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事件 平成 18年 (ワ) 5272号 損害賠償請求事件
平成 18年 (ワ) 8460号 損害賠償請求事件
横浜市神奈川区<以下略> 第1,第2事件原告株 式会社ガトーよこはま
同訴訟代理人弁護士會田恒司 大阪市北区<以下略> 第1事件被 告株式会社千趣会
同訴訟代理人弁護士飯島歩
同 生沼寿彦
同 花井淳 神奈川県秦野市<以下略> 第2事件被 告株式会社日動計画神奈川県秦野市<以下略> 第2事件被 告A
上記2名訴訟代理人弁護士吉原省三
同 小松勉
同 三輪拓也
同訴訟復代理人弁護士上田敏成
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/12/27
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1第1,第2事件原告の第1事件主位的請求及び第2事件主位的請求をいずれも棄却する。
2第1事件被告株式会社千趣会は,第1,第2事件原告に対し,第2事件被告株式会社日動計画と連帯して34万5100円及びこれに対する2平成18年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3第2事件被告株式会社日動計画は,第1,第2事件原告に対し,第2事件被告Aと連帯して39万5900円及びこれに対する平成16年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(うち34万5100円及びこれに対する平成18年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員については第1事件被告株式会社千趣会と連帯して)を支払え。
4第2事件被告Aは,第1,第2事件原告に対し,第2事件被告株式会社日動計画と連帯して39万5900円及びこれに対する平成16年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5第1,第2事件原告のその余の第1事件予備的請求及びその余の第2事件予備的請求をいずれも棄却する。
6訴訟費用は,第1,第2事件原告に生じた費用の35分の12と第1事件被告株式会社千趣会に生じた費用との合計の300分の299を第1,第2事件原告の,300分の1を第1事件被告株式会社千趣会の各負担とし,第1,第2事件原告に生じた費用の35分の23と第2事件被告株式会社日動計画及び第2事件被告Aに生じた費用との合計の550分の549を第1,第2事件原告の,550分の1を第2事件被告株式会社日動計画及び第2事件被告Aの各負担とする。
7この判決は,第2ないし第4項及び第6項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1第1事件第1事件被告株式会社千趣会(以下「被告千趣会」という。)は,第1,第32事件原告(以下「原告」という。)に対し,金1億2000万円及びこれに対する平成18年3月17日(訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2第2事件第2事件被告株式会社日動計画(以下「被告日動計画」という。)及び第2事件被告A(以下,被告日動計画と被告Aとを併せて「被告日動計画ら」といい,被告日動計画らと被告千趣会とを併せて「被告ら」という。)は,原告に対し,連帯して,金2億2758万4020円及びこれに対する平成16年3月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等第1事件は,原告が,主位的に,被告千趣会が販売する被告日動計画の製造に係るチーズケーキに付していた標章,あるいは,被告千趣会のカタログ等の広告に使用していた標章等が,原告が独占的通常使用権を有する別紙商標権目録記載の商標(以下,「本件商標」といい,この商標に係る商標権を「本件商標権」という。)を侵害するものであり,さらに,被告日動計画が上記標章を本件商標と類似しない標章に変更した際の広告方法等に照らし,被告千趣会が被告日動計画と共同して行った上記変更後の販売又は広告行為は,本件商標に生じたグッドウィルを不正に利用する行為であって,原告の上記独占的通常使用権を侵害するものであるなどと主張して,被告千趣会に対し,前者について上記独占的通常使用権に基づき,後者について民法719条及び709条に基づき,それぞれ損害の賠償を求め,原告に上記独占的通常使用権が認められない場合に備え予備的に,被告千趣会の上記各行為は,本件商標権を有するBに対する商標権侵害行為及び不法行為に当たるものであり,原告は,Bから被告千趣会に対する各損害賠償請求権の譲渡を受けたなどと主張して,上記譲受債権に基づき,その支払を求める事案である。
4第2事件は,原告が,主位的に,被告日動計画が製造,販売するチーズケーキに付していた標章,あるいは,上記チーズケーキについて被告千趣会のカタログ等の広告に使用していた標章等が,原告が独占的通常使用権を有する本件商標を侵害するものであり,さらに,被告日動計画が上記標章を本件商標と類似しない標章に変更した際の広告方法等に照らし,被告日動計画が被告千趣会と共同して行った上記変更後の販売又は広告行為は,本件商標に生じたグッドウィルを不正に利用する行為であって,原告の上記独占的通常使用権を侵害するものであるなどと主張して,被告日動計画に対し,前者について上記独占的通常使用権に基づき,後者について民法719条及び709条に基づき,また,被告日動計画の代表取締役であった被告Aに対し,民法719条及び709条,あるいは,平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)266条の3に基づき,損害賠償の連帯支払を求め,原告に上記独占的通常使用権が認められない場合に備え予備的に,被告日動計画らの上記各行為は,本件商標権を有するBに対する商標権侵害行為及び不法行為に当たるものであり,原告は,Bから被告日動計画らに対する各損害賠償請求権の譲渡を受けたなどと主張して,上記譲受債権に基づき,その支払を求める事案である。
なお,第1事件における附帯請求は,不法行為の後の日である訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求であり,第2事件における附帯請求は,不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求である。
1当事者間に争いのない事実等(認定事実については末尾に証拠を掲記する。)(1)当事者等ア原告は,平成4年11月20日に設立された,食料品の販売等を目的とする株式会社である。原告は,平成14年12月16日に神奈川フルーツ株式会社から株式会社ガトーしらはまに商号を変更し,さらに,平成155年3月24日に現在の商号に変更した。また,原告は,平成14年12月16日,会社の目的を,従前の「1.食料品の販売,2.前号に附帯する一切の業務」から,「1.食料品の販売,2.洋菓子の製造,販売,3.前各号に附帯する一切の業務」に変更した。
Bは原告の代表取締役である。
イ被告日動計画は,昭和60年8月22日に設立された,建物及びその附属設備の維持管理業並びに洋菓子の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
被告Aは,平成16年1月7日まで,被告日動計画の代表取締役であった。
ウ被告千趣会は,書籍等の製造出版及び販売等を目的とする株式会社である。
(2)ガトーしらはまの倒産Cは,平成元年12月,有限会社白浜を設立してその代表取締役に就任した。
有限会社白浜は,平成11年4月,株式会社に組織変更をし,商号を株式会社ガトーしらはまに変更した(以下,この会社を「旧会社」という。)。
Cは,この組織変更がされた後も,引き続き同社の代表取締役の地位にあった。
旧会社は,平成12年5月31日時点で,約6379万円の欠損金を計上するに至り,その後,平成15年5月9日に横浜地方裁判所小田原支部に,破産申立てをし,同年7月11日,同支部から破産宣告決定を受けた。
(3)商標権の譲渡旧会社は,平成12年2月4日,特許庁に対し,本件商標について登録出願をし,平成13年2月23日,本件商標は登録された。
旧会社は,平成14年12月27日,Bに対し本件商標権を譲渡し,平成615年1月16日,その旨の移転登録がされた(甲1,2)。
(4)本件商標と別紙被告標章目録記載1の標章との類似性本件商標と別紙被告標章目録記載1の標章(以下,別紙被告標章目録記載の各標章を,それぞれに付された番号に従って「被告標章1」などといい,被告標章1ないし13をまとめて「各被告標章」という。)とは,前者の白色部分が後者においては金色となり,円部分及び文字部分等が縁取りされている点が異なるものの,両者は類似する。
2争点(1)原告の本件商標の独占的通常使用権の有無(2)各被告標章と本件商標とが類似するか否かア被告標章2及び9ないし12と本件商標とが類似するか否かイ被告標章3と本件商標とが類似するか否かウ被告標章4と本件商標とが類似するか否かエ被告標章5及び7と本件商標とが類似するか否かオ被告標章13と本件商標とが類似するか否かカ被告標章6と本件商標とが類似するか否かキ被告標章8と本件商標とが類似するか否か(3)被告らによる各被告標章の使用の有無及び時期ア被告標章1の使用の有無及び時期イ被告標章2の使用の有無及び時期ウ被告標章3の使用の有無及び時期エ被告標章4の使用の有無及び時期オ被告標章5の使用の有無及び時期カ被告標章6の使用の有無及び時期キ被告標章7の使用の有無及び時期ク被告標章8の使用の有無及び時期7ケ被告標章9ないし12の使用の有無及び時期コ被告標章13の使用の有無及び時期(4)被告らの各被告標章の使用についての過失の有無(5)被告日動計画が各被告標章の使用を止めた後の不法行為の成否(6)原告の商号続用者としての責任の有無(7)原告による権利濫用の有無(8)被告Aの責任の有無(9)損害の有無及び額第3争点に関する当事者の主張1争点(1)(原告の本件商標の独占的通常使用権の有無)について〔原告の主張〕Bは,遅くとも平成15年1月16日までに,原告に対し,本件商標につき独占的通常使用許諾をした(甲4)。
次に述べるとおり,神奈川県秦野市内の「レストランガトーしらはま」及び同県厚木市内の「シェヒロコ」並びに宮崎県日南市のC個人によるチーズケーキの販売の事実は,原告の独占的通常使用権と矛盾するものではない。
秦野市内の「レストランガトーしらはま」においては,Cの弟であるDが,原告から供給を受けた材料を使用し,当時原告の工場長であったCのレシピに従ってチーズケーキを製造,販売しており,いわば原告の手足となってチーズケーキの製造,販売に係る営業を行っているといえるし,パウンドケーキについては原告の商品をそのまま消費者に販売しているものである。
厚木市内の「シェヒロコ」に対しては,原告は,本件商標の使用を許諾していないものの,「シェヒロコ」による販売数量が少なく,任意に「シラハマチーズケーキ」の標章の使用を止めたので,法的措置を講じなかったにすぎない。
「シェヒロコ」は,現在においては,本件商標とは類似しない「ヒロコチーズケーキ」の標章を使用してチーズケーキを販売している。
8Cは現在も原告の従業員であり,平成18年以降,日南市内において原告の手足としてチーズケーキを製造,販売している。Cは,原告の商品との混同を防止すべく,「ガトーしらはま」や「しらはまチーズケーキ」の標章を使用していない。
〔被告千趣会の主張〕否認する。Bは,C(「レストランガトーしらはま」における使用を含む)や株式会社シェ・ヒロコに対して本件商標の使用を許諾しており,仮に原告が本件商標の通常使用権を有しているとしても独占的なものではなく,非独占的なものである。
〔被告日動計画らの主張〕否認ないし争う。
2争点(2)ア(被告標章2及び9ないし12と本件商標とが類似するか否か)について〔原告の主張〕(1)本件商標は,黒色の四角形の囲みの中の上段及び下段にアルファベットで「SHIRAHAMA」の文字列が,上段は上下逆さまに,下段は上下正しい方向で,1組表示されており,下部には「G □ teau」の文字列が下段の「SHIRAHAMA」の文字列の上部に表示されている外観を有する。
このように,本件商標の下半分においては,「G □ teau」の文字列が下段の「SHIRAHAMA」の文字列と2段にわたって表示され,1組の表示となっている。
(2)前記(1)の本件商標の外観からすると,本件商標からは,「ガトーシラハマ」又は「シラハマ」の称呼が生じる。
本件商標の構成のうち,「Restaurant」の文字列部分は普通名詞たる「レストラン」を示す部分であり,識別力のない部分である。また,「G □ teau」の文字列部分も,普通名詞たる「ケーキ」を示すものとし9て認識されることが多く,このように認識される場合には同文字列部分に識別力がない。そうすると,本件商標の要部は「SHIRAHAMA」の文字列部分のみであるか,「SHIRAHAMA」の文字列部分及び「G □ teau」の文字列部分の双方であって,前者の場合には要部から「シラハマ」の称呼が生じ,後者の場合には要部から「ガトーシラハマ」の称呼が生じる。
Cは,本件商標を付したチーズケーキを,「ガトーシラハマ」,「シラハマチーズケーキ」及び「シラハマノチーズケーキ」との称呼を用いて販売し,Cが製造,販売するチーズケーキは被告千趣会のチーズケーキのランキングでも2年連続で人気第1位となった。被告日動計画及び被告千趣会も本件商標を付したチーズケーキを「ガトーシラハマ」及び「シラハマチーズケーキ」などの称呼を用いて販売してきた。その結果,これらの称呼はCが製造する商品(チーズケーキ)を示すものとして周知となった。かかる取引の実情からすれば,本件商標から「ガトーシラハマ」又は「シラハマ」の称呼が生じることは明らかである。
なお,本件商標権に係る商標公報(甲1)中の「称呼(参考情報)」欄においても,本件商標から生じ得る称呼の1つとして「シラハマ」が最初に掲げられている。
(3)被告標章2は,「ガトーしらはま」と「しらはまチーズケーキ」の2つの文字列を上下に2段書きにして成る外観を有するものであり,前記(2)同様,「ガトー」の部分は普通名詞である「ケーキ」を示すものとして認識されることが多く,このように認識される場合には同部分に識別力がない。また,下段のうち「チーズケーキ」の部分はケーキの一種を示す普通名称であって,同部分には識別力がない。
そうすると,被告標章2の要部は上段及び下段の「しらはま」の各部分のみであるか,上段の「ガトーしらはま」の部分である。
なお,乙第12号証等では,被告日動計画のチーズケーキが評判の高い特10定のチーズケーキとして紹介されており,カタログ広告中で紹介される他のチーズケーキと区別するために被告標章が用いられているから,「しらはま」ないし「ガトーしらはま」の部分には出所識別機能がある。
(4)前記(2)及び(3)のとおり,本件商標の要部からも,被告標章2の要部からも,「ガトーシラハマ」ないし「シラハマ」という同一の称呼を生ずるから,本件商標と被告標章2とは類似する。
(5)被告標章9ないし12も,被告標章2と同様に,「ガトーしらはま」と「しらはまチーズケーキ」の2つの文字列を上下に2段書きにして成る外観を有するものであり,その要部は上段及び下段の「しらはま」の各部分のみであるか,上段の「ガトーしらはま」の部分である。後者のうち「ガトー」の部分は普通名称である「ケーキ」を示すものとして認識されることが多く,かかる場合には「ガトー」の部分に識別力がなく,「しらはま」の部分のみが要部となる。
本件商標の要部からも,被告標章9ないし12の要部からも,「ガトーシラハマ」ないし「シラハマ」という同一の称呼を生ずるから,本件商標と被告標章9ないし12とは類似する。
(6)被告らの主張について仮に,本件商標のうち「シラハマ」の称呼を生じる部分が商標法3条1項4号に当たるとしても,同条2項によれば,「前項第3号から第5号までに該当する商標であつても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」とされている。
本件商標は,その使用の結果需要者に周知となっているから,同条2項により,商標登録を受けることができるものであって,上記部分に識別力がないとはいえない。
〔被告千趣会の主張〕11次のとおり,本件商標と被告標章2及び9ないし12とは類似しない。
(1)本件商標は,図形と文字とを組み合わせたものであって,個々の文字の内容ではなく,その特徴的な外観である全体が一体として図形を形成する。
すなわち,本件商標のうち「シラハマ」の部分は,人の姓としても,地名としてもありふれた識別力のない普通名称であって,この部分のみでは商標の不登録事由(商標法3条1項4号)に当たり得るものであるし,「Restaurant」及び「G □ teau」の部分も,本件商標の指定商品である「菓子及びパン」との関係では,同様に識別力のない普通名称であって,この部分のみでは不登録事由(同項1号)に当たり得るものだからである。
(2)前記(1)のとおり,本件商標は全体が一体として図形を形成するものであるから,単純に「シラハマ」等の称呼を生じない。
特に,本件商標の構成のうち,「G □ teau」の文字列部分はフランス語の単語であって,その読み方が一般に知られているとはいえない上,筆記体で記されており,容易に認識し得る状態になっていない。
そうすると,本件商標からは,「シラハマ」又は「ガトーシラハマ」等の称呼は生じない。
(3)本件商標は,図形と文字とを組み合わせた外観を有するのに対し,被告標章2及び9ないし12はいずれも文字列を2段書きした外観を有するものであって,両者の外観は全く異なる。
また,前記(2)のとおり,両者から生じる称呼は一致しない。
そうすると,本件商標と被告標章2及び9ないし12とは類似しない。
(4)仮に,本件商標と被告標章2及び9ないし12が類似するとしても,本件商標権の効力は,それぞれ普通名称にすぎない「しらはま」,「チーズケーキ」,「ガトー」を組み合わせたにすぎない被告標章2ないし13には及ばない(商標法26条1項2号)。
〔被告日動計画らの主張〕12次のとおり,本件商標と被告標章2及び9ないし12とは類似しない。
(1)本件商標の外観は,次のとおりのものであり,図形と文字とを組み合わせたものであって,全体が一体として顕著性を有するものである。
ア本件商標全体は縦長の黒枠で囲まれた矩形をしており,前記黒枠は左右の枠の幅が上下の枠の幅よりも大きく(幅広に)なっている。
イ前記黒枠の内側の上下に「SHIRAHAMA」の文字列を上下対称に表示し,前記黒枠で囲まれた白色の矩形の中央部に,中央部分が白抜きの円となっている黒色の円を,前記黒枠の内側に接して配している。
ウ前記黒色の円の内側には,白抜きの飾り文字で,上部には「Restaurant」,下部には「G □ teau」の文字列をそれぞれ表示している。
エ前記白抜きの円の内側には,それぞれ黒色の「H」と「S」とを重ねて組み合わせた文字が表示されている。
(2)前記(1)のとおり,本件商標は全体が一体として顕著性を有するものであるから,単純に「シラハマ」,「ガトー」又は「レストラン」等の称呼を生じるものではない。
そもそも,「しらはま」は,人の氏である「白浜」の音であるが,これはありふれた氏である。あるいは,「しらはま」は「白い砂浜」を意味し,海に囲まれた我が国においては「白浜」の地名は各地に存在するありふれた地名である。そうすると,「しらはま」の部分のみでは商標法3条1項4号の不登録事由に当たり,商標登録を受けることができない。
また,本件商標の構成のうち,「Restaurant」(レストラン)の部分や「G □ teau」(ガトー)の部分は,いずれも普通名称であって,本件商標の指定商品たる「菓子及びパン」については商標法3条1項1号の不登録事由に当たり,それら自体では商標登録を受けることができない。
したがって,本件商標で識別力があるのは,その全体の外観であって,13「SHIRAHAMA」の文字列部分のみが本件商標の要部となるわけではない。「SHIRAHAMA」の文字列部分と「G □ teau」の文字列部分の組合せについても,これらの部分のみが本件商標の要部となるわけではない。
以上によれば,本件商標からは「シラハマ」又は「ガトーシラハマ」の称呼は生じない。本件商標の一部である上記各文字列部分から生じる称呼「シラハマ」又は「ガトーシラハマ」のみを取り出して類否判断をするのは相当でない。
(3)本件商標は,図形と文字とを組み合わせた外観を有する。
他方,被告標章2及び9ないし12のうち上段部分は,「株式会社ガトーしらはま」という旧会社の商号を記述的に表現したものと解される。そうすると,被告標章2及び9ないし12のうち標章として機能する部分は下段部分のみである。同下段部分の「しらはまチーズケーキ」は文字のみから成る外観を有するから,本件商標の外観とは全く異なる。
したがって,本件商標と被告標章2及び9ないし12とは類似しない。
3争点(2)イ(被告標章3と本件商標とが類似するか否か)について〔原告の主張〕次のとおり,本件商標と被告標章3とは類似する。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔原告の主張〕のとおりである。
(2)被告標章3は,「ガトーしらはま」の文字列を縦1行で記した外観を有するものであり,全体が要部であるか,「しらはま」の部分のみが要部である。前者の場合には「ガトーシラハマ」の称呼が生じ,後者の場合には「シラハマ」の称呼が生じる。
(3)本件商標と被告標章3とは,「ガトーシラハマ」又は「シラハマ」という同一の称呼を生じるから,両者は類似する。
14〔被告千趣会の主張〕次のとおり,本件商標と被告標章3とは類似しない。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告千趣会の主張〕のとおりである。
(2)被告標章3は「ガトーしらはま」の文字列を縦1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章3とは外観が全く異なる。
また,本件商標と被告標章3とは,称呼が異なる。
(3)以上のとおり,本件商標と被告標章3とは,外観及び称呼がいずれも異なるから,両者は類似しない。
〔被告日動計画らの主張〕次のとおり,本件商標と被告標章3とは類似しない。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告日動計画らの主張〕のとおりである。
(2)被告標章3は,「ガトーしらはま」の文字列を縦1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章3とは外観が全く異なる。
したがって,本件商標と被告標章3とは類似しない。
なお,被告標章3は,チーズケーキに付された標章(商品表示)ではなく,被告千趣会のカタログにおいて商号「株式会社ガトーしらはま」の略称を記述的に表現したもの(営業表示)にすぎない。
4争点(2)ウ(被告標章4と本件商標とが類似するか否か)について〔原告の主張〕次のとおり,本件商標と被告標章4とは類似する。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔原告の主張〕のとおりである。
15(2)被告標章4は,「しらはまチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するものであり,「チーズケーキ」の部分はケーキの一種を示す普通名称であって,同部分には識別力がない。
そうすると,被告標章4の要部は「しらはま」の部分のみであって,「シラハマ」の称呼が生じる。
(3)本件商標と被告標章4とは,その外観が異なるものの,「シラハマ」という同一の称呼を生じるか,被告標章4から生じる称呼である「シラハマ」が本件商標から生じる称呼である「ガトーシラハマ」の一部であるから,両者は類似する。
