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関連ワード 指定商品 /  著名な略称 /  周知性 /  4条1項15号 /  4条1項19号 /  不正目的(不正の目的) /  国内 /  警告 /  差止 /  使用許諾 /  無効審判 /  外国 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10370号 審決取消請求事件
原告株 式会社セント・ローラン
訴訟代理人弁理 士足立勉
訴訟復代理人弁護士水野健司
被告ベアー,ユー,エス,エー,イン コーポレーテッド
訴訟代理人弁護 士吉武賢次
同 高田泰彦
訴訟代理人弁理 士黒瀬雅志
同 塩谷信
同 宮城和浩
同 小泉勝義
訴訟復代理人弁護士渡辺志穂
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/09/17
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2006-89085号事件について平成19年9月26日にした審決を取り消す。
第2事案の概要1本件は,原告が有する後記商標登録(以下,この登録に係る商標を「本件商標」という。)について,被告が無効審判請求をしたところ,特許庁が同登録を商標法4条1項19号(外国等において広く認識されている商標と類似の商標を不正の目的をもって使用する等)に該当するとして無効とする旨の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。
2争点は,商標法4条1項19号の適用に関し,後記の被告商標は本件商標登録出願時(平成7年7月17日)に,アメリカ合衆国において周知であったか及び原告は本件商標の使用につき不正の目的を有していたか,である。
第3当事者の主張1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成7年7月17日,下記内容の商標(本件商標)について商標登録出願をし,平成9年7月3日に特許庁から登録査定を受け,平成9年8月15日に登録第3340430号として設定登録がなされた。
これに対し,平成18年6月27日に被告が商標登録の無効審判請求をしたので,特許庁は,これを無効2006-89085号事件として審理した上,平成19年9月26日,「登録第3340430号の登録を無効とする。」旨の審決をし,その謄本は平成19年10月9日原告に送達された。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」(2) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本件商標は,被告の業務に係る商品を表示するものとしてアメリカ合衆国における需要者の間に広く認識されている下記の商標(以下,これらをまとめて「被告商標」という。)と類似し,かつ原告によって不正の目的をもって使用されているから,その登録は商標法4条1項19号に違反する,というものである。
記[商標] [使用商品]・Bear ・パーカ・BEAR ・ダウンジャケット・BEAR ・ハイキングシューズ(トレッキ・BEAR USAングシューズ)・(3) 審決の取消事由しかしながら,審決の判断には,次のとおり誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。
ア 取消事由1(被告商標の周知性についての判断の誤り)(ア)審決は,被告商標につき,「遅くとも,本件商標の登録出願日(1995年[平成7年]7月17日)前には,少なくともアメリカ合衆国のファッションの中心地と目されるニューヨーク市において著名となっていただけでなく,我が国の需要者,取引者の間においても相当程度知られていた。」(24頁下8行〜下4行)と認定している。
(イ)しかし,審決が引用した証拠の記載内容をどのようにみても,1995年(平成7年)以前に,アメリカ合衆国において,被告商標が周知性を有していたと認めることはできない。
以下,審決が引用する証拠に従って述べる。
aアメリカ合衆国における被告の評価に関する証拠について(a)「SPORTSWEAR(NORTHAMERICA)INTERNATIONAL」誌の「WHO‘SWHO」102頁(甲11)の1枚目左側そもそも同誌がいつ発行されたのか不明である。「BearUSA」が4年前に設立されたとする記載,1997年秋が未来形で書かれていることから,おそらく1997年(平成9年)ころに発行されたものと考えられる。そして同誌によれば,被告が「取引を拡大してきた」とは記載されているが,それは4年前の設立から現在までのことを指しており,具体的に1995年(平成7年)にどうであったのかはわからない。また,1996年(平成8年)の対外売上げが10ミリオンドルに達していたとは書かれているが,1995年(平成7年)以前の売上げについては何も書かれていない。さらに,1996年(平成8年)にニューヨーク市の「Macy‘sandParagonOutdoorStore」の店舗内に「BearShops」を立ち上げたとは書かれているが,1995年(平成7年)年7月の時点にどれだけの店舗があったのかについては一切言及されていない。
(b)「SPORTSWEAR(NORTHAMERICA)INTERNATIONAL」誌の「WHO‘SWHOINTHEAMERICANSPORTSWEARMARKET2000」(2000年発行)106頁(甲16)同誌によれば,2000年(平成12年)の時点で,「6年目の」「Bear」が世界的規模のレベルで販売を行っていることは述べられている。しかし,1995年(平成7年)当時にどのような状態であったかについては何も述べられていない。
(c)年別売上高一覧表(甲8)については,ここに記載されている数字が被告の売上げの数字であることすら不明であり,証明力を全く有していない書証である。
(d)審決は,上記(a)〜(c)の各証拠の記載から,被告商標が「いずれもアメリカ合衆国において本件商標の登録出願前から使用されていたこと,需要者は,印刷物や屋外広告によって同社が男・女性用外着等の製造販売会社であることを知っていたこと,1996年(平成8年)時点では,海外10カ国500社の選りすぐった小売業者との間で取引をする程の会社となっていたこと」(21頁11行〜15行)を認定している。
しかし,既に述べたとおり,本件商標の登録出願前から被告商標が使用されていたなどとは,上記各証拠のどこにも書かれていない。ましてや需要者が被告を外着の販売業者であることを知っていたなどとはいえない。
