• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2004-10310
関連ワード 独占的使用 /  識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  3条2項 /  取引の実情 /  出所の混同 /  補正 /  手続の補正 /  社団法人 /  商号 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 20年 (行ケ) 10027号 審決取消請求事件
原告株 式会社サカタのタネ
訴訟代理人弁理士松田雅章
同 松田治躬
同 近藤史代
同 松田真 砂美
被告特許庁長官 肥塚雅博
指定代理 人堀内仁子
同 中村謙三
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/06/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2004-10310号事件について平成19年12月6日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,種子・苗木の生産販売等を目的とする会社である原告が,「アンデス」を標準文字で横書きしてなる後記商標について,指定商品を第31類「メロンの種子,メロンの苗,メロン」としてなした原出願から指定商品を「メロンの種子,メロンの苗」として分割出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。
争点は,前記商標が商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に当たるか(商標法3条1項3号),である。
当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成12年12月6日に「アンデス」を標準文字で横書きした商標について,指定商品を第31類「メロンの種子,メロンの苗,メロン」としてなした原出願(商願2000-137808号)からの分割出願として,商標法10条1項に基づき,平成14年1月28日,指定商品を「メロンの種子,メロンの苗」として商標登録出願(商願2002-5435号。
以下「本願」という。甲80)をしたが,平成16年4月13日付けで拒絶査定(甲83)を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2004-10310号事件として審理した上,平成19年12月6日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年12月25日原告に送達された。
(2) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商標は,これをその指定商品に使用するときは単に商品の品質を表示するにすぎないものであるから商標法3条1項3号に該当する,というものである。
(3) 審決の取消事由しかしながら,審決は,本願商標が商標法3条1項3号に該当すると誤って判断したものであるから,違法として取り消されるべきである。
ア審決は,「本願商標を構成する『アンデス』の文字は,その指定商品との関係において,『メロン』の品種の一を表示する語として普通に使用されているといえる。そうすると,本願商標は,これをその指定商品に使用しても,取引者,需要者が,『アンデス』というメロンの品種と認識し,理解するにとどまり,自他商品の識別標識としての機能を有する商標としては認識し得ず,商品の品質を表示するものとして理解されるにすぎないと判断するのが相当である」(5頁29行〜35行)として,本願商標が自他商品識別機能を有することを否定している。
たしかに,「アンデス」は,メロンの一品種として昭和52年に原告(当時の商号は坂田種苗株式会社)が交配開発した品種であり,社団法人日本種苗協会(以下「日本種苗協会」という。)が発行する「野菜品種名鑑」(2001年版は,甲3)にも掲載されている(なお,種苗法による品種登録は受けていない。)。
しかし,「アンデス」が品種名であるからといって,直ちに商標としての自他商品識別機能を欠くとするのは誤りである。
なぜなら,新品種の開発者は当該品種の名称として固有の品種名を発案し採択するものであり,種苗等の品種の表示は本来的に自他識別機能を有するものである。このような品種の表示が自他識別機能を欠くこととなるのは,当該品種に係る種苗等が不特定人の生産販売するところとなり,その品種の表示が特定人の管理になじまない状態となった場合であって,そうではなく,当該品種に係る種苗が特定の生産者によってのみ生産販売され,品種の表示が当該生産者の管理下でのみ使用される場合であれば,当該品種の表示は特定の出所を表示し,商標としての自他商品識別機能を有するものである。
