• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 指定商品 /  称呼(称呼類似) /  禁止権 /  類似商標 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 19年 (ワ) 30807号 商標権移転登録抹消登録請求事件
東京都北区<以下略>
原告アイティティ国際電電株式会社
同訴訟代理人弁護士戸田等 東京都港区<以下略>
被告株 式会社ウィルコム
同訴訟代理人弁護士田辺邦子
同 植松祐二
同訴訟復代理人弁護士竹内久美子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2009/02/05
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,別紙商標目録1記載の登録商標について,別紙登録目録記載の登録の抹消登録手続をせよ。
第2事案の概要本件は,原告が被告に対し,原告から被告に対する登録商標の移転登録の原因行為となった原告と被告との間の契約について,錯誤無効又は詐欺取消しを主張して,商標権に基づき移転登録の抹消登録手続を求める事案である。
1前提となる事実(1)当事者原告は,かつて,PHS(Personal Handyphone System,以下同じ。)に2よる携帯電話事業等を行っていた株式会社である。(弁論の全趣旨)被告は,現に,PHSによる携帯電話事業等を行っている株式会社である。
(弁論の全趣旨)(2)原告と被告との間の契約原告と被告は,平成19年3月9日,「登録商標一時譲渡契約書」と題する書面(以下「本件契約書」という。)をもって,要旨,次のとおりの条項の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。(争いのない事実,甲7,弁論の全趣旨)「第1条(目的)本契約は、乙〔判決注・被告,以下同じ。〕が商標登録を受けようとする商標(I=PHS)の出願に、甲〔判決注・原告,以下同じ。〕が協力することを目的とする。」「第2条(本件商標)甲は、本契約有効期間中、以下に表示される甲の商標(以下、「本件商標」という。)を無償で乙に一時譲渡することに同意する。
(1)登録番号:商標登録第4398047号(2)称呼:「アイピッチ」(3)商品及び役務の区分並びに指定商品:第9類簡易携帯電話機」「第3条(譲渡手続き及び返却)乙は、前条に基づき甲から一時譲渡された本件商標を遅くとも本契約有効期間の満了日までに甲に返却するものとする。
2.前条並びに本条前項に基づく本件商標の移転登録に必要な一切の手続きは別途甲より提出される譲渡証書及び単独申請承諾書に基づき全て乙の費用負担で行うものとし、甲はこれに協力するものとする。
3.第1項に基づき乙が本件商標を甲に返却しようとするときは、乙はその旨を甲に書面で通知し、甲が返却手続き開始の同意を書面で乙に通3知することにより、乙は返却手続きを開始するものとする。」「第4条(契約有効期間)本契約は、2007年3月1日に有効となり、2009年2月29日を以て終了する。ただし、契約期間の満了を待たず乙が前条各項に基づき本件商標を甲への移転登録を完了した場合は、当該移転登録の日をもって本契約は終了したものとみなす。
2.〔省略〕3.〔省略〕」「第5条(禁止権不行使)甲及び乙は、現在並びに将来、自己の商標権の使用について相手方より異議申し立てを受けないものとする。
2.前項は、本契約有効期間満了後も有効とする。」(3)登録商標と移転登録別紙商標目録1記載の登録商標(本件契約2条所定の「本件商標」と同じ。
以下「本件商標」という。)について,原告から被告に対し,平成19年5月1日受付をもって,別紙登録目録記載の移転登録(以下「本件登録」という。)が経由されている。(争いのない事実)(4)被告の登録商標被告は,現在,別紙商標目録2記載の各登録商標(以下「被告商標」という。)を保有している。(乙5の1・2,弁論の全趣旨)2争点(1)錯誤無効の成否(2)詐欺取消しの成否第3争点に関する当事者の主張1争点(1)〔錯誤無効の成否〕について〔原告の主張〕4(1)原告は,本件契約の締結にあたり,被告の法務知財部長のAらから,真実は,本件契約に基づき本件商標につき移転登録をするつもりであるのに,その意図を秘して,本件契約書は「特許庁に対する単なる疎明資料である」,「名義の移転はないが,『I=PHS』の商標登録申請を行うにあたり,社内稟議決裁を得るための補足資料として必要である」,「ITTに対してネットワークの協力を行うにあたり,上司や組織内部で有利に説得展開を図るために必要である」にすぎず,移転登録をすることはない,との虚偽の説明を受け,原告において,上記書類がそのような目的にのみ使用され,移転登録はされないものと誤信して,本件契約を締結した。