b本件商標の登録出願日以前に被告が被告商標を使用している証拠について(a)雑誌「THESOURCE」1995年(平成7年)11月号(甲20)には,「Bear」標章が付された「ヘアーバンド」,「スキー用ジャケット」,「リバーシブルジャケット」,「ヘアーバンド」等の商品を着用した男女の写真が掲載されている。
しかし,これは1995年(平成7年)11月時点の記事であり,本件商標の登録出願時である同年7月17日の時点での周知性を裏付けるものとはいえない。
(b)雑誌「asayan」1996年(平成8年)1月号(甲21)の2枚目には,「ニューヨークで超話題のストリートブランド「Bear」のダウンジャケット」という記載があるが,これも平成8年11月時点の記事にすぎない。
また雑誌「asayan」1996年(平成8年)2月号(甲21)の5枚目の宣伝広告欄には,「ニューヨーク・ハーレムの『KP』というアウター専門ショップのオリジナルブランドでもあるベアー。昨年ぐらいから,N.Y.のブラック達の間で異常に支持され出し,あまりの人気にMTVでも取り上げられるほど。一番人気のダウンウエアの他に,パーカーやトレッキングシューズもある本格アウトドアブランドである。」との記載がある。この記載は宣伝広告の効果を狙ったものであるから,文書の性質上内容についての信用性は低いといわざるをえない。また仮に内容が真実であったとしても,上記記載から読み取れるのは,「ベアー」というブランドが,ニューヨーク・ハーレムのアウター専門ショップのオリジナルブランドであり,1995年(平成7年)くらいから,ニューヨークの有色人種の間で人気になり,時期や内容は不明であるが,MTVで何らかの形で取り上げられたということだけである。したがって,1995年(平成7年)に人気が出始めたといっても,それはニューヨークのマンハッタン島の北部に位置するハーレムという極めて限られた地域についてであり,それも有色人種の間だけに限ったことである。
(c)雑誌「Boon」1996年(平成8年)2月号(甲9)の2枚目には,「昨年,ニューヨークのブラック達の間で大流行したのが,ブラック・ダウンジャケット。」「ブラック・ダウン大流行のきっかけとなったのは,アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。」等と記載されている。この記載も宣伝広告の効果を狙ったものであり,文書の性質上内容の信用性には疑問がある。また仮に内容が真実であったとしても,上記記載から読み取れるのは,ニューヨークの一部地域において,しかも少数派である有色人種に人気があったということだけである。
(d)雑誌「DNR」1996年(平成8年)10月14日発行(甲10)の3枚目には被告の「BEARUSA」標章等が使用された商品が記載されている。しかし,これも本件商標の登録出願時よりも後のことであり,この証拠から,1995年(平成7年)7月における被告商標の周知性を推認することなどできるものではない。
(e)「繊研新聞」1996年(平成8年)4月8日発行(甲41)によれば,「ベアー・U・S・A」の偽物が日本で大量に出回っている事態に対処するため,被告が真正品の対日輸出を今春今夏の期間中はいったん停止する旨の記事が記載されている。しかし,同記事からわかるのは,平成8年4月8日の時点で被告商品の偽物が我が国内で大量に出回っているという事実だけであり,本件商標の登録出願時において,アメリカ合衆国で被告商標が周知であったか否かとは何の関係もない。
(f)「繊研新聞」1996年(平成8年)4月11日発行(甲43)には,「現在日本市場で売られているBearU.S.A.のロゴが付いている商品は全て偽物です。」等の記載があるが,上記(e)の記事と同様に被告商標の周知性とは何の関係もない記載である。
(g)「繊研新聞」1996年(平成8年)4月25日発行(甲42)には,「アメリカの『ベアー』など海外ブランドの偽物を販売していた業者が摘発された。」等の記載があるが,やはり,本件とは何らの関係もない記載である。
(h)審決は,本件商標の登録査定日(1997年[平成9年]7月3日)以降の証拠として,雑誌「WWDTUESDAY」1997年(平成9年)7月15日発行(甲11)の1枚目右側及び3枚目,雑誌「seventeen」1997年(平成9年)9月号(甲12)の左側の抜粋頁(52頁),雑誌「Details」1997年(平成9年)9月号(甲14)の3枚目を引用している(23頁下7行〜24頁9行)。しかし,登録査定日(1997年[平成9年]7月3日)以後の雑誌の記事から,本件商標の登録出願時(1995年[平成7年]7月17日)におけるアメリカ合衆国での周知性まで推認しようとする趣旨であれば,許されるものではない。
c以上によると,次のようにいうことができる。
(a)被告は1994年(平成6年)に設立された会社であるが,本件商標の登録出願時(1995年[平成7年]7月17日)において,どの程度の店舗数,取引等をしていたかについては何ら証明されていない。
(b)1995年(平成7年)に,ニューヨークの一部地域しかも少数派である有色人種間で被告商標を付した商品が人気となったこと,そのきっかけにMTVで取り上げられたことは認められる。
しかし,「その異常な加熱ぶり」(審決24頁21行〜22行),「当時の米国のトレンドを反映するシンボルマーク(代名詞)的な役割を果たしていた」(審決24頁22行〜24行),「若者に対する独自のブランドアピールにおいて,請求人は成功を収めつつあった」(審決24頁24行〜25行)とする事実ないし評価は,審決が引用する証拠から読み取ることは全く不可能であり,先入観に基づく認定として誤りである。
(c)ニューヨークが著名な繁華街を多数擁し,ファッションやビジネス,ショッピング等の中心地あるいは著名な観光地として世界的によく知られていること自体,特に否定するつもりはない。
しかし,1995年(平成7年)当時,被告商標を付した商品は,マンハッタン島北部のハーレムという一部地域で,しかも有色人種間で人気があったにすぎない。そうであれば,観光客が被告の商品を買い求めたり,商談に及ぶ者が多数存在したとは考えられない。ニューヨークは他人種が錯綜し,ファッションや文化も多種多様なものが混在一体となって存在している。そして,ハーレム地域の有色人種間で人気が出たこと自体は,その後のファッション傾向をリードする意味を持つものであったのかも知れない。だからといって,同時期に,ニューヨークに滞在する市民や訪問客の多くが,被告商品ないし被告商標を知っていたなどということは考えられないことである。
