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関連審決 取消2008-300805
関連ワード 識別力 /  商品商標 /  役務商標 /  包装 /  品質保証機能 /  質保証機能 /  識別機能 /  指定商品 /  指定役務 /  4条1項10号 /  不使用 /  駆け込み使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  不使用取消審判 /  継続 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10305号 審決取消請求事件
原告ピ ンクベリ ーインク
同訴訟代理人弁護士三木茂 井口加奈子 狩野雅澄
被告有 限会社ダックス
同訴訟代理人弁理士佐藤強 堀江真一 南島昇
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/02/03
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が取消2008-300805号事件について平成21年5月22日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1の被告の本件商標に係る商標登録について,不使用を理由とする当該登録の取消しを求める原告の下記2の本件審判請求が成り立たないとした特許庁の別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1本件商標本件商標(登録第4398833号商標)は,「Pinkberry」の欧文字を標準文字で表してなり,平成11年8月31日に登録出願され,第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着」を指定商品として,平成12年7月7日に設定登録されたものである。
2特許庁における手続の経緯原告は,平成20年6月27日,本件商標がその指定商品のすべてについて,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないことをもって,不使用による取消審判を請求し,当該請求は同年7月17日に登録された。
特許庁は,これを取消2008-300805号事件として審理し,平成21年5月22日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,同年6月3日にその謄本が原告に送達された。
3本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,指定商品に含まれる「洋服」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をした,というものである。
4取消事由被告が「洋服」に本件商標の使用をしていたとの認定判断の誤り第3当事者の主張〔原告の主張〕被告は,本件審判の請求の登録時である平成20年7月17日から遡及して3年以内に本件商標を使用していない。
(1)被告提出に係る証拠の不当性ア甲14,18について写真(甲14,18)には,撮影年月日として平成20年8月19日と表示されているところ,このような表示は,誰でも任意に設定,操作できるものであるから,信頼性がないことはいうまでもない。
仮に,この撮影年月日が真正なものであったとしても,この日付は,本件審判の請求の登録時である平成20年7月17日より後であるから,同日より遡及して3年以内に「PINKBERRY」との標章を使用していたことの証拠にはならない。
イ甲15について被告と大須301ビルとの間の建物賃貸借契約書(甲15)には,使用目的として「婦人衣料品及び雑貨品の販売の用に供する店舗」とされているだけであり,被告が平成17年5月27日から本件審判の請求の登録時までの間「PINKBERRY」との名称で店舗を経営していたことの証拠にはならない。
甲14との関係で見ても,別の名称で店舗を経営していたが,本件審判請求があったことから,駆け込み使用として店舗名を変えた可能性は否定できない。
また,甲16との関係で見ても,甲16には,大須301ビルのテナントとして,複数の衣料品店が掲載されていることからすれば,上記契約書が「PINKBERRY」のある場所についてのものかどうかも不明である。
