審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21ワ123損害賠償請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18ワ26725商標権侵害差止等請求事件 平成19ワ15580商標権侵害不存在確認等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成13ネ6316商標権侵害に基づく損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件 平成14ネ1980商標権侵害に基づく損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件 | 判例 | 商標 |
平成12ワ15912商標権侵害に基づく損害賠償請求事件 | 判例 | 商標 |
平成13ネ5605商標権侵害差止等請求控訴事件 平成14ネ5060同附帯控訴事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 指定商品 / 顧客吸引力(グッドウィル) / 損害額 / 使用料相当額 / 通常使用権 / 専用使用権 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 国内 / 判定 / 差止 / 並行輸入 / 外国 / 継続 / 利益額 / |
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事件 |
平成
19年
(ワ)
28855号
販売差止等請求事件
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イタリア国ローマ<以下略> 原告ブルガリ ソシエタ ペル アチオニ 同 訴訟代理人弁護 士田中克郎 同 宮川美津子 同 森山義子 同 尾形和哉 同 永田幸洋 同 新谷美保子 同 訴訟復代理人弁護 士井上祐子 同 井坂和香子 東京都渋谷区<以下略> 被告有限会社ES International Inc. 同 訴訟代理人弁護 士岩本昌子 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2010/03/16 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1被告は,別紙被告標章目録記載1の標章を付した別紙商品目録記載1の商品,別紙被告標章目録記載2の標章を付した別紙商品目録記載2の商品及び別紙被告標章目録記載3の標章を付した別紙商品目録記載3の商品を販売し,又は販売のために展示してはならない。 2被告は,原告に対し,706万9630円及びこれに対する平成19年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4訴訟費用は,これを5分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担2とする。 5この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求1主文第1項と同旨2被告は,別紙被告標章目録記載1の標章を付した別紙商品目録記載1の商品,別紙被告標章目録記載2の標章を付した別紙商品目録記載2の商品及び別紙被告標章目録記載3の標章を付した別紙商品目録記載3の商品を廃棄せよ。 3被告は,原告に対し,1176万9630円及びこれに対する平成19年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,別紙登録商標目録記載の商標(以下「本件登録商標」という。)の商標権者である原告が,被告において別紙被告標章目録記載の各標章(以下「被告標章」という。)を付した別紙商品目録記載の各商品(以下「本件商品」という。)を販売するなどの行為が原告の有する上記商標権を侵害するものであるとして,商標法36条1項に基づき上記行為の差止め及び同条2項に基づき本件商品の廃棄を求め,また,不法行為に基づく損害賠償として780万9000円及び遅延損害金の支払を求めるとともに,被告の上記行為は本件登録商標の独占的通常使用権者であるブルガリ・グローバル・オペレーションズ・エスエー(BulgariGlobalOperationsS.A.。以下「BGO」という。)に対する不法行為にも当たり,BGOの被告に対して有する不法行為に基づく損害賠償債権を原告が譲り受けたとして,同債権に基づく396万0630円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 1争いのない事実等(1)当事者ア原告はイタリア法人であり,「身飾品」等を指定商品とする「BVLG3ARI」との文字列からなる別紙登録商標目録記載の商標(本件登録商標)の商標権を有する者である。 イ被告は,衣料品,バック,皮革製品,洋品雑貨の輸入販売を目的とする株式会社(特例有限会社)である。 (2)被告の行為ア被告は,平成17年11月ころ,米国のX社から,18Kピンクゴールドのビー・ゼロワンペンダント(別紙商品目録記載1のものと同種のもの)を150個(2005年(平成17年)11月24日付け番号686ESのインボイス(乙10の1)に係る50個及び同月28日付け番号690ESのインボイス(乙28の1)に係る100個の合計)輸入した。 上記ペンダントには,別紙被告標章目録記載1の標章が付されていた(以下,製造者番号のいかんにかかわらず,上記ペンダントを「被告商品1」という。)。 イ被告は,平成18年4月ころ,X社から,18Kピンクゴールドのビー・ゼロワンリング3バンド(別紙商品目録記載2のものと同種のもの)を50個輸入した(2006年(平成18年)4月18日付け番号106ESのインボイス。乙11の1)。 上記リングには,別紙被告標章目録記載2の標章が付されていた(以下,製造者番号のいかんにかかわらず,上記リングを「被告商品2」という。)。 ウ被告は,同年6月ころ,X社から,ホワイトゴールドのビー・ゼロワンリング3バンド(別紙商品目録記載3のものと同種のもの)を280個輸入した(2006年(平成18年)6月1日付け番号123ESのインボイス。乙15)。 上記リングには,別紙被告標章目録記載3の標章が付されていた(以下,製造者番号のいかんにかかわらず,上記リングを「被告商品3」とい4う。)。 (3)被告標章は,その称呼,外観及び観念のいずれにおいても本件登録商標と類似している。 2争点(1)被告商品1ないし3は真正品と認められるか(争点1)(2)被告は商標権侵害行為につき無過失であったか(争点2)(3)原告が被った損害の額(争点3)(4)BGOからの譲受債権の請求の可否及び金額(争点4)第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告商品1ないし3は真正品と認められるか)〔被告の主張〕(1)被告は,海外で製造された真正な商品を国内の総代理店等による輸入経路を通さずに輸入して国内の業者に販売する,いわゆる並行輸入業者である。 被告商品1ないし3は,いわゆる真正な並行輸入品であり,原告の商標権を侵害しない。 (2)被告の取り扱ういわゆるブルガリブランドの商品(以下「ブルガリ商品」という。)の直接の仕入先は,すべてX社である。被告は,平成16年に流通経路を請求書により確認した上で,X社との取引を開始し,それ以降継続的に同社から仕入れを行っている。 そして,以下に述べるように,被告商品1ないし3は,BGOが販売した真正品を複数の中間業者を介してX社が仕入れ,それを被告が同社から購入したものである。 なお,BGOは,原告の100パーセント子会社であるから,BGOが販売した商品は,原告により適法に商標が付された,又は原告が商標を付すことを認めた真正品であることは明らかである。 ア被告商品15(ア)BGOは,2004年(平成16年)1月ころ,被告商品1を56個,ディーエフエス・ベンチャー・シンガポール・(ピーティーイー)・リミテッド(以下「DFSシンガポール」という。)に販売した(乙7)。 DFSシンガポールは,2005年(平成17年)4月ころ,同商品を50個,Y社に販売した(乙8)。 Y社は,同月ころ,同商品を50個,X社に販売した(乙9)。 X社は,同年11月ころ,同商品を50個,被告に販売した(乙10の1・2)。 (イ)BGOは,2004年(平成16年)2月11日ころ,被告商品1を100個,Bulgari South Asian Operation Ltd.に販売した(ただし,配送先は,Y社方BVL Partners Company Limited)(乙26)。 