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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ34852商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成15ワ11661商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成18ワ5272損害賠償請求事件 平成18ワ8460損害賠償請求事件 判例 商標
平成22ワ13516商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成21ワ25783販売差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  商標的使用 /  指定商品 /  3条1項6号 /  周知性 /  類似性(類否判断) /  損害額 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  差止 /  継続 /  非類似 /  利益額 / 
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事件 平成 21年 ( ) 19888号 輸入販売差止等請求事件
フランス国パリ<以下略>
原告ゴ ヤー ルサントノレ
同訴訟代理人弁護士佐藤雅巳
同 古木睦美 東京都新宿区<以下略>
被告ア ディダスジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士渡辺広己
同 中川豊
同 篠原芳宏
同 野中武
同 戸田智彦
同 秋山朋子
同 阿部佳基
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2009/12/24
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙被告標章目録記載1の標章を付したバッグ及び同目録記載2の標章を付した靴を輸入し,販売し,又は販売のために展示してはならない。
2被告は,別紙被告標章目録記載1の標章を付したバッグ及び同目録記載2の2標章を付した靴を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,金1500万円及びこれに対する平成21年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,別紙原告標章目録記載の標章(以下「原告標章」という。)を付したトランクや鞄等を製造販売し,別紙商標目録記載の商標(以下「原告商標」という。)について後記商標権を有する原告が,別紙被告標章目録記載1の標章(以下「被告標章1」という。)を付したバッグ(以下「被告バッグ製品」という。)及び同目録記載2の標章(以下「被告標章2」という。また,被告標章1及び2を併せて,「各被告標章」という。)を付した靴(以下「被告靴製品」という。また,被告バッグ製品及び被告靴製品とを併せて,「各被告製品」という。)を輸入し,販売し,販売のために展示した被告に対し,各被告標章は原告標章や原告商標と類似し,被告による各被告製品の輸入,販売及び販売のための展示が不正競争防止法2条1項1号ないし2号に該当する行為である,あるいは,被告による被告バッグ製品の輸入,販売及び販売のための展示が原告の有する商標権を侵害する行為であると主張して,不正競争防止法3条1項,2項に基づき,各被告製品の輸入,販売及び販売のための展示の差止めを求めるとともに,各被告製品の廃棄を求め,商標法36条1項,2項,37条1号に基づき,被告バッグ製品の輸入,販売及び販売のための展示の差止めを求めるとともに,被告バッグ製品の廃棄を求め,民法709条(不正競争防止法4条)に基づき,損害賠償として金1500万円の支払を求める事案である。
なお,附帯請求は,不法行為の後の日である平成21年6月19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求である。