ウ甲20について下げ札の仕入伝票(甲20)の宛先社店名欄に「(有)ダックス御中」となっているものの,「A社長様」が併記されている。甲20が発行された平成18年3月29日当時,被告の役員は取締役であるY一人であり,「A」なる人物が社長であった事実がないから,被告が依頼して納入されたものとしての証拠にはならない。
エ甲22について納品書(甲22)において,納品業者である株式会社折兼は,「食品包装綜合商社」となっている。上記納品書により納品された手提げ袋は,食品用の袋であると推認でき,洋服等に関連して注文したものとは限らないから,被告の指定商品である洋服等の包装用として納入された手提げ袋の納品書であるとの証拠にはならない。
(2)被告商品の製造・販売について被告が,本件審判の請求の登録時である平成20年7月17日から遡及して3年以内に「Pinkberry」というタグを付けた商品を製造・販売している事実はない。
すなわち,甲17には,甲18のような撮影年月日がない。現在もなお甲17のパーカを製造しているのであれば,甲18の各写真とともに撮影すればよいにもかかわらず,あえて甲17にのみ撮影年月日がないというのは,この写真だけが異なる時期に撮影されたものにほかならない。つまり,甲17に示されているピンクのパーカは,現存しない商品であって,いつ製造・販売されたのか全く不明である。
したがって,被告が,いつからいつまで甲17の「Pinkberry」というタグを付けた商品を販売しているのかの立証はない。そして,甲17以外に,被告が「Pinkberry」のタグを付けた商品はない。
(3)被告の商標使用の不存在被告が「Pinkberry」という本件商標をそのまま使用していないことは,前記(2)のとおりであり,他方で,被告が「PINKBERRY」との標章を使用していたとしても,それは本件商標である「Pinkberry」とは社会通念上同一ではなく,本件商標の使用には当たらない。
本件審決は,被告が使用している「PINKBERRY」と本件商標とは,「欧文字における小文字と大文字の差異があるのみで,いずれも『ピンクベリー』(ピンク色の果実)という同一の称呼,観念を生ずるものであるから,商標の持つ出所識別標識としての機能自体に差異があるものとはいえず」,商標法50条1項括弧書きの記載を踏まえてみても,社会通念上同一と認められると判断した。
しかし,商標の出所識別標識としての機能は,需要者,取引者の認識を前提とするものであることは当然であり,文字の表示の単純な比較のみによって社会通念上同一か否かを決することは許されない。被告の「PINKBERRY」は,渋谷109系ファッション等を意識したブランドであり(甲2),需要者は10代から20代の若い女性であるところ,渋谷109に入っている店舗のファッションブランド名は,大文字と小文字を厳密に区別している(甲4,27〜29)。
本件においても,本件商標と「PINKBERRY」とは,需要者である若い女性の認識を前提にした場合には,全く別物であり,社会通念上同一とはいえない。
したがって,被告が「PINKBERRY」との標章を使用していたとしても,それをもって本件商標の使用とはいえないというべきである。
(4)被告の使用態様仮に,「PINKBERRY」が本件商標と実質的に同一であるとしても,被告は,商標法50条にいう「使用」をしていない。
「PINKBERRY」の店舗で販売されている商品には,別ブランドのタグと紙タグが付いており(甲9),値札以外のタグは他者の商品の出所を示すものとなっている。
そもそも商標は,自他商品識別機能品質保証機能を有するものである。そこで,ある標章が商標として使用されたか否かは,当該標章が商品について使用されたことにより,その商品についてこれらの機能を営むに至ったか否かによるべきである。
しかるに,「PINKBERRY」の店舗で商品を購入する需要者は,同じ商品に付されている製造元を示す他者のタグを見て当該商品を購入するか否かを判断するのであり,商品の出所は製造元である他者との認識を有するのが通常である。
これに対し,「PINKBERRY」のタグについては,値札として認識するとともに,屋号をそのまま印刷したものと見ることになる。手提げ袋も同じである。
