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関連審決 不服2003-17830
関連ワード 役務の提供 /  識別機能 /  指定役務 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  補正 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 318号 審決取消請求事件
原告 エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社
訴訟代理人弁理士 三好秀和,岩ア幸邦,小西恵,鹿又弘子,川又澄雄
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 半田正人,小池隆,井出英一郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/12/22
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2003-17830号事件について平成16年6月8日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
本件審判は,後記本願商標についての拒絶査定を不服として請求されたものであるが,特許庁が「本件審判の請求は成り立たない」との審決をしたため,本願商標の出願人である原告が同審決の取消しを求めた事案である。
1 特許庁における手続の経緯 (1) 本願商標 出願人:原告 商標:「goo」の文字(標準文字による商標)を書してなるもの。
出願日:平成13年12月27日(商願2001-115608号) 指定役務:第41類「電子計算機の操作方法等に関する知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映画に関する情報の提供,音楽の演奏,音楽に関する情報の提供,音楽の演奏の情報の提供,演芸・演劇の上演の情報の提供,テーマパークの提供に関する情報の提供,学校・学習塾及びその他の教育機関に関する情報の提供,地域の祭りその他の催し事に関する情報の提供,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,遊園地用機械器具の貸与,絵画の貸与,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組等の制作のために使用されるものの操作,コンテストの興行の企画・運営又は開催,ストリーミング技術を用いた通信による音声の提供,ストリーミング技術を用いた通信によるラジオドラマを内容とする放送番組の配給,インターネットによる画像の提供,インターネットによる音声の提供,インターネットによるラジオドラマを内容とする放送番組の配給,コンピュータネットワーク及び通信ネットワークを利用した電子出版物の提供,コンピュータネットワーク及び通信ネットワークを利用した映像の提供,コンピュータネットワーク及び通信ネットワークを利用した音楽の提供,教育施設の提供に関する情報の提供」(平成15年1月7日付け及び同年6月30日付け手続補正書による補正後のもの。) (2) 本件手続 拒絶査定日:平成15年8月15日(発送日) 審判請求日:平成15年9月12日(不服2003-17830号) 審決日:平成16年6月8日 審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」 審決謄本送達日:平成16年6月18日(原告に対し) 2 審決の理由の要点 審決の理由は,別紙審決書の写し(以下「審決書」という。)に記載のとおりである。その要点は,次のとおりである。
(a) 本願商標は,「goo」の文字からなるものであるから,「グー」の称呼が生ずる。
(b) 引用商標(審決書の別掲として示された登録4474714号商標)は,図形と文字の組み合わせからなるもので,図形部分は,極めて図案化された態様で表されているが,図形部分の下には,「WonderGOO」の文字が併記されており,「Wonder」と「GOO」の各文字が顕著に異なる書体で表されていることから,本願商標全体に接する需要者,取引者は,図形部分が下段の「GOO」の文字部分との関係で,全体として,容易に「GOO」の欧文字をモチーフにしたものと理解,認識するものとみるのが相当である。引用商標は,「ワンダーグー」の称呼が生ずるほか,「GOO」の欧文字を図案化した図形部分から「グー」の称呼をも生ずるというべきである。
(c) 本願商標と引用商標とは,「グー」の称呼を共通にする類似の商標であり,かつ,本願商標の指定役務は,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務を含むものである。本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,登録を受けることができない。
原告の主張(審決取消事由)の要点
