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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22ネ10084販売差止等請求控訴事件 判例 商標
平成22ワ13516商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成18ワ5272損害賠償請求事件 平成18ワ8460損害賠償請求事件 判例 商標
平成21ワ25783販売差止等請求事件 判例 商標
平成19ネ10057商標権侵害差止等請求控訴事件 平成19ネ10069附帯控訴事件 判例 商標
関連ワード 独占的使用 /  商標的使用 /  使用事実 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  品質誤認(4条1項16号) /  契約の解除 /  債務不履行 /  通常使用権 /  専用使用権 /  出所の混同 /  国内 /  信義則 /  使用許諾 /  存続期間 /  更新登録 /  継続 / 
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事件 平成 18年 (ワ) 20985号 商標使用権抹消登録請求事件
平成 19年 (ワ) 27767号 請求事件
千葉県市川市<以下略>
本訴原告・反訴被告株式会社久永製作所 (以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士山本卓也
同 大河内將貴
同復代理人弁護士内山史隆
同補佐人弁理士大橋弘 東京都墨田区<以下略>
本訴被告・反訴原告東洋エンタープライズ株式会社 (以下「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士伊藤真
同補佐人弁理士野原利雄
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/12/26
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,原告に対し,別紙商標権目録記載の商標権について,別紙登録目録記載の専用使用権設定登録の抹消登録手続をせよ。
2原告と被告とが別紙契約内容目録記載の契約内容による契約関係にあることを確認する。
3原告は,被告に対し,別紙商標権目録記載の商標権について,別紙専用使用権目録記載の専用使用権の設定登録手続をせよ。
,,, 。 4訴訟費用は これを4分し その3を原告の その余を被告の各負担とする
事実及び理由
全容
第1請求1本訴主文第1項と同旨2反訴主文第2項及び第3項と同旨第2事案の概要1本訴の概要本件は,本訴として 「CROWN」の文字から成る商標権の商標権者である原 ,告が,同商標権に基づいて,その専用使用権者であり同商標を米軍フライトジャケット等の復刻品に使用している被告に対し,主位的に,原告と被告がした専用使用権設定契約が錯誤無効であるとして,予備的に,本件商標が「MADEINUSA」等の文字と共に使用されている等の不正使用(商標法53条1項)を理由に同契約が原告によって債務不履行解除されたとして(第1次),又は専用使用権存続期間が満了したとして(第2次),専用使用権の設定登録の抹消登録手続を求めたと,,, , ころ 反訴として 被告が 原告と被告とが同契約の契約関係にあることの確認と同契約に基づく新たな専用使用権の設定登録手続を求めた事案である。
2前提事実( )当事者1ア原告原告は,昭和22年3月に設立されたホックの製造販売等を主たる業とする株式会社である。
(争いのない事実,甲24,弁論の全趣旨)イ被告被告は,昭和40年11月に設立された繊維製品等の国内販売及び輸出入等を目的とする株式会社であり,現在,約20のブランド製品を販売している。
(乙25,弁論の全趣旨)( )本件商標権2原告は,別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい,これに係る商標を「本件商標」という。)の商標権者である。
(争いのない事実)( )本件契約の締結3原告と被告は,平成10年2月21日,別紙契約内容目録記載のとおりの専用使用権設定基本契約を結んだ(甲3。以下「本件契約」といい,本件契約に基づく専「」。 。,。 用使用権を本件専用使用権という)契約内容の概要は次のとおりである地域日本国内指定商品スライドファスナー期間本件商標権の存続期間満了まで。ただし,本件商標権が更新された場合には,更新後についても同様とする。
契約の対価100万円(消費税別途)(争いのない事実)( )専用使用権の設定登録4平成10年4月27日,本件契約に基づき,被告のために,別紙登録目録記載の専用使用権設定登録が経由された。存続期間についての登録内容は 「・・・本商 ,標権存続期間満了(平成14年6月30日)迄」というものである。
(争いのない事実)( )被告による本件商標の使用5被告は,1940年代ころから1960年代ころまでの間に米陸軍航空隊又は米空軍に納品されていた軍用飛行服であるフライトジャケットの復刻品又はこれを原型とする各種ジャケットを 「BuzzRickson’s」(バズリクソン ,ズ)とのブランド名で製造販売しているが(以下,これら商品を「被告商品」という。),そのスライドファスナー(以下「本件ファスナー」という。)のスライダーの本体部分表側又はプル部分表側に 「CROWN」との文字を刻印して使用して ,いる。
