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事件 平成 21年 (ネ) 10058号 商標権侵害差止等,商標権侵害不存在確認等請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/04/27
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文


平成22年4月27日判決言渡
平成21年(ネ)第10058号商標権侵害差止等,商標権侵害不存在確認等請
求控訴事件
平成21年(ネ)第10072号同附帯控訴事件
(原審東京地方裁判所平成18年(ワ)第26725号商標権侵害差止等請求
事件(原審第1事件 ,平成19年(ワ)第15580号商標権侵害不存在確認 )
等請求事件(原審第2事件 ))
平成22年2月23日口頭弁論終結
判決
控訴人(附帯被控訴人)株 式 会 社 ロ イ ヤ ル
訴 訟 代 理 人 弁 護 士浅井正
同 久保田皓
被控訴人伊 藤 忠 商 事 株 式 会 社
被控訴人ビーエムアイ・ホールディングス株式会社
(旧商号コンバースジャパン株式会社)
被控訴人(附帯控訴人)コンバースフットウェア株式会社
被控訴人ビーエムアイ・ホールディングス株式会社訴訟引受人兼被控訴



人(附帯控訴人)コンバースジャパン株式会社
上記4名訴訟代理人弁護士永井紀昭
同 山口健司
同 石神恒太郎
同 岩井泉
同 鶴由貴
同 中澤構
同 山岸正和
同 白木裕一
同 關健一
主文
1控訴人(附帯被控訴人)の本件控訴を棄却する。
2控訴人(附帯被控訴人)が当審で拡張した請求を棄却する。
3被控訴人(附帯控訴人)コンバースフットウェア株式会社,被控訴人ビーエム
アイ・ホールディングス株式会社訴訟引受人兼被控訴人(附帯控訴人)コンバー
スジャパン株式会社の附帯控訴に基づき,原判決主文第6項,第7項を次のとお
り変更する。
( )原判決主文第6項につき
1
控訴人(附帯被控訴人)は,被控訴人(附帯控訴人)コンバースフットウェ
ア株式会社に対し,8億7553万3393円及び内金4億6521万087
8円に対する平成18年12月8日から,内金3億2457万2638円に対
する平成19年9月30日から,内金8574万9877円に対する平成20
年9月30日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
( )原判決主文第7項につき
2
控訴人(附帯被控訴人)は,被控訴人ビーエムアイ・ホールディングス株式



() , 会社訴訟引受人兼被控訴人 附帯控訴人 コンバースジャパン株式会社に対し
2億9361万0647円及び内金2億0091万8646円に対する平成1
8年12月8日から,内金7358万4789円に対する平成19年9月30
日から,内金1910万7212円に対する平成20年9月30日からそれぞ
れ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4控訴費用及び附帯控訴費用は,控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。
5この判決は,第3項,第4項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人(附帯被控訴人)
( )原判決中,控訴人(附帯被控訴人)敗訴部分を取り消す。
1
( )被控訴人伊藤忠商事株式会社,被控訴人ビーエムアイ・ホールディング 2
ス株式会社,被控訴人(附帯控訴人)コンバースフットウェア株式会社,及
び被控訴人ビーエムアイ・ホールディングス株式会社訴訟引受人兼被控訴人
(附帯控訴人)コンバースジャパン株式会社(以下,これらの当事者を包括
して「被控訴人ら」という )は,原判決別紙原告商標目録記載1ないし1 。
0の商標を付した靴(ただし,米国コンバース社製造に係る靴を除く )の。
販売,販売のための展示,又は宣伝広告をしてはならない。
( )被控訴人らは,控訴人(附帯被控訴人)が米国コンバース社標章を付し
3
た靴及び包装を輸入,販売,販売のための展示,宣伝広告をする権利を有し
ていない旨の虚偽の宣伝流布をしてはならない。
( )被控訴人らは,控訴人(附帯被控訴人)に対し,各自3億1856万2
4
754円及びこれに対する平成21年11月19日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え。
( )被控訴人らは,控訴人(附帯被控訴人)が米国コンバース社製の真正商
5
品であるコンバースシューズを輸入販売することを,輸出元(控訴人(附帯



)) 。 被控訴人 への供給元 に圧力を加える等の方法により妨害してはならない
( )被控訴人らは,被控訴人らのコンバースシューズ取扱販売店(小売店)
6
及び控訴人(附帯被控訴人)の米国コンバース社製コンバースシューズ(真
並行輸入商品)取扱販売店(小売店)に対し,下記アからエの行為をして
はならない。
ア米国コンバース社の真正並行輸入商品(コンバースシューズ)を取扱販
売しないよう指示,要請すること
イ米国コンバース社の真正並行輸入商品(コンバースシューズ)を取扱販
売する場合は,同一モデルの被控訴人らのコンバースシューズと同一の販
売価格で販売するよう指示,要請すること
ウ被控訴人らのコンバースシューズについて一定の再販売価格で販売する
(シーズン商品について,シーズン終了後の値引率に関し,限度価格以上
で販売する)よう指示,要請すること
エ上記アないしウの指示,要請に対する取扱販売店(小売店)の対応内容
に基づき,取扱販売店に対し不平等な取扱い(スターショップ店の選定及
,,,,) び選定の取消し 仕入価額の値上げ 値下げ 限定商品の納入 不納入等
をすること
( )被控訴人伊藤忠商事株式会社,被控訴人(附帯控訴人)コンバースフッ
7
トウェア株式会社,及び被控訴人ビーエムアイ・ホールディングス株式会社
訴訟引受人兼被控訴人(附帯控訴人)コンバースジャパン株式会社の請求を
いずれも棄却する。
( )被控訴人(附帯控訴人)コンバースフットウェア株式会社,及び被控訴
8
人ビーエムアイ・ホールディングス株式会社訴訟引受人兼被控訴人(附帯控
訴人)コンバースジャパン株式会社の附帯控訴をいずれも棄却する。
( )訴訟費用は,第1審,第2審(控訴費用,附帯控訴費用を含む )とも被
9 。
控訴人らの負担とする。



2被控訴人伊藤忠商事株式会社,被控訴人ビーエムアイ・ホールディングス株
式会社,被控訴人(附帯控訴人)コンバースフットウェア株式会社,及び被控
訴人ビーエムアイ・ホールディングス株式会社訴訟引受人兼被控訴人(附帯控
訴人)コンバースジャパン株式会社
主文同旨
第2事案の概要等
1表記について
当審においては,原審における表記(略語を含む。)を用い,また以下の表記
(略語を含む。)を併せて用いる。
( )被控訴人 原審第1事件原告・第2事件被告 伊藤忠商事株式会社を 原
1 ( )「
告伊藤忠」という。
被控訴人(原審第1事件原告・第2事件被告)ビーエムアイ・ホールディ
ングス株式会社を「原告ビーエムアイ」という。
被控訴人(附帯控訴人 (原審第1事件原告・第2事件被告)コンバース )
フットウェア株式会社を「原告コンバースフットウェア」という。
原告ビーエムアイ訴訟引受人兼被控訴人(附帯控訴人 (原審原告ビーエ)
ムアイ訴訟引受人)コンバースジャパン株式会社を「原告訴訟引受人コンバ
ースジャパン」という。
原告伊藤忠,原告ビーエムアイ,原告コンバースフットウェア及び原告訴
訟引受人コンバースジャパンを包括して「原告ら」という。
控訴人(附帯被控訴人 (原審第1事件被告・第2事件原告)株式会社ロ )
イヤルを「被告」という。
( )旧米国コンバース社及び新米国コンバース社を包括して「米国コンバー
2
ス社」という場合がある。
原判決別紙原告商標目録記載の商標又は原判決別紙被告標章目録記載の標
章を付した靴を「コンバースシューズ」という場合がある。



月星化成株式会社(商号変更後の商号は「株式会社ムーンスター )を商」
号変更の前後を通じて「月星化成」という。
原告らが製造販売する原告商標が付された靴を「伊藤忠製シューズ」又は
「伊藤忠製コンバースシューズ」という場合がある。
また,書証の枝番号の表記を省略する場合がある。
2各請求の内容
( )原告らの提起した平成18年(ワ)第26725号商標権侵害差止等請
1
求事件(原審第1事件)と被告の提起した平成19年(ワ)第15580号
商標権侵害不存在確認等請求事件(原審第2事件)の請求は,以下のとおり
である。
ア原審第1事件
(ア)原告伊藤忠は,被告に対し,被告が?靴及びその包装に被告標章を
付したものを輸入し,販売し,又は販売のために展示すること,?靴及
びその包装に被告標章を付すること,?靴の商品に関する広告に被告標
章を付して展示し,頒布し,又はこれを内容とする情報に被告標章を付
して電磁的方法により提供することが原告商標権を侵害するものである
と主張して,原告商標権に基づき,被告の上記行為(?ないし?)の差
止め,?被告が占有する被告標章を付した靴及びその包装並びに靴の商
品に関する広告の廃棄,?インターネット上の原判決別紙ウェブサイト
目録1ないし3の各ウェブサイトの表示画面からの被告標章の抹消を求
めた。
(イ)原告コンバースフットウェアは,被告に対し,被告が靴及びその包
装に被告標章を付したものを輸入し,販売する行為は,原告伊藤忠から
原告商標の独占的通常使用権の許諾を受けた原告ビーエムアイによって
更に原告コンバースフットウェアに再許諾された独占的使用権を侵害す
るものであると主張して,不法行為に基づく損害賠償●●●●●●●●



円の内金5億6600万円及びこれに対する不法行為の後である平成1
8年12月8日(原審第1事件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで
民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
(ウ)原告ビーエムアイ,及び原告ビーエムアイから権利の承継を受けた
原告訴訟引受人コンバースジャパンは,被告に対し,被告が靴及びその
包装に被告標章を付したものを輸入し,販売する行為は,原告ビーエム
アイが原告伊藤忠から許諾された原告商標の独占的通常使用権を侵害す
るものであると主張して,不法行為に基づく損害賠償●●●●●●●円
の内金2億2500万円及びこれに対する不法行為の後である平成18
年12月8日(原審第1事件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
イ原審第2事件
(ア)被告は,原告らが新米国コンバース社の商品に付された標章と同一
の原告商標を付した靴を販売し,販売のために展示し,宣伝広告してい
る行為は,原告らが製造する靴を,周知性のある新米国コンバース社の
靴と誤認混同させる行為であり,不正競争防止法2条1項1号の不正競
争に当たると主張して,原告らに対し,原告商標を付した靴の販売,販
売のための展示,宣伝広告の差止めを求めた。
(イ)被告は,原告らが,被告が米国コンバース社標章を付した靴及び包
装を輸入し,販売し,販売のために展示し,宣伝広告をする権利を有し
ていない旨の宣伝流布をすることは,不正競争防止法2条1項14号
虚偽の事実の告知又は流布による不正競争に当たると主張して,原告ら
に対し,上記の宣伝流布の差止めを求めた。
(ウ)被告は,原告らが被告の輸入元に圧力を加えて輸入販売を妨害した
行為及び被告の供給先の小売店に対して新米国コンバース社の商品を販
売しないよう指示した行為は,不公正な取引方法の禁止(独占禁止法1



9条)に違反すると主張して,独占禁止法24条に基づき,原告らに対
し,上記行為の差止めを求めた。
(エ)被告は,原告らが,税関に対し,被告による新米国コンバース社商
品の輸入行為について輸入差止申立てを行ったことは,私的独占の禁止
(独占禁止法3条)に違反し,原告伊藤忠が新米国コンバース社とカル
テルを形成したことは独占禁止法6条及び3条に違反すると主張し,原
告らによる前記(ア)ないし(ウ)の行為及び上記行為により,被告は損害
を受けたと主張し,不法行為(ただし,前記(ア),(イ)については,不
正競争防止法4条も根拠として主張する )に基づき,原告らに対し, 。
各自,損害賠償2億6620万5900円の内金1億円及びこれに対す
る不法行為の後である平成20年10月1日から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求めた。
( )当審の請求
2
ア第1事件について
(ア)原告コンバースフットウェア
,,, 原告コンバースフットウェアは 附帯控訴を提起し 請求を拡張して
被告に対し,8億7553万3393円及び内金4億6521万087
8円に対する平成18年12月8日から,内金3億2457万2638
円に対する平成19年9月30日から,内金8574万9877円に対
する平成20年9月30日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合によ
る遅延損害金を請求し,
(イ)原告訴訟引受人コンバースジャパン
原告訴訟引受人コンバースジャパンは,附帯控訴を提起し,請求を拡
張して,被告に対し,2億9361万0647円及び内金2億0091
万8646円に対する平成18年12月8日から,内金7358万47
89円に対する平成19年9月30日から,内金1910万7212円



に対する平成20年9月30日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合
による遅延損害金を請求した。
なお,平成20年7月1日に原告訴訟引受人コンバースジャーパンが
原告ビーエムアイから権利義務を承継した後の請求については,原告訴
訟引受人コンバースジャパンが原告伊藤忠から許諾を受けた原告商標の
独占的通常使用権の侵害と,原告訴訟引受人コンバースジャパンが原告
コンバースフットウェアに再許諾した独占的使用権の侵害を請求の根拠
としている。
イ第2事件について
,,, , 被告は 当審において 請求を拡張し 逸失利益7956万2754円
逸失利益についての弁護士費用1億3400万円,濫訴による不法行為の
無形損害1億円とその弁護士費用500万円の合計3億1856万275
4円及びこれに対する最終の不法行為の時である平成21年11月19日
から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求している。
3争いのない事実等
次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2
事案の概要「3争いのない事実等 (原判決7頁14行目ないし9頁21 」,」
行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決8頁21行目ないし26行目を次のとおり改める。
「平成14年4月10日,原告ビーエムアイが設立され,原告伊藤忠は,原
告ビーエムアイに対し,原告伊藤忠が商標権を現に保有し,又は将来的に商
標権を保有することになるコンバースブランドに関連するすべての商標(原
) 。, 告商標を含む について独占的通常使用権を許諾した 原告ビーエムアイは
平成17年6月30日,原告コンバースフットウェアに対し,上記商標(原
告商標を含む)の独占的使用権を再許諾した。平成20年7月1日,原告訴
訟引受人コンバースジャパンが原告ビーエムアイの権利義務及び契約上の地



位を承継した。
原告ビーエムアイ,原告訴訟引受人コンバースジャパン及び原告コンバー
スフットウェアは,いずれも原告伊藤忠の子会社であり,原告伊藤忠は,原
告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンが原告コンバースフ
ットウェアに上記商標(原告商標を含む)の独占的使用権を許諾することを
少なくとも黙示に承諾していた。
( )株式買取商標権譲渡契約等
4
ア旧米国コンバース社と月星化成は,旧米国コンバース社が有する原告商
標権1ないし3,6,9,10に係る商標について,従前からライセンス
契約を締結していた。その後,旧米国コンバース社が破産し,新米国コン
,, , ,, バース社は 原告商標権1ないし3 6 9 10を譲り受けるとともに
上記ライセンス契約のライセンサーの地位を承継した。
イ原告伊藤忠と新米国コンバース社との間で,平成13年2月24日付け
株式買取商標権譲渡契約( )が締
Stock Purchase and Trademark Agreement
結され,同契約により,新米国コンバース社から原告伊藤忠に原告商標権
1ないし3,6,9,10が譲渡され,新米国コンバース社と月星化成の
間のライセンス契約のライセンサーの地位が原告伊藤忠に承継された。ま
た,原告伊藤忠に対し,日本における新米国コンバース社製品の独占的販
売権が付与された(株式買取商標権譲渡契約第3.3項 。)
原告商標権1ないし3,6,9,10については,原告伊藤忠に移転登
録がされた。
ウその後,原告伊藤忠と月星化成の間のライセンス契約が終了し,原告伊
藤忠と月星化成は,原告商標権1ないし3,6,9,10に係る商標等に
つき新たなライセンス契約を締結した。原告ビーエムアイ設立後は,原告
伊藤忠と月星化成の間のライセンス契約のライセンサーとしての地位は原
告ビーエムアイに承継された。このライセンス契約は,少なくとも平成1



