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関連審決 不服2002-3181
関連ワード 独占的使用 /  識別力 /  包装 /  出所表示機能 /  指定商品 /  指定役務 /  普通名称(3条1項1号) /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  3条1項6号 /  品質誤認(4条1項16号) /  取引の実情 /  国内 /  補正 /  立証責任 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 369号 審決取消請求事件
原告A
被告 特許庁長官小川洋
同指定代理人 田中亨子
同 宮下正之
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/01/26
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
特許庁が、不服2002-3181号事件について、平成16年7月5日にした審決を取り消す。
当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯 訴外株式会社エポック社(以下「エポック社」という。)は、平成12年6月19日、「インテリアショップ」の片仮名文字(標準文字)を書してなり、商標法施行令1条別表28類に属する商品を指定商品(以下「本願補正指定商品」という。)とする商標(以下「本願商標」という。)につき商標登録出願(商願2000-67977号、以下「本件出願」という。)をし、その後、平成13年2月27日付け手続補正書(以下「本件補正書」という。)において、指定商品を同類「液晶画面付き電子ゲームおもちゃ(液晶画面付き電子ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させたROMカートリッジ、液晶画面付き電子ゲームおもちゃに接続して用いられる専用イヤホン、その他の付属品を含む)、その他のおもちゃ、人形、
囲碁用具、将棋用具、さいころ、すごろく、ダイスカップ、ダイヤモンドゲーム、
チェス用具、チェッカー用具、手品用具、ドミノ用具、マージャン用具、愛玩動物用おもちゃ、運動用具」(以下「本願指定商品」という。)と補正した。特許庁は、本件出願について、平成14年1月15日付けで拒絶査定(以下「本件査定」という。)をしたので、エポック社は、同年2月25日、これを不服として本件審判の請求をした。
特許庁は、同請求を不服2002-3181号事件として審理した上、平成16年7月5日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月30日、エポック社に送達された。その後、同年8月6日、本願商標に係る出願人の地位がエポック社から原告に譲渡され、同月9日、特許庁に対し「出願人名義変更届」が提出された。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の判断は、別紙審決書写し記載のとおりである。その理由の要旨は、「インテリアショップ」の文字は、商取引の場においては「室内装飾品等を販売する店」であることを認識させ、かつ、家具等の室内装飾品を中心に他の商品をも併せて販売されている場合も多い実情よりすれば、商品の販売場所を表示しているものと認識されるにすぎず、本願商標をその指定商品に使用しても自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当であり、したがって、本願商標は、商標法(以下、単に「法」という。)3条1項3号に該当し、登録することができないというものである。
原告主張の本件審決の取消事由の要点
本件審決は、法55条の2第2項で準用する法16条に違反するとともに(取消事由1)、法55条の2第1項で準用する法15条の2に違反し(取消事由2)、法3条1項3号の解釈適用を誤った(取消事由3)ものであるから、違法として取り消されるべきものである。
1 法16条違反(取消事由1) 本願商標に対しては、本件査定前に、2回の拒絶理由通知(法15条の2による通知)がなされているが、第1回目の平成13年1月12日付け拒絶理由通知(以下「第1回理由通知」という。)における理由は、本願商標が法4条1項16号に該当するという趣旨であり、第2回目の平成13年11月7日付け拒絶理由通知(以下「第2回理由通知」という。)における理由は、同商標が法3条1項6号及び法4条1項16号に該当するという趣旨であった。しかるに、本件審決は、上記の各理由と異なり、「本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。」として、本件審判の請求は成り立たないとしたものである。
ところで、法16条には、「審査官は、政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。」と規定されているところ、「政令で定める期間内」は、商標法施行令2条の規定により商標登録出願の日から1年6月と定められているから、上記各理由通知における拒絶理由は、いずれも政令で定める期間内に発見されたものであるが、本件審決における本願商標を拒絶すべき理由は、本件審決時(平成16年7月5日)に初めて発見されたものであり、法55条の2第2項で準用する法16条でいう「政令で定める期間」経過後に発見されたものである。
そうすると、仮に、本願商標が法3条1項3号に該当するとしても、当該理由では本件出願を拒絶することはできないというべきであり、したがって、本件審決は、拒絶できない理由をもって拒絶査定を維持した違法なものである。
2 法15条の2違反(取消事由2) 本件において、法15条の2に従って適法に通知された拒絶理由は、第1回理由通知及び第2回理由通知におけるもののみであり、本件審決で判断された法3条1項3号該当性は、拒絶査定でも全く開示されていなかった。
