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関連ワード 指定役務 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) / 
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事件 平成 19年 (ワ) 13265号 損害賠償請求事件
大阪市〈以下略〉
原告株 式会社リポーズ名古屋市〈以下略〉
被告 Y
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2008/01/31
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,60万円を支払え。
第2事案の概要本件は,後記登録商標の商標権者である原告が,同登録商標と類似する標章を使用して営業する被告の行為は原告の上記権利を侵害すると主張して,被告に対し,平成16年3月1日から平成19年2月28日までの間の同標章の使用について,民法709条(商標法38条3項)に基づき,60万円の損害賠償を求めた事案である。
1 前提事実(1)原告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件登録商標」という )を有している(甲1,乙1 。 。 )出願年月日平成12年2月4日登録年月日平成13年5月11日登録番号第4471841号商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分第42類飲食物の提供登録商標貴鶏屋(2)被告は,その経営する居酒屋の店舗看板及び名刺に「喜度利家」の標章(以下「被告標章」という )を付して使用している。 。
2 争点(1) 本件登録商標と被告標章との類否【原告の主張】本件登録商標と被告標章は,いずれも「きどりや」と読み,称呼が同一であるから,誤認混同が生じる。したがって,両者は類似する。
【被告の主張】本件登録商標は「貴鶏屋」と書き 「きどりや」又は「きけーや」と読む。こ ,れに対し,被告標章は,江戸文字,勘亭流で「喜度利家」と書き 「きどりゃ ,あ」と読む 「きどりゃあ」とは,名古屋弁で「気取りなさい 「気取って」とい 。 」う意味であり,居酒屋に来るときぐらい少し気取って(格好付けて)遊んで頂きたい,また,名古屋弁を使うことで親しみが出ると考え,平成2年3月の開店以来,店の称号として使用している。来店されるお客様には「きどりゃあ」の愛称で親しまれている。以上のとおり,本件登録商標と被告標章は,外観及び称呼が異なるから,誤認混同は生じない。したがって,両者は類似しない。
(2) 原告の損害【原告の主張】平成16年3月31日から平成19年2月28日までの間における本件登録商標の使用料相当損害金は60万円である。
【被告の主張】争う。
第3 争点に対する判断1 争点(1)(本件登録商標と被告標章との類否)について(1)証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,本件登録商標は,漢字「貴鶏屋」から成り 「きどりや「きけーや」等の称呼を生じること,被告標章は,漢字 ,」,「喜度利家」から成り 「きどりや」との称呼を生じることが認められる。 ,被告は,被告標章は「きどりゃあ」と読むと主張し,なるほど,第1回口頭弁論調書末尾添付の被告の名刺に「今日もきどりゃあへ来てちょーよ 「マイク片 」手にきどりゃあ」との記載があることなど弁論の全趣旨によれば,被告自身が被告標章を「きどりゃあ」と呼び,これに伴って,被告経営の居酒屋を頻繁に訪れる地元名古屋市の常連客であれば,被告標章を「きどりゃあ」と呼ぶことが多いであろうことは窺える。したがって,被告標章は「きどりゃあ」との称呼も生じるものというべきである。
しかし,被告標章は,これに「きどりゃあ」との振り仮名が付されているのであれば格別,そうでない以上,被告経営の居酒屋の所在地が名古屋市であることを考慮しても,居酒屋を訪れる一般の客等,本件登録商標の指定役務である「飲食物の提供」に係る需要者は,通常であれば被告標章をその当て字の通常の読みに従い 「きどりや」と呼ぶものと認めるのが相当である。したがって,被告標 ,章は「きどりや」との称呼も生じ,本件登録商標と称呼を共通にする。
なお,観念についてみると,本件登録商標と被告標章はいずれも当て字ではあるものの,本件登録商標「貴鶏屋」の「貴」には,?@とうといこと。(ア)身分が高いこと。(イ)高価なこと。?A相手に関する事柄に冠して敬意を表す語,との意味があること(広辞苑第5版 ,原告が居酒屋を経営していることからすると, )本件登録商標からは,敢えて言えば「高価な焼き鳥屋」ほどの観念が生じ得るのに対し,被告標章からは特別な観念が生じるものとは認められない。
(2)上記事実によると,本件登録商標と被告標章とでは,その外観を全く異にする上,類似の観念が生じるものでもないから,両者は容易に区別することができ,誤認混同は生じないというべきである。
したがって,本件登録商標と被告標章とは,称呼に共通するものがあるとしても,全体として類似するものとは認められない。
2 結論以上によれば,原告の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 高松宏之
裁判官 西理香