1争いのない事実等(認定事実については証拠を掲記する。)3(1)当事者(弁論の全趣旨)ア原告は,トランク,鞄,袋物の製造販売を業とするフランス国の法人である。
イ被告は,運動用具及び衣類等スポーツ用品並びに靴の輸出入,販売等を業とする株式会社であり,ドイツ国の法人であるアディダス社の日本における子会社である。
(2)原告の商標権(甲11の1・2,甲13,乙28)原告は,原告商標について次の商標権(以下「原告商標権」という。)を有する。
登録番号第4977875号出願年月日平成17年12月13日出願番号商願2005-121333登録年月日平成18年8月11日優先権主張国名フランス共和国出願年月日2005年6月16日商品及び役務の区分第18類指定商品かばん類,皮革製旅行用具入れ,旅行用衣服かばん,旅行用トランク,旅行用小型手提げかばん,携帯用化粧道具入れ,リュックサック,ハンドバッグ,ビーチバッグ,通学用かばん,スーツケース,ブリーフケース,札入れ,財布(貴金属製のものを除く),皮革製キーケース,カード入れ,傘,日傘,つえ商標別紙商標目録記載のとおり(3)原告標章の使用(甲2の1・2,甲4の各枝番,甲20の1・2等)原告は,その製造販売するトランク,鞄,袋物に原告標章を付している。
(4)被告の行為(甲6,弁論の全趣旨)4ア被告は,被告標章1を付したバッグ(定価1万8165円(税込み)。
甲21の1。被告バッグ製品)及び被告標章2を付した靴(定価1万4700円(税込み)。甲21の2。被告靴製品)を,遅くとも平成20年初めころから,輸入し,販売し,販売のために展示していた。
イ被告は,各被告製品の輸入,販売及び販売のための展示を停止した。
2争点(1)不正競争防止法違反の成否(争点1)(2)商標権侵害の成否(争点2)(3)差止め及び廃棄の必要性(争点3)(4)損害額(争点4)第3争点に関する当事者の主張1争点1(不正競争防止法違反の成否)について〔原告〕(1)原告標章と各被告標章との類似性ア原告標章原告標章は,褐色の地に,それぞれ卵形の点により構成された,白色の形の図形,薄茶の形の図形及び濃い茶色の形の図形の組合せから成るモチーフを連続して配して成る。
イ各被告標章(ア)被告標章1被告標章1は,褐色の地に,それぞれ卵形の点により構成された,白色の木の葉状の図形,薄い緑がかった茶色の木の葉状の図形,及び濃い茶色の木の葉状の図形の組合せから成るモチーフを連続して配して成る。
(イ)被告標章2被告標章2は,黒の地に,それぞれ卵形の点により構成された,白色の木の葉状の図形,薄い緑がかった茶色の木の葉状の図形及び濃い茶色5の木の葉状の図形の組合せから成るモチーフを連続して配して成る。
(ウ)なお,各被告標章のモチーフは,被告の主張する「トレフォイルマーク」(同一色の木の葉状の図形を3つ配したものであり,かつ,中央部から下部にかけて横に3本の直線で切断されているもの)とは異なる。
ウ原告標章と各被告標章との類似性(ア)原告標章と各被告標章とは,いずれも,褐色又は黒の地にモチーフを連続的に配して成り,上記モチーフは,白色,やや緑がかった茶色及び濃い茶色の卵形の点で構成された図形を組み合わせて成る。
(イ)原告標章においては,各モチーフを構成する要素である約150度の角度を成す白色の形の図形が際立って見え,これが連続して褐色の地に際立って見える。
他方,各被告標章においては,各モチーフを構成する要素である右側に配置された白色の木の葉状の図形,中央に配置された薄い緑がかった茶色の木の葉状の図形が際立って見える。そして,白色の木の葉状の図形と,この直ぐ右上に配置されたモチーフのうち,やや緑がかった薄い茶色の木の葉状の図形とが約150度の角度を成して接し,やや緑がかった薄い茶色の木の葉状の図形と白色の木の葉状の図形とが連続して,褐色又は黒色の地に際立って見える。
(ウ)以上のとおり,原告標章と各被告標章とは,構成,色彩及び美観の点において共通しており,両者は類似する。
(2)原告標章の著名性ア原告は,1853年にパリのサントノレに誕生した,高級トランク,鞄,袋物のメーカーである。
原告は,1892年,トランク,鞄の外張りのコーティングキャンバスに,耐久性,防水性に優れた麻,木綿又は大麻で織り,天然アラビアゴムを手塗りしてコーティングを施したキャンバスを用い,それに新たに考案6した絡み合った杉綾のモチーフを付した新製品の製造販売を始めた。