商標の品質保証機能の点を考えた場合でも,ファッションに興味を持つ若い女性は,食料品等と異なり,洋服等を購入する場合,試着による着心地とデザイン性の高さを自ら評価するのであり,他店でも購入することのできる商品の販売店に品質保証を求めることはない。被告の店舗で販売されている商品は,若い女性をターゲットとした廉価なものであり(甲9の2),そこに来る若い女性は,該店舗でセレクトされ販売している点に着目して商品を購入するのではなく,あくまで,製造元やデザインを見て商品そのものの品質に着目して購入するかどうかを判断するのである。
よって,被告はその販売行為において,「PINKBERRY」との看板,タグや手提げ袋によって,何らの価値も付加しているとはいえず,当該商標に化体した識別力や信用を商品に与えているわけではないことは明らかである。
商品についての自他識別機能や品質保障機能の観点からは,「PINKBERRY」の表示は意味をなさないというべきである。
したがって,被告の「PINKBERRY」の使用は,商標法50条にいう「使用」には当たらない。
(5)小売等役務としての使用「PINKBERRY」の表示は,特定の商品との密接な関連性がなく,単に店舗における小売サービスを認識させるにとどまるから,小売等役務の出所を表示するにすぎず,指定商品の出所を識別させるものではなく,本件商標が指定商品について使用されていたとはいえない。
〔被告の主張〕被告は,本件審判の請求の登録前から現在まで,本件商標を使用している。
(1)被告による本件商標の使用ア被告は,B所在の「OSU301ビル」の1階において,平成17年から現在まで,小売店舗として「PINKBERRY大須店」を営業している(甲14〜16,23)。この店舗では,10代から20代の女性を主対象とした衣料品等を販売している。
イ被告は,同所において,「Pinkberry」の商標が記されたタグを付した衣料品を販売している(甲17)。また,「PINKBERRY」の商標が記された下げ札も,商品である衣料品に付されている(甲18〜20)。そして,「PINKBERRY」の標章が記された手提げ袋も,衣料品を収容する包装として使用されている(甲21,22)。
ウ本件商標は,「Pinkberry」の標準文字であるところ,被告が使用している商標のうち「Pinkberry」(甲17)は,本件商標と同一であり,被告が使用する「PINKBERRY」(甲14,18,19,21)は,本件商標の一部の文字をアルファベットの小文字から大文字に書き換えたものにすぎない。これら被告が使用している商標「PINKBERRY」及び「Pinkberry」からは,本件商標「Pinkberry」と同一の「ピンクベリー」の称呼が生じるから,本件商標と被告が使用する商標とは実質的に同一であり,被告は,本件商標を使用している。
(2)原告の主張に対する反論ア証拠について甲14は,被告が平成20年8月19日現在「PINKBERRY大須店」を営業している事実を示す証拠である。
平成19年には被告が「PINKBERRY」の名称で営業していたことは明らかであり(甲16),店舗の貸主も,借主である被告において契約当初から現在に至るまで「OSU301ビル」の1階を「PINKBERRY」という名称の店舗として使用が継続されている旨を述べている(乙11)。
甲20について原告のいう「A」なる人物は,被告の先の代表取締役であり(乙12),平成16年10月31日をもって取締役を辞任しているものの,その後も被告の現在の代表者とともにパートナーとして業務を行って,取引先との窓口になっていたことから,取引先が宛名として先の肩書きを利用しているにすぎない。
甲22についても,会社名や冒頭の標記で標榜する事業と,実際に行っている事業とが整合しないことなど,一般社会では広く認知されている常識である。
イ被告商品の製造・販売について被告は,「PINKBERRY」又は「Pinkberry」との表示のタグを付した衣料品を,平成20年7月17日以前から現在まで販売しているところ,甲14の撮影日時と甲17の撮影日時とが異なるからといって,甲17に係るパーカの存在そのものを否定する原告の主張は失当である。すなわち,被告による登録商標の使用の事実が継続しているにもかかわらず,本件のような不使用取消審判が請求されることは被告が予期しないことである。そのため,審判の請求の前に,そのような審判に備えた店舗の写真や商品の写真を証拠のために予め準備するなどできるはずがない。このような事情から,本件審判の請求後に,原告の主張に応答するために適当な写真を撮影したものであり,甲14(店舗)と甲17(パーカ)の撮影が異なる日にされたことに何の不合理もない。