このことは,商標法の規定振りによっても裏付けられる。すなわち,商標法は,自他商品識別機能という商標が本来的に備えるべき特性については絶対的登録要件として3条1項各号に規定し,他方,商標登録を拒絶すべき公益的な事由及び相対的な事由については4条1項各号に規定している。そして,種苗法18条1項により品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であってその品種の種苗等に使用するものについては,商標法4条1項14号の拒絶事由として規定されているのであって,同法3条1項には規定されていない。これは,種苗法が,品種登録を受けた品種について排他的な育成者権(19条,20条)を付与する一方で,登録品種について取引をする際には当該登録品種の名称を使用することを義務付けている(22条1項)ことによるものであって,これに対応して商標法が上記のとおり4条1項14号を規定しているのは,商標法自体が,品種の表示は本来的には自他商品識別機能を有するものであることを首肯しているものにほかならない。
実際に複数の同業他社について調査した結果をみても,「種子類,苗,苗木」や「野菜,果実」等を指定商品として商標登録を受けているものの多くは,前記「野菜品種名鑑」(ただし2005年版,甲74)にも品種として掲載されているものである(種苗業界大手であるタキイ種苗株式会社につき甲18〜43,カネコ種苗株式会社につき甲44〜46,トキタ種苗株式会社につき甲47〜49,株式会社大和農園につき甲50,雪印種苗株式会社につき甲51)。
したがって,品種の表示であるというだけで直ちに自他商品識別機能を欠くものではなく,当該品種表示が商標として成立するか否かは,その指定商品に関する取引の実情に照らし,自他商品識別機能の有無を個別に検討して判断されるべきものである。
イそして,本願商標は,少なくとも本願商標の指定商品の一つである「メロンの種子」に関しては,取引の実情に照らして明確な自他商品識別機能を有している。
(ア) すなわち,原告の交配開発に係る「アンデス」という品種は,片親であるネット系アールスメロン(マスクメロン)と他の別種の片親とを交配させた一代交配種である。この「アンデス」という品種に係る種子を生産するための交配方法は,原告のみが知るノウハウであり,門外不出の秘伝,営業秘密である。そして「アンデス」という品種は上記のとおり一代交配種であることから,この種子の収穫物である果実から採種された種子を播いても,「アンデス」という品種の果実を得ることは不可能である。
したがって,「アンデス」という品種の交配方法を知る原告のみがこの品種に係る種子を市場に供給し得るのであり,全国で2000社近くにも上る同業他社のいずれも,この品種に係る種子を市場に供給することはできないのである。この点は,同業他社の種苗販売カタログには「アンデス」という品種が掲載されておらず,原告のカタログ(甲6)のみに掲載されていることや,日本種苗協会会長(平成16年当時)であるAの陳述書(甲11),青果卸売企業である東京青果株式会社の代表者であり社団法人全国中央市場青果卸売協会副会長及び東京中央市場青果卸売会社協会会長を兼任するBの陳述書(甲12の1〜3),現在の日本種苗協会会長であるCの陳述書(甲111)からも明らかである。
以上要するに,本願商標は,少なくとも「メロンの種子」に関しては原告によってのみ使用されるものであり,自他商品識別機能を有するものである。
(イ) これに対し審決は,「『アンデス』の文字は,メロンの品種を表示するものとして普通に使用されていることが認められるから,本願指定商品との関係において,メロンの特定の品種を表示する一般的な名称として取引者,需要者に広く認識,理解されるものとなったというべきである。したがって,本願商標は,…その取引者,需要者をして自他商品の識別標識としての機能を有する商標として認識されるものではなく,メロンの品質を表すものとして理解されると判断するのが相当である」(6頁31行〜37行),「請求人の提出に係る上記の証拠からは,『アンデス』の文字がメロンの品種名として自主登録されていることは認め得るものであるが,請求人の商標として自他商品の識別機能を果たし得るものであることを何等証明するものではない」(7頁1行〜4行)とする。
しかし,審決の上記判断は,本願商標の自他商品識別機能の有無につき,その指定商品の一つである「メロンの種子」の取引の実情に照らして子細に検討することなく,単にその収穫物である果実「メロン」の品種を表すものとして認識されるということをもって本願商標の自他商品識別機能を否定したものである。
たしかに「メロンの種子」を購入した栽培業者が生産する「メロンの苗,メロンの果実」は,その栽培業者の生産技術はもとより,栽培される時期,土地,気候等に左右され,その品質維持に必ずしも原告が関与していないという意味では,「苗,果実」に関して原告が「アンデス」なる商標の使用を管理し統制することは困難である。