絡み合った杉綾のモチーフ(何工程もの手間をかけて,1色ずつ色を加えて杉綾模様を描き出す。)を付したキャンバスを用いたトランク,鞄は,時代を超えた,原告を象徴する定番商品となり,現在に至るまで継続して,製造販売されている。
イ原告の製造販売するトランク,鞄,バッグ等は,2004年(平成16年)から日本でも販売されるようになり,「伝統に裏打ちされた高級品」との評価を受け,着実に売上げを伸ばしてきた。
ウ原告や絡み合った杉綾のモチーフの連続模様の標章を付したトランク,鞄,袋物は,2004年(平成16年)以降,継続的に多数のファッション雑誌等に紹介されてきた(甲4の各枝番)。
「YAHOO!JAPAN」のインターネット検索サイトにおいて,「GOYARD」の単語を入力して検索すると,日本語のページに限っても,約39万8000件の検索結果が表示される(甲5の1)。加えて,原告や原告の商品は,インターネットサイトにおいても,紹介され,販売されている(甲5の2ないし6)。
エ以上によれば,褐色の地に濃い茶色の卵形の点から成る図形,薄い茶色の卵形の点から成る図形,及び白色の卵形の点から成る図形で構成される絡み合った杉綾のモチーフの連続模様(原告標章)は,原告のトランク,鞄,袋物の商品に付する標章として著名性を有するといえる。
(3)原告標章の周知性及び各被告標章との誤認混同のおそれア仮に,原告標章が著名性を有するとはいえないとしても,原告標章は,日本において,遅くとも2008年(平成20年)初めころには,原告が製造販売するトランク,鞄,袋物に付する標章として需要者(主に,ファッションに関心のある20歳代から50歳代の婦人層)の間に周知であった。
7イバッグ及び鞄は,ファッション業界では「雑貨」,すなわち衣服以外の身に付けるものとして把握され,衣類とともに広告宣伝されるものである。
原告標章を付したトランク,鞄,袋物と,被告標章1を付したバッグ及び被告標章2を付した靴とは,密接に関連し,需要者を共通にする。
したがって,被告標章1を付したバッグや,被告標章2を付した靴を,輸入し,販売し,販売のために展示することは,需要者の間に,各被告製品が原告の製造販売に係るものであるとの誤認,又は各被告製品が原告と何らかの経済的関係にある者により製造され,輸入され,販売され,あるいは販売のために展示されるものであるとの誤認を生じさせるおそれがあるといえる。
(4)以上によれば,被告が各被告製品を輸入し,販売し,又は販売のために展示する行為は,不正競争防止法2条1項2号,あるいは同項1号の不正競争行為に該当する。
〔被告〕(1)原告標章と各被告標章とが非類似であることについてア原告標章の外観と各被告標章の外観とが非類似であること(ア)原告標章は,3つの杉綾を併記し,「Y」のイニシャルを形作っているモチーフから成る標章である。「Y」字のマークは,上部の「V」の凹みと下部の棒とが接するように縦に配列され,かつ,各「Y」字の背景となる隙間が正三角形となるように,それぞれの「Y」字が配列された杉綾(ヘリンボーン)模様となっている。「Y」字を構成する3つの杉綾は,上の白色,右の薄茶色,左の濃い茶色の3色で構成されている。
(イ)各被告標章は,三つ葉をデザイン化した,いわゆる「トレフォイルマーク」と呼ばれる,アディダス社の著名なマークをモチーフとする標章である。
各被告標章中の三つ葉は,三つ葉を構成する左右の葉が,それぞれ左8上,若しくは右上に配された三つ葉の下部中央部に接するように配置され,すべての三つ葉の大きさは均一となっている。三つ葉は,右葉の白色,中央葉の黄緑色(抹茶色),左葉の薄茶色の3色で構成されている。
(ウ)原告標章及び各被告標章に接した需要者は,原告標章については「3色の杉綾から構成されるYのイニシャルをモチーフとした杉綾地模様」という印象を持ち,各被告標章については「3色の三つ葉をモチーフにして,それを均一的に配列した地模様」という,原告標章とは全く異なる印象を持つはずであり,原告標章と各被告標章とは,外観において,非類似である。