7年6月30日まで継続され,月星化成は,このライセンス契約に基づい
て,新米国コンバース社のコンバースシューズの輸入販売を行っていた。
エ原告コンバースフットウェアは,原告ビーエムアイから再許諾された原
告商標の独占的使用権に基づいて,平成17年7月1日以降,原告商標の
付されたコンバースシューズの製造販売を行った。また,原告コンバース
フットウェアは,平成17年6月30日,原告ビーエムアイからコンバー
スシューズの独占的販売権を与えられ,その権限に基づき,同年7月1日
から少なくとも平成18年12月31日まで,新米国コンバース社のコン
バースシューズを輸入販売していた。
( )株式保有
5
原告伊藤忠は,新米国コンバース社との間の平成13年2月24日付け株
式買取商標権譲渡契約により,新米国コンバース社の株式の●%(●●●●
●●株)を取得し,その譲渡代金●●円を支払った。その後,米国ナイキ社
が新米国コンバース社を買収し,原告伊藤忠は,平成15年9月5日,米国
ナイキ社に新米国コンバース社の上記株式を譲渡し,米国ナイキ社は,新米
国コンバース社の全株式を取得するに至った。
( )●●●●●●●●●●
6
月星化成は,平成14年6月,新米国コンバース社の99%出資の子会社
であるTD社との間で,新米国コンバース社製シューズの買付業務の代行を
委託する買付代理契約を締結した。●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●
原判決9頁1行目の「( )」を「( )」と改め,12行目の「( )」を「( )」
47 58
と改め,18行目の「( )」を「( )」と改める。 69
4争点



次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2
事案の概要「4争点 (原判決9頁23行目ないし10頁8行目)のとお 」,」
りであるから,これを引用する。
原判決10頁2行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「( )?2故意過失の有無」
3
原判決10頁8行目を,次のとおり改める。
「( )被告の逸失利益及び弁護士費用相当の損害」
8
原判決10頁8行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「( )濫訴による不法行為に対する損害賠償請求の当否等」
9
第3争点に関する当事者の主張
1争点( )(並行輸入の抗弁)
1
次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3
争点に関する当事者の主張「1争点( )(並行輸入の抗弁(原判決10 」, )」
1
頁11行目ないし22頁12行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決12頁4行目ないし14頁6行目を,次のとおり改める。
「ア内外権利者の実質的同一性の要否について
(ア)最高裁判所は,並行輸入の商標権侵害としての違法性が阻却される
ための要件の一つとして,外国における商標権者と我が国の商標権者と
が同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るよう
な関係があることにより,並行輸入品に付された商標が我が国の登録商
標と同一の出所を表示するものであることを要求している(最高裁判所
平成15年2月27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁。以下
「フレッドペリー事件最高裁判決」という場合がある。。)
フレッドペリー事件最高裁判決が,並行輸入の商標権侵害としての違
法性が阻却されるために上記の要件を要求した根拠は,出所表示機能
品質保証機能が害されるかどうかの観点からである。



(イ)そして,出所表示機能が害されるかどうかの観点からすれば,登録
商標権者が外国拡布者から商標権を取得する以前より,それと同一又は
類似の外国拡布者の商標が世界的に著名であり,登録商標権者が使用す
る商標により需要者が識別している出所が登録商標権者でなく外国拡布
者である場合,登録商標が示す出所は,登録商標権者ではなく外国拡布
者であると認定すべきであり,商標権侵害を否定するための要件として
「法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係」を要求すべきで
ない。
本件においては,原告伊藤忠が原告商標権を取得する以前より,コン
バース商標は世界的に著名であり,後記イ(イ)cのとおり,原告伊藤忠
が原告商標権を取得した後も独自のグッドウィルが構築されておらず,
コンバース商標から需要者が識別する出所は原告伊藤忠ではなく新米国
,,, コンバース社であるから 原告商標の示す出所は 原告伊藤忠ではなく
新米国コンバース社なので,原告伊藤忠と新米国コンバース社との間に
「法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係」がなくとも,商
標権侵害を否定すべきである。
イ法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係の有無について
仮に,商標権侵害とならないために,原告伊藤忠と新米国コンバース社
との間に「法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係」が必要で
あるとしても,原告伊藤忠と新米国コンバース社との間には,そのような
関係がある。
(ア)経済的に同一人と同視し得るような関係
?原告伊藤忠と新米国コンバース社は,平成13年2月24日付け共
同マーケティング契約に基づき,統一ブランドを構築するために協議し
合意したデザイン及び品質の基準を遵守する法的義務を互いに負い,仮
に両者の製品が,異なる製造工場,製造ラインで製造されていたとして



も,互いに相手方を品質管理下に置いている関係にあること,?原告ら
が原告商品の品質管理を新米国コンバース社の子会社に委託し,原告商
品と新米国コンバース社の商品とが同一の工場で製造されていることか
ら,原告伊藤忠と新米国コンバース社は,経済的に同一人と同視し得る
関係にある。その理由は,以下のとおりである。
a共同マーケティング契約
( )統一ブランドを構築する法的義務の根拠
a
共同マーケティング契約の前文には 「●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●」と規定されており,このような共通目的を実
現するための契約であることから,原告伊藤忠及び新米国コンバー
ス社は,同契約により,両者の製造する商品を,統一ブランドの構
築に必要な一定のデザイン及び一定の品質基準を充足する商品とす
ることを必然的に義務付けられている。
( )品質基準の合意
b
原告伊藤忠及び新米国コンバース社が共同マーケティング契約に
基づいて遵守する義務を負う「一定の品質基準」とは,既に100
年間にわたってコンバースブランドを構築してきた米国コンバース
社製商品が保持するデザイン及び品質の基準であるが,その後開発
される新商品については,統一ブランドの構築を実現するとの基本
理念に基づき,原告伊藤忠及び新米国コンバース社の協議と合意に
より決定される。
すなわち,原告伊藤忠及び新米国コンバース社は 「●●●●●,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●● (共同マーケティング契約第2項)に 」



基づいて 「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● (共」
同マーケティング契約第5項)たうえ,統一ブランドの構築目的に
反しないように,新商品のデザイン基準,品質基準について合意し
決定する。新商品のデザイン基準,品質基準は,このような方法に
より,その都度変更されている。
両者で協議して決定合意されたデザイン及び品質の基準を充足す
る商品を両者が実際にも製造できるように,共同マーケティング契
約第7項において 「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●」とし,相互に交換された商品情報
を無償で使用することが可能とされている。
( )品質管理
c
原告らは,新米国コンバース社製商品について,統一ブランドの
構築目的に合致した基準(両者が協議し決定したデザイン及び品質
の基準)に反する商品を製造販売してはならないと要求できるとい
う意味で,共同マーケティング契約は原則的には法的強制力を有し
ており,その意味において原告らは新米国コンバース社製商品をそ
の品質管理下に置いているといえる(品質の実質的同一性が損なわ
れる抽象的危険の不存在 。)
原告コンバースフットウェアが 「当社も生産管理などを指導し ,
てきた立場である (平成18年3月15日付け「,乙 」 」
Shoes Post
13)と発表していることから,原告らは,新米国コンバース社製



商品について,マーケティング会議における両者の協議を通じて合
意したデザイン及び品質の基準に従い,その生産管理をしているこ
とが裏付けられる。
, , 原告らが 日本工業規格への適合性を確保するなどの理由により
新米国コンバース社の品質基準と異なる独自の物性基準を設
CVF
置し,これに基づいて商品を製造していたとしても,原告らの商品
が,マーケティング会議で協議し合意して決定したデザイン及び品
質の基準に反しない限り(即ち,統一ブランドの構築目的に反しな
い限り ,それらは,原告ら及び新米国コンバース社の品質管理下 )
にあるといえる。
( )基準遵守の確認
d
共同マーケティング契約第3項は 「●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●」と定めており 「●●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●」と定めている。この規定により,原
告伊藤忠と新米国コンバース社は,互いに相手方が製造した商品が
両者で合意したデザイン及び品質の基準に合致しているかを確認す
ることができる。
また,原告コンバースフットウェア(原告伊藤忠の子会社)とT
D社(新米国コンバース社の99%出資の子会社)との業務委託契
約書(甲56)の第1条(f)では 「●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●」旨定めている。この規定により,新米
国コンバース社は,子会社であるTD社をして伊藤忠製シューズを
検品させ,その品質が両者の合意した品質に合致するかを確認する
ことができる。
( )共同マーケティング契約終了後の協力関係の継続
e



共同マーケティング契約終了後も,原告らと新米国コンバース社
の協力関係は事実上継続している。
すなわち,原告コンバースフットウェアは,共同マーケティング
,,「, 契約が平成18年6月に終了する直前 業界紙にご存知の通り
コンバース社はナイキ傘下に入りましたが,これまでと変わらず友
好的な関係にあります。2月にはハワイでコンバース社主催による
生産工場関係者のミーティングがあり,当社も発注者であり生産管
理などを指導してきた立場から継続して参加しています(平成1。」
8年3月15日付け「,乙13)と発表した。また,原
Shoes Post 」
告コンバースフットウェアは,平成19年1月と7月にも,新米国
コンバース社のビジネスについて一般人には入手できない最新情報
を日本の業界紙に公表している(平成19年1月25日付け及び同
年7月25日付け「,乙36)。これらの事実は,原告
Shoes Post 」
伊藤忠と新米国コンバース社の間で,共同マーケティング契約第1
項に定められた,マーケティングに協力しなければならないという
契約関係が同契約終了後も継続して事実上運用されていることを示
すものである。
b品質管理の委託
原告らは,新米国コンバース社の子会社であるTD社と製造管理委
託契約を締結してTD社に原告商品の品質管理を委託し,原告商品と
新米国コンバース社の商品が同一の工場で製造されている。
(イ)法律的に同一人と同視し得るような関係
?原告伊藤忠は,新米国コンバース社との間の株式買取商標権譲渡契
約により,新米国コンバース社製シューズの独占的販売権を与えられて
,, , いること ?原告伊藤忠は 新米国コンバース社と資本提携関係があり
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●



●●●●●●●●●●●●●,?原告伊藤忠は原告商標につき独自のグ
ッドウィルを獲得していないことから,原告伊藤忠と新米国コンバース
社は,法律的に同一人と同視し得るような関係にある。その理由は,以
下のとおである。
a株式買取商標権譲渡契約による独占的販売権の付与
原告伊藤忠と新米国コンバース社との間の平成13年2月24日付
け株式買取商標権譲渡契約には,新米国コンバース社が原告伊藤忠に
対して新米国コンバース社製シューズの独占的販売権を付与する旨の
条項(第3.3項)が定められていた。同条項は,輸出販売による商
品供給の保証がその前提として含まれると解されるため,原告伊藤忠
が新米国コンバース社に対し,新米国コンバース社製シューズの輸出
販売を保証させ,かつ第三者に輸出販売しないことを確認していると
いう法的意義を有する。そして,少なくとも平成18年12月3日
1
まで,原告らは,新米国コンバース社製コンバースシューズを日本で
輸入販売していた。
また,上記株式買取商標権譲渡契約第5.3項により,原告伊藤忠
は,コンバースブランドのシューズをアジアで製造して日本に輸入で
きるという,通常の販売代理店には認められていない権利を与えられ
ていた。
さらに,月星化成とTD社の間の平成15年12月18日発効の第
1回変更契約書(乙101の1)において,●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(原告ビーエムアイのラ
イセンスに基づいて月星化成により又は月星化成のために生産された
) , コンバースシューズ の●●%又は●●%と定められていることから
月星化成が販売していたコンバースシューズの●●%又は●●%はT
D社を通じて輸入したものであり,それらはTD社の品質管理下にあ



ったから,月星化成又は原告らの販売しているコンバースシューズの
●●%又は●●%はTD社を通じて輸入したものであり,原告らと新
米国コンバース社は,法律的又は経済的に同一であった。
したがって,原告伊藤忠と新米国コンバース社は総販売代理店であ
るのと同等又はそれ以上の法律的に密接な関係があり,法律的に同一
人と同視し得るような関係にあった。
b資本提携等
, , 原告伊藤忠は 平成13年2月24日から平成15年9月5日まで
新米国コンバース社の株式の●%を保有していたから,原告伊藤忠と
新米国コンバース社の間には資本提携関係があった。また,●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●
c独自のグッドウィルを獲得していないこと
( )原告らは,原告商標について独自のグッドウィルを形成してい
a
ない。その理由は,次のとおりである。
?原告らの新商品のデザイン,品質は,共同マーケティング契約
に基づいて原告伊藤忠と新米国コンバース社が協議し合意して決
定した基準に従っており,原告らが新商品を独自に開発し,独自
の品質管理を行っていることはない。
?原告伊藤忠が新規に設立した会社の商号は「コンバースフット
ウェア株式会社 (原告コンバースフットウェア「コンバース 」 ),
ジャパン株式会社 (原告訴訟引受人コンバースジャパン)であ 」
り,これらの会社が新米国コンバース社と別個独立した会社であ
ることを隠蔽しようとする意図がうかがえる。旧米国コンバース
社は過去に日本国内のビジネスを運営するために日本法人を設立
して「コンバースジャパン」の商号を使用していたから,消費者



が原告コンバースフットウェア,原告訴訟引受人コンバースジャ
。, パンを新米国コンバース社と混同誤認する可能性は高い さらに
原告らは,広告の主体として「☆「コンバースジ
CONVERSE 」,
ャパン株式会社「「コンバースインフォメーシ 」,」,
converse.co.jp
ョンセンター「 」などの 」, CONVERSE INFORMATION CENTER
表記を使用し,一般需要者をして,その広告があたかも新米国コ
ンバース社が設立運営する子会社ないし日本代理店が行った広告
であるかのように誤認させ,原告コンバースフットウェアの製造
販売するシューズが新米国コンバース社製シューズであるかのよ
うに誤認させている。
原告伊藤忠が,広告に,広告主が原告伊藤忠である旨の表示を
しているのは,原告伊藤忠が原告商標を取得した後間もない平成
13年9月ないし12月のことであり,当時は,原告コンバース
フットウェア,原告訴訟引受人コンバースジャパンが設立されて
いなかったことから,広告主を原告伊藤忠と表記せざるを得なか
ったにすぎない。
原告伊藤忠に独自の信用が構築されていないとの明確なアンケ
ート結果(乙55)からすれば,原告伊藤忠の宣伝広告方法は,
原告商標の出所表示機能を発揮させていないことが明らかであ
る。
?アンケートの結果 「コンバース」シューズ・ブランドの認知 ,
, (, 率は74%で コンバース商標は周知・著名であること 乙55
10頁 ,コンバースシューズの実消費者( コンバース」ブラン ) 「
ドのシューズを購入した者)のうち94%が原告訴訟引受人コン
バースジャパンを米国コンバース社と関係があると認知し,72
%が原告コンバースフットウェアを米国コンバース社と関係があ



ると認知していること(乙55,16頁 ,コンバースシューズ )
の実消費者で「新米国コンバース社製シューズ商品(A商品 」)
と「伊藤忠製コンバースシューズ商品(B商品 」の2種類のコ)
ンバースシューズが流通していることを知っている者の中で新,「
米国コンバース社製シューズ商品(A商品 」を米国コンバース)
社製と認知している者は94% 「伊藤忠製コンバースシューズ ,
商品(B商品 」を米国コンバース社製であると誤認知している )
者は86%に及び(乙55,17頁 ,大多数の消費者は,A商 )
品とB商品の出所は同じ米国コンバース社であると認知してい
る。このようなアンケート結果によれば,原告伊藤忠は,原告商
標に,米国コンバース社と別個の独自のグッドウィルを構築して
いない。
( )「商標権が譲渡された場合,譲渡を受けた現商標権者が当該商
b
標につき独自のグッドウィルを構築しておらず,需要者が具体的に
現商標権者を認識していなくても,現商標権者を商標法の保護する
出所として取り扱う」との立場に立つとしても,コンバース商標が
世界的な著名商標であることの他,以下のような本件の特段の事情
を前提とするならば,本件においては,例外的に,登録商標権者を
商標法の保護する出所として取り扱うための要件として,登録商標
権者である原告伊藤忠が独自のグッドウィルを構築していることが
必要であると解すべきである。
?原告伊藤忠は,新米国コンバース社から,日本における商標権
を譲り受けるのと同時に,新米国コンバース社製コンバースシュ
ーズの独占的販売権限(総販売代理店としての権限)を授与され
ており,原告コンバースフットウェアは,原告伊藤忠から許諾を
受けて新米国コンバース社製コンバースシューズを輸入販売して