〔被告千趣会の主張〕次のとおり,本件商標と被告標章4とは類似しない。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告千趣会の主張〕のとおりである。
(2)被告標章4は,「しらはまチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章4とは外観が全く異なる。
また,本件商標と被告標章4とは,称呼が異なる。
したがって,本件商標と被告標章4とは類似しない。
〔被告日動計画らの主張〕次のとおり,本件商標と被告標章4とは類似しない。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告日動計画らの主張〕のとおりである。
(2)被告標章4は,「しらはまチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章4とは外観が全く異なる。
したがって,本件商標と被告標章4とは類似しない。
165争点(2)エ(被告標章5及び7と本件商標とが類似するか否か)について〔原告の主張〕(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔原告の主張〕のとおりである。
(2)被告標章5は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するものであり,「チーズケーキ」の部分はケーキの一種を示す普通名称であって,同部分には識別力がない。また「しらはま」と「チーズケーキ」とを結ぶ「の」は,後者が前者の製造,販売する商品であることを示す助詞にすぎない。
そうすると,被告標章5の要部は「しらはま」の部分のみであって,「シラハマ」の称呼を生じる。
(3)本件商標と被告標章5とは,その外観が異なるものの,「シラハマ」という同一の称呼を生じるか,被告標章5から生じる称呼である「シラハマ」は本件商標から生じる称呼である「ガトーシラハマ」の一部であるから,両者は類似する。
(4)被告標章7は,同一の「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横2行で,上の行は大きく,下の行は小さく記した外観を有し,被告標章5と同様に,「シラハマ」の称呼を生じるから,本件商標と類似する。
〔被告千趣会の主張〕(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告千趣会の主張〕のとおりである。
(2)被告標章5は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章5とは外観が全く異なる。
また,本件商標と被告標章5とは,称呼が異なる。
したがって,本件商標と被告標章5とは類似しない。
17(3)被告標章7も,被告標章5と同様に,本件商標と類似しない。
〔被告日動計画らの主張〕(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告日動計画らの主張〕のとおりである。
(2)被告標章5は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章5とは外観が全く異なる。
したがって,本件商標と被告標章5とは類似しない。
なお,被告標章5は,チーズケーキに付された標章(商品表示)ではなく,被告千趣会のカタログにおいて商号「株式会社ガトーしらはま」の略称を記述的に表現したもの(営業表示)にすぎない。
(3)被告標章7も,被告標章5と同様に,本件商標と類似しない。
6争点(2)オ(被告標章13と本件商標とが類似するか否か)〔原告の主張〕(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔原告の主張〕のとおりである。
(2)被告標章13は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである(なお,甲第11号証には,末尾の「キ」の文字がないが,これは,ホームページをプリントアウトする際,用紙が小さかったために,末尾の上記文字が印刷されなかったことによる。上記ホームページ上では,被告標章13のとおり,「しらはまのチーズケー」に続けて,末尾にこれと同様の書体及び大きさの「キ」が付されていた。)。このうち,「チーズケーキ」の部分はケーキの一種を示す普通名称であって,同部分には識別力がない。また「しらはま」と「チーズケーキ」とを結ぶ「の」は,後者が前者の製造,販売する商品であることを示す助詞にすぎない。
18そうすると,被告標章13の要部は「しらはま」の部分のみであって,「シラハマ」の称呼を生じる。
(3)本件商標と被告標章13とは,その外観が異なるものの,「シラハマ」という同一の称呼を生じるか,被告標章13から生じる称呼である「シラハマ」は本件商標から生じる称呼である「ガトーシラハマ」の一部であるから,両者は類似する。
〔被告千趣会の主張〕前記5〔被告千趣会の主張〕と同様に,本件商標と被告標章13とは類似しない。
〔被告日動計画らの主張〕(1)被告標章13は,「しらはまのチーズケーキ」という表記において「キ」の字体が特定されていないから,「キ」の文字が表示されていたことを前提とする原告の主張は失当である。
(2)なお,「キ」の字体の特定を欠く「しらはまのチーズケーキ」という被告標章13は,「しらはまのチーズケー」との文字列を横1行で記した外観を有するもので,平仮名と片仮名の文字のみから成るものである。本件商標の外観,要部及び称呼については,前記2〔被告日動計画らの主張〕のとおりであり,本件商標と被告標章13とは外観が全く異なる。
したがって,本件商標と被告標章13とは類似しない。
7争点(2)カ(被告標章6と本件商標とが類似するか否か)について〔原告の主張〕次のとおり,本件商標と被告標章6とは類似する。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔原告の主張〕のとおりである。
(2)被告標章6は,「しらはま」の文字列を横1行で記した外観を有し,「シラハマ」の称呼を生じる。
19(3)本件商標と被告標章6とは,その外観が異なるものの,「シラハマ」という同一の称呼を生じるか,被告標章6から生じる称呼である「シラハマ」は本件商標から生じる称呼である「ガトーシラハマ」の一部であるから,両者は類似する。
〔被告千趣会の主張〕次のとおり,本件商標と被告標章6とは類似しない。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告千趣会の主張〕のとおりである。
(2)他方,被告標章6は,「しらはま」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章6とは外観が全く異なる。
また,本件商標と被告標章6とは,称呼が異なる。
したがって,本件商標と被告標章6とは類似しない。
〔被告日動計画らの主張〕次のとおり,本件商標と被告標章6とは類似しない。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔被告日動計画らの主張〕のとおりである。
(2)他方,被告標章6は,「しらはま」の文字列を横1行で記した外観を有するもので,文字のみから成るものである。
そうすると,本件商標と被告標章6とは外観が全く異なる。
したがって,本件商標と被告標章6とは類似しない。
なお,被告標章6は,チーズケーキに付された標章(商品表示)ではなく,被告千趣会のカタログ広告において商号「株式会社ガトーしらはま」の略称を記述的に表現したもの(営業表示)にすぎない。
8争点(2)キ(被告標章8と本件商標とが類似するか否か)について〔原告の主張〕20次のとおり,本件商標と被告標章8とは類似する。
(1)本件商標の外観,要部及び称呼は,前記2〔原告の主張〕のとおりである。
(2)被告標章8は,上の行に「しらはま」と,下の行に「しらはまチーズケーキ」と,横2行で,上の行は大きく,下の行は小さく記した外観を有し,「シラハマ」の称呼を生じる。
(3)本件商標と被告標章8とは,その外観が異なるものの,「シラハマ」という同一の称呼を生じるか,被告標章8から生じる称呼である「シラハマ」は本件商標から生じる称呼である「ガトーシラハマ」の一部であるから,両者は類似する。
〔被告千趣会の主張〕前記2〔被告千趣会の主張〕と同様に,本件商標と被告標章8とは類似しない。
〔被告日動計画らの主張〕前記2〔被告日動計画らの主張〕と同様に,本件商標と被告標章8とは類似しない。
9争点(3)ア(被告標章1の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕(1)被告日動計画らは,Bへの本件商標権の移転登録の日である平成15年1月16日(以下「本件移転登録日」という。)以降も同年12月までは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキを,その包装箱(包装)に被告標章1を付して,譲渡(販売)していた。被告千趣会も,同様の譲渡を行っていた。
また,被告千趣会は,本件移転登録日以降,自らのカタログ広告(甲7)中に被告標章1を表示して,自ら又は被告日動計画らのために広告宣伝活動を行った。後者は被告日動計画らの譲渡を幇助する行為に当たる。
21なお,被告千趣会が被告標章1の上に,別の標章を印刷した紙片を貼付し,被告標章1を覆い隠していた事実はない。仮に同事実があったとしても,商品に被告標章1を付して譲渡していることに変わりはない。
(2)被告らの主張について通信販売業者の株式会社ベルーナ(以下「ベルーナ」という。)の平成15年9月26日当時のホームページ(甲9)では,被告標章1が蓋の中央に付された黒い包装箱を表示して「しらはまのチーズケーキ」を販売している。
同ホームページを見てチーズケーキを購入した顧客に対し「デボンポート」,「DEVONPORT」の文字列ないし標章が付された黒い包装箱や黄色い包装箱で商品を発送したならば,顧客からクレームが付くはずであり,ベルーナにおいても直ちに自らのホームページ上の包装箱の画像(写真)を変更したはずである。
しかし,ベルーナは,被告日動計画が「デボンポート」の表示に変更したと主張する平成15年7月より後である上記日付になっても,包装箱の画像を変更していない。これは被告らが上記日付ころにおいても被告標章1を包装箱に付して「使用」していたことを示すものである。
また,原告が入手した被告日動計画の商品は,平成16年6月1日を賞味期限とするものであるところ,この商品の黒い包装箱(甲28の1ないし5)には被告標章1が印刷されており,被告標章1の上に別の標章が印刷されたシールが貼られていた。
〔被告千趣会の主張〕チーズケーキが本件商標の指定商品である「菓子」に含まれることは認め,その余は否認する。
被告日動計画は,従来被告標章1を使用していたが,平成15年3月8日以降は,いったん上記標章が印刷されている黒色の包装箱の使用を中止し,同月13日以降,被告千趣会に対し,上記標章が印刷されていない黄色無地の包装22箱に切り替えて,チーズケーキを販売した。
なお,原告の指摘する包装箱(甲28の1ないし5)は,被告千趣会の販売にかかる商品を包装したものではない。
また,カタログ広告(甲7)中の被告標章1は極めて小さく,識別が困難であるから,同標章が掲載されているとしても,同標章を「使用」したとはいえない。
〔被告日動計画らの主張〕チーズケーキが本件商標の指定商品である「菓子」に含まれることは認め,その余は否認する。
被告日動計画は,従来被告標章1を使用していたものの,平成15年3月8日以降は,いったん上記標章が印刷されている黒色の包装箱の使用を中止し,被告千趣会を含む販売先に対して,平成15年3月8日から同月12日の間は,色見本で取り寄せたサンプルの包装箱を使用し,同月13日からは,上記標章が印刷されていない黄色無地の包装箱に切り替えて,チーズケーキを販売した。
また,被告日動計画は,平成15年8月ころ以降,被告標章1が印刷された黒色の包装箱の上記標章の上にシールを貼り,上記標章を隠してチーズケーキを譲渡(販売)した。
なお,カタログ広告(甲9)に掲載されているチーズケーキを製造したのは被告日動計画ではないものの,被告日動計画は平成15年10月,株式会社ベルーナに対し,速やかにホームページの訂正を申し入れた。
10争点(3)イ(被告標章2の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕被告千趣会は,本件移転登録日以降も,カタログ広告(甲13は平成14年5月ころ配布されたものである。)において,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に,被告標章2を付して展示し,同カタログ広告を頒布させた。
23また,被告日動計画らは,同被告らの意向を受けて被告千趣会が作成・頒布する上記カタログ広告において,被告標章2を付してチーズケーキの広告を展示し,同カタログ広告を頒布させた。
〔被告千趣会の主張〕否認する。被告千趣会は本件移転登録日後は被告標章2を使用していない。
なお,カタログ広告(甲13)の配布がされたのは平成14年5月上旬ころである。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。被告千趣会のカタログ広告(甲13)で被告標章2を使用したのは同被告であって被告日動計画らではない。
11争点(3)ウ(被告標章3の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕前記10〔原告の主張〕と同様,被告千趣会は,本件移転登録日以降も,カタログ広告(甲7は平成15年1月ころのものである。)中のチーズケーキの広告に,被告標章3を付して展示し,同カタログ広告を頒布した。
また,被告日動計画らは,同被告らの意向を受けて被告千趣会が作成・頒布する上記カタログ広告において,被告標章3を付してチーズケーキの広告を展示し,同カタログ広告を頒布させた。
〔被告千趣会の主張〕否認する。被告千趣会は本件移転登録日後は被告標章3を使用していない。
なお,カタログ広告(甲7)の配布がされたのは本件商標権の移転登録前である平成15年1月上旬ころである。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。被告千趣会のカタログ広告で被告標章3を使用したのは同被告であって被告日動計画らではない。
12争点(3)エ(被告標章4の使用の有無及び時期)について24〔原告の主張〕(1)前記10〔原告の主張〕と同様,被告千趣会は,本件移転登録日以降も,カタログ広告(甲7)中のチーズケーキの広告に,被告標章4を付して展示し,同カタログ広告を頒布した。
また,被告日動計画らは,同被告らの意向を受けて被告千趣会が作成・頒布する上記カタログ広告において,被告標章4を付してチーズケーキの広告を展示し,同カタログ広告を頒布させた。
(2)被告日動計画らの主張について被告標章4は,前記(1)のカタログ広告において,他の製造者が製造したチーズケーキと識別するために用いられており,出所識別機能がある状態で使用されている。
〔被告千趣会の主張〕否認する。被告千趣会は本件移転登録日後は被告標章4を使用していない。
なお,カタログ広告(甲7)の配布がされたのは本件商標権の移転登録前である平成15年1月上旬ころである。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。被告千趣会のカタログ広告(甲7)で被告標章4を使用したのは同被告であって被告日動計画らではない。
なお,カタログ広告(甲7)において,被告標章4は,単に「しらはま」で製造した「チーズケーキ」という意味を記述的に表現したものにすぎず,出所識別のための標章として用いられているわけではない。
13争点(3)オ(被告標章5の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕被告日動計画らは,本件移転登録日以降も,自らのインターネット・ホームページ(以下単に「ホームページ」という。)において,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に被告標章5を付して表示させ25(甲6(ページ最上段),9,24(ページ最上段),25(ページ最上段)。
甲6,24,25は平成15年6月16日,甲9は同年9月26日のものである。),もってかかる広告を内容とする情報に被告標章5を付して電磁的方法により提供した。
なお,上記ホームページにおいて,被告標章5が出所識別機能を有する態様で用いられていることは,前記12〔原告の主張〕(2)と同様である。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。各ホームページ中の被告標章5の表示部分は,単に「しらはま」で製造した「チーズケーキ」という意味を記述的に表現したものにすぎず,出所識別のための標章として用いられているわけではない。
また,甲9号証のホームページで被告標章5を表示している者は被告日動計画らではない。
14争点(3)カ(被告標章6の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕被告日動計画らは,本件移転登録日以降も,自らのホームページ(ページ最上段)において,チーズケーキの広告に被告標章6を付して表示させ(甲16は平成15年6月16日のものである。),もってかかる広告を内容とする情報に被告標章6を付して電磁的方法により提供した。
なお,上記ホームページにおいて,被告標章6が出所識別機能を有する態様で用いられていることは,前記12〔原告の主張〕(2)と同様である。「チーズケーキ冷凍冷蔵」との表示は識別標識ではなく,識別標識として使用されているのは,「しらはま」の部分である。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。被告日動計画らは被告標章6を使用していない。甲第16号証のホームページにおいては,「チーズケーキ冷凍冷蔵しらはま」と記載されており,「しらはま」は会社の略称であってチーズケーキの標章ではない。
2615争点(3)キ(被告標章7の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕被告日動計画らは,本件移転登録日以降も,自らのホームページにおいて,チーズケーキの広告に被告標章7を付して表示させ(甲24は平成15年6月16日のものである。),もってかかる広告を内容とする情報に被告標章7を付して電磁的方法により提供した。
なお,上記ホームページにおいて,被告標章7が出所識別機能を有する態様で用いられていることは,前記12〔原告の主張〕(2)と同様である。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。ホームページ中の被告標章7の表示部分は,単に「しらはま」で製造した「チーズケーキ」という意味を記述的に表現したものにすぎず,出所識別のための標章として用いられているわけではない。
16争点(3)ク(被告標章8の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕前記10〔原告の主張〕と同様,被告千趣会は,本件移転登録日以降も,カタログ広告(甲8は平成15年5月ころのものである。)中のチーズケーキの広告に,被告標章8を付して展示し,同カタログ広告を頒布した。
また,被告日動計画らは,同被告らの意向を受けて被告千趣会が作成・頒布する上記カタログ広告において,被告標章8を付してチーズケーキの広告を展示し,同カタログ広告を頒布させた。
〔被告千趣会の主張〕認める。なお,カタログ広告(甲8)が配布されたのは平成15年5月上旬ころである。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。カタログ広告(甲8)中で被告標章8を表示したのは,被告日動計画らではない。
2717争点(3)ケ(被告標章9ないし12の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕前記10〔原告の主張〕と同様,被告千趣会は,本件移転登録日以降も,カタログ広告(甲14,乙7ないし9。甲14は平成15年1月ころのものである。)中のチーズケーキの広告に,被告標章9ないし12を付して展示し,同カタログ広告を頒布した。
また,被告日動計画らは,同被告らの意向を受けて被告千趣会が作成・頒布する上記カタログ広告において,被告標章9ないし12を付してチーズケーキの広告を展示し,同カタログ広告を頒布させた。
なお,被告千趣会も,被告日動計画らも,カタログ広告中で,他社が製造,販売するチーズケーキと識別するために被告標章9ないし12を使用している。
〔被告千趣会の主張〕(1)被告千趣会は本件移転登録日後は被告標章9を使用していない。なお,カタログ広告(甲14)が配布されたのは平成15年1月上旬ころである。
(2)被告千趣会が本件移転登録日後に被告標章10ないし12を使用したことは認める。なお,被告千趣会のカタログ広告のうち,乙第7号証は平成15年2月上旬ころに,乙第8号証は同年3月上旬ころに,乙第9号証は同年4月上旬ころにそれぞれ配布された。
〔被告日動計画らの主張〕否認する。カタログ広告中で被告標章9ないし12を表示したのは,被告日動計画らではない。
18争点(3)コ(被告標章13の使用の有無及び時期)について〔原告の主張〕(1)被告日動計画は,本件移転登録日以降も,自らのホームページにおいて,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に被告標章13を付して表示させ(甲第11号証は平成15年10月9日のものであ28る。),もってかかる広告を内容とする情報に被告標章13を付して電磁的方法により提供した。
なお,甲第11号証中の被告標章13に相当する標章に,末尾の「キ」の文字がないのは,ホームページをプリントアウトする際に,用紙が小さかったために,末尾の上記文字が印刷されなかったことによるものである。上記ホームページ上では,被告標章13のとおり,「しらはまのチーズケー」に続けて,末尾にこれと同様の書体及び大きさの「キ」が付されていた。
(2)上記ホームページにおいて,被告標章13が出所識別機能を有する態様で用いられていることは,前記12〔原告の主張〕(2)と同様である。
〔被告日動計画らの主張〕(1)被告標章13は,「しらはまのチーズケーキ」という文字から成るものであるにもかかわらず,「キ」の字体は特定されていないから,原告の主張は失当である。
(2)また,「しらはまのチーズケー」という表記だけでは,商標的使用がされたとはいえないし,そもそも,甲第11号証のページは,「特定商取引に関する法律に基づく表示」を目的として作成されたページであり,その上部のバナー広告は付随的なものにすぎないから,ここでの表記は商標的使用にはあたらない。
19争点(4)(被告らの各被告標章の使用についての過失の有無)について〔原告の主張〕(1)被告千趣会には,各被告標章の使用につき少なくとも過失がある。
すなわち,被告千趣会は,被告日動計画が本件商標の使用許諾を受けたことを確認すべき義務があったのに,これを怠って,各被告標章を使用したものであるから,被告千趣会には過失がある。
なお,被告千趣会は,チーズケーキの取引先を旧会社から被告日動計画に変更するに当たっても,旧会社から,被告日動計画が本件商標の使用許諾を29受けていることを確認しなかった。
