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関連審決 無効2008-890107
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10387審決取消請求事件 判例 商標
平成21行ケ10306商標登録取消決定取消請求事件 判例 商標
平成21行ケ10328審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  非類似 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10225号 審決取消請求事件
原告マ ルキユー株式会社
訴訟代理人弁理 士清水修
同 杉岡真紀
同 松井敬直
被告太陽産業株式会社
訴訟代理人弁護 士村上博一
同 忠政貴之
訴訟復代理人弁護 士横藪達広
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/03/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2008-890107号事件について平成21年6月30日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯被告は,別紙「本件商標」のとおり,「BBパワー」の文字を横書きしてなり,第28類「釣り具」を指定商品とする商標登録第5055603号(平成18年12月25日出願,平成19年6月22日設定登録。以下「本件商標登録」という。甲1)の商標権者である。
原告は,平成20年10月31日,本件商標登録は,次の(1)ないし(3)記載の商標と類似し,商標法4条1項11号に該当すると主張して,無効審判(無効2008-890107号事件)を請求した。
(1)登録第3199225号商標(以下「引用商標1」という。)は,別紙「引用商標1」のとおり,「パワー」の片仮名文字を横書きしてなり,平成5年6月8日に登録出願され,第31類「加工釣り餌・活き餌・その他の釣り用餌」を指定商品として(甲2),平成8年9月30日に設定登録され,その後,平成18年6月6日に商標権の存続期間更新登録がされたものである。
(2)登録第3245832号商標(以下「引用商標2」という。)は,別紙「引用商標2」のとおり,「パワー」の片仮名文字を横書きしてなり,平成6年1月31日に登録出願され,第28類「ルアー釣り用擬餌に付着させるための釣り用油,ぎじ針・ぎじ餌・その他の釣り具」を指定商品として(甲3),平成9年1月31日に設定登録され,その後,同19年1月23日に商標権の存続期間更新登録がされたものである。
(3)登録第4950707号商標(以下「引用商標3」という。)は,別紙「引用商標3」のとおり,「POWER」の欧文字を横書きしてなり,平成17年7月5日に登録出願され,第28類「擬餌,その他の釣り具」及び第31類「加工釣り餌,生き餌,その他の釣り用餌」を指定商品として(甲4),平成18年5月12日に設定登録されたものである(以下,引用商標1ないし3を総称して「引用商標」という。)。
特許庁は,平成21年6月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,平成21年7月9日,原告に送達された。
2審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件商標の「BBパワー」は,「BB」の欧文字部分と「パワー」の片仮名文字部分が一体のものとして理解,認識されるから,その外観は「BB」の欧文字部分を有する点で引用商標の外観と異なる上,「ビービーパワー」との称呼を生じ,「BB(と呼ばれるもの)の有する力,効力(パワー)」といった観念を生じさせる点で,「パワー」の称呼を生じ,かつ,「力,能力」等の観念を生じさせる引用商標とは異なるから,引用商標とは類似しておらず,商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるとはいえない,よって,同法46条1項の規定によりその登録を無効とすることはできない,というものである。