(d)被告商標につき,本件商標の登録出願当時のアメリカ合衆国において周知性が認められるというのであれば,少なくとも同時期以前に被告商標を紹介する雑誌や新聞等の刊行物が多数存在しているはずであり,被告がそのような証拠を出すことは容易なはずである。被告がそのような証拠を提出できないこと自体,周知性を否定する有力な間接事実といえる。
d仮に甲8(被告の国別売上げ及び広告・トレードショーの費用の一覧表)の信用性が肯定されるとしても,同号証からわかるのは,被告の売上げが1994年(平成6年)から1996年(平成8年)にかけて上昇したという事実であり,だからといって,米国の需要者の間で被告商標が周知であったことまでが裏付けられるものではない。
甲8の記載内容を前提にするならば,1994年(平成6年)における「Advertising & Trade Show」(広告宣伝費)は,空欄になっており,1995年(平成7年)には,これが6918ドルになっている。このことから,1994年(平成6年)は広告宣伝をしていなかったが1995年(平成7年)に小規模の広告宣伝を始めたものと推測される。この程度の広告宣伝費で,本件商標の登録出願時(1995年[平成7年]7月17日)までに米国の需要者の間で被告商標が周知であったといえるか疑問である。
また, 甲8に よれば ,1 994 年(平成 6年)における「QUANTITIES BY PRODUCT TYPES-WORLDWIDE」(タイプ別の数量-世界)は,「Down Jacket」(ダウンジャケット)が2万個であり,1995年(平成7年)では,「Down Jacket」(ダウンジャケット)が11万0497個,「Parka」(パーカー)が1万0314個,「Shoes」(シューズ)が4000足,「Accessories」(アクセサリー)が4万個とされている。実際に売れた数量はこれよりも少ないものと推測されるが,1995年(平成7年)における米国での被告商標が周知性を基礎付ける数量には遠く及ばない。
e以上のとおり,本件商標の登録出願(1995年[平成7年]7月17日)の時点で,アメリカ合衆国において,被告商標が周知性を有していたと認定した審決の判断は誤りである。
fなお,日本において放送されたテレビ番組(乙4)が平成7年に放送されたものであるとしても,この番組は最先端の流行情報を紹介する番組であるから,多くの視聴者が知らないことを前提として被告商品を紹介しているのであり,被告商標が周知性を有することの根拠とはならない。
イ 取消事由2(原告の不正の目的に関する判断の誤り)(ア)審決は,甲68(原告の「新ブランドのご案内」,「ご報告」,「ブランドライセンスリスト」,「iadabati」の各パンフレット)及び甲75(「繊研新聞」2001年[平成13年]9月21日発行)を引用し,原告が本件商標を他人に使用させることを業務として行っていたことや被告商品の偽物が多く出回ったことなどを根拠に,原告が本件商標の被告登録出願時において,不正の目的があったと認定している(26頁4行〜27頁下4行)。
しかし,本件商標の登録出願以降原告がどのような業務を行ってきたかということと,本件商標の登録出願時に不正の目的を有していたかということとは明確に区別されなければならない。本件商標の登録出願以降,原告の他の登録商標が無効になり又は取り消されたからといって,そのことから,本件商標の登録出願時の主観的事情についてまで推認してしまうのは明らかに行き過ぎである。
また,本件商標とは何らの関係も有さない他の偽造事件の事実から,本件についての原告の主観的事情を類推することも,許されるものではない。
被告が審決で提出した証拠からは,原告の本件商標の登録出願時(平成7年7月17日)における不正の目的を認定することはできないものである。
(イ)原告が,平成7年7月17日に本件商標の登録出願をした当時,被告商標ないし被告商品は,ニューヨークの一部地域の有色人種層の間で人気が出てきたというにとどまっており,原告には到底知りえない内容であった。
原告は,本件商標の登録出願時において被告商標の存在を知らず,自ら使用する意思を持って本件商標の登録出願をした。原告は,「紳士服・婦人服・子供服の製造販売」を目的として設立された会社であり,最初から商標権等の管理業務を行っていたものではない。
本件商標が被告の商標と結果的に類似していたのは偶然にすぎない。
「Bear」の標章は,一般的に広く知られ,商標登録されている。原告も,平成7年3月17日に「PASCBEAR」と「パスクベアー」を2段書きにした商標を出願している。原告がこれらの一般的に用いられている「Bear」の標章を参考に本件商標を思いついたとしても何ら不自然なことではない。
(ウ)したがって,原告が本件商標の登録出願時(平成7年7月17日)に不正の目的を有していたことを認定している審決の判断は誤りである。
2 請求原因に対する認否請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3被告の反論(1) 取消事由1に対しア各種の商品,とりわけ本件商標の指定商品を含むファッションの分野においては,その商品の広告・売上げの多寡にかかわらず,ある事象・エピソード等(例えば俳優,歌手等の有名人が身に着け,それが新聞,雑誌,テレビで報道されること等)がきっかけとなってその商品が突然大きなブームとなり,一気にブレークして広く知られるに至ることがあることは,よく知られているところである。
イ被告は,その前身であるK.P.オリジナルから継続して被告商標を使用して商品を販売しており,1994年(平成6年)には,全米の百貨店及び選び抜かれた小売アウトレットで販売されるようになった。全米の33州とグアム,プエルトリコに合計431店舗を有する百貨店であるメイシーズでは,1994年(平成6年)から目立った売上げを上げ,1995年(平成7年)には,被告はメイシーズから主要取引先の地位を与えられた。1995年(平成7年)2月には,米国における人気音楽番組「MTV」で取り上げられ,複数のレコーディングアーティストや著名な衣装監督から使用の申入れがされ,複数のテレビ番組で使用された。また,「GQ」,「THESOURCE」,「VIBE」等の全国的な出版物でも取り上げられた。
日本においても,平成7年11月ころ放送のテレビ番組において,「Bear」ブランドのダウンジャケットが前年にニューヨークで火がついて有名になったとして取り上げられ(乙4),また,平成8年の初めには,「Bear」ブランドのダウンジャケットが,米国において人気音楽番組「MTV」で取り上げられて人気を得ていることが,雑誌で紹介された(雑誌「Boon」1996年[平成8年]2月号[甲9])。