また,Bは,平成15年3月5日,被告千趣会の本店に赴いて食品事業部の担当者と面談し,同担当者に対し,Bが本件商標権の権利者であり,各被告標章が使用された被告日動計画のチーズケーキを販売することはBの商標権を侵害する行為である旨を説明した。被告千趣会は,同日,Bの上記説明の趣旨を了知したから,同日以降の各被告標章の使用については,故意があるというべきである。
(2)被告日動計画らには,各被告標章の使用につき少なくとも過失がある。
すなわち,被告日動計画らは,平成15年1月20日ころ,原告の開店のチラシを入手したか又は入手し得る状況にあったのであり,このころ,原告が本件商標を使用してチーズケーキを販売することを認識し得たにもかかわらず,各被告標章を使用したものであるから,過失があるというべきである。
(3)被告らの主張についてアCは被告日動計画との間で,本件商標の使用許諾契約を締結していない。
ノウハウ実施契約書(丙2の2)のCの作成部分は,同人が自ら作成したものでも,同人の意思に基づいて作成されたものでもなく,被告A等が無権限で作成したもので,偽造に係るものである。むしろ,Cは,平成14年11月以降は,被告日動計画に対し,「しらはま」の名称の使用を認めない旨明言していた。
イ被告日動計画は,平成15年4月30日,株式会社東平商会に対し,原告が同年1月に配布したリニューアルオープンのチラシを同封した書面を送っている(甲33)。これは被告日動計画が平成15年1月の時点で,本件商標権について移転登録がされ,原告が本件商標と類似の標章を使用してチーズケーキを販売していた事実を知っていたことを示すものである。
ウBは,旧会社から,本件商標権の実質的な移転を受け,移転登録を完了した。
30〔被告千趣会の主張〕被告日動計画は,従前,旧会社から本件商標の使用許諾を受けていた。被告千趣会は,平成15年2月末ころにB及びCの訪問を受け,本件商標権がBに移転されたことを告げられた。商標権の新規登録の場合と異なり,商標権の移転登録の場合には,公報による公示がされないから,第三者は商標権の登録原簿を確認しない限り商標権の移転の事実を知ることができない。
他方,被告千趣会は,被告日動計画に指示して,Bの上記告知を受けた後の同年3月7日ころ,速やかに被告標章1が付された包装箱の使用を中止させた。
そうすると,被告千趣会が同年1月16日以降同年3月7日ころまでの間に被告標章1を使用したことについては,過失がない。
〔被告日動計画らの主張〕被告日動計画らには,本件商標の独占的通常使用権の侵害について過失がない。
すなわち,被告日動計画は,旧会社からBが本件商標権を譲り受ける前である平成14年9月24日に,少なくとも被告千趣会に対する商品に本件商標を使用することについて,また同年10月17日に,すべての顧客に対する商品に本件商標を使用することについて,それぞれ,旧会社から許諾を受けた。
被告日動計画は,Bが本件商標権の移転登録を受けた平成15年1月16日以降も,Bが被告千趣会に対して後記の警告をしたときまで,旧会社がBに対して本件商標権を譲渡(移転登録)したことも,原告が「ガトーしらはま」等の標章を用いてチーズケーキの製造,販売を開始したことも知らなかった。
被告日動計画が本件商標権の譲渡の事実を初めて知ったのは,同年3月7日のことで,被告日動計画の現代表者であるEが同日に被告千趣会の本店に出向いた際のことである。この際,Eは,被告千趣会から,同被告が同月5日にBの訪問を受け,同人から,本件商標権の移転登録の事実の告知及び商標権侵害の警告を受けたことを聞いた。また,Eは,この際,被告千趣会から,原告の31リニューアルオープンのチラシを入手した。
被告日動計画は,本件商標の使用権限があると信じており,各被告標章の使用につき過失がない。
なお,被告日動計画の取引先が平成15年1月16日以降も各被告標章を使用していたとしても,そのこと自体は被告日動計画らの関知するところではなく,やむを得ないものである。
Bは貸金の担保として本件商標権を譲り受けたので,旧会社が本件商標権を受け戻す可能性があり,旧会社の破産管財人がBとの間で訴訟上の和解をした平成18年3月ころまで,本件商標権はBに対し確定的に移転していなかったものである。そうすると,被告日動計画が平成15年3月7日に本件商標権の譲渡の事実を知ったとしても,本件商標権の実質的な移転を知ったことにはならず,その後の各被告標章の使用行為に過失があるとはいえない。
20争点(5)(被告日動計画が各被告標章の使用を止めた後の不法行為の成否)について〔原告の主張〕旧会社の製造,販売するチーズケーキは,被告千趣会の顧客による「チーズケーキの会」において2年連続で1位となるなど,若い女性等の間で人気を博し,遅くとも平成15年1月ころには,本件商標又はこれから生じる「ガトーしらはま」ないし「しらはま」の称呼は,チーズケーキの需要者の間でおいしいチーズケーキの製造,販売元を示すものとして周知となるに至っており,本件商標には業務上の信用(グッドウィル)が化体するに至った。
他方,被告日動計画は,平成15年1月16日から少なくとも1年間にわたって各被告標章を使用し,チーズケーキを販売してきたものであり,原告から各被告標章の使用中止等を求める警告を受けて,平成16年3月ころ,各被告標章の使用を中止し,「デボンポート」の文字列からなる標章に変更した。
しかし,被告千趣会は,被告日動計画らの指示に基づき,標章の変更をした32際,自らのカタログ広告等に,「店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。これからもよろしくお願いいたします。」又は「店名が『デボンポート』に変わりました。これからもよろしくお願いします。」と記載して広告宣伝を行った。
被告日動計画らは,以後,上記「デボンポート」の標章を使用してチーズケーキを販売しているものの,被告日動計画らのかかる一連の行為は,「デボンポート」の標章が付されたチーズケーキが本件商標が付されたチーズケーキないしCが工程を管理して製造したチーズケーキである原告のチーズケーキとその出所が同一である旨を需要者ないし取引者に誤信させて(出所の混同),商品を販売する行為であって,本件商標に付着した業務上の信用(グッドウィル)を不正に利用するものであり,自由競争として許容される範囲を著しく逸脱し,本件商標権の独占的通常使用権の許諾を受けた原告,あるいは,本件商標権を有するBに対する不法行為に当たる。
そして,被告千趣会は,広告宣伝により,かかる被告日動計画らの不法行為を幇助し又は共同で行っているものである。
なお,旧会社は被告日動計画との間で「ガトーしらはまチーズケーキ」の製造,販売に係るノウハウ実施契約を締結したことはなく,同被告に対し,本件商標の使用を許諾していない。同ノウハウ実施契約書(丙2の2)のうち旧会社の代表者C作成部分は,被告日動計画が当時保管していた旧会社のゴム印やCの実印を冒用して勝手に作出したものである。
また,被告日動計画は,平成15年1月の時点で原告の店舗のリニューアルオープンのチラシを入手しており,既に同月の時点で原告が本件商標に類似する標章を使用してチーズケーキを製造,販売していることを知っていた。
〔被告千趣会の主張〕被告千趣会において,被告日動計画の店名が「ガトーしらはま」から「デボンポート」に変わった旨の記載をパンフレットに表示したことは認める。しか33しながら,この点についての,被告千趣会の行為も被告日動計画の行為も違法ではない。
被告日動計画が店名を変更した平成15年9月ころの当時,「ガトーしらはま」は商品の出所が被告日動計画であることを示すものとして需要者に知られるようになっており,また,「デボンポート」の標章は商品の出所が被告日動計画であることを示すものである。
そうすると,上記表示の前後を通じて,商品の出所は一貫して被告日動計画であり,出所の混同は惹起されていない。
むしろ,上記表示により,被告日動計画の商品と原告の商品との区別が明確になり,出所の混同が回避されるところ,被告日動計画及び被告千趣会は商品の出所の区別を積極的に明確にしたものである。
なお,一般の消費者が,「しらはまチーズケーキ」等の表示から,当該チーズケーキがC自身の手によって製造されているなどと期待することはなく,「Cの下で作られたチーズケーキ」の限度で出所の混同が起きるということはない。
〔被告日動計画らの主張〕(1)不正競争防止法にいう「不正競争行為」に当たらなくても不法行為となり得るのは,競争行為がされたことに加えて,相手方に対する攻撃的意図を持って販路を侵すなど,取引界における公正かつ自由な競争として許容される範囲を著しく逸脱し,相手方の法的利益を侵害する場合に限られる。本件においてはかかる事情が全然ない。
なお,被告日動計画には,各被告標章の使用を開始した時点で,本件商標を不正に利用して利益を得ようとする目的などはなく,また,店名がデボンポートに変更されたことを告知した行為を,本件商標を不正に利用して利益を得た,と評価することはできない。
(2)被告日動計画が店名(営業の名称)を「デボンポート」に変更した旨の34広告をすることは,標章を変更するに当たって通常行われる表現(名称変更の説明)を逸脱するものではなく,何ら違法ではない。被告日動計画は,旧会社「ガトーしらはま」からの事業の承継を強調しているわけではない。
被告日動計画が上記広告を行った前後で,営業の主体は変更されていない。
また,被告日動計画が使用する「デボンポート」の標章は本件商標と全然類似していないから,「デボンポート」の標章を用いることにより,本件商標により表示される出所との間で出所の誤認混同を生じるおそれはないし,標章を類似しないものに変更した後に,変更前の標章の出所表示機能が移ってくることもない。
(3)原告は,旧会社から営業譲渡を受けたわけでも,のれん(グッドウィル)を譲り受けたわけでもなく,被告日動計画の行為によって原告のグッドウィルが害されることはない。
(4)被告日動計画らには故意又は過失がない。
被告日動計画は,旧会社から本件商標の使用を許諾されていた。被告日動計画は,Bが本件商標権の移転登録を受けた平成15年1月16日以降も,原告が同年3月7日に被告千趣会に対して警告をしたことを知ったときまで,旧会社がBに対して本件商標権を譲渡したことも,原告が「ガトーしらはま」等の標章を用いてチーズケーキの製造,販売を開始したことも知らなかった。被告日動計画が原告のリニューアルオープンのチラシを入手したのは,同年3月7日である。被告日動計画は,本件商標の使用権限があると信じており,各被告標章の使用につき故意又は過失がない。
(5)以上のとおり,上記広告を行った上で,本件商標とは全然類似しない標章を使用して商品を販売することは,原告ないしBに対する不法行為に当たらない。
21争点(6)(原告の商号続用者としての責任の有無)について〔被告千趣会の主張〕35旧会社は,遅くとも平成14年10月ころまでに,被告日動計画に対し本件商標の使用を許諾した(通常使用権)。したがって,旧会社は,被告日動計画及び被告日動計画から商品を仕入れている被告千趣会に対し,本件商標権に基づく権利行使をしない不作為義務を負っていた。
ところが,旧会社は,その後,原告に対して旧会社の営業を譲渡し(甲19),原告は以後旧会社の商号「株式会社ガトーしらはま」を続けて使用した。
そうすると,原告は旧会社の商号の続用者として,旧会社からその債務(義務)を承継したものである(商法17条1項)。
そうである以上,原告は,旧会社が負っていた被告日動計画及び被告千趣会に対する上記不作為義務を承継するから,被告日動計画及び被告千趣会に対して本件商標の独占的通常使用権の侵害を主張することはできない。
〔原告の主張〕否認ないし争う。
旧会社は原告に対してその営業を譲渡していない。原告が旧会社から譲り受けたのは本件商標権のみである(すなわち,Bが旧会社から本件商標権を譲り受け,原告は,Bから本件商標権につき,独占的通常使用権の設定を受けたのみである。)。甲第19号証の新聞記事においては,法律知識の不足のために,商標権の譲渡が営業譲渡と混同されたにすぎない。
22争点(7)(原告による権利濫用の有無)について〔被告千趣会の主張〕旧会社は,本件商標権のBへの譲渡に先立つ遅くとも平成14年10月ころ,被告日動計画に対し,同社の営業を譲渡し,この際,少なくとも被告日動計画に対し,本件商標権の独占的通常使用権を許諾した。
他方,B及び原告は,Bが本件商標権を譲り受けた平成15年1月16日ころ,被告日動計画が旧会社から本件商標権の独占的通常使用権を許諾されていることを知っていた。
36ところが,Bは,上記事情を知りながら,被告日動計画の通常使用権が登録されていないことを奇貨として,旧会社から本件商標権の譲渡を受けたものである。Bは,本件商標権の移転登録を経た後,Cと共に,被告日動計画の最大の販売ルートである被告千趣会に働きかけ,被告日動計画との取引を原告との取引に切り替えるよう求めている。このような事情に照らせば,Bは,Cと共謀の上,被告日動計画が経営難に陥った旧会社から引き継いで多額の投資を行って維持してきた市場を横取りする目的で,本件商標権の譲渡を受けたものである。
また,原告は,「しらはま」,「しらはまのチーズケーキ」,「ガトーしらはま」といった標章を一度も使用せず,積極的にこれらと異なる「ガトーよこはま」の標章を一貫して使用して別ブランドを確立している。上記事実に照らせば,原告には,もはや「しらはま」等の標章を使用する必要性はなく,本件における原告の主張は,今後使用することがあり得ない商標について権利行使をしようとするものであると言える。
さらに,被告千趣会は,平成15年3月5日,B及びCから,本件商標権の移転の事実を知らされた。その際,Bらは,被告千趣会に対し,チーズケーキの取引先を被告日動計画から原告に変更するように求めたのみで,各被告標章の使用の中止を求めることはなかった。被告千趣会は,この時点で各被告標章の使用の中止を求められていれば,既に製作済みではあったものの,チラシ等(乙9,甲8)を配布することはなかった。したがって,被告千趣会が上記チラシ等を配布したことにはBの責めに帰すべき要素がある。
他方で,原告が被告日動計画及び被告千趣会に対して損害賠償を求めているのは,被告日動計画及び被告千趣会がBらから連絡を受けた後各被告標章の使用を止めるまでの間の短期間(平成15年2月末ころから同年5月初旬ころまでの間)の商品販売に基づくものである。しかしながら,このような短期間各被告標章の使用を継続することは,顧客からの信用を維持しつつ標章の使用を37中止するのに必要な合理的期間の使用であってやむを得ないものというべきである。
このようなBが代表者を務める原告が,被告日動計画及び被告千趣会に対し,標章の変更に要する合理的期間に対応する使用についても,本件商標権又は独占的通常使用権の侵害を理由とする損害賠償請求をすることは,権利の濫用であって許されない。
〔被告日動計画らの主張〕被告千趣会の主張を援用する。
〔原告の主張〕否認ないし争う。
(1)旧会社は被告日動計画に対してその営業を譲渡することも,本件商標の使用を許諾することもなかった。
(2)原告は,平成15年当時,「しらはま」を含む標章を使用していた。
23争点(8)(被告Aの責任の有無)について〔原告の主張〕(1)被告Aは,被告日動計画に,各被告標章を使用してチーズケーキを製造,販売させることを計画し,被告日動計画による上記商標権侵害行為を先導した。
売渡書(丙2の2)の買主欄に被告Aが表示されていることからも,被告Aが上記商標権侵害行為を計画し,被告日動計画を先導して,同被告に上記商標権侵害行為を行わせたことが分かる。
被告Aの上記行為は不法行為に当たり,同被告は,被告日動計画と共同不法行為責任を負う。
(2)被告Aは,被告日動計画の各被告標章の使用行為が,原告ないしBに対する商標権(ないし独占的通常使用権)の侵害行為ないし不法行為に当たることを知りながら,故意又は重過失により,被告日動計画に各被告標章の使38用行為を継続させた。
そうすると,被告Aは原告に対し,上記各行為によって生じた損害の賠償につき,旧商法266条の3に基づく連帯債務を負う。
〔被告日動計画らの主張〕(1)否認ないし争う。各被告標章の使用やチーズケーキの製造,販売を行ったのは被告日動計画であって被告A個人ではない。
確かに,被告Aは旧会社から工場建物や機械を譲り受けているものの,これを被告日動計画に賃貸し,被告日動計画が,賃借した工場建物等を使用してチーズケーキの製造,販売を行った。
(2)また,被告日動計画は,旧会社から本件商標の使用を許諾されており,他方,当時被告日動計画の代表者であった被告Aは,旧会社がBに対して本件商標権を譲渡したことを知らず,原告が本件商標を用いてチーズケーキの製造,販売を開始したことを平成15年3月7日まで全く知らなかった。そして,平成15年3月7日に上記事実を知った後は,被告Aは,Eに命じて,本件商標の使用を中止させた。以上に照らせば,被告Aには,任務懈怠につき悪意及び重過失がなかったと言える。
24争点(9)(損害の有無及び額)について〔原告の主張〕(1)独占的通常使用権侵害による損害等についてア「デボンポート」標章に変更前の不法行為等による損害について(ア)共同不法行為等被告日動計画が被告千趣会の幇助の下に,又は被告千趣会と共同して,被告千趣会を経由して一般消費者に対してした,各被告標章を使用してのチーズケーキの販売行為は同被告らの共同不法行為に当たる。同被告らには,同販売行為に係る損害の全部につき連帯して賠償する責任がある。
39一方,被告日動計画が被告千趣会を経由せずに直接一般消費者に対してしたチーズケーキの販売行為は,被告日動計画の単独の不法行為である。
なお,被告Aは,被告日動計画の代表取締役として,共同不法行為又は旧商法266条の3に基づき,被告日動計画が賠償すべき損害につき,同被告と連帯して賠償すべき義務を負う。
(イ)商標法38条1項の類推適用原告は本件商標の独占的通常使用権者であり,商標権侵害によって受けた損害については商標法38条1項を類推適用すべきである。
(ウ)被告らの販売個数平成15年1月16日以降,「デボンポート」の標章に変更するまでの間に,被告日動計画が被告千趣会を通じて一般消費者に販売した直径14センチメートルのチーズケーキの個数は8万8000個を下らない。
また,被告日動計画が被告千趣会を経由せずに直接一般消費者に対して販売したチーズケーキの個数は,直径14センチメートルのものが660個,直径16センチメートルのものが495個,直径18センチメートルのものが330個,直径20センチメートルのものが165個をそれぞれ下らない。
なお,被告千趣会を経由した販売における直径14センチメートルのチーズケーキの小売価格(消費税を除く。)は2000円であり,被告日動計画が被告千趣会を経由せずに販売したチーズケーキの小売価格(消費税を除く。)は,直径14センチメートルのもので1500円,直径16センチメートルのもので2000円,直径18センチメートルのもので2500円,直径20センチメートルのもので3500円であった。
(エ)原告の1個当たりの利益40原告のチーズケーキの利益率は60パーセントを下らないから,被告千趣会らの販売したチーズケーキに対応する原告のチーズケーキ1個当たりの利益額は,被告千趣会を経由して販売した直径14センチメートルのもので1200円,被告千趣会を経由せずに販売した,直径14センチメートルのもので900円,直径16センチメートルのもので1200円,直径18センチメートルのもので1500円,直径20センチメートルのもので2100円をそれぞれ下らない。
(オ)商標法38条1項類推適用による損害額のまとめ前記(イ)ないし(エ)によれば,被告らが賠償すべき損害の額は次のとおりの金額を下らない。
?@被告千趣会を経由した販売について1億0560万円(計算式)1,200円×88,000個=105,600,000円?A被告千趣会を経由しない販売について202万9500円(計算式)900円×660個+1,200円×495個+1,500円×330個+2,100円×165個=2,029,500円(カ)一部請求原告は,被告日動計画らに対しては,それぞれ上記損害全部の賠償請求をするが,被告千趣会に対しては,前記(オ)?@の損害の一部である9000万円を請求する。
イ「デボンポート」標章に変更後の不法行為等による損害について被告日動計画は,被告千趣会の幇助の下で,又は被告千趣会と共同で,前記20〔原告の主張〕のとおり,平成16年1月ころ以降,被告千趣会を経由してチーズケーキを販売し,原告に対する不法行為を行ったものである。被告日動計画及び被告千趣会には,上記販売に係る損害につき,連帯して賠償する責任がある。
また,被告Aは被告日動計画の代表取締役として,共同不法行為又は旧41商法266条の3に基づき,被告日動計画が賠償すべき損害につき,同被告と連帯して賠償すべき義務を負う。
被告日動計画が平成16年1月ころ以降に売り上げたチーズケーキの個数は24万個を下らず,売上金額は4億8000万円を下らない。そして,被告日動計画のチーズケーキ販売による利益率は60パーセントを下らない。
そうすると,原告が上記不法行為によって受けた損害は,被告らの利益相当額である2億8800万円を下らない。
あるいは,被告らによる上記不法行為(誤認混同惹起行為)がなければ,原告は少なくとも10万個のチーズケーキを販売できたものであり,原告のチーズケーキの小売価格は1個当たり2000円,利益率は60パーセントを下らないから,原告が上記不法行為によって受けた損害は,原告の利益減少額に相当する1億2000万円を下らない。
原告は,被告千趣会に対しては,上記損害の一部である3000万円の支払を求め,被告日動計画らに対しては,上記損害の一部である1億1995万4520円の支払を求める。
(2)商標権侵害による損害(Bの損害)についてア「デボンポート」標章に変更前の不法行為等による損害について原告の損害につき商標法38条1項が類推適用されない場合でも,商標権者たるBが被告らの前記販売行為によって受けた損害については,同条3項が適用される。
本件商標を付し,又はこれから生じる名称である「ガトーしらはま」ないし「しらはま」を使用して販売されるチーズケーキは,被告千趣会が本件商標権の譲渡前にしたチーズケーキの販売においても第一位の人気を有した商品であり,本件商標又はこれから生じる称呼は需要者の間で周知であって,大きな顧客誘引力を有していた。
42そうすると,Bが本件商標を使用したチーズケーキ1個当たりの販売によって受けるべき金銭の額は,各チーズケーキの小売価格の25パーセント相当額を下らないというべきであり,すなわち,被告千趣会を経由した販売における直径14センチメートルのチーズケーキについては500円,被告千趣会を経由せずに販売されたものについては,直径14センチメートルのもので375円,直径16センチメートルのもので500円,直径18センチメートルのもので625円,直径20センチメートルのもので875円をそれぞれ下らないというべきである。
したがって,前記(1)(ウ)から,商標法38条3項により,被告らがBに対して賠償すべき損害の額は,次のとおりの金額を下らない。
?@被告千趣会を経由した販売について4400万円(計算式)500円×88,000個=44,000,000円?A被告千趣会を経由しない販売について84万5625円(計算式)375円×660個+500円×495個+625円×330個+875円×165個=845,625円イ「デボンポート」標章に変更後の不法行為等による損害について前記(1)イの被告らによる行為は,Bに対する不法行為にも当たり,Bは被告らの不法行為によって前記(1)イ記載と同額の損害を被った。
ウ債権譲渡Bは,遅くとも平成16年11月15日,原告に対し,被告日動計画らに対する前記アの損害に係る各損害賠償債権を譲渡し,確定日付のあるその旨の債権譲渡通知が,被告日動計画には同月16日に,被告Aには同月17日にそれぞれ到達した。
Bは,遅くとも平成18年11月7日,原告に対し,被告日動計画らに対する前記イの損害に係る各損害賠償債権を譲渡し,同月8日,確定日付のあるその旨の債権譲渡通知が,被告日動計画らにそれぞれ到達した。