ウ被告の商標の使用について(ア)被告は,本件商標を標準文字として出願し,商標登録を受けているところ,標準文字は,商標登録出願人の意思により,「登録を求める商標の構成が文字のみであって,その態様に特別に権利を要求しないとき」に適用されるものである。原告が主張するようにアルファベットの大文字と小文字とを厳密に区別するブランドであれば,標準文字のような一般化した標章ではなく,特有のロゴを用いて商標登録を受ければ足りるのである。つまり,アルファベットの大文字と小文字とを厳密に区別した特有のロゴを用いてブランド展開を図り顧客に価値を訴えるのか,それとも標準文字を用いて特定のロゴにこだわることなくブランド展開を図り顧客に価値を訴えるのか,いずれも商標権者が任意に選択すべき事項にすぎない。
被告の店舗を利用する需要者にとっては「PINKBERRY」も「Pinkberry」も等しく被告の「ピンクベリー」ブランドであるため,本件商標の需要者がそれらと等しく大文字と小文字とを厳密に区別しているということにはならない。
(イ)商標法2条1項1号,3項1号の定義によれば,被告は,業として商品である洋服等に登録商標を使用し,その商品の包装である手提げ袋等に当該登録商標に係る標章を付しているから,被告が本件商標を使用しているのは明らかである。
近年でこそプライベートブランドが認知され小売店が自己のブランドを付した商品を販売しつつあるものの,多くの小売店はいまだに他人が製造した商品を販売している。原告の主張に従うと,例えば,家電量販店においては,需要者は,該店舗でセレクトされ販売している点に着目して家電製品を購入するのではなく,あくまで,製造元のブランドやデザインを見て商品そのものに着目して購入を判断するのであるから,家電量販店の店名は商標として使用されていないということになる。
このような主張は,商標法の理解の欠如といわざるを得ず,販売票としての商標の機能を否定するかのような原告の主張は,失当である。
(ウ)被告の行為は,商標法2条3項1号,2号,8号の規定のいずれかに該当するものであるから,原告の小売等役務商標に関する主張についても,商標法の法解釈として失当である。
第4当裁判所の判断1認定事実(1)被告は,平成4年に,紳士服及び衣料品の販売,靴・カバン及び皮革製品の販売,服装飾品その他の洋品雑貨の販売等を主たる目的として設立された会社である(甲1)。被告は,平成17年5月27日,合資会社大須屋洋服店との間で,B所在の12階建ビル「大須301」の1階部分約35.96?を,婦人衣料品及び雑貨品の販売に供する店舗に使用する目的で賃借する旨の契約を締結した(甲15,乙2,11)。
(2)被告は,その後まもなく,遅くとも平成19年1月以前に,上記ビルの1階において,「PINKBERRY大須店」(以下「被告店舗」という。)を開設し,主として若い女性を対象とした衣料品等を販売している。被告店舗は,「PINKBERRY」の看板を設置し,「渋谷109系のファッションや,”裏原”系のファッションを意識したヤングカジュアルの楽しいお店」と紹介されている(甲2,3,6〜8,14,16,23,乙1,3,10,11)。
(3)被告は,遅くとも平成20年3月29日ころから,被告店舗において,「PINKBERRY」の下げ札を付した衣料品を販売している(甲9の1・2,18の1〜3,19,20,乙5の1〜3,6,7)。また,被告は,遅くとも平成18年5月24日ころから,被告店舗において,「PINKBERRY」と表示したビニール製の手提げ袋を,衣料品を収納する包装として使用している(甲21,22,乙8,9)。なお,被告店舗では,領収証にも「PINKBERRY」の表示が使用されている(甲9の2)。
(4)原告の主張(1)(2)についてア原告は,建物賃貸借契約書(甲15,乙2)をもって,被告が平成17年5月27日から本件審判の請求の登録時までの間「PINKBERRY」との名称で店舗を経営していたことの証拠にはならないと主張する。
