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関連審決 不服2005-7958
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19行ケ10215審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10293審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10555審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ49審決取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10673審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  包装 /  役務の提供 /  出所表示機能 /  識別機能 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  3条2項 /  立体商標 /  立体的形状 /  外観(外観類似) /  取引の実情 /  補正 /  存続期間 /  継続 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10405号 審決取消請求事件
原告株 式会社神田商會
同訴訟代理人弁理士井澤幹
同 井澤洵
同 山下彰子
被告特 許庁長 官肥塚雅博
同 指定代理 人田代茂夫
同 伊藤三男
同 小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/06/24
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2005-7958号事件について平成19年10月12日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯原告は,別紙「商標目録」記載のとおりの立体商標について,指定商品を第15類「弦楽器用駒(ブリッジ)その他弦楽器附属品及び弦楽器」として,商願2004-50118号に係る商標登録出願をし(以下「本願商標」という。),平成17年2月16日付け手続補正書により,指定商品を第15類「弦楽器」に補正したが,同年3月25日付けの拒絶査定を受けたので,同年4月28日,これに対する不服審判請求(不服2005-7958号事件)をした。
特許庁における審理の過程において,原告は,平成19年8月1日付けの手続補正書により指定商品を「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」と補正したが,特許庁は,同年10月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。
2 審決の内容別紙審決書の写しのとおりであり,その要点は次のとおりである。
(1) 商標法3条1項3号該当性について本願商標は,その指定商品との関係においては「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」として予測し難いような特異な立体的形状や特別な印象を与える装飾的な立体的形状であるということはできず,むしろ,「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」としての機能をより効果的に発揮させたり,美感をより優れたものにするなどの目的で同種商品が一般的に採用し得る範囲内のものにすぎないとみるのが相当である。してみれば,本願商標を,その指定商品「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」に使用した場合には,その一構成部分である「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」の形状を表したにすぎない。
(2) 商標法3条2項該当性について原告は(請求人)は,本願商標は「ZEMAITISギター」であることを証明できる目印(識別標識)であって,この識別標識があることによってはじめて「ZEMAITISギター」と認識されるなどと主張する。しかし,原告の提出した証拠からは,本願商標と同様な「駒(ブリッジ)」を備えたエレクトリックギターが確認できるものの,これらは,そのギター本体又は掲載記事中に,「ZEMAITIS」,「ゼマイティス・ギター」及び「菱形と欧文字Zの組み合わせよりなるマーク」等を伴って表示されているものであって,本願商標が出所を識別しているとはいえず,その他,本願商標の使用期間,使用地域,生産又は譲渡の数量,広告宣伝の方法,回数及び内容等についての立証はされていないから,原告(請求人)の上記主張を認めることができない。
取消事由に係る原告の主張
審決は,?@商標法3条1項3号該当性の判断を誤り,?A商標法3条2項該当性の判断を誤ったものであり,取り消されるべきである。
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について本願商標は,花びらのような形状(ボルトを中心にして8つの扇状の図形が円形に広がった形状)を有しているが,この形状はブリッジにはみられない形状であるから,「予測し難い特異な立体的形状」又は「特別な印象を与える装飾的な立体形状」といえるから,商標法3条1項3号に該当しない。
また,本願商標に係る指定商品は,「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」であり,ブリッジ等の部品,附属品は積極的に除外しているから,商標法3条1項3号該当性の判断に当たり,「弦楽器用駒(ブリッジ)」との関係において判断すべきではないにもかかわらず,審決は,ブリッジ形状として一般的であるか否かを判断している点で誤りがある。
以上のとおり,商標法3条1項3号に該当するとした審決の判断は誤りである。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について「ゼマティスギター」は,トニー・ゼマティスが独自のデザインで創作した世界的に有名なハンドメイドギターであり,本願商標は,1978年(昭和53年)以降「ゼマティスギター」に使用されており,「ゼマティスギター」の識別商標となっているから,商標法3条2項に該当する。したがって,同法3条2項に該当しないとした審決の判断は誤りである。
被告の反論