Y社は,同年3月ころ,同商品を100個,X社に販売した(乙27)。 X社は,2005年(平成17年)11月ころ,同商品を100個,被告に販売した(乙28の1・2)。 イ被告商品2BGOは,2004年(平成16年)1月ころ,被告商品2を56個,DFSシンガポールに販売した(乙7)。 DFSシンガポールは,2005年(平成17年)4月ころ,同商品を50個,Y社に販売した(乙8)。 Y社は,同月ころ,同商品を50個,X社に販売した(乙9)。 X社は,2006年(平成18年)4月ころ,同商品を50個,被告に販売した(乙11の1・2)。 ウ被告商品3BGOは,2006年(平成18年)5月ころ,被告商品3を300個,6デル・エス・エー(ティーエス・アカウンティング・エスエー方)に販売した(乙12)。 デル・エス・エーは,同月ころ,同商品を280個,Y社に販売した(乙13)。 Y社は,同月ころ,同商品を280個,X社に販売した(乙14)。 X社は,同年6月ころ,同商品を280個,被告に販売した(乙15)。 (3)インボイス(乙8,13及び26)が偽造であるとの原告の主張についてアDFSシンガポール発行のインボイス(乙8)について乙第8号証のインボイスは,作成名義人の名称が右上に記載され,インボイス番号,日付,商品の明細及び価格が記載された通常のインボイスであり,その作成の真正を疑わせるものは何もない。また,内容についても,成立に争いのないBGOのインボイス(乙7)において2004年(平成16年)1月ころBGOからDFSシンガポールに各56個販売された被告商品1及び2について,2005年(平成17年)4月ころに各50個を販売するというものであり,疑義を生じさせるものではない。 原告は,DFSシンガポール作成の陳述書において偽造であるとされていることをもって,上記インボイスを偽造であると主張する。しかしながら,DFSシンガポールは,原告の取引先であることから原告の圧力により原告に都合のよい陳述書を作成する危険が大きく,その信用性は乏しい。 イデル・エス・エー発行のインボイス(乙13)について乙第13号証のインボイスは,作成名義人の名称が左上に記載され,インボイス番号,日付,商品の明細及び価格が記載された通常のインボイスであり,その作成の真正を疑わせるものは何もない。また,内容についても,成立に争いのないBGOのインボイス(乙12)において2006年(平成18年)5月ころBGOからデル・エス・エーに300個販売され7た被告商品3について,同年5月下旬に280個を販売するというものであり,疑義を生じさせるものではない。 原告は,デル・エス・エー作成の陳述書において偽造であるとされていることをもって,上記インボイスを偽造であると主張する。しかしながら,デル・エス・エーは,原告の取引先であることから原告の圧力により原告に都合のよい陳述書を作成する危険が大きく,その信用性は乏しい。 ウBGO発行のインボイス(乙26)について原告は,乙第26号証のBGO発行のインボイスが偽造であると主張し,BGOが発行した本物のインボイスとして甲第64号証の添付資料を提出した。また,BGOの取締役社長の陳述書(甲64)中には,乙第26号証は本物の請求書の配送先を書き換えることによって偽造されたものである旨が記載されている。 しかしながら,甲第64号証添付のインボイスは,乙第26号証のインボイスとは全く別の書面であり,単純に配送先を書き換えることによって偽造することは不可能である。すなわち,乙第26号証は1ページ目に4商品目までの記載があるが,甲第64号証添付のインボイスには3商品目までしか記載がない。また,両者で,単価,通貨,VATrateの各列の間隔も異なる。さらに,文書末尾のFAX番号は,甲第64号証添付のインボイスでは下4桁が「7984」となっており,乙第26号証のインボイス,並びに,成立に争いのない乙第7号証及び第12号証のBGO発行のインボイスに記載のFAX番号の下4桁である「7788」とは異なっている。 このように,乙第26号証のインボイスは,甲第64号証添付のインボイスをコピーして配送先を書き換えることによって作成することはできないから,原告の主張は虚偽である。 (4)原告は,被告商品1には製造者番号●(省略)●(以下「製造者番号81」という。)が,被告商品2及び3には●(省略)●(以下「製造者番号2」という。)がそれぞれ付されていたとした上で,これらの製造者番号が割り当てられた製造者は,当該商品を製造する権限を有したことはないと主張する。 しかしながら,この主張によれば,上記製造者番号を割り当てられた製造者が,一方では原告の許諾の下に真正な商品を製造していながら,他方では許諾を受けていない偽造品も並行して製造していることとなり,不自然である。また,仮に偽造品を製造するのであれば,あえて製造許諾を与えられていない工場の製造者番号を刻印する打ち型まで作成して刻印を行うことは不自然である。 さらに,有限責任中間法人日本流通自主管理協会(以下「自主管理協会」という。)の調査によれば,原告の貴金属製品には,10種類を超えるホールマーク(原告が製造者番号と呼ぶもの。)が確認されたとのことである。 これは,これらの製品が10を超える工場で作られていたことを意味する。 また,同じ工場の商品(すなわち同じホールマーク番号)であっても,製造時期によって若干の違いが出るものすらあるということである(乙5)。また,400個以上の商品について検品をした結果,表面のロゴ,内側の刻印を細かく見た場合,3バンド,1バンドを合わせて30タイプ以上の真正品が確認されたとのことである(乙6)。 したがって,原告の主張するように,原告が製造者を商品ごとに厳密に管理しているとは到底考えられず,原告が特定の商品ごとに製造者に製造権限を許諾している事実はない。 (5)また,以下のとおり,そもそも被告商品には,製造者番号1又は2が付されていなかった。 すなわち,平成17年夏ころから,並行輸入業界では,自主管理協会がブルガリのアクセサリー商品については,「2337AL」の製造者番号(以9下「製造者番号3」という。)が付された商品しか基準内であるとの判定をしないことが話題となった。自主管理協会に基準内と判定されなかった商品は,自主管理協会の会員企業が取り扱うことはできないため,被告及び被告の主要な取引先である有限会社AXEL(以下「エイゼル」という。)は,卸売先からブルガリのアクセサリー商品については,製造者番号3が付された商品を販売するよう依頼されるようになった。そこで,被告は,X社に対し,BGOの販売する真正品のうち製造者番号3が付されたものを販売してほしいと依頼し,同社はこの依頼に応じて,製造者番号3が付された商品を被告に販売した。さらに,被告及びエイゼルは,卸売先及び消費者に迷惑がかからないように,入手したブルガリのアクセサリー商品に製造者番号3が付されていることを一つ一つ確認した。したがって,平成17年の夏以降に被告が取り扱ったブルガリ商品は,すべて製造者番号3が付されたものであった。 そして,被告商品1ないし3は,いずれも平成17年の夏より後に販売された商品であるから,製造者番号3が付された商品である。 (6)以下のとおり,被告商品2及び3については,本訴提起後においても,原告の直営店において修理及び刻印が受け付けられており,この事実は,被告商品2及び3が真正品であることを示している。 被告は,平成19年12月30日,自己の在庫品である被告商品2の蓋部分がとれたため,香港における原告の直営店に持ち込み,修理を依頼したところ,これが受け付けられ,平成20年1月17日には,修理完了品を受け取った(乙16)。 また,被告は,同年2月ころ,同じく香港における原告の直営店に被告商品2及び3を持ち込み,被告商品2については「M」1文字の刻印を,被告商品3については「C」1文字の刻印をそれぞれ依頼したところ,いずれの商品ともそれぞれ刻印され,同年3月11日,これを受領した(乙17,1108,19の1・2)。 さらに,製造者番号2が付された被告商品3は,ミラノにおける原告の直営店において修理がされた上,ハート形の刻印の依頼が受け付けられた。そして,同年4月21日には,刻印がされた商品を受領した(乙20の1・2,21の1・2)。 同月23日にも,シンガポールにおける原告の直営店であるヒルトン・ショップにおいて,製造者番号2が付された被告商品2について,修理及び刻印の依頼が受け付けられ,「LOVE」の刻印がされた(乙29の1・2,30の1・2)。また,当初,ヒルトン・ショップは,同商品の修理依頼に対し,交換を提案した。 真正品でない偽物について原告の直営店において修理・刻印が認められることがないのは当然であるから,上記のように,製造者番号2の付された被告商品2及び3が原告の直営店において修理及び刻印を受け付けられた事実及び原告直営店が交換を提案した事実は,原告自身が被告商品2及び3が真正品であることを認めたことを示すものである。 