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関連審決 取消2005-30642
関連ワード 役務の提供 /  識別機能 /  指定商品 /  指定役務 /  著名商標 /  通常使用権 /  専用使用権 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10358号 審決取消請求事件
原告イングリッシュタウン インコーポレイテッド
訴訟代理人弁護士武藤佳昭
同斎藤三義
同達野大輔
同中陳道夫
同弁理士谷口登
被告エイゴタウン・ドット・コム 株式会社
訴訟代理人弁護士加藤義明
同三留和剛
同木村育代
同山崎和香子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/03/26
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1原告(1) 特許庁が取消2005-30642号事件について平成18年3月23日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2被告主文第1,2項と同旨第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,登録第4420958号商標(以下「本件商標」という )の商標。
権者である。本件商標は 「EIGOTOWN (標準文字)を横書に表記し ,」たものであり,平成11年10月1日に登録出願され,商標法施行令1条別表の第9類(以下,単に「第9類」などという「レコード,メトロノーム, 。)映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品 ,第16類「教育用書籍,その他の教育用印刷物,その他の印刷物 , 」 」第35類「電子計算機端末による通信・テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等を利用した教育用書籍・その他の教材・その他の商品の販売に関する情報の提供,電子計算機端末による通信を利用した教育用書籍・その他の教材・その他の商品に関する広告,その他の広告」及び第41類「電子計算機端末による通信を利用した語学の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,電子計算機端末による通信・テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等を利用した研究用教材に関する情報の提供及びその仲介」を指定商品及び指定役務として,同12年9月29日に設定登録された。
被告は,本件商標について,その商標登録を取り消すことについて審判を請求し,平成17年6月20日,同審判請求の登録がされた(以下,この登録を「本件審判請求登録」という。。)として審理し, 特許庁は,上記審判請求を取消2005-30642号事件「登録第4420958号商標の商標登録は取り消 平成18年3月23日にす 」との審決をし,その謄本は同年4月4日に原告に送達された。 。
2審決の概要審決の内容は,別紙審決書写しのとおりである。その概要は,原告(被請求人)は,原告の開設するウェブサイトのトップページに本件商標を表示し,同トップページは平成17年5月20日以降閲覧可能な状態にあったから,本件審判請求登録前に本件商標を使用していたと主張するが,原告が審判手続において提出した証拠(審判における乙1ないし乙5。本件訴訟における甲6ないし甲10)によっては,本件商標を本件審判請求登録前に上記ウェブサイトにおいて使用していたものとは認めることができないから,結局,本件商標は,本件審判請求登録前3年以内に商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が取消請求に係る指定商品又は指定役務について使用したことの証明がないことに帰する,というものである。
第3審決の取消事由に係る原告の主張以下のとおり,原告は,本件商標について,本件審判請求登録前3年以内である平成17年5月20日以降,少なくとも指定役務中の第41類「電子計算機端末による通信を利用した語学の教授」につき,商標法2条3項7号に掲げられた商標の使用をしていたが,その事実がないと認定判断した審決には,誤りがある。
1 原告ウェブサイトにおける表示態様について,( )。 (1) 原告は ウェブサイト http://www.englishtown.co.jp を開設しているそのトップページ(以下「原告トップページ」という )には,当該ペー。
ジの左上部に,左から順に,青色の吹出し形状の図形と,その右側のオレンジ色の「town.com」の欧文字が表示されている。当該青色の吹出し形状の図形は,ポップアップ機能を有し,同図形の中には「eigo」の欧文字と「english」の欧文字とが,数秒間隔で,交互に切り替わる態様で表示されている(甲6。以下,当該表示を「本件吹出し切替画像」という。本件吹出し切替画像は,アニメーションGIFと呼ばれる形式で作 。)成された画像であるが,これはコンピュータの画面上においていくつかの異なる静止画面を連続して表示することによって,あたかも画像が動いているかのように風のアニメーション風の画像を表示できるものである。