第3当事者の主張1審決の取消事由に関する原告の主張(1)本件商標の認定の誤り審決は,「本件商標は,『BB』の欧文字と『パワー』の片仮名文字を一般的なゴシック体で『BBパワー』と一連に横書きしてなるところ,本件商標を構成する各文字は,同じ書体,同じ大きさ及び同じ間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであって,また,その構成全体より生ずる『ビービーパワー』の称呼も冗長でなく,一連によどみなく称呼できるものである。そして,たとえ,本件商標を構成する前半の欧文字が,ローマ字の『B』を『BB』と2つ連ねたものであって,このようなローマ字2字が,一般に,商品の品番,型式,規格等を表示する記号又は符号として,取引上類型的に採択使用されることがあるとしても,後半の『パワー』の文字自体も『力,権力』等の意味を有する平易な外来語であって,しかも,この語に他の語が冠され『○○パワー』のように表示された場合には,通常,『○○の有する力や効力(パワー)』程の意味合いで使用され,認識されることの方がむしろ多いというべきであるから,前記構成からなる本件商標にあっては,その前半の『BB』の欧文字部分が商品の記号又は符号を表示するものとして,直ちに理解,認識されるものとはいい難く,また,他に『パワー』の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情も見いだせない。そうすると,本件商標は,その構成全体をもって不可分一体のものとし.て認識,把握されるとみるのが自然であるから,その構成全体に相応した『ビービーパワー』の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。また,本件商標は,その構成中『BB』の欧文字部分からは,直ちに特定の観念を生じさせないものというべきであるが,構成全体としてみると,漠然とながらも『BB(と呼ばれるもの)の有する力や効力(パワー)』といった程度の観念を生じさせるものということができる。」(審決書13頁14行〜36行)と認定した。
しかし,審決の認定には,次のとおり,誤りがある。
ア片仮名文字と欧文字の組合せ本件商標は,「BB」の欧文字部分と,「パワー」の片仮名文字部分からなるが,欧文字と伝統的な片仮名文字は,明確に分離され,別個に理解される。「釣り具」の需要者の識別力を基準にすると,「BB」と「パワー」を一体不可分のものとして認識するということはあり得ず,分離して認識されると解すべきである。
イ商品記号としての「BB」部分(欧文字2字)本件商標のうち「BB」のような欧文字部分は,商品「釣り具」の取引者の間においては,商品の品番,型式,規格,符号等により商品名を特定する表示の一つとして一般的に用いられている(甲37,38)。例えば,磯竿の商標として,「さぐりメバルMD」,「浮子メバルMD」,「へらロッドケースXT」が使用されている。このように,欧文字,平仮名,片仮名,漢字といった種類の異なる文字が用いられている場合には,一方が他方の上位概念であることを示し,他方がこの上位概念に含まれる複数種の商品の1つである下位概念であることを示すものとして用いられており,商品の混同を生じないように種類の異なる文字が独自の意味を有している。そうすると,本件商標の認定においても,「BB」の欧文字部分と「パワー」の片仮名文字部分は互いに独立した意味を有するものとして,分離して観察され,称呼され,観念されるというべきである。
なお,「BB」のような欧文字部分が商品の品番等を示すと認識されることは,「経験則によれば,欧文字の1字又は2字は一般に商品の種別又は形式を表示する記号又は符号として取引上随時採択使用されていることが認められる。」と判示した東京高等裁判所昭和52年(行ケ)第56号昭和52年12月21日判決のほか,「経験則によれば,『J』,『C』のようなローマ字は1字又は2字で商品の品番,形式,規格や出所に関する事項などを表示するための符号又は記号として取引上随時採択使用されていることが認められる。」と判示した東京高等裁判所昭和53年(行ケ)第99号昭和54年2月28日判決からも,明らかである。
また,欧文字2文字は,商品等の略称であると需要者に直ちに認識されるとまではいえないが,ボールベアリング,ブラックバス,BLOODBROTHER」等の略称として用いられることがあり(甲6,7),これらも「BB」が「パワー」とは異なる独立した意味を有すると理解される一例であるということができる。