いること,
?原告伊藤忠は,新米国コンバース社との共同マーケティング契
約により,実質的に新米国コンバース社製シューズを品質管理下
に置いていること,
?新米国コンバース社製シューズの品質は,伊藤忠製シューズと
全く同一でないとしても,原告伊藤忠及び新米国コンバース社が
共同マーケティング契約に基づいて定めた品質基準に合致してい
ること,
?原告らは単なる商標未使用者ではなく,現に商標を使用してい
, , るが 独自のグッドウィル構築の目的で商標を使用するのでなく
米国コンバース社の構築したグッドウィルを積極的に利用してい
ること,
?原告らは現に独自のグッドウィルを構築していないこと」
原判決16頁4行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「原告らが新米国コンバース社製シューズの品質基準と異なる品質基準を設
定しているのは,単に日本工業規格(JIS)を充足させること,取引先の
要望する品質基準に合わせること等のためであり,これをもって,新米国コ
ンバース社製シューズとの差別化を目的とするもの又は独自の信用の形成に
努力しているものということはできない 」。
2争点( )(権利濫用の抗弁)
2
次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3
争点に関する当事者の主張「2争点( )(権利濫用の抗弁(原判決22 」, )」
2
頁14行目ないし25頁20行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決23頁26頁の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「( )原告伊藤忠と新米国コンバース社は,経済的又は法律的に同一人と同
6
視し得る関係にあるから,原告伊藤忠が,一方で米国コンバース社の信用



, , を積極的に利用しながら 米国コンバース社の信用を利用する被告に対し
,(),。 その行為を妨げることは 禁反言的行為 権利濫用 であり 許されない
( )次のアないしエの事情を総合的に考慮すると,原告伊藤忠の原告商標権
7
の行使は,権利濫用として許されない。
ア商標権行使者(原告伊藤忠ら)の主観的悪意
原告伊藤忠は,原告商標権の譲受後も,従前の商標権者(米国コンバー
ス社)が商標に化体していたのとは別個独立の信用を原告商標に化体しよ
うと努力するのではなく,むしろ従前の商標権者が日本国内はもとより世
界的に培ってきた商標に化体したグッドウィルを積極的に利用しようとし
ている。また,原告伊藤忠は,原告商標権の譲受後も,月星化成や原告コ
ンバースフットウェアに,新米国コンバース社製シューズを独占的に輸入
販売させている。
イ商標権行使行為の客観的悪性
原告らは,米国コンバース社のグッドウィルを利用し,需要者に出所,
品質の誤認混同(伊藤忠製シューズを米国コンバース社製シューズである
と誤認させること)を生ぜしめている。
ウ被告の商標使用行為の正当性
コンバース商標は世界的に著名,周知であり,被告は約35年間にわた
る米国コンバース社の真正商品の並行輸入の実績により,日本におけるコ
ンバース商標のグッドウィル構築に多大な貢献をした。また,正規販売代
理店が輸入した商品との自由競争の実現により,適切な価額の形成に多大
な貢献をした。
エ商標権者に対する実質的な侵害の有無
(ア)原告らと新米国コンバース社は,統一ブランドの構築目的に反しな
い限度で,品質,形態等の異なる商品の製造を許容しているにとどまる
から,新米国コンバース社製シューズと伊藤忠製シューズは,品質に実



質的差異はない。また,新米国コンバース社製シューズと伊藤忠製シュ
ーズは,いずれもラベルにより区別されているから,出所,品質に関す
る消費者の誤認混同は生じない。したがって,被告の行為によって消費
者に出所,品質に関する誤認混同を生じることはなく,その信頼に反す
る結果となることはない。
仮に消費者に出所,品質の誤認混同を生じたとしても,それは原告ら
が独自のグッドウィルを構築しないためであり,誤認混同を生じたこと
を理由として商標権の侵害を主張することは,権利濫用として許されな
い。
(イ)並行輸入品を阻止できない場合でも,原告伊藤忠による原告商標権
の取得は,新米国コンバース社へのロイヤリティの支払が不要となった
ことにより,十分な意義を有し,原告伊藤忠の原告商標権は実質的に侵
害されない 」。
原判決24頁13行目の「旧米国コンバース」を「旧米国コンバース社」と
改める。
3争点( )(商標権無効の抗弁)
3
原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に関する当事者の主張「3」,
()」( ) 争点( ) 商標権無効の抗弁原判決25頁22行目ないし26頁23行目
3
のとおりであるから,これを引用する。
3?2争点( )?2(故意過失の有無)
3
原判決26頁23行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「3?2争点( )?2(故意過失の有無)
3
〔原告らの主張〕
被告には,原告伊藤忠の原告商標権に対する侵害,原告訴訟引受人コンバー
スジャパンの独占的通常使用権に対する侵害,原告コンバースフットウェアの
再許諾された独占的使用権に対する侵害について故意,重過失があったもので



あり,少なくとも過失があったものと推定される。
〔被告の主張〕
( )原告伊藤忠は,原告商標について自らのグッドウィルを形成せず,米国
1
コンバース社のグッドウィルに便乗しているから,原告伊藤忠を識別する観
点で,原告商標は顧客吸引力がなく,被告が並行輸入し販売する商品の売上
に原告商標はまったく寄与していない。したがって,原告伊藤忠に損害は発
生しない。
( )原告伊藤忠の平成15年9月17日付け警告(甲11)及び平成18年
2
9月14日付け警告(乙1)に対する被告の各回答書(甲12,乙2)の文
面に照らし,被告は,米国コンバース社の真正商品の輸入は,原告伊藤忠が
原告商標権を有していてもその侵害にならないと確信していたものであり,
被告が輸入販売していた商品は,米国コンバース社の真正商品であるから,
被告には,原告伊藤忠の原告商標権に対する侵害,原告訴訟引受人コンバー
スジャパンの独占的通常使用権に対する侵害,原告コンバースフットウェア
の再許諾された独占的使用権に対する侵害について故意はなかった。
,, , ( )次の事情に照らせば 被告には 原告伊藤忠の原告商標権に対する侵害
3
原告訴訟引受人コンバースジャパンの独占的通常使用権に対する侵害,原告
コンバースフットウェアの再許諾された独占的使用権に対する侵害について
過失はない。
?被告は,商標権侵害を理由に税関から輸入を差し止められることはなか
った。
?被告は,被告による米国コンバース社製シューズの並行輸入が,フレッ
ドペリー最高裁判決の示した並行輸入を適法とする要件に適合すると判断
した。
?被告は,原告伊藤忠が独自のグッドウィルの形成を意図的に怠っている
ことから,被告による米国コンバース社製シューズの並行輸入は大阪地方



裁判所平成16年11月30日判決(同裁判所平成15年(ワ)第112
00号,以下「ダンロップ事件大阪地裁判決」という )が示した規範に。
適合し,適法であると判断した。
?被告は,被告による米国コンバース社製シューズの並行輸入は,損害不
発生の抗弁の適用があり,原告伊藤忠の損害を生じさせないと確信した。
すなわち,原告伊藤忠は,独自のグッドウィルを形成せず,ひたすら米国
コンバース社のグッドウィルに便乗して伊藤忠製シューズの販売を企図し
ているから,原告商標は,原告伊藤忠を識別する観点では顧客吸引力がな
く,被告による米国コンバース社製シューズの並行輸入は,原告伊藤忠の
グッドウィルを化体した商品の売上を妨害しておらず,原告伊藤忠に損害
は発生していない 」。
4争点( )(原告らの損害額
4
次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3
争点に関する当事者の主張「4争点( )(原告らの損害額(原判決26 」, )」
4
頁25行目ないし39頁13行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決27頁1行目ないし4行目を次のとおり改める。
「ア原告コンバースフットウェアによる商標の使用等
(ア)原告コンバースフットウェアは,原告商標について,商標権者であ
る原告伊藤忠の承諾のもとに,平成17年6月30日,独占的通常使用
権者である原告ビーエムアイより独占的使用権の許諾を受け,同年7月
1日から現在に至るまで原告商標を付した靴の製造販売を行っている。
原告訴訟引受人コンバースジャパンは,平成20年7月1日,原告ビ
ーエムアイより原告商標に関する権利義務を承継した 」。
原判決27頁9行目ないし28頁10行目を削除する。
原判決28頁11行目を次のとおり改める。
「イ1足当たりの原告コンバースフットウェアの利益●●●●●円」



原判決28頁16行目の「原告ビーエムアイ」を「原告ビーエムアイ又は原
告訴訟引受人コンバースジャパン」と改める。
原判決30頁14行目ないし33頁6行目を次のとおり改める。
「ウ平成17年7月ないし平成18年9月の損害
乙89のA表によれば,被告の販売数は,平成17年(2005年)7
月1日ないし同年9月末は●●●●●●●足であり,平成17年10月1
日ないし平成18年(2006年)9月末は●●●●●●足であるから,
平成17年7月ないし平成18年9月の被告の販売数は●●●●●●足
(●●●●●足+●●●●●足=●●●●●足)である。
平成17年7月ないし平成18年9月の損害は,1足当たりの原告コン
バースフットウェアの利益●●●●●円に上記期間の販売数●●●●●●
●足を乗じた●●●●●●●●●●●円(●●●●円×●●●●●足=●
●●●●●●円)である(商標法38条1項類推適用 。)
平成17年7月ないし平成18年9月の損害についての弁護士費用は●
●●●●円である。
したがって,平成17年7月ないし平成18年9月の損害の合計は,4
億6521万0878円(●●●●●●●●円+●●●円=億万
46521
円)である。 0878
エ平成18年10月ないし平成19年9月の損害
乙89のA表によれば,平成18年10月1日ないし平成19年(20
07年)9月末の被告の販売数は●●●●●●●足である。
平成18年10月ないし平成19年9月の損害は,1足当たりの原告コ
ンバースフットウェアの利益●●●●●円に上記期間の販売数●●●●●
●●足を乗じた●●●●●●●●●●円(●●円×●●●●●●●足=●
●●●●●●●円)である(商標法38条1項類推適用 。)
平成18年10月ないし平成19年9月の損害についての弁護士費用は



●●●●●円である。
したがって,平成18年10月ないし平成19年9月の損害の合計は,
32457 3億2457万2638円(●●●●●●●●円+●●●円=億
万円)である。
2638
オ平成19年10月ないし平成20年9月の損害
乙89のB表によれば,平成19年10月1日ないし平成20年(20
08年)9月末の被告の粗利益は●●●●●●●●●円であり,これは,
被告が侵害行為により受けた利益の額と推定される。
原告コンバースフットウェアが原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コ
ンバースジャパンに対して売上高の●●●%相当額を使用料として支払っ
ていることを考慮し,原告コンバースフットウェアの損害は,上記利益額
から●●●%を差し引いた●●●●●●●●●円(●●●●●円×(?
1
●●)=●●●●●●円)である(商標法38条2項類推適用 。)
平成19年10月ないし平成20年9月の損害についての弁護士費用は
●●●●円である。
したがって,平成19年10月ないし平成20年9月の損害の合計は,
8574万9877円(●●●●●●円+●●●円=万円)で
85749877
ある。
カ小括
原告コンバースフットウェアの平成17年7月ないし平成18年9月の
損害4億6521万0878円,平成18年10月ないし平成19年9月
の損害3億2457万2638円及び平成19年10月ないし平成20年
4 9月の損害8574万9877円の合計は8億7553万3393円(
億万円+億万円+万円=億万
652108783245726388574987787553
円)であり,遅延損害金としては,平成17年7月ないし平成18 3393
年9月の損害4億6521万0878円については最後の不法行為後の平



成18年12月8日(原審第1事件訴状送達の日の翌日)から,平成18
年10月ないし平成19年9月の損害3億2457万2638円について
は最後の不法行為の時である平成19年9月30日から,平成19年10
月ないし平成20年9月の損害8574万9877円については最後の不
法行為の時である平成20年9月30日からそれぞれ支払済みまで民法所
定の年5分の割合による金員の支払を求める 」。
「」 「, 原判決33頁11行目の その地位を譲り受けた を その地位を譲り受け
権利義務を承継した」と改める。
原判決33頁12行目ないし35頁19行目を次のとおり改める。
「イ平成15年4月ないし平成18年9月の損害
乙89のB表によれば,被告のコンバースシューズの売上高は,平成1
5年(2003年)4月1日ないし同年9月末は●●●●●●●●●●●
円,平成15年10月1日ないし平成16年(2004年)9月末は●●
●●●●●●●●●円,同年10月1日ないし平成17年(2005年)
9月末は●●●●●●●●●●円,同年10月1日ないし平成18年(2
006年)9月末は●●●●●●●●●●●●円であり,平成15年4月
ないし平成18年9月の売上高は,上記の合計●●●●●●●●●●●●
円(●●●●●●●●円+●●●●●●●●円+●●●●●●●●円+●
●●●●●●●円=●●●●●●●●●円)である。
平成15年4月ないし平成18年9月の使用料相当額は,同期間の売上
高●●●●●●●●●●●●円の●●●%に当たる●●●●●●●●●●
●円(●●●●●●●●円×●●●=●●●●●●●●円)である(商標
38条3項類推適用 。)
平成15年4月ないし平成18年9月の損害についての弁護士費用は●
●●●円である。
したがって,平成15年4月ないし平成18年9月の損害の合計は,2



億0091万8646円(●●●●●●●●円+●●円=億万 20091
円)である。 8646
ウ平成18年10月ないし平成19年9月の損害
乙89のB表によれば,平成18年10月ないし平成19年(2007
年)9月の被告のコンバースシューズの売上高は,●●●●●●●●●●
●円であり,使用料相当額は,その●●●%に当たる●●●●●●●●●
円(●●●●●●●●円×●●●=●●●●●●円)である(商標法38
条3項類推適用 。)
平成18年10月ないし平成19年9月の損害についての弁護士費用は
●●●●円である。
したがって,平成18年10月ないし平成19年9月の損害の合計は,
7358万4789円(●●●●●●円+●●●円=万円)で
73584789
ある。
エ平成19年10月ないし平成20年9月の損害
乙89のB表によれば,平成19年10月ないし平成20年(2008
年)9月の被告のコンバースシューズの売上高は,●●●●●●●●●●
●円であり,使用料相当額は,その●●●%に当たる●●●●●●●●●
円(●●●●●●●●円×●●●=●●●●●●円)である(商標法38
条3項類推適用 。)
平成19年10月ないし平成20年9月の損害についての弁護士費用は
●●●●円である。
したがって,平成19年10月ないし平成20年9月の損害の合計は,
1910万7212円(●●●●●●円+●●●円=万円)で
19107212
ある。
オ小括
原告訴訟引受人コンバースジャパンの平成15年4月ないし平成18年



9月の損害2億0091万8646円,平成18年10月ないし平成19
年9月の損害7358万4789円及び平成19年10月ないし平成20
2 年9月の損害1910万7212円の合計は2億9361万0647円(
009186467358478919107212293610647 億万円+万円+万円=億万
円)であり,遅延損害金としては,平成15年4月ないし平成18年9月
の損害2億0091万8646円については最後の不法行為後の平成18
年12月8日(原審第1事件訴状送達の日の翌日)から,平成18年10
月ないし平成19年9月の損害7358万4789円については最後の不
法行為の時である平成19年9月30日から,平成19年10月ないし平
成20年9月の損害1910万7212円については最後の不法行為の時
である平成20年9月30日からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5分
の割合による金員の支払を求める 」。
原判決38頁16行目ないし17行目,39頁3行目ないし4行目の「商標
38条1項又は2項を適用する」を「商標法38条1項又は2項を類推適用
する」と改める。
原判決39頁5行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「ウ商標法38条1項類推適用に基づく損害額の算定は,公認会計士の認証
に係る決算書類に基づいて行うか,計算鑑定により行うべきである 」。
原判決39頁13行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「( )原告コンバースフットウェア及び原告訴訟引受人コンバースジャパン
4
の損害の算定について
ア相当因果関係の考慮による減額
コンバースシューズの実消費者( コンバース」ブランドのシューズ 「
を購入した者)で「新米国コンバース社製シューズ商品(A商品 」と)
「伊藤忠製コンバースシューズ商品(B商品 」の2種類のコンバース )
シューズが流通していることを知っている者の中で 「伊藤忠製コンバ,