確かに,「PINKBERRY」という看板を付した被告店舗の写真は,本件審判の請求の登録がされた後のものである(甲6〜8,14,乙1)。しかし,「OSUMAP2007>>2008」(甲16,乙3。「行事予定」として「2007年7月初旬よりお中元,バーゲンセール」と記載されていることから,平成19年7月以前に発行されたことが認められる。)に被告店舗が紹介されていること,被告店舗の賃貸人の陳述書(乙11)でも,賃貸借契約の当初から現在まで「PINKBERRY」の名称を使用していたとされていること,平成19年1月から8月までのカード売上明細(甲23,乙10)に「PINKBERRY」の店名が標記されていること等を総合すると,被告は,賃貸借契約締結後まもなく,遅くとも平成19年1月以前から現在に至るまで,「PINKBERRY大須店」の名称で,被告店舗を営業していたものと認められる。
イ原告は,「Pinkberry」というタグを付けたパーカの写真(甲17の1・2,乙4の1・2)に撮影年月日がないことから,このようなパーカは,現存しない商品で,いつ製造・販売されたのか全く不明であり,本件審判の請求の登録時である平成20年7月17日から遡及して3年以内に上記タグを付けた商品を製造・販売している事実はないと主張する。
原告が主張するとおり,甲17の1・2及び乙4の1・2の写真に撮影年月日はなく,平成20年7月17日から遡及して3年以内に本件商標「Pinkberry」そのものを付した商品を販売したことを証明する直接的な証拠は提出されていない。
しかしながら,平成20年3月29日付けの仕入伝票(甲20,乙7)に,被告が「PINKBERRY」の下げ札5000枚を仕入れたことが記載され,被告が平成20年8月19日に撮影した写真(甲18の1〜3,乙5の1〜3)及び原告代理人が同年11月8日に撮影した写真(甲9の1)には,被告店舗内で販売されていた衣料品に,「PINKBERRY」の下げ札が付されていることからすると,被告が,遅くとも平成20年3月29日ころから,被告店舗において,「PINKBERRY」の下げ札を付した衣料品を販売していたものと優に推認されるところであって,原告の主張はその推認を何ら妨げ得るものではない。
ウ原告は,納品書(甲22,乙9)により納品された手提げ袋は,食品用の袋であると推認でき,衣料品等の包装用として納入された手提げ袋の納品書であるとの証拠にはならないとも主張する。
しかしながら,被告あての平成18年5月24日付け納品書(甲22,乙9)において,「ピンクベリー」の手提げ袋の納品が記載されており,被告が衣料品の販売等を主たる目的とし,食料品の販売が会社の目的に掲げられてはいないこと(甲1)に照らすと,上記納品書の対象は「PINKBERRY」の表示がされた手提げ袋(甲21,乙8)であり,被告店舗で衣料品を販売する際に使用されるものと認定するのが相当というべきである。
よって,被告は,遅くとも同日ころから,上記の表示のある手提げ袋を衣料品の包装に使用していたものと推認することができる。
2本件商標の使用の有無(1)被告の行為前記1に認定した事実によれば,被告は,「PINKBERRY大須店」の名称の被告店舗において,遅くとも平成20年3月29日ころから,「PINKBERRY」の下げ札を付した衣料品を販売し,遅くとも平成18年5月24日ころから,「PINKBERRY」と表示した手提げ袋を衣料品を収納する包装として使用してきたものである。
(2)「本件商標」の使用といえるか否かア「PINKBERRY」の表示は,本件商標「Pinkberry」の文字をすべてアルファベットの大文字により表記したものであり,両者は,いずれも「ピンクベリー」の称呼及び「ピンク色の果実」という観念を生じ,社会通念上実質的に同一のものと評価することができる。
イ原告の主張(3)についてこの点について,原告は,渋谷109に入っている店舗のファッションブランド名は,大文字と小文字を厳密に区別しているから,需要者である若い女性の認識を前提にした場合には,「PINKBERRY」と「Pinkberry」とは全く別物であると主張する。
しかし,需要者である若い女性の認識が常にアルファベットの大文字と小文字を厳密に区別するものとまではいえないし,仮に,それゆえに両者に外観上相違する部分があるとしても,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」であっても「社会通念上同一と認められる商標」とされていること(商標法50条1項)に照らすと,「PINKBERRY」と「Pinkberry」とが称呼及び観念において同一である以上,社会通念上これらを同一のものと評価して差し支えないというべきである。