ウ被告の売上げは,その人気が一気にブレークしたことにより,製造が間に合わないほどに急増した(アメリカ合衆国,日本での売上げは,1994年[平成6年]には,86万1206ドルであったのに対して,1995年[平成7年]には,904万9490ドルと10倍以上にも跳ね上がり,さらに1996年[平成8年]には,2550万2784ドルと,2.8倍強にも達している[年別売上高一覧表(甲8)])。そして,そのことに目を付けた悪質業者による偽物商品が大量に出回ったため,平成8年4月ころには偽商品対策として日本への出荷停止措置を執らざるを得ない程の事態(「繊研新聞」1996年[平成8年]4月8日発行[甲41])となり,同年4月には偽ブランド品を販売していた業者が逮捕されるといった事実も発生している(「繊研新聞」1996年[平成8年]4月25日発行[甲42])。
エ以上を総合してみれば,被告商標が本件商標の登録出願(1995年[平成7年]7月17日)前に,アメリカ合衆国はもとより日本においても著名性を獲得していたといい得るところであって,本件商標の登録出願の時点で,アメリカ合衆国において,被告商標が周知性を有すると認定した審決の判断に誤りはない。
(2) 取消事由2に対しア商標法は「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」(1条)ものであり,同法において商標登録を受けることができる商標とは「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」(3条)であることからすると,登録出願時以降の登録出願・使用の実態から,登録出願時の出願人の商標出願の目的を推認(認定)することは違法とはいえないと解される。
これを本件についてみると,被告の商号に由来する被告商標が周知性を得たころに,日本において,日本国内の業者へのライセンスを主たる業とする原告が,「アメリカ合衆国」を意味する「US」と「熊」を意味する「BEAR」とを結合し,被告商標と極めて近似した構成態様よりなる本件商標を採択したことは,極めて不自然であって単なる偶然とはいい難く,むしろ,本件商標の登録出願前から既にアメリカ合衆国において著名となり,我が国でも相当程度知られていた被告商標の存在を知っていながら,被告商標の構成中「USA」を同じ意味の「US」にし,また,「BEAR」と先後を入れ替えたにすぎない本件商標を,不正の目的を持って意図的に採択して登録出願し,登録を得たといわざるを得ないものである。
このことは,本件商標の登録後に原告が,被告商標と相紛れるおそれがある程度に近似した商標(審決31頁〜33頁記載の被請求人商標1〜10)を出願,登録し,ライセンスの広告(甲75[「繊研新聞」2001年(平成13年)9月21日発行])をしていることからも,推認(認定)し得るところである。
イ原告の商号自体も著名なファッションデザイナー「イブ・サンローラン」(YvesSaintLaurent)の名称の著名な略称,あるいはその名を取った商標の著名な略称「サンローラン」(SaintLaurent)をもじって,「Saint」を英語読みに「セント」と表示し,「Laurent」はそのまま「ローラン」として「株式会社セント・ローラン」の商号としたものと誰もが容易に認識し得るものであること,さらに原告は,著名な商標に極めて近似した構成・態様よりなる商標「IDUNHILLI」(「DUNHILL」に近似),「ILANCELI」(「LANCEL」に近似),「IARMANI」(「ARMANI」に近似),「iadabati」(「adabat」に近似)等を出願,登録し,これらをライセンスする業務を日常的に展開していることをも考慮すれば,被告商標と極めて近似した構成・態様よりなる本件商標を採択したことは,極めて不自然であって単なる偶然とはいい難く,本件商標を不正の目的を持って意図的に採択して出願し,登録を得たというべきものである。
ウしたがって,原告が本件商標の登録出願(平成7年7月17日)時に不正の目的を有していたことを認定している審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。
審決は,前記のとおり,原告が登録を受けた本件商標は,その出願(平成7年7月17日)の時点で,被告の業務に係る商品を表示するものとしてアメリカ合衆国において需要者の間に広く認識されている被告商標と類似し,かつ原告により不正の目的をもって使用されているから,商標法4条1項19号に該当するとしたものであるが,原告は上記要件の具備を争うので,以下判断する。
2取消事由1(被告商標の周知性についての判断の誤り)について(1)乙1(被告代表者Aの宣誓供述書)により被告の年別売上高等の一覧表であると認められる甲8によれば,被告による被告商標を付した商品の売上高,広告宣伝費用,売上数量は,次のとおりであると認められる。
ア 日本とアメリカ合衆国における総売上高1994年(平成6年)86万1206ドル1995年(平成7年)904万9490ドル1996年(平成8年) 2550万2784ドル1997年(平成9年) 2022万3754ドルイ 広告宣伝費用1995年(平成7年)6918ドル1996年(平成8年)2万7058ドル1997年(平成9年)52万2536ドルウ 売上数量1994年(平成6年) ダウンジャケット2万1995年(平成7年) ダウンジャケット 11万0497パーカ1万0314靴4000アクセサリー4万1996年(平成8年) ジャケット5万5082パッドジャケット4555ダウンジャケット 29万6973パーカ1万8054靴3万80001997年(平成9年) ジャケット8万1807パッドジャケット1万8816ダウンジャケット 27万0183トップス2400ティーシャツ6000靴2万3408アクセサリー1万1190(2)ア乙2の1〜8(被告代表者Aの1995年[平成7年]10月12日付けの宣誓供述書及びその添付資料),乙3の1・2(V&Jストアズd/b/aライトマンの副社長Bの宣誓供述書及びその添付資料)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)被告は,1994年(平成6年)にアメリカ合衆国ニュージャージー州法に基づき設立された会社である。
被告設立より前に,K.P.オリジナルコーポレーションが「BEAR」及び「BEARMOUNTAIN」の商標を使用して衣類及び履物の製造販売を行っていた。被告は,設立後,K.P.オリジナルコーポレーションの事業を引き継いで,被告商標を付した衣類及び履物の製造販売を行ってきた。