しかし,少なくとも「メロンの種子」に関しては,前記(ア)に述べたように原告のみがその生産をなしうるのであり,その種子から苗や果実を得る生産農家その他の取引者,需要者によりメロンの品種を表すものとして一般に広く知られているとしても,少なくとも「メロンの種子」に関しては本願商標は原告の管理下でのみ使用されるのであって,自他商品識別機能を発揮しているものである。
なお,特許庁は審判手続において職権により証拠調べを行い,その結果を商標法56条1項で準用する特許法150条5項の規定に基づき平成19年5月18日付けで原告に通知した(甲85。なお,同通知の内容は,審決2頁9行〜5頁11行において引用されている。)が,そこに掲げられている各種の辞書・書籍やインターネットのウェブサイト,新聞記事等は,いずれも収穫物たる果実としてのメロンに関するものであって,「メロンの種子」に関するものではない。
(ウ) 以上につき換言すれば,「メロンの苗,メロンの果実」に関しては,原告の生産する「メロンの種子」を購入した者がこれを自由に育成・栽培し,苗・果実を取引することができるから,これらに関しては,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであり,特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないとすることは妥当かもしれない。しかし「メロンの種子」に関しては,原告のみがこれを市場に供給し得るものであり,原告から適正に「メロンの種子」を購入した者は,これを転売する場合でも生産者である原告が表示した本願商標を遵守し,これを表示して当該商品を販売するものであり,社会通念上,商品の生産者が自らの商品を広く販売するために,当該取引に必要適切な表示として,本願商標が使用されることが予定されているのである。その意味で,本願商標は「メロンの種子」に関しては原告以外のなんぴともその使用を欲するものではなく,原告による独占的使用を認めたとしても取引秩序を乱さないばかりか,かえって,本願商標に化体した原告の業務上の信用を維持するとともに,適正な商品としての種子が市場に供給されることによって需要者の利益をも保護することとなり,正しく商標法の目的に沿うものである。
甲10(「日経レストラン」2001年1月号40頁〜43頁)の記事によれば,アンデスメロンよりも質の劣るローラン種のメロンをアンデスメロンと偽って販売した結果,消費者から多数の苦情が寄せられ,県全体でメロンの販売高が約13%も落ち込んだとのことであるが,種苗についても同様の模倣・盗用が放置されるならば,果実「アンデスメロン」の販売高が下落するのみならず,原告の生産販売に係る種苗の販売高も下落することとなり,これは,本願商標を使用して種苗を生産販売する原告の信用を毀損することにほかならない。そして,模倣品の種苗が市場に出回ることにより「アンデスメロンの品質が落ちた」と需要者に認識されれば,それは,種子を生産販売する原告のみならず,原告の供給する種子により苗や果実を生産する農家や,果実を購入する需要者の利益をも損なうこととなる。
審決は,「『アンデス(メロン)』の表示を偽った商品を販売する行為の防止は,その法目的に照らし,商標登録に委ねるべき問題でない」(6頁下2行〜下1行)とするが,上記のような原告の信用並びに取引者及び需要者の利益は,商品の出所の混同を防止する商標法においても保護されるべきである。
2 請求原因に対する認否請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3 被告の反論審決の判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 原告は,種苗等の品種の表示は本来的に自他識別機能を有するものであって,商標法自体が品種の表示は自他商品識別機能を有するものであることを首肯していると主張する。
しかし,種苗等の品種の表示は,その形質に係る特性によって他の品種と区別する機能を有するにすぎないものであり,種苗等の出所を識別する機能を本来的に有するものではない。実際の取引においても,需要者に広く知られた品種名を種苗等の商品に使用するときには,これに接する需要者は,当該種苗等の品種を表示したものとして理解するにすぎず,当該種苗等の商品の出所を表示したものとしては認識しない。
そして,商標登録出願に係る商標が,種苗等の品種名として知られており,その指定商品に使用された場合にこれに接する需要者がその表示から栽培植物の種類,特徴を理解するときは,商品の品質を表示する記述的商標として商標法3条1項3号に該当するというべきであって,商標法自体が品種の表示は本来的に自他商品識別機能を有することを首肯しているということはできない。
(2) また原告は,本願商標はその指定商品の一つである「メロンの種子」に関する取引の実情に照らして自他商品識別機能を有していると主張する。
