」)に加え,新たに1約定毎の手数料体系(「1ショット」)を導入することといたしましたので,お知らせします。このことにより,お客様はご自身の投資スタイルにあわせ,『定額制の手数料体系(1dayパスポート)』と,今回導入する『約定毎の手数料体系(1ショット)』の2タイプの手数料コースから,お好きなコースをお選びいただくことが可能となります。」等の記載があった。
また,平成16年7月19日発行「日経パソコン」には,「あなたに合ったネット証券を探そう」との見出しで,証券会社5社が紹介されており,日興ビーンズ証券について,「7月12日から,売買代金の0.157%を手数料とする『1ショット』コースを開始(最低手数料は1575円)。定額制のコースもあるが,1日に何度も売買しないのであれば,『1ショット』コースがお得だ。」等の記載があり,マネックス証券株式会社と日興ビーンズ証券との経営統合により設立されたマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社もこれを踏襲していたが,その後,原告から,「1ショット」の使用中止及び名称の変更の申入れを受け,これに応じて,平成17年8月4日,「1ショット」を「取引毎手数料」に名称変更した。(甲21,22,33)(ケ) 被告は,平成16年12月9日,「ワンショット」の文字を標準文字により書してなり,指定役務を本件指定役務同一の役務とする商標,及び,「ワンショットコース」の文字からなる本件商標を登録出願した。
このうち,前者の「ワンショット」の文字からなる商標は,平成17年5月12日,本件の引用商標と同一又は類似であって,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから,商標法4条1項11号に該当するとして,拒絶理由通知を受け,これに対して,被告は,意見書を提出せず,拒絶査定が確定したが,本件商標の方は,商標登録の査定がされ,平成17年7月1日,設定登録された。(前記第2の1の事実,甲25,26)ウ上記認定の事実によれば,原告は,その株式売買委託における手数料体系について,複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算するという手数料体系を採用し,これを「ワンショット手数料」と名付け,原告のウェブサイトに掲載し,多数の新聞,雑誌における原告の株式売買委託等の宣伝広告の中で,「ワンショット手数料」についての記載をし続けた結果,「ワンショット手数料」の語句は,後記2( )のとおり,商標とし3ての使用ではなかったが,原告の株式売買委託における,複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算するという手数料体系として,遅くとも,本件商標の登録査定時である平成17年6月ころの時点で,取引者,需要者間において広く知られるに至ったことが認められる。
そうすると,取引の実情において,引用商標に接した取引者,需要者は,「ワンショット手数料」の語句から,原告の株式売買委託における上記手数料体系の観念を生ずるのに対し,本件商標に接した取引者,需要者は,「ワンショットコース」の語句から,球技等のスポーツに関連する観念を生じさせ,又は,そのようなことを連想させるものであるから,平成17年6月ころの時点で,引用商標と本件商標とは,観念において相違し,役務の出所について誤認混同を生ずるおそれはないものというべきである。
エ原告は,本件商標は本件指定役務に関する被告の料金体系を表すものであり,引用商標はその指定役務に関する原告の料金体系を表すものであり,また,本件商標と引用商標の「コース」及び「手数料」の語が,役務に対する料金体系を意味することからすれば,本件商標と引用商標とは,いずれも,取引者,需要者に,「ワンショット」という名称の料金体系との観念を生じさせるものであるから,本件商標と引用商標とは観念において類似する旨主張する。
しかし,上記イの認定事実に照らすと,「ワンショット手数料」の語句が,複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算するという手数料体系を表象するものとして周知となったところ,その手数料体系によってされる株式売買委託が特に原告の役務であったことから,間接的に原告の出所を表象することにもなったものと認めるべきである。このことに,後記2( )のとおり,原告がその役務について商標として引用商標を使用3していなかったこと,上記のとおり,日興ビーンズ証券ないしマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社が,平成16年7月2日から平成17年8月4日まで,同社の約定ごとの手数料体系を「1ショット」と名付けて,株式売買委託の宣伝広告をしていたこと,前記( )イのとおり,1「ワンショット」,「1ショット」が普通名詞であることをも考慮すると,「ワンショット手数料」の語句は,その全体が一体不可分のものとして,原告の株式売買委託における手数料体系として周知となったのであって,「ワンショット」の文字部分のみでは,原告の株式売買委託における手数料体系を想起させるものということはできず,「ワンショット」の文字部分が原告の役務を表彰するものとしてが周知となったとはいえない。
したがって,引用商標が取引者,需要者に「ワンショット」という名称の原告の料金体系の観念を生じさせるものであることを前提とする原告の上記主張は,採用することができない。
