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関連審決 無効2009-890051
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22行ケ10005審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10090審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10047審決取消請求事件 判例 商標
平成21行ケ10071審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10042審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項10号 /  4条1項11号 /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  商品の類似 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  国内 /  禁止権 /  無効審判 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10411号 審決取消請求事件
原告日本ライフライン株式会社
同訴訟代理人弁理士谷山守
被告ロ ート製薬株式会社
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/04/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が無効2009−890051号事件について平成21年11月11日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求主文1項と同旨第2事案の概要本件は,原告が,下記1の被告の本件商標に係る商標登録について,原告の下記2の本件無効審判請求が成り立たないとした特許庁の別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1本件商標(甲21の1・2)登録番号:登録第5098998号登録出願日:平成19年2月7日商標:「ATHLETELABEL」の欧文字(標準文字)指定商品:第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液」登録査定日:平成19年10月16日設定登録日:同年12月14日2特許庁における手続の経緯(1)原告は,平成21年5月13日,被告の本件商標登録に係る指定商品中,第5類「医療用腕環」について,商標法3条1項柱書,同法4条1項10号及び11号に違反することを理由に,無効審判を請求した。なお,原告は,同項11号について,下記ア,イの引用商標1及び引用商標2(以下,併せて「引用商標」という。)を引用した。
ア引用商標1:登録第4422102号(甲5の2)商標:「ΛTHLETE」指定商品:第10類医療用機械器具イ引用商標2:登録第4441402号(甲5の3)商標:「アスリート」指定商品:第10類医療用機械器具(2)これに対し,特許庁は,原告の請求を無効2009-890051号事件として審理し,平成21年11月11日に「本件審判の請求は,成り立たない。」とする本件審決をし,同月20日,その謄本は原告に送達された。
3本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,本件商標の登録は,その指定商品中,第5類「医療用腕環」について,商標法3条1項柱書,同法4条1項10号及び11号に違反してされたときに該当しないから,同法46条1項の規定により,その登録を無効とすべきものではない,というものである。
4取消事由(1)商標法3条1項柱書該当性の判断の誤り(取消事由1)(2)商標法4条1項10号該当性の判断の誤り(取消事由2)(3)商標法4条1項11号該当性の判断の誤り(取消事由3)第3当事者の主張1取消事由1(商標法3条1項柱書該当性の判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)商標法3条1項柱書の「自己の業務に係る商品」として登録を受けられる商標は,現に使用している商標だけでなく将来使用する商標も含まれるものであるが,商標法の目的の趣旨(同法1条)及び商標登録の取消審判の制度趣旨(同法50条)等に鑑みても,将来においても使用されることのない商標までも登録して保護するものでないことは当然である。
また,登録を受けられる商標は,「出願人の自己の業務」に係る商品について使用する商標でなければならず,近い将来開始の業務を含む自己の業務が存在しない場合には,「自己の業務」に係る商品について,その商標を使用することはあり得ないものというべきである。
(2)被告は,本件商標の指定商品中「第5類医療用腕環」については,現に使用していないばかりでなく,将来使用するとは到底考えられないから,「自己の業務に係る商品」について使用をしていないものである(甲23,26)。被告にとって,「医療用腕環」は,実質的に自ら使用する意思のない商標権といわざるを得ず,被告は,禁止権の概念を知悉していながら禁止権の使用を想定していたとして指摘されても過言ではない。
(3)被告が医療用腕環を使用する意思があったならば,既に具体的予定が示されているはずであり,被告の主張は,不自然である。