1 本願商標と引用商標は,類似しない別異の商標というべきであり,審決の認定判断は誤りである。
2 外観について 本願商標及び引用商標は,それぞれの構成に照らし,外観において相紛れるおそれがない。
3 観念について (1) 本願商標は,「goo」の文字よりなるものであるところ,特定の観念を生じさせない造語よりなるものというべきである。
(2) これに対し,引用商標は,構成中の「WonderGOO」の文字部分は,「Wonder」の文字部分と「GOO」の文字部分とが書体を異にして表されているところから,「Wonder」と「GOO」の2語よりなるものと容易に理解されるものである。そして, 「Wonder」の文字(語)は,「ワンダー」と読まれ,「不思議な」等の語義をもってよく知られた英語であり,「GOO」の文字(語)は,特定の観念を生じさせない造語といえるとしても,全体として「不思議な(形をした)GOO」といった程度の熟語的意味合いを表したと容易に理解されるものとみるのが自然である。そうであるとすれば,引用商標構成中の「WonderGOO」の文字部分以外の構成部分(図形部分)は,それ自体,一見して直ちに「GOO」の文字を図案化したものと容易に理解されるものとは言い難いが,引用商標構成中の「WonderGOO」の文字部分と相まって,「不思議な(形をした)GOO」,すなわち「GOO」の文字を図案化したものと理解されるに止まるものというべきである。したがって,図形部分と「WonderGOO」の文字部分とは観念的に不可分一体のものと理解されるものであるから,図形部分からも「不思議な(形をした)GOO」の観念が生ずるものである。
してみると,特定の観念を生じさせない本願商標と,上記「不思議な(形をした)GOO」の観念が生ずる引用商標とは,観念において相紛れるおそれがない。
(3) 引用商標は「Wonder」という文字とその上部の図形とが太文字で表現され,図形からは力強さを感じとることができる。したがって,引用商標から受ける印象は,太文字の「Wonder」とその上部の力強い図形の複合した観念である。文字の「GOO」は全体的に見ると格別目立つものではなく,図形が「GOO」を表現したものを示唆する説明的意味を持つ程度のものである。
被告は,「GOO」は特定の観念を生じさせないと断定するが,次のとおり「グー」は一般的に定着した観念を生じさせるものである。
「グー」は,首尾よくいったときのサインとしての「グー」を示すものとしての力強い握りこぶしの観念を持つことは一般的に定着している。上部の図形を見ると,「GOO」という語から「グー」を示すとともに力強い握りこぶしを連想させるものである。したがって「Wonder」という太文字とともにこの語とのつながりにおいて,太文字で力強く描かれている上部の図形をひとつのまとまりをもった「WonderなGOO」つまり「すばらしいグー」,「不思議なグー」というように見えるのがもっとも自然な把握である。
以上のとおりであるから,引用商標は,「Wonderland(おとぎの国)」と同レベルで把握すべきものである。
4 称呼について (1) 本願商標は,審決が認定したとおり「グー」の称呼が生ずるものである。
(2) これに対し,引用商標は,上記のとおり,構成中の「WonderGOO」の文字部分とそれ以外の構成部分(図形部分)とは観念上一体のものというべきであるから,図形部分からは「WonderGOO」の文字部分から生ずる「ワンダーグー」の称呼のみが生ずるものであり,単に「グー」の称呼は生じないというべきである。
(3) 審決は,引用商標の「GOO」の欧文字を図案化した図形部分から「グー」の称呼をも生ずると判断したが,引用商標の図形部分は,称呼を特定できないというべきである。すなわち,「GOO」の欧文字を図案化した図形部分は,丸みを帯びた極太のローマ字の「C」ないし「G」とおぼしき文字,これに続いて2つのドーナッツ型図形が,右下がりに各図形ごとに大きく重なり合い,かつ,遠近感をもたせた描法をとっているため,空中に浮遊したような印象を与える特殊な外観を構成している。このような構成では,明確にその称呼を特定することは,困難といえ,引用商標の上部(図形部分)は,称呼を特定できない特殊な図形というべきである。
なお,審決は,上部の図形部分と下部の「GOO」の文字部分と関連付けているが,下部は,やや文字の太さが異なるものの,「WonderGOO」を同一書体でスペースも設けず,一連一体に書した構成をとるものであるため,一般需要者の通常の注意力からすると「WonderGOO」として理解される表示とみるのが自然であり,審決のように関連付ける理由はない。
引用商標からは,「ワンダーグー」の称呼が生じたとしても,「グー」の称呼は生じないものである。
(4) 引用商標において需要者の注意を引き,自他役務識別機能を発揮するのは,全体として観察しても専らその図形部分にある。