ースシューズ商品(B商品 」が米国コンバース社製であると誤認知し )
ている者は86%に及ぶから(乙55,17頁 ,販売された「伊藤忠 )
製コンバースシューズ商品(B商品 」のうち14%(100%?86 )
%=14%)のみが原告伊藤忠のグッドウィルにより販売されたもので
あり,損害も総額の14%とすべきである。そうすると,原告コンバー
スフットウェアの損害は7900万円,原告訴訟引受人コンバースジャ
パンの損害は3000万円となる。
イ競合品の考慮による減額
被告が輸入販売する米国コンバース社製シューズのうち,原告らが販
売していない型のものは,原告らが販売する伊藤忠製コンバースシュー
ズとは代替性,補完性がないから,伊藤忠製コンバースシューズと競合
しない。したがって,原告コンバースフットウェアの損害の算定に当た
り,それらは除くべきである。原告コンバースフットウェアの損害は,
原告らが扱い,被告も扱う競合商品群(オールスター)のみについ
OX
て算出すべきであり,それについての原告コンバースフットウェアの販
売数は,年間100万足と推定され,原告コンバースフットウェアの総
販売数の約25%に当たると推定されるから,原告コンバースフットウ
ェアの損害は,7900万円の25%である1975万円,原告訴訟引
受人コンバースジャパンの損害は,3000万円の25%である750
万円となる。
ウ商標権者等が販売することができないとする事情
(ア)被告が並行輸入した新米国コンバース社製のコンバースシューズ
のみを取扱い,伊藤忠製コンバースシューズを取り扱わない非競合店
(約●●●店)は,原告伊藤忠が,ブランドイメージの悪化及びシュ
ーズ専門店からのクレームの回避,貸し倒れの回避のため,経営政策
上販売先としていないものであり,非競合店については,原告らが販



売することができない事情がある。また,平成20年9月期と平成2
1年9月期の決算における被告の販売数が減少しても原告らの販売数
は増加していないから,被告の販売数の減少は原告らの販売数の増加
につながっていない。したがって,非競合店に対する売上による利益
額(7048万円)は,損害額から控除すべきである。
(イ)被告は,原告らが実施していないインターネット販売と直営店に
, , おける店舗販売を行っており そのような販売態様による粗利益額
総粗利益額の34.5%に及んでいるから,そのような販売態様によ
る販売数及び利益額は,商標権者等が販売することができないとする
事情があるものとして,損害額の算定に当たって控除すべきである。
エ原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益の算出
原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益の額を算出するに当
, (「」) たっては 決算期ごとに行っている商品評価損処理 いわゆる 損切り
を考慮に入れるべきである。
原告コンバースフットウェアは,コンバースシューズしか扱っていな
いから,販売数で除する前の金額を算出するに当たっては,原告コンバ
ースフットウェアの売上高から売上原価及び国内運送費を差し引くだけ
,,(,,, ではなく 人件費 販売費及び一般管理費 倉敷料 通信費 地代家賃
,,,)。 水道光熱費 旅費交通費 事務費 消耗品費等 も差し引くべきである
原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益は200円ないし3
00円である。
オ被告の利益の算出
被告は,会社設立時から,一般管理費と販売費を仕分けせずに経費と
して一括計上してきており,商品単位で売上高から変動費用(直接費)
を差し引いて利益を計算し,全取扱商品群について集計している。コン
バースシューズの販売で得た利益の算定に当たっては,税務会計上の各



勘定科目の内容を複数事業年度にわたって分析し,変動費総額の捕捉と
各商品群への合理的配賦を行うなかで,近似値ではあるが精度の高い変
動費の算出をした。被告の基準で算出した限界利益額は1足当たり20
4円となる。
被告が得た利益額は,平成17年7月1日ないし同年9月30日の被
告の売上数●●●●●●●足,同年10月1日ないし平成18年9月3
0日の売上数●●●●●●●足,同年10月1日ないし平成19年9月
30日の売上数●●●●●●●足,同年10月1日ないし平成20年9
月30日の売上数●●●●●●足の合計●●●●●●●足(●●●●●
足+●●●●●足+●●●●●足+●●●●●足=●●●●●足)に2
04円を乗じた●●●●●●●●●●●円(円×●●●●●足=●
204
●●●●●●●円)である。
カ原告訴訟引受人コンバースジャパンの実施料率
(ア)原告訴訟引受人コンバースジャパンのライセンシーである原告コ
ンバースフットウェアは,卸業に特化しており,被告のようなインタ
ーネット販売や小売販売を行っていないから,原告訴訟引受人コンバ
ースジャパンの損害算定に当たっての実施料率を●●●%とするのは
高すぎる。
(イ)平成17年6月30日付けの原告訴訟引受人コンバースジャパン
と原告コンバースフットウェアの間のライセンス契約(甲63)は,
同年7月1日以降に適用されるものであり,日本国内における製造販
売の許諾に限定した契約であるから,その実施料率を平成15年4月
からの損害認定に用いるのは合理性がない。
原告伊藤忠が新米国コンバース社から承継した月星化成とのライセ
ンス契約(ただし,平成14年4月10日以降は,原告ビーエムアイ
) , , と月星化成とのライセンス契約 は 平成15年4月以前から存在し



海外の製造をも許諾しているから,損害の算定は,その契約の実施料
率によるべきである。
(ウ)平成15年4月ないし同年9月の期間は,原告伊藤忠が新米国コ
ンバース社の株式の●%を有しており,月星化成と原告ビーエムアイ
との間のライセンス契約が存在しており,月星化成は,原告伊藤忠と
新米国コンバース社間の共同マーケティング契約及びTD社と月星化
成間の買付代理契約に基づき,旧米国コンバース社と永年継続してき
た業務上の相互関係を実質的に継続していた。したがって,この期間
は,外国における商標権者と日本の商標権者とが同一人であるか又は
法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があり,日本
の商標権者が商品の品質管理を行い得る立場にあるとの要件が充足さ
れていたから,被告の行為の違法性は阻却され,損害もない。
キ軽過失による減額
被告は,原告伊藤忠が原告商標の譲渡を受ける前から米国コンバース
社のコンバースシューズを日本に並行輸入していたこと,税関により輸
入を差し止められなかったこと,原告伊藤忠を識別する観点で原告商標
,,, は顧客吸引力がないことなどから 被告には 原告商標権に対する侵害
原告訴訟引受人コンバースジャパンの独占的通常使用権に対する侵害,
原告コンバースフットウェアの再許諾された独占的使用権に対する侵害
について故意又は重過失がなく,軽過失による損害額の減額をすべきで
ある 」。
5争点( )(被告の不正競争防止法2条1項1号に関する請求の当否)
5
原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に関する当事者の主張「争点」,
( )(被告の不正競争防止法2条1項1号に関する請求の当否(原判決39
5 )」
頁15行目ないし40頁12行目)のとおりであるから,これを引用する。
6争点( )(被告の不正競争防止法2条1項14号に関する請求の当否)
6



原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に関する当事者の主張「争点」,
( )(被告の不正競争防止法2条1項14号に関する請求の当否(原判決4
6 )」
0頁14行目ないし41頁13行目)のとおりであるから,これを引用する。
7争点( )(被告の独占禁止法に基づく請求の当否)
7
原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に関する当事者の主張「争点」,
( )(被告の独占禁止法に基づく請求の当否(原判決41頁15行目ないし
7 )」
45頁17行目)のとおりであるから,これを引用する。
8争点( )(被告の逸失利益及び弁護士費用相当の損害)
8
原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に関する当事者の主張「争点」,
( )(被告の損害額(原判決45頁18行目ないし47頁8行目)を次のと
8 )」
おり改める。
「8争点( )(被告の逸失利益及び弁護士費用相当の損害)
8
〔被告の主張〕
原告らによる不正競争行為,不法行為,独占禁止法違反行為により,被告
は,以下に述べる損害を受けたので,原告らは,被告に対し,不正競争防止
4条,民法709条710条719条に基づき,合計2億1356万
2754円の損害賠償義務を負う。
( )逸失利益
1
原告らによる不正競争行為,不法行為,独占禁止法違反行為により,被
告は,別表記載のとおり合計7956万2754円の逸失利益の損害を受
けた。
( )弁護士費用
2
本件は,名古屋地方裁判所に訴えが提起され,東京地方裁判所に移送さ
れた事件と,東京地方裁判所に訴えが提起された事件の弁論を併合したも
のである。本件が東京地方裁判所で審理されたことから,名古屋在住の被
告訴訟代理人は,遠隔地での法廷活動を強いられ,加えて争点が多岐にわ



たり立証活動に相当な労力を要し,複数の代理人の選任が必要となった。
このような本件の事案の性質,訴訟追行の状況を考慮すると,原告らの不
法行為等と相当因果関係にある弁護士費用としての損害は,1億3400
万円である。
( )合計
3
12 795627541
上記( )と( )の合計は2億1356万2754円(万円+
億万円=億万円)である。
3400213562754
〔原告らの主張〕
被告の主張を争う。
被告の売上高は,年によって大幅な増減があることに照らすならば,被告
が主張する原告らの不法行為と被告の売上高の減少との間に因果関係はな
い。また,原告コンバースフットウェアの販売実績が増加したのは,原告ら
の品質管理,宣伝広告,販売促進等の努力の結果であり,原告の正当な事業
活動の結果,消費者が原告商品を選択したことによるものである 」。
9争点( )(濫訴による不法行為に対する損害賠償請求の当否等)
9
原判決47頁8行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「9争点( )(濫訴による不法行為に対する損害賠償請求の当否等)
9
〔被告の主張〕
原告伊藤忠が原告ビーエムアイ又は原告訴訟引受人コンバースジャパン
に対して許諾したと主張する独占的通常使用権は,原告ビーエムアイと月
星化成との間のライセンス契約によってその行使を凍結されていたから,
原告訴訟引受人コンバースジャパンが,附帯控訴により,平成15年4月
ないし平成17年6月を含む期間についての損害賠償請求額を増額したこ
とは,信義誠実の原則に著しく反する濫訴であり,原告らの不法行為を構
成する。
原告らの上記不法行為により,被告は,無形損害1億円を被り,その不



法行為と相当因果関係にある弁護士費用としての損害は500万円であ
り,被告は原告らに対し,その合計1億0500万円を請求する。
したがって,被告は,原告ら各自に対し,1億0500万円及びこれに
対する附帯控訴日(平成21年11月19日)から支払済みまで年5分の
割合による遅延損害金を請求する。
以上のとおり,被告は,原告らに対し,各自,前記8の2億1356万
2 2754円と上記1億0500万円の合計3億1856万2754円(
億万円+億万円=億万円)及びこれに対
1356275410500318562754
する最後の不法行為時(附帯控訴日)である平成21年11月19日から
支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求める 」。
〔原告らの主張〕
被告の主張を争う。
原告伊藤忠は,原告ビーエムアイ又は原告訴訟引受人コンバースジャパ
ンに対して独占的通常使用権を許諾したものであって,その行使が,原告
ビーエムアイと月星化成との間のライセンス契約によって凍結されていた
ことはなく,被告の主張は理由がない 」。
第4当裁判所の判断
1次のとおり付加,訂正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第4当
裁判所の判断「1 (原判決47頁10行目ないし58頁17行目)のとお 」,」
りであるから,これを引用する。
原判決47頁10行目ないし11行目を,次のとおり改める。
「1事実認定
前記争いのない事実等に後掲証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下
の事実が認められる 」。
原判決48頁5行目ないし6行目の「旧米国コンバース社の買収後,
商号変更された 」を 「旧米国コンバース社の買収後,平成1
Converse,Inc. 。,



3年5月21日,に商号変更された。以下,商号変更の前後を通 Converse,Inc.
じて「新米国コンバース社」という 」と改める。。
原判決52頁21行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「( )独占的通常使用権の許諾等
3
平成14年4月10日,原告ビーエムアイ(当時の商号は「コンバース
ジャパン株式会社」であった )が設立され,原告伊藤忠は,原告ビーエ 。
ムアイに対し,原告伊藤忠が商標権を現に保有し,又は将来的に商標権を
保有することになるコンバースブランドに関連するすべての商標(原告商
標を含む)について独占的通常使用権を許諾した。原告ビーエムアイは,
平成17年6月30日 原告コンバースフットウェアに対し 上記商標 原 , ,(
告商標を含む)の独占的使用権を再許諾した。平成20年7月1日,原告
訴訟引受人コンバースジャパンが原告ビーエムアイの権利義務及び契約上
の地位を承継した。
原告ビーエムアイ,原告訴訟引受人コンバースジャパン及び原告コンバ
, ,, ースフットウェアは いずれも原告伊藤忠の子会社であり 原告伊藤忠は
原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンが原告コンバー
スフットウェアに上記商標(原告商標を含む)の独占的使用権を許諾する
ことを少なくとも黙示に承諾していた。
( )株式買取商標権譲渡契約等
4
ア旧米国コンバース社と月星化成は,旧米国コンバース社が有する原告
商標権1ないし3,6,9,10に係る商標について,従前からライセ
ンス契約を締結していた。その後,旧米国コンバース社が破産し,新米
国コンバース社は,原告商標権1ないし3,6,9,10を譲り受ける
とともに,上記ライセンス契約のライセンサーの地位を承継した。
イ原告伊藤忠と新米国コンバース社との間で,平成13年2月24日付
け株式買取商標権譲渡契約( ,
Stock Purchase and Trademark Agreement



乙95の1,2)が締結され,同契約により,新米国コンバース社から
原告伊藤忠に原告商標権1ないし3,6,9,10が譲渡され,新米国
コンバース社と月星化成の間のライセンス契約のライセンサーの地位が
原告伊藤忠に承継された。また,原告伊藤忠に対し,日本における新米
国コンバース社製品の独占的販売権が付与された(株式買取商標権譲渡
契約第3.3項 。)
原告商標権1ないし3,6,9,10については,原告伊藤忠に移転
登録がされた。
ウその後,原告伊藤忠と月星化成の間のライセンス契約が終了し,原告
伊藤忠と月星化成は,平成13年9月28日,原告商標権1ないし3,
6,9,10に係る商標等につき新たなライセンス契約を締結した(甲
69 。原告ビーエムアイ設立後,原告伊藤忠は,原告ビーエムアイに )
対して原告商標の独占的通常使用権を許諾した。原告伊藤忠は,月星化
成との間の上記ライセンス契約におけるライセンサーとしての地位及び
上記ライセンス契約に基づく権利義務を,原告伊藤忠から原告ビーエム
アイに承継させた(甲70 。)
平成17年1月18日に原告コンバースフットウェアが設立されたこ
とに伴い,原告ビーエムアイと月星化成の間で,ライセンス契約につい
て,同年3月31日付け解除覚書(甲71)を作成し,覚書に沿って,
同年6月30日,上記ライセンス契約が合意解除により終了した。月星
化成は,同日まで,上記ライセンス契約に基づいて,新米国コンバース
社のコンバースシューズの輸入販売を行っていた。原告コンバースフッ
トウェアと月星化成の間では,平成17年3月31日 「」,
CONVERSE
ブランド商品に関する売買基本契約が締結され(甲72 ,その契約に)
基づき,同年7月1日以降,月星化成は原告コンバースフットウェアか
らコンバースシューズを購入して販売するようになった。上記売買基本



契約の期間は,平成23年6月末日までとされている。
エ新米国コンバース社の99%出資の子会社であるTD社は,平成14
年6月11日,月星化成に対し,TD社と月星化成の間の合意を確認す
る平成14年6月11日付け文書(乙99)を送付した。同文書には,
「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●」などが記載されており,上記コンバース
・シューズと上記月星シューズが区別されていた。
そして,月星化成は,平成14年6月15日,TD社との間で,上記
コンバース・シューズの買付業務の代行をTD社に委託する買付代理契
約を締結した(乙100 。平成15年12月ころ,上記買付代理契約 )
は改定され,月星化成は,TD社に対し,●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●
TD社と月星化成間の買付代理契約において,TD社は,コンバース
・シューズ(新米国コンバース社又はその子会社により部分的若しくは
全面的に開発又はデザインされたシューズ製品)について,月星化成が
承認した標準・品質検査システムに従って検品を行い,検品結果を報告
するものとされており,月星化成は,日本に輸入するために買い付けた
上記コンバース・シューズ(新米国コンバース社又はその子会社により
部分的若しくは全面的に開発又はデザインされたシューズ製品)につい