(甲16の1〜12,乙25,検甲1の1〜4,弁論の全趣旨)( )本件商標権の更新登録6前提事実(2)のとおり,平成14年7月9日,本件商標権について,存続期間更新登録がされた。
( )原告による本件契約解除の意思表示7ア平成18年11月解除原告は,平成18年11月14日到達の同月13日付け原告準備書面により,被告に対し,出所又は品質の誤認を生じさせる本件商標の使用をしたことを理由に,本件契約を催告なくして解除する旨の意思表示をした(以下,この解除を「平成18年11月解除」という。)。
イ平成19年5月解除, ,, 原告は 同年5月30日到達の同月29日付け内容証明郵便により 被告に対し出所又は品質の誤認を生じさせる態様による本件商標の使用を継続していることを理由に,本件契約を解除する旨の意思表示をした(以下,この解除を「平成19年5月解除」という。)。
(争いのない事実)3争点( )本件契約の錯誤無効の有無1本訴の主位的再抗弁及び反訴の主位的抗弁として( )原告の重過失の有無2本訴の主位的再抗弁に対する再々抗弁及び反訴の主位的抗弁に対する再抗弁として( )原告の追認又は信義則違反の有無3本訴の主位的再抗弁に対する再々抗弁及び反訴の主位的抗弁に対する再抗弁として( )平成18年11月解除の有効性 4本訴の第1次予備的再抗弁(その1)及び反訴の予備的抗弁(その1)として( )平成19年5月解除の有効性5本訴の第1次予備的再抗弁(その2)及び反訴の予備的抗弁(その2)として( )専用使用権存続期間の経過6本訴の第2次予備的再抗弁として4争点に関する当事者の主張( )争点( )(本件契約の錯誤無効の有無)11ア原告(ア)原告の主張aまとめ次のb以下の事実経過のとおり,本件契約の際に原告には錯誤があったから,本件契約は無効である。
bAからの使用許諾申入れ原告代表者とかねだプランニングのA(以下「A」という。)とは,個人的な親交があったところ,平成7年10月,Aは,原告代表者に対し,ジーンズのスライドジッパーに付するため本件商標の使用を許諾してほしい旨の申入れをし,原告代表者は,Aに対し,これを了解する意向であることを伝えた。
c被告からの使用許諾申入れ(a)平成10年1月ころ,被告から依頼を受けた野原利雄弁理士(以下「野原弁理士」という。)は,本件商標の出願代理人であった大橋弘弁理士(以下「大橋弁理士」という。)に対し,本件商標権の譲渡又は本件商標の使用許諾の申入れをした。
(b)原告代表者は,これを上記bのAからの申入れの件であると考え,大橋弁理士を通じて,野原弁理士に対し,本件商標の使用を許諾してもよい旨を連絡した。
d誤認の表示(a)その後,被告のB(現被告代表者。以下「B」という )が原告に来社 。
して行われた使用許諾の話し合いの際に,Bは,被告代表者に対し 「紹介者のA ,, 。」。 さんにはお世話になっていますし Aさんからはよく聞いていますよと述べた,, , (b)このように 原告代表者は この協議がAから持ち込まれたものであり原告が取引相手を誤認していることを表示した。
eトイズマッコイからの使用許諾申入れ(a)本件契約の締結後の平成10年後半ころ,A及び有限会社トイズマッコイプロダクト(以下「トイズマッコイ」という。)は,原告代表者に対し,本件商標の使用を許諾してほしい旨の申入れをした。
(b)原告代表者は,この時に初めて,契約の相手を間違えたことに気が付いた。
(イ)被告の主張についてa後記被告の主張(イ)a(まとめ)は否認する。
b(a)同b(本件契約の締結経緯)(a)は否認する。
(b)同(b)は,大橋弁理士と野原弁理士との間で何度か交渉が持たれていたことは認め,その余は否認する。
(c)同(c)は認める。
(d)同(d)は否認する。
c(a)同c(平成15年の原被告間の交渉)(a)は認める。
(b)同(b)は認める。
(c)同(c)は否認する。
(d)同(d)は不知。
(e)同(e)は否認する。
d(a)同d(平成16年の原被告間の交渉)(a)は認める。
(b)同(b)は認める。
(c)同(c)は否認する。
イ被告(ア)原告の主張についてa原告の主張(ア)a(まとめ)は否認する。
b同b(Aからの使用許諾申入れ)は不知。
c同c(被告からの使用許諾申入れ)(a)のうち,申入れの日付は否認し,その余は認める。
同(b)のうち,原告代表者がこれを上記bのAからの申入れの件であると考えたことは不知,その余は認める。
d同d(誤認の表示)は否認する。
e同e(トイズマッコイからの使用許諾申入れ)は否認する。
(イ)被告の主張aまとめ(a)次の経緯からみても,原告は,被告を相手方として本件契約の締結へ向けた交渉をし,被告を相手方と認識の上で本件契約を締結したのであるから,原告に錯誤はない。
(b)また,本件契約の締結に当たって原告が主張するようなAとの個人的な関係が理由にあったとしても,それは動機の錯誤にすぎない。
b本件契約の締結経緯(a)被告の野原弁理士が原告の大橋弁理士に対して本件商標の使用許諾を正式に文書で申し入れた時期は,平成9年10月である。その際,野原弁理士は,被告の「会社概要書」を送付した。
(b)野原弁理士と大橋弁理士との間で何度か交渉が持たれ,被告が提示した契約書原案(乙14)に対し,原告から契約条項の修正案(乙15)が示された。被告は,この修正案について大筋において同意し,その旨を大橋弁理士に文書(乙16)をもって伝え,その際,使用予定の見本も提示した。