(2) 上記の「eigotown.com」のうち 「.com」の部分は,イ ,ンターネット関連のビジネスを取り扱う企業,あるいはそのような印象を与(),, える内容を示すものとして多く使用されている語 甲7 であり 自他商品,「」 役務の識別機能を有する部分ではないことに照らすとeigotownの部分が,識別機能を有する独立した部分であるということができる。原告(イングリッシュタウン・インコーポレイテッド)は,1997年に設立され,米国を本拠として,オンライン英語学習サービスを国際的に展開する世界最大の英会話スクールであり,日本においては,ソフトバンク・グループとの共同出資により,イングリッシュタウン株式会社を2000年5月に設立し,インターネットの最新のテクノロジーを駆使した総合英語学習サービスを展開している。したがって 「ENGLISHTOWN(イングリッ ,シュタウン 」は,日本において既に原告の経営に係る英会話スクールを表 )すものとして著名商標になっている。そして,原告トップページをはじめ,各ウェブページに「Englishtown, Englishtown.com and Eigotown are trademarks owned by Englishtown, Inc.」と表示されていることから,需要者が「eigotown.com」の欧文字を見た場合,著名商標「ENGLISHTOWN」の「ENGLISH」の部分を日本語に置き換えてローマ字で表した登録商標「eigotown」を表示していると容易に理解し,かかる部分を独立して認識するものと考えられる。
上記によれば,原告が原告トップページ上の本件吹出し切替画像において使用した「eigotown.com」の表示は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(3)原告トップページには 「学習プラン「ライブ英会話「自己学習教 ,」,」,材「品質保証」及び「無料でトライ」のカテゴリーに分かれた案内が表 」,示され,各カテゴリー部分の図形をクリックした場合に表示されるページには,英会話を習得するために必要な学習内容及び原告の提供する英会話レッスン並びに学習教材の内容等に関する情報が記載されている。そして,閲覧者が,各カテゴリの右上に表示された「会員登録」の文字が表示されたボタンをクリックすると,会員登録に関する画面が表示され,会員登録がされた場合には,ユーザーはオンラインで英会話レッスンを受講し,また学習教材を購入することも可能となる。これらの事実からすれば,原告は,少なくとも本件商標の指定役務中の第41類「電子計算機端末による通信を利用した語学の教授」に関する役務を行っていたものであり,これは「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法2条3項7項)であるから,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を右役務について使用していたといえる。
2 本件吹出し切替画像の使用の有無及び時期について以下のとおりの事実経緯によれば,原告トップページ上の本件吹出し切替画像は,平成17年5月20日以降,閲覧可能な状態にあったことが明らかである。
(1)原告関係者の陳述書及び電子メール等の資料ア原告トップページに本件吹出し切替画像を表示することを発案したのは,原告代表者のフィッシャーである。そして,原告の香港における原告の子会社イングリッシュタウン香港の従業員カルビン・ホーが,本件吹出し切替画像を作成した。本件吹出し切替画像は,フィッシャーにより承認され,平成17年5月20日(日本時間 ,原告の日本における子会社で )あるイングリッシュタウン株式会社(以下「日本子会社」という )の代。
表取締役大前エニオに電子メールで転送された。同電子メールを受け取った大前は,同日,直ちに本件画像を原告のウェブサイトに掲載することを提案し,同時に,原告の従業員で,原告のウェブサイトの維持管理を担当している武部祥子に,本件画像について協議するための電子メールを送付した。武部は,大前からの指示に基づき,同日,直ちに本件吹出し切替画像を原告トップページにおいて表示するために必要な作業を行い,これを完成させた。その後,武部は,大前に対し,作業完了を電子メールで報告した。これらの経緯及び電子メールの送受信があったことは,甲16ないし18(陳述書及びこれらの添付資料)により明らかである。
イこれに対して,被告は,甲16ないし18号証の陳述書に添付資料して添付した電子メール記録につき,電子メールの受信と送信の時系列が前後する矛盾があると主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。そもそも電子メールを受信した場合に,当該メールの送受信日時として受信者の時間帯(タイムゾーン)に基づく時刻が表示されるか,発信者の時間帯に基づく時刻が, 。 表示されるかは 受信者のメールソフトの種類及びその設定により異なるしたがって,メールを受信した者が,受信メール(旧メール)の文書を存置したまま新たに文章を作成して返信ないし転送メール(新メール)を発信した場合,旧メールの送受信日時として記載されている部分が旧メールの受信者の時間帯に基づく表示となるか発信者の時間帯に基づく表示になるかは,旧メールの受信者のメールソフトの種類,設定により異なる。フィッシャーの使用するメールソフトは,受信メールの送受信日時として,当該メールの送信者の時間帯に基づく日時が記載される設定となっているから,甲16ないし18の陳述書添付資料の電子メール記録に被告の指摘するような矛盾はない。