(イ)1995年(平成7年)2月に,アメリカ合衆国の音楽番組であるMTVにおいて,被告のダウンジャケットが取り上げられた。
(ウ)被告は,1994年(平成6年)の売上げが良かったために,アメリカ合衆国内に多くの店舗を展開している百貨店であるメイシーズから,1995年(平成8年)に「主要取引先」に認定され,「ベアーショップ」が企画された。
イ乙2の1の4頁〜5頁(訳文3頁)には,1994年(平成6年)の販売高は100万ドル超であり,1995年(平成7年)のこれまでの販売高は,アメリカ合衆国において300万ドルであるが,これには,1000万ドルを超すと予測している1995年(平成7年)における残り物セールの計画は含まれていない,1995年(平成7年)に日本においてこれまで300万ドル超の売上げを達成しており,更に200万ドルの売り上げを予測している,との記載がある。ここに記載されている1994年(平成6年)の売上高は,上記(1)で認定した甲8に基づく同年の売上高と一致しないが,その差は大きくないし,また,上記の1000万ドルを超す残り物セールの計画も,宣誓供述書が書かれた時点における計画にすぎないから,上記(1)で認定した甲8に基づく売上高との対比から直ちに乙2の1の記載全体を信用することができないということにはならない。
上記アで認定した事実は,後記(3)〜(5)の事実とも符合するので,信用することができるものである。
(3)ア 一方,日本の雑誌には,次のような記事がある。
(ア) 「Boon」1996年(平成8年)2月号(甲9)の2枚目「昨年,ニューヨークのブラック達の間で大流行したのが,ブラック・ダウンジャケット。ノースフェイス,マーモットなどアウトドア系のビッグブランドと肩を並べるほど,広く認知されたのが,この『Bear』だ。ブラックダウン大流行のきっかけとなったのは,アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。大ヒットしたのは『Bear』のモデル『9100M』。」(イ)「asayan」1996年(平成8年)1月号(甲21)の2枚目「ニューヨークで超話題のストリートブランド『Bear』のダウンジャケット」「NYの黒人の間で火がつきだしたストリートブランド『ベアー』が日本に緊急上陸。この冬絶対に目の離せないダウンJKになるでしょう。」(ウ) 「asayan」1996年(平成8年)2月号(甲21)「ニューヨーク・ハーレムの『KP』というアウター専門ショップのオリジナルブランドでもあるベアー。昨年ぐらいからN.Y.のブラック達の間で異常に支持され出し,あまりの人気にMTVでも取り上げられるほど。一番人気のダウンウエアの他に,パーカやトレッキングシューズもある本格アウトドアブランドである。」(5枚目)「NYの黒人の間で火がつきだしたストリートブランド『ベアー』が日本に緊急上陸。前号で好評だったため,今回はヘアバンド4つを追加して大放出。」(6枚目)イ乙4(日本のテレビ番組を録画したCD-R)及び弁論の全趣旨によれば,平成7年11月に日本テレビで放映された「輝け!噂のテンベストSHOW」において,「もはや冬のファッションアイテムの定番となったダウンジャケット。そのマーケットに今年登場するやいなや,たちまち話題をさらった新ブランドがありました。」,「それがベアーのダウンジャケットなのです。」,「その人気は昨年ニューヨークでまず火がつきました。」,「その過熱ぶりは社会現象ともなったのです。」などのナレーションと共に,被告のダウンジャケットが紹介された。
(4) また,外国の雑誌には,次のような記事がある。
ア「SPORTSWEAR(NORTHAMERICA)INTERNATIONAL」誌の「WHO‘SWHO」102頁(甲11)の1枚目左側には,「BearUSA,INC.」について,次のとおり記載されている(訳文は,審決20頁9行〜24行)。
「『Bear』はニューヨーク市の『theHongfamilyandUrbanSalesandMarketingInc.』によって4年前に設立され,それ以来,5大陸10カ国500社からなる選りすぐった小売業者との間で取引を拡大してきた。1996年(平成8年)の対外売上高は10ミリオンドル。『BearUSA』は2000年(平成12年)までに100ミリオンドルの売上高を達成するため,積極的な市場戦略を展開している。商品の取引先はデパートやアウトドア店に止まらず,先進ファッションの小規模ブティックにまで至っている。都会での広告だけに止まらず,同社は,1996年(平成8年)に,TVの連続コメディーやコンサートツアー用品などが置かれているニューヨーク市の『Macy’sandParagonOutdoorStore.』の店舗内にも『Bearshops』を立ち上げた。ファッションやアウトドア用品の広告には,アパレルや靴の会社がよく使用するような販売促進用の広告宣伝カーが用いられる。1997年(平成9年)秋までに『Bear』は,その商品を様々な種類の革製品にまで拡大し,都会風のスタイルと合致するように技術面を磨いていくことだろう。」イ「SPORTSWEAR(NORTHAMERICA)INTERNATIONAL」誌の「WHO‘SWHOINTHEAMERICANSPORTSWEARMARKET2000」(2000年発行)106頁(甲16)には,「BearU.S.A.」について,次のとおり記載されている(訳文は,審決20頁下10行〜21頁2行)。
「6年目の『Bear』は若者向けカジュアルや活動的な外着市場で安定している。会社をアピールするために,スポーツウェア,デニム,靴,帽子,バッグ,下着に35ミリオンドルを注ぎ込んでいる。米国中に特別な取引先やチェーンを有するほか,スポーツ店やデパートといった取引先も有する。『Bear』は世界的規模のレベルで販売を行っている。男・女性用外着の製造会社であることは印刷物や屋外広告によって需要者に知られている。将来的な商品展開としては『ダウン(ジャケット)』の増強と新規の『防水着』への拡大が挙げられる。『Bear』の従来からの方向性の商品であるアウトドアスポーツ,テクノスポーツ及びストリートスポーツ用外着は男女,ジュニア,青年,子供用サイズが揃っている。同社は都会の外着用品の会社として『Albert,RobertandThomasHong』のファミリーメンバーによって設立された。」ウまた,次の各雑誌には,被告商標が使用された商品が記載されている。