しかし,審決は,まずは文字部分を観察し,当該文字部分は「ワンダーグー」の称呼しか生じないにもかかわらず,文字部分の一部「GOO」を抽出し,さらに,特徴的な図形部分からは一義的に「グー」の称呼が生じないにもかかわらず,上記文字部分の一部との関係において,図形部分の称呼を「グー」と理解,認識するとの認定判断した。形式的技巧的に過ぎる類否認定判断である。ことに簡易迅速を尊ぶ取引の実際において,需要者は,一見して識別機能を発揮する図形部分から認識把握するのであって,審決のような迂遠な認識把握をすることはない。文字部分中の一部「GOO」のみを格別に抽出し,これによって図形部分の称呼を決定すること自体,取引の実情を離れた判断であるというべきである。
以上のとおり,引用商標からは,「ワンダーグー」の称呼のみが生ずるものであって,「グー」の称呼は生ずるものではなく,その称呼において本願商標と相違する。
5 取引の実情について (1) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,しかもその取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第3小法廷判決・民集22巻2号399頁)。 (2) 当該指定役務取引の実情等を考慮しても,引用商標の図形部分が「GOO」又は「グー」と読まれ,使用されている例はない。
乙2は,引用商標と社会通念上同一と認められる商標が引用商標権者の業務に係る役務を表示するためのものとして取引上使用されていることは認め得るところであるが,その商標が「グー」の称呼をもって取引に資せられていることを立証するものではない。引用商標は,取引の実際にあっては,単に「グー」称呼をもって取引に資せられているとはいえない。
本願商標を構成する「goo」の文字が例えばインターネットの検索サイトの名称を表示するためのものとして「グー」の称呼をもって取引に資せられている本願商標に係る原告の業務に係る役務と,「ワンダーグー」の称呼をもって取引に資せられている引用商標権者の業務に係る役務とが,取引の実際において混同をきたすおそれはないと考えさせる特別の事情が存在するというべきである。
本願商標と引用商標とは,役務の出所の混同を生じない特別の事情が存する。
6 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれにおいても,類似しない別異の商標というべきである。
仮に,引用商標において,単に「グー」の称呼をも生ずるものであるとしても,本願商標と引用商標は,外観及び観念において顕著な差異を有するものである以上,類似する商標とはいえないし,上記のように,引用商標が「グー」の称呼をもって取引に資せられているという事実も見当たらない。
本願商標と引用商標は,類似しない商標というべきである。
被告の主張の要点
1 商標が類似するかどうかは,最終的には,対比される両商標が同一又は類似の商品・役務に使用された場合に,商品・役務の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり,具体的にその類否判断をするに当たっては,両商標の外観,観念,称呼を観察し,それらが取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであって,決して上記3要素の特定の一つの対比のみによってなされるべきものではないが,少なくともその一つが類似している場合には,当該具体的な取引の実情の下では,商品の出所の混同を生ずるおそれはないと考えさせる特別の事情が認められる場合を除いて,出所の混同を生ずるおそれがあると認めるのが相当である。
2 本願商標について 本願商標は,「goo」の文字(標準文字による商標)を書してなるものであるから,該構成文字に相応して「グー」の称呼を生ずるものであり,特定の観念を生じさせない造語よりなるものである。
3 引用商標について (1) 引用商標は,図形と文字との組合せよりなるものである。
図形商標は,需要者の注意をひき,かつ,視覚的効果を持たせる手法として,文字を図案化するなどして特徴的な図形商標とすることは普通になされている。
このような状況をふまえれば,引用商標の構成中の図形部分は,極めて図案化された態様で表されているものであるとしても,その下部に「WonderGOO」の文字が併記されており,かつ,その構成中の「Wonder」と「GOO」の各文字が顕著に異なる書体をもって表されていることから,「WonderGOO」は,「Wonder」と「GOO」の文字からなるものと容易に理解され,引用商標に接する需要者,取引者をして,図形部分が下部の「GOO」の文字部分との関係で,「G」「O」「O」の各文字を図案化して斜め下方に連続して配置したものであり,全体としてみれば,図形部分からは容易に「GOO」の欧文字が連想,想起され,これをモチーフにしたものと理解,認識されるというべきである。