(c)その後,若干の変更を加え,平成10年2月21日,本件契約(甲3)が締結された。
(d)本件契約の締結交渉の間,Aについて言及されることは全くなかった。
c平成15年の原被告間の交渉(a)平成15年5月15日に被告側の野原弁理士が原告に対して本件専用使用権の再設定登録の手続を要請した。この際,原告は,被告に対して同契約が錯誤により無効であるとの主張をしなかった。
(b)原告は,平成15年9月17日付け内容証明郵便による通知書で,被告に対し,本件商標が被告により使用されているか否かの確認を求めてきた。この際にも,原告から本件契約が錯誤により無効であるとの主張はされなかった。
(c)その後,原告側の大橋弁理士は,野原弁理士に対し,電話連絡を行い,その時に初めて,第三者への許諾と間違えた,当該第三者に使用許諾を行いたい,被告との追加契約金として200万円を支払ってほしいとの要求をした。
(d)被告は,原告の要求には何らの根拠がないと考えたものの,原告との円満な関係を維持するため,第三者への使用許諾について承諾し,また,対価の追加支払にも応じることとした。
(e)ところが,この提案は無視され,原告からの連絡も途絶えた。
d平成16年の原被告間の交渉(a)原告は,被告に対し,平成16年6月11日付け文書で,第三者としてトイズマッコイの名を明示して再度使用許諾の申入れをしてきた。
(b)被告の野原弁理士は,原告に対し,前回の許諾要請と同様の条件で応じる旨を伝えた。
(c)ところが,その後,原告からもトイズマッコイ側からも連絡がなく,許諾要請はまたしても立ち消えとなった。
( )争点( )(原告の重過失の有無)22ア被告(ア)上記( )イ(イ)bないしdのとおり。 1(イ)上記(ア)の事実経過によれば,原告と被告との間では多数の書面が取り交わされており,原告がAに確認する機会も十分にあったものであるから,原告には重大な過失があり,錯誤無効を主張することはできない。
イ原告(ア)上記( )ア(イ)bないしdのとおり。
1(イ)被告の主張(イ)は否認する。
( )争点( )(原告の追認又は信義則違反の有無)33ア被告(ア)前記( )イ(イ)bないしdのとおり。
1(イ)上記(ア)の事実経過によれば,原告は,被告から契約金を受領し,長年にわたり専用使用権に基づく本件商標の使用を継続させ,平成15年9月17日には本件契約が有効であることを前提にして本件商標の使用事実の確認まで求めているものであるから,仮に本件契約が無効であるとしても,原告はこれを追認しているか,又は原告がその無効を主張することは信義則に反するものである。
イ原告(ア)前記( )ア(イ)bないしdのとおり。
1(イ)被告の主張(イ)は否認する。
( )争点( )(平成18年11月解除の有効性)44ア原告(ア)商標的使用被告は,本件商標を本件ファスナーの商標として使用している。
(イ)本件商標の不正使用a品質誤認(a)本件ファスナーのスライダーの本体部分裏側又はプル部分裏側には「USA」又は「MADEINUSA」の文字が刻印されている。
(b)したがって,本件ファスナーは,消費者に米国製であると誤信され,商品の品質誤認を生じさせている。
b出所混同等(a)被告商品カタログには 「ファスナー:クラウン社製スプリングカムロ ,ック式 「クラウン・シェブロンジッパー」との表示がある。 」(b)このカタログの表示と上記a(a)のスライダーの本体部分裏側又はプル部分裏側の「USA」又は「MADEINUSA」の表示とが相まって,消費者は,本件ファスナーが米国CROWN社(以下「クラウン社」という。)製のものであると誤信させられ,商品の出所混同を生じさせている。
(c)さらに,フライトジャケットの愛好家には,本件ファスナーが独特の製法及び構造と使い勝手の良さで有名であったクラウン社製のファスナーのヴィンテージ物とも誤信され,商品の品質誤認も生じさせている。
c商標の不正使用等(a)以上のような被告による本件商標の使用方法は,商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品との混同を生じさせているものであるから,商標法53条1項の商標の不正使用に該当し,不正競争防止法2条1項13号の原産地等誤認惹起行為にも該当する。
(b)後記被告の主張(イ)c(b)は争う。
商標の不正使用又は原産地等誤認惹起行為といえるためには,商標の一部に当該産地が付記され,あるいは商標がそのように変更されている必要はなく,当該商品全体から虚偽の産地を想起させるものであれば十分である。
d解除事由商標の使用権者は,使用許諾された商標を正当に使用するとともに,その使用に当たっては善管注意義務類似の義務を負っているところ,上記のような本件商標の, ,, 不正使用等は 原告が本件商標を用いて築き上げてきた信用と実績を傷つけ また本件商標を不正使用による登録取消しの危険にさらすものである。したがって,被告による本件商標の不正使用等は,原告の被告に対する信頼関係を破壊する背信的な行為である。
イ被告(ア)商標的使用について原告の主張(ア)は否認する。
被告は,フライトジャケットの復刻品の製造に当たり,細部にわたるまで忠実に再現するために,当該フライトジャケットのファスナーのスライダー本体部分表側又はプル部分表側に刻印されていた「CROWN」を再現したものであり 「CR ,OWN」の文字はデザインとして使用されているだけである。
