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関連審決 取消2008-300652
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19行ケ10150審決取消請求事件 判例 商標
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平成17行ケ10096審決取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10097審決取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10095審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 商品商標 /  役務商標 /  包装 /  出所表示機能 /  指定商品 /  指定役務 /  4条1項10号 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  国内 /  存続期間 /  更新登録 /  継続 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10203号 審決取消請求事件
原告ア シ ェットフ ィリ パキ プレスソシエテアノニム
同訴訟代理人弁護士達野大輔
被告株 式会社マイカル
同訴訟代理人弁理士萼経夫 山田清治 白井恵
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/11/26
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が取消2008-300652号事件について平成21年3月18日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1の被告の本件商標に係る商標登録について,不使用を理由とする当該登録の取消しを求める原告の下記2の本件審判請求が成り立たないとした特許庁の別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1本件商標登録第2724292号商標は,「elleetelles」の欧文字を横書きしてなり(以下「本件商標」という。),平成3年4月11日に登録出願され,第17類「被服,布製身回品,寝具類」を指定商品として,平成11年2月26日に設定登録され,その後,平成21年2月17日に商標権存続期間更新登録がされ,現に有効に存続しているものである。
2特許庁における手続の経緯原告は,平成20年5月23日,本件商標がその指定商品中「被服,布製身回品,寝具類」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないことをもって,不使用による取消審判を請求し,当該請求は同年6月10日に登録された(乙14)。
特許庁は,これを取消2008-300652号事件として審理し,平成21年3月18日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,同月27日にその謄本が原告に送達された。
3本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,指定商品に含まれる「婦人用下着」について,本件商標と社会通念上同一の「エル・エ・エル/elleetelles」,「elleetelles/エルエエル」,「elleetelles」の表示(以下,併せて「本件表示」という。)の下に,チラシ,パンフレット等で広告をしたと認められるので,その行為は,商標法2条3項8号に該当する,というものである。
4取消事由被告が「婦人用下着」に本件商標の使用をしていたとの認定判断の誤り第3当事者の主張〔原告の主張〕本件表示は,出所表示機能を果たす商標として使用されたものではない。また,本件表示は,店舗名として被告の小売業務について使用されているものであり,かかる状態では,本件商標が指定商品について使用されていたとはいえない。
(1)本件商標等の使用態様ア本件審判において提出された資料には,「婦人用下着」そのものに本件商標が使用されていることを示すものは存在しない。
イまた,甲3ないし5によると,婦人用下着を表示するパンフレットやチラシ広告の商品には,「MYCAL」,「VIVRE」という商標(以下,個別に又は総称して「ビブレ商標」という。)が付されていること,ビブレ商標は,パンフレットやチラシ広告の四隅のいずれかの,通常販売店が表示される場所に掲示されていること,本件表示に係る販売区画は,ビブレ内に存し,店舗地図や階数の表記により売場の所在が明確にされていることは明らかである。
(2)本件表示は婦人用下着について使用されていないことア本件表示は,「2F」などといった,階数を示す文字と共に表示され,販売場所を明らかにする態様において掲示されていることから明らかなとおり,単に場所,又はブース名を表示するものとして使用されているにすぎない。上記広告は,本件表示が直接表示された商品を広告しているものではなく,本件表示はあくまでも店舗内の一販売区画の名称にすぎない。このように,単に場所,あるいはブース名を示すものとして表示された表示が商標としての使用とは考えられない。