(2) 外観上の類否について 上記のとおり,引用商標の構成中の図形部分は,全体として,容易に「GOO」の欧文字が連想,想起され,これをモチーフにしたものと理解,認識されるというべきであるから,本願商標と引用商標の図形部分とは,前者が「goo」(小文字),後者が「GOO」(大文字)というように,その綴りを共通にするものである。そして,小文字と大文字の差異はあるものの,欧文字においては,小文字と大文字との互換,変更使用が,それを用いる状況や場合に応じ適宜行われるのが通例であることをふまえれば,この差異は当該文字を見る者にとってさして注意をひくとはいえず,時と所を異にして両商標に接した場合を考慮すると,その綴りの共通性ゆえに外観上近似した印象,連想等を生じさせることを否定することはできない。
(3) 観念上の類否について 引用商標の構成中の「WonderGOO」の文字部分は,原告も述べるとおり,書体を異にして表されているところから,「Wonder」と「GOO」の2語よりなるものと容易に理解されるものであり,かつ,「Wonder」の文字(語)は,「ワンダー」と読まれ,「不思議な」等の語義をもってよく知られた英語であり,「GOO」の文字(語)は,特定の観念を生じさせない造語である。よって,「Wonder」の文字(語)が前記意味合いを有し,「Wonderboy」(時代の寵児),「Wonderland」(おとぎの国),「Wonderchild」(神童),「Wonderdrug」(特効薬)のように,特定の意味合い(観念)を有する複合語を形成する接頭辞であるとしても,これらの複合語に着目してみれば,「Wonder」の文字(語)に連結する文字(語)は,上記のように,いずれも特定の意味合い(観念)を有するものであり,これらの特定の意味合いを有する文字(語)は,複合語としての意味合い(観念)にも強く作用している。
ところが,引用商標の「Wonder」の文字(語)に連結する「GOO」の文字(語)は,特定の観念を生じさせない造語であることから,引用商標の構成中の「WonderGOO」の文字部分からは特定の観念が生ずるということはできない。
引用商標の図形部分は,それのみではいかなる事物,事象を表現したものか直ちには理解し難い態様で表されているものであるから,図形部分のみからは特定の観念が生ずるということはできない。さらに,図形部分は,上記のとおり,全体として,容易に「GOO」の欧文字をモチーフにしたものと理解,認識されるものの,「GOO」の文字(語)自体が特定の観念を生じさせない造語であることから,結局のところ,図形部分からは特定の観念が生ずるということはできない。
そもそも,原告のいう「不思議な(形をした)GOO」との観念が一般に親しまれているものとはいい難く,またそのような観念がごく普通に生ずることを示す証拠もない。
(4) 称呼上の類否について 一般に,簡易,迅速を尊ぶ取引の実際においては,商標は,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどにまで不可分的に結合していない限り,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,その結果,一個の商標から二個以上の称呼,観念の生ずることがある。
引用商標は,図形と文字との組合せよりなるものであるところ,図形部分が極めて図案化された態様で表されているとしても,前記のとおり,需要者,取引者は,全体として,容易に「GOO」の欧文字をモチーフにしたものと理解,認識するものである。
してみれば,引用商標は,文字部分から「ワンダーグー」の称呼が生ずるほか,「GOO」の欧文字を図案化した図形部分から「グー」の称呼をも生ずる。
(5) 商取引における引用商標の使用状況について 引用商標の商標権者のインターネット・ホームページ情報(乙2)によれば,引用商標の商標権者は,商品の販売又は役務の提供に関する情報の提供をするためのホームページや事業店舗の看板及び広告塔などに引用商標(社会通念上同一と認められる商標)を使用している。
引用商標の構成中の図形部分は,上部に大きく,かつ,下部の文字部分と表現を異にして,顕著に表されていることから,特徴的に図案化された「GOO」の図形部分が目を引き,強い印象を与えるものであって,需要者は,図形部分に着目することが少なくない。そうとするなら,需要者においては,これより生ずる「グー」の称呼をもって商品又は役務の出所を識別することが全くないとはいえない。
4 本願商標と引用商標とは,その要部において,前者が「goo」,後者が「GOO」というように,その綴りを共通にする点で外観上近似した印象,連想等を生じさせるおそれがあることを否定できないものであるから,外観における差異が称呼における共通性を凌駕するほどのものとはいえない。また,観念においては比較することができないものである。そして,本願商標と引用商標とは,「グー」の称呼において共通しているものである。
してみれば,本願商標と引用商標とは,少なくとも称呼においては共通しているものであって,かつ,本願商標の指定役務には引用商標の指定役務と同一又は類似の役務を含むものであるから,引用商標の指定役務と同一又は類似する役務に本願商標を使用したときは,一般消費者の間で出所の混同を生ずるおそれがある。
審決は,称呼の検討のみならず,外観,観念等についても総合的に検討した上で,本願商標と引用商標とは少なくとも称呼を共通にすることから,役務の出所の混同を生ずるおそれがあり,両商標は類似する商標であると判断したものである。