被告は 「CROWN」の文字の使用は商標の使用とはいえないと考えたが,被 ,告商品の販売に万全を期するために,本件商標の使用につき,原告から専用使用権の設定を受けることとしたものである。
(イ)本件商標の不正使用についてa品質誤認(a)同(イ)a(a)は認める。
(b)同(b)は否認する。
被告は,フライトジャケットの復刻品の製造に当たり,細部にわたるまで忠実に再現するために,当該フライトジャケットのファスナーのスライダー本体部分裏側又はプル部分裏側に刻印されていた「USA」又は「MADEINUSA」をも再現した。この点は,被告商品に付されている旧米軍の記章エンブレムやステッチ 「U.S.PROPERTY 「U.S.AIRFORCE 「ARMYA , 」 」IRFORCE」等の文字と同様である。被告商品が復刻品として販売されている限り,上記の刻印から,生産国が米国と誤認されることはない。
b出所混同等(a)同(イ)b(a)は認める。
(b)同(b)は否認する。
「 」, 被告商品のカタログにある クラウン社製スプリングカムロック式 等の記載は被告商品の機構や特徴を説明するに際して,その原型であるクラウン社製ファスナーに係る歴史的事実やその特徴を説明しているものにすぎない。
また,クラウン社及び同製品は1960年代半ばには姿を消し,法的にも事実上も同社と関係する者は一切存在しない。したがって,誤認混同の対象となるべき営業主体及び競合商品は存在しないから,出所の混同及び出所の混同に起因する商品の品質誤認も生じない。
(c)同(c)は否認する。
クラウン社製の在庫品がいまだ流通しているとしても,クラウン社は約40年も前に消滅しているから,その数はわずかであり,出所混同を生じさせるほどのものではない。また,スライドファスナーに着目するほどの愛好家であれば,クラウン社が存在していないことは十分認識しており,本件ファスナーとクラウン社製品とを混同するはずがない。
c商標の不正使用等(a)同(イ)c(a)は争う。
(b)スライダーの本体部分裏側又はプル部分裏側に「USA」等と刻印されていても,その表側の「CROWN」の文字の構成には「USA」等が含まれてい,「」 。 ないから 被告による CROWN の使用が商標の不正使用等となる余地はないd解除事由(a)同(イ)dは否認する。
, (b)??仮に被告による本件商標の使用が商標の不正使用等に当たるとしても被告が「USA」等の刻印をしたのは,原型を忠実に再現するとの復刻品の理念に基づいたものであり,消費者を欺罔しようとしたことからしたものではない。
??また,被告は,原告の指摘に基づいて,スライダーの本体部分裏側又はプル部分裏側の「USA 「MADEINUSA」や,被告カタログの「クラ 」ウン社製」の表示を取り止めることとした。
??したがって,被告の行為は,催告なくして解除が認められるほど背信的かつ重大な契約違反行為に該当するものではない。
( )争点( )(平成19年5月解除の有効性)55ア原告(ア)上記( )ア(ア)及び(イ)のとおり。
4(イ)原告は,平成19年3月27日の第4回弁論準備手続期日において,被告に対し,本件ファスナーに「USA」又は「MADEINUSA」の文字を使用することを止めること,被告商品のカタログ等において「クラウン社製スプリングカムロック式」等の記載をすることを止め,本件商標の不正使用等を止めるよう催告した。
(ウ)後記被告の主張(ウ)は不知。
被告は,平成19年5月15日が経過しても,原告の催告に従わず,これに従ったことを裏付けるに足りる客観的な資料の提出もしなかった。
イ被告(ア)上記( )イ(ア)及び(イ)のとおり。
4(イ)原告の主張(イ)は明らかに争わない。
(ウ)a被告は原告の催告に従い,本件ファスナーに表記された「USA」又は「MADEINUSA」の文字については,平成19年3月下旬に製造委託先のメーカーに削除の指示をし,同年4月上旬から5月下旬にこのような表示のないファスナーのサンプルができ上がり,同年8月から10月にかけてこれらが順次納品される予定となっている。したがって,通年受注販売のジャケットと平成19年12月ころ納品予定の2008年春物ジャケットから,この刻印のないファスナー。, , が使用されることとなっている ただし 2007年秋冬物ジャケットについては上記表示のあるファスナーが使用されているが,これは,これら商品に使用されているファスナーは平成18年9月から平成19年1月に発注して納品されたものであり,事前に行われた展示会での一括受注の買取販売であるため,既に取り付けられているファスナーを是正することは現実的に不可能であるからである。
bまた,被告は,被告のホームページ上にあった「クラウン社製」等の文字を削除し,平成19年版の商品カタログについても 「クラウン社製」等の文字を ,削除したものを現在作成中である。
( )争点( )(専用使用権存続期間の経過)66ア原告平成14年6月30日は経過した。
イ被告認める。
第3当裁判所の判断1争点( )(本件契約の錯誤無効の有無)について1( )認定事実1本件契約の締結に至った事情,その後の原被告間の交渉過程,本件に至る経緯等について,各項末尾に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は,次のとおりである(一部の事実は争いがない。)。