また,原告は,本件契約の締結にあたり,Aらから,真実は,原告がその次期商品である3次元動画伝送サービスを行う際,被告がそのネットワークを原告に全面的に開放,利用させ,協力する意思がないにもかかわらず,その意思がある旨の説明を受け,原告において,そのような協力が得られるものと誤信して,本件契約を締結した。
このような原告が本件契約に応じた趣旨は,本件契約を締結する際に,原告の動機として被告に表示され,本件契約の要素となっている。
ところが,被告は,上記のような説明に反して,本件契約に基づき本件登録を経由した上,3次元動画伝送サービスについては,これに関する協力をしなかった。
原告は,このような錯誤がなければ,被告との間で締結された本件契約に係る意思表示をしなかったものである。
(2)したがって,本件契約は,原告の錯誤による意思表示に基づくものであり,無効である。
〔被告の主張〕(1)原告の主張(1)及び(2)は,否認ないし争う。
(2)仮に,原告において,何らかの錯誤があったとしても,重大な過失がある。
52争点(2)〔詐欺取消しの成否〕について〔原告の主張〕(1)被告の法務知財部長のAらは,本件契約の締結にあたり,原告に対し,真実は,本件契約に基づき本件商標につき移転登録をするつもりであるのに,その意図を秘して,本件契約書は「特許庁に対する単なる疎明資料である」,「名義の移転はないが,『I=PHS』の商標登録申請を行うにあたり,社内稟議決裁を得るための補足資料として必要である」,「ITTに対してネットワークの協力を行うにあたり,上司や組織内部で有利に説得展開を図るために必要である」にすぎず,移転登録をすることはない,との虚偽の説明を受け,原告において,上記書類がそのような目的にのみ使用され,移転登録はされないものと誤信して,本件契約を締結した。
また,原告は,本件契約の締結にあたり,Aらから,真実は,原告がその次期商品である3次元動画伝送サービスを行う際,被告がそのネットワークを原告に全面的に開放,利用させ,協力する意思がないにもかかわらず,その意思がある旨の説明を受け,原告において,そのような協力が得られるものと誤信して,本件契約を締結した。
被告は,本件商標につき本件登録を経由した上,3次元動画伝送サービスについては,これに関する協力をしなかった。
(2)したがって,本件契約は,被告の詐欺による原告の意思表示に基づくものであり,取り消すことができる。
(3)原告は,平成20年9月25日の本件訴訟の第10回弁論準備手続期日において,被告に対し,本件契約に係る原告の意思表示を取り消した。
〔被告の主張〕原告の主張(1)及び(2)は,否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1前記第2の1前提となる事実に,証拠(甲6〜8,11,16〜18,乙36の1・2,乙4,6,7,証人A,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(1)被告は,被告商標を登録出願するにあたって類似商標の有無等を調査し,本件商標の存在が判明したものの,これにより登録が拒絶される可能性は低いとの認識であった。しかし,万が一の場合に備え,円滑に登録を進めるための対策を講じる方針が採られることとなった。
(2)平成19年2月19日,被告の法務知財部長のAは,原告代表者のBに連絡を取り,同月22日にBと面会して協力を要請し,本件商標の譲渡を申し入れた。
平成19年2月27日,BからAに対し,本件商標の譲渡はできないものの,貸与は可能である旨の回答があった。
そのため,平成19年3月1日の面談で,AからBに対し,貸与の具体的方法として,本件商標権をいったん被告に移転し,一定期間経過後,再度原告に移転する方法が説明され,本件契約の案文(乙3の1)が提示された。
