審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成15行ヒ265 | 判例 | 商標 |
昭和55行ツ30審決取消 | 判例 | 商標 |
平成14受1100損害賠償,商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成4行ツ125 | 判例 | 商標 |
平成3行ツ103審決取消 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 指定商品 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 著名商標 / 除斥期間 / 無効審判 / |
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事件 |
昭和
57年
(行ツ)
99号
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 最高裁判所第一小法廷 |
判決言渡日 | 1983/02/17 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
上告代理人井出正敏、同吉原省三、同杉山泰三の上告理由第一点及び第二点について一原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。 1被上告人は、昭和三三年九月二〇日、指定商品を旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)15条所定の第八類「利器及尖刃器」とし、原判決別紙第一の「盛光」と縦書きしてなる本件商標について登録出願をし、昭和四五年一二月一八日設定の登録がされた。 2上告人は、昭和四八年一一月八日、被上告人に対し、本件商標について、商標登録無効の審判を請求し、無効理由として、(1)本件商標は、上告人が従前からその業務に係る金切鋏等に使用する商標として需要者間に広く認識されている「盛 光 」 及 び 「 盛 光 」(以下「上告人各商標」という。)と同一又は類似の商標であつて、同一又は類似の商品に使用するものであるから、現行の商標法(昭和三四年法律第一二七号。以下「新法」という。)4条1項10号の規定に違反して登録されたものである、(2)上告人各商標は、昭和三三年九月二〇日当時、刃物工業界において著名商標となつていたものであり、したがつて、本件商標の登録は、上告人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、新法4条1項15号の規定に違反している、と主張した。 3上告人は、昭和四九年九月二四日、審判請求理由補充書をもつて、前記無効理由の主張を維持、ふえんするとともに、その証拠方法の欄において、その15に、甲第一五号証の一及び二として、原判決別紙第二の商標登録第五三七四一二号商標(以下「引用登録商標」という。)の商標登録原簿謄本及び同商標公報なる標目を掲げたが、現実に右甲第一五号証の一、二として引用登録商標の商標登録原簿謄本及び同商標公報を提出したのは、同年一二月二三日受付の物件提出書によつてであつた。そして、昭和五三年九月二九日提出の審判請求理由補充書により、初めて、本件商標の商標登録の無効理由として、引用登録商標を引用し、本件商標が新法4条1項11号の規定に違反して登録されたものである旨の主張をした。 4特許庁は、上告人の前記無効審判請求に対し、前記2記載の主張についてのみ判断を示し、3記載の主張については、審決の理由中に明示的な記載をしないまま、審判の請求は成り立たない旨の審決をした。 二上告人は、本訴請求において、右審決が前記一、3記載の主張につき全く判断を示していないのは違法に判断を遺脱したものというべきであるから、右審決は取り消さるべきである旨主張するものであるところ、原審は、上告人が本件商標登録の無効理由として新法4条1項11号の規定に該当する事実を追加主張したのは、昭和五三年九月二九日であり、同法47条の除斥期間経過後であるから、右無効理由の追加主張は不適法であり許されず、本件審決は、右不適法な請求の追加的変更をしりぞける趣旨の判断をも包含するものと解すべきであるとし、結局、上告人の右主張を排斥した。 三前記の事実関係によれば、本件商標について、商標登録出願がされたのは旧商標法(大正一〇年法律第九九号。以下「旧法」という。)施行当時であり、その後商標権の設定の登録がされるまでの間に新法が施行されたのであるが、本件出願は、商標法施行法7条1項の規定に基づき、なお従前の例によるものとされ、旧法によつて登録されたものであるところ、同施行法10条1項は、同法7条1項の規定により従前の例によりした商標登録についての無効審判においては、無効理由に関する旧法16条1項の規定は、新法の施行後も、 なおその効力を有し、同項に規定する場合に限り、その商標登録を無効にすることができる旨規定し、また、同施行法10条3項は、同条一項に規定する商標登録については、無効審判請求の除斥期間に関する旧法23条の規定は新法の施行後もなおその効力を有する旨規定している。そうすると、本件無効審判においては、無効理由及び除斥期間については、旧法の規定に基づいて判断されなければならない筋合であるが、原審はこれを看過し、新法の規定に基づき判断をした誤りがあるといわなければならない。 ところで、旧法16条1項及び新法46条は、それぞれ商標登録の無効理由を列挙して定め、また、旧法24条が準用する旧特許法(大正一〇年法律第九六号)117条及び新法56条が準用する現行の特許法(昭和三四年法律第一二一号)一六七条は、いずれも無効の請求を排斥した確定審決の登録があつたときは、同一事実、同一証拠に基づいて無効審判を請新法と旧法のい 求することができない旨を定めているのであつて、これらの規定によれば、 ずれに基づく商標登録の無効審判請求であつても、各無効理由ごとに一個の請求があるものと解すべきであり、無効審判請求後に新たな無効理由を追加主張することは、新たな無効審判の請求の追加をすることになるものと解するのが相当である。したがつて、新法、旧法のいずれにおいても、除斥期間経過後は、無効審判手続において新たな無効理由を追加主張す本件の場合、前記の事実関係によれば、 ることは許されないものといわなければならない。 上告人が本件無効審判において、当初、新法46条1項に基づく同法4条1項10号、一五号所定の無効理由があると主張していたのは、旧法16条1項に基づく同法2条1項8号、 一一号所定の無効理由を主張していたものと解することができ、また、新法4条1項11号所定の無効理由の追加主張は、旧法2条1項9号所定の無効理由の追加主張と解することができるのであり、右追加主張された無効理由に基づく無効審判請求の除斥期間は、新法47条、旧法23条によると、いずれも登録の日から五年であることに変わりはないから、上告人が昭和五三年九月二九日にした右追加主張は、新法と旧法のいずれの規定によつても除斥期間経過後にされた不適法なものというべきである(なお、右追加主張は除斥期間経過後にされたものとした原審の判断は正当である。)。してみれば、原判決には、本件に旧法ではなく新法を適用して判断をした誤りがあるが、結局、上告人のした無効理由の追加主張が不適法なものであることに変わりはないから、これを不適法として排斥した原審の判断は、結論において正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案叉は趣旨を異にし、 本件に適切でない。論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響しない事項を論難するか、又は独自の見解に立つて原判決の不当をいうことに帰し、採用することができない。 同第三点について本件審決にこれを取り消すべき手続ないし判断脱漏の違法があるとはいえないとした原審の判断は、その説示は照らし、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。 よつて、行政事件訴訟法7条、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中村治朗 |
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裁判官 | 団藤重光 |
裁判官 | 藤崎萬里 |
裁判官 | 谷口正孝 |
裁判官 | 和田誠一 |