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関連審決 無効2002-35318
関連ワード 指定商品 /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項19号 /  不正目的(不正の目的) /  結合商標 /  観念(観念類似) /  国内 /  立証責任 /  外国 /  継続 /  商号 /  同業者 /  卑猥(卑わい) /  差別的 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 7号 審決取消請求事件
原告 ホルティルクス・シュレダー・ビーヴイ
同訴訟代理人弁理士 鈴江武彦
同 河野 哲
同 石川義雄
同 小出俊實
同 吉野日出夫
同 松見厚子
同 幡 茂良
同 橋本良樹
被告 岩崎電気株式会社
同訴訟代理人弁理士 澤野勝文
同 川尻 明
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/12/21
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2002-35318号事件について平成15年8月28日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文第1,2項と同旨
当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は,「HORTILUX」の欧文字(標準文字による。)を横書きしてなり,商標法施行令1条別表の第11類「電球類及び照明器具」を指定商品とする登録第4425708号商標(平成11年12月27日登録出願。平成12年10月20日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
(2) 原告は,平成14年7月30日,被告を被請求人として,本件商標の登録を無効とすることを求めて特許庁に審判を請求した。特許庁は同請求を無効2002-35318号事件として審理した上,平成15年8月28日に「本件審判の請求は,成り立たない」とする審決(以下「本件審決」という。)をした。
2 本件審決の理由の要旨 (1) 本件商標の商標法4条1項7号該当性について ア 本件商標は,これを構成する「HORTILUX」の欧文字自体が矯激,卑猥,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものでなく,また,その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものとは認められない。さらに,特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反するようなものであるとも認められない。
しかし,そうであっても,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するものと解される。
イ 原告(請求人)が,本件商標を商標法4条1項7号に該当するものとする理由は,要するに,本件商標の登録出願前に,被告は,原告を知っており,本件商標が原告の商号の一部で重要な商標であると認識していたにもかかわらず,本件商標を採択して商標登録したのは不正な行為であって,外国企業の日本企業に対する信頼を低下させるおそれがあり,国際信義に反するからというものである。
この点の原告の主張に対する被告(被請求人)の反論は,要するに,@本件商標は,園芸を意味する英語「horticalture」の「horti」の部分と,ランプ照度の単位を表す「lux」の文字とを結合させて「HORTILUX」としたものであり,ランプメーカーの被告にとって,この程度の結合商標は,園芸等に適した植物育成用のランプについてその特性を漠然と暗示するような暗示的商標を使用したいという動機さえあれば,他に格別の動機付けがなくとも容易に採択することができたものである,A被告は,原告のことを知る以前から,北米市場を担う被告の系列会社を介して,本件商標と同一の商標「HORTILUX」を使用した植物育成用のランプを米国とカナダの両国で既に販売していたところ,該ランプを日本でも販売することを企図していたので,我が国における商標「HORTILUX」の登録可能性について調査し,これと抵触する先願商標・登録商標が存在しないことを確認して本件商標の登録出願をし,登録を得るに至ったものであり,本件商標は,不正な目的があって登録出願したものではない,というものである。
ウ 原告及び被告は,その主張を裏付けるために証拠方法を提出しているが,被告が,原告のことを知る以前から,被告の系列会社を介して,本件商標と同一の商標「HORTILUX」を使用した植物育成用のランプを米国とカナダで既に販売していた事実があったか,又はその事実がなかったかを判断するに十分な資料はない。そして,本件商標は,被告により,原告の商号から採択して商標登録されたものか,あるいは,原告のことを知る以前から,被告の系列会社が米国とカナダで使用していたものを我が国でも商標登録したにすぎないものというべきか,そのいずれとも判断し難い。 そうすると,本件商標の商標法4条1項7号該当性について主張する原告において,十分な立証をしていないものであるから,この点の原告の主張は採用できない。