(ア)雑誌「THESOURCE」1995年(平成7年)11月号(甲20)(イ)雑誌「DNR」1996年(平成8年)10月14日発行(甲10)の3枚目(ウ)雑誌「seventeen」1997年(平成9年)9月号(甲12)の左側の抜粋頁(52頁)(エ)雑誌「Details」1997年(平成9年)9月号(甲14)の3枚目(5) さらに,「繊研新聞」には,次のような記事及び広告がある。
ア 「繊研新聞」1996年(平成8年)4月8日発行(甲41)の記事「米国のベアー・U・S・A社(本社ニュージャージー州)は日本における知的財産権保護の活動を強める。同社のカジュアルブランド『ベアー・U・S・A』の偽物が日本で大量に出回っている事態に対処するため,真正品の対日輸出を今春夏物の期間中はいったん停止する。また広報活動を強めるとともに,偽物業者に対しては法的手段を準備中である。…ベアー・U・S・Aは一昨年から販売して以来,米国や日本などで人気を集めているカジュアルウエア。ファッシュン性と高い品質をそなえ,マーケティング戦略に基づいて各市場に合った商品を販売しているのが好調の理由である。昨秋冬商戦では日本でもダウンジャケットやアウターウエアがヒットした。」イ「繊研新聞」1996年(平成8年)4月11日発行(甲43)の広告「BearU.S.A.からの警告」「現在日本市場で売られているBearU.S.A.のロゴが付いている商品は全て偽物です。BearU.S.A.は日本で偽物が氾濫することが予測されましたので,昨年1995年の暮れから日本へは一切出荷を停止し,並行輸出に関しても細心の注意を払ってまいりました。依って現在日本市場に出ているBearU.S.A.のラベル及びロゴが付いている商品は全て偽物と言ってよいかと思います。」ウ「繊研新聞」1996年(平成8年)4月25日発行(甲42)の記事「…アメリカの『ベアー』など海外ブランドの偽物を販売していた業者が摘発された。」(6)上記(1)〜(5)の事実によれば,?@被告は,1994年(平成6年)にアメリカ合衆国において設立され,同年からK.P.オリジナルコーポレーションの事業を引き継いで被告商標を使用したダウンジャケット等の販売をしてきたこと,?A1995年(平成7年)2月にはアメリカ合衆国の音楽番組であるMTVにおいて被告のダウンジャケットが取り上げられたこと,?B1994年(平成6年)の被告商標を使用したダウンジャケットの売上げが良かったために,被告は,アメリカ合衆国内に多くの店舗を展開している百貨店であるメイシーズから1995年(平成7年)に「主要取引先」に認定され,「ベアーショップ」が企画されたこと,?C日本でも,平成7年の秋冬物で,被告商標を使用したダウンジャケットやアウターウエアがヒットし,被告の製品と似た製品が販売されるようになったこと,以上の事実が認められる。
以上の事実によれば,被告商標を使用したダウンジャケットは,平成6年から平成7年にかけての秋冬のシーズンにアメリカ合衆国においてヒットし,広く知られるようになったものと認められるから,被告商標は,本件商標の登録出願日(1995年[平成7年]7月17日)当時において外国たるアメリカ合衆国における需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
(7)なお,原告は,本件商標の登録出願日当時,被告商標を付した商品は,マンハッタン島北部のハーレムという一部地域で,しかも有色人種間で人気があったにすぎないと主張するが,上記の(1)〜(5)の認定事実によれば,被告商標を付した商品の人気が,原告が主張するような限定的なものであったということはできず,上記のとおりアメリカ合衆国において広く知られていたものと認められる。
また,上記(1)認定のとおり,1994年(平成6年)の被告の売上げは,ダウンジャケットのみであって,その額は86万1206ドルであり,かつ同年に被告が広告宣伝をしたとも認められない。しかし,被告の売上げは,上記(1)認定のとおり,1995年(平成7年)には904万9490ドルと大幅に増えているのであって,このことは,被告商標を使用したダウンジャケットが平成6年から平成7年にかけての秋冬のシーズンにおいてにヒットし,広く知られるようになったためであると推認することができ,1994年(平成6年)の被告の売上げが86万1206ドルであり,同年に被告が広告宣伝をしたと認められないことが,上記(6)の認定を左右するものではない。
(8) 以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(原告の不正の目的に関する判断の誤り)について(1)本件商標は,「USBEAR」というもので,アメリカ合衆国を意味する「US」と熊を意味する「BEAR」を組み合わせたものとして認識することができる。
これに対し,被告商標のうち,「BEARUSA」商標は,「BEARU.S.A」・「BearUSA」とも表現されているが,いずれも熊を意味する「BEAR」とアメリカ合衆国を意味する「USA」を組み合わせたものである。
以上のとおり,本件商標と被告商標のうちの「BEARUSA」商標とは,熊を意味する「BEAR」とアメリカ合衆国を意味する「US」又は「USA」を組み合わせた点において極めて類似するのであって,前記2のとおり,被告商標は,本件商標の登録出願日(1995年[平成7年]7月17日)当時アメリカ合衆国における需要者の間に広く認識されていたことをも総合考慮すると,原告が「BEARUSA」商標を知ることなく本件商標を出願したとは考えがたい。
この点につき,原告は,本件商標の登録出願時において被告商標の存在を知らなかった,「Bear」の標章は,一般的に広く知られ,商標登録されているから,原告がこの一般的に用いられている「Bear」の標章を参考に本件商標を思いついたとしても何ら不自然なことはない,原告は平成7年3月17日に「PASCBEAR」と「パスクベアー」を2段書きにした商標を出願している,と主張する。なるほど,証拠(甲98,100,103)によれば,?@「Bear」を含む商標は,被告商標以外にも,多くの商標が出願登録されていること,?A「テディベア(Teddybear)」という名称の熊のぬいぐるみがよく知られていること,?B「GoldenBear」という名称のカジュアルウエアーに関する商品が存すること,?C原告は平成7年3月17日に「PASCBEAR」と「パスクベアー」を2段書きにした商標を出願していることが認められる。また,証拠(甲80〜94)によれば,登録商標を構成する文字に「US」又は「ユーエス」を付した別の商標が多く登録されていることが認められる。しかし,これらの事実は,「BEAR」と「US」又は「USA」を組み合わせた商標に関する事実ではなく,「BEARUSA」商標を知ることなく本件商標を出願したとは考えがたいとの上記認定を左右するに足りるものではない。
