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関連審決 不服2004-19852
関連ワード 特許を受ける権利 /  技術的思想 /  新規性 /  29条1項3号 /  引用発明の認定 /  出願公開 /  技術常識 /  分割出願 /  名義変更 /  実施 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 /  国際公開 /  国内公表 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10312号 審決取消請求事件
原告株式会社HDT
原告 X
両名訴訟代理人弁護士稲元富保
被告特許庁長官 肥塚雅博
指定代理人山村浩
同 向後晋一
同 小池正彦
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/03/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告らの請求を棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2004-19852号事件について平成19年7月24日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告X及び訴外株式会社ヒューネット(以下「訴外会社」という )が,原出願(特願平8-221827号,出願日 平成8年8月6日) 。
からの分割出願として,平成14年7月25日,名称を「ネマティック液晶の駆動方法」とする発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2004-19852号事件として審理し,その中で原告株式会社HDT(旧商号 株式会社ヒューネット・ディスプレイテクノロジー,平成19年4月9日商号変更)が訴外会社から特許を受ける権利の持分を譲り受け(会社分割 ,平成18年10月30日付けで特許庁に名義変更 )届を提出したが,特許庁は平成19年7月24日に請求不成立の審決をしたことから,原告株式会社HDTと原告Xが,その取消しを求めた事案である。
争点は,特表平8-500915号公報(発明の名称「マトリックス表示システムおよび,このようなシステムの動作方法 ,出願人 フィリップスエ 」レクトロニクスネムローゼフェンノートシャップ,国際公開日 平成7年(1995年)1月12日,国内公表日 平成8年1月30日。甲1。以下「引用例」といい,この発明を「引用発明」という)との関係における新規性の有無(特許法29条1項3号)である。
第3当事者の主張1請求の原因(1)特許庁における手続の経緯原告X及び訴外会社は,原出願(特願平8-221827号,出願日 平成8年8月6日)からの分割出願として,平成14年7月25日,新たな特許出願(特願2002-217332号。発明の名称は「ネマティック液晶の駆動方法 。以下「本願」という。公開公報は特開2003-66414 」号)をしたところ,平成16年3月17日付けで拒絶理由通知を受けたので,平成16年5月24日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする補正(以下「本件補正」という。請求項の数3。甲3)をしたが,特許庁は平成16年8月17日付けで拒絶査定をしたので,不服の審判請求をした。
特許庁は同請求を不服2004-19852号事件として審理し,その中で訴外会社は特許を受ける権利の持分を原告株式会社HDTに譲渡し(会社分割 ,その旨の名義変更届を平成18年10月30日付けで提出したが, )特許庁は,平成19年7月24日 「本件審判の請求は,成り立たない 」 , 。
との審決をし,その謄本は平成19年8月7日原告らに送達された。
(2)発明の内容本件補正後の特許請求の範囲は,前記のとおり請求項1〜3から成るが,このうち請求項1に係る発明の内容は下記のとおりである(以下「本願発明」という。甲3 。)記【請求項1】2つの電極に挟まれたネマティック液晶の駆動方法において,前記2つの電極間に画像データに応じた電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とする第1のステップと,前記2つの電極間に前記画像データに応じた電圧とは異なる一定の電圧を一定の期間印加して前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す第2のステップとを1フレーム期間中に行うことを特徴とするネマティック液晶の駆動方法。
(3)審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願発明はその出願前に頒布された特表平8-500915号公報(引用例)に記載された発明(引用発明)と同一であるから,特許法29条1項3号により特許を受けることができない,というものである。
イなお,審決が認定した引用発明の内容は,次のとおりである。
「画素を規定する透明画素電極とパネルの全ての画素に共通の電極を構成する透明導電層との2つの電極に挟まれたツイストネマチック液晶の駆動方法において,TV信号フィールド周期の半分からなる表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するビデオ信号を各画素に書き込むのに続いて,各画素を,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスして,ほぼ非透過(黒い)状態に駆動するように予め定めた基準電圧V を各画素に書き込む,2つの表示情報アドレス期間,Bすなわち,画素を液晶表示状態に駆動する第1の表示情報アドレス期間と,それに続く,画素をほぼ非透過状態に駆動する第2の表示情報アドレス期間とが存在するツイストネマチック液晶の駆動方法 」。
(4)審決の取消事由しかしながら,審決が本願発明と引用発明を同一と認定したのは誤りであるから,違法として取り消されるべきである。
ア取消事由1(引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当する旨の認定の誤り)(ア)審決は 「引用例発明の「各画素を,TV信号フィールド周期の残 ,りの半分から成る期間内に再びアドレスして,ほぼ非透過(黒い)状態に駆動するように予め定めた基準電圧V を各画素に書き込む「画B 」,素をほぼ非透過状態に駆動する第2の表示情報アドレス期間」が,上記ビデオ信号とは異なる基準電圧V を,上記第2の表示情報アドレスB期間内に各画素に書き込むことにより,画素の2つの電極の間にほぼ非透過(黒い)状態に見合った電圧を印加して,上記第2の表示情報アドレス期間にわたり液晶の光透過率をほぼ黒状態に保つように駆動する期間であることは明らかである(6頁下7行〜7頁1行)とす 。」るが,以下に照らし,誤りである。
?@すなわち,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」は 「ほぼ,非透過(黒い)状態に駆動するように予め定めた基準電圧V を各画B素に書き込む」期間,あるいは 「画素をほぼ非透過状態に駆動す ,る」期間であるにすぎず,基準電圧V を各画素に書き込むと同時にBほぼ非透過状態になるものではないし,引用例(甲1)にはそのような記載もない。
?A引用例(甲1)には 「典型的な表示パネルにおいて,パネルが供 ,給されたビデオ(PAL)信号のフィールド速度に等しい50Hzのフィールド速度において駆動され,駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている 」。
(7頁9行〜13行)と記載されており,上記記載における「画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占める」とは,画素がその時の透過率に安定するために短くても40ms,長くて120msの時間を要することを意味する。そうすると,引用発明においても,液晶を透過状態から非透過状態(暗い状態)にするまでには数フィールドの時間を要することが前提になっているのであるから,基準電圧V を印加すると同時(瞬時)に,ほぼ非透過状態(ほぼ黒状B態)になり,以後第2の表示情報アドレス期間中,ほぼ黒状態に保たれることはあり得ない。
?Bまた引用例(甲1)には 「表示パネルを,動作中に絶えず照明し ,てもよい。しかしながら好適には,照明手段を前記時間間隔の間,オフにするか,少なくとも比較的低い光出力レベルに切り換える。すると前記暗い期間の暗さは強調され,コントラストが改善される 」。
(11頁8行〜11行)と記載されているが,これは,非透過状態に駆動するだけでは液晶が非透過状態になっていないこと,すなわち単に「暗い」状態となるにすぎないことを前提とするものであるし,上記記載が,液晶が非透過状態になるまでに時間を有することを示唆しているのであれば,審決の「第2の表示情報アドレス期間にわたり…ほぼ黒状態に保つ」という認定が誤っていることになる。
?C被告は,引用発明における「ほぼ非透過(黒い)状態」は,液晶の配向状態として一意に定まると主張する。しかし,引用発明の「ほぼ非透過」における「ほぼ」という用語は不明確な概念であって,どの程度であれば「ほぼ非透過状態」になるのか何ら特定されていないのであるから,この不明確な「ほぼ非透過(黒い)状態」の光透過率ないし液晶の配向状態が「中間調状態」の光透過率ないし液晶の配向状態とどのようにして区別されるのかも不明確である。
?D被告は,引用発明は,第2の表示情報アドレス期間において,即時に到達するものではないとしても,黒いレベルの光透過率とされているはずのものであると主張する。
しかし,原告らは,審決が「第2の表示情報アドレス期間にわたり…ほぼ黒状態に保つ」という認定をしているところ 「わたり…保 ,つ」という以上は当該期間の開始から終了まで同じ状態で維持されるということであるので,審決の認定は誤っていると主張するものである。つまり,審決は,被告が主張するように「第2の表示情報アドレス期間において,即時に到達するものではないとしても,黒いレベルの光透過率とされている」という認定は行っていないのであるから,審決が行っていない認定を前提として審決の認定の正当性を主張することは,被告の主張自体が失当である。
(イ)審決は 「上記第2の表示情報アドレス期間は1TV信号フィール ,ド周期の丁度半分にあたる一定の期間であり,また,上記非透過(黒い)状態は,中間調状態とは異なり明確に一つの状態として特定可能な黒表示状態であるから,本願発明にいう(光透過率の 「元の値」がい )かなる値であるか明確ではないにしても,特定可能な一つの状態である点で両者は一致するということができる(7頁2行〜7行)とする 。」が,誤りである。
?@本願発明における「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す」という要件における「元の値」とは,特許請求の範囲の記載上,前記画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値であることは一義的に明白であるにもかかわらず,審決は 「元の値」がいかなる値であるかは明確で ,ないとしており,誤っている。
?A審決は 「上記非透過(黒い)状態は,中間調状態とは異なり明確 ,に一つの状態として特定可能な黒表示状態であるから,…特定可能な一つの状態である点で両者は一致するということができる 」とする 。
が,引用発明は「ほぼ非透過(黒い)状態」であって「黒表示状態」ではない。また本願発明は,画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値(元の値)に戻すことを要件とするものであって,審決が認定するように「特定の状態」に戻すことを要件とするものではない。
?Ba前記のように,引用例(甲1)には「典型的な表示パネルにおいて,…駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている(7頁9行〜13行) 。」と記載され 「数フィールド」は短くても40msを意味すること ,になる。