て,品質管理基準の設定と検品などを通じて最終的な品質管理を行って
いた。
その後,原告コンバースフットウェアとTD社との間では,業務委託
契約が締結され,同契約は更新された(甲56は,平成20年2月21
日付けの業務委託契約である。原告コンバースフットウェアとTD社 。)
との間の業務委託契約においては,●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(第1条(f,))
原告コンバースフットウェアは,品質管理基準の設定と検品などを通じ
て最終的な品質管理を行っていた。なお,原告コンバースフットウェア
が上記業務委託契約に基づいてTD社を通じて買い付けたシューズの中
には,後記のとおり少数ではあるが,新米国コンバース社又はその子会
社により部分的若しくは全面的に開発又はデザインされたシューズ製品
が含まれていた。
オ原告コンバースフットウェアは,原告ビーエムアイから再許諾された
原告商標の独占的使用権に基づいて,平成17年7月1日以降,原告商
標の付されたコンバースシューズの製造販売を行った。また,原告コン
バースフットウェアは,平成17年6月30日,原告伊藤忠によりライ
センスの権限を与えられた原告ビーエムアイからコンバースシューズの
独占的販売権を与えられ,その権限に基づき,同年7月1日から平成1
8年12月31日まで,新米国コンバース社製のコンバースシューズを
輸入販売していた。
原告コンバースフットウェアが製造販売し又は輸入販売したコンバー
スシューズの中には,前記エのとおり,TD社を通じて買い付けたもの



も含まれていた。
( )株式保有
5
原告伊藤忠は,新米国コンバース社との間の平成13年2月24日付け
株式買取商標権譲渡契約により,新米国コンバース社の株式の●%(●●
●●●●株)を取得し,その譲渡代金●●円を支払った。その後,米国ナ
イキ社が新米国コンバース社を買収し,原告伊藤忠は,平成15年9月5
日,米国ナイキ社に新米国コンバース社の上記株式を譲渡し,米国ナイキ
社は,新米国コンバース社の全株式を取得するに至った 」。
「」 「」 ,「」 原判決52頁22行目の ( ) を ( ) と 原判決54頁10行目の ( )
36 4
を「( )」と,原判決54頁13行目の「( )」を「( )」と,原判決54頁17 58
6行目の「( )」を「( )」と,それぞれ改める。 69
2争点( )(並行輸入の抗弁)について 1
次のとおり訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4当裁判
所の判断「2争点( )(並行輸入の抗弁)について (原判決58頁19 」, 」
1
行目ないし65頁2行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決59頁15行目ないし64頁15行目を次のとおり改める。
「ア内外権利者の実質的同一性の要否について
(ア)外国において,我が国の登録商標と同一又は類似する商標を付した
商品が拡布された場合に,これを輸入する行為は,形式的には,我が国
における商標権を侵害することになるが,外国において商品に商標を付
した者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済
的に同一人と同視し得るような関係があるときは,実質的な違法性を欠
くものとして,我が国の商標権者の有する商標権を侵害しないものとい
える。
(イ)この点について,被告は 「出所表示機能が害されるかどうかの観 ,
点からすれば,登録商標権者が外国拡布者から商標権を取得する以前よ



り,それと同一又は類似の外国拡布者の商標が世界的に著名であり,登
録商標権者が使用する商標により需要者が識別している出所が登録商標
権者でなく外国拡布者である場合,登録商標が示す出所は,我が国にお
ける登録商標権者ではなく,むしろ外国拡布者であると解すべきである
から 『法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係』があるこ ,
とを要件とすることなく,我が国の商標権者の有する商標権を侵害しな
いと解すべきである」と主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,
商標権の効力により,商標の独占的な使用が認められるのは,我が国に
おける登録商標権者に対してであり,商標法により保護される出所は,
我が国における登録商標権者である。仮に,本件のように商標権が譲渡
されたような場合に,需要者が,商標を付した商品の出所について,譲
受人であるとの認識を有していないような状況があったとしても,それ
は事実上のものにすぎず,そのような状況から,譲渡人による商標の使
用が当然に容認されるものではない。したがって,譲渡人と譲受人との
間の「法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係」があること
を要件とすることなく,当該商標について譲渡人の出所が保護の対象と
されるべきであるとする被告の主張は,その主張自体失当である。同主
張を前提とする被告のその他の主張も,それ自体失当である。
イ原告伊藤忠と新米国コンバース社との間の実質的同一性の有無
以下の事実関係の下において,原告伊藤忠と新米国コンバース社との間
に「法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係」はない。
(ア)経済的に同一人と同視し得る関係の有無
a共同マーケティング契約
原告伊藤忠と新米国コンバース社との間には,平成13年2月24
日付け共同マーケティング契約(甲46)が存在する。しかし,同契



約の内容等を考慮すると,同契約の存在によって,原告伊藤忠と新米
国コンバース社が経済的に同一人と同視し得る関係にあるということ
はできない。その理由は,以下のとおりである。
( )統一ブランドを構築する法的義務の根拠について
a
被告は,共同マーケティング契約の前文に「●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」と規
定されており,このような共通目的を実現するための契約であるこ
とから,原告伊藤忠及び新米国コンバース社は,同契約により,両
者の製造する商品を,統一ブランドの構築に必要な一定のデザイン
及び一定の品質基準を充足する商品とすることを必然的に義務付け
られていると主張する。
しかし,共同マーケティング契約の前文は,原判決48頁26行
目ないし49頁14行目のとおりであり 「●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」と規定されて
おり,コンバース商標としてのブランドを構築するため,互いのア
イデアを共有することを希望する旨を表明しているにとどまり,原
告伊藤忠及び新米国コンバース社の製造する商品を,統一ブランド
の構築に必要な一定のデザイン及び一定の品質基準を充足する商品
とすることを法的に義務付けるものと解することはできないし,共
同マーケティング契約のその他の条項を参照しても,同契約によっ
てそのような法的義務が生じると解することはできない。
( )品質基準の合意について
b
被告は,共同マーケティング契約第2項,第5項,第7項を根拠
として,原告伊藤忠及び新米国コンバース社は,半期毎にマーケテ



ィング会議を開催し,協議の上,統一ブランドの構築目的に反しな
いように,新商品のデザイン基準,品質基準について合意し,決定
すると主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下の理由により,採用することが
できない。
すなわち,共同マーケティング契約第2項は,原判決49頁21
行目ないし50頁13行目のとおりである。同項によれば,新米国
コンバース社はコンバースブランドシューズに関する情報を原告伊
藤忠に提供し,原告伊藤忠はコンバースアパレルに関する情報を新
米国コンバース社に提供することとされており,原告伊藤忠から新
米国コンバース社に対してコンバースシューズに関する情報は提供
されないから,同契約第2項に基づき,コンバースシューズについ
て共通の品質基準を設けることが根拠付けられるとは解されない。
また,同項は,主として,商品そのものの情報(商品情報)の提供
について定めており,商品の品質基準,品質管理に関する情報の提
供等については具体的に定めていない。さらに,同項は 「両当事,
者は,いずれも商品情報を使用する義務を負うものではない 」と。
規定し,提供された商品情報の使用義務を否定している。したがっ
て,原告伊藤忠及び新米国コンバース社が,同項に基づいて,新商
品のデザイン基準,品質基準について合意し,決定すると解するこ
とはできないし,それについて法的義務を負うと解することはでき
ない。
同契約第5項は,マーケティング会議について規定し,マーケテ
ィング会議がマーケティング戦略等に関する情報交換の場であるこ
とを規定しているが,品質管理に関する情報の交換については特に
具体的に規定していない。また,マーケティング会議の開催は努力



義務であることが明記されており,それについて契約当事者が法的
義務を負うとは解されない。
同契約第7項は,各当事者が相手方に対し,交換された商品情報
使用許諾権を与えることを規定しているにとどまる。
以上によれば,共同マーケティング契約第2項,第5項,第7項
を根拠として,原告伊藤忠及び新米国コンバース社が,半期ごとに
マーケティング会議を開催し,協議の上,統一ブランドの構築目的
に反しないように,新商品のデザイン基準,品質基準について決定
することを合意したと解することはできない。
( )品質管理
c
?被告は,原告らは,新米国コンバース社製商品について,統一
ブランドの構築目的に合致した基準(両者が協議し決定したデザ
イン及び品質の基準)に反する商品を製造販売してはならないと
要求できるという意味で,共同マーケティング契約は原則的には
法的強制力を有しており,その意味において原告らは新米国コン
バース社製商品をその品質管理下に置いていると主張する。
しかし,前記( )のとおり,共同マーケティング契約第2項,
b
第5項,第7項を根拠として,原告伊藤忠及び新米国コンバース
社が,新商品のデザイン基準,品質基準について,協議した上で
決定する旨を合意したと解することはできず,同契約の他の条項
に照らしても,新米国コンバース社製商品について,統一ブラン
ドの構築目的に合致した基準(両者が協議し決定したデザイン及
び品質の基準)に反する商品を製造販売してはならないと要求で
きるという意味で,共同マーケティング契約が法的強制力を有す
ると解することはできず,被告の上記主張は,採用することがで
きない。



?被告は,原告コンバースフットウェアが 「当社も生産管理な,
どを指導してきた立場である (平成18年3月15日付け 」
「,乙13)と発表していることから,原告らが,新
Shoes Post 」
米国コンバース社製商品について,マーケティング会議における
両者の協議を通じて合意したデザイン及び品質の基準に従い,そ
の生産管理をしていることが裏付けられると主張する。
「」(), 平成18年3月15日付け乙13 の記事には
Shoes Post
原告コンバースフットウェア副社長が 「米コンバース社との関 ,
係は 」との記者の質問に答え 「ご存知の通り,コンバース社は 。,
ナイキ傘下に入りましたが,これまでと変わらず友好的な関係に
あります。2月にはハワイでコンバース社主催による生産工場関
係者のミーティングがあり,当社も発注者であり生産管理などを
指導してきた立場から継続して参加しています 」と述べたこと。
が記載されている。上記のとおり 「当社も発注者であり生産管 ,
」,, 理などを指導してきた立場から として 生産管理の指導に関し
「発注者」であることが記載されていることから,ここにいう生
産管理の指導は,原告コンバースフットウェアが発注した商品に
ついての生産管理の指導を意味するものと認められ,上記の記事
から,原告らが,新米国コンバース社製商品についてまで生産管
理をしていることが裏付けられるとは解されない。
?被告は,原告らが,新米国コンバース社の品質基準と異なる独
自の物性基準に基づいて商品を製造していたとしても,原
CVF
告らの商品が,マーケティング会議で協議し合意して決定したデ
ザイン及び品質の基準に反しない限り(即ち統一ブランドの構築
目的に反しない限り ,原告ら及び新米国コンバース社の品質管 )
理下にあるといえると主張する。



しかし,前記のとおり,マーケティング会議において,原告ら
と新米国コンバース社がデザイン及び品質の基準を決定している
とは認められないから,被告の上記主張は,採用することができ
ない。
( )基準遵守の確認
d
被告は,共同マーケティング契約第3項の規定により,原告伊藤
忠と新米国コンバース社は,互いに相手方が製造した商品が両者で
合意したデザイン及び品質の基準に合致しているかを確認すること
ができると主張する。
,, , しかし これまで述べたとおり 原告らと新米国コンバース社は
デザインや品質の基準を両者で合意して決定しているとは認められ
ない。また,共同マーケティング契約第3項(原判決50頁14行
目ないし21行目)は 「●●●●●●●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●」との定めはあるが,商品がデザ
イン及び品質の基準に合致するか否かを確認する目的で,相手方の
施設を訪問することができる旨の定めはない。したがって,被告の
上記主張は,採用することができない。
また,被告は,原告コンバースフットウェアとTD社との業務委
託契約書(甲56)の第1条(f)が「●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●」旨定めていることにより,新米国コン
バース社は,子会社であるTD社をして伊藤忠製シューズを検品さ
せ,その品質が両者の合意した品質に合致するかを確認することが
できると主張する。
しかし,原告コンバースフットウェアとTD社との業務委託契約



書(甲56)の第1条前文は 「●●●●●●●●●●●●●●● ,
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●● ( 買主」とは原告コンバースフットウェアを 」「
,「」。),() , 指し買付代理人 とはTD社を指すと定め 第1条 f は
「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」と定め
ていることから,第1条(f)は,原告コンバースフットウェアの
利益を確保するために,TD社が検品を行ってその結果を原告コン
バースフットウェアに対して報告することを定めているものと認め
, , られ TD社が新米国コンバース社の利益を図るために検品を行い
新米国コンバース社に検品の結果を報告することを定めているもの
とは認められない。したがって,被告の上記主張は,採用すること
ができない。
( )共同マーケティング契約終了後の協力関係の継続について
e
共同マーケティング契約は,平成13年2月24日,締結され,
その契約期間は,当初は1年間とされ,終了日の90日前までにい
ずれかの当事者が相手方に対して更新しない旨の書面通知を発送し
ない限り,当該1年経過後,更に1年間自動的に更新される旨規定
( ,)。, されていた 共同マーケティング契約第12項 甲46そして
平成15年7月,米国ナイキ社が新米国コンバース社の株式を10
0%取得したことに伴い,同月22日,原告伊藤忠と新米国コンバ
ース社の間で変更覚書が締結され,新米国コンバース社が米国ナイ
キ社から提供を受けた情報を原告伊藤忠に提供する義務がないこと



が規定された(甲47 。さらに,平成15年12月18日,第2 )
回変更覚書が締結され,共同マーケティング契約の有効期限が平成
18年6月30日までと変更された(甲48 。)
被告は,平成18年3月15日付けの「」の記事(乙
Shoes Post
13 ,平成19年1月25日付け及び同年7月25日付けの )
「」の記事(乙36)が発表されたとの事実は,原告伊藤
Shoes Post
忠と新米国コンバース社の間で,共同マーケティング契約第1項に
定められた,マーケティングに協力しなければならないという契約
関係が同契約終了後も継続して事実上運用されていることを示すも
のであると主張する。
しかし,平成18年3月15日付けの「」の記事(乙
Shoes Post
13)は,前記( )?のとおりであり,平成19年1月25日付け c
及び同年7月25日付けの「」の記事(乙36)は,日本 Shoes Post
以外の世界のコンバースシューズの売上額,その推移及び見込みな
どを記載したものであり,これらの記事を発表したことをもって,
共同マーケティング契約第1項に定められた,マーケティングに協
力しなければならないという契約関係が同契約終了後も継続して事
実上運用されていることを示すものと認めることはできず,被告の
上記主張は,採用することができない。
b品質管理の委託
被告は,原告らは,新米国コンバース社の子会社であるTD社と製
造管理委託契約を締結してTD社に原告商品の品質管理を委託し,原
告商品と新米国コンバース社の商品が同一の工場で製造されていると
主張する。
原告コンバースフットウェアは,TD社と,平成20年2月21日
,(), 付け業務委託契約を締結しており その契約条項 甲56 によれば



同業務委託契約は 原告コンバースフットウェア 買主 がTD社 買 , ()(
付代理人)に対して買付の代理とそれに伴う業務の委託をすることを
,,,, 定めるものであり 検品についても 前記a( )のとおり TD社は
d
原告コンバースフットウェアによって承認され・提供された標準・品
質検査システムに従って検品を行い,当該検品結果を報告することに
とどまるものであって(第1条(f,同契約によって,原告らがT ))
D社に対し,原告らが製造するコンバースシューズの製造管理までを
も委託したということはできない。また,仮に,原告らが,TD社と
製造管理委託契約を締結してTD社に原告商品の品質管理を委託して
いたとしても,原告らが新米国コンバース社製シューズの品質管理を
することができることにはならないから,TD社に品質管理を委託し
ていることをもって,原告伊藤忠と新米国コンバース社が経済的に同
一人と同視し得る関係にあるということはできない。
c経済的に同一人と同視し得る関係の有無
以上のとおり,原告伊藤忠と新米国コンバース社との間に共同マー
ケティング契約が存在すること,原告コンバースフットウェアとTD
社との間に業務委託契約が存在することを考慮してもなお,原告伊藤
忠と新米国コンバース社が経済的に同一人と同視し得る関係にあると
いうことはできない。
(イ)法律的に同一人と同視し得る関係の有無
a事実認定
前記のとおり,?旧米国コンバース社と月星化成との間の原告商標
権1ないし3,6,9,10に係る商標についてのライセンス契約の
ライセンサーの地位は,新米国コンバース社に承継されたこと,?原
告伊藤忠と新米国コンバース社との間の平成13年2月24日付け株
式買取商標権譲渡契約により,新米国コンバース社から原告伊藤忠に