ア被告の専用使用権設定への契機(ア)被告は,衣料品の製造及び販売を主な業務とし,約20のブランド製品を販売しているが,それら製品の中で最も人気があり,被告が最も力を注いでいるのが「BuzzRickson’s」(バズリクソンズ)という米陸軍航空隊ないし米空軍の航空機乗務員のユニフォームとして開発されたフライトジャケットを忠実に再現して製作された復刻品のシリーズである。このシリーズは,平成4年に米軍の軍事資料であるフライトジャケットの指示書が一般公開された後に,被告にお, 。 いてこれに基づき復刻作業に着手し 翌平成5年から販売が開始されたものである(乙24,25)(イ)米軍のオリジナルのフライトジャケットには,クラウン社製のスライドファスナーが使われていたものもあったため,Bは,これも忠実に再現しようとすると,スライドファスナーのスライダーの本体部分やプル部分に「CROWN」の文字を刻印する必要があるところ,原告が「CROWN」の文字から成る本件商標の商標権者であったことから,本件商標権を侵害することを懸念した。
そこで,Bは,野原弁理士と相談の上,本件商標の使用許諾を原告から得ることとし,平成9年9月ころ,野原弁理士は,本件商標権の出願代理人であった大橋弁理士と交渉を開始した。
(乙25)イ本件契約の締結経緯(ア)同年10月8日,野原弁理士は,原告代理人となった大橋弁理士に対し,被告商品に取り付けるスライドファスナーのスライダーの本体部分やプル部分に本件商標を刻印したいとして,被告の会社概要書を添付し,本件商標の使用許諾を文書にて正式に申し入れた(乙13,25)。
(イ)平成10年1月ころ,野原弁理士は,大橋弁理士に対し,本件商標権の独占的使用許諾,スライドファスナーを指定商品とする原告による新たな商標の出願及び同商標について被告への専用使用権の設定等を内容とする契約書原案を送付した(乙14)。これに対し,同年2月3日,大橋弁理士は,野原弁理士に対し,上記契約書原案に専用使用権存続期間の規定や商標の使用を中止した場合に専用使用権設定登録の抹消登録手続をする旨の規定を加えること等を内容とする修正案を送付した(乙15)。さらに,野原弁理士は,新たな商標出願は本件商標と同一であるとの理由で拒絶されるおそれがあるため,端的に本件商標権につき専用使用権を設定してほしいとの修正案を提案した(乙16)。
, , , (ウ)この後も 両者間で更に話し合いが持たれ 平成10年2月21日までに本件契約の内容で合意が整った(弁論の全趣旨 。)ウ本件専用使用権の設定及びその登録(ア)平成10年2月21日,原告と被告は,被告に専用使用権を設定する旨の本件契約を締結し,同月26日,被告から原告に対して対価105万円(消費税込)が支払われ,同年4月27日,本件契約に基づき,別紙登録目録記載の専用使用権設定登録が経由された(争いのない事実,前提事実(4),乙17ないし19)。
(イ)平成14年7月9日,本件商標権につき,存続期間更新登録がされ,その存続期間は,平成24年6月30日までとなった(前提事実(6),甲1 。)(ウ)本件契約締結までの間,原告側からAの話がされたことはなく,本件契約の締結以降も後記平成15年の原被告間の交渉が始まるまで,Aの話又は人違いとの話がされたこともなかった(乙25,弁論の全趣旨 。)エ平成15年の原被告間の交渉(ア)平成15年5月15日,被告代理人の野原弁理士は,原告代理人の大橋弁理士に対し,本件商標が更新されたことから,専用使用権設定の再設定登録の手続を要請し 「専用使用権設定契約証書並びに単独申請承諾書」への原告の押印を求 ,めた(乙1)。
(イ)同年9月17日,大橋弁理士は,被告に対し,本件契約の条項に基づく被,。, 告による本件商標の使用事実の有無の確認を行った(甲13 乙2) これに対して野原弁理士は,同年10月14日,大橋弁理士に対し,本件商標の使用事実を証するものとして「USA」等と刻印されていたスライドファスナーの現物4品,その説明書及びカタログを送付した(甲14,乙3,検甲1の1〜4)。
(ウ)平成15年10月ないし11月ころ,大橋弁理士は,野原弁理士に対し,原告による本件商標の第三者への使用許諾を被告において承諾すること,専用使用権設定に際しての追加契約金として被告が200万円を支払うことを内容とする要請を行った(甲4)。この時に初めて,大橋弁理士は,野原弁理士に対し,第三者へ,。, の許諾と被告への許諾を間違えた旨の話をした(甲7 弁論の全趣旨) これに対し同年11月13日,野原弁理士は,大橋弁理士に対し,第三者がだれなのか明らかでなければ承諾には応じられないとしつつ,第三者への使用許諾については被告の承諾を必要とするが,その対価は原告において取得してもよいこと,追加契約金については100万円の限度において応じ,次回更新時においても同様とすること,第三者への使用許諾によって生じた一切の権利及び義務は原告の責任と負担において処理すること等の条件を提示した(甲4)。そこで,大橋弁理士は,原告代表者に対し,第三者の社名を連絡してほしいとの要請をした。原告代表者は,Aに社名を尋ね,同社がトイズマッコイであることを知り,同月18日,トイズマッコイ側のわかば国際特許事務所を介して,大橋弁理士に対し,上記「第三者」がトイズマッコイであることを明らかにした(甲5,24)。
,, , (エ)しかし その後 原告又はトイズマッコイから被告に対する連絡が途絶え交渉はしばらく中断された(弁論の全趣旨)。