43Bは,平成18年3月1日,原告に対し,被告千趣会に対する前記ア及びイの損害に係る損害賠償債権を譲渡し,同月7日,確定日付のあるその旨の債権譲渡通知が同被告に到達した。
エ一部請求(ア)原告は,被告日動計画らに対しては,それぞれ前記アの損害全部(4400万円+84万5625円)及びイの損害の一部である1億1995万4520円の支払を求める。
(イ)原告は,被告千趣会に対しては,前記ア?@の損害である4400万円及びイの損害の一部である3000万円の支払を求める。
(3)損害額のまとめ前記(1)及び(2)によれば,原告が被告らに対して請求する金額は,次のア及びイのとおりである。
ア被告日動計画ら(ア)原告が本件商標の独占的通常使用権を有する場合(原告の損害につき商標法38条1項を類推適用する場合)各合計2億2758万4020円(計算式)105,600,000円+2,029,500円+119,954,520円=227,584,020円(イ)原告が本件商標の独占的通常使用権を有しない場合(原告の損害につき商標法38条1項を類推適用しない場合・債権譲受分)各合計1億6480万0145円(計算式)44,000,000円+845,625円+119,954,520円=164,800,145円イ被告千趣会(ア)原告が本件商標の独占的通常使用権を有する場合(原告の損害につき商標法38条1項を類推適用する場合)44合計1億2000万円(計算式)90,000,000円+30,000,000円=120,000,000円(イ)原告が本件商標の独占的通常使用権を有しない場合(原告の損害につき商標法38条1項を類推適用しない場合・債権譲受分)合計7400万円(計算式)44,000,000円+30,000,000円=74,000,000円ウ被告日動計画らは,それぞれ,原告に対し,上記イの金額の限度で,被告千趣会と互いに連帯して損害を賠償すべき義務を負う。
〔被告千趣会の主張〕否認ないし争う。ただし,被告千趣会に対し,債権譲渡の通知がされたことは認める。
(1)独占的通常使用権侵害について独占的通常使用権は債権的権利にすぎず,物権的独占権を有する商標権者又は専用使用権者の権利行使を容易ならしめるために設けられた商標法38条の規定は適用されないし,類推適用もされない。
被告千趣会によるチーズケーキの販売は,被告千趣会が主催するチーズケーキの会の会員に対してのみされているものであって,顧客が「しらはまチーズケーキ」を選択して購入しているわけではない。なお,被告千趣会も,対象商品が「しらはまチーズケーキ」であることに着目してこれを被告日動計画から購入していたわけではない。
そうすると,被告千趣会において,仮に被告日動計画が製造,販売したチーズケーキを顧客に対して販売しなかったときには,原告からチーズケーキを購入したという補完関係にはなく,被告日動計画及び被告千趣会の行為と原告の損害との間には相当因果関係がない。
(2)「デボンポート」標章へ変更後の不法行為等について否認ないし争う。
45被告千趣会の行為によって原告に損害は生じない。
被告千趣会において,仮に被告日動計画が製造,販売したチーズケーキを顧客に対して販売しなかったときには,原告からチーズケーキを購入したという補完関係にはなく,被告日動計画及び被告千趣会の行為と原告の損害との間には相当因果関係がない。
(3)平成15年3月5日以降,被告千趣会が配布した被告標章目録記載の標章を使用した「チーズケーキの会」に関するチラシ及びカタログに基づく,チーズケーキの出荷数は,以下のとおりである。
ア平成15年3月30日に配布した新聞折込みチラシ(乙9)に基づく出荷数は,1509個である。
イ平成15年5月8日に配布した新聞折込みチラシ(甲8)に基づく出荷数は,1942個である。
〔被告日動計画らの主張〕否認ないし争う。ただし,被告日動計画らに対し,債権譲渡の通知がされたことは認める。
(1)被告日動計画が前記20〔原告の主張〕のとおりの広告を行うなどしたとしても,原告ののれん(グッドウィル)の毀損はなく,原告に損害は生じない。被告日動計画が平成15年3月7日から同年10月9日の間に被告千趣会を経由せずに出荷したチーズケーキの個数は,直径14センチメートルのものが557個,直径16センチメートルのものが459個,直径18センチメートルのものが109個,直径20センチメートルのものが14個である。
(2)商標法38条1項を類推適用すべきである旨の原告の主張は失当である。
すなわち,本件において,原告は,平成15年当時「ガトーよこはま」の商号でチーズケーキの製造,販売を行い,本件商標も使用していなかったのであるから,商標権者が登録商標を現に使用していることを前提とする商標法4638条1項の規定は適用されない。
第4当裁判所の判断1争点(1)(原告の本件商標の独占的通常使用権の有無)について(1)原告は,遅くとも平成15年1月16日までに,Bから,本件商標につき独占的通常使用権を付与された旨主張する。
Bが,原告の代表者であり,原告は,その株式をB,Bの妻及びBの子で所有している同族会社であること(甲4,弁論の全趣旨),Bが本件商標権の譲渡を受けた後,平成15年1月ころには,Bが代表者を務める原告において,チーズケーキ等の菓子類を販売する店舗を出店し,同店において,本件商標と類似する標章(本件商標の上部の「SHIRAHAMA」の文字列を「YOKOHAMA」に変えたもの)を使用していたこと(甲41,丙4)等に照らすと,Bは,本件商標権を取得した後速やかに,原告に対し,本件商標の通常使用権を付与したものと認められる。
この原告の有する通常使用権が,独占的なものであったか否かについては争いがあり,Bの陳述書(甲4,47)中には,「Bが,原告に対し,本件商標の独占的な使用権を与えている」旨の記載がある。
(2)しかしながら,前記当事者間に争いのない事実等,証拠(甲5,19,41,46,47,乙1,乙2の1・2,乙3,乙10の1・2,丙9,12,丙17の1ないし6,丙31の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
アCは,平成元年12月,有限会社白浜を設立して,代表取締役に就任した。同社は,平成11年4月には株式会社に組織変更をし,商号を「株式会社ガトーしらはま」(旧会社)に変更した。その後も,Cが引き続き,同社の代表取締役の地位にあった。
イCは,平成元年ころ,神奈川県秦野市<以下略>において,「レストランガトーしらはま」を経営し,同店において,デザートとしてチーズケー47キを提供し,また,販売していた。
また,Cは,「レストランガトーしらはま」のほかに,同市内に所在する短期大学の学生食堂においても,チーズケーキを販売していた。
上記チーズケーキは,「ガトーしらはまのチーズケーキ」として次第に評判となり,メディアで取り上げられたほか,通信販売やデパート等へ出店しての販売も行われるようになった。
旧会社は,平成12年2月4日,特許庁に対し,本件商標について登録出願をし,平成13年2月23日,本件商標は登録された。
ウ旧会社は,取り込み詐欺の被害に遭うなどして,平成12年5月31日の時点で,約6379万円の欠損金を計上するに至り,その後,平成15年5月9日に横浜地方裁判所小田原支部に破産申立てをし,同年7月11日,同支部から破産宣告決定を受けた。
また,Cも,同年5月9日に同支部に破産申立てをし,同年7月11日,同支部から破産宣告決定を受けた。
破産宣告決定当時,旧会社の代表取締役はCであり,Cの弟であるDは取締役であった。
エ旧会社の資金繰りが悪化する中で,旧会社は,平成14年12月27日,Bに対し,本件商標権を譲渡し,Bは,平成15年1月16日,その旨の移転登録を了した。
なお,本件商標について,専用実施権の設定登録や通常実施権の設定登録は一切されていない。
オBが旧会社から本件商標の譲渡を受けた後,平成15年1月下旬ころには,Bが代表者を務める原告において,チーズケーキ等の菓子類を販売する店舗を出店した。
Cは,そのころ,原告のケーキ製造工場において,工場長として稼働するようになった。
48カBは,平成15年3月5日,Cと共に,被告千趣会の本社を訪ね,同被告に対し,Bが本件商標を譲り受けたことを告げ,被告日動計画の製造するチーズケーキに本件商標を付して販売することは本件商標権の侵害となることなどを警告した。
キ「レストランガトーしらはま」は,平成16年4月27日当時においても,神奈川県秦野市<以下略>において,開設,運営されていた。
同店の店舗入口付近には,外に向かって,本件商標と類似する標章(本件商標と上記類似標章とは,周囲を囲む四角形及び中央の「S」と「H」とを重ねて組み合わせた文字の色彩が異なるのみである。)が表示され,その両脇には,「ガトーしらはま」と横1行の文字列で表示されていた。
また,同店の店舗入口横には,外に向かって,上に「レストラン・ガトー」の文字列,下に「SHIRAHAMA」の文字列を配した横2行の標章の下にチーズケーキの写真を配したボード,チーズケーキの写真に重ねて「しらはまチーズケーキ」の文字列を横1行に表示し,さらに,下部の端に,上に「レストラン・ガトー」の文字列,下に「SHIRAHAMA」の文字列を配した横2行の標章を配したボードが掲示されていた。
ク「レストランガトーしらはま」は,平成18年5月25日当時においても,上記の場所において開設,運営されており,同店舗には,上記と同様の表示がされていた。
ケまた,上記「レストランガトーしらはま」は,平成18年4月19日当時,そのホームページにおいて,チーズケーキの写真を掲載すると共に,本件商標と類似する標章(本件商標と上記類似標章とは,周囲を囲む四角形の枠の有無,色彩及び上部の「SHIRAHAMA」の文字列の有無の点で異なる。)を使用し,また,上に「レストラン・ガトー」の文字列,下に「SHIRAHAMA」の文字列を配した横2行の標章を使用していた。
49コ平成18年7月当時の「レストランガトーしらはま」の食品衛生法上の届出者(営業者)は,Cの弟であるDであった。
サCは,平成18年初めころから,宮崎県日南市内において「ChezShirahama」,「シェ・しらはま」の標章等を用いてチーズケーキを製造,販売している。
上記のチーズケーキを紹介するデパートのチラシ(丙31の1)には,「しらはまチーズケーキ」との表示がされ,商品パンフレット(丙31の2)にも,「しらはまチーズケーキ」との表示がされていた。
(3)上記認定事実によると,「レストランガトーしらはま」は,Cが平成元年ころに開店した後,チーズケーキをデザートとして提供し又は販売しており,少なくとも,商標登録がされた平成13年2月ころ以降,上記チーズケーキの販売又は広告等に本件商標又はこれに類似する標章を継続的に使用していたこと,上記「レストランガトーしらはま」は,本件商標権がBに譲渡された平成14年12月27日以降も,CないしCの弟であるDにより運営され,同店において提供又は販売されるチーズケーキに本件商標又はこれに類似する標章を継続的に使用していたこと,Bは,本件商標権を旧会社から譲り受けた後,Bが代表者を務める原告の工場においてCを稼働させており,また,本件商標権の侵害行為について警告等をするために被告千趣会の本社を訪ねた際にも,Cを同行させるなど,本件商標権の譲渡を受けた当時,上記「レストランガトーしらはま」の存在及びこれによる本件商標又はこれに類似する標章の使用を認識していたこと,が認められる(Bの陳述書(甲47)においても,Cの弟であるDが経営する「レストランガトーしらはま」において販売しているチーズケーキの原料は原告が供給しており,製造方法もCのものが使用されている,上記店舗では,本件商標を使用している,との記載があるにとどまり,Bが,上記店舗の存在や本件商標の使用を知らなかったなどとは一切記載されていない。)。
50そうすると,Bは,本件商標権を譲り受けた後も,C又はDに対し,「レストランガトーしらはま」による本件商標又はこれに類似する標章の使用を許諾していたものと推認することができる。
この点につき,原告は,「レストランガトーしらはま」は原告の手足となってチーズケーキの製造,販売に係る営業を行っているものである旨主張するものの,「レストランガトーしらはま」が原告の意図に基づき,その計算において運営されていることを認めるに足りる証拠はなく,これを設置,運営する主体が原告であると認めることはできない。
(4)以上のとおりであるから,Bの原告に対する本件商標の通常使用権の許諾が,独占的なものであったと認めることはできない。
よって,本件商標の独占的通常使用権を前提とする主位的請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(5)そこで,以下においては,まず,譲受債権に基づく予備的請求について,本件商標権を有するBの被告らに対する商標権侵害による損害賠償請求権の有無を検討し,さらに,民法719条及び709条に基づく損害賠償請求権の有無(争点(5))等について検討する。
2争点(2)ア(被告標章2及び9ないし12と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標と被告標章1とが類似することについては,当事者間に争いがない。
そこで,被告標章2ないし13について,本件商標と類似するか否かについて順に検討する。
(2)本件商標についてア外観本件商標は,文字と図形とから成る結合商標であり,次のとおりの外観を有する。
51(ア)黒色の四角形の囲み(縦長の長方形)があり,その内側の上段及び下段にアルファベットで「SHIRAHAMA」の文字列が,上段は上下逆さまに右から左に向けて,下段は上下正しい方向で左から右に向けて,それぞれ横1行で表示されている。
(イ)上記囲みの内側中央部には黒色の円が左右の黒色の枠に接触するように配されており,その中心部は白抜きの円となっている。上記黒色の円の内側で上記白抜きの円の外側である黒色のリング状の部分には,白抜きの飾り文字で,上半分の部分には左から右に向けて「Restaurant」の文字列が,下半分の部分には左から右に向けて「G□teau」の文字列が,それぞれ表示されている。
(ウ)上記白抜きの円の内側中央部には,黒色のアルファベット「H」と「S」とが重ね合わされて表示されている。
(エ)上記のとおり,本件商標の下半分においては,「G□teau」の文字列と下段の「SHIRAHAMA」の文字列とが2段にわたって表示され,1組の表示となっていると見ることができる。
称呼(ア)本件商標の上記各構成部分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないから,取引の実際において構成部分の一部が分離されて称呼,観念されることがあり得るというべきである。
本件商標のうち,「Restaurant」は「レストラン」すなわち,「料理店」や「飲食店」を意味する語として一般に認知された英単語,又は仏単語であり,特段の識別力を有しない部分であるといえる。
また,本件商標のうち,白抜きの円の内側中央部のアルファベットが重ね合わされた組み合わせ文字の部分も,本件商標の外観に重点を置いて観察すれば格別,そうでない場合には,識別力に乏しい部分であると52いえる。
これに対し,前記のとおり一組の表示であると見ることができる「G□teau」と「SHIRAHAMA」の部分は,取引者,需要者に対し商品の出所の識別標識として強い印象を与える部分であるといえるから,本件商標の上記の部分から,「ガトーシラハマ」の称呼を生じる。
(イ)さらに,「G□teau」は「ケーキ」や「菓子」を意味する仏単語であり,ケーキや菓子の名称や店舗等にフランス語が用いられることも少なくない状況においては,本件商標の指定商品(菓子及びパン)との関係では,識別力に乏しい部分であると考えることができるから,前記(ア)の一組の表示のうち,「G□teau」の部分を除いた,「SHIRAHAMA」の部分も,独立して,商品の出所の識別標識として強い印象を与える部分であるといえる。
そうすると,本件商標からは,「シラハマ」の称呼も生じる(なお,本件商標の登録商標情報(甲1)においても,「称呼(参考情報)」として,「シラハマ」が挙げられている。)。
(ウ)被告らは,本件商標のうち「Restaurant」や「G□teau」の部分は,本件商標の指定商品である「菓子及びパン」との関係では,識別力のない普通名称であり,この部分のみでは不登録事由(商標法3条1項1号)に当たり得るし,本件商標のうち「SHIRAHAMA」の部分も,ありふれた氏又は地名(名称)であり,識別力を有しないから(同項4号),上記部分のみを本件商標の要部と見ることはできず,本件商標から,「ガトーシラハマ」や「シラハマ」の称呼は生じない旨主張する。
確かに,前述のとおり,「Restaurant」(レストラン)や「G□teau」(ガトー)の部分は,本件商標の指定商品との関係では識別力に乏しい部分であると言い得る。しかしながら,本件商標の指53定商品(菓子及びパン)の領域においては,「SHIRAHAMA」(シラハマ)が普通名称化しているとは言い難いから,「G□teau」(ガトー)の部分と「SHIRAHAMA」(シラハマ)の部分とを一体として識別力のある要部であると見ることができるというべきである。
さらに,「SHIRAHAMA」(シラハマ)の部分が,ありふれた氏又は名称であると言い得るとしても,後記認定のとおり,Cが平成元年ころから,「レストランガトーしらはま」等でチーズケーキを販売等するようになり,その後,上記チーズケーキは,「ガトーしらはまのチーズケーキ」などとして次第に評判となって,ラジオ番組やテレビ番組等でも取り上げられ,通信販売やデパート等へ出店しての販売も行われるようになり,さらに,旧会社は,平成12年10月ころから,被告千趣会との間でチーズケーキの継続的な売買取引を開始し,平成15年当時には,「3万人を超える会員をもつ被告千趣会の『チーズケーキの会』で,2年連続人気1位となった」旨紹介されるに至ったこと等に照らすと,Cが,チーズケーキを販売するについて「SHIRAHAMA」,「シラハマ」,あるいは「しらはま」などと使用した結果,需要者において,C(あるいは旧会社)の業務に係る商品であることを認識することができる状況に至ったものといえる。
したがって,被告ら主張の上記の点は,本件商標から「ガトーシラハマ」又は「シラハマ」との称呼が生じると解することの妨げとはならないというべきである。
観念イで述べたところによれば,本件商標の指定商品(菓子及びパン)との関係では,本件商標からは,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するケーキや菓子,あるいは,「ガトーシラハマ」(会社,54あるいは店舗)の製造するケーキや菓子との観念を生じるというべきである。
(3)被告標章2及び9ないし12についてア外観被告標章2及び9ないし12は,いずれも,上段に「ガトーしらはま」の文字列を,下段に「しらはまチーズケーキ」の文字列を,上段は大きく,下段はやや小さく表示している。
称呼被告標章2及び9ないし12からは,それぞれ,全体として,「ガトーシラハマシラハマチーズケーキ」の称呼を生じ得る。
ところで,上記外観からすると,上段の文字列は下段の文字列に比して大きく表示されていることから,上段と下段とは取引上分離して観察され得るものであり,上段の「ガトーしらはま」の部分から「ガトーシラハマ」の称呼を生じる。
さらに,「ガトー」が「ケーキ」や「菓子」を意味する普通名称であり,「チーズケーキ」がケーキの種類を示す普通名称であって,これらの部分は識別力が乏しいことからすれば,これらの部分を除いた「しらはま」の部分から「シラハマ」との称呼を生じる。
観念被告標章2及び9ないし12は,いずれもチーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキ,あるいは,「ガトーシラハマ」(会社,あるいは店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
エなお,被告日動計画らは,被告標章2及び9ないし12のうち上段部分は,「株式会社ガトーしらはま」という旧会社の商号を記述的に表現した55部分であり,この部分は標章として機能しない旨主張するものの,上記の被告標章は,被告日動計画らが製造,販売する商品について使用された標章であり,被告日動計画らが製造,販売する商品について旧会社の商号を記述的に表現したとは考え難い。また,被告日動計画らが主張するように,旧会社の商号を記載したものであるとすれば,まさに,出所識別のためにほかならないから,上段部分も標章として機能するものといえる。いずれにせよ,被告日動計画らの上記主張は採用することができない。
(4)対比以上によれば,本件商標と被告標章2及び9ないし12とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
なお,被告千趣会は,仮に,本件商標と被告標章2及び9ないし12が類似するとしても,本件商標権の効力は,それぞれ普通名称にすぎない「しらはま」,「チーズケーキ」,「ガトー」を組み合わせたにすぎない被告標章2ないし13には及ばない旨主張するものの,前述のとおり,本件商標の指定商品(菓子及びパン)の領域において,「シラハマ」が普通名称化しているとは言い難いから,被告千趣会の上記主張は採用することができない。
3争点(2)イ(被告標章3と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標の外観,称呼及び観念については,前記2(2)で認定したとおりである。
(2)被告標章3についてア外観被告標章3は,「ガトーしらはま」の文字列を縦1行で表示している。
称呼被告標章3からは,全体として,「ガトーシラハマ」の称呼を生じる。
さらに,「ガトー」が「ケーキ」や「菓子」を意味する普通名称であり,この部分は識別力が乏しいことからすれば,この部分を除いた「しらは56ま」の部分から「シラハマ」との称呼を生じる。
観念被告標章3は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキ,あるいは,「ガトーシラハマ」(会社,あるいは,店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
エ被告日動計画らは,被告標章3はチーズケーキに付された標章ではなく,旧会社の略称を記述的に表現したものにすぎない旨主張するものの,同主張を採用することができないことは,前記2(3)エで述べたとおりである。
(3)対比以上によれば,本件商標と被告標章3とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
4争点(2)ウ(被告標章4と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標の外観,称呼及び観念については,前記2(2)で認定したとおりである。
(2)被告標章4についてア外観被告標章4は,「しらはまチーズケーキ」の文字列を横1行で表示している。
称呼被告標章4からは,全体として,「シラハマチーズケーキ」の称呼を生じる。
さらに,「チーズケーキ」がケーキの種類を示す普通名称であって,この部分は識別力が乏しいことからすれば,この部分を除いた「しらはま」の部分から「シラハマ」との称呼を生じる。
観念57被告標章4は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
(3)対比以上によれば,本件商標と被告標章4とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
5争点(2)エ(被告標章5及び7と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標の外観,称呼及び観念については,前記2(2)で認定したとおりである。
(2)被告標章5についてア外観被告標章5は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横1行で表示している。