審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)に対し(1)本願商標は,別紙「商標目録」のとおり,頭部が台形でマイナスの溝のあるボルトを左右に2個配し,その周辺には,6個ないし8個の扇状の図形がそのボルトを中心にして円形に広がり,その2個のボルトの間に,それよりやや小さい6個の,同じく頭部が台形でマイナスの溝のあるボルトと,六角形のナットと,そのボルトには可動式と思われる四角形の部品(サドル)を有する形状よりなる立体商標である。
そして,補正後の指定商品「弦楽器」に属する商品「エレクトリック・ギター」との関係において,左右に2個の「頭部が台形でマイナスの溝のあるボルト」は「弦高調整用ボルト」,このボルトよりやや小さい6個の「頭部が台形でマイナスの溝のあるボルト」は「サドル調整用のボルト」,さらに,6個の「四角形の部品」は小さいボルトにより可動式の「サドル」を,それぞれ表すものであり,その他の部分と併せて全体としてみた場合には,「駒(ブリッジ)」と容易に認識できることから,これに接する取引者,需要者には,本願商標は,「6弦の弦楽器(ギター)用駒(ブリッジ)」を表したものと理解され得る形状である。
(2)本願の指定商品を取扱う業界において,ギターは,ボディ部分を始め,ヘッド部分等,あらゆる部分が美感をより優れたものにするなどの目的で,デザイン,加工が施され,広告・販売されている実情がある(乙2ないし13)。このような取引の実情によれば,本願商標は,その指定商品との関係において,「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」としての機能をより効果的に発揮させたり,美感をより優れたものにするなどの目的で同種商品が一般的に採用し得る形状の範囲内のものであって,「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」として予測し難いような特異な立体形状や,特別な印象を与える装飾的な立体的形状とはいえない。本願商標を,指定商品「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」に使用した場合であっても,取引者,需要者は,その一構成部である「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」の形状を表したにすぎないものと認識すると解するのが相当である。
(3) 原告の主張に対しア原告は,本願商標の花びらのような形状は,「予測し難い特異の立体的形状」又は「特別な印象を与える装飾的な立体形状」であると主張する。
しかし,上記部分は「弦高調整用ボルト」の回転等操作を補助又は容易にする機能,用途を有するものである。また,「ブリッジ」には振動をボディーに伝える機能もあるが(乙1の4),6個又は8個の扇状の図形の部品の形状は,ブリッジの左右に位置し,ボディーに接触し,確実に固定され,振動をボディーに伝える目的で採用された形状といえる。したがって,本願商標は,ブリッジの形状として普通に用いられる範囲内の形状であるといえるから,原告の上記主張は失当である。
イまた,原告は,本願商標に係る指定商品は,「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」であり,ブリッジ等の部品,附属品は積極的に除外されているから,商標法3条1項3号該当性の判断に当たって,「弦楽器用駒(ブリッジ)」との関係において判断すべきではないと主張する。
しかし,その指定商品に属するギターについての広告,販売等の取引の実情は,上記(2)のとおりであり,本願商標の指定商品は,それ自体単体として取引される「弦楽器の部品及び附属品」が除かれてはいるものの,「弦楽器」本体には,ボディー部分,ヘッド部分等と共に,駒(ブリッジ)部分も備えられているものであるから,本願商標の特徴をその指定商品「弦楽器」との関係でみれば,「6弦の弦楽器」,すなわち,「ギター」用の「駒(ブリッジ)」の特徴を顕著に有するものであり,本願商標は「6弦の弦楽器用駒(ブリッジ)」であると,容易に認識させるものである。以上のとおり,本願商標の商標法3条1項3号該当性を,その指定商品「弦楽器」との関係において判断すれば,同号に該当することは明らかであるから,審決に誤りはなく,原告の主張は失当である。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)に対し原告は,本願商標は1978年(昭和53年)から現在に至るまであらゆるデザインの「ゼマティスギター」に使用されていると主張する。しかし,証拠(甲29,乙9)によると,本願商標のブリッジの形状とは全く異なるデザインのものが原告の製造,販売に係る「ゼマティスギター」に使用されており,原告の上記主張は失当である
当裁判所の判断
当裁判所は,審決には,原告主張に係る取消事由はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について(1) 立体商標における商品等の形状ア商標法は,商標登録を受けようとする商標が,立体的形状(文字,図形,記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても,所定の要件を満たす限り,登録を受けることができる旨規定する(商標法2条1項,5条2項参照)。
ところで,商標法は,3条1項3号で「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含む。),価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができない旨を,同条2項で「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨を,4条1項18号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は,同法3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を,26条1項5号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」に対しては,商標権の効力は及ばない旨を,それぞれ規定している。
このように,商標法は,商品等の立体的形状の登録の適格性について,平面的に表示される標章における一般的な原則を変更するものではないが,同法4条1項18号において,商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標については,登録を受けられないものとし,同法3条2項の適用を排除していること等に照らすと,商品等の立体的形状のうち,その機能を確保するために不可欠な立体的形状については,特定の者に独占させることを許さないとしているものと理解される。
