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関連審決 無効2007-890177
関連ワード 独占的使用 /  識別力 /  包装 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  慣用商標(3条1項2号) /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  3条1項4号 /  ありふれた氏 /  ありふれた名称 /  ありふれた標章 /  3条1項5号 /  3条1項6号 /  4条1項15号 /  品質誤認(4条1項16号) /  4条1項19号 /  ただ乗り(フリーライド) /  立体的形状 /  国内 /  無効審判 /  社団法人 /  同業者 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10127号 審決取消請求事件
原告X
被告Y
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/12/10
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2007-890177号事件について平成21年4月8日にした審決中,「その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。」との部分を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの本件商標に係る商標登録に対する無効審判の請求について,特許庁が,同請求中,書籍以外の指定商品について請求が成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記2のとおり)の当該部分の取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)原告は,平成19年11月28日,被告が商標登録を有する「闘茶」の文字を標準文字により成り,指定商品を別紙指定商品のとおりとする登録4625741号商標(平成13年9月7日登録出願,平成14年10月24日登録査定,同年11月29日設定登録。甲19)について,商標法(以下「法」という。)3条1項2号,4号,5号,6号,4条1項15号,16号のいずれかに該当することなどを理由に,無効審判を請求した。
(2)これに対し,特許庁は,原告の請求を無効2007-890177号事件として審理し,平成21年4月8日に「登録第4625741号の指定商品中『第16類書籍』についての登録を無効とする。その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。」との本件審決をし,同月18日,その謄本は原告に送達された。
2本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,「闘茶」の語は,南北朝・室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯を意味するものとして広く知られていることが認められるから,本件商標を「闘茶に関する書籍」について使用する場合には,単にその商品の内容(品質)を表示するものというべきであり,また,これ以外の「書籍」に使用する場合には,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものであるから,本件商標の登録は,その指定商品中「書籍」については法3条1項3号及び4条1項16号に違反してされたものであり,法46条1項の規定により無効とされるべきものであるが,指定商品中,その余のものについては,闘茶に普通に使用されているとする事実がなく,闘茶用の商品があるとすべき事実もなく,また,本件商標を使用したときに,需要者が何人かの業務に係る商品と認識することができないと認めることができないとはいえず,その品質について誤認を生ずるおそれがあるとすべき事実もないことなどから,法3条1項2号,4号ないし6号,4条1項15号,16号などに違反して登録されたものではなく,法46条1項の規定により,その登録を無効とすることはできない,などというものである。
第3当事者の主張〔原告の主張〕本件審決で認定の事実に以下の事実等を加えると,本件商標は,「書籍」以外の指定商品についても,法3条1項1号ないし6号,4条1項15号,16号,19号のいずれかに該当するもの又は商標制度の趣旨に反するなどのものとして,その登録は無効とされるべきである。
1闘茶の用語の使用例等について(1)「闘茶」の用語については,日本国内だけでなく,中国を含めた複数国において,過去から現在に至るまで,多くの使用例(甲8の2)が存在し,また,繁体字による「鬪茶」や簡体字による「斗茶」として国内外で多くの使用例(甲20の1,2)が存在する。
(2)「闘茶」と題するウェブサイト(甲10)には,闘茶の道具として,本件審決が認定した「急須,お茶,数字等が記載された札及び投票箱」のほか,「盆,硯,筆,茶入,茶たく,紙類(札の入れ物)」が掲載されている。そうであるから,本件商標の指定商品中,「紙類,型紙,かるた,歌がるた,トランプ,花札(「札」の類)」は使用されているものとして,これらを指定商品とする登録は無効とされるべきである。