称呼被告標章5からは,全体として,「シラハマノチーズケーキ」の称呼を生じる。
さらに,「チーズケーキ」がケーキの種類を示す普通名称であって,この部分は識別力が乏しいことからすれば,この部分及び「しらはま」と「チーズケーキ」の関係を示す助詞である「ノ」を除いた「しらはま」の部分から「シラハマ」との称呼を生じる。
観念被告標章5は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
(3)被告標章7についてア外観58被告標章7は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を上下2段に配し,上段は大きく,下段は小さく横2行で表示している。
称呼「しらはまのチーズケーキ」の文字列は,上段と下段ではその文字の大きさが異なるものの,それ以外は同一の1組のものであるから,全体として,「シラハマノチーズケーキ」の称呼を生じる。
さらに,「チーズケーキ」がケーキの種類を示す普通名称であって,この部分は識別力が乏しいことからすれば,この部分及び「しらはま」と「チーズケーキ」の関係を示す助詞である「ノ」を除いた「しらはま」の部分から「シラハマ」との称呼を生じる。
観念被告標章7は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
(4)被告日動計画らは,被告標章5及び7はチーズケーキに付された標章ではなく,旧会社の略称を記述的に表現したものにすぎない旨主張するものの,同主張を採用することができないことは,前記2(3)エで述べたとおりである。
(5)対比以上によれば,本件商標と被告標章5及び7とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
6争点(2)オ(被告標章13と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標の外観,称呼及び観念については,前記2(2)で認定したとおりである。
(2)被告標章13についてア外観59被告標章13は,「しらはまのチーズケーキ」の文字列を横1行で表示している。
称呼被告標章13からは,全体として,「シラハマノチーズケーキ」の称呼を生じる。
さらに,「チーズケーキ」がケーキの種類を示す普通名称であって,この部分は識別力が乏しいことからすれば,この部分及び「しらはま」と「チーズケーキ」の関係を示す助詞である「ノ」を除いた「しらはま」の部分から「シラハマ」との称呼を生じる。
観念被告標章13は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
(3)被告日動計画らは,被告標章13では,「しらはまのチーズケーキ」のうち「キ」の字体が特定されていないから,主張自体失当である旨主張する。
しかしながら,被告標章13は,商標権者たるBの被告らに対する本件商標権侵害による損害賠償請求権の有無の審理において,本件商標と被告標章との類否を判断するに十分な特定がされているものというべきである(すなわち,欠けている「キ」の文字は,「チーズケーキ」の一部を成す部分であると推認することができる上,「チーズケーキ」の部分は,前述のとおり,識別力が乏しいから,上記「キ」の字体が厳密に特定されていなくても,本件商標と被告標章13の類否を判断するのに不足はない。)から,被告日動計画らの上記主張は採用できない。
(4)対比以上によれば,本件商標と被告標章13とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
607争点(2)カ(被告標章6と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標の外観,称呼及び観念については,前記2(2)で認定したとおりである。
(2)被告標章6についてア外観被告標章6は,「しらはま」の文字列を横1行で表示している。
称呼被告標章6からは,「シラハマ」の称呼を生じる。
観念被告標章6は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
エ被告日動計画らは,被告標章6はチーズケーキに付された標章ではなく,旧会社の略称を記述的に表現したものにすぎない旨主張するものの,同主張を採用することができないことは,前記2(3)エで述べたとおりである。
(3)対比以上によれば,本件商標と被告標章6とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
8争点(2)キ(被告標章8と本件商標とが類似するか否か)について(1)本件商標の外観,称呼及び観念については,前記2(2)で認定したとおりである。
(2)被告標章8についてア外観被告標章8は,「しらはま」の文字列を上段に,「しらはまチーズケーキ」の文字列を下段に配し,上段の文字列を大きく,下段の文字列を小さく横2行で表示している。
61イ称呼被告標章8からは,全体として,「シラハマシラハマチーズケーキ」の称呼を生じる。
さらに,「チーズケーキ」がケーキの種類を示す普通名称であって,この部分は識別力が乏しいことからすれば,この部分を除き「シラハマ」との称呼を生じる。
観念被告標章8は,チーズケーキの販売に関して使用された標章であり,チーズケーキとの関係では,「シラハマ」(菓子職人,あるいは,会社又は店舗)の製造するチーズケーキとの観念を生じる。
エなお,被告日動計画らは,被告標章8のうち上段部分は,「株式会社ガトーしらはま」という旧会社の商号を記述的に表現した部分であり,この部分は標章として機能しない旨主張するものの,同主張を採用することができないことは,前記2(3)エで述べたとおりである。
(3)対比以上によれば,本件商標と被告標章8とは,称呼及び観念が一致するから,類似する。
9争点(3)ア(被告標章1の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告日動計画らは,原告が本件商標権の移転登録を経た平成15年1月16日以降も同年12月まで,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキを,その包装箱に被告標章1を付し,又は付したものを譲渡(販売)していた旨主張する。
これに対し,被告らは,被告日動計画が平成15年3月8日以降,被告標章1が印刷されている黒色の包装箱の使用を中止し,被告標章1が印刷されていない包装箱に切り替えて,チーズケーキを被告千趣会又はその他の販売先に対して販売した旨主張する。
62また,原告は,被告千趣会は,上記譲渡(販売)のほか,自らのカタログ広告中に被告標章1を表示し,これを頒布して広告宣伝活動を行った旨主張する。
チーズケーキが,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれることは当事者間に争いがない。
(2)被告標章1を付した包装箱の使用について証拠(甲7,9,11,14,15,27,甲28の1ないし5,甲29,30,46,47,乙7,8,17ないし23,47,丙1,21,24ないし26)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
ア被告日動計画は,平成14年9月24日,被告千趣会との間で,売買基本契約(丙1)を締結した後,「ガトーしらはま」,「しらはまチーズケーキ」などの名称を用い,被告標章1を付した黒色の包装箱を使用して,チーズケーキの販売を始めた。
イ平成15年1月1日発行で,同月上旬ころまでには配布された被告千趣会の商品カタログ(同月25日を有効期限とするもの。甲7)中には,被告日動計画の商品であるチーズケーキの写真と共に,「それぞれのお店の箱でお届けします」との記載の下に小さく被告標章1を付した黒色の包装箱が写っていた(なお,甲第7号証中における上記被告標章1の表示は,小さいものであって,その文字列を判読することができないものであるから,上記表示自体が出所識別力を発揮する態様での使用,すなわち商標的使用に当たるということはできない。)。
また,被告日動計画の商品であるチーズケーキの写真と共に,被告標章3,被告標章4が表示されていた。
さらに,上記カタログのほか,被告日動計画のチーズケーキの写真と共に,平成15年1月1日発行で,同月上旬ころまでには配布されたもの63(同月25日を有効期限とするもの。甲14)では被告標章9が,同年2月1日発行で,同月上旬ころまでには配布されたもの(同月25日を有効期限とするもの。乙7)では被告標章10が,平成15年3月1日に発行され,同月上旬ころまでには配布されたと推認することができるもの(同月25日を有効期限とするもの。乙8)では被告標章11が,それぞれ表示されていた。
ウBは,平成15年3月5日,Cを同行して,被告千趣会の本社を訪ね,同被告の食品頒布開発部係長であったF及び同部次長であったGと面談し,同人らに対し,Bが本件商標権の譲渡を受けたことを告げると共に,被告千趣会の「しらはまチーズケーキ」の取引先を被告日動計画から原告に変更するように求め,被告日動計画による本件商標の使用は商標権侵害となるものであるから,上記使用を止めるように警告するなどした。
被告千趣会は,Cとの信頼関係の構築は困難であるとの判断から,Bからの上記取引の申出を断った。
エ被告千趣会は,Bとの上記面談の後である同月7日,被告日動計画の現代表者であるEと面談し,Bが本件商標権の譲渡を受けたことや上記警告を受けたことなどについて協議し,被告標章1の使用を中止することを決めた。
オ被告日動計画は,被告千趣会との上記協議の後,同月8日以降,被告標章1の付された黒色の包装箱の使用を中止した。
被告日動計画は,取引先である箱の製造業者から,同月13日に約2000組,同月17日に4000組,同月24日に1500組,同月25日に200組の黄色の包装箱(無地のもの。丙24)の納入を受け,同月に出荷するチーズケーキを,従来の黒色の包装箱から上記黄色の包装箱(無地のもの)に入れ替えるなどして対応した。
なお,同月7日から同月13日までの間に数個の出荷があったものの,64被告日動計画は,それらについては,上記箱製造業者から色見本のサンプルとして取り寄せていた黄色の包装箱で対応した。
また,被告日動計画は,同月6日に同じ箱製造業者から既に納入されていた被告標章1を付した黒色の包装箱6000組については,これを使用せず,倉庫に保管することにした。
カ被告日動計画は,平成15年6月までは,同社のチーズケーキを「しらはまのチーズケーキ」,「しらはまチーズケーキ」などとして販売していたものの,同年7月以降,「デボンポート」の名称を用いて販売するようになった。
被告日動計画は,平成15年7月ころ,もともと使用していた営業所名である「デボンポート」(丙26の添付資料1)について,マーク(以下「デボンポートマーク」という。)を作成し,同年8月4日,シールの作成業者から,デボンポートマークの入ったシールの納入を受けた。
そして,被告日動計画は,上記シールの納入を受けた後から,倉庫に保管していた黒色の包装箱の被告標章1の上に,上記デボンポートマークの入ったシールを貼付し,黄色の包装箱(無地のもの)にも上記シールを貼付し,これらの包装箱を用いてチーズケーキを出荷するようになった(甲28の1ないし5。ただし,同包装箱は,平成16年6月1日を賞味期限とする(甲28の5,甲30)チーズケーキの販売の際に使用されたものである。)。
また,被告日動計画は,平成15年12月ころからは,箱製造業者に対し,デボンポートマークを印刷した黄色の包装箱の製作を依頼し,同包装箱(丙25)の納入を受けて,これを用いてチーズケーキを出荷するようになった。
キ平成15年9月26日当時,ベルーナの通信販売用のホームページ(甲9)には,被告日動計画の商品が「デボンポート『しらはまのチーズケー65キ(16?p)』」,「しらはまのチーズケーキ(16?p)」と紹介され,被告標章1を付した黒色の包装箱や,同包装箱に入れられたチーズケーキの写真が掲載されていたため,被告日動計画は,ベルーナに対し,上記ホームページの訂正を申し入れた(被告標章1の付された黒色の包装箱が掲載された商品カタログやホームページは,平成15年3月8日以降では,上記ベルーナのもの以外には見当たらない。なお,甲第9号証中の上記被告標章1の表示は,小さいものであって,その文字列を判読することができないものであるから,上記表示自体が出所識別力を発揮する態様での使用,すなわち商標的使用に当たるということはできない。)。
クまた,平成15年10月9日当時,被告日動計画のホームページのうち,特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)に基づく表示のページ(甲11)の上部には,チーズケーキの写真の掲載と共に,「大切な方へのご贈答品に」の下に「しらはまのチーズケーキ」という文字列(被告標章13)が表示されていた(ただし,最後の一文字である「キ」は,プリントアウトした用紙のサイズが小さく左端で切れてしまったため,甲第11号証上では表示されていない。)。
しかしながら,平成15年9月1日に発行され,平成16年1月26日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(乙19),平成15年10月27日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(甲27,乙18),平成15年10月27日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(乙20),平成15年11月27日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(乙21),平成15年11月1日に発行され,同月25日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(乙22),平成16年1月26日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(甲29),平成16年3月25日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(甲15,乙23)では,被告日動計画のチーズケーキに関し,各被告標章は表示されていない(た66だし,甲第27号証,乙第18号証,乙第20号証,乙第21号証には,「店名が『デボンポート』に代わりました。」との記載があり,甲第15号証,乙第23号証には,「店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。」との記載がある。)。
ケ被告日動計画は,被告千趣会との間で,平成14年9月24日に売買基本契約書(丙1)を締結した上で,被告千趣会に対し,継続的にチーズケーキを販売し,被告千趣会は,被告日動計画のチーズケーキを顧客に対してカタログ販売していた。
被告千趣会は顧客から注文を受けると,被告日動計画に対して,数量と商品の送付先を通知し,チーズケーキを発注し,被告日動計画において,被告千趣会の顧客に対し,商品を直送していた。
(3)上記認定事実によれば,被告日動計画は,当初,被告標章1を付した黒色の包装箱にチーズケーキを入れて,販売していたものの,平成15年3月7日,Bから警告等を受けた被告千趣会と協議し,被告標章1の使用中止を決定し,同月8日以降,上記包装箱を使用していないことが認められる。
(4)なお,上記のとおり,平成15年9月26日当時,ベルーナの通信販売用のホームページ(甲9)には,被告標章1を付した黒色の包装箱や,同包装箱に入れられたチーズケーキの写真が掲載されていたことが認められるものの,被告日動計画は,当時,既に「デボンポート」の名称でチーズケーキを販売しており,被告千趣会の商品カタログにおいても,「店名が『デボンポート』に代わりました。」などの記載をし,各被告標章は使用していなかったこと(上記のとおり,平成15年10月9日当時,被告日動計画のホームページのうち,特定商取引法に基づく表示のページ(甲11)の上部には,被告標章13が表示されていたことが認められる。しかしながら,同表示があるのは特定商取引法に基づく表示のページのみであり,上記ホームページが存在するだけでは,被告日動計画が,チーズケーキの販売について,被告67標章1を付した黒色の包装箱を使用していたと認めるに足りない。そもそも,丙第32号証及び弁論の全趣旨によれば,上記の特定商取引法に基づく表示のページは,被告日動計画において,旧会社からの依頼により,「ガトーしらはま」のホームページを作成した際に表紙ページ等と共に作成したものであり,同年6月にデボンポートのホームページを新たに作成した際に,上記「ガトーしらはま」のホームページの表紙ページ及び注文ページについては削除したものの,特定商取引法に基づく表示のページについては,これを削除し忘れたために,このページだけが残ってしまったものと認められる。),被告日動計画は,ベルーナに対し,上記ホームページの訂正を申し入れたことなどに照らすと,上記事実から,被告日動計画が,平成15年9月26日当時,チーズケーキを販売するにつき,被告標章1を付した黒色の包装箱を使用していたとの事実を認めるには足りないものと言わざるを得ない(なお,平成15年10月27日を有効期限とする被告千趣会のカタログ(乙18)に掲載された被告日動計画のチーズケーキの包装箱は,黄色のものに,「デボンポートマーク」を付したものである(各月のチーズケーキを一覧的に表示したページの「12月」の欄参照)。)。
この点につき,原告は,ベルーナのホームページ(甲9)には,被告標章1を付した黒色の包装箱が掲載されており,仮に,同ホームページを見て,チーズケーキを購入した顧客に対し,「デボンポート」,あるいは,「DEVONPORT」の文字列ないし標章が付された包装箱で商品を発送した場合には,顧客からクレームがついたはずであるのに,このような事実が認められないことは,被告日動計画が,当時においても,被告標章1を付した包装箱を使用していたことの証左である旨主張する。しかしながら,上記ホームページにおいては,「商品名」が「デボンポート『しらはまのチーズケーキ(16?p)』」と記載されていることからすれば,「デボンポート」,あるいは,「DEVONPORT」の文字列ないし標章が付された包装箱で商68品が届いたとしても,注文した商品とは異なる商品が届いたわけではないから,包装箱の相違のみを特に問題とすることはないものと考え得るし,少なくとも,上記の点についてクレームをつけることが当然であるなどとは認め難い。さらに,被告千趣会による販売分についても,商品カタログ(甲7)において,「お届けする商品のデザインが写真と異なる場合があります。」と注記してあり,届いた商品の包装箱が同カタログの包装箱と異なっていたとしても,必ずしも,これを問題にするとは思われない(なお,被告千趣会においては,被告日動計画が「デボンポート」の名称を使用するようになった以降は,発送する商品に,「店名がガトーしらはまから『デボンポート』に変わりました。」と注記したしおり(乙14)を同封していた。)。原告の上記主張は採用することができない。
(5)また,原告は,黒色の包装箱の被告標章1の上に別の標章(デボンポートマーク)のシールを貼付し,被告標章1を隠していたとしても,商品(チーズケーキ)に被告標章1を付して譲渡していることになる旨主張する。
しかしながら,被告標章1の上に別の標章のシールが貼付された状態(甲28の1・2)では,需要者が被告標章1を視認することはできず,被告標章1は出所識別機能を有しないから,商標法2条3項2号にいう「使用」には当たらない。原告の上記主張は失当である。
(6)以上によれば,被告日動計画及び被告千趣会が,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキを,その包装箱に被告標章1を付して譲渡していたのは(商標法2条3項2号),平成15年3月7日までであり,Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年1月16日から同年3月7日までの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる。
他方,被告千趣会が商品カタログ(甲7)中に被告標章1を表示した行為は,前述のとおり,商標的使用とはいえないから,本件商標権の侵害行為には当たらない。
6910争点(3)イ(被告標章2の使用の有無及び時期)について原告は,被告千趣会が商品カタログ(甲13)において,被告標章2を付して展示し,頒布したことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
しかしながら,上記商品カタログは,Bが本件商標権について移転登録を経由する前である平成14年5月1日に発行され,同月上旬ころまでには頒布されたものであると認められるから(甲13,弁論の全趣旨),上記使用行為がBに対する本件商標権の侵害行為になることはない。
原告の上記主張は採用することができない。
11争点(3)ウ(被告標章3の使用の有無及び時期)について原告は,被告千趣会が商品カタログ(甲7)において,被告標章3を付して展示し,頒布したことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
しかしながら,上記商品カタログは,Bが本件商標権について移転登録を経由する前である平成15年1月1日に発行され,同月上旬ころまでには頒布されたものであると認められる(甲7,弁論の全趣旨。あるいは,少なくとも,上記商品カタログが,Bが本件商標権について移転登録を経由した平成15年1月16日以降に頒布されたとの事実を認めるに足りる証拠はない。)から,上記使用行為がBに対する本件商標権の侵害行為になることはない。
原告の上記主張は採用することができない。
12争点(3)エ(被告標章4の使用の有無及び時期)について原告は,被告千趣会が商品カタログ(甲7)において,被告標章4を付して展示し,頒布したことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
しかしながら,上記使用行為がBに対する本件商標権の侵害行為とはならないことは,前記11で述べたところと同じである。
70原告の上記主張は採用することができない。
13争点(3)オ(被告標章5の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告日動計画らが,そのホームページ(甲6,9,24,25)において,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に被告標章5を付して表示させたことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
(2)証拠(甲6,9,24,25)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア被告日動計画は,平成15年6月16日当時,自らのホームページのうち,被告日動計画のチーズケーキが,J-WAVE『TOKIOLIFE』お正月にあると嬉しいデザート?bPに選ばれたことや,新潟FM-PORTの『タイム・トラベル』という番組で取り上げられたこと,千趣会チーズケーキの会で2年連続?bPに選ばれたことなどを紹介するページ(甲6)のタイトルに,「紹介されたメディアしらはまのチーズケーキ」という文字列を使用しており,同日,上記ページをプリントアウトした紙面の左上部には,同文字列が表示された。
上記文字列の後半部分は被告標章5と一致する。
イ被告日動計画は,平成15年6月16日当時,自らのホームページのうち,チーズケーキの写真を掲載すると共に,その特徴を紹介するページ(甲24)のタイトルに「しらはまのチーズケーキ」という文字列を使用しており,同日,上記ページをプリントアウトした紙面の左上部には,同文字列が表示された。