一方,引用例(甲1)の図2のシステムの実施例の説明として,「表示パネルの動作は,各々がTV信号フィールド周期のほぼ半分,例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし,……これを図4に図式的に示し,ここでTは時間を表し,F(A)からF(D)は供給されたTV信号VSの4つの連続するフィールド期間を示す。表示パネルの動作期間の相対的なタイミングDPは,f(A)からf(C)が第1の表示パネルフィールド(表示情報アドレス)期間を示し,期間f'がそれらの間の第2の表示パネルアドレス期間を示す 」と記載されている(19頁4行〜13行 。 。 )そうすると,TV信号フィールド周期の残りの半分(上記10ms)である第2の表示情報アドレス期間の開始時点において 「ビ,デオ信号とは異なる基準電圧V 」を印加したとしても,第2の表B示情報アドレス期間の終了時点までに液晶の光透過率はビデオ信号の印加によって変化する前の光透過率(元の値)に戻ることはないから 「黒表示状態に戻す」ということは,本願発明の「光透過率 ,を元の値に戻す」ことにはならない。
b被告は,引用例(甲1)の「典型的な表示パネルにおいて,…駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている(7頁9行〜13行)との記載 。」について,これは引用発明に関する記載ではないと主張する。
しかし,引用例(甲1)には,引用発明が対象とする表示パネルが,上記「典型的な表示パネル」ではない別の表示パネルであることについては何ら記載されていない。そして,上記典型的な表示パネルに関する記載に続いて,引用例(7頁14行以下)には欧州特許出願公開明細書第0487140号が持ち出され,同明細書記載の方法の課題,引用発明がその課題を解決する目的のものであることが記載されていることからして,引用発明は,当然に,上記典型的な表示パネルを対象として,欧州特許出願公開明細書第0487140号記載の方法では解決できていない課題を解決することを明確に説明しているのである。
つまり,被告が主張するように「典型的な表示パネル」に関する記載を含む段落の構造及び前後の文脈に徴すれば,被告の主張とは異なり,引用発明は「典型的な表示パネル」における課題を解決することを目的するものであることが明確である。
?C被告は,本願発明における「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す」という要件における「元の値」の「元」とは「以前」の意味であるから 「元の値」とは ,過去の時点での光透過率の値を意味すると主張する。
しかし,本願発明における「元の値」とは,特許請求の範囲の記載上 「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透 ,過率を元の値に戻す」と記載されていることから 「電圧の印加によ ,って変化する前の光透過率」であることは一義的に明確であり,被告が主張するように 「過去の時点」というような不特定の不明確な時 ,点における光透過率ではない。
?D被告は,液晶の光透過率は液晶の配向状態により定まるから,本願発明の一意に定まる「元の値」に該当する光透過率となる特定の液晶の配向状態を想定することが可能であり,本願発明の「元の値」と引用発明の「ほぼ非透過(黒い)状態」とは,特定可能な1つの液晶配向状態である点で一致すると主張する。
しかし,本願発明の「元の値」は「画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率」を意味するのであり,一方,引用発明の「ほぼ非透過状態」とは不明確,不明瞭な状態であって特定できず,さらに,光透過率が液晶の配向状態のみによって定まるものではなく印加電圧の大きさや偏光板の配置等複数の条件によって定まるものであることに照らせば,これらが,特定可能な1つの液晶配向状態である点で一致するとは認められない。
?E被告は,引用発明は第2の表示情報アドレス期間のある期間において,液晶を「ほぼ非透過(黒い)状態」にするものであって,その状態に対応する光透過率は一意に定まる,当該時間を過去の時点とする現在から見れば,当該時間における光透過率を,本願発明の「元の値」に相当させることができるから,引用発明は,前記過去の時点以後の各第2の表示情報アドレス期間において,光透過率が「元の値」に戻されていることになると主張する。
しかし,本願発明の「元の値」は「画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率」を意味する。引用例(甲1)では不明確,不明瞭で特定できない「ほぼ非透過状態の光透過率」については何ら言及されておらず,また,電圧の印加によって変化する前の光透過率の値に戻すことは記載も示唆もされていないから,引用発明が,前記過去の時点以後の各第2の表示情報アドレス期間において,光透過率が「元の値」に戻されているとは到底認められない。
?F被告は,本願発明の「元の値」が「電圧の印加によって変化する前の光透過率」を意味するとしても,審決は,引用発明の「上記非透過(黒い)状態」に対応する光透過率が本願発明の「元の値」に相当するとしているのであるから瑕疵はないと主張する。
しかし,審決は,そもそも引用発明の認定において 「ほぼ非透過 ,(黒い)状態に対応する光透過率」という認定を行っていない。しかも,引用発明の「ほぼ非透過(黒い)状態」というのは不明確,不明瞭,不特定な概念であって 「ほぼ非透過(黒い)状態」に対応する ,光透過率が定まるとしても,それが,電圧を印加する前の光透過率になるものではなく,まさに「ほぼ非透過(黒い)状態」に戻すだけのことである。
(ウ)?@引用発明の「非透過状態に駆動する第2の表示情報アドレス期間」と本願発明の「光透過率を元の値に戻す第2のステップ」とが異なっていることは,引用発明の目的,作用,効果と本願発明のそれとが異なり,両者の技術的思想が異なることからも明らかである。
すなわち引用発明は,人の知覚を利用して「暗い期間」を挿入することによって動いている像の知覚される解像度を改善し,動いている像を表示している場合に知覚されるボケまたは細部の欠落の量を軽減するものである。そして,引用例(甲1)の第1の実施例では,照明手段の光出力を制御することにより「暗い期間」を挿入し,引用例(甲1)の第2の実施例では,画素の配列をほぼ非透過表示状態に駆動することにより「暗い期間」を挿入することが示され,第1の実施例と第2の実施例で同様の作用効果を得ている。このように,引用発明の目的を達成し作用効果を得るためには「暗い期間」を挿入すれば足り,ビデオ信号によって変化する前の光透過率(元の値)まで戻すことは必要でないから,引用発明には「液晶の光透過率を元の値に戻す」というような技術的思想は存しない。
これに対し本願発明は,ネマティック液晶を駆動するときの応答性を向上させるため,画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を元の値に戻す,言い換えれば,液晶の画像データに応じた電圧の印加によって変化した液晶の光透過率を一旦初期化する(前の画像データに応じた電圧の印加による光透過率の変化の残存を消去する)ことで,次の画像データに応じた電圧の印加によって変化する光透過率が変動することを防止するものであるから,引用発明の技術思想とは異なったものである。
?A被告は,引用発明においても,第2の表示情報アドレス期間において即時に到達するものではないとしても,黒いレベルの光透過率とされているのであるから,引用発明の目的,作用効果と本願発明の目的,作用効果とは相違点といえるものではないと主張する。
しかし,引用例(甲1)には被告が主張するような「黒いレベルの光透過率」は何ら記載も示唆もされていない。しかも,引用発明では 「ほぼ非透過(黒い)状態」を作出することで,人の知覚を利 ,用して 「暗い期間」を挿入することによって動いている像の知覚さ ,れる解像度を改善し,動いている像を表示している場合に知覚されるボケ又は細部の欠落の量を軽減するものであり 「ほぼ非透過(黒 ,い)状態」であれば足り,光透過率として何らかの値が要求されているものではない。
これに対して,本願発明は 「ネマティック液晶を駆動するときの ,応答性を向上する」ことを目的とし,そのため,画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を元の値(変化する前の値)に戻すことによって,前フレームの画像データにかかわらず,当該フレームの画像データに応じた電圧によって光透過率が定まるようにして,上記目的を達成するものであって,引用発明のように暗ければよいというものではない。
イ取消事由2(引用発明の「第1の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第1のステップ」に相当する旨の認定の誤り)(ア)審決は 「引用例発明の「TV信号フィールド周期の半分からなる ,表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するビデオ信号を各画素に書き込む「画素を液晶表示状態に駆動する第1の表示情報アド 」,レス期間」が,画素の2つの電極の間にビデオ信号に応じた電圧を印加して同ビデオ信号に見合った光透過率状態に液晶を駆動する期間であることは明らかである。したがって,引用例発明は,本願発明の「前記2つの電極間に画像データに応じた電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とする第1のステップ」を有する(6頁下15行〜下8行)とするが,誤りである。 。」すなわち,液晶を透過状態から非透過状態(暗い状態)にするまでには数フィールドの時間を要するということからすれば,液晶を非透過状態から透過状態にするまでにも数フィールドの時間を要するということであり,引用発明においては,画素の2つの電極の間にビデオ信号に応じた電圧を印加しても第1の表示情報アドレス期間中に「同ビデオ信号に見合った光透過率状態」にならないことは明らかである。
(イ)被告は,第1の表示情報アドレス期間の終了時における「何らかの値」の光透過率は変動せず,上記光透過率はビデオ信号の関数であるから,引用発明が本願発明の第1のステップを有すると認定したことに誤りはない,と主張する。
しかし,引用発明においては,第2の表示情報アドレス期間の終了時(第1の表示情報アドレス期間開始時)の光透過率と,ビデオ信号(印加電圧)と,第2の表示情報アドレス期間終了時からの経過時間によって,第1の表示情報アドレス期間終了時の光透過率が決まることになる。
そして,引用発明においては,第2の表示情報アドレス期間終了時における光透過率が元の値(第1の表示情報アドレス期間開始時の光透過率)に戻っていないのであるから,これに続く第1の表示情報アドレス期間でビデオ信号を印加した場合,ビデオ信号に見合った光透過率になるのではない。したがって,第1の表示情報アドレス期間終了時の光透過率はビデオ信号に対して変動し,被告が主張するようにビデオ信号のみの関数とはならないから,審決が,引用発明が本願発明の第1のステップを有すると認定したことは誤っている。
ウ取消事由3(引用発明の「TV信号フィールド周期」が本願発明の「1フレーム期間」に相当する旨の認定の誤り)(ア)審決は,引用発明における「TV信号フィールド周期」が本願発明の「1フレーム期間」に相当すると判断するが,誤りである。すなわち,TV信号において,1フレーム期間は奇数フィールド期間と偶数フィールド期間の2つのフィールド期間によって構成されるのであるから,1TV信号フィールド周期は1フレーム期間ではない。
(イ)被告は,本願明細書(甲2,3)には「1フレーム期間」について定義されていないところ,ノンインターレース走査であれば,1フレーム期間は1フィールド期間に一致するし,1フレーム期間は奇数フィールド期間と偶数フィールド期間の2つのフィールド期間によって構成されるものではなく,引用発明の「TV信号フィールド周期」と本願発明の「1フレーム期間」はディメンジョンがともに時間に関するものであり,本願明細書(甲2,3)と引用例(甲1)に記載の具体的数値に差異がないことから,両者を相当と認定判断したことに誤りはないと主張する。