(3)「博物館・図書館・準公共団体等で開催されていた『闘茶』(および『闘茶』が標章された)展示会・イベントなどの一覧」(甲13。枝番を含む。以下,枝番を含む書証については,特に枝番を挙示しないこともある。)のとおり,闘茶について記載された「新聞」や「印刷物」があるにもかかわらず,本件審決は,この事実を無視している。そして,入間市博物館紀要第7号(甲13の2の2,甲21)によると,江戸時代においても「闘茶」の名称が使用され,過去から現在まで,入間市で「闘茶会」が開催されてきたことが認められる。
(4)闘茶道具の写真(甲16)には,書籍以外の印刷物や紙類である「冊子」(甲23)が含まれているにもかかわらず,本件審決は,この事実を無視している。
(5)映画「闘茶Tea Fighter」関連の写真集表紙及び商品一覧(甲17)には,印刷物,書画及び写真が含まれているにもかかわらず,本件審決は,これらの商品に係る本件商標の登録を無効とすべきである。
また,明治以前の時代に制作された「古代の『闘茶図』」と題するなどの書画(甲24)も存在している。
(6)本件審決は,闘茶の意味として,「南北朝・室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯」とするが,闘茶については,戦国時代,江戸期,明治期以降現代まで行われてきたものであるなど,本件審決が認定するような断片的意味にとどまるものではない。
(7)本件審決は,「闘茶のイベント及び闘茶に関する講演会等が行われているほか,闘茶に関する内容の書籍が作成されている」と認定するが,「闘茶」の用語は,「書籍」以外の「印刷物」「書画」「写真」「紙類」「カルタ・トランプ・花札」としても使用されてきており(甲10,12,13,16〜18,21〜25),また,闘茶に係る「競技,闘い,競い,遊戯,遊芸,展示,闘茶会」が行われ,闘茶に関する内容の印刷物・雑誌が作成され,闘茶を商品名とする茶セットが販売されるなどし,闘茶に関する映画が放映され,ドラマ及び講座がテレビで放映されるなどしている。
(8)本件審決は,本件商標の指定商品中「書籍」についての登録のみを無効としているが,「新聞,雑誌」の登録を無効としない理由はなく,また,「書画」「写真」「カルタ・トランプ・花札(「札」の類)」についても過去に存在したにもかかわらず(甲10,12,13,16〜18,21〜25),これらを指定商品とする登録を無効としなかったことは正当ではない。
(9)東京高等裁判所平成13年(行ケ)第435号平成14年4月30日判決(甲27)は,「リナックス」の文字と「Linux」の文字を2段に横書きして成る商標について,その指定商品中「印刷物」のすべてについてその登録を無効であるとしたが,当該商標の出願当時,「リナックス」との用語はムック等の不定期刊行物を含む書籍のみに利用されていたものであった。本件では,書籍のみでなく,新聞,雑誌,各種印刷物及び書画においても「闘茶」が取り上げられているのであるから,上記判決によると,本件商標の指定商品中「印刷物」すべてについてその登録が無効とされるべきである。
2商標法違反について(1)「闘茶」の用語は,本件商標の指定商品において使用されてきたものであり(甲3〜26),本件商標は,そもそも本件の指定区分第16類について登録されるべきでない標章であって,法3条1項2号に該当する。
(2)「闘茶」との文字は,「ありふれた名称」を「普通に用いられる方法」で使用されているものということができるところ,その使用については,指定商品に限らず,名称を使用している業態があればよいところ,本件商標は,茶に関する業種などでもありふれた名称として使用されており(甲28),法3条1項4号に該当する。
(3)本件商標は,「茶」と「闘」の普通名称2文字から成り,かつ,「闘茶」についても「茶でもって闘う」ということ全般を示す普通名称であるから,法3条1項5号に該当する。
(4)本件審決は,「闘茶」の用語は,「南北朝・室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯」の意味合いを有するものとして広く知られていることが認められるなどとし,また,社団法人京都府茶業会議所も「闘茶会」について法3条1項6号に該当すると主張していたところで(甲29),本件商標は,それ自体が普通名称で,茶の会に限定されない使用範囲を超えて普通に使用されているものであって,同号に該当する。
(5)本件審決は,「『闘茶』が特定の者の業務に係る商品等の出所を表すものとして,取引者・需要者に広く知られているとは認めることはできない」とした。
しかしながら,本件審決は,「闘茶」の用語は「南北朝・室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯」の意味合いを有するものとして広く知られていることが認められるなどとしているところ,「闘茶」の用語は,「茶業」「遊戯」「茶道」「煎茶道」「日本の歴史」「茶関係の道具」「茶のイベントや品質会(利き茶)」等において取引者・受益者に広く知られており,現在においては,「映画」「ドラマ」(甲30)においても用いられ,テレビ番組,映画,雑誌及び書籍での紹介並びに地方自治体,博物館及び関係団体の努力によって,特定の受益者ほか一般にも広く知られている。また,原告は,日本国内で数人しかいない「闘茶」研究家であり,テレビ番組,雑誌等で「闘茶」が使用された場合において,複数のテレビ局,雑誌社に内容の協力をしており,現在,原告が第三者に教授する内容が「闘茶」の意味を有している場合もある。したがって,本件商標は,法4条1項15号に該当する。