上記文字列は被告標章5と一致する。
ウ被告日動計画は,平成15年6月16日当時,自らのホームページのうち,取引先のホームページへのリンクを紹介するページ(甲25)のタイトルに,「リンク集しらはまのチーズケーキ」という文字列を使用して71おり,同日,上記ページをプリントアウトした紙面の左上部には,同文字列が表示された。
上記文字列の後半部分は被告標章5と一致する。
エベルーナは,平成15年9月26日当時,自らのホームページのうち,通信販売用のページ(甲9)において,被告日動計画のチーズケーキについて,本文1行目に「しらはまのチーズケーキ(16?p)」という文字列を使用していた。
上記文字列のうち,「(16?p)」を除いた部分は被告標章5と一致する(なお,上記文字列のうち「(16?p)」の部分はチーズケーキのサイズを記載したにすぎないから,「しらはまのチーズケーキ」の部分と「(16?p)」の部分とを分離して対比すべきである。)。
上記ページには,上記文字列のほか,「デボンポート『しらはまのチーズケーキ(16?p)』」の文字列が2か所,「しらはまのチーズケーキ」との文字列が1か所,それぞれ表示されていた。
(3)上記(2)アないしウで認定した事実によれば,被告標章5は,これらのホームページに,チーズケーキの販売促進のために表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。被告日動計画が主張するように,単に商品の属性を記述的に表現したものにすぎないとはいえない。
他方,上記(2)エで認定した行為は,ベルーナの行為であって,被告日動計画の行為ではない(原告は,本件において,ベルーナの行為について被告日動計画が責任を負うべき法律上の原因を主張立証していない。なお,被告日動計画が,ベルーナに対し,上記ホームページの訂正を申し入れたことは,前記認定のとおりであり,ベルーナが主体として行ったホームページの表示について,紹介されている商品が被告日動計画のものであるからといって,被告日動計画が法的責任を負うと解することはできない。)。
72(4)そうすると,被告日動計画は,遅くとも平成15年6月16日までは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキについて,その広告を内容とする情報に被告標章5を付して電磁的方法により提供しており(商標法2条3項8号),Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年1月16日から同年6月16日までの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる(丙第32号証及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページは,Cの依頼で平成12年9月に被告日動計画が作成した旧会社のホームページに,平成15年1月,製造者が旧会社から「(株)日動計画洋菓子製造所」に変更になったことをアップロードしたものであると認められるから,遅くともBが本件商標権につき移転登録を経由した当時から上記使用行為が行われていたものと推認することができる。)。
14争点(3)カ(被告標章6の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告日動計画らが,そのホームページ(甲16)において,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に被告標章6を付して表示させたことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
(2)甲第16号証及び弁論の全趣旨によれば,被告日動計画は,平成15年6月16日当時,自らのホームページのうち,「チーズケーキはクール宅急便にてお送りいたします。」,「冷やしたままでお召し上がりください。」,「賞味期限は冷凍状態で30日,冷蔵で5日となっております。」など,チーズケーキの取扱い等を紹介したページ(甲16)のタイトルに,「チーズケーキ冷凍冷蔵しらはま」という文字列を使用しており,同日,上記ページをプリントアウトした紙面の左上部には,同文字列が表示されたこと,上記文字列のうち,「チーズケーキ冷凍冷蔵」を除いた部分は被告標章6と一致することが認められる。
(3)上記認定事実によれば,被告標章6は,チーズケーキの取扱いに関する73情報を周知することにより販売を促進することを目的とするページに表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。被告日動計画が主張するように,会社の略称としての意味しか有せず,チーズケーキの標章ではないとはいえない。
そうすると,被告日動計画は,遅くとも平成15年6月16日までは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキについて,その広告を内容とする情報に被告標章6を付して電磁的方法により提供しており(商標法2条3項8号),Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年1月16日から同年6月16日までの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる(遅くともBが本件商標権につき移転登録を経由した当時から上記使用行為が行われていたものと推認することができることは,前記13(4)で述べたとおりである。)。
15争点(3)キ(被告標章7の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告日動計画らが,そのホームページ(甲24)において,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に被告標章7を付して表示させたことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
(2)甲第24号証及び弁論の全趣旨によれば,被告日動計画は,平成15年6月16日当時,自らのホームページのうち,チーズケーキの写真を掲載すると共に,その特徴を紹介するページ(甲24)の本文1行目に被告標章7を表示したことが認められる。
(3)上記認定事実によれば,被告標章7は,チーズケーキの特徴をその写真と共に紹介することにより販売を促進することを目的とするページに表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。
74そうすると,被告日動計画は,遅くとも平成15年6月16日までは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキについて,その広告を内容とする情報に被告標章7を付して電磁的方法により提供しており(商標法2条3項8号),Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年1月16日から同年6月16日までの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる(遅くともBが本件商標権につき移転登録を経由した当時から上記使用行為が行われていたものと推認することができることは,前記13(4)で述べたとおりである。)。
16争点(3)ク(被告標章8の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告千趣会が商品カタログ(甲8)において,被告標章8を付して展示し,頒布したことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たり,また,被告日動計画は,被告千趣会に,上記行為をさせた旨主張する。
(2)甲第8号証及び弁論の全趣旨によれば,平成15年5月1日発行で,同月上旬ころまでには配布された被告千趣会の商品カタログ(同月26日を有効期限とするもの。甲8)において,「チーズケーキ」の「12月」の欄(12月発送分の欄)に,被告日動計画のチーズケーキの写真を掲載すると共に,被告標章8が表示されていたこと,上記商品カタログは,顧客に対し,毎月1回1年間にわたって,被告千趣会の選抜したチーズケーキが届けられることを内容とするカタログ販売(「チーズケーキの会」との名称が用いられている。)に関する広告であることが認められる。
(3)上記認定事実によれば,被告標章8は,チーズケーキをその写真と共に紹介することにより販売を促進することを目的とする広告に表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。
そうすると,被告千趣会は,遅くとも平成15年5月上旬ころまでは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキに関する広告に被75告標章8を付して展示し,頒布しており(商標法2条3項8号),同年5月1日から同月上旬ころまでの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる。
(4)また,証拠(乙47,丙1,21,26)及び弁論の全趣旨によれば,被告日動計画は,被告千趣会との間で,平成14年9月24日に売買基本契約書(丙1)を締結した上で,被告千趣会に対し,継続的にチーズケーキの販売を行っていたこと,被告千趣会は,前記のとおり,被告日動計画のチーズケーキをカタログ販売していたこと,被告千趣会は顧客から注文を受けると,被告日動計画に対して,数量と商品の送付先を通知し,チーズケーキを発注し,被告日動計画において,被告千趣会の顧客に対し,商品を直送するという取引形態を用いていたこと,上記契約書中で,売買の対象となる「商品の意匠および規格,品質,性能,形状,デザイン,素材,ブランド等は,被告日動計画が被告千趣会に予め提出した見本および商品台紙等の仕様とする。」旨約定されていたことが認められ,これらの事実に照らせば,被告日動計画は,被告千趣会による上記行為(商品カタログ(甲8)に被告標章8を付して展示し,頒布する行為)を共同して行ったものと認めるのが相当である。
17争点(3)ケ(被告標章9ないし12の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告千趣会が商品カタログ(甲14,乙7ないし9)において,被告標章9ないし12を付して展示し,頒布したことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たり,また,被告日動計画は,被告千趣会に,上記行為をさせた旨主張する。
(2)被告標章9について甲第14号証及び弁論の全趣旨によれば,被告千趣会の商品カタログ(甲14)において,「チーズケーキ」の「3月」の欄(3月発送分の欄)に,被告日動計画のチーズケーキの写真を掲載すると共に,被告標章9が表示されていたことが認められるものの,上記商品カタログは,Bが本件商標権に76ついて移転登録を経由する前である平成15年1月1日に発行され,同月上旬ころまでには配布されたものであると認められる(甲14,弁論の全趣旨。
あるいは,少なくとも,上記商品カタログが,Bが本件商標権について移転登録を経由した平成15年1月16日以降に配布されたとの事実を認めるに足りる証拠はない。)から,上記使用行為がBに対する本件商標権の侵害行為になることはない。
この点に関する原告の上記主張は採用することができない。
(3)被告標章10について乙第7号証及び弁論の全趣旨によれば,平成15年2月1日発行で,同月上旬ころまでには配布された被告千趣会の商品カタログ(同月25日を有効期限とするもの。乙7)において,「チーズケーキ」の「10月」の欄(10月発送分の欄)に,被告日動計画のチーズケーキの写真を掲載すると共に,被告標章10が表示されていたこと,上記商品カタログは,顧客に対し,毎月1回1年間にわたって,被告千趣会の選抜したチーズケーキが届けられることを内容とするカタログ販売(「チーズケーキの会」との名称が用いられている。)に関する広告であることが認められる。
上記認定事実によれば,被告標章10は,チーズケーキをその写真と共に紹介することにより販売を促進することを目的とする広告に表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。
そうすると,被告千趣会は,遅くとも平成15年2月上旬ころまでは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキに関する広告に被告標章10を付して展示し,頒布しており(商標法2条3項8号),同年2月1日から同月上旬ころまでの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる。
また,前記16(4)で述べたところと同様に,被告日動計画は,被告千趣会による上記行為を共同して行ったものと認めるのが相当である。
77(4)被告標章11について乙第8号証及び弁論の全趣旨によれば,平成15年3月1日発行で,同月上旬ころまでには配布された被告千趣会の商品カタログ(同月25日を有効期限とするもの。乙8)において,「チーズケーキ」の「2月」の欄(2月発送分の欄)に,被告日動計画のチーズケーキの写真を掲載すると共に,被告標章11が表示されていたこと,上記商品カタログは,顧客に対し,毎月1回1年間にわたって,被告千趣会の選抜したチーズケーキが届けられることを内容とするカタログ販売(「チーズケーキの会」との名称が用いられている。)に関する広告であることが認められる。
上記認定事実によれば,被告標章11は,チーズケーキをその写真と共に紹介することにより販売を促進することを目的とする広告に表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。
そうすると,被告千趣会は,遅くとも平成15年3月上旬ころまでは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキに関する広告に被告標章11を付して展示し,頒布しており(商標法2条3項8号),Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年3月1日から同月上旬ころまでの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる。
また,前記16(4)で述べたところと同様に,被告日動計画は,被告千趣会による上記行為を共同して行ったものと認めるのが相当である。
(5)被告標章12について乙第9号証及び弁論の全趣旨によれば,平成15年4月1日発行で,同月上旬ころまでには配布された被告千趣会の商品カタログ(同月25日を有効期限とするもの。乙9)において,「チーズケーキ」の「8月」の欄(8月発送分の欄)に,被告日動計画のチーズケーキの写真を掲載すると共に,被告標章12が表示されていたこと,上記商品カタログは,顧客に対し,毎月781回1年間にわたって,被告千趣会の選抜したチーズケーキが届けられることを内容とするカタログ販売(「チーズケーキの会」との名称が用いられている。)に関する広告であることが認められる。
上記認定事実によれば,被告標章12は,チーズケーキをその写真と共に紹介することにより販売を促進することを目的とする広告に表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。
そうすると,被告千趣会は,遅くとも平成15年4月上旬ころまでは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキに関する広告に被告標章12を付して展示し,頒布しており(商標法2条3項8号),Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年4月1日から同月上旬ころまでの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる。
また,前記16(4)で述べたところと同様に,被告日動計画は,被告千趣会による上記行為を共同して行ったものと認めるのが相当である。
18争点(3)コ(被告標章13の使用の有無及び時期)について(1)原告は,被告日動計画が,そのホームページ(甲11)において,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキの広告に被告標章13を付して表示させたことが,Bに対する本件商標権の侵害行為に当たる旨主張する。
(2)甲第11号証及び弁論の全趣旨によれば,平成15年10月9日当時,被告日動計画のホームページのうち,特定商取引法に基づく表示のページ(甲11)の上部に,商品の広告を掲げ,チーズケーキの写真を掲載すると共に,「大切な方へのご贈答品に」の下に「しらはまのチーズケーキ」という文字列が表示されていたこと(ただし,最後の一文字である「キ」は,プリントアウトした用紙のサイズが小さく左端が切れてしまったため,甲第11号証上では表示されていない。),同文字列は被告標章13と一致するこ79とが認められる。
(3)上記認定事実によれば,被告標章13は,チーズケーキをその写真と共に紹介することにより販売を促進することを目的とするページに表示され,被告日動計画のチーズケーキとそれ以外のチーズケーキとを区別する機能(出所識別機能)を有しているものといえる。
そうすると,被告日動計画は,遅くとも平成15年10月9日までは,本件商標の指定商品である「菓子」に含まれるチーズケーキについて,その広告を内容とする情報に被告標章13を付して電磁的方法により提供しており(商標法2条3項8号),Bが本件商標権につき移転登録を経由した同年1月16日から同年10月9日までの上記行為は,本件商標権の侵害行為に当たる(遅くともBが本件商標権につき移転登録を経由した当時から上記使用行為が行われていたものと推認することができることは,前記13(4)で述べたとおりである。)。
(4)被告日動計画らは,被告標章13では,「しらはまのチーズケーキ」のうち「キ」の字体が特定されていないから,主張自体失当である旨主張する。
しかしながら,被告標章13は,商標権者であるBの被告らに対する本件商標権侵害による損害賠償請求権の有無の審理において,被告による本件商標と類似する被告標章の使用の有無を判断するに十分な特定がされているものというべきであることは,前記6(3)で述べたとおりであるから,被告日動計画らの上記主張は採用することができない。
19各被告標章の使用の有無及び時期に関するまとめ前記9ないし18で認定した各被告標章の,Bが本件商標権の移転登録(効力要件。商標法35条による特許法98条1項1号の準用)を経た平成15年1月16日以降の使用の有無及び時期は,次のとおりである。
被告標章使用の有無ないし使用者使用時期80被告標章1被告千趣会,被告日動計画 平成15年1月16日から同年3月7日まで被告標章2×(使用なし)被告標章3×(使用なし)被告標章4×(使用なし)被告標章5被告日動計画平成15年1月16日から同年6月16日まで被告標章6被告日動計画平成15年1月16日から同年6月16日まで被告標章7被告日動計画平成15年1月16日から同年6月16日まで被告標章8被告千趣会,被告日動計画 平成15年5月1日から同月上旬ころまで被告標章9×(使用なし)被告標章10被告千趣会,被告日動計画 平成15年2月1日から同月上旬ころまで被告標章11被告千趣会,被告日動計画 平成15年3月1日から同月上旬ころまで被告標章12被告千趣会,被告日動計画 平成15年4月1日から同月上旬ころまで被告標章13被告日動計画平成15年1月16日から同年10月9日まで20争点(4)(被告らの各被告標章の使用についての過失の有無)について(1)原告は,被告日動計画及び被告千趣会には,前記認定に係る本件商標権の侵害行為について,少なくとも過失があると主張する。
81これに対し,被告らは,上記侵害行為については過失がない旨主張するので,以下検討する。
(2)前記当事者間に争いのない事実等,証拠(甲5,19,20,33,41,46,乙7,8,47,丙1,丙2の1,丙4,丙5の1・2,丙6ないし9,丙10の1・2,丙11ないし13,丙20の1・2,丙21,26)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
ア旧会社は,平成12年10月ころから,被告千趣会との間で,旧会社が製造するチーズケーキの継続的な売買取引を開始した。
平成13年7月1日には,旧会社は,被告千趣会との間で,旧会社が製造する商品の販売に係る売買基本契約書(甲20)を締結した。同契約書中には,「旧会社はその商品につき,第三者が有する特許権,実用新案権,意匠権,著作権,商標権等を侵害しないよう特に注意し,被告千趣会に対し,これら第三者の権利に抵触しない商品を売渡すものとする。」旨の約定があった(10条?B)。
イ一方で,旧会社は,取り込み詐欺の被害に遭うなどして,平成12年5月31日時点で,約6379万円の欠損金を計上し,Cが知人から金銭を借り入れるなどして急場をしのいだものの,その後も資金繰りが厳しい状況が続き,平成14年8月には旧会社の取引先に対する債権が差し押さえられる事態となり,支払不能の状況に陥った。
結局,旧会社は,平成15年5月9日に横浜地方裁判所小田原支部に破産を申し立て,同年7月11日,同支部から破産宣告決定を受けた。
また,C個人も,同年5月9日に同支部に破産を申し立て,同年7月11日,同支部から破産宣告決定を受けた。
なお,旧会社は,平成12年ころから賃金の遅配や不払を繰り返しており,旧会社及びCは,平成15年8月21日,平塚労働基準監督署から労82働基準法違反(賃金不払)の被疑事件で書類送検された。
ウ被告千趣会は,税務署から旧会社の被告千趣会に対する売掛金債権についての照会を受けたり,旧会社の債権者から売掛金債権の差押えを受けたりすることがあったため,旧会社との間で,取引の停止も含めて事後の対応を協議することにした。
エ被告千趣会の担当者であるFは,平成14年8月ころ,上記の協議をするため,Cのもとを訪ねた。
Cは,旧会社が債権者から差押えを受けるなどしたために,信用を失い,チーズケーキの原材料を買い掛けで仕入れることができなくなったことから,被告Aに資金の提供等を求めていたこともあり,Fを被告Aのもとへ連れて行った。なお,被告Aは,Cの知人で,同被告の所有する土地を旧会社のチーズケーキ製造工場の敷地として賃貸する等しており,平成11年4月の旧会社の組織変更時には,同社の監査役に就任していた。
被告日動計画の事務所において,C,被告A及びFは,旧会社の商品供給について協議した。その際,被告Aから,被告日動計画が資金を拠出して商品の供給を継続すること,被告日動計画名義の取引口座を開設し,同口座に被告千趣会からの売買代金の振込みを行うことなどの提案があった。
被告千趣会は,Cも上記提案内容を了承していたことから,上記提案を受け入れることにした。
そして,被告日動計画は,平成14年9月24日,被告千趣会との間で,被告日動計画の商品の販売に係る売買基本契約書(丙1)を締結し,被告千趣会に対してチーズケーキの供給を開始した。同契約書中には,「被告日動計画はその商品につき,第三者が有する特許権,実用新案権,意匠権,著作権,商標権等を侵害しないよう特に注意し,被告千趣会に対し,これら第三者の権利に抵触しない商品を売渡すものとする。」旨の約定があった(10条?B)。
83オ平成14年9月24日に上記契約を締結した後,被告日動計画が原材料を調達し,旧会社の製造設備を用いてチーズケーキを製造し,これを被告日動計画が被告千趣会に供給するようになった。
当時,旧会社は,工場で稼働する従業員に対する賃金も支払うことができない状況にあったので,被告日動計画が上記賃金分の資金も拠出した。