アしかし,「アンデス」の文字は,種苗会社のほか,一般種苗販売者,需要者において,種子・苗の購入,購入後の育成,収穫物の出荷等を通し一貫して,メロンの品種を表す表示として使用されているものであるから,取引者,需要者に品種名として広く知られているものである。
そして,「メロンの種子」に係る取引者,需要者は,収穫物であるメロンの果実を得るために種子を購入するのであるから,その購入に当たっては,当該品種の表示から,栽培作物や収穫物の種類,特徴等を理解し,品種名に着目して購入するものである。
そうすると,メロンの品種名として知られている「アンデス」の文字は,「メロンの種子」との関係においても,当該商品がアンデスメロンの種子に係るもの,すなわち,アンデスメロンの果実が収穫できるメロンの種子であることをその需要者等に認識させる表示にとどまるというべきである。
イまた,原告自身による「アンデス」の文字の使用についてみると,原告のカタログ「サカタの野菜 2001〜2002」(甲6)132頁に,「アンデス」は,その栽培方法,病虫害,果肉等に特徴を有するメロンの種苗の品種を表すものとして掲載されており,さらに,137頁の「ハウスメロン品種特性表」,「ハウスメロン栽培型と適品種」の各欄において,それぞれ「品種」,「適応品種」として「アンデス」が記載されている。そして,原告の上記カタログにおける「アンデス」の表示と同業他社のカタログにおける品種の掲載は,その体裁において大きく相違するところはない。
さらに,メロンの種子の販売に使用される絵袋において,当該品種名が袋の上部に表示されるのが一般的であり,アンデスの種子の絵袋の上部にも「アンデス」の文字が表示されているところ,これに接する取引者,需要者は,絵袋の上部に表示されている「アンデス」の文字を品種を表示したものとして認識するものである。
以上のような原告における実際の使用をみても,取引者,需要者は「アンデス」の文字からメロンの品種であるアンデスメロンの果実が収穫されることを期待して種子を購入するのであり,商品の出所を表示する標章は「サカタ」,「サカタのタネ」,「株式会社サカタのタネ」,「サカタ交配」の表示であるというべきである。
ウなお,原告が書証として提出する陳述書のうち甲11(A),甲12の2(B)は,その書式,記述内容が定型のものであり,同一人により作成されたと推認されるものである。そして,その内容は,「アンデス」の文字が商品の出所表示として使用され認識されていることについて明らかにするものではない。
(3) また,本願商標の指定商品の一方である「メロンの苗」に関しては,園芸店等において品種を表示して販売されているところであり(群馬県経済連等のウェブサイト等,乙31〜44),仮に,メロンの種子については原告のみが管理しているとしても,その種子を購入して苗を育成し販売するような場合には,「アンデス」の文字は,栽培作物の種類を理解させる品種名として使用しているのであって,商品の出所を表す表示としては認識されていないというべきである。
そうすると,営業秘密とする技術的な独占により原告のみが種子の供給をしているとしても,「アンデス」の文字が「メロンの苗」について原告の商品であることを識別する機能を有するということはできない。
そして,出願商標の指定商品中の一部に登録を受けることができないものがあれば,手続の補正等により登録を受けるこのできない指定商品が削除されない限り,その出願は全体として登録を受けることができない。
したがって,本願商標がその指定商品の一つである「メロンの苗」に関して自他商品識別機能を有しない以上,本願は「メロンの種子,メロンの苗」全体について登録を受けることができないものである。
当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由について(1) 原告は,審決が本願商標は商標法3条1項3号に該当すると判断したが,これは誤りであると主張するので,この点について検討する。
ア(ア) 商標法3条1項3号は,その商品の産地,販売地,品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録の要件を欠く旨規定している。商標法がこのように定めているのは,上記のような商標は,商品の産地,販売地,品質その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人による独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによると解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。
(イ) ところで,品種とは,「同一種の農作物または家畜中で,遺伝的に特定の形質を同じくする一群」(広辞苑第五版〔乙45〕)を意味するものであって,ある農作物がいかなる遺伝的形質を有するかは,その農作物の色,形,味等を決する重要な要素となるから,農作物の品種の表示はその農作物が有する品質を表すものである。