(6)「闘茶」は「茶」を表現するものであるし,「闘」は「技芸などの優劣を争うこと。競技。試合」である。「茶」は茶に関する受益者に対するもので,「闘」は優劣を争うすべてのものの商品に係るものであって,ゲームの類はそれに該当する。指定商品中「かるた・トランプ・花札」は優劣を争うものである。
なお,商標「ABCパズル」,第28類「パズルおもちゃ,その他のおもちゃ」とする出願は,その商標の構成中に「パズル」の文字を有して成るものであるから,これをその指定商品中「パズルおもちゃ」以外のおもちゃに使用するときには,その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるとし,同商標は法4条1項16号に該当するとの「商標実務の基礎知識改訂2版(特許庁商標審査事務研究会編著)」138頁(甲31)の記載に従うと,茶でもって優劣を争う以外の商品は,その商品の品質について誤認を生じさせるものということができる。
本件商標は,「書籍」以外の商品についても商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標である。
(7)本件審決は,原告が,本件審判における意見書において,本件商標が法4条1項19号に違反して登録されたものであると主張したことに対し,新たに無効理由を追加して請求の理由の要旨の変更をするものであるから,法56条1項で準用する特許法131条の2第1項により認められないものであるとした。
しかしながら,審判審理終結通知書発行日付以前に請求人において理由を述べ,被請求人においても審判中で争うものについては,特許庁において職権により判断を行うことが認められている。また,本件審判において,請求人の主張と理由の提出によって被請求人は意見を表明する機会が与えられていたものであって,同号による判断を求めることが許されるべきである。
(8)本件審決は,仮定的判断として,法4条1項19号は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして広く認識されている」ことを要件の1つとしているが,「闘茶」が特定の者の業務に係る商品等の出所を表すものとして,取引者・需要者に広く知られているとは認めることができないとした。しかしながら,「闘茶」は,本件商標の登録出願前から,特に「茶業」「遊戯」「茶道・煎茶道」「日本の歴史」「茶関係の道具」「茶のイベントや品質会(利き茶)」「映画」「ドラマ」において(甲3〜30),日本国内及び中国等の複数国において相当程度周知・著名であったものであり,日本国内の茶の取引業者・需要者の間においても周知・著名であったもので,かつ,本件商標の登録出願時から現在に至るまで,そのような状況が続いているものであって,「他人の業務に係わる商品又は役務を表示するものとして広く認識されている」ものであった。
そして,被告は,このような周知・著名な「闘茶」という茶の基本的用語について,「ただ乗り」して排他的独占的使用をしようとするもので,「不正の利益を得る目的」をもって使用するものというべきであって,本件商標は,同号に該当する。
3商標制度の趣旨違反等について(1)そもそも,被告は,茶業(及びそれに関連する商品)企業の代表者であるが,一部の商品を除き,その業務に係わっておらず,「一般に使用されている」標章について商標登録をして権利だけを得ているものであるから,本件商標は,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」であるといわざるえない。また,同業者の自由使用の保障の見地からしても,本件商標を何人にも自由に使用させなければならない。
(2)法は,過去に他人が創作し,伝え,営利行為を行っている慣用商標を,これを創造したものでない者に商標登録させて独占することを認める法律ではない。
「闘茶」との用語は,数百年という長年の使用によって特定の何人のものでもないものとなっており,特定の一私人が権利を持つことができるものではない。
(3)本件審決は,本件商標の登録につき,指定商品を「書籍」とするもの以外の登録の無効を認めなかったが,「闘茶」について,指定商品に該当する使用例があり,他人が従前から使用してきたものであるから,本件商標は,本来登録されるべきものではなかった。また,被告は,本件商標を使用しておらず,使用の目的も有しておらず,その登録をしているだけであるから,本件商標の登録は無効とされるべきものである。
〔被告の主張〕1原告の主張は,主観的で客観性に乏しいものであり,本件審決を覆すに足りるものではない。また,原告提出の証拠は信用性が欠けている。
2被告取扱いの商品に係る本件商標は,自他商品識別力を有するものである。
3被告は,周知・著名な「闘茶」という用語について,「ただ乗り」して排他的独占的使用をしようとするものでも,「不正の利益を得る目的」をもって使用するものでもない。
第4当裁判所の判断1認定事実証拠(それぞれ以下の括弧内に掲げる。)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実を認めることができる。