しかし,引用発明における「TV信号」において,1フレーム期間は奇数フィールド期間と偶数フィールド期間によって構成されるところ,引用発明における「TV信号フィールド周期」というのは2つの「TV信号フィールド周期」で1画面を構成するものであり,引用発明における「TV信号フィールド周期」が本願発明の「1フレーム期間」には相当しないことになる。したがって,引用発明の「TV信号フィールド周期」と本願発明の「1フレーム期間」はディメンジョンがともに時間に関することであるとしても,TV信号における「フレーム期間」と「フィールド期間」が異なる以上 「TV信号フィールド周期」が「1フレ ,ーム期間」になるものではない。
また,本願明細書(甲2,3)と引用例(甲1)の具体的な数値として同じ値があるとしても,TV信号における「フレーム期間」と「フィールド期間」が異なる以上 「TV信号フィールド周期」が「1 ,フレーム期間」になるものではない。
なお,被告は,上記のとおり,本願発明ではTV信号に特定されていないことやコンピュータディスプレイのノンインターレース方式を挙げて,本願発明の「1フレーム期間」が奇数フィールド期間と偶数フィールド期間で構成されるものではないと主張するが,そもそも原告らも,本願発明の「1フレーム期間」が奇数フィールド期間と偶数フィールド期間で構成されるという主張は行っていないのであって,被告の上記主張部分は,反論になっていない。
2請求原因に対する認否請求原因(1)〜(3)の各事実は認めるが,同(4)は争う。
3被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告ら主張の取消事由は理由がない。
(1)取消事由1に対しア原告らは,引用発明の液晶が透過状態から非透過状態又は非透過状態から透過状態になるまでに数フィールドの時間を要するとし,それを前提に審決が,引用例発明の「第2の表示情報アドレス期間」が「第2の表示情報アドレス期間にわたり液晶の光透過率をほぼ黒状態に保つように駆動する期間であることは明らかである(6頁下1行〜7頁1行)としたこ 。」とは,基準電圧V を印加すると同時に(瞬時に)黒状態になることがあBり得ないから引用例(甲1)の記載に反し,また引用発明は,第2の表示情報アドレス期間の開始時点において基準電圧V を印加しても液晶の光B透過率が当該期間の終了時点までにビデオ信号の印加によって変化する前の光透過率(元の値)に戻ることはない,と主張する。
(ア)しかし,原告らが指摘する,引用例(甲1)の「典型的な表示パネルにおいて,パネルが供給されたビデオ(PAL)信号のフィールド速度に等しい50Hzのフィールド速度において駆動され,駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている(7頁9行〜13行)との記載は,引用例(甲1)の同 。」記載を含む段落の構造及び前後の文脈に照らせば,スミアリング減少の改善に関する方法を説明するためだけに持ち出されているものであることが明らかであり,スミアリング減少が改善したとしても依然として生じる恐れがあるシャープネスの不足またはボケを軽減させるための引用発明に関する記載ではない。
(イ)そして引用発明は,第2の表示情報アドレス期間において,即時に到達するものではないとしても,黒いレベルの光透過率とされているものであり,また,第1の表示情報アドレス期間において,1TVフィールドに関するビデオ信号が各画素に書き込まれることによって得られる光透過率が,ビデオ信号に見合ったものとされているものである。そうすると,引用発明の液晶が,透過状態から非透過状態に,又は,非透過状態から透過状態になるまでに数フィールドの時間を要するということはないというべきである。
(ウ)また,原告らが指摘する,引用例(甲1)の「しかしながら好適には,照明手段を前記時間間隔の間,オフにするか,少なくとも比較的低い光出力レベルに切り換える。すると前記暗い期間の暗さは強調され,コントラストが改善される(11頁8行〜10行)との記載は,せ 。」いぜい,液晶が非透過状態になるまでに時間を要することを示唆しているだけであって,液晶が第2の表示情報アドレス期間において非透過状態になっていないことを示唆するものではない。
イ原告らは,審決が「上記第2の表示情報アドレス期間は1TV信号フィールド周期の丁度半分にあたる一定の期間であり,また,上記非透過(黒い)状態は,中間調状態とは異なり明確に一つの状態として特定可能な黒表示状態であるから,本願発明にいう(光透過率の 「元の値」がいかな )る値であるか明確ではないにしても,特定可能な一つの状態である点で両者は一致するということができる(7頁2行〜7行)としたのは誤り 。」であると主張する。
(ア)しかし,本願発明の「前記2つの電極間に前記画像データに応じた電圧とは異なる一定の電圧を一定の期間印加して前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す第2のステップ」の「元の値」について 「元」とは日本語では通常 「以前」を , ,意味するから 「元の値」は,過去の時点での光透過率の値を意味し, ,かかる「元の値」は一意に定まるものと理解できる。なお,本願の請求項2(甲3参照)に「前記一定の電圧の印加は,前記ネマティック液晶の光透過率を黒レベルにすること」とあるのは 「元の値」が一意に定 ,まることを前提としているから,この理解と整合的である。
(イ)他方,引用発明では 「各画素を,TV信号フィールド周期の残り ,の半分から成る期間内に再びアドレスして,ほぼ非透過(黒い)状態に駆動するように予め定めた基準電圧V を各画素に書き込む「画素をB 」,ほぼ非透過状態に駆動する第2の表示情報アドレス期間」中のある時間において,液晶は,その光透過率がほぼ非透過(黒い)状態となっていることになる。そして 「ほぼ非透過(黒い)状態」は 「中間調状 , ,態」のように(白に該当する透過率及び黒に該当する透過率以外の)中間的な光透過率となる液晶の複数の配向状態を総称した状態とは異なり,液晶の配向状態として一意に定まる。
(ウ)そうすると,一般に液晶表示においては,光透過率は,液晶の配向状態により定まるから,本願発明において,上記のとおり一意に定まるところの「元の値」に該当する光透過率となる特定の液晶の配向状態を想定することが可能である。したがって,本願発明の「元の値」と,引用発明の「上記非透過(黒い)状態」とを,液晶の配向状態という観点から共通的に理解することができ,具体的には,特定可能な一つの液晶配向状態である点で一致するということができる。
(エ)すなわち,引用発明の「上記非透過(黒い)状態」は特定可能な一つの液晶配向状態である以上,それに対応する光透過率が一意に定まる。
そうすると,引用発明は 「第2の表示情報アドレス期間」のある時間 ,において,液晶を「上記非透過(黒い)状態」とするものであって,その状態に対応する光透過率は一意に定まるところ,当該時間を過去の時点とする現在からみれば,当該時間における光透過率を,本願発明の「元の値」に相当させることができるから,引用発明は,前記過去の時点以後の各「第2の表示情報アドレス期間」において,光透過率が「元の値」に戻されていることになる。したがって,引用発明は,本願発明の「第2のステップ」を有することになる。
(オ)仮に,原告ら主張のとおり,本願発明の「元の値」の意味が「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値」であるとしても,以下のとおり,審決に誤りはない。
まず,引用発明においては,遅くとも「第2の表示情報アドレス期間」の終了時には 「上記非透過(黒い)状態」に対応する光透過率に ,なっているのであるから,引き続きの「第1の表示情報アドレス期間」において画素を液晶表示状態に駆動する前の光透過率の値は 「上記非 ,透過(黒い)状態」に対応する光透過率の値である。そして,審決は,引用発明の「上記非透過(黒い)状態」に対応する光透過率を本願発明の「元の値」に相当させているものである。そうすると,審決は,結果として,本願発明の「元の値」を 「前記画像データに応じた電圧の印 ,加によって変化する前の光透過率の値」であるとして引用発明との対比判断を行っていることになるものである。
ウ原告らは,引用発明の目的・作用効果と本願発明の目的・作用効果からも,引用発明の「非透過状態に駆動する第2の表示アドレス期間」と本願発明の「光透過率を元の値に戻す第2のステップ」とは実質的にも異なっていると主張し,引用発明の目的を達成し,作用効果を得るためには,「暗い期間」を挿入すれば足り,ビデオ信号によって変化する前の光透過率(元の値)まで戻すことは必要でなく,引用発明には「液晶の光透過率を元の値に戻す」というような技術的思想は存しないとも主張する。
しかし,引用発明においては,第2の表示情報アドレス期間において,即時に到達するものではないとしても,黒いレベルの光透過率とされているものであるから,引用発明の「暗い状態」に対応する光透過率は,黒レベルの光透過率までに至っているものである。
エそして原告らの主張は,本願発明と引用発明との対比の観点においても,以下の(ア)〜(ウ)に照らし失当である。
(ア)本願発明において 「前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像 ,データに応じた値とする」ために採用されている具体的手段は 「前記,2つの電極間に画像データに応じた電圧を印加」することであり,また,「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す」ために採用されている具体的手段は 「前記2つの電極 ,間に前記画像データに応じた電圧とは異なる一定の電圧を一定の期間印加」することであることが,特許請求の範囲の記載上明らかである。
(イ)他方,引用発明においては 「TV信号フィールド周期の半分から ,なる表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するビデオ信号を各画素に書き込む」点,及び 「各画素を,TV信号フィールド周期の ,残りの半分から成る期間内に再びアドレスして,ほぼ非透過(黒い)状, 態に駆動するように予め定めた基準電圧V を各画素に書き込む」点がBそれぞれ上記各具体的手段に対応するものである。
(ウ)そうすると,具体的手段の観点からみれば,本願発明と引用発明との間に差異はなく,そうである以上,引用発明においても,本願発明において実現されている「前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とする」こと,及び 「前記画像データに応じた電圧 ,の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す」ことが,当然実現されていることになる。
(2)取消事由2に対し引用発明においては 「第1の表示情報アドレス期間」内でビデオ信号が ,書き込まれることによって,同期間の終了時に,何らかの値の光透過率になることが明らかであるところ,引き続きの「第2の表示情報アドレス期間」において,光透過率を黒いレベルにするのであるから,仮にその後,複数のTV信号フィールド周期をかけて,対応する各々の第1の表示情報アドレス期間内で同一のビデオ信号が書き込まれたとしても,上記各々の第1の表示情報アドレス期間の終了時における「何らかの値」の光透過率は変動しない。
そうすると,上記光透過率は,ビデオ信号(本願発明の「画像データ」に相当する )の関数であるということができる。 。
そして,本願発明の「前記2つの電極間に画像データに応じた電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とする第1のステップ」における光透過率は,その記載上,画像データの関数になっていることを意味している。
したがって,引用発明が,本願発明の「前記2つの電極間に画像データに応じた電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とする第1のステップ」を有するとした審決の判断に誤りはない。