原告商標権1ないし3,6,9,10が譲渡されるとともに,新米国
コンバース社と月星化成の間のライセンス契約のライセンサーの地位
が原告伊藤忠に承継され,また,原告伊藤忠に対し,日本における新
米国コンバース社製品の独占的販売権が付与され(株式買取商標権譲
渡契約第3.3項 ,原告商標権1ないし3,6,9,10について )
は,原告伊藤忠に移転登録がされたこと,?その後,原告伊藤忠と月
星化成の間のライセンス契約が終了し,原告伊藤忠と月星化成は,平
成13年9月28日,上記商標等について新たなライセンス契約を締
結したこと,?平成14年4月10日に原告ビーエムアイが設立され
た後は,上記ライセンス契約におけるライセンサーとしての地位及び
上記ライセンス契約に基づく権利義務が原告伊藤忠から原告ビーエム
, , アイに承継されたこと ?原告コンバースフットウェアの設立に伴い
上記ライセンス契約は,平成17年6月30日に終了し,原告コンバ
ースフットウェアと月星化成の間で売買基本契約が締結され,その契
約に基づき,月星化成は原告コンバースフットウェアからコンバース
シューズを購入して販売していること,他方,?月星化成は,平成1
4年6月15日,新米国コンバース社の99%出資の子会社であるT
D社との間で,新米国コンバース社製シューズの買付業務の代行を委
託する買付代理契約を締結し,平成15年12月ころ,上記買付代理
契約は改定され,月星化成は,TD社に対し,●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●,?その後,原告コンバースフットウ
ェアとTD社との間では,業務委託契約が締結されて更新されている
こと,?原告伊藤忠は,平成13年2月24日付け株式買取商標権譲
渡契約により,新米国コンバース社の株式の●%(●●●●●●株)
を取得し,その後,平成15年9月5日に米国ナイキ社に上記株式を



譲渡するまで,新米国コンバース社の株式を保有していたことが認め
られる。
他方,前記のとおり,月星化成は,TD社との間の買付代理契約に
基づき,日本に輸入するために買い付けた新米国コンバース社製シュ
ーズ(ただし,新米国コンバース社又はその子会社により部分的若し
くは全面的に開発又はデザインされたシューズ製品)について,品質
管理基準の設定と検品などを通じて最終的な品質管理を行っていたも
のであり,原告コンバースフットウェアも,TD社との間の業務委託
契約に基づいて,TD社が買付の代理を行ったシューズについて,品
質管理基準の設定と検品などを通じて最終的な品質管理を行っていた
ものである。そして,弁論の全趣旨によれば,月星化成及び原告コン
バースフットウェアが輸入販売した新米国コンバース社製シューズ
(ただし,新米国コンバース社又はその子会社により部分的若しくは
全面的に開発又はデザインされたシューズ製品)の数及びそれが原告
らのコンバースシューズの販売数に占める割合は,平成13年約●●
●●●●足・●●●%,平成14年約●●●●●●足・●●●%,平
成15年約●●●●●●足・●●●%,平成16年約●●●●●●●
足・●●●%,平成17年約●●●●●●足・●●●%,平成18年
約●●●●●●●足・●●●%であったと認められる。
b法律的に同一人と同視し得る関係の有無についての判断
( )前記aの認定事実によれば,原告伊藤忠が原告商標権1ないし
a
3,6,9,10の譲渡を受けた後も,月星化成及び原告コンバー
スフットウェアは,原告伊藤忠又は原告ビーエムアイのライセンス
のもとで,新米国コンバース社製シューズ(ただし,新米国コンバ
ース社又はその子会社により部分的若しくは全面的に開発又はデザ
インされたシューズ製品)を輸入販売していたが,そのような新米



国コンバース社製シューズの数が原告らの販売するコンバースシュ
ーズの販売数中に占める割合は,●●●%ないし●●●%であり,
低い割合にとどまっており,原告らが販売していたコンバースシュ
ーズの大半は,上記のような新米国コンバース社製シューズではな
かった。また,原告伊藤忠は,平成13年2月24日から平成15
年9月5日まで新米国コンバース社の株式を保有していたが,その
割合は全株式の●%にとどまっていた。
そして,前記のとおり,原告伊藤忠と新米国コンバース社との間
,,, の共同マーケティング契約は それにより 両者の製造する商品を
統一ブランドの構築に必要な一定のデザイン及び一定の品質基準を
充足する商品とすることを義務付けるものとは解されず,また,原
告伊藤忠が新米国コンバース社製品の品質管理を行っているとも認
められない。
そうすると,原告伊藤忠と新米国コンバース社の間には,総販売
代理店や親子会社の関係はなく,法律的に同一人と同視する関係が
あることを裏付ける事情があるとは認められない。
( )被告は,原告伊藤忠と新米国コンバース社との間の平成13年
b
2月24日付け株式買取商標権譲渡契約第3.3項において,原告
伊藤忠にコンバースシューズの独占的販売権が与えられていたこ
と,同契約第5.3項において,原告伊藤忠は,コンバースブラン
ドのシューズをアジアで製造して日本に輸入できるという,通常の
販売代理店には認められていない権利を与えられていたことから,
原告伊藤忠と新米国コンバース社との間には,法律的に同一人と同
視する関係があると主張する。
確かに,上記株式買取商標権譲渡契約第3.3項においては,原
告伊藤忠にコンバースシューズの独占的販売権が与えられている。



しかし,原告らは,自己の計算と管理のもとでコンバースシューズ
の製造販売を行っており,新米国コンバース社又はその子会社が開
発した商品の輸入量は少なく,かつそれについても最終的な品質管
理は月星化成又は原告コンバースフットウェアが行っていたもので
ある。そして,原告らと新米国コンバース社の関係は,いわゆる総
販売代理店契約の関係のように,販売代理店が輸入品を国内で転売
することを主な目的とし,その販売に販売代理店の組織的販売力を
活かすような関係であったとは認められず,そのような関係の存在
を窺わせる事情はない。
さらに,上記株式買取商標権譲渡契約第5.3項は「●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● (新会社とは,」
新米国コンバース社を指す。乙95の2)と規定するところ,この
規定は,日本の登録商標権者である原告伊藤忠が新米国コンバース
社とは別に独自に日本向け製品を生産することを前提とした規定と
解され,上記規定をもって,原告伊藤忠と新米国コンバース社が法
律的に同一人と同視する関係があることの根拠と解することはでき
ない。
したがって,平成13年2月24日付け株式買取商標権譲渡契約
の第3.3項,第5.3項を併せ考えたとしても,原告伊藤忠と新
米国コンバース社が法律的に同一人と同視する関係があると認める
ことはできない。
( )また,被告は,月星化成とTD社の間の平成15年12月18
c
日発効の第1回変更契約書(乙101の1)において,月星化成が



TD社に支払う年間最低保証手数料が,月星化成の生産量(原告ビ
ーエムアイからのライセンスに基づいて月星化成により又は月星化
成のために生産されたコンバースシューズ)の●●%又は●●%と
定められていることから,月星化成が販売していたコンバースシュ
ーズの●●%又は●●%はTD社を通じて輸入したものであり,そ
れらはTD社の品質管理下にあったとして,月星化成又は原告らの
販売しているコンバースシューズの●●%又は●●%はTD社を通
じて輸入したものであり,原告らと新米国コンバース社は,法律的
に同一人と同視する関係があると主張する。
確かに,月星化成とTD社の間の平成15年12月18日発効の
第1回変更契約書(乙101の1)には,●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と
定められていたが,そのことから,月星化成又は原告らの販売して
いるコンバースシューズの●●%又は●●%がTD社を通じて輸入
したものであると認めることはできず,その他に,そのような事実
を認めるに足りる証拠はない。また,月星化成又は原告コンバース
フットウェアがTD社との間の契約に基づいてTD社を通じて買い
付けるコンバースシューズは,上記のとおり,月星化成又は原告コ
ンバースフットウェアが最終的な品質管理を行っているといえるか
ら,仮にその割合が相当程度あったとしても,そのことから,原告
らと新米国コンバース社が法律的に同一人と同視する関係があると
解することはできない。
c独自のグッドウィルを獲得していないことについて
( )被告は,原告伊藤忠が原告商標につき独自のグッドウィルを獲
a
得していないことから,原告伊藤忠と新米国コンバース社は,法律
的に同一人と同視し得るような関係にあると主張する。



しかし,被告の上記主張は,以下の理由により,採用することが
できない。
, , すなわち グッドウィルとはどのような事実又は概念を指すかは
必ずしも明確でない。また,前記のとおり,本件においては,原告
商標について商標法によって保護されるべき出所は,新米国コンバ
ース社から原告商標権の譲渡を受けた,我が国の登録商標権者であ
る原告伊藤忠というべきである。
( )さらに,被告は,商標権が譲渡された場合,登録商標権者を商
b
標法の保護する出所として取り扱うとの立場に立つとしても,コン
バース商標が世界的著名商標であることの他,本件の特段の事情を
前提とするならば,本件においては,例外的に,登録商標権者であ
る原告伊藤忠が独自のグッドウィルを構築していることは,登録商
標権者を商標法の保護する出所として取り扱うための要件となると
主張し,特段の事情として,?原告伊藤忠は,新米国コンバース社
から独占的販売権限(総販売代理店としての権限)を授与されてお
り,原告コンバースフットウェアは,原告伊藤忠から許諾を受けて
新米国コンバース社製コンバースシューズを輸入販売しているこ
と,?原告伊藤忠は,新米国コンバース社との共同マーケティング
契約により,実質的に新米国コンバース社製商品を品質管理下に置
いていること,?新米国コンバース社製シューズの品質は,原告伊
藤忠及び新米国コンバース社が共同マーケティング契約に基づいて
定めた品質基準に合致していること,?原告らは米国コンバース社
の構築したグッドウィルを積極的に利用していること,?原告らは
現に独自のグッドウィルを構築していないことを主張する。
しかし,前記のとおり,?原告伊藤忠と新米国コンバース社との
間に総販売代理店の関係があるとは認められないこと,?共同マー



ケティング契約により,原告伊藤忠と新米国コンバース社が,品質
基準を定めているとは認められず,それにより原告伊藤忠が新米国
コンバース社製商品を品質管理下に置いているとも認められないこ
と,?グッドウィルがどのような事実又は概念を指すかは,必ずし
も明確でないことに照らすと,被告が特段の事情として挙げる事項
自体を認めることができない。また,仮にその点を措くとしても,
前記のとおり,我が国の商標法の構造に照らすと,原告商標につい
て商標法によって保護されるべき出所は,本件においては,登録商
標権者である原告伊藤忠と解すべきであって,上記のような特段の
事情があることにより,商標法が保護する出所として取り扱うため
に独自のグッドウィルの構築が必要になるとはいえない。したがっ
て,被告の上記主張は,採用することができない 」。
原判決64頁17行目ないし25行目を次のとおり改める。
「前記のとおり,共同マーケティング契約は,商品の品質に関する取決めで
はなく,その他に,原告らと新米国コンバース社との間において,品質管理
に関する契約があったと認めることはできない。また,原告コンバースフッ
トウェアは新米国コンバース社の設定する品質管理基準とは異なる独自の品
, 。 質管理基準を設定し これに基づいて試験を実施して品質管理を行っている
そうすると,原告伊藤忠は直接的にも間接的にも,新米国コンバース社の商
品の品質管理を行い得る立場にあるとは認められない。仮に,過去又は現時
点において,新米国コンバース社の商品と原告商品の中に,ほとんど同様の
, , 品質を有するものが存在するとしても 原告伊藤忠は直接的にも間接的にも
新米国コンバース社の商品の品質管理を行い得る立場にあるとは認められな
い。被告商品は,原告伊藤忠の品質管理の下にあると認めることはできない
から,被告による被告商品の輸入販売は,真正商品の並行輸入として違法性
が阻却されるとはいえない。



被告は 「原告らが新米国コンバース社製商品の品質基準と異なる品質基 ,
準を設定しているのは,単に日本工業規格(JIS)を充足させること,取
引先の要望する品質基準に合わせること等のためであり,これをもって,新
米国コンバース社製シューズとの差別化を目的とするもの又は独自の信用の
形成に努力しているものということはできない 」と主張する。。
確かに,原告らが新米国コンバース社製商品の品質基準と異なる品質基準
,(), を設定している理由のうちには 日本工業規格 JIS を充足させること
取引先の要望する品質基準に合わせること等の事情もあるものと推測され
。, ,, る しかし 原告らが様々な観点から詳細な物性基準 品質管理基準を設け
その中には,新米国コンバース社の定める基準として存在しない基準や,新
米国コンバース社よりも厳しい基準を設けているものもあり,そのような物
性基準,品質管理基準に従って検査を実施して品質管理を行っていることか
らすると,原告らは,新米国コンバース社とは異なった立場で原告らの製品
に対する品質管理を行っており,それは,原告らの信用の形成に役立ってい
るものと認められる。したがって,被告の上記主張は,採用することはでき
ない 」。
3争点( )(権利濫用の抗弁)について
2
次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4
当裁判所の判断「3争点( )(権利濫用の抗弁)について (原判決65 」, 」
2
頁4行目ないし66頁24行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決66頁22行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「( )被告は 「原告伊藤忠と新米国コンバース社は,法律的又は経済的に同
6 ,
一人と同視し得る関係にあるから,原告伊藤忠が,一方で米国コンバース
社の信用を積極的に利用しながら,米国コンバース社の信用を利用する被
告に対し,その行為を妨げることは,禁反言的行為(権利濫用)であり,
許されない 」と主張する。。



しかし,原告伊藤忠と新米国コンバース社は,法律的又は経済的に同一
人と同視し得るような関係はないから,被告の上記主張は,その前提にお
いて,採用することができない 」。
( )被告は,商標権行使者(原告伊藤忠ら)の主観的悪意,商標権行使行
7
為の客観的悪性,被告の商標使用行為の正当性,商標権者に対する実質的
な侵害がないこととの事情を総合的に考慮すると,原告伊藤忠の原告商標
権の行使は,権利濫用として許されないと主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下の理由により,採用することができな
い。
すなわち,前記のとおり,原告商標について商標法によって保護される
べき出所は,本件においては,登録商標権者である原告伊藤忠と解すべき
である。そのため,原告伊藤忠又は原告伊藤忠から使用許諾を受けた者が
原告商標を使用したとしても,出所の混同を生ずることはなく,その原告
商標の使用が違法とされることはない。
また,新米国コンバース社製シューズと伊藤忠製シューズが,ラベルの
貼付などにより区別されているとしても,原告商標と同一であるか又は類
似する被告商標の付された新米国コンバース社製シューズを輸入すること
は,真実は原告伊藤忠を出所としないにもかかわらず原告伊藤忠を出所と
して示す商標を付した商品を輸入することとなるから,原告商標の出所表
示機能を害するというべきであるし,また,原告伊藤忠は,新米国コンバ
ース社製シューズの品質管理を行っていないから,原告商標の品質保証機
能をも害するというべきである。
したがって,同一人性の要件,品質管理性の要件などを充足して被告の
並行輸入が実質的に違法性を欠くのでなければ,原告伊藤忠による被告に
対する商標権の行使を否定すべき理由はないというべきである 」。
原判決66頁23行目の「( )」を「( )」と改める。
68