〔原告の主張〕(1)被告の主張する流通ルートが立証されていないことBGOが適法に販売した商品が真正品であることは認める。しかしながら,以下のとおり,被告商品1ないし3がBGOが販売した真正品であるとの被告の主張には,根拠がない。 ア被告商品1のうち50個及び被告商品2の流通ルートについて被告は,被告商品1の150個のうち50個及び被告商品2について,BGO,DFSシンガポール,Y社,X社,被告というルートで流通したと主張する。 しかしながら,DFSシンガポールは,Y社に対して商品を販売したことはなく,被告が乙第8号証として提出したDFSシンガポールからY社11に対して発行されたとするインボイスは,偽造されたものである(甲55)。乙第8号証のインボイス番号1834279は,DFSシンガポールのインボイス番号システムにあるどの番号とも一致せず,また,乙第8号証のインボイスの書式は,同社が発行するインボイスの書式(甲70)に合致しない。 乙第8号証は,担当者のサインも特殊なロゴマークもなく,パソコンとプリンタがあれば誰でも作成することができる程度のものであるので,外見上信用性が低いことが明白である。 よって,当該商品がBGOの販売した真正品であるとする被告の主張には,根拠がない。 イ被告商品1のうち100個の流通ルートについて被告は,被告商品1の150個のうち100個について,乙第26号証のBGO作成のインボイス(2004年2月11日付けインボイス番号1110004429号)を根拠に,BGOが2004年(平成16年)2月11日ころ,配送先をY社方BVL Partners Company LimitedとしてBulgari South Asian Operation Ltd.に販売し,Y社がX社に販売したと主張する。 しかしながら,乙第26号証のBGO発行のインボイスは偽造されたものである。BGOが発行した2004年2月11日付け1110004429号のインボイスに記載された配送先は,Sincere Watch Limited方BVLPartners Company Limitedであった(甲64)。 したがって,Y社がX社に販売したとする被告商品1の100個は,BGOが販売した商品ではない。 よって,被告がX社から購入した被告商品1の100個はBGOが販売したものではなく,真正品ではない。 ウ被告商品3の流通ルートについて12被告は,被告商品3について,BGO,デル・エス・エー,Y社,X社,被告というルートで流通したと主張する。 しかしながら,デル・エス・エーは,Y社と取引をしたことはない。また,被告が乙第13号証として提出したデル・エス・エーからY社に対して発行されたとするインボイスは,偽造されたものである(甲56)。乙第13号証のインボイスは,デル・エス・エーが発行するインボイスの書式(甲71)とも異なっている。 乙第13号証は,担当者のサインも特殊なロゴマークもなく,パソコンとプリンタがあれば誰でも作成することができる程度のものであるので,外見上信用性が低いことが明白である。 したがって,被告商品3がBGOの販売した真正品であるとする被告の主張には,根拠がない。 (2)Y社及びX社の信用性が低いことア架空の住所を用いていることY社は,その発行に係るインボイス(乙9)においてLugano, Switzeriand, ●(省略)●にその支店を有するとしている。しかしながら,スイスのルガーノにY社という会社は登記されておらず,上記住所に同社は存在しない(甲59)。 また,X社も,その発行に係るインボイス(乙10の1)に,「LUGANO-CH OFFICE」等と記載されており,スイスのルガーノにその事業所を有すると称している。しかしながら,X社は,スイスのルガーノには事務所を登録していない。 イ偽造品取扱者との関係が疑われることX社は,イタリアにおいてブルガリ商品の偽造品を購入した罪で刑事手続が進行中であるA氏(甲65)と取引があったことが疑われる。A氏は,第三者に対し,X社に対する通信文書はフィレンツェにあるA氏の会社へ13直接送るように依頼している(甲60)ところ,同所は,偽造品の捜索差押がされた場所である(甲66)。 また,A氏は,Bと名乗る者との間で,電子メールを用いて,偽造品の供給に関するやりとりをしている。すなわち,B氏から,A氏に対して,ブルガリの商標を付したチャームの模様の向きが前回は反対で今回は正しいと述べたり(甲61),ブルガリ商品の「MADE IN ITALY」表示について,1行ではなく2行で記すよう指示がされたり,また,指輪とペンダントヘッドの製造者番号は,製造者番号3のとおりとすべきであると指示がされたり(甲62)している。なお,これらの電子メールは,イタリアの刑事手続によって押収されたものである。 ウX社は自らの住所表示を誤っていることX社は,乙第1号証において住所を「●(省略)● U.S.A」としながら,乙第10号証の1及び2,乙第11号証の1及び2,乙第15号証並びに乙第28号証の1及び2の各インボイスにおいては,その住所を「●(省略)● U.S.A」としている。後者の「●(省略)●」や「●(省略)●」は明らかに誤記である。住所の表示は,企業の実在性を担保するものであって,その信用性を示すために重要であるにもかかわらず,このような誤った表示をした取引書類を反復して使用し続けているX社の信用性は低い。 また,X社に対して取引相手が連絡を取ろうとする際には,取引書類に記載された住所を参照するのが通常であるから,その住所が誤っていれば取引相手から指摘を受けて訂正するのが通常である。にもかかわらず,X社は,誤った住所記載のままの取引書類を使用し続けてきたのであるから,住所表示が誤っているという指摘をどこからも受けておらず,つまり,米国の住所宛には連絡を受ける必要がなかったということである。 エY社発行のインボイス(乙9,14)に対する疑義被告は,被告商品1及び2が真正品であることを立証するためにY社発14行のインボイス(乙9,14)を提出するとともに,Y社が存在していたことの証拠として設立証明書(乙33)を提出する。 しかしながら,上記設立証明書は,Y社ではなくZ社の設立に関するものであり,また,上記インボイスの日付よりも後である2006年(平成18年)8月29日に設立されたと記載されており,被告の立証趣旨に沿わないものである。被告は,Z社の代表者であるC氏の陳述書(乙39)を提出し,2006年(平成18年)8月29日以前は,Y社という会社があったとも主張するが,そうであれば,同社の設立に関する証拠を提出すれば足りるはずであるのに,その提出はない。 なお,Y社の代表者とされるC氏は,X社の代表も務めており,前記のとおりX社はイタリアにおいて刑事手続が進行中のA氏との取引が疑われていることから,Y社の信用性も同様に低い。 (3)被告標章が原告の許諾なく付されたものであることア被告が販売した被告商品1のペンダントトップ内側には,製造者番号1が記されている。製造者番号1を割り当てられた製造者は,権限に基づき原告の特定の製品を製造しているものの,18Kピンクゴールドのビー・ゼロワンペンダント(被告商品1)を製造する権限を有していたことはない。 また,被告が販売した被告商品2及び3の内側には,製造者番号2が記されている。製造者番号2を割り当てられた製造者は,権限に基づき原告の特定の製品を製造しているものの,18Kピンクゴールドのビー・ゼロワンリング3バンド(被告商品2)又はホワイトゴールドのビー・ゼロワンリング3バンド(被告商品3)を製造する権限を有していたことはない。 したがって,被告が販売した被告商品1ないし3は,いずれも原告の許諾なく被告標章が付されたものである。 15イ被告は,平成17年夏ころから,自主管理協会がブルガリのアクセサリー商品については,製造者番号3が付されたもののみを基準内と判定することになり,それ以降は,製造者番号3が付されたもの以外の商品は扱っていない旨主張する。 しかしながら,自主管理協会でそのような基準があったことについての信用性のある証拠はない。仮に,そのような基準があったとしても,被告は,それまでに仕入れた製造者番号3が付されたもの以外の商品を返品したわけでもなく,手元に残っていた可能性を認めている。実際,乙第16ないし第19号証で示された製造者番号2の刻印が付された商品が,本訴提起後もエイゼルの手元に残っていたのである。 また,もし製造者番号3が付されたもの以外の商品を平成17年夏以降に取り扱っていなかったのであれば,被告は,本件訴訟の開始当初にそのような主張をしたはずである。それを,訴訟提起から1年以上経過してからこのような主張をするのは不自然であり,信用することができない。 (4)修理が受け付けられたとの被告の主張について被告は,原告の直営店において,被告商品2及び3の修理及び刻印が受け付けられたことを根拠に,被告商品2及び3が真正品であると主張する。 しかしながら,原告の直営店で修理及び刻印が受け付けられた商品が,被告が修理等を依頼した商品であることは乙第16,第17及び第20号証に示されておらず,また,被告が乙第18,第19及び第21号証で示す商品と同じであるとは限らない。 仮に,原告の直営店において被告商品2及び3の修理及び刻印が受け付けられたとしても,原告商品の真贋識別ポイントは,営業秘密として厳格に管理されており,直営店の店員にはこれを知らせていない。直営店の立場からすれば,偽造品であるとの確証が持てない限り,修理や刻印を受け付けるといった処理を行うものと考えられる。 16したがって,原告の直営店において被告商品2及び3の修理及び刻印が受け付けられたとしても,そのことは,同商品が真正品であることの根拠とはならない。 2争点2(被告は商標権侵害行為につき無過失であったか)〔被告の主張〕(1)被告代表者は,輸入元であるX社と初めて取引を開始する際,イタリアに赴き,同社のコンサルタントであるA氏に面談し,BGOから発行されたインボイス及びその後X社に至るまでの経路に係るインボイスをすべて直接確認した。そのインボイスは,価格以外はマスキングされていないものであった。それ以降も,被告代表者は,平成15年及び平成16年は2か月に1回くらいの頻度で,その後も年に4,5回はイタリアに赴き,A氏と面談し,BGOからX社までのインボイスを確認している。 (2)また,被告は,卸売先から製造者番号3の刻印は何を意味するのかなど,被告の取り扱うブルガリ商品について問合せを受け付けることもあった。そのような問合せのうち,被告が知らない事項についてA氏に質問してきたところ,A氏は,このような問合せについてすべて回答することができた。A氏は,ブルガリが製造工場に対し,ビー・セロワンリングの刻印を行う前の温度を指示した商品製造上の指示書(乙36)など,ブルガリの認める製造工場でなければ知り得ない情報を被告に開示したことすらあった。 (3)被告代表者は,イタリアに赴いた際は,イタリアの原告の直営店において,実際に被告が取り扱っている商品と同一の品番の商品を購入し,被告が購入した商品が当該商品と品質が同一であることを確認していた。 (4)さらに,被告は,被告の商品を主に販売するエイゼルと協力し,定期的にX社から仕入れた商品をあえて破壊して,ブルガリの直営店で修理を依頼していたところ,このような修理の依頼は常に直営店で受け付けられた。当該商品が真正品でなければ,直営店での修理を受け付けてもらえることはな17い。 (5)以上のとおり,被告は,X社とブルガリの関係,商品そのものの品質や仕様に関する継続的な調査の結果,ブルガリ商品を販売しているのであって,その販売行為について過失はない。 〔原告の主張〕(1)被告は,?被告代表者がX社の顧問であるA氏と面談して取引に係るインボイスを何度か確認したこと,?被告のA氏に対するブルガリ商品に関する問合せについて,A氏が回答することができたこと,特に商品製造上の指示書をA氏が所持していたこと,?被告代表者がイタリアで原告の直営店から購入した商品が被告の取り扱っている商品と品質が同一であると確認したこと,?被告がX社から購入した商品を定期的にあえて破壊してブルガリの直営店で修理依頼していたことを,被告が過失がなかったことの根拠としている。 (2)しかしながら,?については,並行輸入品が真正品を取り扱うものとしてその違法性が阻却されるためには,商標権者又はそれと同視すべき者によって商標を付されたことを立証する必要があるのであるから,個々の商品のすべてについて,その出所を明確にする資料を確保しておく必要がある。しかしながら,被告は,その主張を前提としても,時折インボイスを提示されてその場で確認するにとどまり,すべての商品に関するインボイスを確認することを怠っている。また,X社経由の取引には,偽造インボイスや,会社設立前に発行したことになっているインボイスが取引経路を示すものとして使用されていることが認められるのであり,被告がインボイスの内容を精査することを怠ったことは明らかである。 (3)また,?についても,商品製造上の指示書(乙36)をA氏が所持していたことは,むしろX社が偽造品製造に関わっていたことを示すものであるので,被告としては,X社の取り扱う商品が偽造品ではないかと疑うべきで18あり,これを過失がなかったことの根拠とすることはできない。また,製造者番号3の刻印が何を意味するのかについてA氏が回答することができたということについては,製造者番号が原告グループ独自のものではなく,イタリアの商工会議所が管理するホールマーク制度によるものであるから,A氏が原告グループと特段のつながりがなくても回答し得る事項であるから,被告に過失がなかったことの根拠とはならない。 (4)?については,被告が何をもって品質が同一であると確認したのか不明である。また,偽造品は真正品と似せて作っているので,品質が似ているのは当然であり,これも被告に過失がなかったことの根拠とはならない。 (5)?については,原告は真贋識別ポイントを営業秘密として厳格に管理しており,ブルガリの販売拠点は顧客の持ち込む商品の真贋鑑定を行う権限も真贋鑑定に必要な情報や設備も有していないから,直営店で修理を受け付けられたことをもって当該商品が真正品であることの根拠とはならないのであって,これも被告に過失がなかったことの根拠とはならない。 3争点3(原告が被った損害の額)〔原告の主張〕(1)被告は,被告商品1を7万1000円で,被告商品2を5万2000円で,被告商品3を5万3000円で販売した。 (2)譲渡数量についてア以下のとおり,被告は,被告商品1を150個,被告商品2を50個,被告商品3を280個販売したものと考えられる。 すなわち,被告は,被告商品1ないし3を平成17年11月から平成18年6月ころまでの間に仕入れており,現在までに既に長期間が経過していること,被告商品1ないし3に対応する真正品(以下被告商品1に対応する真正品を「本件真正品1」などという。また,本件真正品1ないし3をまとめて「本件真正品」という。)は,偽造品が多数出回っていること19からも明らかなように売れ筋の商品であって,このような長期間売れ残るとは考えにくいこと,被告からは若干の返品に係るインボイスが証拠として提出された以外に積極的にこれらの商品を在庫として現在も保有する旨や処分した旨の主張がないことを考慮すれば,被告が,平成17年11月ころから平成18年ころまでの間に第三者に販売したことは合理的に推認することができる。 イ被告は,被告商品2及び3をX社に返品したと主張し,X社発行の返品に係るインボイス(乙43,44)を提出する。 しかしながら,上記インボイスは,X社発行の他のインボイス(乙10の1,11の1,15,28の1)の形式と全く異なっている。被告は,その理由を担当者及び使用したコンピューターの相違によると主張する。 しかしながら,インボイスは,社内で共通して一定の書式を用いて作成されるのが通常であり,まして,記載されている住所が相違する点及び署名がされていない点は,担当者やコンピューターが異なることで合理的に説明することができない。 したがって,被告の上記主張は信用できず,乙第43,第44号証は,X社が真正に作成した書類とは認められない。 また,被告は,「被告の卸売り先が被告の取扱商品を返品するという事態が増加した」とも述べており,商品はいったん被告により販売されたものであることは明らかであり,被告の主張は失当である。 (3)本件登録商標は,高級な宝飾品の商標として我が国で著名であり,その使用に対し原告が通常受けるべき金額は,売上額の10パーセントを下らない。 よって,被告が支払うべき本件登録商標の使用料相当額は,売上額合計2809万円の10パーセントである280万9000円を下らない(商標法38条3項)。 20(4)本件訴訟は,専門的な事件である上,原告は外国法人であることから,自ら訴訟を提起することが困難であり,弁護士に依頼しなければ解決が困難な事案であること,また,原告と原告代理人との連絡に際しては特に英語を解する弁護士を必要とすることを勘案すれば,被告の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用は500万円を下らない。 (5)以上のとおり,原告は,被告の侵害行為により合計780万9000円の損害を被った。 〔被告の主張〕(1)原告の主張のうち被告商品1ないし3の販売価格に関する部分は認める。 (2)被告商品1ないし3の譲渡数量について被告は,平成20年2月18日,被告商品2について仕入個数50個のうち22個を(乙43),平成19年7月25日,被告商品3について仕入個数280個のうち146個を(乙44),それぞれX社に返品した。