ウ「パワー」の語に識別力が存在すること確かに「パワー」の語が他の語と一体となって特定の品質を表示する観念を生じさせるような場合には,「パワー」の語が単独での識別力を消失させることがあり得る。しかし,本件のように商品「釣り具」において本件商標「BBパワー」を用いる場合には,たとえ「パワー」に「力,権力」の意味合いがあったとしても,その前にある語「BB」が前記のとおり商品記号又は略号にすぎず,上記の「力,権力」の性質(強い,弱い,持続する等)を意味する語とはいえない。したがって,「パワー」の語が前の語「BB」と一体の商標であると理解されたとしても,「パワー」の語にも独立した識別力を有するといえる。
そうすると,本件商標のうち「パワー」の語が持つ本来の識別力(甲12〜34の審査例参照)は消失せず,単独で十分な識別力を有するといえる。
エ片仮名文字部分のみを基準として類否判断をした審決例の存在商標「TDプロセス」(甲8),商標「CGフロン」(甲9),商標「VCクラツド」(甲10)及び商標「NTハイセラ」(甲11)に係る各審決例においては,いずれも欧文字2字の自他識別能力が否定され,片仮名文字部分のみを基準として類否判断がされた。よって,欧文字2文字と片仮名文字部分からなる本件商標も,上記審決例の事案と同様に,片仮名文字部分「パワー」のみを基準として類否判断がされるべきである。
(2)本件商標と引用商標の類否の認定の誤り審決は,「本件商標と引用商標とを比較すると,外観については,前記のとおり,語頭部分における『BB』の欧文字の有無という顕著な差異を有してなるから,両者は相違する。また,その称呼についても,前記のとおり,本件商標は,『ビービーパワー』の称呼のみを生ずるのに対し,引用商標は,いずれも『パワー』の称呼を生ずるものであるから,その語頭部分において『ビービー』の音の有無という差異を有するものであって,明らかに聴別し得るものである。そして,本件商標からは,漠然とながらも『BB(と呼ばれるもの)の有する力や効力(パワー)』といった程度の観念を生じさせるのに対し,引用商標からは単に『力,能力』といった観念しか生じさせないものであるから,両者は観念上も相違するものといえる。したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。」(審決書15頁14行〜26行)と認定判断した。
しかし,審決の認定判断は誤りである。すなわち,前記主張のとおり,本件商標が「パワー」の称呼及び観念を生じ,引用商標も「パワー」の称呼及び観念を生ずるのであるから,両商標は称呼及び観念において同一又は類似する商標である。そして,その指定商品も同一又は類似である。したがって,本件商標は引用商標と類似しており,商標法4条1項11号に該当するから,その登録は同法46条1項により無効とされるべきものである。これと異なる審決の認定判断には,誤りがある。
2被告の反論(1)本件商標の認定の誤りに対し,ア片仮名文字と欧文字の組合せに対し原告は,欧文字と片仮名の組合せである「BBパワー」を一体として認識されない旨主張する。しかし,原告の主張は理由がない。片仮名と欧文字2文字を組み合わせた登録商標は,本件商標以外にも存在する(乙32〜37)。本件商標が欧文字と片仮名の組合せであることをもってその両部分が一体として認識されないとはいえない。
イ商品記号としての「BB」部分(欧文字2字)に対し(ア)原告は,「BB」部分について,単なる品番・型式として利用されているから識別力がないと主張する。
しかし,原告の指摘する「さぐりメバルMD」,「へらロッドケースXT」等に係る事実は,むしろ釣り具業界においてアルファベット2文字を商品の名称として使用することが一般的に行われていること,そして,欧文字と普通名称,品質語との組合せが一体として商標になり得ることを示している。すなわち,原告が分析するとおり「MD」シリーズであったり,「XT」シリーズであったりするシリーズを観念できること自体が,欧文字2文字が単に品番・規格・型式等を表示する記号又は符号と理解されるのみであるとはいえないことを示している。また,「メバル」「へら」が,魚の名称を指し示すこと,「浮子」「ロッドケース」「仕掛け」「ポーチ」等の語が,少なくとも釣り具業界では,一般的に知られている普通名称であることを考えると,これらの一般名称といえる語は,釣り具との関係では識別力を有しないといえる。