オ原告は,本件商標を有価証券市場における有価証券の売買取引の委託の取次ぎ等に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,通常,「コース」の文字部分を当該役務の料金体系を意味する普通名詞として認識し,「ワンショット」の文字部分を自他商品の識別機能を果たすものとして認識するから,本件商標において自他商品の識別機能を果たす要部は,「ワンショット」の文字部分である旨主張する。
証拠(甲5ないし12)によれば,株式会社東京三菱銀行においては,投資信託と定期預金とを併せ,そのうち投資信託の占める割合ごとに「投資信託30コース」「投資信託50コース」,「投資信託70コース」に区分していること,大和証券株式会社においては,担当者によるサービスの内容ごとに,「『ダイワ・コンサルティング』コース」,「『ダイワ・ダイレクト』コース」に区分していること,オリックス証券株式会社,岩井証券株式会社,コスモ証券株式会社,日本協栄証券株式会社,株式会社新生銀行においては,株式手数料の内容ごとに,それぞれ,「1日定額コース」と「約定ごとコース」,「アクティブコース」と「スタンダードコース」,「マンスリーコース(1ヶ月定額制)」と「デイコース(1日定額制)」,「1取引一律コース」と「デイパックコース」,「基本コース」と「1日定額コース」に区分していること,エイチ・エス証券株式会社においては,株式投資の初心者か経験者かによって手数料・費用を変えて,「一般コース」、「ハイパーアクティブコース(一日定額コース)」に区分していることが認められる。
上記認定の事実によれば,本件指定役務と同一又は類似の役務を取り扱う証券業界においては,主として,提供する役務に関する料金体系によってコースを区分していること,その記載の仕方からして,「〜コース」という語句全体をもって,提供する役務に関する料金体系の名称を示していることが認められるが,逆に,本件全証拠を検討しても,同業界において、
上記のような「コース」を含む文字で構成された料金体系の名称につき,「コース」の文字部分を省略して略称する取引の実情にあることを認めるに足りない。
したがって,原告の上記各主張は,いずれも,採用の限りでない。
カ原告は,被告が「いちにち定額」を商標登録し,そのホームページのトップページにおいて「いちにち定額コース」と「ワンショットコース」を並べて表示しているが,本件指定役務と同一又は類似の役務を取り扱う証券業界において「コース」を省略して「いちにち定額」,「ワンショット」と略称する取引の実情にあることを考慮すると,「コース」を省略して「ワンショット」と略称される本件商標と,「ワンショット」の文字部分が要部である引用商標とは,外観,称呼及び観念において同一であるから,誤認混同を生ずるおそれがある旨主張する。
証拠(甲13,乙19)によれば,被告(旧商号・ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券株式会社)は,「いちにち定額」の文字を標準文字で書してなり,指定役務を本件指定役務と類似の役務とする商標について,平成13年12月3日に登録出願し,平成14年11月22日に商標登録を受けたこと,本件商標の登録査定後ではあるが,平成17年9月21日付けの被告のホームページのトップページには,「10月からの史上最大の作戦!国内株式の新手数料発表」という見出しの下に,「10月からの新手数料『ワンショットコース』」,「10月からの新手数料」欄に,「NEWワンショットコース1回ごとのお取引に適用される国内株式の手数料コースです。」,「今回の手数料改定のポイント」欄に「従来の『ひとつき割引コース』を『ワンショットコース』に改称し,手数料を大幅に値下げ!」,「タイプ別手数料コース選択ガイド」欄に,「NEWワンショットコースvsいちにち定額コース国内株式取引・・・」との記載があり,以下,「いちにち定額コース」と「ワンショットコース」の手数料の対比をしていることが認められる。
被告のホームページの上記記載によると,「いちにち定額コース」及び「ワンショットコース」は,被告の手数料体系を説明するものとして記載されており,商標として使用しているものではない(後記2( )参照)。
2このように「いちにち定額コース」の記載が商標としての使用ではないから,被告の有する登録商標「いちにち定額」を使用したわけではなく,その他,本件指定役務と同一又は類似の役務を取り扱う証券業界において,「コース」を省略して「いちにち定額」,「ワンショット」と略称する取引の実情にあることを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は,その前提において失当である。
( ) 以上を総合すると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念の全体的3観察において非類似であり,取引の実情においては,「ワンショット手数料」の語句全体で,複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算するという手数料体系を表象し,その体系が原告の業務に係る株式売買委託に関するものであるため,間接的に原告の出所を表象しているにすぎないから,「ワンショット」の文字部分が共通しているという理由で,誤認混同を生ずるおそれがあるということはできず,結局,取引の実情を考慮しても,役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれはないものというべきである。