そうすると,商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない形状については,商品等の機能を効果的に発揮させ,商品等の美感を追求する目的により選択される形状であっても,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものであれば,立体商標として登録される可能性が一律的に否定されると解すべきではなく(もっとも,以下のイで述べるように,識別機能が肯定されるためには厳格な基準を充たす必要があることはいうまでもない。),また,出願に係る立体商標を使用した結果,その形状が自他商品識別力を獲得することになれば,商標登録の対象とされ得ることに格別の支障はないというべきである。
イ以上を前提として,まず,立体商標における商品等の立体的形状が商標法3条1項3号に該当するか否かについて考察する。
(ア)商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると,商品等の形状は,多くの場合に,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されると認められる形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,同号に該当すると解するのが相当である。
(イ)また,商品等の具体的形状は,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品等について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として,同号に該当するものというべきである。
けだし,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないからである。
(ウ)さらに,需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても,当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには,商標法4条1項18号の趣旨を勘案すれば,商標法3条1項3号に該当するというべきである。
けだし,商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に,商品等の機能の観点からは発明ないし考案として,商品等の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,商品等の形状について,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。
(2) 本願商標の商標法3条1項3号該当性ア ギターの種類及び構造について本願商標は,弦楽器(部品及び附属品を除く)を指定商品とするものである。証拠(乙1の1ないし6)によると,弦楽器に含まれるギターの種類及び構造は,下記のとおりと認められる。
(ア)ギターには,?@弦の振動を電気信号に変換し,アンプを通して音を出す「エレクトリック・ギター」,?A電気を通さないナマ音だけで鳴らす「アコースティック・ギター」,?Bアコースティック・ギターにピックアップ(弦の振動を電気信号に変換するパーツ)を取りつけた「エレクトリック・アコースティック・ギター」がある。
(イ)ギターを構成している主な部品(パーツ)は,以下のとおりである。?@ ヘッドギターの頭部でネックの先端の部分。ペグ(弦を巻きつけて固定すると同時に,締めたり緩めたりすることによってチューニングするパーツ)が取りつけられ,弦のテンション(張力)を確保する役割を果たす。ヘッドにはメーカーのロゴが書かれることが多い。
?Aネック弦を押さえて音程を決定する部分である。なおネックには6本の弦が配される。
?Bボディーギターの本体であり,弦の振動を共鳴させるという重要な役割を担い,内部に空洞部分のないソリッド・ボディーと,中空のホロー・ボディとがあり,また,トップが平らなものはフラット・トップ,中央が緩やかに盛り上がっているものはアーチ・トップと呼ばれる。ボディーの一部をカットするカッタウェイという加工が施される場合があり,片側だけをカットしたものをシングル・カッタウェイ,両側をカットしたものをダブル・カッタウェイと呼ばれる。
?Cブリッジ(駒)ボディー上で弦を支え,その振動をボディーに伝えるパーツ。テイルピース(弦のボール・エンドを固定するパーツ)とブリッジとが一体となっている一体型と,別になっている独立型がある。
ブリッジは,左右のネジで弦高(フレットからの弦の高さ)を調整することができる。また,サドル部分では,ネジを回してサドルを前後に移動させて,オクターヴ・ピッチを調整することができる。
イ 本願商標の構成本願商標は,別紙「商標目録」記載のとおりの以下の構成よりなるものであり(甲30),これによれば,本願商標は,指定商品「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」を構成するブリッジの立体的形状に係るものであり,同形状は,次のような特徴を有している。
A本体は,正面視では略長方形で,縦線が円弧状となっており,側面視では略台形でその上部は円弧状となっており,本体の左右にはマイナスの溝のあるボルトを2個配していること。
B本体の左右には,8個(2個は,本体に隠れているが,本願商標に係るブリッジの分解写真(乙8)より8個と認める。)の扇状の図形がそのボルトを中心にして円形に配され,花びら様の外観を呈していること。
C本体の左右に設置された2個のボルトの間には,それよりやや小さい6個の,同じく頭部が円形でマイナスの溝のあるボルトと,六角形のナットと,そのボルトには四角形の部品(サドル)が接続されていること。
ウ本願商標は,指定商品である弦楽器に含まれるギターの構成部分であるブリッジの立体形状である。ところで,?@本体の正面視が略長方形で縦線が円弧状であることは,ギターのブリッジの通常の形状であり(甲11ないし14,乙3,7),?A左右にマイナスの溝のあるボルトを2個配していることは,弦高を調整するための機能上から採用された形状であり,?B2個のボルトには扇状の8個の図形が円形に配された花びら様の形状としたことは,美感上の観点から採用されたものと推認されるが,その選択にさほど特徴があるとはいえず,?C6個のボルト及びナットでサドルを接続したことは6弦のギターのブリッジとしての機能を果たすためのものであるといえる(原告作成の「ゼマティスギター」のカタログ(乙8)にも,「ブリッジは,太いスタッド・スクリューとフラワー・ナットによって確実に固定され,ガタ付きや脱落といった問題点がなく,弦振動を確実にボディへ伝達します。デュラルミンから削りだして作られたこのブリッジとテールピースは,優雅なデザインと機能美を兼備え」との記載がある。)。