イ各被告標章のモチーフである「トレフォイルマーク」の著名性各被告標章がモチーフとしている「トレフォイルマーク」は,1972年(昭和47年)に,ドイツ連邦共和国において使用が開始されて以来,日本を含む世界各国において商標登録され,アディダス社の商品に使用されてきた被告(アディダス社)の著名な登録商標である。
その後,「トレフォイルマーク」は,アディダス社のコーポレート・ロゴに採用され,1997年(平成9年)まで,アディダス社のシンボルとして使用されてきた。
日本においては,かばん類について1983年(昭和58年),被服について1985年(昭和60年),履物について1986年(昭和61年)に商標登録され,アディダス社の種々の商品に使用されている(乙13ないし15の各枝番)。
各被告標章が上記のとおりアディダス社の著名な登録商標である「トレフォイルマーク」をモチーフとしていることからすると,需要者において,各被告標章を「Y」のイニシャルをモチーフとした原告標章と誤認混同するおそれはない。
ウ以上のとおり,需要者において,原告標章と各被告標章とを全体的に類9似のものとして受け取るおそれは全くなく,両者は非類似である。
(2)原告標章に著名性が認められないことについてアファッション雑誌等(甲4の各枝番)に原告の商品の広告記事が掲載されていること,「YAHOO!JAPAN」のインターネット検索サイトにおいて,「GOYARD」の単語を入力して検索すると,約39万8000件の日本語ページの検索結果が表示されること(甲5の1),原告の商品がインターネットサイトにおいて,紹介されていること(甲5の2・3)は認め,原告,原告の商品及び原告標章が日本において著名性を有することは否認ないし争う。
イ原告が製造販売するトランク,鞄,袋物は,2004年(平成16年)になって,初めて日本市場に進出したものであり,現在においても,日本国内での販売店舗数はわずかな数に止まっている。
原告の商品に付されている原告標章が,不正競争防止法2条1項2号所定の著名性を獲得していないことは明らかである。
ウ原告の名称である「GOYARD」さえ,いまだ著名性を獲得しているとはいえない現状においては(乙5ないし8参照),単なる商品の模様でしかない原告標章の知名度が更に低いことは明らかであって,原告標章の著名性は認められない。
(3)原告標章に周知性が認められないこと及び原告標章と各被告標章との誤認混同のおそれがないことについてア原告,原告の商品及び原告標章が日本において周知性を有することは否認ないし争う。
原告が本件において提出する証拠からは,原告標章が周知性を獲得したとは認められない。
イ各被告製品が,原告又は原告と何らかの経済的関係にある者の商品であると誤認されるおそれがあるとの点は否認する。
10(ア)原告標章を付した原告の商品(トランク,鞄類)が販売されている日本国内の店舗は,わずかな数である。また,原告の商品の価格帯は,10万円以上という,高価格である。
他方,各被告製品は,被告の直営店と2軒の取引先小売店という限定された店舗において,アディダス社の,主として「トレフォイルマーク」を使用した商品である「オリジナルス商品」のカテゴリーに含まれる2008年(平成20年)春夏限定企画商品として,販売されたにすぎない。また,各被告製品の価格帯は,1万円から2万円である。
以上のとおり,価格帯の全く異なる商品が,それぞれ限定された全く別の場所で販売されていたことから,両者が混同されるおそれは全くない。
(イ)各被告製品には「adidas」の文字も付されており,各被告製品がアディダス社の商品であることが明らかであるから,需要者において,各被告製品を原告の商品と混同することはない。
実際にも,各被告製品が販売されていた当時,各被告製品に関して,原告の商品との間で混同が生じたことはない。
2争点2(商標権侵害の成否)について〔原告〕(1)被告バッグ製品に被告標章1を付す行為は,被告標章1の商標的使用に当たる。
(2)被告標章1は,前記1の「争点1(不正競争防止法違反の成否)」における原告の主張(1)記載のとおり,原告商標と類似する。
(3)被告バッグ製品は,原告商標の指定商品に含まれる。
(4)以上によれば,被告が被告バッグ製品を輸入し,販売し,又は販売のために展示する行為は,商標法37条1号により,原告商標権を侵害する行為であるとみなされる。