(4)よって,本件商標が商標法3条1項柱書の要件を具備しないとはいえないという本件審決の判断には,誤りがある。
〔被告の主張〕商標法3条1項柱書の要件を充足するためには,将来行う意思がある業務に係る商品について,将来使用する意思を有していれば足りる。
そもそも,世界全体の経済が瞬時に変化を遂げる中,生き残りをかけた被告を含む各企業が,迅速かつ大胆に,新規分野に参入し,事業の展開を図っていくこと自体,珍しくない。被告は,「医療用腕環」の業務を近い将来において行い,これに係る商品に本件商標を使用する意思を有していたからこそ,「医療用腕環」を指定商品に加えているのである。
登録査定時点において「医療用腕環」の業務を現に行っていないからといって,被告において「医療用腕環」の業務を行う可能性がないとはいえないし,審判外における任意交渉での被告の回答(甲23)において「医療用サポーター」に言及したからといって,被告が「医療用腕環」の製造販売を将来行う意思及び当該商品に本件商標を将来使用する意思がない旨を言明したことにはならない。
2取消事由2(商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)原告は,昭和56年の創業以来一貫して循環器関連の医療用機械器具の供給や医療情報提供を行い,大学病院等の全国医療中枢で高く評価されている。原告は,本件商標に係る指定商品中,「第5類医療用腕環」の類似商品に該当する「第10類医療用機械器具」の分野において,平成6年から,医療用機械器具,特にガイドワイヤーについて「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する17件の登録商標を有し,ブランド展開を行っている。このように,「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標は,原告の登録商標として権利化されており,実際にも医療用機械器具の分野においては,原告のブランドとしてガイドワイヤー等の医療用機械器具の取引者,需要者の間に広く認識されていたものである(甲6〜19,27〜44)。
(2)このように,原告の有する「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標は,本件商標の出願時及び登録時において,原告の業務に係るガイドワイヤー等の医療用機械器具を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されて周知であり,上記証拠によれば,原告の商標の使用態様,使用商品,使用者,使用期間,使用数量,市場シェアなどの商標の使用状況から,使用商標が周知性を獲得していることを認定するに足りるものである。
(3)よって,本件商標が商標法4条1項10号に該当しないとした本件審決の判断は,誤りである。
〔被告の主張〕多数の商品が存在するガイドワイヤー市場において,それらの商品の一つとして原告商品が取引されているとしても,原告商品がガイドワイヤーを含む医療用機械器具において,需要者の間に広く認識されているとまでは評価し難い。
また,原告が販売する商品は,「アスリートソフト」や「アスリートプラス」など,原告が引用する「ATHLETE」,「アスリート」とは態様を異にするものが含まれているから,商標法4条1項10号の該当性の判断に誤りがあるとする原告の主張は失当である。
3取消事由3(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)原告の登録に係る引用商標は,医療用機械器具について長期かつ広範囲にわたる使用の結果,本件商標の出願時及び登録時において,原告の業務である医療用機械器具を示す商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものである。
引用商標は,「ATHLETE」,「アスリート」の文字であり,これが,原告の業務に係る商品の出所を表示するものとして周知性を有し,取引者・需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的印象を与えるものである。
(2)本件商標は,「ATHLETELABEL」の文字を横一連に記載した構成から成るものであり,「ATHLETE」と「LABEL」との間に間隔を設けて成るものである。
本件商標は,その外観構成上,全体として一個の商標を構成するが,その要部はあくまでも「ATHLETE」の文字にあるものというべきであり,後半の「LABEL」の部分は,指定商品中「医療用腕環」との関係において自他商品識別力が極めて希薄で乏しいものである。したがって,本件商標の外観は,引用商標と類似する。
また,本件商標は,一般的には我が国においては「アスリートラベル」と称呼されるのが通常である。しかしながら,本件商標のうち後半の「LABEL」の部分は,指定商品中「医療用腕環」との関係において自他商品識別力が極めて希薄で乏しいから,「LABEL」を除いた「ATHLETE」の部分のみから「アスリート」の称呼を生じるものと解される。
原告も,「ATHLETE」,「アスリート」をブランド展開しており,「ATHLETE」,「アスリート」の後に他の文字を加えた商標登録を多数所有している。