したがって,農作物の品種の表示は,その農作物の品質を表すものとして取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであり,また,多くの場合において自他商品識別機能を有しないものである。
そうすると,商標登録出願に係る商標が農作物の品種名を表す文字からなり,その指定商品が当該品種に関する農作物である場合には,当該商標は商品である農作物の品質を表示するものであるから,商標法3条1項3号に該当し,同条2項が適用される場合を除いては商標登録を受けることができないというべきである。
(ウ) そして,「アンデス」がメロンの一品種として昭和52年に原告により開発されたものであり,日本種苗協会が発行する「野菜品種名鑑」(甲3)にもメロンの品種として掲載されていることは,当事者間に争いがない。
そうすると,「アンデス」を標準文字で横書きしてなる本願商標をその指定商品である「メロンの種子,メロンの苗」に使用する場合には,農作物であるメロンの一品種であるアンデスメロンの種子,苗であることを表示することになるから,商品であるメロンの種子,苗の品質を表示するものとして商標法3条1項3号に該当し,同条2項が適用される場合を除いて商標登録を受けることができないというべきである。
イこれに対して原告は,種苗等の品種の表示は本来的に自他識別機能を有するものであり,「アンデス」がメロンの一品種であることをもって商標法3条1項3号に該当すると判断するのは誤りであると主張し,その根拠として,?@種苗法18条1項により品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であってその品種の種苗等に使用するものについて商標法4条1項14号に拒絶事由として規定され,同法3条1項には規定されていないことや,?A同業他社について調査した結果をみても農作物の品種の表示について指定商品を「種子類,苗,苗木」等として商標登録を受けているものが多数存在することを主張する。
しかし,商標法4条1項14号が,種苗法18条1項により品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標について拒絶事由として定めているのは,商標登録出願に係る商標が農作物の品種(品質)を表示するものとして商標法3条1項3号に該当しても,当該農作物に係る取引の実情に照らして同条2項が適用される場合もあり得ることから,このような場合であっても同法4条1項14号に該当する場合には商標登録を受けることができないことを定めたものである。また,原告主張のように実際に農作物の品種の表示について指定商品を「種子類,苗,苗木」等として商標登録を受けているものが少なからず存在しているとしても,上記アの説示からすれば,問題となるものではない。
ウまた原告は,少なくとも本願商標の指定商品の一つである「メロンの種子」に関しては取引の実情に照らし自他商品識別機能を有するとして,本願商標は商標法3条1項3号に該当しないと主張する。
しかし,農作物の品種の表示はその農作物の品質を表示するものである以上,果実等の収穫物ではなく種子を指定商品として商標登録出願する場合でも,当該表示はその種子からいかなる収穫物が得られるかという意味において商品である種子の品質を表示するものといえるから,指定商品が収穫物ではなく種子であることをもって商標法3条1項3号の該当性を否定することはできない。
また,本願商標を「メロンの種子」に使用する場合に取引の実情に照らして自他商品識別機能を有するかは,商標法3条2項の適用の可否(特別顕著性の有無)に関して検討されるべき事項であって,同条1項3号該当性の有無の判断に影響を及ぼすものではない。
(2) なお,本願商標はその指定商品を「メロンの種子,メロンの苗」とするものであるところ,原告がその生産を独占し本願商標の使用につき特別顕著性を有すると主張するのは上記指定商品中の「メロンの種子」に関するものであって,指定商品の一方である「メロンの苗」については,原告以外の者による生産販売も行われていることが認められる(乙31,33,35,36)。
そして,出願商標の指定商品の一部に商標登録を受けることができないものが含まれる場合には,その指定商品手続の補正等により削除されない限り,その出願は全体として商標登録を受けることができないのであるから,仮に指定商品の一つである「メロンの種子」に使用する場合に本願商標が特別顕著性を有するとしても,指定商品の一方である「メロンの苗」については上述のとおり特別顕著性を有しないことが明らかであり商標法3条2項を適用する余地がない以上,本願は全体として商標登録を受けることができないというべきである。
3 結語以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 清水知恵子
  • この表をプリントする