イ上記広告に関しては,ビブレ商標が大きく表示されており,婦人用下着の小売業の出所を表示している商標はビブレ商標であり,本件表示ではない。ビブレが販売主体と考えるのが通常であるといえ,本件表示は出所表示機能を果たすものとしては使用されていないものである。
ウこのように,本件表示は,単に店舗内の婦人用下着売場の所在を指示するためにのみに使用されているものであり,特定の商品又は役務の出所表示機能を果たすものとして表示されたものではなく,商標として使用されたものでもない。
エたとえ本件表示が商標として使用されたと解される場合であっても,本件表示は下着売場の名称として,被告の行う商品販売の業務,すなわち小売業務について使用されたものであって,商品に対する商標として使用されたものではない。小売業についての商標の使用と商品に対する商標の使用は厳然として区別されるべきであり,小売業についての商標の使用は,商品についての商標の使用とされるものではない。
(3)本件表示は小売業についてのみ使用されていることアある商標が,商品の小売業の出所のみを表示しており,商品の製造元・発売元の出所を表示していない場合,当該商標は当該商品については使用されていないと解されるべきものである。それは,商標法は商品商標とは別個に小売等役務商標を設けているところ,小売等役務商標商品商標に包含されないと解さない限り,小売等役務商標制度が設けられている趣旨が没却されてしまうからである。よって,商品の製造元・発売元を表示する機能は商品商標に委ねられる一方,商品の小売業を示す機能は小売等役務商標に委ねられ,商品商標は小売業を示す機能に関知するべきではない。
イしかるところ,上記のとおり,本件表示は,小売の出所を表示しているのみであって,商品に直接表示される「ワコール,トリンプ,ウイング」のように商品の製造元・発売元の出所を表示するものではない。よって,小売業の出所のみを表示する本件表示が使用されただけでは,婦人用下着については本件商標は不使用の状態にあるので,本件商標は指定商品について使用されていない。
ウかかる小売業についての商標と商品についての商標は,従来から厳密に区別されてきたところであり,これが平成19年の小売等役務商標制度の導入の原因となったものである。
特許庁作成の小売等役務商標制度導入の際の「小売等役務商標制度のお知らせ」と題する説明会用の資料をみても,特定の商品に直接使用された商標については取扱商品に商標を表示して使用しているので商品商標として保護されるとする一方,看板・ショッピングカート・従業員の制服などについて使用される商標については,個々の商品に商標が表示されていない場合には商標の保護が及んでいなかったと説明され,かかる区別を前提に,この点から生じる不都合を法制度として補うために小売等役務商標制度が導入されたことが明らかにされている。
このように,特許庁の実務としても,商品商標と小売等役務についての商標は厳密に区別されているのであり,小売等役務についての使用は商品についての使用とはみなされないものである。
〔被告の主張〕本件商標は,要証期間内に,被告により,指定商品中の「婦人用下着」について使用されていた。
(1)小売業の商標と商品の商標についてア平成19年4月1日から,小売業者等がその業務において行うサービスについては,新たに小売等役務商標として商標登録を受けることが可能となった。
原告が根拠とする特許庁作成の資料(甲6)は,特許庁を中心とした説明会用の平成18年度のものであるが,上記資料は,翌19年度説明会用のもの(乙1)において,大幅に改訂されており,それによれば,デパート等の商品の値札,包装紙等に付される商標は,小売等役務の使用ともいえるが,同時に商品についての使用ともいえることを明確に訂正した上で説明している。
したがって,小売業者の使用する商標と商品商標とは厳密に区別されるべきで小売業者が使用する商標は商品についての使用ではないということはできない。
イ特許庁が説明を訂正したのは,「使用」の定義(商標法2条3項)との関係で整合性がとれなかったからと思われる。すなわち,「商品の包装に標章を付して譲渡する行為」,「商品の広告に標章を付して頒布する行為」は,いずれも「商品」について商標を使用する行為となるところ,平成18年度の説明文では,実際に小売業者が行っている上記行為が使用とはならないこととなり,上記2条3項1号,2号及び8号との関係で齟齬が生じ,不適切で誤解を招くからである。
また,「商品商標」と「小売等役務商標」とを区別し,デパート等の商品の値札,包装紙等に付される商標は,小売等役務の使用であると言い切ってしまえば,これまで小売業者の保有する多数の商品商標は,プライベートブランド等を除き,そのほとんどが小売等役務の使用となるであろうから,代表的な小売業者である三越やイトーヨーカ堂,伊勢丹,高島屋などの有する多数の商品商標の登録の多くは,理論的にはほとんどすべてが,不使用による取消しの対象となってしまうことになる。
そして,特許庁作成のその他の資料(乙4〜6)においても,取扱商品,折込チラシ,値札,レシートへの商標の使用については,使用の態様によって,商品商標,小売等役務商標のいずれにも該当する場合があると記載されている。