この席上,Bは,Aに対し,「Iビジョン」という動画コンテンツの配信サービスの事業構想を持ち出したものの,具体的な資料の提示などはされなかった。
その後,上記の案文を持ち帰ったBからAに対し,当日中に連絡があり,?@契約の目的が被告商標の登録に対する原告の協力であることの明記,?A禁止権不行使(4条)につき原告に返却された後に使用できなくなるような書き方の修正を求めた。
これに対し,Aが上記を踏まえて修正した本件契約の案文(乙3の2)を作成したところ,平成19年3月5日の面談で,Bから,?B譲渡の有効期間を2年から1年に短縮し,?C禁止権不行使(修正後の5条)につき相互に商標の使用に異存がないとするような書き方への修正を求められた。この席上,Bから,「Iビジョン」について,被告の回線を使用できるかの検討のため,7回線のカタログ,エリアマップ及びネットワーク図面の提供の要望があり,AがこれらをBに交付した。
さらに,平成19年3月6日の電話で,AからBに対し,上記?Bについて,有効期間の短縮は被告商標の登録上困難であることを説明し,?Cについて,自己の商標権の使用につき相手方から異議申立てを受けないことを提案した結果,いずれもBの了解が得られた。そして,BからAに対し,被告のコンテンツ事業の営業担当者の紹介の要望があったため,Aにおいて,これを了承した。
そして,平成19年3月9日,AとBが面談し,本件契約書(甲7)のほか,本件商標の移転登録に必要な「譲渡証書及び単独申請承諾書」(甲8)について,Bが所定の箇所に原告の会社の角印と代表取締役の丸印をそれぞれ押印させて,原告名義部分を完成させた。
(3)その後,被告は,本件登録にあたり,担当弁理士から,本件商標の登録原簿上の被告の所在地が譲渡証書及び単独申請承諾書の記載と異なっており,原簿の表示を変更する必要があるとの指摘を受けた。
そのため,平成19年3月27日,AがBと面談し,委任状の案文(乙4)を示して,捺印を求めたところ,Bから,記載された委任事項のうち,?@登録名義人の表示変更登録の申請の取下げ,?Aこの手続に関する復代理人の選任及び解任をいずれも削除するよう要請があった。
そして,平成19年4月5日,AとBが面談し,上記の事項を削除した「商標登録第4398047号の登録名義人の表示変更(更正)登録の申請」を委任事項とする委任状(甲11)について,Bが所定の箇所に原告の代表取締役の丸印を押印し,原告名義部分を完成させた。
(4)原告と被告は,平成19年6月4日ころ,「三次元画像配信サービスの検討」を協力して実施する際の交換情報の取扱いについて,秘密保持契約(乙6)を締結し,被告のコンテンツ事業営業担当者とBが会うなどした。
8なお,原告は,現在,代表者のBのほかは,従業員1名のみの会社であり,平成19年当時,本件商標を使用していなかった。
2争点(1)〔錯誤無効の成否〕について原告は,本件契約の締結にあたり,Aらから,真実は,本件契約に基づき本件商標につき移転登録をするつもりであるのに,その意図を秘して,本件契約書は「特許庁に対する単なる疎明資料である」,「名義の移転はないが,『I=PHS』の商標登録申請を行うにあたり,社内稟議決裁を得るための補足資料として必要である」,「ITTに対してネットワークの協力を行うにあたり,上司や組織内部で有利に説得展開を図るために必要である」にすぎず,移転登録をすることはない,との虚偽の説明を受け,原告において,上記書類がそのような目的にのみ使用され,移転登録はされないものと誤信して,本件契約を締結したと主張し,原告代表者の供述や陳述書(甲19,20,25)中には,上記の主張に沿った趣旨の供述部分や記載部分がある。しかしながら,前記1で認定したところによれば,?@本件契約の条項は簡潔で明確であり,被告商標の登録の便宜のため,本件登録まで予定したものであることが容易に読み取れること,?A原告代表者のBは,本件契約書について,押印する前に,2度にわたり条項の修正を求め,これらの修正が本件契約の条項に反映されていることからみて,本件契約書が原告の主張するような単に被告の社内での説明の便宜上作成されたにすぎないものとは考え難いことに照らすと,上記の各部分は,たやすく信用することができず,他に原告の上記主張を裏付ける証拠はない。