4争点( )(商標権無効の抗弁)について 3
原判決の 事実及び理由 欄の 第4当裁判所の判断4争点( ) 商 「」「」,「( 3
標権無効の抗弁)について (原判決66頁26行目ないし67頁18行目) 」
のとおりであるから,これを引用する。
4?2争点( )?2(故意過失の有無)について
3
原判決67頁18行目の後に,行を改めて,次のとおり挿入する。
「4?2争点( )?2(故意過失の有無)について
3
( )被告は,原告伊藤忠が有する原告商標権を侵害する行為について過 1
失があったものと推定される(商標法39条・特許法103条 。そし)
て,商標法39条・特許法103条において,侵害する行為について過
失の存在を推定することと規定したのは,商標権の存在及びその内容が
公示されていることにあるのであって,権利者が誰であるが公示されて
いることにあるものではないから,商標権者として公示されない独占的
通常使用権者,及び独占的通常使用権者から更に独占的使用を許諾され
た者の法的利益の侵害行為にも類推適用されるものと解される。したが
って,被告には,原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャ
パンの独占的通常使用権を侵害する行為,原告コンバースフットウェア
の再許諾された独占的使用権を侵害する行為についても過失があったも
のと推定される(商標法39条・特許法103条類推適用 。そして,)
以下のとおり,被告による主張を検討しても,この推定が覆されるとは
認められない。
, , ( )被告は 原告伊藤忠を識別する観点で原告商標は顧客吸引力がなく
2
原告伊藤忠に損害はない旨主張する。しかし,米国コンバース社が原告
商標について形成した印象等を原告商標が有しているとしても,本件に
おいて,原告商標について商標法が保護する出所は,新米国コンバース
社から原告商標権の譲渡を受けた,我が国における登録商標権者である



原告伊藤忠であるから,商標権侵害によって原告伊藤忠に損害は発生し
たというべきであり,被告の上記主張は,採用することができない。
( )被告は,税関により輸入を差し止められなかったこと,被告は,最
3
高裁判決等の先例の示した規範に適合すると判断した上で,輸入販売行
為を行ったこと,原告伊藤忠に損害は発生しないことから,被告には過
失がなく,少なくとも故意又は重過失はないと主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下の理由により,採用することができ
ない。
すなわち,税関は,本件のように海外の商標権者と日本の商標権者が
異なる場合に並行輸入が実質的に違法性を欠くかどうかの判断まで行っ
た上で輸入差止の可否を決しているものではないし,一般にそこまでの
判断をしているとは考えられないから,税関により輸入を差し止められ
なかったことをもって,並行輸入を適法と解する根拠とすることはでき
ない。また,被告が,最高裁判決等の先例の示した規範に適合すると判
断したとしても,そのような判断をしたことの故に過失がないとはいえ
ない。さらに,前記( )のとおり,原告商標権の侵害により,原告伊藤
2
忠には損害が発生するものと認められる 」。
5争点( )(原告らの損害)について
4
次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4
当裁判所の判断「5争点( )(原告らの損害)について (原判決67頁 」, 」
4
20行目ないし72頁25行目)のとおりであるから,これを引用する。
原判決67頁21行目ないし24行目を次のとおり改める。
「ア原告コンバースフットウェアの権利の侵害
前記のとおり,原告伊藤忠は,原告ビーエムアイに対して原告商標の独
占的通常使用権を許諾しており,平成20年7月1日に原告訴訟引受人コ
ンバースジャーパンが原告ビーエムアイの権利義務を承継した後は,原告



訴訟引受人コンバースジャパンに対して原告商標の独占的通常使用権を許
。 , , 諾している 原告コンバースフットウェアは 原告伊藤忠の承諾のもとに
原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンから,原告商標
独占的使用権の再許諾を受けている。
そして,これまで述べたところによれば,被告による被告商品の輸入販
売行為は,原告コンバースフットウェアが原告商標について有する独占的
使用権を侵害するものと認められ,被告は,これにより原告コンバースフ
ットウェアが被った損害を賠償する義務があるというべきである。原告コ
ンバースフットウェアは,原告商標の独占的通常使用権者である原告ビー
エムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンから原告商標の独占的使
用権の許諾を受けた者であるから,その損害額の算定について商標法38
条の類推適用があるというべきである。
なお,商標法38条類推適用に基づく損害額の算定は,適正に行われる
べきであるが,公認会計士の認証に係る決算書類のみによらなくても,ま
た,計算鑑定を用いなくても,相当な損害額の算定は可能であり,以下の
方法により,相当な損害額を算定することができるというべきである 」。
原判決67頁25行目の「イ」を「イ原告コンバースフットウェアの1足
当たりの利益の算出」と改める。
原判決68頁3行目の「原告ビーエムアイ」を「原告ビーエムアイ及び原告
訴訟引受人コンバースジャパン」と改める。
原判決68頁13行目ないし70頁24行目を,次のとおり改める。
「ウ平成17年7月ないし平成18年9月の損害
乙89のA表によれば,被告のコンバースシューズの販売数は,平成1
7年(2005年)7月1日ないし同年9月末は●●●●●●足であり,
平成17年10月1日ないし平成18年(2006年)9月末は●●●●
●●●足であることが認められ,平成17年7月ないし平成18年9月の



被告の販売数は,これらの合計の●●●●●●●足(●●●●●●足+●
●●●●足=●●●●●足)である。
平成17年7月ないし平成18年9月の損害(商標法38条1項類推適
用)は,原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益●●●●●円に
上記期間の販売数●●●●●●●足を乗じた●●●●●●●●●●●●円
(●●円×●●●●●足=●●●●●●●円)と認められる。
平成17年7月ないし平成18年9月の不法行為と相当因果関係のある
弁護士費用としての損害は●●●●●円と認めるのが相当である。
したがって,平成17年7月ないし平成18年9月の損害の合計は,●
●●●●●●●●●●円に弁護士費用●●●●●円を加えた4億6521
万0878円(●●●●●●●●円+●●●●円=億万円)
465210878
と認められる。
エ平成18年10月ないし平成19年9月の損害
乙89のA表によれば,平成18年(2006年)10月1日ないし平
成19年(2007年)9月末の被告のコンバースシューズの販売数は●
●●●●●●足と認められる。
平成18年10月ないし平成19年9月の損害(商標法38条1項類推
適用)は,原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益●●●●●円
に上記期間の販売数●●●●●●●足を乗じた●●●●●●●●●●円
(●●●円×●●●●足=●●●●●●●●●円)と認められる。
平成18年10月ないし平成19年9月の不法行為と相当因果関係のあ
る弁護士費用としての損害は●●●●●円と認めるのが相当である。
したがって,平成18年10月ないし平成19年9月の損害の合計は,
●●●●●●●●●●●円に弁護士費用●●●●●円を加えた3億245
7万2638円(●●●●●●●●円+●●●円=億万円)
324572638
と認められる。



オ平成19年10月ないし平成20年9月の損害
乙89のB表によれば,平成19年(2007年)10月1日ないし平
成20年(2008年)9月末の被告の粗利益は●●●●●●●●●円と
認められ,これは,被告が侵害行為により受けた利益の額であり,独占的
使用権を有する原告コンバースフットウェアが受けた損害の額と推定され
るというべきである(商標法38条2項類推適用 。)
原告コンバースフットウェアが原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コ
ンバースジャパンに対して売上高の●●●%相当額を使用料として支払っ
ていることから,原告コンバースフットウェアの損害は,上記粗利益額
ら●●●%を差し引いた金額と認めるのが相当である。上記粗利益額から
1 ●●●%を差し引いた金額は●●●●●●●●●円(●●●●●円×(
?●●●)=●●●●●●円)である。
平成19年10月ないし平成20年9月の不法行為と相当因果関係のあ
る弁護士費用としての損害は●●●●円と認めるのが相当である。
したがって,平成19年10月ないし平成20年9月の損害の合計は,
●●●●●●●●●円に弁護士費用●●●●円を加えた8574万987
7円(●●●●●●円+●●●円=万円)と認められる。
85749877
カ小括
原告コンバースフットウェアの平成17年7月ないし平成18年9月の
損害4億6521万0878円,平成18年10月ないし平成19年9月
の損害3億2457万2638円及び平成19年10月ないし平成20年
4 9月の損害8574万9877円の合計は8億7553万3393円(
億万円+億万円+万円=億万
652108783245726388574987787553
円)である。 3393
遅延損害金としては,平成17年7月ないし平成18年9月の損害4億
6521万0878円については最後の不法行為後の平成18年12月8



日(原審第1事件訴状送達の日の翌日)から,平成18年10月ないし平
成19年9月の損害3億2457万2638円については最後の不法行為
の時である平成19年9月30日から,平成19年10月ないし平成20
年9月の損害8574万9877円については最後の不法行為の時である
平成20年9月30日からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合
による金員の請求が認められる。
したがって,原告コンバースフットウェアは,被告に対し,8億755
3万3393円及び内金4億6521万0878円に対する平成18年1
2月8日から,内金3億2457万2638円に対する平成19年9月3
0日から,内金8574万9877円に対する平成20年9月30日から
それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めることができ
る 」。
原判決70頁26行目ないし72頁25行目を次のとおり改める。
「ア原告訴訟引受人コンバースジャパンの権利の侵害
, , これまで述べたところによれば 被告による被告商品の輸入販売行為は
原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンが原告商標につ
いて有する独占的通常使用権を侵害するものと認められ,被告は,これに
より原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンが被った損
害を賠償する義務があるというべきである。なお,原告訴訟引受人コンバ
ースジャパンが原告ビーエムアイの権利義務を承継したことから,被告に
対する損害賠償請求権は原告訴訟引受人コンバースジャパンが有するもの
と認められる。
原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受人コンバースジャパンは,原告商標
の独占的通常使用権者であるから,損害額の算定について商標法38条
類推適用があるというべきである。
甲63及び弁論の全趣旨によれば,原告ビーエムアイ及び原告訴訟引受



人コンバースジャパンと原告コンバースフットウェアの間の独占的使用
の許諾契約において,商標の使用料は,売上高が●●●円に満つるまでは
売上高の●●●%と定められていたことが認められる。また,原告らは,
平成14年4月から平成19年8月までの間に原告商標等に関連する宣伝
広告費として●●●円以上を支出し(甲40 ,原告商標は日本国内でも )
著名である。さらに,乙89のB表によれば,平成15年4月から平成2
0年9月までの被告商品の売上高は合計●●●●●●●●●●●●円,粗
利益は合計●●●●●●●●●●●●円であったことが認められる。この
ような,実際の使用許諾契約における料率,宣伝広告の規模や商標の著名
性,原告商標と同一又は類似の標章を付した被告商品の売上高と粗利益の
, , 額などを考慮すると 本件に商標法38条3項を類推適用するに当たって
使用料率は●●●%とするのが相当である。
イ平成15年4月ないし平成18年9月の損害
乙89のB表によれば,被告のコンバースシューズの売上高は,平成1
5年(2003年)4月1日ないし同年9月末は●●●●●●●●●●●
円,同年10月1日ないし平成16年(2004年)9月末は●●●●●
●●●●●●円,同年10月1日ないし平成17年(2005年)9月末
は●●●●●●●●●●●円,同年10月1日ないし平成18年(200
6年)9月末は●●●●●●●●●●●●円と認められ,平成15年4月
ないし平成18年9月の売上高は,上記の合計の●●●●●●●●●●●
●円(●●●●●●●●円+●●●●●●●●円+●●●●●●●●円+
●●●●●●●●円=●●●●●●●●●円)と認められる。
平成15年4月ないし平成18年9月の使用料相当額は,同期間の売上
高●●●●●●●●●●●●円の●●●%に当たる●●●●●●●●●●
( )。 ●円 ●●●●●●●●円×●●=●●●●●●●●●円 と認められる
平成15年4月ないし平成18年9月の不法行為と相当因果関係のある



弁護士費用としての損害は,●●●●円と認めるのが相当である。
したがって,平成15年4月ないし平成18年9月の損害の合計は,●
●●●●●●●●●●円に弁護士費用●●●●円を加えた2億0091万
8646円(●●●●●●●●円+●●●円=億万円)と認
200918646
められる。
ウ平成18年10月ないし平成19年9月の損害
乙89のB表によれば,平成18年10月ないし平成19年9月の被告
のコンバースシューズの売上高は,●●●●●●●●●●円と認められ,
使用料相当額は,その●●●%に当たる●●●●●●●●●円(●●●●
●●●円×●●●=●●●●●●円)と認められる。
平成18年10月ないし平成19年9月の不法行為と相当因果関係のあ
る弁護士費用としての損害は,●●●●円と認めるのが相当である。
したがって,平成18年10月ないし平成19年9月の損害の合計は,
●●●●●●●●●円に弁護士費用●●●●円を加えた7358万478
9円(●●●●●●円+●●円=万円)と認められる。
73584789
エ平成19年10月ないし平成20年9月の損害
乙89のB表によれば,平成19年10月ないし平成20年9月の被告
のコンバースシューズの売上高は,●●●●●●●●●●円と認められ,
使用料相当額は,その●●●%に当たる●●●●●●●●円(●●●●●
●●●円×●●●=●●●●●●円)と認められる。
平成19年10月ないし平成20年9月の不法行為と相当因果関係のあ
る弁護士費用としての損害は●●●●円である。
したがって,平成19年10月ないし平成20年9月の損害の合計は,
●●●●●●●●●円に弁護士費用●●●●円を加えた1910万721
2円(●●●●●円+●●●円=万円)と認められる。
19107212
オ小括



原告訴訟引受人コンバースジャパンの平成15年4月ないし平成18年
9月の損害2億0091万8646円,平成18年10月ないし平成19
年9月の損害7358万4789円及び平成19年10月ないし平成20
2 年9月の損害1910万7212円の合計は2億9361万0647円(
009186467358478919107212293610647 億万円+万円+万円=億万
円)である。
遅延損害金としては,平成15年4月ないし平成18年9月の損害2億
0091万8646円については最後の不法行為後の平成18年12月8
日(原審第1事件訴状送達の日の翌日)から,平成18年10月ないし平
成19年9月の損害7358万4789円については最後の不法行為の時
である平成19年9月30日から,平成19年10月ないし平成20年9
月の損害1910万7212円については最後の不法行為の時である平成
20年9月30日からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合によ
る金員の請求が認められる。
したがって,原告訴訟引受人コンバースジャパンは,被告に対し,2億
9361万0647円及び内金2億0091万8646円に対する平成1
8年12月8日から,内金7358万4789円に対する平成19年9月
30日から,内金1910万7212円に対する平成20年9月30日か
らそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めることがで
きる。
( )損害の算定について
3
ア相当因果関係の考慮による減額の可否について
被告は,伊藤忠製コンバースシューズを米国コンバース社製であると誤
認知している者が86%に及ぶから,伊藤忠製コンバースシューズのうち
14%のみが原告伊藤忠のグッドウィルにより販売されたものであるとし
て,損害の減額を主張する。



しかし,前記のとおり,仮に原告商標の商標権者が原告伊藤忠であるこ
,, とを需要者が具体的に認識していない場合があるとしても 本件において
原告商標は,登録商標権者である原告伊藤忠を出所として表示するもので
あるから,被告商品の輸入販売によって原告らに損害が生じているという
べきであり,被告の上記主張は,採用することができない。
イ競合品の考慮による減額について
被告は,被告が輸入販売する米国コンバース社製シューズのうち,原告
らが販売していない型のものは,原告らが販売する伊藤忠製コンバースシ
ューズとは代替性,補完性がないから,伊藤忠製コンバースシューズと競
合しないと主張して,損害の減額を主張する。
しかし,伊藤忠製コンバースシューズも被告が輸入販売する新米国コン
バース社製シューズも,同じようにスニーカー等のカジュアルシューズで
あり,原告商標又はこれと同一若しくは類似の商標が付されており,これ
らはいずれも最終需要者層を共通にするものと認められるから,被告が輸
入販売する新米国コンバース社製シューズに,原告らが販売していない型
のものがあるとしても,その故に損害を減額することはできないものとい
うべきであり,被告の上記主張は,採用することができない。
ウ商標権者等が販売することができないとする事情(商標法38条1項
について
被告は,?被告が並行輸入した新米国コンバース社製コンバースシュー
ズのみを取扱い 伊藤忠製コンバースシューズを取り扱わない非競合店 約 , (
●●●店)が存在すること,?平成20年9月期と平成21年9月期の決
算における被告の販売数が減少しても原告らの販売数は増加していないか
, , ら 被告の販売数の減少は原告らの販売数の増加につながっていないこと
?原告らは,被告が実施しているインターネット販売と直営店における店
舗販売を行っていないことから,商標権者等が販売することができないと