(2)商標を商品に直接表示することについて原告は,本件商標は小売の出所を表示するのみで商品に直接表示されるものではないとか,商品の製造元・発売元の出所を表示するものではないから,小売業の出所のみを表す本件表示が使用されただけでは,婦人用下着について,本件商標を指定商品に使用していないと主張する。
しかし,商品についての使用の定義を定めた商標法2条3項1号,2号及び8号でいう「標章を付す」とは,商品に商標を貼付し,刻印するなどの商品に直接付すことのみに限定しているわけではなく,商品の包装に標章を付すことや広告も使用の一形態である。また,製造業者,又は小売業者のいずれもが商品に「標章を付す」行為をした場合,これが商品商標の使用に該当することになる(乙4)。
(3)売場表示であるとの主張についてア甲3の2により,本件表示が婦人用下着の売場を表すものと認識される場合があることは否定できない。しかしながら,同時に商品の出所標識としての機能を全く果たし得ないともいえない。それは,被告のブランドの1つである「elleetelles」のコーナーを表すものであると同時に,そのコーナーで販売されている商品は被告の上記ブランドの下に販売されている商品であって,商品の出所標識を表すものということもできるからである。
特に甲3の3・4,甲4の1・2,甲5の広告等には,婦人用下着の写真と共に本件表示がされており,その一部広告の左上に小さく「2F」等の表示があるからといって,本件表示が売場の名称を表すのみで,婦人用下着に使用されていないということはできない。
イ以上のとおり,本件表示について,商品の売場の名称のみを表すものということはできない。したがって,商品の広告により,本件商標は指定商品中の「婦人用下着」について使用されていたと認定判断した本件審決に誤りはない。
(4)小売等役務商標制度についてア我が国がサービスマークの登録制度を導入した平成4年4月1日当時から既に小売役務についても議論がなされ,製造業者,小売業者とも商品を譲渡する者がその商品について使用する標章は,改正後においても商品に係る商標として取扱っていくこととしたとされている(乙10)。そして,製造業者と同様に小売業者等は,各商品について商標出願し,商標登録を受けることによって,自らの信用の維持と保護が図られてきたのであり,小売業の商標と商品の商標とは従来から厳密に区別されてきたとはいえない。
イ我が国は,一貫して小売を商品の販売(譲渡)と捉え,商品商標として扱ってきたのであるが,近年になって,小売をサービスとして取扱う国が増え,小売業者のニーズや国際調和の観点からも,ようやく平成19年4月1日から,小売等役務商標制度を導入したのである。したがって,それまで小売業者が顧客に対し提供する商品の品揃え,商品説明等のサービスは,独立した商取引の対象とはみなされず,商品の販売に付随する無償サービスとの位置付けだったのである(乙11,12)。
ウ要するに,小売業者が行う商品の販売も製造業者が行う販売もいずれも「譲渡」に該当するのであり,従来,小売を独立したサービス(役務)として認めてはいなかった。
小売等役務商標制度が導入された平成19年4月以降においても,小売業者の使用する商標は,商品商標としての使用でもあり得るとされ,上記の考え方が変更されたということもできない。
(5)本件商標の使用について甲3ないし5のほか,乙15,16によって,本件商標は,要証期間内に被告により,指定商品中の「婦人用下着」について使用されていたことは明らかであるから,本件審決の認定判断には何らの誤りもない。
第4当裁判所の判断1認定事実(1)被告は,若い世代を対象とした被服やこれに関連する雑貨,靴下等の各専門店を店舗内に集合させた「ビブレ(VIVRE)」という名称の店舗を,全国に展開している。そのうち,少なくとも,横浜ビブレ,ワールドポーターズビブレ(以上,神奈川県),桑名ビブレ(三重県),茨木ビブレ,枚方ビブレ(以上,大阪府),明石ビブレ(兵庫県),宇多津ビブレ(香川県),天神ビブレ,福岡東ビブレ(以上,福岡県)には,直営店として,レディースインナーショップ「エル・エ・エル」を設けている。上記店舗の壁や柱等には,「elleetelles」と表示され,婦人用下着等が陳列されている(甲1ないし5,乙15,16(以上の証拠には枝番を含む。))。
(2)被告は,平成18年9月23日開店した「福岡東ビブレ」について,開店の際のパンフレットにおいて,「elleetellesエル・エ・エル」の表示と共に「レディースインナー」の表示及び下着姿の女性の写真を掲載し,「女性のためのランジェリーショップ」などと記載した(甲3の1〜3)。
(3)被告は,「福岡東ビブレ」の平成19年3月16日から同月18日に行われたリニューアルセールにおいて,チラシを作成し,同チラシには,「レディースインナーelleetelles」の表示と共に,「ロリアンミル,BonManiereのブランドをはじめ…ブラジャー&ショーツセットの種類がかなり豊富!」と記載され,「ラブリーブラ&ショーツセット」の広告が掲載された(甲3の4)。
(4)被告は,「茨木ビブレ」の平成19年3月1日から同月4日に行われたセールにおいて,チラシを作成し,同チラシには,「2F/エル・エ・エル」,「elleetelles」の表示の下,「春インナー特集」として,キャミソールやガードル等の婦人用下着の写真が掲載された(甲4の1)。