当裁判所の判断
1 本願商標と引用商標の構成等について (1) 本願商標は,「goo」の文字(標準文字による商標)を書してなるものであり,指定役務は,前掲第2,1(1)に記載されたとおりである(争いがない)。
(2) 引用商標は,別紙審決書の別掲のとおり,図形と文字が組み合わされた構成からなるもので,指定役務等は,審決書の理由第2項に記載のとおりである(争いがない)。引用商標をここに掲げると次のとおりである。
【引用商標】 引用商標の下部の文字部分は,文字で「WonderGOO」と記載されている。「Wonder」の部分は太い線で書かれ,「GOO」の部分はこれより細い線で書かれているほか,「Wonder」の部分は,「W」が大文字,その余は小文字で構成されているが,「GOO」の部分はすべて大文字で構成されている。よって,「WonderGOO」と連続して書かれてはいるが,「Wonder」部分と「GOO」部分とでは,上記のように,線の太さや大文字・小文字の組合せ方の構成において顕著に異なっており,引用商標に接した需要者,取引者は,文字部分は「Wonder」部分と「GOO」部分とから構成されている(2語から構成されている)ものと理解,認識するものと認められる。
一方,引用商標の上部の図形部分は,「G」「O」「O」の3文字を図案化し,左上方から右下方へと斜めに,3文字を順次連続して配置したものである。図形部分は,当該部分のみを一見して直ちに「GOO」の文字からなると認識するのは困難であるが,上記で認定した下部の文字部分における「GOO」の部分との関係から,引用商標に接した需要者,取引者は,図形部分は「GOO」の欧文字をモチーフに図案化されたものであると理解,認識し得るものと認められる。
2 外観について 本願商標と引用商標とでは,前者が文字のみからなり,後者が図形と文字が組み合わさってなるという点で外観が異なっている。
もっとも,上記のとおり,引用商標の図形部分が「GOO」の欧文字をモチーフに図案化されたものであると理解,認識し得ること,文字部分も「Wonder」部分と「GOO」部分とから構成されているものと理解,認識されることに照らせば,本願商標の「goo」と引用商標の「GOO」との間での外観上の近似性を見て取れなくもない。
3 観念について (1) 原告も主張するとおり,「goo」の文字からなる本願商標は,造語であり,特定の観念を生じないものと認められる。
一方,引用商標における「GOO」の部分も造語であり,本願商標の「goo」と同様に,特定の観念を生じないものというべきである。
そして,引用商標における文字部分は,「WonderGOO」であり,「Wonder」と「GOO」の2語から構成されているものと理解,認識されることは,前認定のとおりである。「Wonder」(ワンダー)という語は,我が国でも比較的よく知られた英単語であり,特に,ワンダーランド(「Wonderland」,おとぎの国・不思議の国)などと使われて,なじみのある言葉である(もっとも,「Wonderland」は英語として1つの単語化している。乙1)。
いずれにしても「Wonder」を形容詞的に使う用法はよく知られており,「不思議な○○」,「すばらしい○○」というような意味合いを持つものと認められ(乙1),これを「WonderGOO」との文字部分についてみた場合,「不思議なGOO」,「すばらしいGOO」ということになりそうである(原告も前記のとおり,「Wonder」の語が「不思議な」等の語義をもってよく知られた英語であること,「WonderGOO」は,「不思議な(形をした)GOO」といった程度の熟語的意味合いを表したと容易に理解されることを主張する。)。「WonderGOO」の「Wonder」が上記のように形容詞的に使われていると認識されるとすれば,これに続く「GOO」の観念が「WonderGOO」の観念の形成に大きな意味を持つことになるものと認められる。しかし,前認定のとおり,「GOO」は造語であり,需要者,取引者にとって特定の観念を生じないのであるから,「WonderGOO」,「不思議なGOO」といっても,これに接した需要者,取引者は,不思議な何なのか理解,認識し得ず,結局,「WonderGOO」も「goo」と同様に,特定の観念を生じないものというべきである。
一方,引用商標の図形部分は,それ自体の形状から特定の観念が生ずるものとは認められず,また,前記のとおり,図形部分が「GOO」の欧文字をモチーフにしたものと理解,認識されることから考えても,前記のとおり,「GOO」の文字(語)は,特定の観念を生じさせるものではない。結局,図形部分からは特定の観念が生じない。
(2) 原告は,当初,引用商標に関する認定についても,上記と同旨であるかのような主張をしたが(前記第3,3(2)),後に,「グー」は,首尾よくいったときのサインとしての「グー」を示すものとしての力強い握りこぶしの観念を持つとして,引用商標の図形を見ると,「GOO」という語から「グー」を示すとともに力強い握りこぶしを連想させるなどと主張する(前記第3,3(3))。