(3)取消事由3に対し原告らは,1フレーム期間は奇数フィールド期間と偶数フィールド期間の2つのフィールド期間によって構成されると主張するが,以下のア〜エに照らし,失当である。
アアナログテレビジョン方式であるNTSC及びPALについてそのようになることはあるが,本願明細書(甲2,3)においては,1フレーム期間の定義は何らなされていないのであるから,本願発明の「1フレーム期間」が,奇数フィールド期間と偶数フィールド期間の2つのフィールド期間によって構成されるとは限らない。
すなわち,インターレース走査においては,奇数フィールド及び偶数フィールドという概念がある(乙3〔特開平4-44478号公報〕の2頁左上欄9行〜14行)が,ノンインターレース走査であれば,1フレーム期間は1フィールド期間に一致する(乙4〔特開平7-92935号公報〕の段落【0005 )ので,奇数フィールド期間と偶数フィールド期 】間の2つのフィールド期間によって構成されるものではない。
イまた,そもそも本願発明には,TV信号を受けているものであるとの特定すらないため,コンピュータディスプレイに関する態様も含まれるところ,コンピュータディスプレイの走査方式にはノンインターレース走査があるから(乙5〔特開平7-274086号公報〕の段落【0002】〜【0003,同様に,1フレーム期間は,奇数フィールド期間と偶数 】)フィールド期間の2つのフィールド期間によって構成されるものではない。
ウ本願明細書(甲2,3)においては,1フレーム期間の定義は何らなされていないため,その具体的な値の大きさは特定されていないことになる。
そうすると,引用例発明の「TV信号フィールド周期」と本願発明の「1フレーム期間」のディメンションがともに時間に関するものである以上,審決が,両者を相当するものと認定したことに誤りはない。
エまた,本願明細書(甲2,3)の段落【0025】に 「…図2の様に ,光透過率が変化しており,光透過率がコモン電圧の変化に応じて変化を開始し元の光透過率に戻るまでに要する時間は,15〜20mSと非常に高速に動作している 」との記載があるところ,図2とあわせてみれば,本 。
願発明の「1フレーム期間」の例としては,15〜20msを想定することができる。他方,引用発明の「TV信号フィールド周期」の例としては20msがあるから(引用例〔甲1〕19頁4行〜5行など参照 ,本願)発明の「1フレーム期間」と引用例発明の「TV信号フィールド周期」とは具体的な値の観点からみると差異がないから,審決が,両者を相当するものと認定したことに誤りはない。
第4当裁判所の判断1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2引用発明の意義(1)引用例(甲1)には,以下の記載がある。
ア「本発明は,マトリックス表示システム,特に,例えばTV画像を表示するビデオ表示システムと,このようなシステムの動作方法に関するものである。本発明は,光変調用画素の行および列アレイを有する表示パネルと,前記表示パネルを照明する手段と,供給されたビデオ信号に従って前記画素を駆動する駆動手段とを具え,行を個々のフィールド期間内に順次に繰り返して走査することによって,前記画素が一行を一度に駆動される,例えば液晶表示システムであるマトリックス表示システムに関係する。…動作時に,表示パネルを光源によって絶えず照明し,画素が供給されたビデオ情報に従って光を変調させ,表示出力を形成する。画素は,行および列アドレス導線に接続され,入力ビデオ信号を標本化して得たビデオ情報データ信号が列導線上の各画素に伝送されるように,選択信号により列導線を走査することによって,一行を一度に順次駆動される。あるフィールド周期内にすべての行をアドレスした後,この動作を,順次のフィールド周期内で各行をアドレスして繰り返す。これらの既知のシステムにおいて,走査の,従ってフィールドの周期は,入力ビデオ信号と,供給されたビデオ信号の速度に相当する表示パネルのフィールド速度との信号のタイミングによって決定される。例えば,PALTVの場合,各々の画素の行は,64マイクロ秒のライン期間内か,20ミリ秒毎に1回生じフィールド期間に等しい順次のライン期間の時間間隔内にアドレスされる。特にアクティブマトリックス表示装置の場合,画素は,電荷が画素上に格納されるように効果的に分離されているので,画素によって形成された表示効果は,画素がその後のフィールド周期内で次にアドレスされるまで十分に維持される(6頁3行〜27行) 。」イ「駆動レベルの変化後に画素の透過率が安定するまでに要する時間は,重要であるはずであり,典型的な表示パネルにおいて,パネルが供給されたビデオ(PAL)信号のフィールド速度に等しい50Hzのフィールド速度において駆動され,駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている。この点において改善したアクティブマトリックス液晶ビデオ表示装置の駆動方法が,欧州特許出願公開明細書第0487140号に記述されている。この方法において,画素は,供給されたビデオ信号のフィールド速度より速いフィールド速度において駆動される。例えば,供給されたビデオ信号が,フィールド速度が各々50Hzおよび60HzのPALまたはNTSCTV放送信号からなる場合,表示パネルのフィールド速度を100Hzおよび120Hzに各々増すことができる。これは,駆動(ビデオ)レベルの変化後に画素の透過率が安定するまでに要する時間を明らかに短縮させることが分かっている。この方法は,スミアリング現象に関しては明らかな改善をもたらすが,シャープネスの不足またはボケの形をとるある程度の好ましくない視覚現象が,特に動いている物のエッジにおいて依然として生じる恐れがあることが分かっている(7頁8行〜23行) 。」ウ「本発明の目的は,動いている像を表示している場合の表示品質を改善したマトリックス表示システムと,動いている像を表示している場合の好ましくない視覚現象の問題を軽減するのに役に立つマトリックス表示システムの動作方法とを提供することである(7頁24行〜27行) 。」エ「本発明の一実施例によれば,少なくとも実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに駆動可能な光変調用画素の行および列のアレイと,前記表示パネルを照明して表示出力を生じる手段と,駆動手段であってこれに供給される所定のフィールドおよびライン速度を有するビデオ信号に従って前記画素を駆動することができる当該駆動手段とを具えるマトリックス表示システムであって,前記駆動手段が前記画素の行を順次駆動でき,前記供給されたビデオ信号の表示フィールドの表示情報が,ビデオ信号のフィールド周期よりかなり短い表示情報アドレス期間中に前記表示パネル内に書き込まれ,順次の表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されているマトリックス表示システムにおいて,前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されるようにマトリックスシステムを動作できるようにしたことを特徴とするマトリックス表示システムが与えられる(7頁28行〜。」8頁11行)オ「本発明によって,動いている像を表示している場合に知覚されるボケまたは細部の欠落の量は,大幅に減少する。ボケ現象は,画素の物理的な応答特性に加えて,ある程度,精神的な視覚の規準のせいであることが分かっている。本発明に従って動作される表示システムによって,動いている像の知覚される解像度を改善する「暗い」期間が,パネルの順次の表示フィールドの見る人への表示の間に挿入される(8頁下6行〜下1 。」行)カ「特に,動いている像の順次の表示間の暗い期間によって生じる中断は,大変重要である。表示フィールドが供給されたビデオ信号のフィールド周期に等しい持続時間であるような従来の駆動設計において中断期間は存,在しなかった。実際には表示画像は,フィールド周期の間保持されており,これは,動いている像が含まれる場合,人間の視覚システムによってボケとして解釈される(9頁2行〜7行) 。」キ「好適には,表示情報アドレス期間および時間間隔を合わせた持続時間を,供給されたビデオ信号のフィールド周期に相当させる。簡単にそして便利にするために,アドレス期間および時間間隔を,ビデオ信号のフィールド周期の半分にほぼ相当する持続時間に各々してもよい。あるいは,実際には,ビデオ信号フィールド期間内に表示パネルによって連続して2回同じ表示フィールドが与えられるため,2つの順次のフィールド情報アドレス期間および2つの間隔を,ビデオ信号の1フィールド期間の持続時間に相当させることもできる(9頁18行〜25行) 。」ク「本発明によるマトリックス表示システムの第1の好適な実施例において,駆動回路は,照明手段に接続され,前記時間間隔の少なくとも一部の間表示出力を形成し,前記アドレス期間の少なくとも一部の間,ほぼ表示出力を形成しないように照明手段の光出力を制御する制御手段を含む 」。
(10頁1行〜4行)ケ「本発明によるマトリックス表示システムを動作する方法の第1の好適な実施例において,表示パネルを照明する照明手段の動作を,前記時間間隔の少なくとも一部の間,表示出力を形成し,前記アドレス期間の少なくとも一部の間,ほぼ表示出力を形成しないように制御する。これらの第1の実施例において,パネルの照明を周期的に,例えば光源をオンとオフとで点滅させることによって,前記「暗い」期間を,パネルの連続する表示フィールドの見る人への表示間に挿入して,知覚される動いている像の解像度を向上させる。表示パネルを,画素がアドレスされない間隔の間,活動させないでおくことができる。一方,しかしながら,表示パネルを,欧州特許出願公開明細書第0487140号に記述されているのと同様の方法で,同様の有利な効果をもって,前のアドレス期間内で使用したのと同じ表示情報をこの間隔内で再び供給することによって再アドレスしてもよい(10頁5〜17行) 。」コ「本発明によるマトリックス表示システムの第2の好適な実施例において,駆動回路は,順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において,画素の配列を,ほぼ非透過表示状態に駆動することができる。…この第2の実施例において,順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において画素をほぼ非透過,すなわち黒に駆動することによって,順次の表示フィールドの見る人への表示の間に上述した「暗い」期間が挿入され,知覚される動いている物の解像度が改善される。表示パネルを,動作中に絶えず照明してもよい。しかしながら好適には,照明手段を前記時間間隔の間,オフにするか,少なくとも比較的低い光出力レベルに切り換える。すると前記暗い期間の暗さは強調され,コントラストが改善される。表示パネルを,例え,照明手段を,前記時間間隔の後の方の一部と次のアドレス期間の最初の部分とを具える期間に対して照明手段をオフまたは少なくとも比較的低いレベルに切り換え,従ってパネルの照明をアドレス期間の後の方の一部と前記時間間隔の最初の部分とに限定し,パネルからの順次の表示間の有効な休止期間をさらに増加させるのが好適であるとしても,アドレス期間の持続時間の間照明してもよい。パネルの断続的な照明は,パネルの駆動に同期して照明に供給される光源をオンおよびオフに点滅させることによって行うことができる。…前記時間間隔の間,好適には画素の配列の行を,画素を表示情報によってアドレスしたのと同様な方法で行毎に,または行の組毎に,ほぼ非透過状態に個々に順次駆動する。…画素を非透過状態に駆動する時間間隔内に,代わりの方法,例えば,配列中の画素をほぼ同時にこの状態に設定する方法を使用することも考えられる。しかしながらこのような方法は,駆動回路を大幅に変更する必要がある。これらの好適な実施例の双方において,好適にはアドレス期間とそれに続く時間間隔とを合わせた期間を,供給されたビデオ信号のフィールド周期にほぼ相当させる。アドレス期間および時間間隔を,便利で簡単にするために,各々ビデオ信号のフィールド周期のほぼ半分に相当する持続時間にしてもよい。しかしながら好適には,2つの連続するアドレス期間およびその2つの時間間隔を,ビデオ信号のフィールド周期の持続時間に一致させれば,実際には同じ表示フィールドが1ビデオ信号フィールド周期内で表示パネルによって連続して2回表示される(10頁下2行〜12頁14行) 。」サ「表示パネル10を,一方の側に配置した小型低圧蛍光灯を具える光源19によって照明し,光源からパネルに入射する光を,画素12の透過特性によって適切に変化させ,パネルの他方の側に可視表示出力を生成する。