返品の経緯は以下のとおりである。 ブルガリのアクセサリー商品については,平成17年夏ころから,並行輸入業者の自主団体である自主管理協会が,会員企業に対し不可解な判定を行い始め,平成18年に入ると被告の取扱商品が「基準外」「基準内ではない」などと判定されることがあった。自主管理協会が会員企業に対し,「基準外」「基準内でない」と判定した場合,会員企業は,当該商品はもちろん,そのように判定された商品と仕入時期・仕入先を同じくする商品については取り扱うことができないこととなっている。それだけでなく,このような判定行為による混乱により,特に同年以降,自主管理協会の会員企業がブルガリ商品の取扱いを控えるようになり,被告に対しても,既に行ったブルガリ商品の発注をキャンセルする事態が発生した。 自主管理協会の会員企業は,多数の並行輸入品の大手小売業者ないし中間卸売業者である。被告の取扱商品は,数社の中間卸売業者を経て,最終的に21は会員企業に納入されることがほとんどであったため,当時,卸売先からの注文に基づき被告が仕入れた商品についても,自主管理協会から会員企業に対する判定行為及びこれに伴う混乱を原因として,いったんされた卸売先からの注文がキャンセルされたり,返品を要求されたりすることが多数あった。 さらに,原告により,被告商品1ないし3として指摘された商品の販売行為を商標権侵害行為であると主張する通知書が平成18年8月14日(甲9),同年12月19日(甲27)に発送され,これを契機として,更に被告の卸売先が被告の取扱商品を返品する事態が増加した。 このようにして被告に返品された商品は,被告による販売行為から一定期間が経過した後に返品されているため,商品価値が下がっているだけでなく,もはや自主管理協会の会員企業が取り扱うことができないのであるから,他の流通経路において転売することは事実上不可能であった。 したがって,被告は,X社から被告商品1ないし3を仕入れたものの,販売することができず,結局X社に返品することとなることが多かった。 なお,乙第43号証及び第44号証のX社発行の返品に係るインボイスの形式がその他の同社発行のインボイスと形式が異なるのは,作成者及び使用したコンピューターが異なるためである。 (3)本件登録商標の使用料率及び弁護士費用に関する原告の主張は,否認する。 4争点4(BGOからの譲受債権の請求の可否及び金額)〔原告の主張〕(1)BGOが独占的通常使用権者であること原告は,ブルガリ・グループ全体の方針として,2005年(平成17年)以前から,被告商品1ないし3に対応する真正品を含む特定の宝飾品について,必ずBGOを通じて日本を含む全世界へ流通させることを決定しており,この方針は,現在においても維持され,BGOの独占的状態は継続し22ている。この結果,本件真正品は,すべてBGOを経由し,日本において販売されている(甲91)。 上記方針は,ブルガリ・グループが公表している年次報告の記載からも明らかである。すなわち,ブルガリ・グループは,毎年,年次報告において,ブルガリ・グループ各社の業務内容を記載しているところ,2005年度版年次報告及び2008年度版年次報告のいずれにおいてもBGOは「ブルガリ製品の国際的な商品開発,製造,宣伝広告及び販売」と業務内容の説明がされており,ブルガリ・グループ各社の中で本件真正品の国際レベルの卸販売を含む業務内容が記載されているのはBGOのみである(甲91)。 なお,2005年度版年次報告において,Bulgari Portugal Accessoriesde Luxo Ldaの業務内容について「国際的な運営業務」とあり,2008年度版年次報告においてBulgari Manifatturaについて,「ジュエリー類の製造及び販売を行う会社」との記載があるものの,いずれの会社も本件真正品の卸販売を行うものではない。前者については,甲第92号証に「当該会社は,アクセサリー部門におけるBulgariのブランド名を宣伝広告する責任を負うものである。」とされているとおり,その業務内容は宣伝広告に特化したものである。後者については,かつてのCrova S.p.A.(甲93)であって,BGOの発注に基づいて本件真正品を製造し,BGOに納入する立場にあるものであり,本件真正品の日本における卸販売を行うものではない。 以上から,本件真正品の日本における卸販売に関してBGOが本件登録商標の独占的通常使用権を有していることは,原告とBGOとの間の了解事項であり,原告は,BGOに対して,本件真正品の日本における卸販売に関して,本件登録商標の独占的通常使用権を黙示的に許諾しているものである。 (2)BGOの損害の額ア前記のとおり,被告は,被告商品1を150個,被告商品2を50個,被告商品3を280個譲渡した。 23イ本件真正品に係る1個当たりのBGOの仕入額,販売額及びその差額である利益額は,別紙利益額計算書記載のとおりである。なお,BGOは,これら商品の販売に要した輸送費等の費用を直接負担しておらず,その点を考慮して,実質的にこれらの費用を差し引いて販売額が決められているのであって,更に控除する必要はない。原告,ブルガリジャパン株式会社及び伊藤忠商事株式会社との間の契約書(甲97の1)の第6.2条において,輸送費,保険料及び関税を本件真正品の購入者であるブルガリジャパン株式会社が負担することとされており,BGOがこれを負担するものとはされていない。 ウ以上によれば,被告による侵害行為がなければBGOが販売することのできた商品の利益総額は,下記計算式のとおり676万9630円となる。 (計算式)●(省略)●前記のとおり,本件登録商標の使用料相当額は280万9000円であるから,上記利益総額から,この使用料相当額を控除した金額である396万0630円がBGOの損害額となる。 (3)債権譲渡及びその通知原告は,平成21年7月31日,BGOから下記債権を譲り受けた。 記被告が本件登録商標に係る商標権を侵害する行為を行ったことにより,BGOが被告に対して,平成21年7月31日時点において有するすべての債権及び同債権に対する上記商標権侵害行為の日以降年5分の割合による遅延損害金債権その他当該債権に関連するすべての債権この債権譲渡については,平成21年8月5日付け通知書で,BGOから被告に対して通知がされ,同通知は,同月6日に被告に到達した(甲79の1・2)。 24〔被告の主張〕(1)BGOが独占的通常使用権者であるとの原告の主張について原告は,本件真正品は必ずBGOを通じて流通させることが決定され,その方針が現在においても維持され,BGOの独占的状態が継続していることを根拠に,原告がBGOに対し本件登録商標の独占的通常使用権を黙示的に許諾していると主張する。 しかしながら,上記の方針が決定されたことを裏付ける信用性のある証拠はない。また,このような決定があったとしても,その内容は,原告の宝飾品については必ずBGOを通じて流通させることが原告グループ内において決定されたということにすぎず,原告によるBGOに対する商標権の独占的通常使用権を与えたというものではない。さらに,商標権について使用権が付与される場合,何らかの対価が支払われるのが通常であるのに,BGOから商標権者である原告に対しては対価が支払われていない。 このように,原告がBGOに本件登録商標の独占的通常使用権を与えているとの主張は,根拠を欠くものである。 (2)輸送費を控除すべきであること原告は,輸送費等の費用を差し引いて本件真正品の販売価格が決定されていることから,この費用を損害の算定の基礎となる単位数量当たりのBGOの利益額から控除すべきでないと主張する。 しかしながら,BGOはスイス国内に所在するから,少なくともスイスからスイス国外への輸送費が発生しているはずであるところ,この輸送費について,BGOが負担していないとする証拠はなく,実際にこれらの費用を差し引いてBGOの販売価格が決められているかどうかは明らかではない。 (3)債権譲渡の目的の特定が不十分であること原告がBGOから譲り受けたとする債権は,金額が全く明らかとなっておらず,債権譲渡の目的の特定として不十分である。 25また,債権譲渡の通知は,少なくとも債務者にその債権の同一性を識別することを可能ならしめるものであることが必要である。原告の主張する譲渡債権は,「その他当該債権に関連するすべての債権」を含んでいるが,これがいかなる債権を意味しているのか不明であり,債務者が債権の同一性を識別することは不可能である。 したがって,譲渡債権の表示は,その特定が不十分であり,このような表示によって被告に対してされた債権譲渡の通知は,債務者に対する通知としての効力を有しない。 