そこで,「MD」や「XT」の文字の組合せにより,需要者に出所を識別させるのであり,このことは「XT」や「MD」が,商標中の商品の識別力を有することを端的に示している。需要者が,「さぐりメバル」や「へらロッドケース」では,商品の区別が付かないために,「MD」や「XT」と組み合わせて「さぐりメバルMD」,「へらロッドケースXT」となって初めて,需要者が,商品の識別をするために必要な識別力を持つことになるのである。そうすると,原告の指摘する例は,むしろ欧文字2文字と識別力の弱い単語を一体とした商標が使用されている例が多いことを示すものであるといえる。魚の名前である「へら」や「メバル」,普通名称である「ロッドケース」,釣法である「さぐり」に比べて,より造語になりやすい「パワー」と欧文字「BB」の組合せである本件商標「BBパワー」は,より一体性が強い。
(イ)原告は,「BB」を,「ブラックバス」や「ボールベアリング」の単なる略称であるとも主張する。
しかし,審決でも指摘されているとおり,「BB」という語が,必ずしもブラックバスやボールベアリングの単なる略称として使用されているわけではない。仮に,釣り具業界においては,「BB」が,「ブラックバス」や,「ボールベアリング」を連想させる語であったとしても,そのいずれを指すのかが不明な状況で,単なる略称と断定することできない。したがって,「BB」部分にも一定の識別力は存在するということができ,少なくとも識別力の低い「パワー」と比較して弱いとはいえない。
(ウ)「BB」の欧文字2文字と識別力の低い単語との組合せの登録が認められている例として,?「BBJACKETビービージャケット」(乙22),?「BBSKIRTビービースカート」(乙23),?「BBSHIRTSビービーシャツ」(乙24)等の登録商標が存在する。?「JACKETジャケット」,?「SKIRTスカート」,?「SHIRTシャツ」の語は,いずれも,指定商品である25類においては,商品の種類を示す語であり,指定商品との関係においてその識別力が低い。
(エ)さらに,「BB」と既登録の商標の組合せが認められている登録例としては,?「BBExpertビービーエキスパート」(乙25),?「BBTRAVELビービートラベル」(乙26)が存在する。?「BBExpertビービーエキスパート」は,指定商品に電気通信機械器具を含んでおり,平成17年12月16日に登録されているが(乙25),その登録前である平成9年6月27日に,同じく指定商品に電気通信機械器具を含む商標「Expert」が登録されている(乙27)。また,?「BBTRAVELビービートラベル」についても,登録商標の指定商品には配電用又は制御用の機械器具,電気通信機械器具が含まれており,平成17年4月1日に登録されているところ(乙26),その登録前である平成11年7月2日に,同じく指定商品に配電用又は制御用の機械器具,電気通信機械器具を含む商標「TRAVELトラベル」が登録されている(乙28)。
そして,?「BBExpertビービーエキスパート」と「Expert」の差は,「Expret」の文字の書体の違いはあるものの,実質的に異なる部分は「BB」の部分である。また,?「BBTRAVELビービートラベル」と「TRAVELトラベル」についても,2つの商標の差は「BB」部分にある。仮に「BB」の部分に識別力がないとすれば,これらの商標から生ずる観念が既登録の商標と同じであることになり,双方が登録されることはないはずである。それにもかかわらず?「BBExpertビービーエキスパート」と?「BBTRAVELビービートラベル」が登録されたということは,「BB」の2文字が付くことによって「BB」が付いていない既登録の商標とは別の観念,識別力を生じることを示している。
ウ「パワー」の語に識別力が存在することに対し「パワー」の語は,少なくとも釣り具との関係では,品質表示語にすぎないものであるとはいえ,「パワー」の語の識別力は低い。すなわち,釣り具において,その製品名に「パワー」の語が含まれる場合,強度が高いというような品質を表示する語として使用されている(乙2〜10)。
「パワー」の語を含んでいても,商標登録が認められた例としては,審判で指摘したもののほか,大手釣り具メーカーである,株式会社シマノの「パワーキャスター」(乙29),ダイワ精工株式会社の「パワーサーフ」(乙30),株式会社上州屋の「小継パワー」(乙31)がある。