液晶材料が,画素を通過した光を,その両端間に印加された電圧に従って変調させると共に,各画素は,パネルを通過した光を,その各々の画素の両端間に印加された電圧に従って変化させることができる。画素は,印加された電圧のレベルに従って動作し,ほとんど透過しない,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,すなわち白のレベルまで変動する,複数の透過レベルを形成する。標準的なやり方に従って,行導線14を選択信号によって順次に走査してTFTの各行を順次にターンオンさせ,ゲート信号と同期して画素の各行に対する列導線にデータ信号を適切に供給することにより,パネルを時間軸で行毎に駆動し,完全な表示画像を構成する。TVディスプレイの場合,画素の各行にTVラインの画像情報信号を供給する。
1行を一度にアドレスすると,アドレスされた行の全てのTFT11は,選択信号の持続時間によって決定される行アドレス期間に対してスイッチオンされ,その間,キャパシタが列導線16上のビデオ情報信号の電圧レベルに従って充電される。その後,選択信号の終了によって,この行のTFTはターンオフし,それによって画素は導線16から絶縁され,画素に供給された電荷は,画素が次のフィールド期間において再びアドレスされるまで蓄積されるようにする(14頁3行〜20行) 。」シ「選択信号を行導線にTVラインと同期して順次供給し,各選択信号がTVライン周期T1と等しい,またはそれより短い周期を有する,例えば64マイクロ秒のTVライン周期を有する半解像度PAL標準TV表示の場合,各行導線が20ミリ秒の間隔で選択信号を供給されるようにする従来の駆動方法とは異なり,表示パネル10を,入力ビデオ,TV信号のライン速度より速いライン速度で駆動する。欧州特許出願公開明細書第0487140号において,例えば供給されたTV信号の2倍速いフィールド速度で表示パネルを駆動する,アクティブマトリックスLCディスプレイ装置の駆動方法が記述されている。この方法において,表示パネルの画素を,1TV信号フィールド周期に等しい周期内で同じ表示情報によって2回ロードする。これを達成するために,ビデオ信号をフィールド記憶装置に供給し,供給されたTV信号のライン速度の2倍の速度でパネルを走査して,その内容を1標準ビデオ周期の間に2回連続して表示パネルに読み出す。これは,20ミリ秒のフィールド周期と50Hzのフィールド速度とを有するPALTV表示信号の場合,表示パネルのフィールド周期が10ミリ秒に短縮され,フィールド速度が100Hzに変換されることを意味する。図1および2に示すシステムの実施例の表示パネル10の画素は,ある程度幾つかの類似点を持った方法で駆動される。再び図1および2を参照して,入力端子25からビデオ信号を,アナログディジタル変換器27および切り換えスイッチ28を経て,TVフィールド全体に関するディジタル化されたビデオ信号を保持する2個のディジタルフィールド記憶装置30および31の一方に供給する。切り換えスイッチ28を回路21によって,TVフィールド信号が記憶装置30および31に交互に記憶されるように動作する。一方の記憶装置,例えば記憶装置30がロードされている間,他方の記憶装置31の内容を読み出し,同様に回路21によって制御される切り換えスイッチ32と,ディジタルアナログ変換器33とを経て,ビデオ処理回路24に供給する。一方の記憶装置内に格納された信号を,ライン毎に回路24に読み出し,各ラインの読み出しは,TVライン周期の半分を要する(15頁11行〜16頁7行) 。」ス「行駆動回路20は,TVフィールドに関するデータ信号の供給に同期した従来の速度の2倍の速度において行導線を走査する。したがって,1TVフィールドに関するデータは,TV信号フィールド周期の半分の周期内で表示パネルにロードされる。各行の画素がロードされた後,非選択信号を個々の行導線に供給し,この行のTFTをオフに保ち,したがって記憶された書き込み表示情報を有する画素を分離する。ここまでは,図1および2のシステムの実施例の構成および動作方法は,大体において等しい(16頁8行〜14行) 。」セ「ここで図2のシステムの実施例を考えると,…TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書き込むのに続いて,画素の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する。これを達成するために,TVフィールド期間の後半に等しいこの期間の間に,間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によって,選択信号を行駆動回路20によって各行導線に順番に再び供給する。この期間が続いている間,画素をほぼ非透過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧V を列導線16の各々に印加すBる。基準電圧を,列駆動回路22の出力端子と列導線の組との間に接続され,回路21によって供給される切り換え信号Sの制御のもとに,列導線を行駆動回路の出力と基準電圧との間で切り換える切り換え回路35によって印加する。行導線を,あらかじめ,画素の行が時間間隔の終了時に最終行が完了するまで順番にほぼ非透過状態に設定されるように,選択信号によって同じ速度において走査する。したがって1TVフィールド周期において,2つの表示情報アドレス期間,すなわち,画素を液晶表示状態に駆動する表示情報アドレス期間と,それに続く,画素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔とが存在する。TVフィールド期間の終わりにおいて,再びTV信号のフィールド速度の2倍の速度において,通常の2倍の速度における行導線の走査に同期して次のTVフィールドを第1の記憶装置にロードしている間,次のTVフィールドに関するデータ信号が他の記憶装置から回路24に読み出されるように,切り換えスイッチ28および32を動作する。この次のフィールドを表示パネル内にロードした後,以前のようにTVフィールド周期の残りの後半内で,ほぼ非透過表示状態に再び駆動する。この動作方法を,順次のTVフィールドに対して繰り返す。
したがって,表示パネルの動作は,各々がTV信号フィールド周期のほぼ半分,例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし,一つ置きの期間は,画素が各々のTVフィールドに関する表示情報によってロードされる間の第1の表示パネルフィールド期間を構成し,それらの間の時間間隔は,配列の画素を黒い状態に駆動する間の第2の表示パネルフィールド期間を構成する。これを図4に図式的に示し,ここでTは時間を表し,F(A)からF(D)は供給されたTV信号VSの4つの連続するフィールド期間を示す。表示パネルの動作期間の相対的なタイミングDPは,f(A)からf(C)が第1の表示パネルフィールド(表示情報アドレス)期間を示し,期間f′がそれらの間の第2の表示パネルアドレス期間を示す(18頁7行〜19頁13行) 。」(2)上記(1)ア〜セの記載によれば,引用例(甲1)には,次のア〜オの事項が記載されていると認められる。
ア引用発明は,シャープネスの不足又はボケの形をとるある程度の好ましくない視覚現象が,特に動いている物のエッジにおいて生じることを改善, することを目的とした液晶マトリックス表示方法である(上記(1)イ,ウオ 。)イ当該目的を達成するため,引用発明は,動いている像の知覚される解像度を改善する「暗い」期間をパネルの順次の表示フィールドの見る人への表示の間に挿入するものであって,引用発明には,1TVフィールド周期において,画素を液晶表示状態に駆動する第1の表示情報アドレス期間と,それに続く,画素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔(第2の表示情報アドレス期間)が存在し,この時間間隔が続いている間,画素をほぼ非透過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧V を列導線16Bの各々に印加するものである(上記(1)オ,ス,セ 。)ウ引用発明においては,表示情報アドレス期間及び時間間隔を合わせた持続時間を,供給されたビデオ信号のフィールド周期に相当させているが,2つの順次フィールド情報アドレス期間および2つの間隔を,ビデオ信号の1フィールド期間の持続時間に相当させることができるものであって,そのようにすることで,実際には同じ表示フィールドが1ビデオ信号フィールド周期内で表示パネルによって連続して2回表示されるようになる(上記(1)キ,コ 。)エ引用発明は「順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において,画素の配列を,ほぼ非透過表示状態に駆動するもの」であって,順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において画素をほぼ非透過,すなわち黒に駆動するものであり,このとき,表示パネルの動作中照明をオンしておいてもよいが,暗い時間の暗さを強調してコントラストを改善するために,表示アドレス期間の間の時間間隔において,オフにするか,少なくとも比較的低い光出力レベルに切り換えるようにすることが好適である(上記(1)コ 。)オ引用発明の「行駆動回路20」は,TVフィールドデータ信号の供給に同期した従来の速度の2倍の速度で行導線を走査するものであり,TV信号フィールド周期の半分からなる表示アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネルに書き込むのに続いて,画素の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半分からなる期間内に再びアドレスしてほぼ非通過(黒い)状態に駆動するために,TVフィールド周期の後半に等しいこの期間の間に,間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によって,選択信号を行駆動回路20によって各行導線に順番に再び供給するものであり 「表示パネル」の動作は,各々がTV信号フィールド周期 ,のほぼ半分,例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし,1つ置きの期間は,画素が各々のTVフィールドに関する表示情報によってロードされる間の第1の表示パネルフィールド期間を構成し,それらの間の時間間隔は,配列の画素を黒い状態に駆動する第2の表示パネルフィールド期間を構成しているものである(上記(1)ス 。)(3)上記(2)によれば,引用発明の「第1の表示情報アドレス期間「第2」,の表示情報アドレス期間」については,以下のとおりであるということができる。
ア引用発明の「第1の表示情報アドレス期間」は,1TVフィールド画像データを表示パネルに書き込むものであることからすれば 「第1の表示 ,情報アドレス期間」が,画像データに応じた電圧を一つの画素の電極間に印加することにより,当該画素の光透過率が画像データに応じた値となるように駆動する期間であることは明らかであるから,本願発明の「2つの電極間に前記画像データに応じた電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とする第1のステップ」に相当する。
イ引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」は,配列の画素を黒い状態に駆動するよう予め定められた「基準電圧V 」が,各画素に印加されてBいる期間である(上記(2)イ)と認められるところ 「基準電圧V 」は, , B画像データに応じた電圧とは異なる電圧であるとともに 「一定の電圧」 ,であるといえる。そして 「基準電圧V 」は,一つの画素の電極間に, ,B「第2の表示情報アドレス期間」の間印加されるのであるから 「一定の ,期間」印加されるものであるといえる。そうすると,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」においては 「2つの電極間に前記画像データに ,応じた電圧とは異なる一定の電圧を一定の期間印加する」ものといえる。