(2) ウェイバックマシンにおける原告ウェブサイトの保存アインターネット・アーカイブ(http://www.archive.org)は,ウェブサイト及びマルチメディア資料のアーカイブ(保存)を行っている民間団体, 「」 であるが 同団体の運営するサイトの一つとして ウェイバック・マシンがある。このサイト(http://www.archive.org/web/web.php)は,その性質上日々絶え間なく変化するインターネットのウェブサイト上のデータを,1996年以降,コンピュータプログラムを使用して自動的に,かつ定期的に保存し,時系列にしたがってデータベースとして蓄積させることにより,特定のウェブサイトが過去の一時点に,どのような内容であったかを後に遡って見ることができるというサービスを提供している。ウェイバック・マシンといえどもインターネット上のすべてのページを保存しているわけではなく,またウェブサイト内のデータの一部は保存されていない場合もあるが,第三者機関の収集している電子データとして,その正確性,信頼性は相当程度に高い。
イウェイバック・マシンには 原告のウェブサイト www.englishtown.co. ,(jp)のデータも収集,保管されている。現在,ウェイバック・マシンのサイトには,平成18年5月19日までの原告のウェブサイトの過去データが公開されている(甲20 。そして,右リストのうち 「May 22, 2005」 ) ,と表示された部分をクリックすると,画面が切り替わり,平成17年5月22日に保存された原告のウェブサイトのデータを見ることができ,これによれば 当該画面の左上には 本件吹出し切替画像が表示されている 甲 ,, (21 。したがって,原告が平成17年5月20日に原告トップページ上 )に本件吹出し切替画像を掲載し,これが誰にでも閲覧可能な状態になっていたことが明らかである。
ウこれに対して,被告は,ウェイバック・マシンが,その日付どおりの過去のウェブサイトの内容を正確に表示するものではないと主張し,その根拠として 「NIKKEI NET」の複数の異なる日(2006年4月 ,7日,10日,11日及び14日付け)のウェブサイトであるにもかかわらず,ウェイバック・マシン上には同一の画像が表示される例を挙げている。しかし,ウェイバック・マシンにおいて正確な記録ができていない場合があったとしても,ウェイバック・マシンの保存するデータの信頼性が失われるものではなく,原告トップページに本件吹出し切替画像が表示されていた事実が揺らぐものではない。
第4 被告の反論以下のとおり,原告トップページ上の本件吹出し切替画像が平成17年5月, 。 20日に表示されていたとの事実は 原告提出の証拠によっては認められない1 原告ウェブサイトにおける表示態様について争う。甲10に「etown.gif」の画像ファイルの更新日時が「2005年5月20日」と示されているからといって,この日にデータの更新がされたことを客観的に証明するものとはいえない。
2 本件吹出し切替画像の使用の有無及び時期について(1) 原告関係者の陳述書及び電子メール等の資料原告は,甲16ないし18の陳述書及び電子メールの作成日等から,平成17年5月20日に原告トップページにおいて本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態となっていたと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
ア電子メール作成日は,作成者が使用するコンピュータで設定した日時に依存して記録されるものであり,容易に改ざんすることができ,また,送受信が完了した電子メールの内容を改ざんすることも容易である。したがって,電子メールの作成日等の記載は,本件吹出し切替画像が平成17年5月20日に原告トップページにおいて閲覧可能な状態であったことを証明する客観的な証拠にはならない。
大前,武部及びフィッシャーの陳述書(甲16ないし18)も,これらの者は,第三者ではなく,原告の代表者ないしその子会社の関係者である点でそもそもその供述内容については信用性が低い上,陳述書の内容も,他の者の陳述書の内容を事前に確認した上で作成されたものであって,証拠価値の乏しいものである。
イ本件吹出し切替画像を掲載するに至った経緯には,以下のとおり不自然な点が存在する。まず,フィッシャーが発案し,カルビン・ホーが画像が作成したとするが,フィッシャーもホーも日本人でないにもかかわらず,「English」の日本語訳である「英語」をローマ字表記した「Eigo」というロゴを発案することは不自然である。また,原告は 「En,」 , glishtown という名称で世界的に事業展開していたものであり「 」 原告トップページの左上の人目をひく部分には Englishtownのロゴが掲載されており,原告を示す表示として広く知られるに至っていたにもかかわらず,これを「Eigotown」のロゴを含む本件吹出し切替画像に変更する合理的な理由は見いだせない。原告トップページに掲載した本件吹出し切替画像を閲覧した者は,原告ウェブサイトにアクセスしたかどうか疑問を抱き,困惑するはずであるから,原告トップページに本件吹出し切替画像を掲示することは,通常の経営判断としては到底考えられない。