(2) 本件商標の商標法4条1項19号該当性について ア 原告の使用する商標(平成12年1月21日に指定商品を商法施行令1条別表の第11類「電球類及び照明用器具」として登録出願したもの。以下「原告商標」という。)は,別紙図面に示すとおりの構成よりなるところ,原告提出の証拠を総合しても,本件商標の登録出願の時に原告商標が原告の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていた事実を認めるに足りず,他にその事実を認め得る証拠はない。
イ また,本件商標は,原告の商号から採択されたものか,あるいは,原告のことを知る以前から,被告の系列会社が米国とカナダで使用していたものを我が国でも商標登録したにすぎないものか,いずれとも判断し難いことは前記のとおりであるから,不正の目的をもって使用するものとすることもできない。
(3) 結論 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号及び同項19号に違反して登録されたものでないから,その商標登録を,同法46条1項の規定により無効とすることはできない。
当事者の主張
1 原告の主張 本件審決には,商標法4条1項7号該当性,同項19号該当性についての判断を誤った違法,審理不尽の違法があり,その違法が本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は取り消されるべきである。
(1) 取消事由1(商標法4条1項7号該当性についての判断の誤り) ア 被告は,本件商標の登録出願前において,原告の社名が「Hortilux Schreder B.V.(「Schreder」の最初の「e」にはアクサンテギュが付されている。以下同じ。)であり,植物育成用の「電球類及び照明用器具」等を製造,販売をする会社であること,原告がその社名の一部から成る原告商標を上記商品について使用し,同商品を本件商標の登録出願前から日本でも販売していたことを知っていたものである。
すなわち,原告と被告は,本件商標の登録出願(平成11年12月27日)されるよりも1年8か月も前の平成10年4月に,幕張メッセで開催された,「98施設園芸技術展(HI-TECH HORTI-MATION 98)」(以下「幕張メッセ展示会」という。)に共に各商品を出展している。そればかりではなく,被告は,幕張メッセ展示会において,原告のブースを訪問し,原告の「電球」等についての情報収集をしている。被告は,これを機会に,原告が原告商標を植物育成用の「電球」等の商標として使用していることを十分に認識するに到った。
イ 上記のとおり,被告は,原告の存在を,遅くとも本件商標の登録出願がされる1年8か月前の平成10年4月には認識していたものであり,かかる状況の下で被告が平成11年12月27日に本件商標の登録出願をし,その登録を得たということは,外国にて周知されている原告商標と同一,類似の商標について,「不正の目的」を持って登録出願し,その登録を得たというに等しい。
本件商標は,その登録出願経緯において,著しく妥当性を欠き,国際信義に違反し,商標法4条1項7号に該当するといわざるを得ない。
ウ 本来商標の使用は一般取引市場において公正に行われるものであり,権利者として真に商標を付して商品を販売使用していたならば,客観的かつ明確な証拠資料が充分に提出できるはずのものである。
被告は原告を知る以前からアメリカ,カナダの両国で商標「HORTILUX」を付した植物育成用のランプを既に販売していたと主張し,かかる主張をもって本件商標の登録出願に「不正の目的」がなく,国際信義に違反する点もなかったことの根拠としている。
しかるに,本件審決が,これらの点についての被告の主張,立証からは何ら説得的な立証が得られないとしながら,上記登録出願に「不正の目的」も「国際信義」に違反する点もなく,商標法4条1項7号に該当しないとの結論に至っているが,このような判断には論理の飛躍がある。
エ 上記のとおり,本件商標は商標法4条1項7号に該当するものであり,この点に関する本件審決性の判断は誤りである。
(2) 取消事由2(商標法4条1項19号該当性についての判断の誤り) ア 原告商標は,本件商標の登録出願前において,オランダ,その他の複数の外国において周知となっていたものである。
原告は,本国のオランダはもちろんそれ以外の複数の外国において,「電球類及び照明器具」(本件商標の指定商品でもある)の製造,販売を行うものとして広く知られた会社である。このことは本件商標の登録出願前に刊行された雑誌「GREENHOUSE GROWER」(1997年8月号)の中 で,「リーディングカンパニー」と原告が紹介されていることを始め,その他の新聞,雑誌記事の紹介からもうかがえる。
原告商標は原告会社の社名の主要部から成るものである。したがって,原告が新聞,雑誌記事で「リーディングカンパニー」として広く紹介されることは,その業務に係る商品,商標においても需要者間に広く認識されることをも意味するものである。
イ 原告は,本件商標の登録出願前より日本において原告商標を用いて植物育成用の電球類の販売を行っていた。
(ア) 甲7のカタログは,日本企業向けに作成されたものであり,原告商標の使用態様が示されている。
(イ) 甲8のカタログは,日本の販売代理店である「JAあいち経済連」及び「株式会社大仙」を通じて販売された商品を示すものである。
(ウ) 甲10は,平成10年7月より日本で取引された原告の植物育成用の電球類の販売数量を示しているが,平成13年の8月末までの約3年間で7574本を売り上げている。