このように本件審決において本件出願を拒絶すべき理由が、拒絶査定の理由とは異なる以上、担当審判官は、法55条の2第1項で準用する法15条の2の規定に基づき、当然に「拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない」にもかかわらず、本件審決は、これに違反して行われている。
本願商標が法3条1項3号に該当するか否かについて、審判での攻撃防御を経ることなしに、審決取消訴訟でその当否を判断されると原告の審級の利益が失われるから、本件審決は一旦取り消されるべきである。
3 法3条1項3号の解釈適用の誤り(取消事由3) (1) 「販売場所」が法3条1項3号に規定する「販売地」に該当するか否かについて 被告は、法3条1項3号を制限列挙的な規定ではなく、例示であると主張し、そのことを前提に、「商品を販売する場所」などは「商品の販売地」の範疇に属していると主張する。
しかし、法3条1項3号は、以下のとおり、限定列挙の規定であり、仮にそうでないとしても、同号に「販売地」が規定されていることを根拠に「販売場所」に同号が類推適用されるというのは、条理に適わないものである(なお、商品の「販売場所」は、「販売店の種類」も含むが、例えば「橋の上」のような地形的な場所も含むので、正確には商品が「販売されうる販売店の種類」である。)。
ア 法3条の文理上の解釈 法3条柱書きによれば、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については」、原則として「商標登録を受けることができる」のであり、
「次に掲げる商標」が例外規定である。そして、法3条で登録を拒絶すべき商標(同条2項適用を除く。)は、以下のとおりとなる。
@(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるかできないかにかかわらず)法3条1項1号から5号に掲げられる商標。
A 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標。
イ 法3条1項3号の規定の「販売されうる販売店の種類」への類推適用の可否について 前述したとおり、法3条1項3号は限定列挙の規定であるから、同条項を類推解釈できる余地はない。すなわち、法3条1項3号でいう「販売地」とは、正に販売地のことをいうのであって、原則として地名(地域・国・地方等広義の地名を含む。)のみをいうのである。
仮に、法3条1項3号が類推解釈の可能な条文であるとしても、同号に「販売地」が規定されていることを根拠として、「販売されうる販売店の種類」へ同号の規定を類推適用することは、条理に適わぬものである。すなわち、法3条1項3号には、販売地のほか、「形状(包装の形状を含む。)」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標も、商標登録を受けることができないものとして挙げられているのであるから、同一の条文のなかでは同一の基準で補足説明がなされていると解すべきである。そして、商取引の実際をみれば、商品が裸で流通することはむしろまれで、大抵の商品では包装とともに流通するのであるから、
「形状」が不登録理由となるのであれば「包装の形状」が不登録理由となるであろうことは極めて容易に類推可能な範囲である。一方、「販売地」と「販売されうる販売店の種類」の差異であるが、土地の風土・風俗・文化等の差異により商品に望まれる嗜好は自ずと異なるものであるから、その商品の販売地がどこであるかは商品の望まれる資質に大きな影響を与える要素であるのに対し、現在の日本国内の商取引の実状からすれば、一旦適法に流通に乗った商品はどこで(どの販売店の種類で)売られるかが規制できないのであるから、商品がどこで売られるかは商品の特性に何ら影響を与えない。
そうすると、「形状」と「包装の形状」の乖離度に比べ、「販売地」と「販売されうる販売店の種類」の乖離度は遥かに大きいのであるから、「商品の販売地」に「販売されうる販売店の種類」が含まれるのであれば、当然に少なくとも括弧書きで規定されているはずである。しかるに、法3条1項3号に「販売地」はあるものの、「販売地(販売されうる販売店の種類を含む。)」の規定はなく、同号でいう「販売地」には「販売されうる販売店の種類」は含まれないと解するほかない。
(2) 法3条1項3号の適用要件の認定誤りについて ア 本件審決は、「「インテリアショップ」の文字は、商取引の場においては「室内装飾品等を販売する店」であることを認識させ、かつ、家具等の室内装飾品を中心に他の商品をも併せて販売されている場合も多い実情よりすれば、商品の販売場所を表示しているものと認識されるにすぎず、本願商標をその指定商品に使用しても自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。」から「本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することはできない。」と判断する(2〜3頁)。
しかし、本願商標が法3条1項3号に該当するというためには、「@商品の販売地を表示するものであること。A普通に用いられる方法で表示するものであること。B当該(商品の販売地を普通に用いられる方法で表示する)標章のみからなること。」の3点が主張立証されなければならないのであって、「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」かどうかは関係がない。
しかるに、本件審決は、本願商標の「インテリアショップ」の文字が商品の販売場所として認識されるというだけで、それが法3条1項3号に規定する「販売地」に該当することの立証がないまま、本願商標が同号に該当すると判断したものであり、その判断が誤りであることは明らかである。
仮に、被告が、法3条1項3号の「販売地」の規定を販売場所に類推適用すべく「自他商品識別標識としての機能」の議論を持ち出したのであれば、検討すべきは「インテリアショップ」ではなく、「販売場所」に「自他商品識別標識としての機能」があるか否かであって、販売場所の1つに自他商品識別標識としての機能を果たさないものがあったとしても、販売場所すべてが自他商品識別標識としての機能を果たさないことにはならないのである。