ウまた,原告は,陳述書及びその添付書類(甲16ないし18)並びに電子メールのファイル(検甲1)により,平成17年5月20日にフィッシャー,ホー,大前及び武部の間で,原告トップページに本件吹出し切替画像を表示するため,電子メールが送受信されたことが明らかであると主張する。しかし,これらの証拠中,電子メールファイルには,受信日時の記録がなく,送信日時と添付ファイルの変更日時・作成日時が矛盾するのみならず(乙1の1ないし8 ,以下のとおり,電子メール本文記載の送信 )日時の時系列に,決定的な矛盾があり,信用性に乏しい。
すなわち,電子メールを受信した者が,メールソフトの返信・転送機能を用いて,受信メール(旧メール)の文書を存置したまま新たに文章を作成して返信ないし転送メール(新メール)を発信した場合には,メール本文中に存置した受信メール(旧メール)につき送受信日時が記録される。
旧メールの送受信日時は,当該メール(旧メール)を受信した者の時間帯(タイムゾーン)に基づく時刻が表示されるため,時間帯の異なる者の間でメールのやりとりが行われた場合には,時差を考慮して検討する必要がある。この点を考慮して,甲16ないし18の陳述書添付資料に記載された電子メールの記録を再検討すると,旧メールの受信日時と新メールの送信日時との間で,前後矛盾するものが存在するから,当該メールの記録は信用性が乏しい。
(2) ウェイバックマシンにおける原告ウェブサイトの保存ア原告は,ウェイバック・マシンに原告のウェブサイトのデータが収集・保管されており,同サイトにおけるリストの「May 22, 2005」と書かれた部分をクリックすると,本件吹出し切替画像の表示された原告トップページの映像が現れるから,平成17年5月22日当時に閲覧できた原告トップページに本件吹出し切替画像が掲載されていたことは明らかであると主張する。
イしかし,ウェイバック・マシンは,あくまで過去のウェブサイトがどのような内容のものであったかを示す参考資料として運用されているにすぎないのであって,ウェイバック・マシンの管理者自身も,その利用規約の中で記録内容の正確性について保証しないことを明示している(乙9 。)以下の例によれば,ウェイバック・マシンは,過去のある時点におけるウェブサイトの内容を正確に記録しているものではないことが明らかである。すなわち,乙11の2ないし5は,2006年4月7日,10日,11日及び14日付けのそれぞれの日経新聞のホームページとしてウェイバック・マシンに記録されているウェブサイトの内容であるが,そこに表示されている株価チャートはすべて同一である。そして,ウェイバック・マシンが当該株価チャートを実際に保存・記録した日時は2006年4月20日である(乙11の1 。すなわち,ウェイバック・マシンは,200 )6年4月20日に保存・記録した画像であるにもかかわらず,2006年4月7日,10日,11日及び14日付けの日経新聞のホームページで当該株価チャートを閲覧できたかのような表示をしていることがこれによって分かる。
第5当裁判所の判断1当裁判所は,本件各証拠によって,原告トップページにおいて,平成17年5月20日に本件吹出し切替画像が掲載され,以降閲覧可能となっていたことを認めることはできず,審決には事実認定を誤った違法はないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
(1)原告ウェブサイトにおける表示態様(甲10)について甲10は,コンピュータ上に起動した3つのウィンドウ画像をプリントアウトしたものである。左上に位置する第1のウィンドウ画像には,Address欄に「D:\www\images\etown.gif」と表記され,青色の吹き出し形状の図形の中に白色の「eigo」の欧文字とその右側にオレンジ色の「town.com」の欧文字が表示されており,右上に位置する第2のウィンドウ画像には,Address欄に「D:\www\images」と表記され,ファイル表示欄の3列目に Name として etown.gifSize として 2 「」「」,「」「」,「」「」,「 」 3KBType として GIF ImageDateModifiedとして「5/20/2005 10:16AM」と各表示され,下側に位置する第3のウィンドウ画像には,アドレス欄に「http://www.englishtown.co.jp/」と表記され,当該ページの左上に,左から順に,青色の吹き出し形状の図形の中に白色の「eigo」の欧文字,及びその右側にオレンジ色の「town.com」の欧文字が表示されている。
,, , そうすると 確かに これら3つのウィンドウ画像をみる限りにおいてはサーバーの中のDドライブにある「etown.gif」は,平成17年5月20日に修正され,同日以降,原告トップページにアクセスすれば,本件吹出し切替画像を閲覧することができたように見える。