仮に,「ATHLETE」,「アスリート」の後に何らかの他の文字を付け加えれば,第三者でも容易に商標登録ができるとするならば,このようなブランドに蓄積された信用にフリーライドすることを考えて,第三者から同様の商標登録出願が行われることになる。すなわち,周知・著名なブランドに他の文字を追加するのみで商標登録が可能となれば,商標法で保護される信用の範囲は極めて狭くなり,それによって商標権の範囲を容易に回避できるようになり,産業の発達への阻害要因となる。
その意味内容からも,また称呼からも,「ATHLETE」と「LABEL」が不可分に結合するといった格別な理由はなく,本件商標は「ATHLETE」商標と率直に認識され得るものである。
(3)「ATHLETE」又は「アスリート」を引用されて,商標法4条1項11号に該当するものとして拒絶査定又は拒絶理由通知後出願取下げとなった出願として,「Athleteeco」,「アスリートパーク/ATHLETEPARK」等多数ある(甲45〜55)。本件商標と引用商標とは,「アスリート」の称呼及び「運動選手,競技者」の観念を共通にする商標であって,時と処を異にする取引にあっては,これらを同一又は類似の商品に使用すれば,その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ないから,本件商標と引用商標とは類似の商標と判断されるべきである。
特に,引用商標は,原告の商標として医療用機械器具の分野において取引者又は需要者の間に広く認識された商標となっており,この点からも本件商標中「ATHLETE」の部分に格別の印象を与えるものである。原告は,医療用機械器具について,引用商標を始め,これら引用商標を冠する商標群のブランド展開を行っているから,本件商標に係る「医療用腕環」が存在したと仮定した場合,これに接する者は,一見してこれが「ATHLETE」からなるものと認識し,「アスリート」の称呼,観念をもって特定し,認識するものである。
本件商標は,指定商品に「第5類医療用腕環」を含んでおり,これが引用商標の指定商品「第10類医療用機械器具」と抵触することは明白である。
(4)なお,結合商標の類否については,その部分が,取引者,需要者に支配的印象を与えるものと認められる場合等を除き,一部抽出は許されないとされているところ,本件商標は,明らかに「ATHLETE」の部分が強く支配的印象を与えているのであるから,この部分のみを抽出して引用商標と比較し,商標そのものの類否を判断することは許されるというべきである。
(5)よって,本件商標が商標法4条1項11号に該当しないとした本件審決の判断は,誤りである。
〔被告の主張〕本件商標は,横一連に,同書・同大の文字で等間隔により表してなるものであり,決して冗長ではなく,一気に称呼し得るものである。したがって,これを敢えて「ATHLETE」と「LABEL」に分断,抽出し,類否判断しなければならないとする特段の事由が見当たらないから,原告の主張は失当である。
第4当裁判所の判断1取消事由1(商標法3条1項柱書該当性の判断の誤り)について(1)商標法3条1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」として登録を受けられる商標は,現に使用している商標だけでなく,使用する意思があり,かつ,近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきである。
(2)被告は,医療用具,健康器具及び美容健康器具の製造,販売並びに輸出入等を目的とする株式会社であり,従前,医療用サポーターについて販売していたことがあり(甲23),将来,医療用腕環について使用する意思がある旨述べている(弁論の全趣旨)。そうすると,本件商標は,指定商品「医療用腕環」について,被告において使用する意思があり,かつ,近い将来において使用する予定のある商標ということができる。
原告は,被告が「医療用腕環」について本件商標を使用する意思がないと主張するが,以上の認定判断を左右する事実を認めるに足りる証拠もなく,原告の憶測の域を出るものではないから,その主張を採用することはできない。
(3)よって,取消事由1は,理由がない。
2取消事由2(商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について(1)商標の類否判断商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
しかるところ,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
(2)認定事実証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
ア原告の営業原告は,昭和56年に医療用機器の輸入,製造並びに国内販売を主な事業内容として設立された会社である。原告は,循環器系分野の医療用機器を提供しているところ,心臓ペースメーカやEPカテーテル等のほか,ガイドワイヤーを取り扱っている(甲4)。
イガイドワイヤーの取引状況ガイドワイヤーとは,PCI(経皮的冠動脈形成術)と呼ばれる心臓カテーテル治療に用いられる医療機器である。PCIとは,腕や脚の血管からガイドワイヤーを心臓まで引き通して,そのガイドワイヤーをガイドとしてバルーンカテーテルを心臓の冠動脈まで押し込み,バルーンを膨らますことで冠動脈の塞栓等を解消する手術方法である(甲4,56)。
ガイドワイヤーは,薬事法上,製造販売には独立行政法人医薬品医療機器総合機構への申請及び厚生労働大臣の承認が必要な医療機器であり,PCIを行う病院に直接販売する方法と,販売代理店経由で販売する方法とがある。原告は,全国に26か所の営業拠点を有し,代理店経由の場合を含め,原告の営業担当者が直接病院施設を訪問し,製品の紹介・販売・サポートを行っている(甲56)。