また,以上述べたところに照らすと,「BEARUSA」商標を知ることなく本件商標の登録出願をした旨の原告代表者Cの陳述書(甲102)における記載及び原告代表者尋問における供述は,にわかに措信できない。
(2)ア一方,証拠(甲2〜6,53〜62,74,76,77)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告が有する各商標登録に関して,次の事実が認められる。
(ア)被告は,平成7年5月2日,日本国特許庁に下記商標登録出願をした(甲3)。
記・商標 ・指定商品第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,履物」(イ)被告による上記(ア)の商標登録出願に先立つ平成3年10月16日に,株式会社フルーツが,下記商標登録出願をし,平成6年5月31日に商標登録された(商標登録第2667318号。甲2)。
記・商標 ・指定商品第17類「被服,布製見回品,寝具類」被告は,株式会社フルーツと交渉して,上記商標登録第2667318号商標の譲渡を受け,平成8年7月8日,その旨の移転登録がされた(甲2)。
(ウ)その後,平成11年12月17日に,被告の上記(ア)の商標登録出願について,商標登録がされた(商標登録第4345512号。甲3)。
(エ)被告は,平成7年7月24日,日本国特許庁に下記商標登録出願をし,平成12年4月14日に商標登録された(商標登録第4376738号。甲4)。
記・商標 ・指定商品第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,ヘッドバンド」(オ)被告は,平成8年3月6日,日本国特許庁に下記の各商標登録出願をし,平成12年9月22日に商標登録がされた(商標登録第4419411号及び商標登録第4419412号。甲5及び6)。
記a商標登録第4419411号(甲5)・商標 ・指定商品第25類「アメリカ製のパーカ,アメリカ製のジャケット,アメリカ製のティーシャツ,アメリカ製のパンツ,その他のアメリカ製の下着,アメリカ製のジャージー生地からなる長袖シャツ,アメリカ製のデニム生地からなるズボン,アメリカ製のデニム生地からなるその他の被服,アメリカ製の防寒用帽子,アメリカ製の履物」b商標登録第4419412号(甲6)・商標 ・指定商品第25類「パーカ,ジャケット,ティーシャツ,パンツ,その他の下着,ジャージー生地からなる長袖シャツ,デニム生地からなるズボン,デニム生地からなるその他の被服,防寒用帽子,履物」(カ)被告は,平成12年12月27日,日本国特許庁に下記商標登録出願をし,平成18年9月8日に商標登録された(商標登録第4985520号。甲7,審決3頁)。
・商標 ・指定商品第25類「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」(キ)一方,原告は,前記のとおり,平成7年7月17日に,本件商標登録の出願をしたが,さらに,平成9年1月21日にアメリカ合衆国法人である「パスクベアカンパニ」が日本国特許庁に出願し平成10年4月17日に登録された下記の商標登録(商標登録第4137882号)に係る商標権を譲り渡け,平成12年5月17日その旨の登録がされた(甲53)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」(ク)原告は,平成11年2月15日下記商標登録出願をし,平成11年12月17日に商標登録がされた(商標登録第4345622号。甲54)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」上記商標登録に対して,被告が,平成13年11月19日に不正使用(商標法53条1項違反)を理由とする取消し審判(取消2001-31307号)を請求したところ,その登録を取り消す旨の審決がされた。原告は,同審決に対して審決取消訴訟を提起したが,同取消訴訟事件(平成15年(行ケ)第375号)において請求棄却の判決がされ,さらに,その判決に対する上告及び上告受理申立事件において上告が棄却され,上告受理申立てが不受理となったので,取消審決が確定し,上記商標登録は抹消された(審決7頁)。
(ケ)原告は,平成12年4月21日下記商標登録出願をしたが,拒絶査定がされ,それに対する不服審判請求(不服2004-22100号)をした(甲55)が,不成立審決がされ,拒絶査定が確定した(審決8頁)。
記・商標 ・指定商品第25類「アメリカ製の被服」(コ)a原告は,平成12年12月1日下記商標登録出願をし,平成13年9月14日に商標登録がされた(商標登録第4507125号。甲56)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊 衣 服 , 運 動 用 特 殊靴」b原告は,平成13年2月8日下記商標登録出願をし,平成14年1月18日に商標登録がされた(商標登録第4536505号。甲57)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」c上記各商標登録に対しては,平成16年2月24日に無効審判請求(無効2004-35107号及び2004-35108号)がされ,平成16年11月30日に,これらの登録商標は上記(カ)の被告の商標と類似しており,これらの商標登録は商標法4条1項15号に違反してされたから,無効である旨の審決がされた。原告は,同審決に対して審決取消訴訟を提起したが,同取消訴訟事件(平成17年(行ケ)第10361号及び第10362号)において請求棄却の判決(甲76,77)がされた。さらに,これらの判決に対する上告及び上告受理申立事件において上告が棄却され,上告受理申立てが不受理となったので,無効審決が確定し,上記各商標登録は抹消された(審決8頁〜9頁)。
(サ)原告は,平成14年2月22日下記商標登録出願をし,平成15年2月21日に商標登録がされた(商標登録第4646915号。甲58)。
記・商標 ・指定商品第25類「アメリカ製の被服,アメリカ製のガーター,アメリカ製の靴下止め,アメリカ製のズボンつり,アメリカ製のバンド,アメリカ製のベルト,アメリカ製の履物,アメリカ製の仮装用衣服,アメリカ製の運動用特殊衣服,アメリカ製の運動用特殊靴」上記商標登録に対しては,平成17年5月27日に無効審判請求(無効2005-89076号)がされたところ,この商標登録は商標法4条1項15号に違反してされたから無効である旨の審決がされ,同審決は確定した。その結果,上記商標登録は抹消された(審決9頁) 。