エ片仮名文字部分のみを基準として類否判断をした審決例の存在に対し原告の指摘する審決例は,それぞれ「TDプロセス」,「CGフロン」「VCクラッド」,「NTハイセラ」であるが,「プロセス」,「フロン」,「クラツド」,「ハイセラ」のような語は,少なくとも審決例の当時において,それ自体「パワー」のようなありふれた品質表示語ということはできない。他方,「パワー」という語は,他の語と併せて別の造語となって使用される例が多く,実際に商標として登録されているものがある(乙1,11〜18)。よって,前記審決例と本件とでは,事案を異にするとの審決の判断に誤りはない。
(2)本件商標と引用商標の類否の認定の誤りに対し「BB」の語と「パワー」の語が一体的に理解されることを前提として外観,称呼及び観念の点から対比して本件商標が引用商標と類似しないとした審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断当裁判所は,本件商標の「BBパワー」は,「BB」の欧文字部分と「パワー」の片仮名文字部分が一体のものとして認識,理解され,その外観,称呼及び観念のいずれの点においても,引用商標と相違するから,引用商標とは類似しておらず,商標法4条1項11号に該当する商標ではないと判断する。以下,その理由を述べる。
1本件商標と引用商標との類否について(1)本件商標の外観,称呼及び観念本件商標は,?「BB」の欧文字と「パワー」の片仮名文字をゴシック体で「BBパワー」と一連に横書きし,各文字は,同じ書体,大きさ及び間隔で,まとまりよく一体的に表記されていること,?全体の文字数も5文字であり,少ないこと,?後記のとおり,「パワー」の語のみが指定商品「釣り具」の取引者,需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえないこと,?後記のとおり,「BB」の欧文字が,品番,型式等を指すと解することができないこと等に照らすと,「BBパワー」は「BB」部分と「パワー」部分とに分離して認識されるものではないと理解するのが相当である。
外観,称呼本件商標は,「ビービーパワー」の称呼を生じ,表記どおり「BBパワー」との外観を有する。
観念本件商標の左側「BB」は,確定的な観念を生ずることはなく,右側「パワー」は,「力,能力」等を意味することから,本件商標全体からは,?「BBが有する力,能力」ほどの観念を生じ得るか,又は,?BBの意味を確定することができないことに照らすと,全体として,造語であり,確定的な観念を有しない,のいずれかである。この点,「BB」については,欧文字を,商品の品番,型式,規格等を表示する記号等として使用する例もあるが,「BB」が「パワー」の左側に位置されていることに照らすならば,取引通念上,品番を示す記号等として,理解することは困難というべきである。
(2)引用商標の外観,称呼,観念引用商標1及び2は,「パワー」の片仮名文字よりなり,引用商標3は,「POWER」の欧文字よりなる。引用商標からは,いずれも「パワー」の称呼及び「力,能力」等の観念を生じ,表記どおりの外観を生じる。
(3)本件商標と引用商標との類否本件商標と引用商標とを対比する。両商標は,語頭部分における「BB」の欧文字の有無という相違があり,外観において相違する。また,本件商標は,「ビービーパワー」の称呼のみを生じるのに対し,引用商標は,いずれも「パワー」の称呼を生じるから,称呼において相違する。さらに,本件商標は,造語であって,確定的な意味を有しないか,または,「BBが有する力,能力」ほどの観念を生じ得るのに対し,引用商標は,「力,能力」という観念を生じるのであって,観念において相違する。また,取引上,両商標が類似するとの格別の実情は存在しない。
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相違する非類似の商標である。
以下,原告の取消事由に係る個別の主張について,判断する。
2原告の取消事由に係る個別の主張について(1)片仮名文字と欧文字の組合せについて原告は,本件商標「BBパワー」は,「BB」の欧文字と,「パワー」の片仮名文字からなるが,欧文字と片仮名文字は,明確に分離され,別個に理解される。「釣り具」の需要者の識別力を基準にすると,「BB」と「パワー」を一体不可分のものとして認識するということはあり得ず,分離して認識されると解すべきであると主張する。