(エ) 本件商標の登録出願後においても,原告は,平成14年4月に開催さ れた「第10回国際園芸技術展」にもブースを設けて出展しており,日本の同業者に広く技術を紹介している。この展示会は,平成12年4月22日付け日本農業新聞における記事でも取り上げられており,原告が紹介されている。
ウ 原告は,園芸産業の分野における照明製品を,ヨーロッパ,ロシア,アジア,日本,中東,南北アメリカ,カナダ,オーストラリア,ニュージーランドに輸出しているものであり,世界各国において,原告商標を使用し,販売しているものである。
エ 上記のとおり,本件商標の登録出願時の平成11年12月27日及び登録査定時の平成12年9月19日には,原告商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして,日本又は外国における需要者の間に広く認識されていたものである。
原告は,本件商標の登録出願前から日本において原告商標を使用した植物育成用の電球類を販売していたのであり,また,上記登録出願前において原告と被告との間にはビジネス上の接触もあったのである。したがって,被告が原告商標の存在を認識しながら本件商標の登録出願をしたということは客観的事実というべきである。
オ したがって,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するものであり,この点に関する本件審決の判断は誤りである。
(3) 取消事由3(審理不尽の違法) 本件審判の担当審判官は,本件審判の請求について審決を特に急がなけれ ばならない状況にはなかったのであるから,当事者双方の主張,立証から十分な心証が得られなかったのであれば,職権審理主義に基づいて必要な釈明権を行使し,適正な審理を行うべきであった。
しかるに,担当審判官は,当事者双方の主張,立証が十分でないと判断しながら,必要な釈明権を行使せず,十分な審理を尽くさないまま,前記第2の2(1)ウのとおり判断し,本件商標は商標法4条1項7号及び同項19号に該当しないとの結論を出したものであり,その判断には審理不尽の違法がある。
2 被告の反論 本件審決の判断は正当であり,本件審決に原告主張の違法はない。
(1) 取消事由1について ア 原告は,幕張メッセ展示会において,被告が,原告の存在と原告商標を認識したと主張するが,被告は,それより以前に,本件商標と同一の商標「HORTILUX」を使用した植物育成用ランプを既にカナダと米国で販売していたものである。
したがって,商標「HORTILUX」は,幕張メッセ展示会が開催される以前に,既に被告が米国とカナダで販売するランプに使用する商標として採択していたものであり,幕張メッセ展示会が端緒となって採択したものでないことは明らかであるから,幕張メッセ展示会において,被告が,原告の存在と原告商標を認識したか否かは,本件商標が商標法4条1項7号に該当するか否かの判断要素とならない。
本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。
イ 本件審決の前記第2の2(1)ウの判断の趣旨は,被告が米国の子会社を介して米国とカナダで商標「HORTILUX」を使用したランプを販売した事実が存するか否かを判断する資料がないというものではなく,被告が子会社を介して米国とカナダで販売したのは,被告が原告のことを知る以前であったか否かを判断する資料がないというものである。換言すれば,被告が,米国とカナダで上記商標を使用したランプを販売する以前に,原告のことを知らなかったのか,あるいは,知っていたのか,そのことについて立証する証拠がないという趣旨である。
しかして,本件審決は,本件においては,商標法4条1項7号該当性を主張する原告において,本件商標が原告の商号から採択されたと認定するに十分な立証をしていないから,原告の主張は採用できないという結論に至ったものである。
したがって,本件審決の認定と結論との間に論理の飛躍などなく,その認定判断に誤りはない。原告のこの点の主張は,本件審決を正解しないものであり,失当である。
(2) 取消事由2について ア 原告が提出した証拠によっては,原告商標が,本件商標の登録出願前にオランダ等の外国や日本において周知となっていたものとはいい得ない。
イ 原告は,本件商標の登録出願前に,原告が日本で原告商標を使用した電球類を販売していたことと,原告と被告との間にビジネス上の接触があったことを理由として,本件商標は,原告の商標を知らずとも容易に採択できる造語であり,被告が原告を知る以前から米国等で使用していたものを日本でも登録出願したものあるという被告の反論は説得力に欠けると主張している。
しかしながら,原告の主張によれば,原告と被告との間にビジネス上の接触があったのは,平成10年4月に開催された幕張メッセ展示会であり,原告が日本において原告商標を付した電球類の販売を開始したのは,それより後の平成10年7月である。これに対し,被告が米国とカナダで商標「HORTILUX」を使用したランプの販売を開始したのは,平成9年12月であるから,被告が本件商標を採択したのは,少なくとも幕張メッセ展示会が開催される以前であったことは明らかである。
したがって,被告が米国等で使用していた商標「HORTILUX」は,幕張メッセ展示会や,原告が日本で電球類を販売開始したことが端緒となって採択されたものでないことは明白である。
また,原告は,被告が米国等で商標「HORTILUX」を使用したランプを販売する以前に,被告が原告の存在と原告商標を認識していたことについては主張及び立証をしていない。