11(5)被告の主張に対する反論ア原告商標の外観に関する被告の主張は否認ないし争う。
イ原告商標(原告商標に係る商標登録願の写しである甲11の2)からは,被告の主張する「E GOYARD」,「233 R St」,「HONORE」及び「PARIS」の文字を看取することができない。
また,原告商標において,識別力を有する要部は,連続模様の部分であって,文字部分ではない。
〔被告〕(1)被告バッグ製品が,原告商標の指定商品に含まれることは認め,その余は否認ないし争う。
(2)原告商標と被告標章1とが非類似であることについてア原告商標と被告標章1とは,前記1の「争点1(不正競争防止法違反の成否)」における被告の主張(1)記載のとおり,類似しない。
イ商標法3条1項6号について,特許庁における審査基準では,「地模様(例えば,模様的なものの連続反覆するもの)のみからなるものは,本号の規定に該当するものとする。」とされており,地模様は原則として(使用による識別性(同条2項)が認められない限り)識別力がないとされている。
原告商標の中央部の「Y」字を構成する,?上部の白色の杉綾の部分には「E GOYARD」の文字が,?左下の濃い茶色の杉綾の部分には「233 R St」及び「PARIS」の文字が,?右下の薄茶色の杉綾の部分には「HONORE」及び「PARIS」の文字が,それぞれ記載されている。
原告商標は,その地模様には識別力が認められないものの,上記文字が記載された3つの杉綾から構成される「Y」字部分に識別力が認められて,商標登録されたものと考えられる。
原告商標の識別力が,「E GOYARD」,「233 R St」,「HONORE」及び12「PARIS」の文字が記載された「Y」字部分にある以上,この文字部分を持たない被告標章1と原告商標との間に類似性が認められないことは明らかである。
3争点3(差止め及び廃棄の必要性)について〔原告〕被告は,遅くとも平成20年初めころから,各被告製品を輸入し,販売し,販売のために展示した。
被告は,各被告製品の輸入,販売及び販売のための展示を停止しているものの,いつでもこれを再開するおそれがある。
よって,原告は,被告に対し,不正競争防止法3条又は商標法36条により,侵害行為の差止請求権及び各被告製品の廃棄請求権を有する。
〔被告〕(1)被告が,各被告製品を輸入し,販売し,販売のために展示したこと,現在は各被告製品を輸入,販売及び販売のために展示していないことは認め,被告がこれらの行為を再開するおそれがあるとの原告の主張は争う。
(2)各被告製品は,もともと2008年(平成20年)春夏シーズンに販売期間を限った商品である(2008年(平成20年)秋冬号以降の被告の商品カタログ(乙1の1ないし3,乙2,乙3)には,各被告製品は掲載されていない。)。
被告は,各被告製品の予定販売期間が終了したため,各被告製品の販売を終了したのである。
したがって,各被告製品の輸入,販売及び販売のための展示の停止は恒久的なものであって,一時的なものではない。
なお,被告は,各被告製品の在庫については,裁判資料用に残した数点のほかは,すべて廃棄済みである(乙4の1ないし6)。
4争点4(損害額)について13〔原告〕(1)被告の不正競争行為による損害額ア被告は,原告標章の著名性を被告が展開するブランドのイメージアップに利用しようとして,被告標章1を付した被告バッグ製品及び被告標章2を付した被告靴製品を輸入し,販売し,又は販売のために展示したのであるから,被告には,不正競争行為を行うにつき故意がある。
イ被告は,各被告製品を,被告の「アディダスオリジナルコンセプトショップ」と称する直営店14店舗で小売りし,また,取引先に対して卸売りした。
被告による各被告製品の売上高は,少なくとも5000万円を下らない。
被告は,各被告製品の販売により,少なくとも1500万円の利益を得た。
被告の得た上記利益額1500万円は,原告が被告の不正競争行為により被った損害の額と推定される(不正競争防止法5条2項)。
(2)被告の商標権侵害行為による損害額ア被告は,原告商標の周知性を被告が展開するブランドのイメージアップに利用しようとして,被告標章1を付した被告バッグ製品を輸入し,販売し,又は販売のために展示したのであるから,被告には,商標権侵害行為を行うにつき故意がある。