しかし,一般的に,コンピューターの画面上に表されている作成日やアドレス,ファイル名(甲10においては 「etown.gif」ファイルの「etown」 ,の部分)等は,これを書き換えたり,あるいは画面(コンテンツ)自体を差し替えることが容易であり,例えば,ウェブサイトにデータをアップロードした日時,すなわちデータの更新日時は,個々のコンピュータに連動しているため,これを操作することで容易に真実と異なる日時を表示させることができる(乙2参照 。したがって,甲10の表示内容をもって,直ちに原告 )トップページにおいて平成17年5月20日以降本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態にあったと認めることはできない。
(2)原告関係者の陳述書及び電子メール等の資料について原告は,原告代表者フィッシャー並びに日本子会社の大前及び武部の陳述書並びにこれらの者の間で送受信した電子メール等(甲16ないし甲18)によれば,原告トップページ上の本件吹出し切替画像が平成17年5月20日以降閲覧可能な状態にあったことが明らかであると主張する。
しかし,上記主張には理由がない。
まず,電子メール(甲16ないし18の陳述書添付資料)については,その作成日は,作成者が使用するコンピュータで設定した日時に依存して記録されるものであって,容易に真実と異なる日時を表示することができるし,また 受信した電子メールの内容をその後に容易に訂正することもできる 乙 , (3ないし5参照 。しかるに,フィッシャー,ホー,大前及び武部の間で送 )受信された電子メールのファイルを保存したものとして原告が提出したCDロム(検甲1)に記録されたファイルの内容を検討すると,これらのファイルには,電子メールファイルに受信日時の記録がなく,送信日時と添付ファイルの変更日時・作成日時が矛盾しているなどの点が認められる(乙1の1ないし8参照。なお,この点を指摘する被告の主張に対して,原告は,何ら具体的な説明ないし反論をしていない。。)また,原告は,本件吹出し切替画像が掲載された具体的経緯として,原告代表者フィッシャーの発案により,カルビン・ホーが画像を作成したと主張。, ,「」 する しかし 日本人ではないフィッシャー及びホーがEnglishの日本語訳である「英語」という語をローマ字表記して「Eigo」というロゴを使用することを発案したというのは不自然であるし,自らを表す表示として「Englishtown」という名称を用いて世界的に事業展開していた原告が,原告トップページの目立つ位置に 「Eigotown.c ,om (これは,競業者である被告の会社名と同一である )のロゴを含む 」 。
本件吹出し切替画像を掲載することは,経営判断としても合理性を欠くものといえる(これらの点を指摘する被告の主張に対して,原告は,何ら具体的な説明ないし反論をしていない。なお,甲16及び弁論の全趣旨によれば,本件訴訟の係属時を通じて,原告トップページに,本件吹出し切替画像を掲載していないが,このことは,そもそも本件吹出し切替画像を掲載する合理。,, 性及び必要性が存在しなかったことを推認させる この点について 大前はその陳述書(甲16)において,審決の結果を受けて原告トップページから本件吹出し切替画像を外したとの理由を述べているが,合理的な理由とは到底いえない。。),,() , さらに フィッシャー 大前及び武部の各陳述書 甲16ないし18 も画一的で似通った内容であって,直ちに措信できるものではない。
(3)ウェイバックマシンにおける原告ウェブサイトの保存原告は,ウェイバック・マシンに原告のウェブサイトのデータが収集・保管されており,同サイトにおけるリストの「May 22, 2005」と書かれた部分をクリックすると,本件吹出し切替画像の表示された原告トップページの映像が現れるから,平成17年5月22日当時の原告トップページには,本件吹出し切替画像が掲載されていたことは明らかであると主張する。
しかし,ウェイバック・マシンについては,利用規約に記録内容の正確性について保証しないことが記載されている上(乙9 ,現に,ウェイバック )・マシンに記録されている日経新聞のウェブサイトの内容について,真実と(,。 異なる内容が表示されている例が存在すること 乙11の1ないし5 12なお,このことは,原告は積極的に争っていない )に照らせば,甲19な 。
いし24をもって,直ちに原告トップページにおいて平成17年5月20日以降本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態となっていたことを認めることはできない。
2結論以上によれば,本件における全証拠に照らしても,原告トップページにおいて平成17年5月20日以降本件吹出し切替画像が閲覧可能であったことを認めるに足りず,結局,本件商標については,本件審判請求登録前3年以内に商標権者,専用使用権者又は通常使用権者がこれを使用したことについて,原告による証明がないことに帰するから,本件商標の登録を取り消すべきものとした審決の認定判断に誤りはない。原告の主張する取消事由には理由がなく,その他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二