さらに,本件商標中の「HORTI」は,園芸を意味する語として一般に多用されており,幕張メッセ展示会の英文表記中にも,「HORTI-MATION」とあるように,園芸を意味する「HORTI」の語が使用されている。したがって,この「HORTI」にランプ照度の単位を表す「LUX」の語を結合した造語商標「HORTILUX」を採択することは,原告商標を知らずとも容易になし得ることである。
よって,原告の主張は,失当であり,本願商標は「不正の目的をもって使用するものとすることもできない」とした本件審決の認定判断に誤りはない。
(3) 取消事由3について 本件審判の請求は,本件商標の登録を無効とすることを求めるものであり,拒絶査定に対する不服審判請求のように請求期限が定められている訳ではないから,審判請求人である原告は,外国企業と言えども,審判請求前に自らの主張と立証手段を十分準備することができたはずである。
また,原告が主張する幕張メッセ展示会でのビジネス上の接触に係る点は,本件商標の商標法4条1項7号及び同項19号該当性を判断する要素にはならないから,本件審決は,その点に関する審理・判断をしなかったまでであり,本件審決に審理不尽の違法はない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法4条1項7号該当性についての判断の誤り)について ア 商標法4条1項7号は,公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある商標は,商標登録を受けることができない旨規定しているところ,同規定の趣旨からすれば,@当該商標の構成自体が矯激,卑猥,差別的な文字,図形である場合など,その商標を使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反する場合,A他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,B当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが,それ以外にも,C特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が,その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど,当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も,この規定に該当すると解するのが相当である。
本件において,原告は,被告は,原告及び原告商標の存在を,遅くとも本件商標が登録出願される1年8か月前の平成10年4月には認識していたものであり,かかる状況の下で被告が平成11年12月27日に本件商標の登録出願をし,その登録を得たということは,外国において周知されている原告商標と同一,類似の商標について,「不正の目的」を持って登録出願をし,その登録を得たというに等しく,本件商標は,その登録出願経緯において,著しく妥当性を欠き,国際信義に違反し,商標法4条1項7号に該当する旨主張するので,以下検討する。
イ 証拠(甲2,3,甲4の1,2,甲5)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告は,本件商標が登録出願(平成11年12月7日)されるよりも約1年8か月前の平成10年4月下旬に,幕張メッセで開催された,「98施設園芸技術展(HI-TECH HORTI-MATION 98)」(幕張メッセ展示会)に共にその商品を出展し,また,被告会社の社員は,幕張メッセ展示会において,原告のブースを訪問し,原告の商品である電球類についての情報収集を行ったことが認められ,したがって,被告は少なくとも幕張メッセ展示会が開催された時点において,幕張メッセ展示会の参加会社として原告とビジネス上の接触を持ち,原告の商号が「Hortilux Schreder B.V.」であること及び原告が原告商標を植物育成用の電球類の商標として使用していることを認識するに至ったということができる。
しかしながら,証拠(乙3,4,乙6の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,米国法人「EYE LIGHTING 1NTERNATIONAL OF NORTH AMERICA, INC.」は原告の完全所有子会社であるが,当該子会社は,平成9年12月31日,カナダ国の「STANDARD PRODUCTS INC.」に「EYE」の社章と「Hortilux」の商標を付した園芸用ランプ36個を販売し,その後平成10年中にも「STANDARD PRODUCTS INC.」ほかの数社に同商標を付した園芸用ランプを継続して販売している事実が認められる。このように,被告は,原告において被告が原告の商号又は原告商標を認識したと主張する幕張メッセ展示会の開催の時点より前に,その完全所有子会社を通じて,米国及びカナダにおいて,「HORTILUX」(乙6の1)ないし「Hortilux」の商標を使用していたものものである。
のみならず,本件商標「HORTILUX」中の「HORTI」は,園芸を意味する英語である「horticulture」に由来するものであり,この語は少なくとも園芸用器具類の製造販売に係る業界においては一般に知られていることと認められ(甲2),また,同商標中の「LUX」の語がランプ照度の単位を表すものであることも一般によく知られているところであるから,被告がその商品である園芸用ランプに,これらを結合した造語商標「HORTILUX」を採択することは,原告商標について認識するまでもなく容易に想到し得るものである。