ウ引用発明は 「順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において画 ,素をほぼ非透過,すなわち黒に駆動する」ものであって(上記(2)エ ,)「第1の表示情報アドレス期間」と「第2の表示情報アドレス期間」とが交互に存在するから,引用発明においては 「第2の表示情報アドレス期 ,間」において「ほぼ非透過」となっていた状態が 「第1の表示情報アド ,レス期間」において「画像データに応じた光透過状態」とされ,再び「第2の表示情報アドレス期間」において「ほぼ非透過」の状態とされるものである。
そうすると,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が 「第1の ,表示情報アドレス期間」において画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を「元の値」に戻すようにする期間ということができる。
エ以上によれば,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が,画素の「2つの電極間に画像データに応じた電圧とは異なる一定の電圧を一定の期間印加して,前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を元の値に戻す」ようにしている期間であるといえるから,引用発明は,本願発明の「第2のステップ」を有するものである。
3取消事由1(引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当する旨の認定の誤り)の主張に対する判断(1)ア原告らは,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」は 「ほぼ非透 ,過(黒い)状態に駆動するように予め定めた基準電圧V を各画素に書きB込む」期間,あるいは 「画素をほぼ非透過状態に駆動する」期間である ,にすぎず,基準電圧V を各画素に書き込むと同時にほぼ非透過状態になBるものではないし,引用例(甲1)にはそのような記載もないと主張する。
?@しかし,審決が「…上記第2の表示情報アドレス期間にわたり液晶の光透過率をほぼ黒状態に保つように駆動する期間であることは明らかである(6頁下1行〜7頁1行)とするのは,液晶の駆動に多少の時 。」間差が生じることが技術常識であることからすれば,第2の表示情報アドレス期間にわたり液晶の光透過率をほぼ黒状態に保つ期間であるとすB る趣旨ではなく,第2の表示情報アドレス期間において,基準電圧Vを印加することによって,その期間中のある特定の期間に液晶の光透過率がほぼ非透過状態となるとの趣旨であると解することができる。そして,たとえ引用発明の表示パネルが液晶の光透過率をほぼ黒状態に駆動するよう予め定められた基準電圧V を印加すると同時にほぼ非透過状B態となることはあり得ず,その結果 「第2の表示情報アドレス期間」 ,中全ての期間にわたって,液晶の透過率をほぼ黒状態に保つように駆動することができないものであるとしても,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当するものとする結論に影響を与えるものではないことは,前記2(3)ウ説示のとおりである。
?Aそして,引用例(甲1)には 「TV信号フィールド周期の半分から ,成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書き込むのに続いて,画素の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する「1TV信号フィールド周期において,…画素 」,を液晶表示状態に駆動する表示情報アドレス期間と,それに続く,画素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔とが存在する (前記2(1)セ) 」と記載されており,これによれば,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」がほぼ非透過(黒い)状態に駆動されること,表示パネルの動作には,連続した等しい期間を必要とすることが示されている。
?Bさらに,引用例(甲1)には「図5(D)は,上述した方法において駆動される図…2の表示パネル10の出力の時間的な動作を説明する。
…動いている物を示す表示出力は,半分の時間のみ保たれる,すなわちt がF/2以下であり,順次の表示出力間に期間t が存在し,t は1 2 2F/2以上であることが分かる(21頁18行〜21行)との記載 。」がある。これによれば,引用発明の「第1の表示情報アドレス期間」においては動いている物を表示し 「第2の表示情報アドレス期間」にお ,いてはそれを表示しないものであるから,このことからも,第2の表示情報アドレス期間は,表示がされない状態,すなわち,黒状態となっているものと解することができる。
?Cまた,引用発明の「画素を液晶表示状態に駆動する」ことが,画像データに応じた輝度を画素に表示することを意味することは明らかであることからすれば 「画素をほぼ非透過状態に駆動する」ことが 「画素 , ,を液晶表示状態に駆動する」ことと同様に,実際に画素の光透過度を非透過状態とすることを意味すると解するのが自然であって,ことさら,原告らのいうように「画素をほぼ非透過状態に駆動する」ことが「実際に画素が非透過状態となるわけではなく「画素を非透過状態とする 」,電圧で駆動する」ことを意味するものと解するのは合理的でない。
?D以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
イまた原告らは,引用例(甲1)に「典型的な表示パネルにおいて,パネルが供給されたビデオ(PAL)信号のフィールド速度に等しい50Hzのフィールド速度において駆動され,駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率を安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている(7頁9行。」〜13行)と記載されており,引用発明においても,液晶が透過状態から非透過状態(暗い状態)にするまでには数フィールドの時間を要することが前提になっているのであるから,基準電圧V を印加すると同時(瞬B時)に,ほぼ非透過状態(ほぼ黒状態)になり,以後第2の表示情報アドレス期間中,ほぼ黒状態に保たれることはあり得ないと主張する。
しかし,引用例(甲1)には,当該記載に続けて 「駆動…レベルの変 ,化後に画素の透過率が安定するまでに要する時間を明らかに短縮させる」(前記2(1)イ)と記載されていることや 「表示パネルの動作は,各々 ,がTVフィールド周期のほぼ半分,例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし(前記2(1)セ)と記載されていることからし ,」ても,引用発明の「表示パネル」は,それぞれの表示情報アドレス期間内において,駆動される電圧レベルに応じた光透過度となるものと解することができる。
また,引用例(甲1)には 「アドレス期間および時間間隔を,便利で ,簡単にするために,各々ビデオ信号のフィールド周期のほぼ半分に相当する持続時間にしてもよい。しかしながら好適には,2つの連続するアドレス期間およびその2つの時間間隔を,ビデオ信号のフィールド周期の持続時間に一致させれば,実際には同じ表示フィールドが1ビデオ信号フィールド周期内で表示パネルによって連続して2回表示される(前記2(1)。」コ)と記載されているように,第1の表示情報アドレス期間と,第2の表示情報アドレス期間とをそれぞれ,1TVフィールド信号の4分の1にすることが可能であることも示されていることからすれば,引用発明が「光透過状態から非透過状態になるまでに数フィールドの期間を必要とする」ものに限られるとはいえない。
以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
ウまた原告らは,引用例(甲1)には「表示パネルを,動作中に絶えず照明してもよい。しかしながら好適には,照明手段を前記時間間隔の間,オフにするか,少なくとも比較的低い光出力レベルに切り換える。すると前記暗い期間の暗さは強調され,コントラストが改善される(11頁8。」行〜11行)と記載されているが,これは,非透過状態に駆動するだけでは液晶が非透過状態になっていないこと,すなわち単に「暗い」状態となるにすぎないことを前提とするものであるし,上記記載が,液晶が非透過状態になるまでに時間を有することを示唆しているのであれば,審決の「第2の表示情報アドレス期間にわたり…ほぼ黒状態に保つ」という認定が誤っていることになると主張する。
しかし,引用例(甲1)には「常にパネルの照明をある期間に限定する必要はない。表示情報アドレス期間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動することは,必要な休止期間をもたらし,それだけで十分である。この場合,光源を,パネルを連続して照明するように用意することができる(23頁4行〜7行)との記載があり,常にパネルの照明をある期 。」間に限定する必要はなく,光源をパネルを連続して照明するように用意することができるとされているから,引用発明が,非透過状態に駆動するだけでは液晶が非透過状態になっておらず単に「暗い」状態となるにすぎないとはいえない。また,前記アに説示したとおり,審決が「第2の表示情報アドレス期間にわたり…ほぼ黒状態に保つ」とするのは,液晶の駆動に多少の時間差が生じることが技術常識であることからすれば 「第2表示 ,情報アドレス期間にわたり液晶の光透過率をほぼ黒状態に保つ期間である」とする趣旨ではなく 「第2表示情報アドレス期間」において,基準 ,電圧V を印加することによって,その期間中のある特定の期間に液晶のB光透過率がほぼ非透過状態となるとの趣旨であると解することができるから,原告らの上記主張は採用することができない。
エまた原告らは,引用発明の「ほぼ非透過」における「ほぼ」という用語は不明確な概念であって,どの程度であれば「ほぼ非透過状態」になるのか何ら特定されていないのであるから,この不明確な「ほぼ非透過(黒い)状態」の光透過率ないし液晶の配向状態が「中間調状態」の光透過率ないし液晶の配向状態とどのようにして区別されるのかも不明確であると主張する。
しかし,引用発明の内容は前記第31,(3)イ記載のとおりであることが認められるところ,これによれば,引用発明の「ほぼ非透過(黒い)状態」の光透過率は,TV信号フィールド周期の半分からなる表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するビデオ信号を各画素に書き込むのに続いて,各画素を,TV信号フィールド周期の残りの半分からなる期間内に再びアドレスして基準電圧V を各画素に書き込むことにより得られBるものであり,かつ,画素を液晶表示状態に駆動する第1の表示情報アドレス期間と対置される,第2の表示アドレス期間において駆動される状態であるから,その「ほぼ非透過(黒い)状態」という文言が,各画素にビデオ信号が書き込まれて液晶表示状態になったときと対置される状態を指していることは明らかである。そうすると,たとえ「ほぼ」という文言が用いられていたとしても 「ほぼ非透過状態」が不明確であるとか,この ,ときの光透過率ないし液晶の配向状態が「中間調状態」の光透過率ないし液晶の配向状態と区別できないということはできない。
以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