イ被告は,被告バッグ製品を,被告の「アディダスオリジナルコンセプトショップ」と称する直営店14店舗で小売りし,また,取引先に対して卸売りした。
被告による被告バッグ製品の売上高は,少なくとも3500万円を下らない。被告は,被告バッグ製品の販売により,少なくとも1050万円の利益を得た。
被告の得た上記利益額1050万円は,原告が被告の商標権侵害行為により被った損害の額と推定される(商標法38条2項)。
14〔被告〕原告の主張は否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1争点1(不正競争防止法違反の成否)について(1)原告標章と被告標章1との類否についてア原告標章の外観(ア)原告標章は,同じ大きさの3つの杉綾(ヘリンボーン)を,各杉綾の凸側の綾線が他の2つの杉綾の凸側の綾線とそれぞれ接するように隣り合わせに配して,「Y」字形としたモチーフ(一模様の単位)を連続して配して成る。
(イ)上記モチーフは,?多数の白色の小さな卵形の点が3列に描かれて成る杉綾,?多数の薄茶色の小さな卵形の点が3列に描かれて成る杉綾,?多数の濃い茶色の小さな卵形の点が3列に描かれて成る杉綾で構成される。
(ウ)各モチーフは,モチーフを構成する杉綾の凹み部が,上部,右下部,左下部に配されたモチーフを構成する2つの杉綾の端部と接するように(白色の杉綾の凹み部には,薄茶色の杉綾の端部及び濃い茶色の杉綾の端部が,薄茶色の杉綾の凹み部には,白色の杉綾の端部及び濃い茶色の杉綾の端部が,濃い茶色の杉綾の凹み部には,白色の杉綾の端部及び薄茶色の杉綾の端部が,それぞれ接するように)連続して配されている。
各モチーフの隙間である地の部分は,一定の三角形の形状を成している。
イ被告標章1の外観(ア)被告標章1は,同じ大きさの3つの葉(楕円形に近い形で,かつ,長軸方向の両端が尖った形状)を,うち1葉は長軸方向を縦として垂直に,うち2葉は上記垂直に配された葉の左右にこれに接するように斜めに,15各葉の長軸方向の下端部がほぼ1点に集まるように配して,扇形状としたモチーフを連続して配して成る。
(イ)上記モチーフは,?多数の黄緑色(緑がかった薄茶色)の小さな卵形の点が描かれて成る中央部の葉,?多数の白色の小さな卵形の点が描かれて成る右部の葉,?多数の茶色の小さな卵形の点が描かれて成る左部の葉で構成される。
(ウ)上記モチーフは,モチーフを構成する右部の葉(白色)の上端部が,右横に配されたモチーフを構成する左部の葉(茶色)の上端部及び右上部に配されたモチーフの下部中央(3つの葉の長軸方向の下端部)付近に,左部の葉(茶色)の上端部が,左横に配されたモチーフを構成する右部の葉(白色)の上端部及び左上部に配されたモチーフの下部中央(3つの葉の長軸方向の下端部)付近に,それぞれ接するように連続して配されている。
各モチーフの隙間である地の部分の形状は一定でない。
ウ原告標章と被告標章1との対比原告標章の外観と被告標章1の外観とは,?同じ大きさの3つの図形から構成されるモチーフを連続して配して成る模様である点,?モチーフを構成する図形が多数の小さな卵形の点が描かれて成る点,?モチーフを構成する図形に白色及び茶色が用いられている点において共通する。
しかしながら,原告標章の外観と被告標章1の外観とは,?原告標章のモチーフを構成する図形が杉綾(ヘリンボーン)であるのに対し,被告標章1のモチーフを構成する図形が葉(楕円形に近い形で,かつ,長軸方向の両端が尖った形状)である点,?原告標章のモチーフは「Y」字形であるのに対し,被告標章1のモチーフは扇形状である点,?原告標章においては,各モチーフの隙間である地の部分は一定の三角形の形状を成しているのに対し,被告標章1においては,各モチーフの隙間である地の部分は16一定の形状でない点等において相違している。
原告標章の外観と被告標章1の外観との間には,上記?ないし?の共通点があるものの,上記?ないし?の相違点があるため,原告標章は,全体として,「3色の杉綾(ヘリンボーン)から構成される「Y」字形をモチーフとした模様」という印象を与えるのに対し,被告標章1は,全体として,「3色の葉から構成される扇形をモチーフとした模様」という印象を与える。