ウ原告の有する商標原告は,「ΛTHLETE」(引用商標1)及び「アスリート」(引用商標2)のほか,「アスリートマーカー/ATHLETEMARKER」,「アスリートコンクエスト/ATHLETECONQUEST」,「アスリートミラクル/ATHLETEMIRACLE」,「アスリートゴールド/ATHLETEGOLD」等,「ATHLETE」,「アスリート」を冠する合計17の商標について,指定商品を「第10類医療用機械器具」として登録を受けている(甲5。枝番を含む。特に断らない限り,以下同じ)。
エ原告商品の販売状況原告は,平成7年ころから,ガイドワイヤーに「ATHLETE」,「アスリート」を冠した上記ウの商標を付し,これを「ATHLETE」,「アスリート」シリーズとして製造販売しており,平成7年度以降の原告のカタログ等にも,「ATHLETE」,「アスリート」を冠した商標を付したガイドワイヤーが掲載されている(甲27〜31)。
株式会社矢野経済研究所京都支社生命科学産業調査本部ヘルスケア部の調査資料や,株式会社アールアンドディ作成の「医療機器・用品年鑑」の各年度毎の市場分析によれば,原告は,ガイドワイヤーの販売本数で,平成8年から平成12年まで約15%ないし25%を占めていた。その後,独占販売契約の打切りによる自社製品への切替えのため,平成13年は販売本数が減少したが,その後平成14年以降平成19年まで約5%ないし8%のシェアを占めてきた。原告は,ガイドワイヤーの販売本数ベースで,平成8年以降,平成13年を除き,毎年上位5社以内にランキングされている。上記市場分析においても,原告が「ATHLETE」,「アスリート」シリーズのガイドワイヤーを市場展開されていることが記載されている(甲11,32〜43,56)。
原告は,平成18年4月から1年間の決算期及び平成19年4月から1年間の決算期において,ガイドワイヤーを用いる病院施設数が全国で約1000程度といわれているうちの,約750病院施設にガイドワイヤーを納品した。なお,納品実績の有無に関わらず,主要な病院施設のほとんどに営業活動も行なってきた。また,地域的にも全国47都道府県のそれぞれにある病院への納品実績がある(甲56,57)。
オ「AthleteGTSOFT」,「AthleteGTSOFTType-S」,「AthleteGTPowerSOFT」,「AthleteGTIntermediate」等「ATHLETE」,「アスリート」が冠された商標が付された原告のガイドワイヤーは,平成13年日本心血管カテーテル治療学会等の学会誌に掲載されたのをはじめ,学会予稿集や医学雑誌に多数回掲載されている(甲6〜10,12,13,19,44)。
カ商標法4条1項10号にいう「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」については,我が国において,全国民的に認識されていることを必要とするものではなく,その商品の性質上,需要者が一定分野の関係者に限定されている場合には,その需要者の間に広く認識されていれば足りるものである。
上記アないしオのとおり,ガイドワイヤーが,一般に市販されている商品ではなく,特定の医療関係者に販売元から直接又は問屋を通して売買されるものであること,「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標を付した原告の製造販売に係るガイドワイヤーの販売本数が,平成8年以降ほぼ毎年上位5位以内にランキングされていること,原告の「ATHLETE」,「アスリート」シリーズのガイドワイヤーが,全国の対象医療機関の大多数に販売され又は営業活動が行われ,納品実績が全国にわたること,原告のカタログや調査会社の市場分析のみならず,医療関係者が購読する雑誌等にも,たびたび原告の「ATHLETE」,「アスリート」シリーズのガイドワイヤーが掲載されていること等の事実を総合すると,「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標は,平成19年2月までに,原告が製造販売するガイドワイヤーの商標として,上記医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者の間に周知性を獲得し,その後も周知性を維持していると評価するのが相当である。
(3)本件商標と原告の使用商標との類否ア本件商標は,「ATHLETELABEL」の欧文字から成る結合商標である。
本件商標を構成する「ATHLETE」は「運動選手,競技者」等,「LABEL」は「貼り紙,ラベル」等を意味する英語の普通名詞である。本件商標が,「ATHLETE」と「LABEL」の2語から成り,その間にスペースがあることに照らすと,本件商標の各構成部分は,これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものということはできない。そして,前記(2)認定のとおり,本件商標の一部を構成する「ATHLETE」の部分が,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者に対し,原告の商品を示すものとして周知性を獲得し,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本件商標のうち「ATHLETE」の部分だけを,原告の使用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものというべきである。