( ) したがって,本件商標が商標法4条1項11号に違反して登録されたもの4ではないとした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は,採用することができない。
2取消事由2(商標法4条1項10号該当性判断の誤り)について( ) 審決は,「『ワンショット手数料』の文字は,請求人の手数料の料金体系1を端的に表現したものであろうと理解するに止まるものというべきである。
請求人の提出に係る証拠には,これら以外に請求人が『ワンショット手数料』の文字を使用している事実を示すものはない。」(審決謄本17頁第3ないし第4段落)と認定した上,「請求人の提出したこれらの証拠によっては,本件商標の登録出願時あるいは登録査定時において,『ワンショット手数料』の文字からなる商標が請求人の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。」(同頁第5段落)と判断したのに対して,原告は,これを誤りであるとして争っている。
( ) 商標法2条1項2号にいう「商標」は,「業として役務を提供し,又は証2明する者がその役務について使用をするもの」であると規定されているが,ここに「役務」とは,商取引の目的となり得る労務又は便益であって,その労務又は便益が,標章を付されることによって,出所表示機能,品質保証機能,広告機能を果たすものである。
そして,同条3項は,「その役務について使用」する場合として,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為」(3号),「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(4号),「役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」(5号),「役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為」(6号),「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(8号)を挙げている。したがって,標章は,上記態様により「役務について使用」されて,初めて商標として使用されることになるものと解すべきである。
( ) これを本件についてみると,前記1( )イ(ウ)ないし(キ)のホームページの3 2記載,新聞雑誌への宣伝広告等によると,これらは,いずれも,原告の提供している現物株式取引,信用取引,先物取引等の売買委託という役務に関する宣伝広告であり,商標法2条3項8号の「役務に関する広告,価格表」に該当するものと認められるが,この「役務に関する広告,価格表」に使用されている標章は,「kabu・com」,「カブドットコム証券」であって,「ワンショット手数料」ではなく,「ワンショット手数料」は,宣伝広告の文章の中で,複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算するという原告独自の手数料体系の説明として記載されているのみである。
以上によると,ホームページの記載,新聞雑誌への宣伝広告等における「ワンショット手数料」の記載は,いずれも,商標法2条3項所定の商標の使用に該当するものとはいえないから,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,引用商標が,原告の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
( ) したがって,「ワンショット手数料」の文字は,取引者,需要者において,4原告の手数料体系を端的に表現したものであろうと理解するにとどまるとした上,「請求人の提出したこれらの証拠によっては,本件商標の登録出願時あるいは登録査定時において,『ワンショット手数料』の文字からなる商標が請求人の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。」とした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は,採用することができない。
3取消事由3(商標法4条1項19号該当性判断の誤り)について( ) 審決は,「本件商標は,引用商標に化体した請求人の業務上の信用にフリ1ーライドし不正に使用する商標ではなく,さらに,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とも認められない。」(審決謄本17頁下から第2段落)と判断したのに対し,原告は,これを誤りであるとして争っている。
( ) しかし,本件商標と引用商標とが類似するものでないことは,前記1( ) 2 1のとおりであり,また,前記2( )のとおり,本件商標の登録出願時ないし 3登録査定時において,引用商標が,原告の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていたとはいえないから,商標法4条1項19号の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標」の要件を欠くことが明らかであり,これと同旨の審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は,採用の限りではない。
4以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
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