すなわち、本件審決の上記判断は、本願商標が法3条1項3号に該当することをいうものと解釈しても、販売場所に法3条1項3号を類推適用することの正当性をいうものと解釈しても、失当というほかない。
イ 前記アで主張したとおり、本件出願の拒絶理由が法3条1項3号該当性であるならば、本願商標が自他商品識別標識としての機能を果たせるか否かは、その適用の適否とは無関係であり、また、仮に、「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」ことが立証されれば、法3条1項3号の適用が是認される場合があり得るとしても、本件審決に記載された理由からは、本願商標が「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」とはいえない。
すなわち、本件審決では、@インテリアショップの語意、Aインテリアショップの店名に「インテリアショップ」の文字が使われている事実、Bインテリアショップと称する店舗で「おもちゃ、スポーツ用品等の商品の販売も行っている」事実から、本願商標が自他商品識別標識としての機能を果たし得ないとの結論を導き出している。
しかし、本願指定商品中、一般に「商品の販売店の種類」の名称で取引される商品は存在しないし(例えば、商品おもちゃが「おもちゃ屋」ないし「トイショップ」の名称で取引されている事実は知らない。)、本願商標が登録されたとしても、他者がインテリアショップの屋号に「インテリアショップ」の文字を用いることを禁止できる権限が付与されるわけでもないから、何をもって「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」と主張しているのか不明である。
ウ 法3条1項3号該当性をいうのであれば、「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」ことの立証責任は免除されるものの、例えば同号の規定する「販売地」であることの立証責任は負わねばならない。しかるに、本件審決は、本願商標の「インテリアショップ」の文字が「販売場所」を認識させるものであることを根拠に、それが「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」と結論付けており、結果的には、同号に規定する「販売地」に該当することも、「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」ことも立証できていないのである。
被告の反論の要点
1 取消事由1、2について (1) 法3条は「商標登録の要件」を規定するもので、同1項に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができるとしている。そして、商標の登録要件を具備しない商標を同条1項1号から5号に定め、同項6号で「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」と規定している。この規定の仕方からみて、同項1号から5号は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を例示的に列挙し、上記各号に規定するもの以外の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を同項6号にまとめて規定しているものといえる。すなわち、法3条1項1号ないし5号は例示的列挙であり、同項6号は総括規定である。
そして、出願に係る商標が、自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たし得る商標であるか否かについては、指定商品又は指定役務に関連する取引の実情等を考慮し、かつ、同項1号から6号までのいずれかの条項に該当するか否かについては、上記各号に例示された内容を踏まえた上で判断し、当該案件についてより適切な条項を選択して適用するものである。一方、出願に係る商標が自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであっても、特に、後述するように、法3条1項3号に規定するいわゆる「記述的商標」といえるか否かというような場合は、当該商標が上記各号の例示に直ちに当てはまるとは限らず、
審査と審判の判断が相違する場合もあり得る。
本件審決は、後述のとおり、本願商標が商品の販売場所を表示しているものと認識されるにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、本願商標を法3条1項3号に該当すると判断したのであり、本件査定とは適用条項が異なるものの、自他商品識別標識としての機能を果たさない商標と判断したことには何ら変わりはなく、この認定判断において、本件査定と相違するものではない。
(2) 第2回理由通知には、「これを本願指定商品のうち、上記意味合いに照応する商品、例えば、「おもちゃ、人形」に使用しても、該表示のみをして自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いものであり、よって、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認めます。」と記載され、「例えば、」と表現されているとおり、「おもちゃ、人形」に限定しているものではない。そうすると、当該理由通知は、「おもちゃ、人形」以外の本願指定商品についても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標であると判断しているということができる。
一方、本件審判においても審理した結果、本願指定商品のすべてについて、
自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標であるとの判断に至ったものである。
そうすると、本願指定商品のすべてについて自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標である旨の判断は、本件査定と本件審決が相違するものでなく、その点においては本件査定は妥当であった。それゆえ、本件審決では、「この認定において原査定と相違するものではない」(3頁)と説示したものである。