イそうすると,本件商標からは,「ATHLETELABEL」全体としてのみならず,「ATHLETE」の部分からも称呼,観念が生じるということができる。
そして,後者の「ATHLETE」は,原告の使用商標のうち「ATHLETE」と同一の欧文字から成るものであり,両者とも「アスリート」という同一の称呼が生じ,「運動選手,競技者」という同一の観念が生じるから,その外観を考慮しても,両者は類似する。したがって,本件商標「ATHLETELABEL」が医療用腕環に使用されるときは,本件商標中の「ATHLETE」は,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者において,周知の原告の使用商標との出所を誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。
ウしかるところ,1個の商標から2個以上の呼称,観念を生じる場合には,その1つの称呼,観念が登録商標と類似するときは,それぞれの商標は類似すると解すべきである(前掲最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決参照)。
エよって,本件商標から生じる称呼,観念の1つである「ATHLETE」と原告の使用商標とが類似する以上,本件商標は,原告の使用商標と類似するものである。
(4)商品の類似性本件商標の指定商品のうち,無効審判請求に係るのは,第5類「医療用腕環」であるところ,原告が「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標を付して周知性を獲得したのは,ガイドワイヤーである。両者は,医療という用途に使用され,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者が共通することから,類似の関係にある。
(5)商標法4条1項10号該当性以上のとおり,本件商標は,原告がガイドワイヤーに使用して周知性を獲得した「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標と類似し,商品においても類似するから,本件商標は,商標法4条1項10号に該当し,同号に該当しないとした本件審決の判断は,誤りである。
(6)小括したがって,取消事由2は,理由がある。
3取消事由3(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について(1)本件商標と引用商標との類似性ア前記2(3)アで述べたのと同様に,本件商標のうち「ATHLETE」の部分だけを,引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものというべきであるから,本件商標からは,「ATHLETELABEL」全体としてのみならず,「ATHLETE」の部分からも称呼,観念が生じるということができる。
イ他方,引用商標1の冒頭の文字「Λ」は,「A」の文字から横棒を除外したもので「A」と類似し,引用商標1からは「アスリート」の称呼が生じる(甲5の2)。そして,引用商標1からは,「運動選手,競技者」等の観念が生じる。
ウそうすると,本件商標のうち「ATHLETE」の部分は,引用商標1と類似の欧文字から成るものであり,両者とも「アスリート」という同一の称呼が生じ,「運動選手,競技者」という同一の観念が生じるから,その外観を考慮しても,両者は類似する。そして,「ATHLETELABEL」が医療用機械器具に使用されるときは,本件商標中の「ATHLETE」は,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者において,引用商標1との出所を誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。
エよって,本件商標から生じる称呼,観念の1つである「ATHLETE」と引用商標1とが類似する以上,本件商標は,引用商標1と類似するものである。
(2)商品の類似性本件商標の指定商品のうち,無効審判請求に係るのは,第5類「医療用腕環」であるところ,引用商標の指定商品は,いずれも第10類「医療用機械器具」である。
医療用腕環も医療用機械器具も,いずれも医療という用途に使用され,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者が共通することから,類似の関係にある。
(3)商標法4条1項11号該当性以上のとおり,本件商標は,引用商標1と類似し,指定商品においても類似するから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当し,同号に該当しないとした本件審決の判断も,誤りである。
(4)小括したがって,取消事由3も,理由がある。
4結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由2及び3は理由があり,本件審決は取り消されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 井上泰人
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