オ平成16年の原被告間の交渉(ア)平成16年5月26日,トイズマッコイ側のわかば国際特許事務所は,原告代理人である大橋弁理士に対し,指定商品をスライドファスナーとし,期間を本件商標権の存続期間とし,更新の可能性を留保し,対価を次回更新時までの分として100万円とする登録特約付きの通常使用権を許諾してほしいとの提案をし,交渉が再び再開された(甲6)。
(イ)そこで,大橋弁理士は,同年6月11日,上記エ(ウ)の野原弁理士から大橋弁理士に対してされた平成15年11月13日付け回答に返答をしたが,その内容は,トイズマッコイへの使用許諾によって生じる権利義務関係については,被告とトイズマッコイとの間で交渉をし,両者間で契約を締結してほしいが,その余の点では被告の提案に同意するというものであった(甲7,弁論の全趣旨)。また,同日,大橋弁理士は,わかば国際特許事務所に対しても,被告が本件商標権の通常使用権を許諾してもよいとしていること,今後の打合せはすべて野原弁理士との間で行ってもらいたいこと,トイズマッコイから原告に紹介料名目で100万円を支払ってほしいこと,次回更新時においても同額を支払ってほしいこと等の要望を伝えた(甲8)。
(ウ)同年6月14日,わかば国際特許事務所と野原弁理士は,直接の交渉を開始し(甲9),同月15日,わかば国際特許事務所は,大橋弁理士に対し,被告とトイズマッコイとの間の契約内容についての契約書案を送付し(甲10の1・2),同月21日にはその修正・訂正案を送付した(甲11)。また,同年7月6日,わかば国際特許事務所は,野原弁理士に対し,交渉の催促をした(甲12)。
(エ)しかし,トイズマッコイと被告との間の交渉は,それ以上進展しなかった(弁論の全趣旨 。)カ本件提訴平成18年9月21日,本件訴訟が提起された。
( )検討2ア上記に説示した事実によると,原告は,被告を相手方であると正しく認識し,その上で被告との間で綿密な交渉をして本件契約を締結したのであり,原告に相手方の点について要素の錯誤が生じたとみる余地はない。
イ原告の主張の実質は,原告が契約したかったのは原告代表者と親交のあるAが紹介してきた会社であり,被告はAとは関係のない会社でありAに対する恩義に報いたことにならないという点にあるが,そのような点についての錯誤は,単な, 。 る経緯や人間行動の動機とは言い得ても 法律行為の動機になり得るものではない仮にこのようなものでも動機の錯誤になり得るとしても,その表示がないことは前記( )ウ(ウ)に認定のとおりである。
1ウしたがって,原告の錯誤の主張は,争点( )及び( )について判断するまで 23もなく,理由がない。
2争点( )(平成18年11月解除の有効性)及び争点( )(平成19年5月解除4 5の有効性)について( )認定事実1被告による本件商標の使用状況等について,各項末尾に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は,次のとおりである(一部の事実は争いがない。)。
ア被告商品及び本件ファスナー被告商品は,年代物の米軍のフライトジャケットの材質及び形状を忠実に再現す.. .るほかフライトジャケットにあるU S PROPERTY(米軍所有物)U , 「」,「」,,,, SAIRFORCE(米空軍)所属部隊搭乗機種飛行士章等のマーク.あるいはフライトジャケット製造会社の織りネームなどに至るまでオリジナル品を忠実に再現しようとするものであるところ,そのような中で,スライドファスナーのスライダー本体部分表側又はプル部分表側に本件商標が,同裏側に「USA」又は「MADEINUSA」の文字がそれぞれ刻印されている(甲16の1〜12,乙26,検甲1の1〜4)。
イ下げ札本件ファスナーに付された下げ札には,表側に「CROWNSLIDEFASTENER」として 「CROWN」の文字が刻印されたファスナー表側の写真 ,が掲載され,その下には 「CROWN」に被告の専用使用権が登録されているこ ,とが英文で記載されている。
同下げ札の裏側には 「CROWN(商標登録番号第2428270号)とは, ,TOYOENTERPRISECO ,LTD.が,現代に甦らせた幻のZI .PPERの商標です。1930年代,米陸軍航空隊のA-2ジャケットにCROWN初期のシェブロン型ZIPPERが使用されて以後,厳しいミルスペック管理の基で製造された堅牢度の高いCROWNは ・・・・・1960年代末には,安価 ,なZIPPERにその座を譲り,幻のZIPPERとなってしまいました ・・・ 。
この独特な機能と美しいデザインを兼ね備えたスライダーを,当時のパーツとリニューアルされた復刻パーツとを組合わせ,現代に甦らせました 」と記載されてい 。
る(甲15)。
ウ被告商品の宣伝状況被告商品カタログには 「BuzzRickson’s」(バズリクソンズ) ,と,被告のブランド製品のカタログであることが明記され,クラウン社のスライドファスナーについての説明をする頁があるが,被告商品の各種フライトジャケットを解説する頁には,どのオリジナル品をモデルとしたのか,オリジナル品にはどのような来歴があるか等についての説明があり,いかに忠実に再現されているのかが強調されている(甲16の1〜12 。)そのような説明の中に,ファスナーの仕様について 「フロントファスナー:ク ,ラウン社製スプリングカムロック式 (甲16の3〜12)フロントファスナー: 」,「タロン社製ブラス」(甲16の9) 「フロントファスナー:コンマー社製ブラス」 ,(甲16の10)等の記載があり,ジャケット本体のネームの仕様については 「ラ,ベル:スーペリアトッグス社実名復刻ネーム」(甲16の3) 「ラベル:ブルーア ,ンカーオーバーオール社実名復刻ネーム」(甲16の4) 「ラベル:モナークマヌ ,ファクチャリング社実名復刻ネーム」(甲16の7) 「ラベル:ライオンユニフォ ,」 。 