なお、本願商標は、上述のとおり、指定商品のすべてについて自他商品識別標識としての機能を果たし得ないのであるから、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある指定商品はないこととならざるを得ないのではないかと考えられ、そのため、本件審判の合議体では、本件査定のその点の判断(本願商標が法4条1項16号に該当する旨)は必ずしも妥当ではなかったと判断して採用しなかったものである。
(3) 担当審査官は、第2回理由通知において、本願商標の「インテリアショップ」の文字が、「室内装飾品を販売する店」の意味合いを生じ、自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いものであることの認定、判断を示し、意見書を提出する機会を与えているものである。
これに対して、原告も、「室内装飾品を販売する店」の意味合いが生ずることを容認し、さらに、「室内装飾品を販売する店」の意味合いが生ずることから、
「商品を販売する場所」を表示するものであるとの認識を持った上で、反論しているというべきである。さらに、原告は、本件審判の段階においても、上記認定判断に対して、請求の理由として反論している。
一方、担当審判官は、本件審判において審理した結果、本件審決のとおり、
「本願商標は、商品の販売場所を表示しているものと認識されるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないもの」との判断に至ったものである。
そうすると、本件査定及び本件審決の理由は、本願商標が登録要件を具備しない、すなわち、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである旨の認定、判断をしたものであって、当該認定、判断の内容は相違するものでないから、本件審判の段階において新たに発見された拒絶理由というべきではない。
したがって、本件審決は、「査定の理由と異なる拒絶理由を発見した」場合に該当せず、かつ、本件出願の審査の段階で意見を提出する機会を与えているものであるから、法55条の2第1項で準用する法15条の2の規定に違反していない。
2 取消事由3について 例示的に列挙された自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たし得ない商標の規定のうち、法3条1項3号は、商品の産地、販売地、品質、原材料等を表示する商標を規定しているところ、列挙された商品の産地、販売地、品質、
原材料等は、商品の品質や内容等をそのまま表現する標章や商品の特徴等の特性を説明するものであって、「記述的商標」といわれるものである。
そして、同項3号は、制限列挙的な規定ではなく、これら記述的商標を例示したものと解されているところ、例示列挙されている以外に、商品の品位、等級、
色彩等を表すもの、説明的なもの、スローガン等にとどまらず、商品の販売場所もこの記述的商標に含まれるというべきである。ましてや、同項3号には「商品の販売地」が明示されていることからすると、商品を販売する地域、土地、場所などはこの「商品の販売地」の範疇に属していると解すべきである。
そうすると、商品の販売場所については、法3条1項3号が適用になると解するのが妥当である。
当裁判所の判断
1 前提となる事実経過(掲示の証拠及び弁論の全趣旨により認められる。) (1) 本願商標に対してなされた平成13年1月12日付けの第1回理由通知(甲6)は、本願商標が、「「室内装飾品を販売する店」の意味合いに通ずる「インテリアショップ」の文字を普通に書してなるところ、これを商標として使用した場合には、需要者が該商品は室内装飾品と関連した商品であると直感することは容易に想起されますので、これを本願補正指定商品に使用する場合には、あたかも該商品は「室内装飾品販売店」において取り扱われる商品であるかの如く、その商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第16号に該当します。」というものであり、要するに、本願商標が法4条1項16号に該当すると判断するものである。
(2) これに対し、原告は、本件補正書において、出願当初の指定商品から「遊技用器具、ビリヤード用具、釣り具」を削除して減縮の補正を行い、本願指定商品とするとともに、意見書を提出した。
(3) 次に、平成13年11月7日付けの第2回理由通知(甲8)は、本願商標が、「片仮名「インテリアショップ」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、その前半部分の「インテリア」の文字は「室内装飾品」を意味する語であり、その後半部分の「ショップ」の文字は「店、商店」の意味を有する語としてよく知られている語ですから、商標全体として「室内装飾品を販売する店」の意味合いが生じると認めます。併せて、おもちゃ、人形等室内装飾品に一部の役割を果たす商品も、一般にインテリア商品として理解されるに至っていることに鑑みれば、
これを本願指定商品のうち、上記意味合いに照応する商品、例えば、「おもちゃ、
人形」に使用しても、該表示のみをして自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いものであり、よって、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないようなものと認められます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。」というものである。
すなわち、第2回理由通知は、本願指定商品のうち、「おもちゃ、人形」などのように室内装飾品に一部の役割を果たす商品については、本願商標を使用しても、該商標が自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難く、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないから、法3条1項6号に該当するとし、それ以外の商品、つまり、室内装飾品としての役割を果たすことのない商品については、本願商標を使用すると、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとして、法4条1項16号に該当すると認定するものである。