上記のとおり,原告標章の外観と被告標章1の外観とは,全体として異なる印象を与えるものであり,類似しない。
また,仮に,原告標章,あるいは被告標章1から何らかの称呼又は観念が生じ得るとしても,原告標章の外観及び被告標章1の外観は,前記認定のとおりであって,両者は外観において類似しないのであるから,両標章から同一又は類似の称呼観念が生じることはない。
よって,原告標章と被告標章1とは類似しない。
(2)原告標章と被告標章2との類否についてア原告標章の外観は,前記(1)アで認定したとおりである。
イ被告標章2の外観(ア)被告標章2は,同じ大きさの3つの葉(楕円形に近い形で,かつ,長軸方向の両端が尖った形状)を,うち1葉は長軸方向を縦として垂直に,うち2葉は上記垂直に配された葉の左右にこれに接するように斜めに,各葉の長軸方向の下端部がほぼ1点に集まるように配して,扇形状としたモチーフを連続して配して成る。
(イ)上記モチーフは,?多数の黄緑色(緑がかった薄茶色)の小さな卵形の点が描かれて成る中央部の葉,?多数の白色の小さな卵形の点が描かれて成る右部の葉,?多数の茶色の小さな卵形の点が描かれて成る左部の葉で構成される。
17(ウ)上記モチーフは,モチーフを構成する右部の葉(白色)の上端部が,右横に配されたモチーフを構成する左部の葉(茶色)の上端部及び右上部に配されたモチーフの下部中央(3つの葉の長軸方向の下端部)付近に,左部の葉(茶色)の上端部が,左横に配されたモチーフを構成する右部の葉(白色)の上端部及び左上部に配されたモチーフの下部中央(3つの葉の長軸方向の下端部)付近に,それぞれ接するように連続して配されている。
各モチーフの隙間である地の部分の形状は一定でない。
ウ原告標章と被告標章2との対比原告標章の外観と被告標章2の外観とは,?同じ大きさの3つの図形から構成されるモチーフを連続して配して成る模様である点,?モチーフを構成する図形が多数の小さな卵形の点が描かれて成る点,?モチーフを構成する図形に白色及び茶色が用いられている点において共通する。
しかしながら,原告標章の外観と被告標章2の外観とは,?原告標章のモチーフを構成する図形が杉綾(ヘリンボーン)であるのに対し,被告標章2のモチーフを構成する図形が葉(楕円形に近い形で,かつ,長軸方向の両端が尖った形状)である点,?原告標章のモチーフは「Y」字形であるのに対し,被告標章2のモチーフは扇形状である点,?原告標章においては,各モチーフの隙間である地の部分は一定の三角形の形状を成しているのに対し,被告標章2においては,各モチーフの隙間である地の部分は一定の形状でない点等において相違している。
原告標章の外観と被告標章2の外観との間には,上記?ないし?の共通点があるものの,上記?ないし?の相違点があるため,原告標章は,全体として,「3色の杉綾(ヘリンボーン)から構成される「Y」字形をモチーフとした模様」という印象を与えるのに対し,被告標章2は,全体として,「3色の葉から構成される扇形をモチーフとした模様」という印象を18与える。
上記のとおり,原告標章の外観と被告標章2の外観とは,全体として異なる印象を与えるものであり,類似しない。
また,仮に,原告標章,あるいは被告標章2から何らかの称呼又は観念が生じ得るとしても,原告標章の外観及び被告標章2の外観は,前記認定のとおりであって,両者は外観において類似しないのであるから,両標章から同一又は類似の称呼観念が生じることはない。
よって,原告標章と被告標章2とは類似しない。
(3)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,被告による各被告製品の輸入,販売及び販売のための展示が不正競争防止法2条1項1号ないし2号に該当する行為であるとは認められない。
2争点2(商標権侵害の成否)について(1)原告商標の外観ア原告商標は,同じ大きさの3つの杉綾(ヘリンボーン)を,各杉綾の凸側の綾線が他の2つの杉綾の凸側の綾線とそれぞれ接するように隣り合わせに配して,「Y」字形としたモチーフを連続して配して成る。
イ上記モチーフは,?多数の白色の小さな卵形の点が3列に描かれて成る杉綾,?多数の薄茶色の小さな卵形の点が3列に描かれて成る杉綾,?多数の濃い茶色の小さな卵形の点が3列に描かれて成る杉綾で構成される。