オまた原告らは,審決が「第2の表示情報アドレス期間にわたり…ほぼ黒状態に保つ」という認定をしているところ 「わたり…保つ」という以上 ,は当該期間の開始から終了まで同じ状態で維持されるということであるので,審決の認定は誤っている,審決は,被告が主張するように「第2の表示情報アドレス期間において,即時に到達するものではないとしても,黒いレベルの光透過率とされている」という認定は行っていないと主張する。
しかし,前記アに説示したとおり,審決の上記認定は,液晶の駆動に多少の時間差が生じることが技術常識であることからすれば,第2の表示情報アドレス期間にわたり液晶の光透過率をほぼ黒状態に保つ期間であるとB する趣旨ではなく,第2の表示情報アドレス期間において,基準電圧Vを印加することによって,その期間中のある特定の期間に液晶の光透過率がほぼ非透過状態となるとの趣旨であると解することができるから,原告らの上記主張は採用することができない。
(2)ア次に原告らは,本願発明における「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過率を元の値に戻す」という要件における「元の値」とは,前記画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値であることは一義的に明白であるにもかかわらず,審決は,「元の値」がいかなる値であるかは明確ではないとしており,誤りであると主張する。
しかし,たとえ原告らが主張するように,上記「元の値」が「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値」であるとしても,前記2(3)に説示したとおり,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当することに変わりはないから,この点が審決の結論に影響するものではない。
イまた原告らは,引用発明は「ほぼ非透過(黒い)状態」であって「黒表示状態」ではない,また本願発明は,画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値(元の値)に戻すことを要件とするものであって,審決が認定するように「特定の状態」に戻すことを要件とするものではないと主張する。
しかし,引用発明が「ほぼ非透過(黒い)状態」であって「黒表示状態」ではないとしても,前記(1)エに照らし,前記2(3)に説示したとおり引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当することに変わりはない。また,本願発明が画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値(元の値)に戻すことを要件とするものであるとしても,前記2(3)の説示に照らし,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が 「第1の表示情報アドレス期間」に ,おいて,画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を「元の値」に戻すようにする期間ということができる。
以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
ウまた原告らは,TV信号フィールド周期の残りの半分(上記10ms)である第2の表示情報アドレス期間の開始時点において 「ビデオ信号と ,は異なる基準電圧V 」を印加したとしても,第2の表示情報アドレス期B間の終了時点までに液晶の光透過率はビデオ信号の印加によって変化する前の光透過率(元の値)に戻ることはないから 「黒表示状態に戻す」と ,いうことは,本願発明の「光透過率を元の値に戻す」ことにはならないと主張するが,前記(1)アで説示したとおり,同主張は採用することができない。
エまた原告らは,引用例(甲1)の「典型的な表示パネルにおいて,…駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィールドを占めるであろうことが分かっている(7頁9行〜13行)との記載が引用発明に関する 。」記載ではないとする被告の主張に対して縷々反論するが,原告ら指摘の上記記載が引用発明に関する記載であるとしても,前記(1)イの説示に照らし,そもそも引用発明が,非透過状態になるまでに数フィールドの期間を必要とするものに限られるとはいえないことに変わりはないから,この点が審決の結論に影響するものではない。
オまた原告らは,本願発明における「元の値」とは,特許請求の範囲の記載上 「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化した前記光透過 ,率を元の値に戻す」と記載されていることから 「電圧の印加によって変 ,化する前の光透過率」であることは一義的に明確であり,被告が主張するように「過去の時点」というような不特定の不明確な時点における光透過率ではないと主張する。
しかし,たとえ原告らが主張するように,上記「元の値」が「前記画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率の値」であることが明確であるとしても,前記2(3)の説示に照らし,引用発明の「第2, , の表示情報アドレス期間」が 「第1の表示情報アドレス期間」において画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を「元の値」に戻すようにする期間ということができることに変わりはないから,この点が審決の結論に影響するものではない。
カまた原告らは,本願発明の「元の値」は「画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率」を意味するのであり,一方,引用発明の「ほぼ非透過状態」とは不明確,不明瞭な状態であって特定できず,さらに,光透過率が液晶の配向状態のみによって定まるものではなく印加電圧の大きさや偏光板の配置等複数の条件によって定まるものであることにも照らせば,これらが,特定可能な1つの液晶配向状態である点で一致するとは認められないと主張する。
しかし,前記(1)エに説示したとおり,引用発明の「ほぼ非透過状態」が不明確,不明瞭な状態であって特定できないとはいえない。また,たとえ本願発明の「元の値」が「画像データに応じた電圧の印加によって変化する前の光透過率」を意味し,さらに,光透過率が液晶の配向状態のみによって定まるものではなく印加電圧の大きさや偏光板の配置等複数の条件によって定まるものであることを前提としても,前記2(3)に説示したとおり,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当することを左右することはできない。
以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
キまた原告らは,引用例(甲1)では不明確,不明瞭で特定できない「ほぼ非透過状態の光透過率」については何ら言及されておらず,また,電圧の印加によって変化する前の光透過率の値に戻すことは記載も示唆もされていないから,引用発明が,前記過去の時点以後の各第2の表示情報アドレス期間において,光透過率が「元の値」に戻されているとは到底認められないと主張する。
しかし,前記(1)エに説示したとおり,引用発明の「ほぼ非透過状態」が不明確,不明瞭な状態であって特定できないとはいえないし,前記2(3)に説示したとおり,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」は,「第1の表示情報アドレス期間」において,画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を「元の値」に戻すようにする期間ということができる。
以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
クまた原告らは,審決は,引用発明の認定において 「ほぼ非透過(黒 ,い)状態に対応する光透過率」という認定を行っていないし,また,引用発明の「ほぼ非透過(黒い)状態」というのは不明確,不明瞭,不特定な概念であって 「ほぼ非透過(黒い)状態」に対応する光透過率が定まる ,としても,それが,電圧を印加する前の光透過率になるものではなく,まさに「ほぼ非透過(黒い)状態」に戻すだけのことであると主張するが,前記(1)ア,上記キの説示に照らし,同主張は採用することができない。
(3)次に原告らは,引用発明の「非透過状態に駆動する第2の表示情報アドレス期間」と本願発明の「光透過率を元の値に戻す第2のステップ」とが異なっていることは,引用発明の目的,作用,効果と本願発明のそれとが異なり,両者の技術的思想が異なることからも明らかである,引用発明は「ほぼ非透過(黒い)状態」であれば足り,光透過率として何らかの値が要求されているものではないのに対し,本願発明は 「ネマティック液晶を駆動する ,ときの応答性を向上する」ことを目的とし,そのため,画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を元の値(変化する前の値)に戻すことによって,前フレームの画像データにかかわらず,当該フレームの画像データに応じた電圧によって光透過率が定まるようにして,上記目的を達成するものであって,引用発明のように暗ければよいというものではないと主張する。
しかし,引用発明が「ほぼ非透過(黒い)状態」であれば足り,光透過率として何らかの値が要求されているものではないとしても,前記2(3)に説示したとおり,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が 「第1の表 ,示情報アドレス期間」において,画像データに応じた電圧の印加によって変化した光透過率を「元の値」に戻すようにする期間ということができ,引用発明の「第2の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第2のステップ」に相当するものであることに変わりはないのであって,これに上記(1),(2)の説示を併せれば,原告らの上記主張は採用することができない。
(4)以上のとおりであるから,原告らの取消事由1の主張は理由がない。
4取消事由2(引用発明の「第1の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第1のステップ」の相当する旨の認定の誤り)の主張に対する判断(1)原告らは,引用発明が「液晶」の光透過状態が安定するまでに数フィールドの時間を要するものであることからすれば,引用発明は「第1の表示情報アドレス期間」にビデオ信号に応じた電圧を印加しても,第1の表示情報アドレス期間中にビデオ信号に見合った光透過率状態にならないことは明らかであるから,審決が引用発明の「第1の表示情報アドレス期間」が本願発明の「第1のステップ」に相当すると判断したことは誤りであると主張する。
しかし,引用発明が,液晶の光透過状態が安定するまでに数フィールドの時間を要するものであるとする原告らの主張を採用することができないことは,前記3(1)イに説示したとおりであるから,原告らの上記主張はその前提を欠くというべきである。また,引用発明の「第1の表示情報アドレス期間」が,本願発明の「第1のステップ」に相当することも前記2(3)アに説示したとおりであるから,これと同旨の審決に誤りはない。
(2)次に原告らは,引用発明においては,第2の表示情報アドレス期間の終了時(第1の表示情報アドレス期間開始時)の光透過率と,ビデオ信号(印加電圧)と,第2の表示情報アドレス期間終了時からの経過時間によって,第1の表示情報アドレス期間終了時の光透過率が決まることになる,そして,引用発明においては,第2の表示情報アドレス期間終了時における光透過率が元の値(第1の表示情報アドレス期間開始時の光透過率)に戻っていないのであるから,これに続く第1の表示情報アドレス期間でビデオ信号を印加した場合,ビデオ信号に見合った光透過率になるのではない,したがって,第1の表示情報アドレス期間終了時の光透過率はビデオ信号に対して変動し,被告が主張するようにビデオ信号のみの関数とはならないから,審決が,引用発明が本願発明の第1のステップを有すると認定したことは誤っていると主張する。