なお、この点について被告は、第2回理由通知において、「例えば」と表現されているとおり、「おもちゃ、人形」以外の本願指定商品についても、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標であると判断しており、
一方、本件審決では、本願指定商品のすべてについて、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標であると判断しているから、本願指定商品のすべてについて本願商標が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標である旨の判断は、第2回理由通知と本件審決とで相違するものではない旨主張する。
なるほど、第2回理由通知において、本願指定商品のうち室内装飾品としての役割を果たす商品については、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標であると判断しており、このような商品は、本願指定商品のうち「おもちゃ、人形」に限定されているものではないが、「前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあります」と説示する以上、本願指定商品の一部については、本願商標を使用すると商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあると判断しているものであり、本願指定商品のすべてについて本願商標が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標である旨を判断しているものでないことが明らかである。したがって、被告の上記主張は、誤りというほかない。ただし、第2回理由通知において、本願指定商品のうち、本願商標を使用した場合に法3条1項6号に該当する商品としては、「おもちゃ、人形」が示されているのみであり、それ以外に法4条1項16号に該当する商品との具体的な区別は示されてはいないものと認められる。
(4) 原告は、第2回理由通知に対して、平成13年12月26日付け意見書(乙32、以下「本件意見書」という。)を提出し、本願商標が、「商標全体として「室内装飾品を販売する店」の意味合いが生じる」こと、「おもちゃ、人形等室内装飾品に一部の役割を果たす商品も、一般にインテリア商品として理解されるに至っている」ことを前提として認めた上で、本願商標が、法3条1項6号及び法4条1項16号に該当する旨の判断に反論した。特に、法3条1項6号違反に関しては、上記の前提事実から、本願商標が自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いとの結論を導き出すことはできないとして、指定商品の販売店の普通名称は、特別顕著性を有する旨を主張した。
(5) その後、原告は、平成14年1月15日付けで本件査定を受けたが、その理由は、「この商標登録出願は、平成13年11月7日付けで通知した理由によって、拒絶すべきものと認めます。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、該商標を本願指定商品に使用しても、自他商品の識別力を欠き、一の者に登録を認め、独占的に使用させることは妥当ではありませんから、さきの認定を覆すことはできません。」というものである。
(6) 原告は、本件査定を不服として、同年2月25日、本件審判の請求をし、
さらに、同年3月27日付けで手続補正書(乙33)を提出して上記請求についての理由を変更したが、同補正書では、本件意見書記載の主張を援用した上、本願商標が法3条1項6号に該当する旨の第2回理由通知は誤りであり、本件商標を拒絶すべき理由がない旨を主張した。
2 取消事由1(法16条違反)について (1) 原告は、本件審決における本件出願を拒絶すべき理由が、「本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない」であり、この理由は、
本件審決時に初めて発見された理由であって、法55条の2第2項で準用する法16条でいう「政令で定める期間」経過後に発見された理由であるから、仮に、本願商標が法3条1項3号に該当するとしても、当該理由では本件出願を拒絶することはできない旨主張する。
そこで検討するに、法3条は、商標登録の要件を定めたものであって、同条1項は、自己の業務に係る商品又は役務についての識別力あるいは出所表示機能を欠く商標を列挙するものであるところ、その規定の体裁及び内容等からみて、同項1号から5号までの規定は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を例示的に列挙するものであり、同項6号の規定は、同項1号から5号までにおいて例示的に列挙されたもの以外に、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を総括的、概括的に規定しているものと認められる。そして、法3条1項3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標が、当該商品の「産地、販売地」やその他の特性を表示記述する標章であって、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによる(最高裁判所第3小法廷昭和54年4月10日判決・判時927号233頁参照)。
本件においては、前示のとおり、本件査定で援用された第2回理由通知は、