(3)本件商標の「使用」といえるか否かア被告が,前記認定のとおり,衣料品の下げ札や手提げ袋に「PINKBERRY」の表示をしてこれを販売している行為は,商標法2条3項1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」及び同項2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示…する行為」に該当する。
イ原告の主張(4)について原告は,被告店舗で販売されている商品には,製造元である別ブランドのタグと紙タグが付いており,商品の出所は製造元である他者との認識を有するから,商品についての自他識別機能や品質保障機能の観点からは,「PINKBERRY」の表示は意味をなさないと主張する。
なるほど,「PINKBERRY」の表示は,被告の営業する被告店舗の名称としても使用され,商品には,販売元である被告の「PINKBERRY」の表示の下げ札のほか,製造元を示すタグ等が付されている。しかし,商品に係る商標が,「業として商品を…譲渡する者」にも与えられるものであり(商標法2条1項1号),商品の製造業者のみならず,小売業者もまた,商品の譲渡等を行うことに変わりはないことに照らすと(同条3項2号参照),小売業者としての出所を表示することが,商標としての使用に当たらないということはできない。
そうすると,「PINKBERRY」の表示の下に衣料品を陳列販売し,また,衣料品に上記表示を付したことは,業として衣料品を譲渡する者がその販売業者としての出所を表示するものとして,本件商標を使用したものと評価することができる。
ウ原告の主張(5)について原告は,「PINKBERRY」の表示は,特定の商品との密接な関連性がなく,単に店舗における小売サービスを認識させるにとどまるから,小売等役務の出所を表示するにすぎず,指定商品の出所を識別させるものではなく,本件商標が指定商品について使用されていたとはいえないと主張する。
平成19年4月1日に小売等役務商標制度が新たに施行されたところ,商標を小売等役務について使用した場合に,商品についての使用とは一切みなされないとまではいうことができない。すなわち,商品に係る商標が「業として商品を…譲渡する者」に与えられるとする規定(商標法2条1項1号)に改正はなく,「商品A」という指定商品に係る商標と「商品Aの小売」という指定役務に係る商標とは,当該商品と役務とが類似することがあり(同条6項),商標登録を受けることができない事由としても商品商標役務商標とについて互いに審査が予定されていると解されること(同法4条1項10号,11号,15号,19号等)からすると,その使用に当たる行為(同法2条3項)が重なることもあり得るからである。
そして,商品の製造元・発売元を表示する機能を商品商標に委ね,商品の小売業を示す機能を小売等役務商標に委ねることが,小売等役務商標制度本来の在り方であり,小売等役務商標制度が施行された後においては,商品又は商品の包装に商標を付することなく専ら小売等役務としてのみしか商品商標を使用していない場合には,商品商標としての使用を行っていないと評価する余地もある。しかしながら,本件商標は,小売等役務商標制度導入前の出願に係るものであるところ,前記1の認定事実によれば,被告は,小売等役務商標制度が施行される前から本件商標を使用していたものである。このように,小売等役務商標制度の施行前に商標の「使用」に当たる行為があったにもかかわらず,その後小売等役務商標制度が創設されたことの一事をもって,これが本件商標の使用に当たらないと解すると,指定商品から小売等役務への書換登録制度が設けられなかった小売等役務商標制度の下において,被告に対し,「洋服」等を指定商品とする本件商標とは別に「洋服の小売」等を指定役務とする小売等役務商標の取得を強いることになり,混乱を生ずるおそれがある。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(4)小括よって,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に,指定商品に含まれる「洋服」について,本件商標と社会通念上同一の「PINKBERRY」の表示をもって,本件商標を使用したものと認められる。
3結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 杜下弘記
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