なお,被告日動計画は,被告千趣会の他にも,旧会社の取引先と同様の契約の締結を試みたが,契約の締結には至らなかった。
また,被告Aは,平成14年9月ころには,工場入り口の鍵を付け替え,入り口には「日動計画」と記載したシールを貼り付けるなどした。
カ平成14年10月ころ,旧会社の債権者であるIが,旧会社が借金の弁済をしないことから,工場にあったチーズケーキ製造用の金型を担保として持ち帰ってしまうという事態が発生した。
被告Aは,工場職員から,上記事態が発生したことを聞き,上記金型がないとチーズケーキの製造をすることができず,被告千趣会に対する商品の供給も滞ることになってしまうことから,Iに連絡を取り,同人から,被告Aが旧会社に600万円を貸し付け,旧会社がIに対して,600万円を支払うことで解決する旨の了解を取り付けた。
Cは,平成14年10月17日,被告A立合いの下,Iとの間で,?@旧会社が,Iに対し,同日精算金として600万円を支払ったことを確認する,?A本和解により,旧会社,C及びIは,相互に一切の債権,債務のないことを確認する,ことなどを内容とする和解書(丙2の1)を締結した。
上記和解により,Iから上記金型が返還された。
キまた,被告Aは,Cに対し,旧会社のゴム印や代表者印,Cの実印を,被告日動計画の金庫において,保管しておくことを提案し,被告Cの了承のもと,平成14年10月ころから,被告Aが,上記印鑑等を保管していた。
84クCは,平成14年10月末ころ被告千趣会から被告日動計画の口座に入金された売買代金について,被告日動計画において精算し,残額が旧会社に対して支払われるものと考えていたものの,被告日動計画から旧会社に対する支払はされなかった。
そこで,Cは,被告千趣会からの代金について,自身が想定していた処理がされなかったことから,被告Aから上記印鑑等の返還を受けようと考え,同年11月8日,知人の保険外交員であるHに上記印鑑等を取りに行かせた。これに対し,被告Aは,同日,上記Hを通じて,Cに対し,上記印鑑等を返還した。
なお,前記認定のとおり,被告日動計画は旧会社の工場やケーキの製造設備を占有管理していたものの,Cが,これに対して,異議を述べたなどの事情は認められない(破産管財人作成に係る旧会社の破産事件に関する報告書(丙9)中には,「平成14年8月に至り,取引先の債権が差し押さえられる事態になり結局支払不能の状況に陥った。なお,その後,破産会社は,本店の事務所の地主でもあり監査役でもあった者に相談して,事務所は,その者の経営する会社が管理占有し,その会社が,営業を継続している。」との記載がある。)。
Cは,平成14年12月10日,所轄官署に対し,旧会社の廃業届を提出した。
ケ平成14年12月ころ,Cは,Bから,原告がチーズケーキの製造設備や販売店を開設すること,Cは原告の開設する工場の工場長として稼働すること等の提案を受けた。
Cは,上記提案を受け入れることとし,平成14年12月27日,旧会社からBに対し,本件商標権を譲渡し,Bは,平成15年1月16日,その旨の移転登録を了した。
原告は,平成15年1月下旬ころ,本件商標の上段の「SHIRAHA85MA」の文字列を「YOKOHAMA」に変更しただけで他の構成はほぼ同じ標章や「YokohamaG □ teauShirahama」との文字列から成る標章を使用して,チーズケーキ等の菓子類を販売する店舗を横浜市内に出店した。この際,原告は菓子店を新装開店した旨のチラシ(甲41,丙4)を配布した。
また,Cは,上記のころから,原告のケーキ製造工場において,工場長として稼働するようになった。
なお,CやBは,被告日動計画又は被告千趣会に対し,平成15年3月5日に被告千趣会に対して後記の告知,警告をするまで,Bに対する商標権の移転登録をしたこと等について,何ら説明をすることはなかった。
コBが本件商標の移転登録を経た後も,被告千趣会の商品カタログ(乙7,8)には被告日動計画の商品が被告標章10や同11を表示して紹介されていたことから,平成15年3月5日,Bは,Cと共に,被告千趣会の本社を訪ね,同被告の食品頒布開発部に在籍するFやGと面談した。Bは,この際,上記Fらに対し,Bが本件商標を譲り受けたことを告げると共に,被告千趣会の「しらはまチーズケーキ」の取引先を被告日動計画から原告に変更するように求め,被告日動計画の製造するチーズケーキに本件商標を付して販売することは本件商標権の侵害となることなどを警告し,原告が菓子店を新装開店した旨のチラシ(甲41,丙4)を手渡した。
被告千趣会は,Bから上記の話を聞いて,初めて,Bに本件商標権が移転された事実を知った。
サ被告千趣会は,Cを含めて協議した結果,被告日動計画との取引を開始したにもかかわらず,CがBに本件商標権を移転し,原告の下で稼働していることを知り,もはや,Cとの信頼関係の構築は困難であるとの判断から,Bからの上記取引の申出を断った。
そして,被告千趣会は,Bとの上記面談の後である同月7日,被告日動86計画の現代表者であるEと面談し,Bが本件商標権の譲渡を受けたことや上記警告を受けたことなどについて協議し,被告日動計画との間で,被告標章1の使用を中止することを決めた。Eは,上記面談の際,被告千趣会の担当者から,上記チラシ(甲41,丙4)を入手した。
なお,被告日動計画は,被告千趣会から上記の話を聞いて,初めて,Bに本件商標権が移転された事実を知った。
シ被告日動計画は,被告千趣会との上記協議の後同月8日以降,被告標章1の付された黒色の包装箱の使用を中止した。
(3)上記認定事実によれば,旧会社は,資金繰りに窮するようになり,平成14年8月ころには,債権者から取引先に対する売掛金債権の差押えを受け,チーズケーキの原材料を仕入れることもできない状況に至っていたこと,被告千趣会の担当者は,旧会社の上記のような状況に照らし,事後の取引についての対応を協議するため,同月ころCのもとを訪ねたこと,被告千趣会の担当者の訪問を受け,C,被告A及び上記担当者との間で協議が行われ,三者の間で,被告日動計画が資金を拠出して商品の供給を継続することや被告日動計画名義の取引口座を開設し,同口座に被告千趣会からの売買代金の振込みを行うことが合意されたこと,その後の平成14年9月24日,被告千趣会と被告日動計画との間で,売買基本契約書(丙1)が締結されたこと,上記契約後,被告日動計画は,自ら原材料を調達し,旧会社の工場設備を用いて,チーズケーキを製造して,被告千趣会に供給していたこと,被告日動計画は,原材料費や工場従業員の賃金を,自己資金を拠出してまかなっていたこと,Cは,被告日動計画が旧会社の工場,その製造設備を占有管理して,チーズケーキを製造,販売していることを認識しながら,これに特段異議を述べることはなく,かえって,平成14年10月中旬ころには,被告Aから600万円を借り入れて旧会社の債務の返済を行っていること,その上,Cは,同年12月10日には,所轄官署に対し,旧会社の廃業届けを提出した87ことが認められ,これらの事実に照らせば,旧会社の代表者であるCは,被告日動計画に対し,同被告がチーズケーキを販売するについて,本件商標をその包装箱に付したり,あるいは,その広告等に付したりすることにより使用することを許諾していた(通常使用権を付与していた)ものと推認することができる。
また,上記認定事実に照らせば,旧会社の代表者であるCは,被告千趣会に対し,被告日動計画の製造,販売に係るチーズケーキを消費者に販売するにつき,本件商標をその包装箱に付したり,あるいは,その広告等に付したりすることにより使用することを許諾していた(通常使用権を付与していた)ものと推認することができる(なお,前述のとおり,被告日動計画は旧会社から本件商標につき通常使用権の許諾を受けたものと認められ,加えて,上記で認定したところによれば,旧会社は,被告日動計画のチーズケーキが,被告千趣会などの通信販売業者を通じて消費者に流通することも当然に予定していたものと認められるから,被告日動計画の上記通常使用権は,被告日動計画の取引先業者が,その販売において,被告日動計画の商品に関して本件商標を使用することを許諾することもその内容として含んでいたものと考えられる。そうすると,被告千趣会は,被告日動計画との間で締結した売買基本契約書(丙1)により,被告日動計画の商品について各被告標章を使用していたものであるから,被告千趣会による上記使用は,本件商標の通常使用権を有する被告日動計画からの使用許諾に基づいたものといえる。)。
(4)なお,原告は,Cが被告日動計画に対し,平成14年11月以降は「しらはま」の名称の使用を認めない旨明言していた旨主張し,Cの陳述書(甲5)中には,「平成14年11月に入ってすぐだったと思いますが,私は日動計画の本社事務所で同社のA氏に対し「今後屋号やロゴマークを含めて『しらはま』の名前の使用は一切認めない」と告げました。」との記載がある。
88しかしながら,上記陳述書中,上記に関する部分は,Cが発したとする上記発言の前後のCと被告Aとの間のやりとりが記載されておらず(被告Aは,旧会社に代わってチーズケーキを製造,販売するために,その原材料費や金型を取り戻すための600万円の貸付等,既に相当の金銭の出捐をしていたこと,被告千趣会との売買基本契約書(丙1)の締結により,「しらはま」との名称を使用してチーズケーキを納品する債務を負っていたことに照らすと,Cから「しらはま」の名前の使用を認めないと一方的に告げられたとすれば,これに反論をし,その効力を争ったはずである。),具体性を欠くといわざるを得ないものである上,平成14年11月当時,被告日動計画が旧会社の工場やケーキの製造設備を占有管理していたものの,Cが,これに対して,異議を述べたなどの事情は認められないこと,Cは,平成14年12月10日,所轄官署に対し,旧会社の廃業届を提出したこと,Cは,同月ころ,Bから,原告がチーズケーキの製造設備や販売店を開設すること,Cは原告の開設する工場の工場長として稼働すること等の提案を受け,同月27日には旧会社からBに対し本件商標権を譲渡し,平成15年1月下旬ころからは,原告のケーキ製造工場において工場長として稼働するようになったこと,それにもかかわらず,CやBは,このことについて,同年3月5日に被告千趣会に本件商標権の侵害を警告したにとどまり,被告日動計画,あるいは,被告Aに対して,直接には,何ら通知や警告を発していないことなど,前記(2)で認定した事実経過に照らせば,上記陳述書の上記部分は到底信用することができず,他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。
なお,そもそも,前述のとおり,旧会社は,被告日動計画に対し,本件商標の通常使用権を許諾していたものと認められ,被告日動計画は,本件商標を使用してチーズケーキを販売するために相当の金銭を出捐していたことからすれば,仮に,旧会社の代表者であるCが一方的に上記発言をしたとの事実が認められるとしても,これをもって,旧会社と被告日動計画との間の本89件商標の通常使用権設定契約が解除されたと認めることはできない。
(5)前述のとおり,被告日動計画及び被告千趣会は,本件商標権を有していた旧会社から本件商標につき通常使用権の設定を受けたものの,その登録を経てはいないから(甲2),旧会社から本件商標権の譲渡を受け,その移転登録を経由したBに対抗することはできない。
そうすると,前記認定に係る本件商標権の侵害行為について,被告日動計画及び被告千趣会には,商標法39条が準用する特許法103条により,過失が推定される。
しかしながら,前述のとおり,被告日動計画及び被告千趣会は,旧会社の代表者であるCから本件商標につき通常使用権の設定を受けた者であって,当該使用権に基づいて,本件商標と類似する各被告標章の使用を開始し,これを継続していたのであるから,同被告らに本件商標権の移転の有無を調査するため,常時商標原簿を調査する義務があったとまではいい難く,同被告らが通常の注意力をもってすれば,本件商標権の移転の事実を知り得た時点までは,本件商標権の侵害行為について過失はなかったものということができ,上記過失の推定は,覆るものというべきである。
なお,前記(2)で認定したところによれば,Bは,Cに対して,自身が代表者を務める原告がチーズケーキの製造設備や販売店を開設することやCを原告の開設する工場の工場長として雇用すること等を提案し,Cから,本件商標権の譲渡を受けた上で,同人を,原告の工場長として稼働させていたものであるから,Cから本件商標の従前の使用状況を聴取することにより,あるいは,被告日動計画のホームページや被告千趣会のカタログを調査することにより,比較的容易に,被告日動計画及び被告千趣会による各被告標章の使用の事実を把握し得たものと考えられることからも,上記のように解するのが相当である。
そして,前記(2)で認定した事実によれば,被告千趣会については,平成9015年3月5日にBから,同人が本件商標権を譲り受けた旨の告知を受けるまでは,被告日動計画については,同月7日に上記告知を受けた被告千趣会から,Bが本件商標権を譲り受けた旨の告知を受けるまでは,通常の注意力をもってしても,本件商標権の移転の事実を知り得なかったものというべきであり,それぞれ上記時点まで,各被告標章の使用につき過失がなかったものといえる。
なお,原告は,被告日動計画は,平成15年1月20日ころ,原告店舗の開店のチラシを入手したか,又は入手し得る状態にあった旨主張するものの,上記事実を認めるに足りる証拠は存しない(なお,甲第33号証によれば,被告日動計画が株式会社東平商会に対して送付した同年4月30日付けの書面に上記チラシが添付されていたことが認められるものの,前記(2)で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,上記添付に係るチラシを被告日動計画が入手したのは,同年3月7日であると認められる。)。
(6)結局,被告千趣会については,平成15年3月5日以降の被告標章の使用につき,被告日動計画については,同月7日以降の被告標章の使用につき,それぞれ過失が認められるにとどまる。
なお,被告日動計画らは,Bが貸金の担保として本件商標権を譲り受けたので,旧会社が本件商標権を受け戻す可能性があったとか,旧会社の破産管財人がBとの間で訴訟上の和解をするまで本件商標権がBに対して確定的に移転していなかったなどとして,被告日動計画らには,平成15年3月7日にBに対して本件商標権が譲渡されたことを知った後も,各被告標章の使用につき過失はない旨主張する。しかしながら,仮に,被告日動計画らの主張に係る上記事実が認められるとしても,旧会社が受け戻すまで,あるいは,破産管財人による否認権の行使の効果が生じるまでは,移転登録を経ることにより,Bに本件商標権が移転していることに変わりはないのであるから,上記事情があることによって,被告日動計画らの過失が否定されることはな91い(ちなみに,本件においては,旧会社が本件商標権を受け戻したことや,破産管財人による否認権の行使により,本件商標権が破産財団に復したなどの事情も認められない。)。
21小括前記19記載の被告千趣会及び被告日動計画の被告標章の使用行為のうち,過失が認められる可能性のある時期以降のものについてまとめると,以下のとおりである。
(1)被告標章1について証拠(丙1,26)によれば,被告日動計画によるチーズケーキの出荷は,被告千趣会から,被告日動計画に対して,前月末に数量と送付先を通知し,被告日動計画が,当月末に冷凍倉庫にあらかじめ保管していた製品をまとめて送付するという方法により行われていたこと,平成15年3月分の出荷は,同月26日から28日にかけて行われており,同月5日から同月13日までの間に新たな出荷はなかったこと(前記認定のとおり,この間,数量訂正や返品交換による出荷が数個あったものの,これらは,色見本の黄色のサンプル包装箱に入れて出荷しており,被告標章1が付された黒色の包装箱は使用していない。),被告千趣会以外の取引においても,出荷方法は同様であったことが認められる。
上記認定事実によれば,被告千趣会が平成15年3月5日以降,被告日動計画が同月7日以降,被告標章1を使用したものとは認められない。
(2)被告標章11について前記認定のとおり,平成15年3月1日発行で,同月上旬ころまでには配布された被告千趣会の商品カタログ(乙8)において,被告標章11が表示されていたことが認められるものの,上記カタログが,平成15年3月5日以降に被告らによって配布されたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
よって,被告千趣会が平成15年3月5日以降,被告日動計画が同月7日92以降,被告標章11を使用したものとは認められない。
(3)以上によれば,過失が認められる被告標章の使用行為及びその期間は,次のとおりである。
被告標章使用者 過失の認められる使用時期被告標章5被告日動計画平成15年3月7日から同年6月16日まで被告標章6被告日動計画平成15年3月7日から同年6月16日まで被告標章7被告日動計画平成15年3月7日から同年6月16日まで被告標章8被告千趣会,被告日動計画平成15年5月1日から同月上旬ころまで被告標章12被告千趣会,被告日動計画 平成15年4月1日から同月上旬ころまで被告標章13被告日動計画平成15年3月7日から同年10月9日まで22争点(5)(被告日動計画が各被告標章の使用を止めた後の不法行為の成否)について(1)被告日動計画が,平成15年6月までは,同社のチーズケーキを「しらはまのチーズケーキ」,「しらはまチーズケーキ」などとして販売していたものの,同年7月以降,「デボンポート」の名称を用いて販売するようになったことは,前記9(2)で認定したとおりであり,証拠(甲15,27,乙18,20,23)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア平成15年10月27日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ93(乙20)中で,被告日動計画のチーズケーキが,「デボンポート」との表示の下で紹介され,その説明として,「ちっちゃくても,2年連続人気?bP!」などと記載され,製品の大きさや賞味期限の紹介の下に,「※店名が『デボンポート』に変わりました。これからもよろしくお願いします。」と記載されていた。
イ平成15年10月27日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(甲27,乙18)中で,被告日動計画のチーズケーキが,「デボンポート」との表示の下で紹介され,その説明として,「2年連続人気?bP!」,「“チーズケーキの会”で,2年連続?bPを誇る人気の高さも大ナットクの逸品です。」などと記載され,製品の特徴が説明された「パティシエから」の欄及びチーズケーキの製造過程を写した写真の下に,「店名が『デボンポート』に変わりました。これからもよろしくお願いします。」と記載されていた。
ウ平成15年11月27日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(乙21)中で,被告日動計画のチーズケーキが,「デボンポート」との表示の下で紹介され,その説明として,「ちっちゃくても,2年連続人気?bP!」などと記載され,製品の大きさや賞味期限の紹介の下に,「※店名が『デボンポート』に変わりました。これからもよろしくお願いします。」と記載されていた。
エ平成16年3月25日を有効期限とする被告千趣会の商品カタログ(甲15,乙23)中で,被告日動計画のチーズケーキが,「デボンポート」との表示の下で紹介され,その説明として,「3年続けて大人気」,「なんと唯一の4年連続登場商品。昨年のアンケートではみごと第2位に輝いた,チーズケーキの会の定番人気ケーキです。」とか,「なんと4年連続登場。千趣会チーズケーキの会には欠かせない人気のケーキ。」などと記載され,「デボンポート」の説明として,「神奈川県秦野市の住宅街にあ94るチーズケーキの専門店。」などとの説明の後に,「※店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。これからもよろしくお願いいたします。」(なお,印刷は赤字である。)と記載されていた。
(2)原告は,被告日動計画が各被告標章の使用を中止し,「デボンポート」の文字列からなる標章に変更した後,被告千趣会のカタログ広告に,被告日動計画の商品について,「店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。」とか,「店名が『デボンポート』に変わりました。」などと記載した上で,チーズケーキを販売することは,原告のチーズケーキと出所を混同し,本件商標に付着した業務上の信用(グッドウィル)を不正に利用するものであり,自由競争として許容される範囲を著しく逸脱する不法行為に当たる旨主張する。
そして,被告日動計画が各被告標章の使用を中止し,「デボンポート」名称を用いてチーズケーキを販売するようになった後,被告千趣会の商品カタログの中には,被告日動計画の商品について,「店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。」とか,「店名が『デボンポート』に変わりました。」などと記載されたものがあったことは,上記認定のとおりである。
しかしながら,前記20で認定したところによれば,被告日動計画は,平成14年9月24日に被告千趣会との間で,売買基本契約書(丙1)を締結した後,被告日動計画において原材料を調達し,旧会社の製造設備を用いてチーズケーキの製造を開始し,これを被告千趣会に供給するようになったこと,被告日動計画や被告千趣会は,被告日動計画の商品を広告,販売するにつき,各被告標章を使用していたものの,上記使用については,当時,本件商標権を有していた旧会社から,本件商標の通常使用権の許諾を受けていたこと,Bは,旧会社から本件商標権の譲渡を受けてその移転登録を経由した後,平成15年3月5日に,被告千趣会に対し,被告日動計画の製品に本件95商標を付して販売することは本件商標権の侵害になる旨を警告したこと,これを受け,被告千趣会と被告日動計画は,同月7日,対応を協議し,同月8日以降,被告標章1の付された包装箱の使用を中止したこと,以上の経緯が認められる。
これらの経緯に照らすと,被告日動計画,あるいは,被告千趣会が上記(1)のとおり,「店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。」とか,「店名が『デボンポート』に変わりました。」などと記載したのは,実際に,通常使用権の許諾に基づき,「ガトーしらはま」との名称でチーズケーキを販売していた者が,通常使用権を新商標権者に対抗することができないために,その名称を変更する旨告知したものにすぎず,上記行為をもって,原告,あるいは,Bに損害を与えることを意図して,あえて行われた加害行為であるなどということはできない。
また,前記(1)認定に係る上記商品カタログ中の記載の内容及び態様からすると,これが,不公正な方法,態様で行われたものであるともいえない。
よって,被告日動計画,あるいは,被告千趣会による上記記載が自由競争として許容される範囲を著しく逸脱する不法行為に当たるということはできず,原告の上記主張は採用することができない。
さらに,上記(1)認定に係る記載のうち,「2年連続人気?bP!」,「3年続けて大人気」,「なんと唯一の4年連続登場商品」などとの記載は,旧会社の製造,販売していたチーズケーキと被告日動計画が製造,販売しているチーズケーキを区別せず,同一の主体によるものとして混同して記述しているものであるといえるものの,Bは,本件商標権の移転を受けたにすぎず,旧会社の製造,販売していたチーズケーキの品質に対する信用を含め旧会社の業務上の信用そのものを承継したわけではないから,少なくとも,原告,あるいは,Bに対する不法行為とはならない。