本願商標が法3条1項6号及び法4条1項16号に該当するものとし、本件審決は、本願商標が法3条1項3号に該当するものとしているところ、法3条1項の該当性の判断に関しては、本願商標の「インテリアショップ」が、「室内装飾品を販売する店」の意味合いが生じることを前提として、第2回理由通知においては、これを本願指定商品に使用しても、自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いとし、本件審決においては、本願商標が法3条1項3号の(「販売地」の範疇に属する)「販売場所」を表示しているものと認識されるから、これを本願指定商品に使用しても、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないとするものである。すなわち、第2回理由通知と本件審決とは、いずれも本願商標から「室内装飾品を販売する店」という共通の認識が生じることを前提として、これを本願指定商品に使用しても、自他商品識別標識としての機能を有するものではなく、法3条1項所定の商標登録の要件を欠く商標に該当するという共通の結論に至るものであるから、両者は、その判断の内容において実質的に相違するものではなく、本件審決が、新たな拒絶理由を示したものでないことは明らかである。なお、第2回理由通知においては、法3条1項6号に該当するとともに、法4条1項16号に該当する旨も示されているが、その判断が本件審決において撤回されている以上、拒絶理由が付加されたものでないことはいうまでもない。
(2) そうすると、本件審決が第2回理由通知と異なる拒絶理由を示すものであることを前提とする原告の前記主張は、その前提に誤りがあり、これを採用することはできない。
3 取消事由2(法15条の2違反)について (1) 原告は、本件審決が本件出願を拒絶すべき理由とした法3条1項3号該当性は、本件査定の理由とは異なるにもかかわらず、担当審判官は原告にこれに対する意見を述べる機会を与えずに本件審決をしたものであって、本件審決は、法55条の2第1項で準用する法15条の2の規定に違反する旨主張する。
しかしながら、第2回理由通知と本件審決とが、その判断の内容において実質的に相違するものではなく、本件審決が新たな拒絶理由を示したものでないことは、前示のとおりであるから、「拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、
意見書を提出する機会を与えなければならない。」とする法15条の2に違反するところはなく、原告の上記主張を採用する余地はない。
(2) なお、原告は、前示のとおり、第2回理由通知に対する本件意見書において、本願商標が、「商標全体として「室内装飾品を販売する店」の意味合いが生じる」こと、「おもちゃ、人形等室内装飾品に一部の役割を果たす商品も、一般にインテリア商品として理解されるに至っていること」を前提として認めた上で、本願商標が自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いとの結論が誤りであり、指定商品の販売店の普通名称が特別顕著性を有する旨を反論しているのであるから、本願商標が「販売場所」を表示していると認識されるから法3条1項3号に該当するとの本件審決が示す拒絶すべき理由に対しても、実質的に反論しているものと認められる。そうすると、仮に、本件審決の認定判断が第2回理由通知と相違するものと解しても、この点が原告にとって不意打ちとなるものではなく、実質的な不利益は生じていないということができる。
4 取消事由3(法3条の解釈適用の誤り)について (1) 「販売場所」が法3条1項3号に規定する「販売地」に該当するか否かについて ア 原告は、法3条1項3号は限定列挙の規定であるから、同号でいう「販売地」を類推解釈できる余地はなく、仮に、同号について類推解釈が可能であるとしても、同号に「販売地」の規定があることを根拠として、「販売されうる販売店の種類」へ同号を類推適用することは、条理に適うものではないと主張する。
しかしながら、法3条1項は、前示のとおり、自己の業務に係る商品又は役務についての識別力あるいは出所表示機能を欠く商標を列挙するものであって、
同項1号から5号までの規定は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を例示的に列挙するものであると認められるから、上記の例示的列挙と実質的に同趣旨と解される商標をも含むものと解するのが相当である(なお、上記の例示的列挙に含まれると解することは困難であるが、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は、同項6号の総括的規定に該当するものと認められる。)。
そして、法3条1項3号は、自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たし得ない商標として、商品の産地、販売地、品質、原材料等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものを例示的に列挙しているところ、同号の「販売地」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、当該指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されている地域、土地を表示するものにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとともに、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるから、商標登録が許されないのである。したがって、同号の「販売地」は、厳密に地域、土地の表示に限定されるものではなく、例えば、著名な公共建造物等の名称などもこれに含まれると解して差し支えがないものといえる(特許庁編「商標審査便覧」42.08参照)。同様に、当該指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されているような場所、店舗等を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(例えば、指定商品が、食用魚介類についての「魚屋」、野菜についての「八百屋」など)も、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとともに、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるから、「販売地」に準じて商標登録が許されないものといわなければならない。