(5)被告は,「枚方ビブレ」の平成19年3月1日から同月4日に行われたセールにおいて,チラシを作成し,同チラシには,「4F/エル・エ・エル」,「elleetelles」の表示の下,「春インナー特集」として,キャミソールやガードル等の婦人用下着の写真が掲載された(甲4の2)。
(6)被告は,「宇多津ビブレ」の平成19年3月23日から同月25日に行われたセールにおいて,チラシを作成し,同チラシには,「2F/エル・エ・エル」,「elleetelles」の表示の下,「婦人肌着のブランドランジェリー・ファンデーション/ワコール,トリンプ,ウイング」などとして,婦人用下着の写真が掲載された(甲5)。
2商標の使用の有無前記1で認定した事実によれば,被告は,本件取消審判の請求の登録前3年内に,?その営業に係る「ビブレ」に直営店であるレディースインナーの専門店「elleetelles/エル・エ・エル」を設置し,店舗の壁や柱等に「elleetelles」と表示した上,婦人用下着等を陳列して販売したこと(前記1(1)),また,?チラシやパンフレットをもって,「エル・エ・エル/elleetelles」の表示の下,婦人用下着について,その写真と共に広告をしたこと(前記1(2)ないし(6))が認められる。
そして,上記のとおり,本件表示の下に婦人用下着を陳列販売し,婦人用下着の広告について本件表示をしたことは,少なくとも,商標法2条3項8号にいう「商品…に関する広告…に標章を付して展示し,若しくは頒布…する行為」に該当するというべきであり,これに反する原告の主張を採用し得ないことは後記のとおりである。
よって,被告は,指定商品に含まれる婦人用下着について,本件商標と社会通念上同一の本件表示をもって,本件商標を使用したものと認められる。
3原告の主張について(1)原告は,本件表示は,単に店舗内の婦人用下着売場の所在を指示するためにのみに使用され,婦人用下着について出所表示機能を果たす商標として使用されたものではないと主張する。
なるほど,本件表示は,被告の営業する「ビブレ」のレディーズインナーショップの店舗名としても使用されてはいるが,本件表示の下に婦人用下着を陳列販売し,婦人用下着の広告に本件表示をすることが,それゆえに商品についての商標の使用に当たらないということはできない。
そして,商品に係る商標が,「業として商品を…譲渡する者」にも与えられるものであり(商標法2条1項1号),商品の製造業者のみならず,小売業者もまた,商品の譲渡等を行うことに変わりはないことに照らすと(同条3項2号参照),小売業者としての出所を表示することが,商標としての使用に当たらないということはできない。
そうすると,本件表示の下に婦人用下着を陳列販売し,また,婦人用下着の広告について本件表示をしたことは,業として婦人用下着を譲渡する者がその販売業者としての出所を表示するものとして,本件商標を使用したものと評価することができる。
(2)原告は,本件表示は店舗名として被告の小売業務について使用されており,小売等役務商標制度が設けられた以上,本件商標が指定商品について使用されていたとはいえないと主張する。
平成19年4月1日に小売等役務商標制度が新たに施行され,商品に係る商標と小売等役務に係る商標とが区別されていることは,原告主張のとおりである。しかしながら,商標を小売等役務について使用した場合に,商品についての使用とは一切みなされないとまではいうことができない。すなわち,商品に係る商標が「業として商品を…譲渡する者」に与えられるとする規定(商標法2条1項1号)に改正はなく,「商品A」という指定商品に係る商標と「商品Aの小売」という指定役務に係る商標とは,当該商品と役務とが類似することがあり(商標法2条6項),商標登録を受けることができない事由としても商品商標役務商標とについて互いに審査が予定されていると解されること(同法4条1項10号,11号,15号,19号等)からすると,その使用に当たる行為(同法2条3項)が重なることもあり得るからである。
そして,商品の製造元・発売元を表示する機能を商品商標に委ね,商品の小売業を示す機能を小売等役務商標に委ねることが,小売等役務商標制度本来の在り方であり,小売等役務商標制度が施行された後においては,商品又は商品の包装に商標を付することなく専ら小売等役務としてのみしか商品商標を使用していない場合には,商品商標としての使用を行っていないと評価する余地もある。しかしながら,本件商標は,小売等役務商標制度導入前の出願に係るものであるところ,前記1の認定事実によれば,被告は,小売等役務商標制度が施行される前から本件商標を使用していたものである。このように,小売等役務商標制度の施行前に商標の「使用」に当たる行為があったにもかかわらず,その後小売等役務商標制度が創設されたことの一事をもって,これが本件商標の使用に当たらないと解すると,指定商品から小売等役務への書換登録制度が設けられなかった小売等役務商標制度の下において,被告に対し,「被服」等を指定商品とする本件商標とは別に「被服の小売」等を指定役務とする小売等役務商標の取得を強いることになり,混乱を生ずるおそれがある。
(3)よって,原告の主張は,採用することができない。
4結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 本多知成