なお,上記(1)エのとおり,被告千趣会の商品カタログ(甲15,乙2963)には,「※店名が『ガトーしらはま』から『デボンポート』に変わりました。」と記載されていたものの,これは,従前「ガトーしらはま」との名称でチーズケーキを製造,販売していた主体と現在「デボンポート」との名称でチーズケーキを製造,販売している主体とが同一である旨を説明する記述であって,上記「ガトーしらはま」との記載は出所識別の機能を果たす態様で使用されているものではないから,商標的使用にも当たらない。
(3)以上のとおりであるから,いずれにせよ原告の上記主張は理由がない。
23争点(6)(原告の商号続用者としての責任の有無)について被告千趣会は,原告が旧会社から営業の譲渡を受け,かつ,旧会社の商号である「株式会社ガトーしらはま」を続用したから,原告は,商法17条1項に基づき,旧会社から,旧会社により本件商標の使用許諾を受けた被告日動計画及び被告千趣会に対し,本件商標権に基づく権利行使をしない義務を承継した旨主張する。
この点につき,被告千趣会は,原告が旧会社から営業譲渡を受けたことを証する証拠として甲第19号証(新聞記事)を挙げるものの,同証拠の記述のみから,上記営業譲渡の事実を認定するに足りず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。
被告千趣会の上記主張は採用することができない。
24争点(7)(原告による権利濫用の有無)について(1)被告らは,?@Bが,旧会社において,被告日動計画に対して本件商標の独占的通常使用権を許諾していたことを知りながら,被告日動計画が上記独占的通常使用権につきその登録を経ていないことを奇貨として,旧会社から本件商標権の移転を受けたものである,?A原告は,「しらはま」,「しらはまのチーズケーキ」,あるいは,「ガトーしらはま」といった標章を一度も使用せず,積極的にこれと異なる「ガトーよこはま」の標章を使用しているから,原告には,もはや,「しらはま」等の上記標章を使用する必要はない97こと,?BBは,平成15年3月5日に被告千趣会の担当者と面談した際,被告千趣会に対し,チーズケーキの取引先を被告日動計画から原告に変更するように求めたのみで,各被告標章の使用の中止を求めることはなかったことを挙げ,これらの事情に照らすと,原告による本訴請求は,権利の濫用にわたるものであり許されない旨主張する。
(2)しかしながら,被告日動計画が本件商標につき通常使用権の許諾を受けていたと認められることは,前記20で述べたとおりであるものの,本件全証拠によるも,これが独占的なものであったと認めるに足りる証拠はない。
また,そもそも,Bが,被告日動計画や被告千趣会が,本件商標につき通常使用権を有することを知りながら,同被告らが上記通常使用権につき登録を経ていないことを奇貨として,本件商標権の移転登録を経たものであると評すべき背信的事情があることを認めるに足りる証拠もない(仮にBが,本件商標権の移転登録を受けた当時,被告日動計画や被告千趣会が通常使用権を有することを知っていたとしても,それだけでは背信的事情があったとはいえない。)。
さらに,Bが本件商標権の移転につき登録を経た平成15年1月ころには,Bが代表者を務める原告において,チーズケーキ等の菓子類を販売する店舗を出店し,同店において,本件商標と類似する標章(本件商標の上部の「SHIRAHAMA」の文字列を「YOKOHAMA」に変えたもの)を使用していたことは,前記1認定のとおりであり,このようなBにおいて,新商標権者であるBに使用権を対抗することができないにもかかわらず,前述のとおり本件商標と類似するものと認められる各被告標章を使用する者に対して,本件商標権に基づき権利行使をすることが,権利濫用に当たるということはできない。
加えて,Bは,平成15年3月5日に被告千趣会の担当者と面談し,Bが本件商標を譲り受けたことを告げると共に,被告千趣会の「しらはまチーズ98ケーキ」の取引先を被告日動計画から原告に変更するように求めたものの,その際,被告日動計画の製造するチーズケーキに本件商標を付して販売することは本件商標権の侵害となることをも警告していることは,前記20で認定したとおりであり(被告千趣会は,同月7日には,被告日動計画の担当者と協議し,被告標章1の使用を中止していることからも,Bが上記面談の際,被告日動計画の製造する製品に本件商標を使用することについて警告をしたことは明らかである。),上記Bの対応について,Bによる本件商標権に基づく権利行使が権利濫用に当たると評価されるべき事情があるとは認められない(B,あるいは,原告の対応に,過失相殺の対象とすべき事情も認められない。)。
(3)以上によれば,被告らの上記主張は理由がない。
なお,被告らは,Bが被告千趣会に対して本件商標権の移転を通知等した平成15年3月5日以降,被告千趣会及び被告日動計画が各被告標章の使用を中止するまでの短期間の使用継続は,顧客からの信用を維持しつつ,標章の使用を中止するのに必要な合理的な期間の使用であり,止むを得ないものである旨主張するものの,自己の使用が他者の商標権の侵害行為に当たる旨を認識し,あるいは,認識し得る以上は,直ちに,当該使用行為を止めるべきであって,商標権者において,使用の継続を受認すべきものとはいえない。
被告らの上記主張も理由がない。
25争点(8)(被告Aの責任の有無)について被告Aは,被告日動計画を昭和60年に起業し,平成16年1月7日に辞任するまでの間,同被告の代表取締役であった者である(丙21,弁論の全趣旨)。そして,前記20で認定したところによれば,被告Aは,被告日動計画が各被告標章を使用してチーズケーキを販売するにつき,中心的な役割を担っていたことが認められ,Bが平成15年3月5日に被告千趣会を訪れ,本件商標権の移転を受けた旨告げると共に,被告日動計画による本件商標の使用が商99標権侵害に当たる旨の警告をし,同月7日,被告日動計画(現代表者のE)が被告千趣会から上記の経緯を告げられたことにより,それ以降に被告日動計画が各被告標章を使用すれば,Bの有する本件商標権を侵害することになることは,被告Aにおいて容易に認識することができたものというべきであるから,被告Aには重大な過失があったと認められる。
よって,被告Aは,旧商法266条の3第1項の規定により,本件商標権の侵害によりBに生じた損害を,被告日動計画と連帯して賠償すべき責任を負う。
26争点(9)(損害の有無及び額)について原告は,商標法38条3項に基づき,本件商標権の侵害によりBに生じた損害の賠償を求めるので,この点について検討する。
(1)被告標章8及び同12の使用についてア被告標章12は,平成15年4月1日に発行され,同月上旬ころまでに配布された被告千趣会の通信販売用商品カタログ(乙9)中で使用されたものである。そして,乙第25号証及び弁論の全趣旨によれば,上記商品カタログに基づく被告日動計画のチーズケーキ(直径14センチメートルのもの)の出荷数量は1509個である。
イ被告標章8は,平成15年5月1日に発行され,同月上旬ころまでに配布された被告千趣会の通信販売用商品カタログ(甲8)中で使用されたものである。そして,乙第26号証及び弁論の全趣旨によれば,上記商品カタログに基づく被告日動計画のチーズケーキ(直径14センチメートルのもの)の出荷数量は1942個である。
ウ被告千趣会の上記販売に係る定価(上代)は1個当たり2680円である(甲8,乙9,25,26)。
ところで,被告千趣会の上記各商品カタログによる販売形態は,顧客に対し,毎月1回1年間にわたって,被告千趣会の選抜したチーズケーキが届けられることを内容とするカタログ販売であり,上記定価には,少なく100とも送料が含まれているものと推認することができる。上記定価のうち送料に相当する部分の金額を的確に認定することはできないものの,被告日動計画の製品につき,インターネット販売分で,送料が本州につき630円(税込み),北海道,四国,九州,沖縄で840円(税込み)とされている例があること(甲32),原告が営む「ガトーよこはま」で販売されている「しらはまチーズケーキ」の販売価格(税抜き価格)は,直径14センチメートルのもので2000円であること(甲31),Cが宮崎県日南市において営む「シェ・しらはま」で販売されている「しらはまチーズケーキ」の販売価格(税抜き価格)は,直径14センチメートルのもので2000円であること(丙31の2)からすると,上記定価のうち,チーズケーキの価格に相当するのは,原告が主張するとおり,2000円であると認めるのが相当である。
そうすると,被告千趣会の上記ア及びイの販売行為によるチーズケーキの売上額は,合計690万2000円となる。
エCは,平成元年ころから,「レストランガトーしらはま」等でチーズケーキを販売等するようになり,その後,上記チーズケーキは,「ガトーしらはまのチーズケーキ」として次第に評判となって,ラジオ番組やテレビ番組等でも取り上げられ(甲6),さらに,通信販売やデパート等へ出店しての販売も行われるようになった(甲37ないし40)こと,旧会社は,平成12年10月ころから,被告千趣会との間でチーズケーキの継続的な売買取引を開始し,平成15年当時には,「3万人を超える会員をもつ被告千趣会の『チーズケーキの会』で,2年連続人気1位となった」旨紹介されていたこと(甲7,乙8,13),原告によるチーズケーキの販売を伝える新聞記事(平成15年10月23日付け)には,「“伝説”チーズケーキ復活」との表題の下,「若い女性の人気を集めながら今年初め廃業した神奈川県秦野市の菓子メーカー『ガトーしらはま』のチーズケーキが,101横浜ブランドに装いを変えて再登場した。」,「ガトーしらはまは1980年代中ごろに創業した名店で,東京銀座や渋谷などの百貨店内に約十店を展開していた。」などと紹介されていること(甲19)等に照らすと,平成15年当時,本件商標に類似する「ガトーしらはま」,「しらはまチーズケーキ」,「しらはまのチーズケーキ」,「しらはま」などの標章は,需要者に対し,強い顧客吸引力を有していたものと考えられる。
上記に加え,Bが代表者を務める原告は,被告日動計画や被告千趣会の販売する製品と競合関係にあるチーズケーキを「しらはまチーズケーキ」との標章を用いて販売していること(甲31),その他本件に現れた諸事情を勘案すると,被告千趣会が被告標章8及び同12を使用したことによってBに対して支払うべき使用料相当額は,被告千趣会の上記売上額690万2000円に5パーセントを乗じた金額である34万5100円と認めるのが相当である。
オ前述のとおり,被告千趣会による上記使用行為は,被告千趣会と被告日動計画の共同不法行為であるから,被告千趣会及び被告日動計画は,Bに対し,連帯して34万5100円の損害賠償債務(不真正連帯債務)を負う。
さらに,被告Aは,被告日動計画の不法行為につき,同被告と連帯してその損害を賠償すべき責任を負うから,被告Aは,Bに対し,被告日動計画と連帯して34万5100円の損害賠償債務(不真正連帯債務)を負う。
(2)被告標章5ないし7及び13についてア平成15年3月7日から同年6月16日までの使用について(ア)被告日動計画が,平成15年3月7日から同年6月16日までの間,自身のホームページ(甲6,11,16,24,25。いずれも,ドメイン名は「nichidou.co.jp」であり,ディレクトリ名は「shirahama」である。)において,被告標章5ないし7及び13を表示して使用して102いたことは前記認定のとおりである。
(イ)丙第32号証及び弁論の全趣旨によれば,被告日動計画が,平成15年3月7日から同年6月16日までの間に,被告千趣会を経由せずに出荷したチーズケーキの個数は,次のとおりであると認められる。なお,被告日動計画らは,上記出荷数の中には,後に返品となったものが含まれている可能性がある旨述べるものの,被告日動計画らにおいて返品数を明らかにすることはできないというのであるから,上記出荷数を基礎として損害額を算定するのが相当と認める。
aベルーナに対する出荷直径14センチメートルのもの0個直径16センチメートルのもの6個直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの0個b有限会社一の家直径14センチメートルのもの1個直径16センチメートルのもの9個直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの0個cゆうゆ直径14センチメートルのもの27個直径16センチメートルのもの25個直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの0個dレインボーカントリー倶楽部直径14センチメートルのもの34個直径16センチメートルのもの33個103直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの0個eその他の顧客直径14センチメートルのもの215個直径16センチメートルのもの101個直径18センチメートルのもの46個直径20センチメートルのもの8個f合計直径14センチメートルのもの277個直径16センチメートルのもの174個直径18センチメートルのもの46個直径20センチメートルのもの8個(ウ)原告は,被告日動計画が被告千趣会を経由せずに販売したチーズケーキの価格は,直径14センチメートルのもので1500円,直径16センチメートルのもので2000円,直径18センチメートルのもので2500円,直径20センチメートルのもので3500円である旨主張する。これに対し,被告日動計画らは,上記出荷に係るチーズケーキの販売価格は,出荷先ごとに異なり,これを明らかにすることができないとする。
丙第32号証によれば,上記(イ)bの有限会社一の家に対する販売価格は,直径14センチメートルのもので1300円,直径16センチメートルのもので1625円であったことが認められ,上記(イ)の販売に係る売上額は,合計1万5925円(1300円+1625円×9個)であったと認められる。
他方,その他の販売価格については,これを的確に示す証拠はない(なお,有限会社一の家は,被告日動計画の現代表者であるEの友人が104営むレストランであること(丙32)に照らすと,これ以外の販売先に対する販売価格が有限会社一の家と同じであったとは推認し難い。)。
ところで,証拠(甲31,丙31の2)によれば,原告が営む「ガトーよこはま」で販売されている「しらはまチーズケーキ」の販売価格(税抜き価格)は,直径13センチメートルのもので1500円,直径14センチメートルのもので2000円,直径16センチメートルのもので2500円,直径18センチメートルのもので3500円,直径20センチメートルのもので5000円であること,Cが宮崎県日南市において営む「シェ・しらはま」で販売されている「しらはまチーズケーキ」の販売価格(税抜き価格)は,直径13センチメートルのもので1500円,直径14センチメートルのもので2000円,直径16センチメートルのもので2500円,直径18センチメートルのもので3500円であることが認められる。原告の製造,販売するチーズケーキ,被告日動計画の製造,販売するチーズケーキ,Cの製造,販売するチーズケーキは,いずれもCのレシピに基づくものであることに照らすと,上記(イ)a及びcないしeの販売に係る価格は,損害の控えめな認定との観点に依るとしても,原告の主張する,直径14センチメートルのもので1500円,直径16センチメートルのもので2000円,直径18センチメートルのもので2500円,直径20センチメートルのもので3500円を下らないものと推認することができ,この販売価格を基礎として損害額を算定するのが相当と認める。
そうすると,上記(イ)a及びcないしeの販売に係る売上額は,合計88万7000円(1500円×276個+2000円×165個+2500円×46個+3500円×8個)となる。
結局,上記(イ)aないしeの販売に係る売上額の合計は,90万2925円(1万5925円+88万7000円)となる。
105(エ)そして,上記(1)エ記載の事情に加え,被告日動計画の上記ホームページには,「オンラインショップ」との注文ページも用意されており,同ホームページを通じて,被告日動計画のチーズケーキを購入することが可能であったこと(甲6,11,16,24,25),上記(イ)eの販売態様は,上記ホームページの注文ページを通じての購入申込みによるものであり(丙32,弁論の全趣旨),上記(イ)で認定した販売数量のうち多数を占めていること(合計505個のうち370個),その他本件に現れた諸事情を勘案すると,被告日動計画が平成15年3月7日から同年6月16日までの間に,被告標章5ないし7及び同13を使用したことによってBに対して支払うべき使用料相当額は,被告日動計画の上記売上額90万2925円に5パーセントを乗じた金額である4万5146円(円未満切捨て)と認めるのが相当である。
イ平成15年6月17日から同年10月9日までの使用について(ア)被告日動計画は,平成15年6月に,デボンポートのホームページを作成した際,上記アのホームページの表紙ページ及び注文ページを削除したものの,特定商取引法に基づく表示のページ(甲11)を削除し忘れ,平成15年6月17日から同年10月9日までの間,上記ページに被告標章13を表示して使用していたことは前記認定のとおりである。
(イ)丙第32号証及び弁論の全趣旨によれば,被告日動計画が,平成15年6月17日から同年10月9日までの間に,被告千趣会を経由せずに出荷したチーズケーキの個数は,次のとおりであると認められる。なお,被告日動計画らは,上記出荷数の中には,後に返品となったものが含まれている可能性がある旨述べるものの,前記アと同様に上記出荷数を基礎として損害額を算定するのが相当と認める。
aベルーナに対する出荷直径14センチメートルのもの0個106直径16センチメートルのもの4個直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの0個b有限会社一の家直径14センチメートルのもの20個直径16センチメートルのもの89個直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの1個cゆうゆ直径14センチメートルのもの39個直径16センチメートルのもの31個直径18センチメートルのもの8個直径20センチメートルのもの0個dレインボーカントリー倶楽部直径14センチメートルのもの37個直径16センチメートルのもの42個直径18センチメートルのもの0個直径20センチメートルのもの0個e秦野市名産品のれん会協同組合直径14センチメートルのもの73個直径16センチメートルのもの62個直径18センチメートルのもの20個直径20センチメートルのもの0個fその他の顧客直径14センチメートルのもの111個直径16センチメートルのもの57個107直径18センチメートルのもの35個直径20センチメートルのもの5個g合計直径14センチメートルのもの280個直径16センチメートルのもの285個直径18センチメートルのもの63個直径20センチメートルのもの6個(ウ)上記(イ)bの有限会社一の家に対する販売価格は,直径14センチメートルのもので1300円,直径16センチメートルのもので1625円,直径20センチメートルのもので3250円であったから(丙32),上記(イ)bの販売に係る売上額は,合計17万3875円(1300円×20個+1625円×89個+3250円)であったと認められる。
他方,上記(イ)a及びcないしfの販売に係る価格は,アと同様に,直径14センチメートルのもので1500円,直径16センチメートルのもので2000円,直径18センチメートルのもので2500円,直径20センチメートルのもので3500円を下らないものと推認することができ,この販売価格を基礎として損害額を算定するのが相当と認める。
そうすると,上記(イ)a及びcないしfの販売に係る売上額は,合計95万7000円(1500円×260個+2000円×196個+2500円×63個+3500円×5個)となる。
結局上記(イ)aないしfの販売に係る売上額の合計は,113万0875円(17万3875円+95万7000円)となる。
(エ)そして,甲第11号証は特定商取引法に基づく表示のページであること,上記アのホームページのうち,上記特定商取引法に基づく表示の108ページが残っていたものの,既に注文ページは削除されていたこと,上記(イ)fの販売態様は,上記ホームページとは異なるデボンポートのホームページの注文ページを通じての購入申込みによるものが大半であると考えられること(弁論の全趣旨),その他本件に現れた諸事情を勘案すると,被告日動計画が平成15年6月17日から同年10月9日までの間に,被告標章13を使用したことによってBに対して支払うべき使用料相当額は,被告日動計画の上記売上額113万0875円に0.5パーセントを乗じた金額である5654円(円未満切捨て)と認めるのが相当である。
ウ以上によれば,被告日動計画は,Bに対し,上記ア及びイの合計5万0800円の損害賠償債務を負う。
そして,前述のとおり,被告Aは,被告日動計画の不法行為につき,同被告と連帯してその損害を賠償すべき責任を負うから,被告らは,Bに対し,連帯して5万0800円の損害賠償債務(不真正連帯債務)を負う。
(3)Bから原告に対する債権譲渡証拠(甲3,17,18,甲35の1・2,甲36の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,Bが原告に対し,被告千趣会,被告日動計画及び被告Aが各被告標章を使用して本件商標権を侵害したことに基づく,被告らに対する損害賠償請求権を譲渡したことが認められる。
そして,Bが,被告千趣会に対して平成18年3月7日,被告日動計画に対して平成16年11月16日,被告Aに対して同月17日,それぞれ上記債権譲渡を通知したことは,当事者間に争いがない。
(4)まとめア被告千趣会分34万5100円(全額につき被告日動計画と連帯)イ被告日動計画分10939万5900円(全額につき被告Aと連帯,うち34万5100円は被告千趣会と連帯)ウ被告A分39万5900円(全額につき被告日動計画と連帯)27結論以上によれば,原告の第1事件主位的請求は理由がないからこれを棄却し,第1事件予備的請求は,被告千趣会に対し,被告日動計画と連帯して34万5100円及びこれに対する不法行為の後の日である平成18年3月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の第1事件予備的請求は理由がないからこれを棄却し,原告の第2事件主位的請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,第2事件予備的請求は,被告日動計画に対し,39万5900円及びこれに対する不法行為の後の日である平成16年3月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,被告Aと連帯し,うち34万5100円及びこれに対する平成18年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員は被告千趣会と連帯して支払うことを,被告Aに対し,被告日動計画と連帯して39万5900円及びこれに対する不法行為の後の日である平成16年3月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを,それぞれ求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の第2事件予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
110阿部正幸裁判長裁判官平田直人裁判官柵木澄子裁判官111(別紙)商標権目録登録番号第4454328号出願年月日平成12年2月4日登録年月日平成13年2月23日商品及び役務の区分第30類指定商品菓子及びパン商標112(別紙)被告標章目録12113345611478910115111213しらはまのチーズケーキ「ただし,」に続けて,末尾にこれと同様の書体及び大きさの「キ」を付したもの