しかし,原告らの上記主張は,引用発明において,第2の表示情報アドレス期間終了時における光透過率が元の値(第1の表示情報アドレス期間開始時の光透過率)に戻っていないことを前提とするものであるところ,かかる前提が失当であることは,前記2(3),3(2)の説示に照らして明らかである。
(3)以上のとおりであるから,原告らの上記主張は採用することができず,取消事由2は理由がない。
5取消事由3(引用発明の「TV信号フィールド周期」が本願発明の「1フレーム期間」の相当する旨の認定の誤り)の主張に対する判断原告らは,TV信号において,1フレーム期間は奇数フィールド期間と偶数フィールド期間の2つの期間によって構成されるものであることは技術常識であることからすれば,審決が,引用発明の「TV信号フィールド周期」が本願発明の「1フレーム期間」に相当すると判断したのは誤りであると主張するので,以下検討する。
(1)ア本願明細書(甲2,3)には以下の記載がある。
(ア)「近年STN液晶パネルでTFT液晶パネル並の画質を実現する駆動方法として,複数の走査線を同時に選択するアクティブ駆動法が提案されている。このアクティブ駆動方法は同時に複数の走査線を選択することにより,1フレーム期間中の走査線の選択回数を増やすことにより,コントラスト比と応答速度を改善しており,ネマティック液晶の光透過率が印加電圧の実効値により決まるという特性を使うという点においては従来の駆動方式と変わりはなかった(段落【0013【001 。」】,4 )】「図2は本発明の実施の形態におけるネマティック液晶の印加電圧(イ)の変化に対する光透過率の時間的変化を示すものであり,単純マトリックス方式のネマティック液晶パネルの1つのドットに対するセグメント電極とコモン電極に印加する電圧波形と,前記1つのドットの光透過率を表している。ここで,コモン電極に印加する電圧はコモン電極を選択する期間だけパルスを出力し,選択されたコモン電極に対するパルスが出力されている期間,セグメント電極に印加する電圧がVseg1の場合には,対応するドットの光透過率が瞬間的に変化し,セグメント電極に印加する電圧がVseg0の場合には,対応するドットの光透過率が変化しないことがわかる。従って,コモン電極に印加するパルスのタイミングに応じて,表示したい画像データに応じた電圧を,セグメント電極に印加することにより,画像を表示することが出来る。本発明の実施の形態における駆動タイミングの特徴は,1フレーム期間内でコモン電極が選択されている期間のセグメント電圧がVseg1の場合に,コモン電極が選択されていない期間の中でセグメント電圧をVseg0にしていることである(段落【0018】〜【0021 ) 。」 】(ウ)「また,図2において,コモン電圧の選択周期を半分にし,1フレーム期間の中でセグメント電圧がVseg0の時に必ずコモン電極を選択するようした場合でも,光透過率の変化の様子にはそれほど差は発生しない。ただし,図2に示した本発明の実施の形態においては,黒を表示する場合のセグメント電圧を1フレーム期間でVseg0に固定しているが,黒を表示する場合にはコモン電極が非選択の期間のセグメント電圧をVseg1にした方が黒はよくなるが,前述のように選択周期を半分にすると,セグメント電圧がVseg1の時にコモン電極が選択されるため白が表示されてしまう。図5は,本発明の実施の形態において,セグメント電圧の変化の周期のみを変更した場合の,光透過率の変化の様子を示しており,1フレーム期間毎にセグメント電圧を変化させた場合には,1フレーム期間内でセグメント電圧を変化させた場合に比べて光透過率の変化の速度がかなり遅くなっていることがわかる(段落。」【0027】〜【0029 )】(エ)「従って,本発明の実施の形態においては,フレーム周期を速くするとコントラスト比が低くなり,一方,フレーム周期を遅くすればフリッカーが発生するなど,不具合が発生してしまう(段落【003。」2 )】(オ)「以上のように本発明においては,液晶パネルに画像を描きその画像が完全に消えるまでが,1フレーム期間中に行われるため,非常に高速な応答速度が得られ,動画再生に最適な方式である(段落【00。」38 )】(カ)「さらにまた,本発明は液晶パネルに画像を描きその画像が完全に消えるまでが,1フレーム期間中に行われる方式であるため,3色バックライトを使用したカラー表示方法に最適の方法であり,高性能でしかも低価格なカラー表示ディスプレイを実現できる(段落【004。」1 )】イ上記ア(ア)〜(カ)の記載から,以下の事項を読み取ることができる。
(ア)上記ア(ア)に 「同時に複数の走査線を選択することで,1フレー ,ム期間中に走査線の選択回数を増やすこと」により 「コントラスト比 ,と応答速度を改善する」ことが記載されていることから,ここでいう「1フレーム期間」が,画像表示装置の走査電極が「1つの画像データ」を表示するために全て選択される期間であることが理解できる。
(イ)上記ア(イ),(ウ)によれば 「1フレーム期間」がコモン電極に印 ,加するパルスの間隔であること,及び,コモン電極にパルスが印加されている期間に画像データに応じた電圧をセグメント電極に印加することにより画像が表示されるのものであることが理解できるから,ここでいう 「1フレーム期間」とは,ある画素において 「1つの画像データ , ,に応じた輝度」を表示してから次の画像データに応じた輝度を表示するまでの期間であることが理解できる。
(ウ)上記ア(オ),(カ)によれば,本願発明は液晶パネルに画像を描きその画像が完全に消えるまでが1フレーム期間中に行われる方式であることが理解できる。
ウ上記イ(ア)〜(ウ)によると,本願発明の「1フレーム期間」とは,画像表示装置の走査電極が「1つの画像データ」を表示するために全て選択される期間であり,液晶表示装置における1つの画素について「1つの画像データに応じた輝度」を表示してから「次の画像データに応じた輝度」を表示するまでの期間であると解するのが相当である。
なお,本願明細書(甲2,3)には,本願発明の「1フレーム期間」が,「偶数フィールド期間」と「奇数フィールド期間」から構成されるものであることは何ら記載されておらず,本願発明の「液晶表示装置」が,ノンインターレース方式であるのか,インターレース方式であるのかなども記載されていない。
(2)一方,引用発明については,以下のとおりであることが認められる。
ア引用例(甲1)に 「あるフィールド周期内にすべての行をアドレス ,し (前記2(1)ア)と記載されていることからすると,引用発明の「T 」V信号フィールド周期」は,画像表示装置の行電極(操作電極)が「1つの画像データ」を表示するために全て選択される期間であることが理解できる。
イまた引用例(甲1)に 「表示フィールドが供給されたビデオ信号のフ ,ィールド周期に等しい持続時間であるような従来の駆動設計において中,断期間は存在しなかった。実際には表示画像は,フィールド周期の間保持されており,… (前記2(1)カ)と記載されていることからすると,引 」用発明の「TV信号フィールド周期」は 「1つの画像データ」に応じた ,表示を「次の画像データ」に応じた表示に切り替えるまでの期間,すなわち,ある画素において 「1つの画像データに応じた輝度」を表示してか ,ら次の画像データに応じた輝度を表示するまでの期間であることが理解できる。
ウそして前記2(1)セによれば,引用例(甲1)に 「TV信号フィール ,ド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書き込むのに続いて,画素の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する 」と記載され,それに引き続き,次の1T 。
Vフィールドに関するデータについて,次のTV信号フィールド周期で,同じ動作を繰り返して行うことが記載されており,これからすれば,引用発明の「TV信号フィールド周期」は,ある画素において「1つの画像データに応じた輝度」を表示してから次の画像データに応じた輝度を表示するまでの期間であることが理解できる。
(3)以上の(1),(2)によれば,本願発明の「1フレーム期間」と引用発明の「TV信号フィールド周期」とは,共に,液晶表示装置の走査電極が「1, つの画像データ」を表示するために全て選択される期間であること,また液晶表示装置の「画素」が 「1つの画像データに応じた輝度」を表示し ,てから次の画像データに応じた輝度を表示するまでの期間である点で共通するものといえるから,引用発明の「TV信号フィールド周期」が本願発明の「1フレーム期間」に相当するものとした審決の認定に誤りはない。
したがって,原告ら主張の取消事由3は理由がない。
(4)これに対し原告らは,TV信号において,1フレーム期間は奇数フィールド期間と偶数フィールド期間の2つのフィールド期間によって構成されるのであるから,引用発明における「TV信号フィールド周期」は本願発明の「1フレーム期間」ではないと主張する。
しかし,原告らの主張する技術常識は,特開平7-92935号公報(発明の名称「画像表示装置 ,出願人 シャープ株式会社,公開日 平成 」7年4月7日,乙4)に「線順次走査においては,画面を上から下まで1回走査すると1フィールド分の画を出力した事になる。1フィールド期間は,画面を上から下まで走査し,次に上から走査を再び開始する迄の時間である。映像信号がインターレス信号の場合,2フィールドで1フレームの画となる。映像信号がノンインターレス信号の場合,1フィールドで1フレームの画となる(段落【0005 )と記載されているように,映 。」】, 像信号がインターレース方式の信号である場合についていうものであって引用発明の駆動方法をノンインターレス方式の映像信号の表示に用いた場合には 「1フィールド」期間で「1フレームの画」を表示することにな ,る結果,引用発明の「1TV信号フィールド期間」が 「フレーム期間」 ,となることは,技術常識から当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとって明らかである。
以上によれば,原告らの主張する相違は,液晶表示装置が表示する映像信号の方式の相違(インターレース方式か,ノンインターレース方式か)についていうものであって,液晶表示装置が,1画面表示を行う上での駆動方法についての相違をいうものとはいえない。
そして,本願明細書(甲2,3)には 「1フレーム」期間が 「2つの ,,フィールド期間」からなることは記載されておらず,また,用いられる「映像信号」がインターレス方式のものであるのかノンインターレス方式のものであるのかについても記載されていないことからすれば,本願発明, の「1フレーム期間」と引用発明の「TV信号フィールド周期」との間に原告らが主張する相違が存在するものとはいえない。
以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
(5)また原告らは,引用発明の「TV信号フィールド周期」と本願発明の「1フレーム期間」はディメンションがともに時間に関することであるとしても,TV信号における「フレーム期間」と「フィールド期間」が異なる以上 「TV信号フィールド周期」が「1フレーム期間」になるもので ,はなく,本願明細書(甲2,3)と引用例(甲1)の具体的な数値として同じ値があるとしても,TV信号における「フレーム期間」と「フィールド期間」が異なる以上 「TV信号フィールド周期」が「1フレーム期 ,間」になるものではない,また,被告が本願発明ではTV信号に特定されていないことやコンピュータディスプレイのノンインターレース方式を挙げて,本願発明の「1フレーム期間」が奇数フィールド期間と偶数フィールド期間で構成されるものではないと主張しているが,反論になっていないと主張する。
しかし,上記(4)に説示したとおり,本願発明の「1フレーム期間」と引用発明の「TV信号フィールド周期」との間に,原告らが主張する相違が存在するものとはいえないから,原告らの上記主張は採用できない。
6結語以上のとおりであるから,原告ら主張の取消事由はすべて理由がない。
よって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 田中孝一
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