ウ 本件において,他に,被告が,ビジネス上の接触等を通じて知り得た原告の商号ないし原告商標を剽窃したなど,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くと認めるべき事情があると認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件商標が商標法4条1項7号に該当するということはできない。
2 取消事由2(商標法4条1項19号該当性についての判断の誤り)について ア 原告は,原告商標は,本件商標の登録出願前において,オランダその他の複数の外国において周知となっていたものである旨主張する。
しかしながら,原告が提出した書証のうち甲6の3,4は,本件商標の登録出願日(平成11年12月27日)以後の作成日付けのものであり,本件商標が,同出願日前に周知となっていたことを証するもの足り得ない。
また,甲6の1(雑誌「GREENHOUSE GROWER」(1997年月8月号)及び2(同1999年4月号)は,いずれも上記出願日前の作成日付けのものであるが,これら書証には,照明器具メーカーとして原告が紹介されているものの,原告商標が原告の商品である電球等の照明器具に使用されていると認め得るような記載は存在しないし,商標としての「HORTILUX」が記載されているわけでもない。
さらに,甲4の1(原告会社の代表者及び輸出経理部長の平成14年4月8日付け陳述書)には,原告会社を含むグループは,世界的園芸市場の同化照明製品の一流製造業者に属し,ヨーロッパ,アジア,中東,南北アメリカ,オーストラリア等の国々にその製品を輸出しているとの陳述記載があるが,これらがいつの時点のことを述べているのか明らかでないばかりでなく,その内容を裏付ける客観的証拠もない。
したがって,原告提出の証拠から,原告商標が本件商標の登録出願前にオランダ等の外国で周知となっていたものとはいうことはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
イ 次に,原告は,本件商標の登録出願前より日本において原告商標を用いて植物育成用の電球類の販売を行っていたとし,本件商標の登録出願時の平成11年12月27日及び登録査定時の平成12年9月19日には,原告商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして,日本における需要者の間に広く認識されていた旨主張する。
しかしながら,甲7及び8(いずれも原告の商品のカタログ)は,その配布日や配布数量等が不明であり,甲9の1(2002年4月開催の国際園芸技術展のポスター等)及び2(2002年4月22日付け日本農業新聞)は,本件商標の登録出願後に開催された展示会とその新聞記事である。
また,甲10は,1998年3月から2001年8月末までの間に日本で取引された原告の商品である電球類の販売数量を示す売上げリストであるというが,本件商標の登録出願前の販売数量をみると,その数は4503個に止まるものであり,また,同書証の記載からは当該商品に原告商標が付されていたものかどうかは明らかでない。
したがって,これらの書証をもって,原告商標が本件商標の登録出願時に日本国内で周知であったと認めることができず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
ウ のみならず,本件において,被告が,ビジネス上の接触等を通じて知り得た原告の商号ないし原告商標を剽窃したなど,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くと認めるべき事情があると認められないことは,前記1に説示したとおりであり,被告が不正な目的をもって原告商標の要素の一部を含む本件商標を使用するものとは認められない。
エ したがって,本件商標が商標法4条1項19号に該当するということはできない。
3 取消事由3(審理不尽の違法)について 原告は,本件審判において,担当審判官は,当事者双方の主張,立証が十分でないと判断しながら,必要な釈明権を行使せず,十分な審理を尽くさないまま,前記第2の2(1)ウのとおり判断しているが,かかる判断過程には審理不尽の違法がある旨主張する。
しかしながら,本件商標が商標法4条1項7号に該当すること,また,被告による本件商標の使用が商標法4条1項19号にいう「不正の目的をもって使用するもの」に該当することについては,原告が主張,立証責任を負うものであり,その点の立証がない以上,担当審判官が上記のとおりの判断をすることは当然のことである。そして,このような場合に,担当審判官が原告にさらにこれらの事項についての立証を促すか否かはその裁量にゆだねられている事柄であり,本件において,その裁量権の行使が著しく妥当性を欠き,これを違法とすべき事情があるとは認められない。
原告のこの点の主張は理由がない。
4 以上によれば,原告が取消事由として主張するところはいずれも理由がなく,その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青蜉]
裁判官 沖中康人
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