第4当裁判所の判断1争点1(被告商品1ないし3は真正品と認められるか)について(1)BGOが販売した商品は原告が本件登録商標を付すことを認めた真正品であることについては,当事者間に争いがないところ,被告は,被告商品1ないし3はいずれも,BGOにより販売された真正品が,中間業者を経由し,X社まで譲渡され,それを被告が同社から購入したものであると主張し,その流通経路を立証するために複数のインボイスを提出する。 そこで,被告商品1ないし3が被告の主張する流通経路をたどって被告が購入したものであると認められるかどうかについて,以下検討する。 (2)被告商品1の150個のうち50個及び被告商品2の流通経路についてア被告は,被告商品1(150個のうちの50個)及び被告商品2(50個)に関して,?BGOからDFSシンガポールに各56個が販売され(乙7),?DFSシンガポールからY社に各50個が販売され(乙8),?Y社からX社に各50個が販売され(乙9),?X社から被告に各50個が販売された(被告商品1につき乙10の1,被告商品2につき乙11の1)と主張する(括弧内に摘示する証拠は,被告がその根拠とするインボイスである。)。 イ上記?の取引に関して,2004年1月ころ,BGOからDFSシンガ26ポールに対して,被告商品1に対応する真正品である本件真正品1を56個及び被告商品2に対応する真正品である本件真正品2を56個が,それぞれ販売されたことについては当事者間に争いはない。そして,乙第7号証のインボイスについては,上記事実に合致し,不自然な点は見当たらない。 ウしかしながら,上記?の取引に関するDFSシンガポール作成に係るインボイスであると被告が主張する乙第8号証については,原告が偽造であるとしてその成立を争っているところ,同文書が真正に成立したことを認めるに足りる証拠はない。かえって,乙第8号証には,以下に述べるとおり,その成立の真正を疑わせる事情があることが認められる。 すなわち,乙第8号証に作成名義人として表示されているDFSシンガポールの代表者作成の陳述書(甲55,70)中には,同社のインボイスは,甲第70号証に添付のとおりの形式で,円の中に「DFS」と白抜きをしたマークが入ったものであるとの記載があるところ,乙第8号証は,そのようなロゴマークは入っておらず,形式も甲第70号証に添付のものと全く異なるものであることが認められる。 さらに,被告は,乙第8号証に買主として表示されているY社という会社が存在したことを立証するため乙第33号証(設立証明書)を提出するものの,同設立証明書は,Z社が2006年(平成18年)8月29日に登録されたことを証明するものであって,Y社に関するものではない。被告は,Z社の代表者が同社設立以前においてもY社という名前の会社で事業を行っていた旨の陳述書(乙39)を追加して提出したものの,そのような事実を裏付ける客観的な証拠はなく,審理経過も考え合わせるとY社なる会社の存在は相当に疑わしいと言わざるを得ず,同社が存在することを認めることはできない。 以上のとおりであるから,乙第8号証がDFSシンガポールにより真正27に作成されたと認めることはできない。 エそうすると,乙第8号証を根拠に前記?の取引の存在を認めることはできず,他に同取引があったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告商品1の150個のうち50個及び被告商品2が前記流通経路を経由した真正品であるとする被告の主張を認めることはできない。 (3)被告商品1の150個のうち100個の流通経路についてア被告は,被告商品1の150個のうち100個に関して,?BGOからBulgari South Asian Operation Ltd.(配送先は,Y社方BVL Partners Company Limited)に100個が販売され(乙26),?Y社からX社に100個が販売され(乙27),?X社から被告に100個が販売された(乙28)と主張する(括弧内に摘示する証拠は,被告がその根拠とするインボイスである。)。 イしかしながら,上記?の取引に関するBGO作成に係るインボイスであると被告が主張する乙第26号証については,原告が偽造であるとしてその成立を争っているところ,同文書が真正に成立したことを認めるに足りる証拠はない。かえって,乙第26号証には,以下に述べるとおり,その成立の真正を疑わせる事情があることが認められる。 すなわち,乙第26号証には,トレードタームとして「DDU Singapore」(仕向地持込渡(関税抜き)条件。輸入国内の指定仕向地において物品を買主の処分に委ねることを売主の引渡義務とするもの。)と記載されているにもかかわらず,配送先(「BVL PARTNERS COMPANY LIMITED」)の気付(「c/o」)として「Y社」と記載されているのみでその住所の記載がなく,仕向地の住所の記載がないこと,「Y社」の文字(特に「K」の文字)が他の文字の形態と異なること,前記のとおりY社なる会社の存在を証拠上認めることができないことなど,同文書には不自然な点が多い。 また,乙第26号証のインボイス番号は「1110004429」と記28載されているところ,BGOの取締役社長作成の陳述書(甲64)中には,BGOの作成に係る同番号のインボイスは,甲第64号証添付のものであるとの記載がある。甲第64号証添付のインボイスは,配送先(「BVL PARTNERS COMPANY LIMITED」)の気付(「c/o」)が「SINCERE WATCH LIMITED」「●(省略)●」とされているほかは乙第26号証と取引内容が同一であって,前記のとおり乙第26号証の「Y社」の文字が他の文字と形態を異にすることと考え合わせれば,乙第26号証は,甲第64号証添付のインボイスと同内容のBGO発行の真正なインボイスを用いて,その配送先部分を改ざんして作成された疑いがある。 以上のとおりであるから,乙第26号証がBGOにより真正に作成されたと認めることはできない。 ウなお,被告は,甲第64号証添付のインボイスと,乙第26号証のインボイスでは,前者は1枚目に商品が3項目,2枚目に2項目記載されているのに対し,後者は1枚目に4項目,2枚目に1項目が記載されていること,前者と後者でファックス番号が異なることなどを理由に,乙第26号証を甲第64号証添付のインボイスを改ざんして作成することはできないと主張する。しかしながら,BGOの取締役社長の陳述書(甲69,73)によれば,上記の相違点は,プリンタやシステムの設定により生じ得ることが認められるから,乙第26号証と同じ項目数,ファックス番号が記載された真正なインボイスが存在していたことを推認することができ,そのインボイスの配送先部分を改ざんして乙第26号証の文書を作成することは可能であったと認めることができるから,被告の主張する上記事実は前記判断を左右するものではない。 エそうすると,乙第26号証を根拠に前記?の取引の存在を認めることはできず,他に同取引があったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告商品1の150個のうち100個が前記流通経路を経由した真正29品であるとの被告の主張を認めることはできない。 (4)被告商品3の流通経路についてア被告は,被告商品3に関して,?BGOからデル・エス・エーに300個が販売され(乙12),?デル・エス・エーからY社に280個が販売され(乙13),?Y社からX社に280個が販売され(乙14),?X社から被告に280個が販売された(乙15)と主張する(括弧内に摘示する証拠は,被告がその根拠とするインボイスである。)。 イ上記?の取引に関して,2006年5月ころ,BGOからデル・エス・エーに対して,少なくとも300個の被告商品3に対応する真正品である本件真正品3が販売されたことについては当事者間に争いはない。そして,乙第12号証のインボイスについては,上記事実に合致し,不自然な点は見当たらない。 ウしかしながら,上記?の取引に関するデル・エス・エー作成に係るインボイスであると被告が主張する乙第13号証については,原告が偽造であるとしてその成立を争っているところ,同文書が真正に成立したことを認めるに足る証拠はない。かえって,乙第13号証には,以下に述べるとおり,その成立の真正を疑わせる事情があることが認められる。 すなわち,乙第13号証の作成名義人として表示されているデル・エス・エーの社長作成の陳述書(甲56の1・2,71)中には,同社のインボイスは,甲第71号証に添付のとおりの形式であるとの記載があるところ,乙第13号証は甲第71号証に添付のものとは形式が全く異なるものである。また,同陳述書中には,デル・エス・エーは,Y社なる会社と取引をしたこともなければ,そのような会社が存在するかどうかも知らないとの記載がある。 