ーム社実名復刻ネーム (甲16の7・8)等の記載が見られる(甲16の1〜12)また,被告のホームページにおける被告商品の紹介においても,?@ジャケット本体の織りネームの写真と,この写真についての「アメリカンパッド&テキスタイル社の織りネーム との説明 ?Aシンボルマークの写真と その写真についての 米 」, ,「空軍のシンボルAFマーク」との説明,?Bスライドファスナーの写真と,その写真についての「クラウン社製スプリングカムロック式ジッパー」との説明(甲22の1,25)や,?Cジャケット本体の織りネームの写真と,この写真についての「黒地にイエローの織りネーム」との説明,?D裏地のマークの写真と,その写真についての「裏地のAAFマーク」との説明,?Eスライドファスナーの写真と,その写真についての「クラウン・シェブロンジッパー」との説明がある(甲22の2)。
エ被告商品の販売状況被告商品は,復刻品であることを明示して販売するものであり(甲16の1〜12,弁論の全趣旨),被告商品の直接の購入者の多くもそのようなものとして受け止めている(乙6ないし9,24)。
被告は 「BuzzRickson’s」(バズリクソンズ)シリーズのジャ ,, , ケットの修理サービスを行っており スライドファスナーの交換には応じているがスライドファスナー単体の販売はしていない(乙20)。
オヴィンテージ品の流通クラウン社は,1960年代には消滅し,同社製のスライドファスナーは,同社存続中に製造されたもののデッドストック(売れ残り品)か,中古品に限られる(弁論の全趣旨 。)トイズマッコイは,アルバート・ターナー社製のフライトジャケットの復刻品を販売しているが,同ジャケットの原型にはクラウン社製スライドファスナーが使用されていた。そのため,トイズマッコイは,復刻品の製造に当たって,クラウン社製のデッドストック(売れ残り品)を入手して同ジャケットの復刻品の製造に使用し,その点をこのジャケットの最大の特長として宣伝している(甲21の1・2)。
また,実際に使用された米軍フライトジャケットのヴィンテージ品も,わずかではあるが流通しており,その中にはクラウン社製スライドファスナーを使用しているものもある(甲27,28,乙24,25,弁論の全趣旨)。
カ被告の各記載の使用取止め状況被告は,平成19年3月29日,本件ファスナーの製造委託をしている山崎商事株式会社(以下「山崎商事」という。)に対し,スライダーの本体部分裏側又はプル部分裏側に刻印された「USA」又は「MADEINUSA」の文字を削除するようにとの指示をした(乙21)。
山崎商事は,同年4月下旬ころまでに,新たなスライダーの金型を完成し(乙28,29,31),同年7月下旬ころから,新たなスライダーを付したファスナーの納品を開始した(乙30,32,33,弁論の全趣旨)。そして,2007年秋冬ものの一部のジャケットと平成19年12月ころ納品予定の2008年春物ジャケット以降のジャケットには 「USA」や「MADEINUSA」の表記のな ,いファスナーが付されることとなっている(乙33,弁論の全趣旨)。ただし,2007年秋冬物ジャケットについては,その受注及び生産開始時期との関係で,依然として「USA」又は「MADEINUSA」の表記のあるファスナーも使用されている(乙33)。
また,被告は,遅くとも平成19年7月,被告ホームページ上にあった「クラウン社製」の文字を削除し 「スプリングカムロック式ジッパー」に改めた(乙26, ,27,33)。
平成19年版の商品カタログについても 「クラウン社製」の文字を削除したも ,のを作成中である(弁論の全趣旨)。
( )検討2ア商標的使用について(ア)上記(1)アの事実によれば,被告は本件商標を本件スライドファスナーの商標として使用しているものと認められる。
,, , (イ)被告は 復刻品の製造に当たり 細部にわたるまで忠実に再現するためにフライトジャケットのファスナーのスライダー本体部分表側又はプル部分表側に刻印されていた「CROWN」を再現したものであり 「CROWN」の文字はデザ ,インとして使用されているだけである旨主張する。
しかしながら,本件ファスナーでは,商標が通常付される部位であるスライダー本体部分表側又はプル部分表側に「CROWN」と刻印され(上記( )ア),当該フ1ァスナーの使用されたフライトジャケットは,飾り物としてではなく,現実に着用される商品として販売されるものである(上記(1)エ)。被告が被告商品を復刻品であると明示して販売していること(上記(1)エ)は,商標法や不正競争防止法にいう混同を生ずるおそれを否定する方向に働く事実ではあっても,商標的使用を否定する事実とはなり得ない。
よって,被告の上記主張は採用することができない。
イ商標の不正使用等について, 「」 (ア)被告は スライダー本体部分表側又はプル部分の表側にある CROWNの文字の構成には「USA」等が含まれていないから,被告による「CROWN」の使用が商標の不正使用等となる余地はない旨主張する。