(1)闘茶とは「南北朝・室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯」,本茶とは「明恵上人の茶樹栽培の原拠である山城国栂尾産の茶。のちには宇治茶も本茶に加えられた。」,非茶とは「闘茶の用語。本茶(はじめ栂尾茶,のち宇治茶を含む)以外の各地で産する茶」(いずれも広辞苑第五版)をいうものとされている。また,闘茶は,中国宋から渡来し,我が国において喫茶の文化が普及し,茶の生産が拡大してきた南北朝・室町時代に,茶の産地などを判別し,茶の味を飲み当てて賭物を取り合う遊戯として発展したが(甲6,甲24の4,甲26の1〜3),その後,賭博性が高まり,足利幕府によって何度も禁令が出されたことや東山文化への移行などから,15世紀中ごろから衰え始め,その残滓が「茶歌舞伎」として江戸時代に受け継がれていたところ,これが江戸時代中期に茶道の千家七事式の1つとして,茶の違いを知る修練のための「茶カブキ」として取り上げられるようになった(甲13の2の3,甲13の3,8,甲15,甲26の2)。現代においても,群馬県中之条町では「お茶講」と称する室町時代の闘茶の形を残す行事が伝承されている(甲7,甲26の2)。
そして,煎茶が流行した幕末から明治初期にかけて,闘茶道具一式が多く作られ,煎茶をもって闘茶が行われるようになり,これが現代まで闘茶として伝承されている(甲15,16)。
(2)近年においても,平成11年10月に社団法人奈良県茶業会議所によって第27回奈良県闘茶大会が開催され(甲13の8),同年11月には,約300名が参加して,奈良県月ヶ瀬村において茶品評会,闘茶会褒賞授与式,ミニ闘茶会等の行事が行われ,これが社団法人静岡県茶業会議所発行の冊子に紹介され(甲13の7),平成12年2月には,京都府宇治市の小倉茶業青年団の開催によって,同市内において,同年で4回目となる闘茶を根源とする「茶香服(ちゃかぶき)」が開催され,これが新聞において紹介され(甲13の10),平成19年7月には滋賀県多賀町立図書館において闘茶の紹介と現代風の闘茶体験コーナーが設けられ,これが京都新聞電子版に紹介された(甲13の6)。
(3)昭和42年出版の「城賭けの闘茶」(宇能鴻一郎著)との題名の歴史小説があり(甲5),平成6年7月発行の「史料による茶の湯の歴史(上)」(株式会社主婦の友社)中には,「闘茶の遊び」との項目があり(甲4),平成19年5月15日付けの遊戯史学会ニュースレター第9号には,「文化・芸能となっての定着」として「闘茶」との記載及び「お茶講:群馬県中之条町に伝わる茶を飲んで当てる,室町時代の闘茶の形を残す行事。国指定無形民俗文化財」との記載があり(甲7),同年7月に表千家北山会館における公開文化講座において「茶の湯の歴史(その1)第2回『闘茶の世界』」と題する講演が行われ(甲3),同年11月時点の表千家不審菴のウェブページには,「喫茶のひろがり」との見出しの下,「14世紀,茶は寺院から武家社会へ,さらに庶民の生活へとひろがります。…その結果,茶の名産地や等級が生まれ,茶の味を飲みあてる『闘茶』というゲームが流行するようになります。ことに南北朝の動乱期に登場してきたバサラ大名の佐々木道誉が,…豪華な景品をかけて闘茶会を楽しんだ様子が,『太平記』に詳しく記されています。」との記載がある(甲6)。
(4)平成20年には,日本・台湾合作映画として「闘茶〜 Tea Fight 〜」が公開され,映画中で闘茶が紹介され,また,同映画や関連商品がウェブページにおいて紹介されている(甲14,17,25)。
(5)平成21年1月時点において,中国茶の販売店のウェブページにおいて,数種類の中国茶を,「闘茶セット」,いわゆる「利き茶セット」であるとして販売している(甲18の2)。
(6)平成19年11月にインターネットのグーグル日本語において「闘茶」を検索したところ,約2万4900件がヒットした(甲8の1)。
(7)平成21年5月にNHK総合テレビで深夜の時間帯に放送されたドキュメンタリー風歴史番組「タイムスクープハンター」において,「沸騰!闘茶バブル利き茶で賭けごとを行う武士」との番組が放映された(甲30)。
2本件審決の当否前記認定事実に基づいて,本件審決の当否を判断することとするが,本件審決は,本件商標の指定商品のうちの「印刷物」のうち「書籍」についての登録を無効としたところ,この点については当事者から不服の申立てがなく,本件訴訟の対象となっていない。したがって,以下においては,本件商標に係る指定商品のうち「書籍」を除く商品(以下「本件商品」という。)の登録を対象として判断を進めることとする。
(1)法4条1項16号該当性について前記認定事実によると,闘茶は,我が国においては「南北朝・室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯」などとして発展し,その後の衰退期はあったものの,江戸時代中期に茶道の千家七事式の1つである「茶カブキ」として受け継がれ,さらに,幕末から明治初期にかけての煎茶をもってする闘茶として現在に至るまで存続しており,本件商標の登録査定時である平成14年10月24日の時点においても,このような茶の産地等を当てる遊芸として広く知られていたものと認められる。