また,原告は,本件契約の締結にあたり,Aらから,真実は,原告がその次期商品である3次元動画伝送サービスを行う際,被告がそのネットワークを原告に全面的に開放,利用させ,協力する意思がないにもかかわらず,その意思がある旨の説明を受け,原告において,そのような協力が得られるものと誤信して,本件契約を締結したものであり,原告のこのような動機は被告に表示さ9れて本件契約の要素となっている旨を主張し,上記原告代表者の供述や陳述書には,上記の主張に沿う部分があるものの,上記供述及び記載部分は,証人Aの証言及び乙第7号証〔Aの陳述書〕に照らし,採用することができない。前記1で認定したところによれば,原告における実現可能性は措くとしても,原被告間において「三次元画像配信サービスの検討」のための秘密保持契約の締結に至っており,原告における3次元画像配信サービスの構想について,本件契約の締結を契機として,一応の検討がされたことは認められる。しかしながら,本件契約書に被告による協力義務を定めた条項はなく,原告において,本件契約の際,本件契約書に被告による協力を条項化するように求めた形跡もないこと,原告の提供する上記サービスについて原告から具体的資料の提示等はない上,被告による協力の内容について,上記の検討を行った以外に当事者間で具体的な進展があったことが窺われないことに照らすと,原告において3次元動画伝送サービスを行う際に被告がネットワークを原告に全面的に開放,利用させ,協力することが本件契約の要素となっていたと認めることはできない。
したがって,原告が被告から期待するような協力を得られなかったとしても,本件契約の要素の錯誤とはならないというべきである。
錯誤無効についての原告の主張は,採用することができない。
3争点(2)〔詐欺取消しの成否〕について原告は,被告の法務知財部長のAらが,本件契約の締結にあたり,原告に対し,真実は,本件契約に基づき本件商標につき移転登録をするつもりであるのに,その意図を秘して,本件契約書は「特許庁に対する単なる疎明資料である」,「名義の移転はないが,『I=PHS』の商標登録申請を行うにあたり,社内稟議決裁を得るための補足資料として必要である」,「ITTに対してネットワークの協力を行うにあたり,上司や組織内部で有利に説得展開を図るために必要である」にすぎず,移転登録をすることはない,との虚偽の説明を受け,原告において,上記書類がそのような目的にのみ使用され,移転登録はさ10れないものと誤信して,また,真実は,原告がその次期商品である3次元動画伝送サービスを行う際,被告がそのネットワークを原告に全面的に開放,利用させ,協力する意思がないにもかかわらず,その意思がある旨の説明を受け,原告において,そのような協力が得られるものと誤信して,本件契約を締結した旨主張する。
しかしながら,被告の原告に対する上記のような欺罔行為があったと認めることができないことは,前記1で述べたことから明らかである。
詐欺取消しについての原告の主張は,採用することができない。
4結論以上のとおりであるから,原告の請求は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
追加
11商標目録1商標登録番号第4398047号出願年月日平成10年9月18日出願番号商願平10-080535登録年月日平成12年7月7日商品及び役務の区分第9類指定商品簡易型携帯電話機登録商標12登録目録甲区順位番号2番【特定承継による本権の移転】受付年月日平成19年5月1日受付番号008942登録年月日平成19年5月16日登録名義人株式会社ウィルコム〔被告〕13商標目録21商標登録番号第5112465号出願年月日平成19年2月19日出願番号商願2007-013600登録年月日平成20年2月22日商品及び役務の区分第9類及び第38類登録商標2商標登録番号第5111420号出願年月日平成19年2月19日出願番号商願2007-013601登録年月日平成20年2月15日商品及び役務の区分第9類,第16類,第35類,第37類,第38類,第41類及び第42類登録商標
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 柵木澄子
  • この表をプリントする