本件では,ファスナーのスライダーの本体部分又はプル部分の各表側に本件商標の刻印が,同裏側に「USA」又は「MADEINUSA」の刻印があるから(上記(1)ア) 「CROWN」と「USA」又は「MADEINUSA」とが ,全体として一つの商標を構成し,商標法53条1項にいう「登録商標に類似する商標」に当たると認めることは,困難である。
(イ)しかしながら,プル部分の裏側の「USA」等の表示は,不正競争防止法2条1項13号の原産地等誤認惹起行為に該当する可能性がある。
ウ不正使用等の有無について(ア)上記( )に説示した事実によると,被告が本件ファスナーに「MADE1INUSA」又は「USA」の表示を付した行為は,本件ファスナーが米国製のものであるとの原産地の誤認や,クラウン社製のファスナーのヴィンテージ物と誤信されての品質誤認を需要者に生じさせるおそれがある行為であると認められる。
(イ)被告は 被告商品を復刻品であると明示して販売していること(上記(1)エ) ,を強調し,品質等の誤認を否認する。
しかしながら,他社の製品の復刻品であるからといって,商標法上や不正競争防止法それを許容する独自の法理があるわけではなく,本件商標の使用等が商標法上又は不正競争防止法上違法か否かは,商標法又は不正競争防止法の規定する各要件を個別に検討して判断するほかはない。
確かに,被告は,被告商品を復刻品と明示して販売しているから,被告商品の直接の購入者の多くは被告商品を復刻品と正しく認識し,品質の誤認等を生ずるおそれは極めて低いと認められるが,クラウン社のファスナーを使用した正規のフライトジャケットは約40年前まで製造されていたため,数はわずかであるが,実際に使用され,クラウン社製スライドファスナーを使用した米軍フライトジャケットのヴィンテージ品も流通しているから(上記(1)イ,オ),被告からの直接の購入者であっても,品質等の誤認のおそれはないとはいえないし,直接の購入者から転々譲渡を受けた取得者「post-sales confusion」であれば,品質等の誤認をするおそれは相当高いと認められる。
よって,被告の上記主張は,採用することができない。
エ解除の有効性について(ア)次に説示する本件に顕れた事実関係の下においては,上記ウの不正使用等の事実のみから,本件契約の解除を相当とする事由があるとまで認めることはできない。
(イ)被告は,米軍のフライトジャケット愛好家のために,その細部に至るまで忠実に再現しようとして,本件ファスナーの裏側の「USA」や「MADEINUSA」の刻印まで再現したものである(上記(1)ア)。
そして,被告は,被告商品を復刻品であると明示して販売している(上記(1)イ〜エ)。
(ウ)本件ファスナーのようにスライダーの本体部分裏側又はプル部分裏側の「USA」や「MADEINUSA」の刻印まで再現した復刻品が不正競争防止法2条1項13号の要件を満たす可能性があることは,被告が本件契約を締結した平成10年2月当時,一義的に明確であったとはいえない。事実,原告は,平成「」 , 15年10月に USA 等と刻印された本件ファスナーを被告から受領しながらそのような使用の中止を求めていなし(前記1(1)エ(イ)),原告が本訴においてそのような使用を問題にしたのも,平成18年11月13日からである(原告の平成18年11月13日付け第一準備書面)。
(エ)被告は,遅くとも原告が是正を求めたと主張する平成19年3月29日から,金型より「MADEINUSA」及び「USA」を削除する措置を採っており,カタログにおける「クラウン社製スプリングカムロック式」等の表示も取り止める措置を採っており(上記( )カ),その措置が不相当に遅延したものとまで認1めることはできない。
オまとめ以上のとおり,本件ファスナーの「MADEINUSA」又は「USA」の表示をとらえて,本件契約の本旨に反する契約違反行為であり,本件契約の解除事由があるとまで認めることはできない。
これに反する原告の主張は,採用することができない。
3争点( )(専用使用権存続期間の経過)について6本件専用使用権の設定登録における存続期間は 「・・・本商標権存続期間満了 ,(平成14年6月30日)迄」とされているところ(前提事実(4)),平成14年6月30日は経過した。
4結論(1)本訴請求前記1での認定判断のとおり,本訴の主位的再抗弁である原告の錯誤の主張は,理由がない。また,前記2での認定判断のとおり,本訴の第1次予備的再抗弁である原告の各解除の主張も,理由がない。
しかしながら,前記3での認定判断のとおり,本訴の第2次予備的再抗弁である原告の存続期間の経過の主張は,採用することができる。
したがって,存続期間の経過を理由として本件専用使用権の設定登録の抹消登録手続を求める原告の請求(主文第1項)は,理由がある。
(2)反訴請求前提事実(3)のとおり,原告と被告とは本件契約を締結したところ,前記1での認定判断のとおり,反訴の主位的抗弁である原告の錯誤の主張は,理由がない。ま, , , た 前記2での認定判断のとおり 反訴の予備的抗弁である原告の各解除の主張も理由がない。
そうすると,本件契約は有効に存続しているものであり,また,専用使用権の設, , 定を約した原告は 被告のために専用使用権の設定登録手続をする義務を負うから原被告が本件契約関係にあることの確認を求める被告の請求(主文第2項)及び専用使用権の設定登録手続を求める被告の請求(主文第3項)は,いずれも理由がある。
(3)まとめよって,原告の請求及び被告の請求は,いずれも理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 中村恭
裁判官 宮崎雅子