する事情(商標法38条1項)があると主張する。
しかし,前記のとおり,伊藤忠製コンバースシューズと被告が輸入販売
する新米国コンバース社製シューズは最終需要者層を共通にするものであ
り,商品の性質から,最終需要者は,若年者を中心とした一般消費者と推
認される。そして,商品の内容,性質,価格,及び最終需要者層が若年者
を中心とする一般消費者であることに照らし,原告コンバースフットウェ
アが卸売りを行い小売店を通じて最終需要者に販売するという原告らの販
売方法と,インターネット及び直営店による販売を含む被告らの販売方法
とで,最終的な購買者が大きく異なるとは認められない。また,販売数の
増減には,様々な要因が関係していると推認されるから,被告の販売数の
増減と原告の販売数の増減の関係は,1,2年程度の短期間の比較によっ
。,, ては必ずしも明らかになるとはいえない さらに 弁論の全趣旨によれば
原告コンバースフットウェアは全国において原告商品を販売しており,末
端の小売店を含めた店舗数は約●●●●店舗であり,平成17年7月ない
し平成20年9月の販売数は●●●●●●●●●足にのぼるのに対し,非
競合店は●●●店舗にとどまることが認められ,非競合店におけるコンバ
, 。 ースシューズの販売数は 原告の販売数に比べて少ないものと推認される
これらの事情を考慮すると,被告が主張する事項は,商標権者等が販売す
ることができないとする事情(商標法38条1項)に該当するとは認めら
れないし,その他に商標権者等が販売することができないとする事情があ
るとは認められない。
エ原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益の算出について
被告は,原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益の額を算出す
るに当たっては,決算期ごとに行っている商品評価損処理(いわゆる「損
」) , , 切りを考慮に入れるべきであること 原告コンバースフットウェアは
コンバースシューズしか扱っていないから,販売数で除する前の金額を算



出するに当たっては,人件費,販売費及び一般管理費(倉敷料,通信費,
地代家賃,水道光熱費,旅費交通費,事務費,消耗品費等)も差し引くべ
きであることを主張し,原告コンバースフットウェアの1足当たりの利益
は200円ないし300円であると主張する。
しかし,甲65の1ないし10及び弁論の全趣旨によれば,原告コンバ
ースフットウェアにおいて,売上総利益は,売上高から売上原価計を差し
引いて算出され,売上原価計は 「商品期首棚卸高+当期商品仕入高?商 ,
品期末棚卸高」との計算によって算出されること,商品に評価損が生じた
場合,商品期末棚卸高が減額され,売上原価計が増加し,その結果,売上
総利益が減額されることが認められる。したがって,原判決67頁25行
目ないし68頁12行目のとおり原告コンバースフットウェアの1足当た
りの利益を算出するに当たって,評価損は既に考慮に入れられているもの
と認められる。
また,甲64ないし68及び弁論の全趣旨によれば,平成17年7月な
いし平成20年9月の原告コンバースフットウェアの原告商品の販売数は
●●●●●●●●●足であり,売上高は●●●●●●●●●●●●●円で
あることが認められ,これに対し,乙89及び弁論の全趣旨によれば,平
成17年7月ないし平成20年9月の被告のコンバースシューズの販売数
は●●●●●●●足であり,売上高は24億6910万4319円である
ことが認められる。このように,原告らの販売数,売上高に対し,被告の
販売数,売上高がかなり少ないことからすると,仮に原告が被告の販売数
に等しい数の原告商品を販売するとしても,新たに人件費,販売費及び一
般管理費を要するとは解されない。他方,乙89,乙93,乙127の1
ないし3,乙128ないし130及び弁論の全趣旨によれば,?被告は,
海外メーカーのスポーツ・カジュアルシューズ,スポーツ・カジュアルウ
ェア,スポーツ用品,アウトドア用品の並行輸入を主な業務とする会社で



あり,数多くの商品とブランドを扱っており,コンバースシューズはその
うちの一部であること,?販売は,店頭又はインターネットにおいて,数
多くの商品とブランドを取りそろえて行っており,宣伝広告は,これらの
多数の商品を掲載したちらしの配布等により行っていることが認められ
る。このような被告の業務や宣伝広告の態様に照らすと,被告は,コンバ
ースシューズの販売を行うために新たな人件費,販売費,一般管理費を要
するとは解されない。そして,以上の事情を考慮すると,原告コンバース
フットウェアの1足当たりの利益を算出するために人件費,販売費及び一
般管理費(倉敷料,通信費,水道光熱費,旅費交通費,事務費等)も差し
引くべきであるとの被告の主張は,採用することができない。
オ被告の利益の算出について
被告は,被告の基準で算出した限界利益額は1足当たり204円となる
と主張する。しかし,被告の基準で限界利益額を算出する際には,売上か
ら,通常,人件費や一般管理費に当たるとされる費用も差し引かれている
ところ,前記エの被告の業務や宣伝広告の態様に照らすと,損害賠償額算
定のために被告の利益を算出するに当たり,売上から人件費や一般管理費
に当たる費用を差し引くのは相当でなく,被告の上記主張は,採用するこ
とができない。
前記エの被告の業務や宣伝広告の態様に照らすと,本件において,損害
賠償額算定のために被告の利益を算出するに当たっては,粗利益をもって
算出するのが相当である。
カ原告訴訟引受人コンバースジャパンの実施料率について
被告は,損害算定に当たっての実施料率を●●●%とするのは高すぎる
こと,平成15年4月ないし同年9月の期間は,新米国コンバース社と原
告伊藤忠とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し
得るような関係があり,原告伊藤忠らが商品の品質管理を行い得る立場に



あるとの要件が充足されていたから,被告の行為の違法性は阻却され,損
害もないことを主張する。
しかし,前記のとおり,本件において損害を算定するに当たって実施料
率を●●●%とするのは相当と認められるし,これまで述べたとおり,平
成15年4月ないし同年9月の期間についても,新米国コンバース社と原
告伊藤忠とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し
得るような関係にあるとは認められないから,被告の上記主張は,採用す
ることができない。
キ軽過失による減額について
被告は,原告伊藤忠が原告商標権の譲渡を受ける前から米国コンバース
社のコンバースシューズを日本に並行輸入していたこと,税関により輸入
を差し止められなかったこと,原告伊藤忠を識別する観点で原告商標は顧
客吸引力がないことなどから,軽過失による減額を主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下の理由により,採用することができな
い。
税関により輸入を差し止められなかったことは,前記4?2のとおり,
並行輸入を適法と解する根拠とすることはできず,故意又は重過失がなか
ったことを根拠付ける事実とは解されない。また,米国コンバース社が原
告商標について形成した印象等を原告商標が有しているとしても,本件に
おいて,原告商標について商標法が保護する出所は,新米国コンバース社
から原告商標権の譲渡を受けた,我が国の登録商標権者である原告伊藤忠
であり,原告商標を付したコンバースシューズは相当の売上を上げている
から,原告商標に顧客吸引力がないとはいえない。
さらに,乙89,乙127ないし129及び弁論の全趣旨によれば,被
告は,原告伊藤忠が原告商標権の譲渡を受ける前から米国コンバース社の
コンバースシューズを日本に並行輸入していたことが認められるが,その



ことから直ちに,原告伊藤忠が原告商標権の譲渡を受けた後も被告による
コンバースシューズの並行輸入が適法であるということはできないし,原
告商標権の侵害について被告の過失が軽過失であるということもできな
い。
すなわち,被告は,並行輸入を主な業務とする会社で,海外の著名商標
の付された商品を主に取り扱ってきたものであり,商標に関する一般的知
識や,具体的な商標権の帰属等についての知識を有していたものと推認さ
れ,並行輸入を行うに当たり,日本の商標権者の商標権を侵害することが
ないかどうかについて注意を尽くすべき立場にあった。そして,原告伊藤
忠から,平成15年9月17日付け書面で,最高裁判決等の先例に沿った
見解を前提として 「新米国コンバース社と原告伊藤忠は法律的経済的に ,
同一とみられる関係になく,被告が販売する製品が日本国外の商標権に由
来するものであっても,その日本国内における販売は原告伊藤忠の商標権
を侵害する」旨の警告(甲11)を受けたのに対し,被告代理人弁護士作
成の回答書(甲12)は 「被告が適法に購入した国際的に著名で,日本 ,
国内で広く知られた米国コンバース社の商品の販売が商標権者によって差
し止められるなどという非常識な話は聞いたことがない」との趣旨を記載
するにとどまっていた。また,原告らから,平成18年9月14日付け書
面で 「原告らは,新米国コンバース社と法律的若しくは経済的に同一人 ,
と同視し得るような関係になく,新米国コンバース社が製造する商品につ
いて品質管理を行い得る立場にもなく,被告が販売する製品が日本国外の
商標権に由来するものであっても,その日本国内における販売は原告伊藤
忠の商標権を侵害する」旨の警告(乙1)を受けたのに対し,被告代理人
弁護士の回答書(乙2)は,上記回答書(甲12)と同様の所見に立って
いること,原告らと被告の共存共栄を前提に協議を希望することが記載さ
れているにとどまる。被告は,代理人弁護士に回答等の委任をしていたこ



とから,代理人弁護士の助力を得るなどして判例や法律に基づく検討や反
論が可能であったと推認されるにもかかわらず,本訴に近接した時期に至
るまで,判例や法律上の根拠を示した上での反論等がされた形跡はない。
さらに,被告が,本訴に近接した時期に至るまでに,最高裁判決その他の
判例や法律に照らした上でコンバースシューズの並行輸入が適法であるか
どうか検討したり,適法性を裏付けるために必要な証拠等の調査や収集を
,。 ,, 行っていたとの事情は 窺われない このような経緯に照らすと 被告は
被告の輸入するコンバースシューズが米国コンバース社の製品(真正品)
であること,従前からコンバースシューズの並行輸入を行ってきたことな
どの事実に基づき,被告による並行輸入が適法であると考えていたにとど
まり,少なくとも本訴に近接した時期に至るまで,フレッドペリー最高裁
判決その他の判例や法律に照らした上でコンバースシューズの並行輸入
適法とされるかどうか検討することなく,その輸入販売を継続していたも
のと推認される。このような事情を考慮すると,被告には故意又は少なく
とも重過失があったというべきであり,軽過失による減額は認められな
い 」。
6争点( )(被告の不正競争防止法2条1項1号に関する請求の当否)につい
5

原判決の 事実及び理由 欄の 第4当裁判所の判断6争点( ) 被 「」「」,「(
5
告の不正競争防止法2条1項1号に関する請求の当否)について (原判決7」
3頁1行目ないし16行目)のとおりであるから,これを引用する。
7争点( )(被告の不正競争防止法2条1項14号に関する請求の当否)につ
6
いて
原判決の 事実及び理由 欄の 第4当裁判所の判断7争点( ) 被 「」「」,「(
6
告の不正競争防止法2条1項14号に関する請求の当否)について (原判決」
73頁19行目ないし74頁1行目)のとおりであるから,これを引用する。



8争点( )(被告の独占禁止法に基づく請求の当否)について 7
原判決の 事実及び理由 欄の 第4当裁判所の判断8争点( ) 被 「」「」,「( 7
告の独占禁止法に基づく請求の当否)について (原判決74頁3行目ないし 」
75頁20行目)のとおりであるから,これを引用する。
9争点( )(濫訴による不法行為に対する損害賠償請求の当否等)について
9
原判決75頁20行目の後に,行を改めて次のとおり挿入する。
「9争点( )(濫訴による不法行為に対する損害賠償請求の当否等)につい
9

被告は,原告伊藤忠が原告ビーエムアイ又は原告訴訟引受人コンバース
ジャパンに対して許諾したと主張する独占的通常使用権は,原告ビーエム
アイと月星化成との間のライセンス契約によってその行使を凍結されてい
たとの主張を前提として,原告訴訟引受人コンバースジャパンが,附帯控
訴により,平成15年4月ないし平成17年6月の期間についての損害賠
償請求額を増額したことは,信義誠実の原則に著しく反する濫訴であり,
原告らの不法行為を構成すると主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,その前提において採用する
ことができない。
,,,, すなわち 前記のとおり 平成14年4月10日 原告ビーエムアイは
原告伊藤忠から原告商標の独占的通常使用権を許諾されるとともに,原告
伊藤忠と月星化成との間のライセンス契約における原告伊藤忠の地位及び
同契約に基づく権利義務は原告ビーエムアイに承継された(甲70 。そ)
のため,原告ビーエムアイの独占的通常使用権が,原告ビーエムアイと月
星化成との間のライセンス契約によってその行使を妨げられることはなか
った。また,原告ビーエムアイと月星化成の間では,平成17年3月31
日付け解除覚書(甲71)が作成され,上記ライセンス契約は,同年6月
30日,合意解除により終了した。



もっとも,平成15年10月7日,原告商標について,月星化成を通常
使用権者とする通常使用権の設定登録がされ,その期間は,平成18年6
月30日までとされていた(甲2の1ないし3,甲2の6,9,10 。)
, (, しかし 登録は通常使用権の対抗要件にとどまるから 商標法31条4項
特許法99条1項 ,月星化成に通常使用権の登録があったことにより, )
上記ライセンス契約が平成17年6月30日に終了したとの認定が覆され
ることはないというべきである。
そうすると,原告伊藤忠が原告ビーエムアイ又は原告訴訟引受人コンバ
ースジャパンに対して許諾したと主張する独占的通常使用権が,原告ビー
エムアイと月星化成との間のライセンス契約によってその行使を凍結され
ていたとの被告の主張は,採用することはできない。
したがって,上記主張を前提とする被告の不法行為に基づく請求は,そ
の前提において採用することができず,理由がない。また,その他に,原
告らの損害賠償請求が不法行為を構成することを認めるに足りる証拠はな
い。
結論
10
( )以上によれば,原告伊藤忠は,原告商標権に基づき,被告に対し,?被 1
告が靴及びその包装に被告標章を付したものを輸入し,販売し,又は販売の
ために展示すること,?靴及びその包装に被告標章を付すること,?靴の商
品に関する広告に被告標章を付して展示し,頒布し,又はこれを内容とする
情報に被告標章を付して電磁的方法により提供することの差止め,?被告が
占有する被告標章を付した靴及びその包装並びに靴の商品に関する広告の廃
棄,?インターネット上の原判決別紙ウェブサイト目録1ないし3の各ウェ
ブサイトの表示画面からの被告標章の抹消を求めることができる。
原告コンバースフットウェアは,被告に対し,原告伊藤忠から独占的通常
使用権の許諾を受けた原告ビーエムアイ又は原告訴訟引受人コンバースジャ



パンによって再許諾された独占的使用権の侵害による不法行為に基づき,8
億7553万3393円及び内金4億6521万0878円に対する平成1
8年12月8日から,内金3億2457万2638円に対する平成19年9
月30日から,内金8574万9877円に対する平成20年9月30日か
らそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員(附帯控訴により拡張)の
支払を求めることができる。
原告訴訟引受人コンバースジャパンは,被告に対し,原告ビーエムアイ又
は原告訴訟引受人コンバースジャパンの独占的通常使用権の侵害による不法
行為に基づき,2億9361万0647円及び内金2億0091万8646
円に対する平成18年12月8日から,内金7358万4789円に対する
平成19年9月30日から,内金1910万7212円に対する平成20年
9月30日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員(附帯控訴に
より拡張)の支払を求めることができる。
被告の請求は,当審で拡張した請求を含め,いずれも理由がない。
被告は,これまで摘示した他にも細部にわたり縷々主張するが,独自の見
解に立った上での主張,趣旨が必ずしも明確でない主張もあり,そのような
主張も含めて,いずれも理由がなく,上記の結論を左右するものとは解され
ない。
( )よって,被告の本件控訴を棄却し,被告が当審において拡張した請求を
2
棄却し,原告コンバースフットウェア及び原告訴訟引受人コンバースジャパ
ンの附帯控訴に基づき,原判決主文第6項,第7項を本判決主文第3項記載
のとおり変更し,控訴費用及び附帯控訴費用は被告の負担とし,仮執行宣言
は,本判決主文第3項,第4項に付することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部



裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
中平健
裁判官上田洋幸は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官
飯村敏明