しかし,主張の一貫性に疑問があるというにとどまらず,本願商標の「goo」と引用商標の「GOO」とは,小文字か大文字かの差異しかないのに,両者でなぜ異なるのか合理的な説明もなく(仮に,本願商標「goo」も原告主張の上記「グー」を連想させるものであれば,かえって引用商標との観念は極めて近似する。),また,「グー」に関する原告の主張内容自体を認めるに足りる証拠もない。原告の主張は,採用の限りではない。
4 称呼について (1) 原告も主張するとおり,「goo」の文字からは,「グー」の称呼が生ずるものと認められる。
一方,引用商標の図形部分については,前判示のとおりであり,図形部分のみを一見して直ちに「GOO」の文字からなると認識するのは困難であるが,下部の文字部分における「GOO」の部分との関係から,引用商標に接した需要者,取引者は,図形部分は「GOO」の欧文字をモチーフに図案化されたものであると理解,認識し得るものと認められる。そうすると,引用商標においては,「WonderGOO」の文字部分から「ワンダーグー」の称呼が生ずるだけでなく,上記図形部分から「グー」の称呼が生ずるものというべきである。したがって,本願商標と引用商標とは,称呼を共通にするというべきである。
(2) 原告は,文字部分の「WonderGOO」のうち「GOO」の文字部分と関連付けることを非難する。しかし,引用商標に接した需要者,取引者は,文字部分は「Wonder」部分と「GOO」部分とから構成されている(2語から構成されている)ものと理解,認識するものと認められることは前記のとおりであるから,上記図形部分を見た需要者,取引者としては,容易に「GOO」の文字部分と関連付けて,図形部分は「GOO」の欧文字をモチーフに図案化されたものであると理解,認識し得るものと認められる(前記のとおり,原告も,「WonderGOO」が「Wonder」と「GOO」の2語よりなるものと容易に理解されることは認めている。)。
原告は,上記のように関連付けてする認定は,技巧的で迂遠であるなどとも主張する。そこで,引用商標の構成を再吟味すると,図形部分と文字部分が上下に近接して配置されており,目につきやすく印象的な図形部分は,左上方から右下方へと斜めに,3つのドーナツ状の楕円形(ただし,左上のものは弧の一部が開いている。)が順次連続するように配置され,その大きさは,左上のものから右下のものへと次第に小さくなっているものとされていることから,図形部分を見た需要者,取引者の視線は,左上から右下へと導かれ,導かれた先にちょうど「GOO」との文字が位置しており,自然かつ容易に図形部分と「GOO」の文字部分とが関連付けられるように構成されていることが認められる。技巧的で迂遠であるなどとの批判は当たらない。
以上のとおり,原告の主張は,採用することができない。
5 取引の実情について 乙2によれば,原告主張のとおり,引用商標の商標権を有する株式会社ワンダーコーポレーションのインターネット上のホームページでは,「WonderGOOコンセプト」,「『買うならワンダーグー』と言っていただけるよう」,「独創性の集合体がWonderGOOです」などの記載があることが認められる。しかし,一方では,上記乙2において,「GOOstイベント情報」,「Wonderランキング」,「Wonderクーポン」などの記載もあり,「Wonder」と「GOO」が別々に単独で使用されている例もないではない。
原告は,引用商標につき,取引の実際にあっては,単に「グー」の称呼をもって取引に資されているとはいえないと主張するが,必ずしもそのように断ずることはできない。原告は,また,インターネット検索サイトの名称である「goo」について主張するが,本願商標の指定役務がインターネットにおけるホームページ検索用エンジンの提供などに関するものではないことは前記のとおりである(インターネット検索関係のgooの商標は,別途存在することがうかがえる。)。
6 以上の本願商標と引用商標との対比における外観,観念及び称呼並びに取引の実情について認定したところなどを総合して検討すれば,本願商標と引用商標の称呼が共通するものであり,観念は双方ともに特定の観念を生じないものであって,外観において前記程度の差異はあるが,本願商標と引用商標との共通性を凌駕するものとはいえず,前認定の取引の実情を考慮しても,本願商標と引用商標とが当該指定役務に使用された場合に,その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。よって,「本願商標と引用商標とは,『グー』の称呼を共通にする類似の商標であり,かつ,本願商標の指定役務は,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務を含むものである。」とし,「本願商標が商標法4項1項11号に該当する」とした審決の認定判断は,是認し得るものである。
7 結論 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 田中昌利
裁判官 佐藤達文