上記のとおり,本願商標の各特徴は,いずれも商品の機能又は美感に資することを目的とするものであり,ギターのブリッジについて採用される場合に,通常予測される範囲内の形状といえる。また,前記ア認定のとおり,弦楽器に含まれるギターにおいて,需要者の目を惹くのはブリッジよりも,むしろギターの大部分を占めるカッタウェイを施したボディ部やヘッド部(メーカーの名称等が記載される場合が多い。)であるといえる。
したがって,本願商標を指定商品「弦楽器」に付した場合に,需要者は,本願商標を,専ら上記指定商品を構成するブリッジであると認識し,指定商品の出所を表示する標識と認識することはないと解するのが自然である。
なお,原告は,本願商標に係る指定商品は,「弦楽器(部品及び附属品を除く。)」であり,ブリッジ等の部品,附属品は除外されているにもかかわらず,審決が,商標法3条1項3号該当性の判断に当たり,「弦楽器用駒(ブリッジ)」との関係において判断した点に誤りがあると主張する。しかし,前記アで認定したとおり,本願商標が弦楽器のブリッジとしてごく一般的に採用し得る範囲内の形状のものであること,「弦楽器」(例えばギター)には,ボディー,ヘッド等と共に,ブリッジも構成要素であること,そうすると,ブリッジを構成要素とする「弦楽器」の商標としてもごく一般的に採用される形状といえることは前記説示のとおりである。したがって,審決は,商標法3条1項3号該当性の判断に当たり,その指定商品「弦楽器」との関係において判断したものであるといえる。原告のこの点の主張は失当である。
エ以上のとおりであるから,本願商標は,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当するものというべきである。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について(1) 立体商標における使用による自他商品識別力の獲得前記1(1)アのとおり,商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している(商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標を除く。同法4条1項18号)。
立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標ないし商品等の形状,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該形状に類似した他の商品等の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である。
そして,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要する。
もっとも,商品等は,その製造,販売等を継続するに当たって,その出所たる企業等の名称や記号・文字等からなる標章などが付されるのが通常であり,また,技術の進展や社会環境,取引慣行の変化等に応じて,品質や機能を維持するために形状を変更することも通常であることに照らすならば,使用に係る商品等の立体的形状において,企業等の名称や記号・文字が付されたこと,又は,ごく僅かに形状変更がされたことのみによって,直ちに使用に係る商標が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当ではなく,使用に係る商標ないし商品等に当該名称・標章が付されていることやごく僅かな形状の相違が存在してもなお,立体的形状が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。
(2) 本願商標の商標法3条2項該当性原告は,本願商標は,有名な「ゼマティスギター」のブリッジとして1978年(昭和53年)以降現在に至るまで使用され,「ゼマティスギター」の識別商標となっているので,商標法3条2項に該当する旨主張する。
証拠(甲15ないし29,31ないし33)によれば,本願商標とほぼ同一形状のブリッジが,1978年以降「ゼマティスギター」に使用されていることが窺える。しかし,上記文献は「ゼマティスギター」の歴史を写真入りで掲載し紹介したものであって,一般雑誌ではないこと,上記文献を子細に検討しても,需要者の目につき易く強い印象を与えるのは,菱形図形に囲まれた「ゼマティスギター」の頭文字の「Z」又は「ZEMAITIS」を刻印したヘッド(甲18,21,23ないし28)や「A.C.ZEMAITIS」の刻印のあるカッタウエイを施したボディ全体(甲20,22,23,27)であり,これらと対比するとボディに施された本願商標の形状は目につきにくいものであり,他に需要者が本願商標の形状に着目するとの事情は何ら窺えない。かえって,上記雑誌の裏表紙(甲29,乙9)によると,「ゼマティスギター」のブリッジの形状として本願商標と異なり,花びら様のナットを設けていないものや,花びら様のナットにおいて扇状の図形が8個以上あるものも使用されていたことが推認される。本件全証拠をもってしても,本願商標ないし本願商標が付された「ゼマティスギター」の使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,原告の類似商品に対する対策等の一切は明らかでなく,本願商標が付された「ゼマティスギター」について,需要者への普及度及びその出所を識別する標識がどの点に存在するのかも明らかでない。
以上によれば,本願商標は,本願商標の付された指定商品について,自他商品識別力を獲得しているということはできず,商標法3条2項に該当しないものというべきである。
3 結論以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がない。原告はその他縷々主張するが,審決を取り消すべきその他の誤りは認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
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