(シ)原告は,平成15年1月15日下記商標登録出願をし,平成16年4月9日に商標登録がされた(商標登録第4762834号。甲59)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」上記商標登録に対しては,平成17年3月2日に無効審判請求(無効2005-89030号)がされたところ,平成17年11月9日に,この商標登録は商標法4条1項15号に違反してされたから無効である旨の審決がされ,同審決は確定した。その結果,上記商標登録は抹消された(審決9頁)。
(ス)原告は,平成15年2月13日下記商標登録出願をし,平成16年4月9日に商標登録がされた(商標登録第4762838号。甲60)。
記・商標 ・指定商品第25類「アメリカ製の被服,アメリカ製のガーター,アメリカ製の靴下止め,アメリカ製のズボンつり,アメリカ製のバンド,アメリカ製のベルト,アメリカ製の履物,アメリカ製の仮装用衣服,アメリカ製の運動用特殊衣服,アメリカ製の運動用特殊靴」上記商標登録に対しては,平成17年2月24日に無効審判請求(無効2005-89025号)がされたところ,平成17年11月9日に,この登録商標は,上記(カ)の被告の商標と類似しており,この商標登録は商標法4条1項15号に違反してされたから,無効である旨の審決がされた。原告は,同審決に対して審決取消訴訟を提起したが,同取消訴訟事件(平成17年(行ケ)第10833号)において請求棄却の判決(甲74)がされ,同判決は確定したので,上記商標登録は抹消された(審決10頁)。
(セ)原告は,平成15年6月27日下記商標登録出願をし,平成16年4月30日に商標登録がされた(商標登録第4768545号。甲61)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」上記商標登録に対しては,平成17年3月16日に無効審判請求(無効2005-89039号)がされたところ,平成17年10月31日に,この商標登録は商標法4条1項15号に違反してされたから無効である旨の審決がされた。原告は,同審決に対して審決取消訴訟を提起したが,同取消訴訟事件(平成17年(行ケ)第10829号)において請求棄却の判決がされ,同判決は確定したので,上記商標登録は抹消された(審決11頁)。
(ソ)原告は,平成15年1月15日下記商標登録出願をし,平成16年4月9日に商標登録がされた(商標登録第4762835号。甲62)。
記・商標 ・指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」イそして,証拠(63〜65,67〜75,79,97,102,原告代表者C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)原告は,昭和62年1月5日に設立された,「紳士服・婦人服・子供服の製造販売」,「キャラクター商品(個性的な特徴や名称を有している人物,動物等の画像を付けたもの)の企画及び著作権,商標権,意匠権の管理業務」,「特許権,実用新案,著作権,商標権,意匠権の保有,売買」等を目的とする株式会社である。
(イ)原告は,設立当初は,Tシャツやポロシャツを自社で製造して販売していたが,平成5年ころから,Tシャツやポロシャツを外注して製造し,販売するようになった。
また,原告代表者Cは,平成6年ころから,外国の有名な商標に類似する商標登録出願(「GAP」,「POLOIBEALL」,「PASCADIDAS」,「BI-WAYADIDAS」など)をするようになった。
(ウ)原告は,本件商標の登録出願日(平成7年7月17日)当時においても,Tシャツやポロシャツを外注して製造し,販売しており,本件商標をTシャツやポロシャツに付して販売していた。
しかし,原告は,平成8年ころから,広く知られたブランドに類似する標章の使用を他社に許諾して,その代金を得ることを業とするようになり,自ら商品を製造販売することはなくなった。
原告は,本件商標や上記ア記載の原告が有する商標についても,ライセンシーを募集していた。
(エ)原告は,平成12年1月24日に,株式会社岐阜武に対し,上記ア(ク)の商標(商標登録第4345622号)の使用を許諾した。
被告は,株式会社岐阜武に対し,上記ア(ア)及び(オ)の各商標(商標登録第4345512号,第4419411号及び第4419412号)に係る商標権に基づいて,差止め及び損害賠償を請求する訴訟を提起し,一部の請求が認められた。
(オ)原告が他社に使用を許諾したり,「ブランドライセンスリスト」に掲載して使用許諾先を求めていた商標の中には,取消決定や無効審決によってその登録が抹消されたものが複数ある(平成8年8月26日出願に係る商標登録第4101024号「ILANCELI」,平成8年8月21日出願に係る商標登録第4101020号「IDUNHILLI」など)。
ウ上記イの事実からすると,原告は,本件商標の登録出願日(平成7年7月17日)当時において,広く知られたブランドに類似する標章の使用を他社に許諾して,その代金を得ることを業としていたとまで認めることはできない。
しかし,?@前記2のとおり,被告商標は,本件商標の登録出願日(1995年[平成7年]7月17日)当時アメリカ合衆国における需要者の間に広く認識されていたものであって,前記(1)のとおり,原告が,「BEARUSA」商標を知ることなく本件商標を出願したとは考えがたいこと,?A上記イのとおり,原告代表者Cは,平成6年ころから,外国の有名な商標に類似する商標登録出願をしていること,?B上記イのとおり,原告は,本件商標をTシャツやポロシャツに付して販売していたこと,?Cその後,原告は,上記イのとおり,本件商標について,ライセンシーを募集していたこと,?D原告は,本件商標の登録出願後,上記ア(ク)〜(セ)のとおり,被告商標に類似する複数の商標登録出願をし,拒絶査定がされるか,登録されても無効となったり,不正使用(商標法53条1項違反)を理由として商標登録を取り消されていることが認められる。
そうすると,原告は,本件商標を被告の「BEARUSA」商標と類似する紛らわしい商標として,自ら使用することによって,被告の信用を利用して利益を得るために本件商標の登録出願をしたものと推認することができるから,原告には「不正の目的」があったということができる。
(3) 以上のとおり,原告主張の取消事由2も理由がない。
4 結語よって,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
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