しかるところ,このような茶の産地等を当てる遊芸であるとの闘茶の特徴に照らすと,上記のとおりの本件商標が,本件商品に使用されたとしても,それによって,これらの商品が,当該商品そのものとは別の特徴を有する別の品質のものとして,需要者に誤認されるおそれがあるとは考え難く,したがって,その商品又は役務の真正に関し,取引者・需要者をして錯誤に陥らせるようなことがあるということができないから,本件商標は,本件商品について,法4条1項16号に該当するものということはできず,本件商標に係る指定商品を本件商品とする登録を無効とすることはできない。
なお,原告は,闘茶の道具として,「急須,お茶,数字等が記載された札,投票箱,盆,硯,筆,茶入,茶たく,紙類(札の入れ物)」が存在することから,本件商標の指定商品中,「紙類,型紙,かるた,歌がるた,トランプ,花札(「札」の類)」は闘茶に使用されているものとして,これらを指定商品とする登録は無効とされるべきであると主張するが,これら原告主張に係る「型紙,かるた,歌がるた,トランプ,花札」が闘茶に一般的に使用されるものとは認められず,また,茶の産地等を当てる遊芸であるとの闘茶の特徴に照らすと,これら原告主張に係る商品に本件商標が使用されたとしても,そのことによって,これらの商品が当該商品とは別の品質のものとして需要者に誤認されるおそれがあるものとまで認めることはできず,本件商標に係る指定商品をこれらの商品とする登録を無効とすることはできない。
(2)法3条1項6号該当性について前記認定事実によると,闘茶は,本件商標の登録査定時である平成14年10月24日の時点においても,茶の産地等を当てる遊芸として広く知られており,特に茶業関係者においては,そのようなものとして一般的に広く認識されている用語と認められる。
しかるところ,本件商品が闘茶において一般的に使用されるものとは認められず,また,茶の産地等を当てる遊芸であるとの闘茶の特徴に照らすと,「闘茶」の文字を標準文字として成る本件商標を本件商品に使用したとしても,本件商標に接する取引者・需要者が,これらの商品を,闘茶という茶の産地等を当てる遊戯のための商品というように理解するものと認めることもできず,何人かの業務に係る商品であることを認識できないとする事情があるものと認めることはできないから,本件商品を指定商品とする本件商標は,法3条1項6号に該当するということはできない。
(3)法3条1項1号ないし5号該当性について「闘茶」の標準文字から成る本件商標は,本件商品についてみると,これらの普通名称(法3条1項1号関係)ではなく,これらの商品について慣用されている商標(同項2号関係)ではなく,これらの商品の産地,販売地等の同項3号に記載されている事項を普通の態様で表示する標章のみからなる商標(同項3号関係)ではなく,ありふれた氏又は法人や団体等の名称を普通の態様で表示する標章のみからなる商標(同項4号関係)ではなく,例えば,単なる直線や円又は球や直方体などの立体的形状のみからなるなどの,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標(同項5号関係)ではないから,本件商品に係る本件商標は,法3条1項1号ないし5号に該当するということはできない。
(4)法4条1項15号及び19号該当性について前記認定事実によると,闘茶は,我が国において,現在に至るまで,茶の産地等を当てる遊芸として広く知られているが,特定の者としての他人の業務に係る商品又は役務を示すものとして取引者・需要者に広く知られていると認めることはできないから,本件商標を本件商品に使用しても,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせるおそれはなく,本件商標は,法4条1項15号に該当しない。
また,本件審決は,原告の本件商標が法4条1項19号に該当するとの主張は,本件審判請求後に追加されたものであって,新たに無効理由を追加し,請求の理由の要旨を変更するものであるから,法56条1項で準用する特許法131条の2第1項により認められないとしたところ,仮に同項19号該当性について判断するとしても,上記のとおり,闘茶は,他人の業務に係る商品又は役務を示すものとして取引者・需要者に広く知られていると認めることはできないから,本件商標は,同号にも該当しない。
3結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。
追加
(別紙)指定商品第16類(平成13年経済産業省令第202号による改正前の商標法施行規則別表によるもの)紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,紙製幼児用おしめ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,かるた,歌がるた,トランプ,花札,昆虫採集用具,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,印刷用インテル,活字,装飾塗工用ブラシ,封ろう,マーキング用孔開型板,観賞魚用水槽及びその附属品以上
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 本多知成
裁判官 浅井憲
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