ただし,原告商標の中央部に位置するモチーフのみは,少なくとも,白色の部分が「E GOYARD」とのアルファベット文字等を杉綾状に配して,薄茶色の部分が「HONORE」及び「PARIS」のアルファベット文字を杉綾状に配して成る杉綾で構成されている(なお,原告の実際の商品においては,模様を構成するモチーフの一部に,白色の「E:GOYARD」のアルファベット文字等から成る杉綾,濃い茶色の「233 R St」及び「PARIS」のアルファベット文字等から成る杉綾,薄茶色の「HONORE」及び「PARIS」のアル19ファベット文字から成る杉綾で構成されたモチーフが使用されている(甲2の1,甲20の1・2,乙17等)ものの,原告商標権に係る登録証,出願関係書類等(甲11の1・2,乙27,28,乙29の1ないし3)からは,濃い茶色の部分の詳細は判然としない。)。
ウ各モチーフは,モチーフを構成する杉綾の凹み部が,上部,右下部,左下部に配されたモチーフを構成する2つの杉綾の端部と接するように(白色の杉綾の凹み部には,薄茶色の杉綾の端部及び濃い茶色の杉綾の端部が,薄茶色の杉綾の凹み部には,白色の杉綾の端部及び濃い茶色の杉綾の端部が,濃い茶色の杉綾の凹み部には,白色の杉綾の端部及び薄茶色の杉綾の端部が,それぞれ接するように)連続して配されている。
各モチーフの隙間である地の部分は,一定の三角形の形状を成している。
(2)被告標章1の外観は,前記1(1)イで認定したとおりである。
(3)原告商標と被告標章1との対比原告商標の外観と被告標章1の外観とは,?同じ大きさの3つの図形から構成されるモチーフを連続して配して成る模様である点,?モチーフを構成する図形が多数の小さな卵形の点が描かれて成る点,?モチーフを構成する図形に白色及び茶色が用いられている点,において共通する。
しかしながら,原告商標の外観と被告標章1の外観とは,?原告商標のモチーフを構成する図形が杉綾(ヘリンボーン)であるのに対し,被告標章1のモチーフを構成する図形が葉(楕円形に近い形で,かつ,長軸方向の両端が尖った形状)である点,?原告商標のモチーフは「Y」字形であるのに対し,被告標章1のモチーフは扇形状である点,?原告商標においては,各モチーフの隙間である地の部分は一定の三角形の形状を成しているのに対し,被告標章1においては,各モチーフの隙間である地の部分は一定の形状でない点,?原告商標を構成するモチーフの一部はアルファベット等の文字を杉綾状に配して成る図形により構成されているのに対し,被告標章1を構成す20るモチーフはすべて卵形の点が描かれて成る図形で構成されている点等において相違している。
原告商標の外観と被告標章1の外観との間には,上記?ないし?の共通点があるものの,上記?ないし?の相違点があるため,原告商標は,全体として,「3色の杉綾(ヘリンボーン)から構成される「Y」字形をモチーフとした模様」という印象を与えるのに対し,被告標章1は,全体として,「3色の葉から構成される扇形をモチーフとした模様」という印象を与える。
上記のとおり,原告商標の外観と被告標章1の外観とは,全体として異なる印象を与えるものであり,類似しない。
また,仮に,原告商標,あるいは被告標章1から何らかの称呼又は観念が生じ得るとしても,原告商標の外観及び被告標章1の外観は,前記認定のとおりであって,両者は外観において類似しないのであるから,両標章から同一又は類似の称呼観念が生じることはない。
よって,原告商標と被告標章1とは類似しない。
(4)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,被告による被告バッグ製品の輸入,販売及び販売のための展示が原告の有する原告商標権を侵害する行為であるとは認められない。
3よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の本訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 阿部正幸
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