以上のとおりであるから、原告の上記主張は、採用することができない。
イ また、原告は、土地の風土・風俗・文化等の差異により商品に望まれる嗜好は自ずと異なるものであるから、その商品の販売地がどこであるかは商品の望まれる資質に大きな影響を与える要素であるのに対し、現在の日本国内の商売の実状からすれば、一旦適法に流通に乗った商品はどこで売られるかが規制できず、商品がどこで売られるかは商品の特性に何ら影響を与えないから、「販売地」と「販売されうる販売店の種類」の相違は大きい旨主張する。
しかしながら、法3条1項3号に規定する「販売地」は、前示のとおり、
自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとともに、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないことから、商標登録が許されないのであって、
商品の資質に大きな影響を与える要素であることのみを理由として、商標登録が認められないわけではないから、原告の上記主張は、その前提に誤りがあり採用できない。
さらに、原告は、法3条1項3号において、「形状(包装の形状を含む。)」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標も商標登録を受けることができないものとされているところ、「形状」と「包装の形状」の乖離度に比べ、「販売地」と「販売されうる販売店の種類」の乖離度は遥かに大きいのであるから、「商品の販売地」に「販売されうる販売店の種類」が含まれるのであれば、当然に少なくとも括弧書きで規定されているはずであると主張するが、当該指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されているような場所、店舗等を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標が、「販売地」に準じて商標登録が許されないと解すべきことは、前示のとおりであり、このことは当該条項において括弧書きで規定されているか否かにより左右されるものではないから、上記主張も採用できない。
(2) 法3条1項3号の適用要件の認定誤りについて ア 原告は、本願商標が法3条1項3号に該当するというためには、本願商標が商品の「販売地」を表示するものであることの立証がなければならないのに、
本件においてその立証はなく、また、仮に、本願商標が自他商品識別標識としての機能を果たし得ないことが立証されれば、同号の規定の適用が是認される場合があるとしても、本件においてその点の立証もないから、本願商標が法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断(2〜3頁)は誤りである旨主張する。
しかしながら、本願商標の「インテリアショップ」の文字は、本願指定商品の取引者・需要者に「室内装飾品を販売する店」として認識され(乙1〜3)、本願指定商品が、いわゆるインテリア雑貨として、インテリアショップにおいて取り引きされているものと認められ(乙4〜11、13、弁論の全趣旨)、したがって、前記(1)の説示に照らせば、本願商標は、当該指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されているような取引場所を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、法3条1項3号に該当するというべきである。この点に関する本件審決の判断は相当であり、上記主張は採用することができない。
なお、原告は、仮に、販売場所の1つに自他商品識別標識としての機能を果たさないものがあったとしても、販売場所すべてが自他商品識別標識としての機能を果たさないことにはならないと主張するが、当該指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されているような場所、店舗等を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標が、通常、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとともに、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであることは、前示のとおりであり、上記主張も採用することができない。
イ 原告は、本願指定商品中、一般に「商品の販売店の種類」の名称で取引される商品は存在しないし、本願商標が登録されたとしても、他者がインテリアショップの屋号に「インテリアショップ」の文字を用いることを禁止できる権限が付与されるわけでもないから、本件審決が何をもって「自他商品識別標識としての機能を果たし得ない」と主張しているのか不明である旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、本願商標は、本願指定商品が販売されているであろうと一般的に認識されているような場所、店舗等を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められるところ、かかる商標が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであることは、前記(1)に説示のとおりであり、このことは、現に「商品の販売店の種類」の名称で取引される商品が存在するか否かや、本願商標の登録によって屋号に「インテリアショップ」の文字を用いることが禁止されるか否かとは、直接の関わりがないことである。原告の上記主張は、失当というほかない。
5 以上によれば、原告主張の取消事由は、すべて理由がなく、その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の本件請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 青柳馨
裁判官 清水節
裁判官 沖中康人