しかし,原告の主張は理由がない。すなわち,「BB」の語は,日常生活上ありふれたアルファベットを2文字重ねた平易な欧文字であり,他方の「パワー」も欧文字で表記される「POWER」を片仮名で表記したものと解されるから,各文字は,同じ書体,大きさ及び間隔でまとまりよく一体的に表記されている外観上の特徴に照らすならば,欧文字「BB」と片仮名文字「パワー」とが,一体のものとして認識,理解されることに困難はなく,原告の主張は採用できない。
(2)商品記号としての「BB」部分(欧文字2字)についてア原告は,本件商標のうち「BB」のような欧文字は,商品「釣り具」の取引者の間においては,「さぐりメバルMD」,「浮子メバルMD」のように,商品の品番,型式,規格,符号等により商品名を特定する表記であると理解されるから(甲37,38),その「BB」部分と「パワー」部分は互いに独立した意味を有するものとして,分離して観察され,称呼され,観念される,と主張する。
しかし,原告の主張は理由がない。すなわち,欧文字が商品の品番,型式,規格,符号等に使用される例があり得るとしても,本件においては,?「BB」は左側先頭部に付されていること,?「B」の文字が重ねて用いられていること,?「B」の欧文字が,社会通念上或いは取引通念上品番,符号等で固有の意味を有するとはいえないこと等に照らすならば,本件商標中の「BB」が,商品の品番,型式等であると認識,理解されるとすることはできない。
イ原告は,「BB」がボールベアリング,ブラックバス,BLOODBROTHER」等の略称として用いられることがあり(甲6,7),そのような例に照らすならば,「BB」は「パワー」とは異なる独立した意味を有すると主張する。
しかし,原告の主張は理由がない。すなわち,原告が例示する「BBボールベアリング釣り」を表記したウエブサイト(甲6)においては,「ZPI/ジーピーアイ防錆Sic-BB/ボールベアリング」とか,「・・・BB-Xハイパーフォース入荷!SA-RB/A-RB.錆を寄せ付けないボールベアリング『A-RB』。・・・」と記載され,BBの略号の意味内容が特に注記して使用されている(甲6)。また,「BBブラックバス」を表記したウエブサイト(甲7)においても,「ブラックバス(以後BBと略)…」とか,「ブラックバス(以下BB)・・・」などと,BBの定義をした上で使用されている(甲7)。「BB釣り具」を表記したウエブサイト(甲5)においても,「【フィッシングマックス】ソアレBB 1000S」というウェブサイト見出しの下に,「BBはBLOOD BROTHER(血縁関係のある兄弟)の意味です。」との説明記載があり,「BBボールベアリング釣り」を表記したウエブサイト(甲6)においても,「BBはBLOOD BROTHER(血縁関係のある兄弟)の意味です。」との説明記載があり,略語の意味が注記されている。これらの記載例からすると,「釣り具」を取り扱う業界において,「BB」の語が「ボールベアリング」又は「ブラックバス」の略称として一般的に使用され,理解されているということはできず,原告の上記主張は採用の限りでない。
(3)「パワー」の語の識別力について原告は,仮に「パワー」の語が前の語「BB」と一体の商標であると理解されたとしても,「BB」が商品記号又は略号にすぎず,上記の「力,権力」の性質(強い,弱い,持続する等)を意味する語とはいえないから,「パワー」の語にも独立した識別力が存在するといえると主張する。
しかし,原告の主張は理由がない。すなわち,「パワー」の語が十分な識別力を有することと,「パワー」の語が「BB」の語と一体のものとして認識,理解されるかとは別個に考慮すべきであり,「BB」と「パワー」とを一体的に理解した場合,全体の意味は,「BBが有する力,能力」ほどの観念を生じ得るにとどまることに照らすならば,原告の主張は,採用の限りでない。
3結論以上のとおり,本件商標が引用商用と類似しているとはいえないから,本件商標は商標法4条1項11号に該当するとする原告の主張は,採用できない。
原告は,その他にも縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大須賀滋
裁判官 齊木教朗