そして,前記のとおり,Y社なる会社が存在していたことを認めることができないことも考え合わせると,乙第13号証は,デル・エス・エーに30より真正に作成されたと認めることはできない。 エそうすると,乙第13号証を根拠に前記?の取引の存在を認めることはできず,他に同取引があったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告商品3が前記流通経路を経由した真正品であるとする被告の主張を認めることはできない。 (5)被告は,ブルガリ商品につき平成17年夏以降は製造番号を確認し,製造者番号3の付されている商品以外は扱っていないと主張し,乙第35号証及び証人Dの証言中には,これに沿う記載及び供述がある。 しかしながら,証拠(甲4ないし22,24ないし51)によれば,被告が平成17年12月ころ及び平成18年2月ころに製造者番号1が付された被告商品1を少なくとも各1個ずつ販売したこと,平成18年4月ころに製造者番号2が付された被告商品2を少なくとも1個販売したこと,及び平成18年9月ころに製造者番号2が付された被告商品3を少なくとも1個販売したことが認められ,これらの事実に照らすと上記記載及び供述はにわかに信用することができず,他に上記主張を裏付けるに足る証拠はない。 (6)また,被告は,被告商品2及び3の修理・刻印が原告の直営店で受け付けられたことから,これらは真正品であると主張する。 しかしながら,原告の直営店において修理や刻印を行う際において,真贋の判断をした上でこれを行うものであるといった事情があることは認められないから,単に修理・刻印の依頼が受け付けられたことのみをもって,それらの商品が真正品であると認めることはできない。 (7)以上のとおりであるから,被告商品1ないし3を真正品であると認めることはできない。 2争点2(被告は商標権侵害行為につき無過失であったか)について被告は,X社との取引に際してBGOからX社に至るまでのインボイスを確認したなどとして,商標権侵害行為につき過失がなかったと主張する。 31しかしながら,前記のとおり,Y社なる会社に対して被告商品1ないし3が販売又は配送されたとする各インボイス(乙8,13,26)は,いずれも真正に成立したものとは認められず,かつ,インボイスの作成者とされている者により真正に作成されたものであるかどうか疑いを持つべき不自然な点も見られ,乙第8号証及び第13号証については,その外観は,極めて簡単な書式であって容易に偽造が可能なものである。また,被告は,正規ルート以外の業者から原告の商品を購入するのであるから,少なくとも商品の流通経路にある会社の存否は確認すべきであったところ,前記のとおりY社なる会社が取引の当時存在していたことを認めることはできない。 これらのことからすれば,被告は,被告商品1ないし3の購入に際し,その流通経路について十分な調査義務を果たしたとはいえない。 なお,被告は,X社の関係者であるA氏が原告の認める製造工場でなければ知り得ない情報を知っていたこと,X社から購入した商品が真正品と品質が同一であったこと,原告の直営店で修理が受け付けられたことも主張するが,上に述べた事情に照らすと,これらはいずれも被告が無過失であることを根拠付けるに足るものとはいえない。 したがって,被告の無過失の抗弁は理由がない。 3争点3(原告が被った損害の額)について(1)販売数量について前記争いのない事実等(2)記載のとおり,被告は,平成17年11月から平成18年6月ころにかけて,X社から被告商品1を150個,被告商品2を50個,被告商品3を280個購入したことは当事者間に争いがない。 被告は,少なくとも被告商品2につき22個,被告商品3につき146個をX社に返品したと主張し,それに沿うX社作成の返品のインボイス(乙43,44)を提出する。 しかしながら,この返品のインボイスは,被告商品1ないし3を被告が購32入する際のインボイス(乙10の1,11の1,15,28の1)と形式が異なる上にそれらと異なり署名もなく,その内容の信用性には疑問がある。 また,被告は,X社との間で継続的に多くの取引を行っていたことが認められるのであり(乙35,証人D),上記返品のインボイスに記載された商品が,他の機会に購入された商品ではなく,被告商品2及び3であること(すなわち,乙11の1,15の各インボイスに係るものであること)を示す証拠はない。 かえって,証拠(甲21,33,43,51)によれば,被告は,X社から被告商品1ないし3を購入してから間もない時期に相当数を他の業者に販売していることが認められる。そして,被告は,被告商品1ないし3について在庫はないと主張していること,また,第10回弁論準備手続において当裁判所から被告に対し被告商品1ないし3の販売個数につき明らかにするよう求めたのに対し,被告は3年ないし3年半以上前の取引であることから返品伝票を発見できなかったなどとして販売個数を明らかにしないこと(平成21年5月18日付け準備書面(8)3頁)などを考え合わせると,訴状送達の日の翌日である平成19年11月11日までに,前記被告が購入した被告商品1ないし3の全数について,譲渡がされたものと認めるのが相当である。 したがって,被告は,被告商品1を150個,被告商品2を50個,被告商品3を280個譲渡したことが認められる。 (2)被告が被告商品1を7万1000円で,被告商品2を5万2000円で,被告商品3を5万3000円でそれぞれ販売していたことは当事者間に争いがないことから,売上額は,被告商品1が1065万円(7万1000円×150個),被告商品2が260万円(5万2000円×50個),被告商品3が1484万円(5万3000円×280個)であり,売上合計は2809万円と認められる。 そして,証拠(甲84の1〜6)及び弁論の全趣旨からすれば,本件登録33商標は,日本を含む世界各国で著名であり,また,高級なブランドイメージを伴い,高い顧客吸引力を有するものと認められるから,その商標使用料は原告の主張する売上額の10パーセントを下らないものと認められる。 したがって,本件登録商標の使用料相当額は,280万9000円と認められる(商標法38条3項)。 (3)上記損害の額と本件事案の性質等の諸般の事情を考慮すると,弁護士費用相当損害金は30万円と認められる。 (4)以上からすれば,被告の行為により原告が被った損害は310万9000円と認められる。 4争点4(BGOからの譲受債権の請求の可否及び金額)について(1)原告は,BGOは本件登録商標の独占的通常使用権者であり,被告の行為はBGOに対する不法行為にも該当する旨主張する。 証拠(甲53,91〜93)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,ブルガリ・グループの親会社であり,同グループには,2005年(平成17年)12月31日時点において22か国43の会社が,2008年(平成20年)12月31日時点において24か国52の会社が存在していた(甲91別添1及び2)。 イBGO(Bulgari Global Operations S.A.)は,ブルガリ商品の国際的な商品開発,製造,宣伝広告及び販売に関与する会社であり,上記ブルガリ・グループに属している(甲91)。 ウ原告は,平成17年より前において,本件真正品を含む本件登録商標を付した特定の宝飾品については,BGOを通じてのみ日本を含む全世界に販売すると決定し,同決定に基づき,これらの商品は,現在に至るまでBGOを通じてのみ小売店に供給されている(甲91)。ただし,特別に顧客の好みに合わせた高価な注文品又は一品物の商品については,原告の許34諾に基づいてブルガリ・グループにおける製造を担当する会社が小売店を経営する会社に直接販売することが時折ある(甲53)。 以上の認定事実のとおり,高価な注文品又は一品物の宝飾品(本件登録商標が付されたものも含まれる可能性があることは否定されていない。)については例外的に原告の許諾に基づいてグループ内の製造を担当する会社から直接販売されることがあるものの,BGOは原告の許諾に基づいて本件真正品を含む本件登録商標を付した宝飾品を原告のグループ会社の中で独占的に販売していること,かかるBGOの独占販売はグループの親会社である原告により決定されたものであること,製造を担当する会社もBGOも原告が親会社であるグループ内の会社であることからすれば,原告は,BGOに対し,平成17年より前に,本件登録商標の独占的通常使用権を付与したものと認めることができる。 そして,被告の被告商品1ないし3を販売するなどの行為は,上記独占的通常使用権に基づいて本件真正品を販売しているBGOの法律上保護されるべき利益を侵害するものであるから,BGOに対する不法行為にも該当すると認められる。 (2)BGOの損害額についてア上記のとおりBGOは本件登録商標の独占的通常使用権者であるところ,商標の独占的通常使用権は,当該商標を独占的に使用して市場から利益を上げることができる点は専用使用権と実質的に異なるところはないから,独占的通常使用権についても商標法38条1項を類推適用することができる。 イ単位数量当たりの利益の額(ア)証拠(甲81の1・2,82,83の1・2)によれば,BGOは,原告から本件真正品を別紙利益額計算書記載1の価格で仕入れ,同別紙記載2の価格で日本の小売店を経営する会社に販売していることが認め35られ,上記販売価格と仕入価格の差額は,同別紙記載3記載の金額となる。 (イ)被告は,スイスからスイス国外への輸送費を利益額から控除すべきであると主張する。 しかしながら,証拠(甲97の1・2)によれば,BGOは,小売店を経営するブルガリジャパン株式会社及び伊藤忠商事株式会社との間で,BGOは販売に係る商品を伊藤忠商事株式会社の指定する運送人に引き渡すこと,及び輸送費はブルガリジャパン株式会社が負担することを合意していることが認められ,この事実によれば,前記のBGOの販売価格は輸送費を含まないものであるといえるから,更に被告の主張する輸送費を利益額から控除すべきであるとは認められない。 (ウ)以上によれば,本件真正品1個当たりのBGOの利益額は,別紙利益額計算書記載3の金額であると認められる。 ウ被告による譲渡数量前記のとおり,被告は,遅くとも本件の訴状送達の日の翌日である平成19年11月11日までに,被告商品1を150個,被告商品2を50個,被告商品3を280個販売したことが認められる。 エそうすると,前記被告による譲渡数量に1個当たりの利益額を乗じると,下記計算式のとおり,合計で676万9630円となる。 (計算式)●(省略)●そして,前記のとおり,原告に対して支払うべき本件登録商標の使用料相当額は280万9000円と認められるので,同金額を控除した396万0630円がBGOの損害額であると認められる。 (3)以上からすれば,被告による被告商品1ないし3の販売行為により,BGOの被告に対する396万0630円の不法行為に基づく損害賠償債権が36生じたものと認められる。 そして,証拠(甲79の1・2)によれば,BGOは,平成21年7月31日,譲渡債権の表示を「本件登録商標に係る商標権を侵害する行為を行ったことによりBGOが被告に対して平成21年7月31日時点において有するすべての債権及び当該債権に対する上記商標権侵害行為の日以降年5分の割合による遅延損害金債権その他当該債権に関連するすべての債権」として,同債権を原告に譲渡する契約を締結したこと,及びBGOは被告に対し,同債権譲渡の通知書を送付し,同通知書は同年8月6日,被告に到達したことが認められる。 上記譲渡債権には,前記BGOの被告に対する396万0630円の不法行為に基づく損害賠償債権及びその遅延損害金債権が含まれることは明らかであるから,同債権は上記債権譲渡により原告に移転したものと認められ,BGOによる債権譲渡通知が被告に到達したことにより,被告に対する対抗要件を具備したものと認められる。 (4)被告は,上記の譲渡債権の表示は,債権の額が特定されていないから債権譲渡の目的として特定が不十分である,内容が不明な「その他当該債権に関連するすべての債権」を含んでいることから譲渡通知は効力を有しないなどと主張する。 しかしながら,上記債権譲渡においては,「本件登録商標の侵害行為によって生じた債権」などとしてその発生原因を特定し,かつ,「平成21年7月31日時点において有するすべての債権」として,その範囲も明示していることから,債権譲渡の目的の特定として不十分であるということはできない。また,債務者対抗要件としての債権譲渡通知においては,債務者に債権の同一性を識別できる程度に譲渡対象である債権が特定されていれば足りると解されるところ,上記債権譲渡通知においては,「その他当該債権に関連するすべての債権」との概括的な記載がされているものの,同通知の譲渡債37権の表示中のその他の記載により,被告においていかなる範囲の債権が譲渡されたのかを識別することは可能であり,債務者対抗要件の通知として欠けるところはない。被告の上記主張は理由がない。 (5)以上によれば,原告は,BGOの被告に対する396万0630円の不法行為に基づく損害賠償及びその遅延損害金の支払を被告に対して求めることができる。 5差止め及び廃棄の必要性並びに譲受債権に係る請求原因の追加の許否について(1)被告は,本件訴訟において被告商品1ないし3が真正品であると主張していること,現在も被告商品1ないし3の購入先であるX社からブルガリ商品を購入していること(乙35)から,今後も,本件と同じ行為により本件登録商標に係る商標権を侵害するおそれがあるということができるから,侵害行為の差止請求を認める必要がある。なお,別紙商品目録記載の本件商品は,被告商品1ないし3と同種のものであって,かつ,「製造者番号1又は2が付されたもの」と特定されているところ,「製造者番号1又は2が付されたもの」とすることは,差止め及び廃棄の対象を限定するものであるから,請求の趣旨どおりの差止めを認めることができる。 原告は,本件商品(別紙目録記載の各商品)の廃棄も請求している。しかしながら,被告は,本件商品の在庫は一切残っていないと主張しているところ,前記のとおり,被告は,X社から購入した被告商品1ないし3についてはその全部を譲渡したことが認められ,また,その他の機会に購入した本件商品についてもこれが販売等がされずに被告の元に残っていることについてはこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告が現に本件商品を所有ないし占有していることが認められないから,上記廃棄請求は理由がない。 (2)被告は,平成21年11月5日付け準備書面(10)において,原告がBGOからの譲受債権に関する事実を請求原因に追加したことについて,著しく38訴訟手続を遅延させることとなるとして,訴えの変更申立てを許さない旨の決定を求める申立てをする(民事訴訟法143条1項及び4項)。 しかしながら,上記追加変更後の請求原因は,それ以前からの請求原因である被告の商標権侵害行為の事実と主要な争点を同じくするものであり,また,上記請求原因の追加的変更は損害に関する審理の経過に応じて提出されたものであることは当裁判所に顕著であり,請求原因の追加的変更により著しく訴訟手続を遅延させるものとはいえないから,被告の上記申立てについては,これを却下することとする。 6結論以上によれば,本訴請求は,被告に対して,本件商品の販売及び販売のための展示の差止め,原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償として310万9000円の支払,原告がBGOから譲り受けた不法行為に基づく損害賠償債権に係る396万0630円の支払,並びに,これらの合計706万9630円に対する不法行為の後の日である平成19年11月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
39裁判官舟橋伸行40(別紙)被告標章目録12341(別紙)商品目録118Kピンクゴールドのビー・ゼロワンペンダントであって製造者番号が●(省略)●と記されているもの218Kピンクゴールドのビー・ゼロワンリング3バンドであって製造者番号が●(省略)●と記されているもの3ホワイトゴールドのビー・ゼロワンリング3バンドであって製造者番号が●(省略)●と記されているもの42(別紙)登録商標目録登録番号第1789718号登録商標商品の区分第14類,第18類,第26類指定商品第14類:身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト第18類:かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ第26類:腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類43(別紙)利益額計算書11個当たりのBGOの仕入額(1)本件真正品1・・・●(省略)●円(2)本件真正品2・・・●(省略)●円(3)本件真正品3・・・●(省略)●円21個当たりのBGOの販売額(1)本件真正品1・・・●(省略)●円(2)本件真正品2・・・●(省略)●円(3)本件真正品3・・・●(省略)●円31個当たりのBGOの利益額(1)本件真正品1・・・●(省略)●円(2)本件真正品2・・・●(省略)●円(3)本件真正品3・・・●(省略)●円 |
裁判長裁判官 | 阿部正幸 |
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裁判官 | 山門優 |