• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 取消2009-300903
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22行ケ10007審決取消請求事件 判例 商標
平成22行ケ10006審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  普通に用いられる方法 /  周知商標 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  品質誤認(4条1項16号) /  著名商標 /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  権利濫用(権利の濫用) /  通常使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  出所の混同 /  使用義務 /  使用許諾 /  存続期間 /  更新登録 /  正当使用義務 /  類似商標 /  継続 /  非類似 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 22年 (行ケ) 10099号 審決取消請求事件
原告 コスメテックスローランド株式会社
同訴訟代理人弁護士 石川幸吉
被 告Y
同訴訟代理人弁理士高 野 登志雄大 野詩木中 嶋真也
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/06/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が取消2009-300903号事件について平成22年2月23日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告の有する本件商標に係る商標権の通常使用権者が原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある使用をしたとして,商標法53条1項に基づいて,本件商標に係る商標登録を取り消すことを求める原告の本件審判請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記2のとおり)には,下記3のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯2A本件商標(甲2-1-1及び2)商標登録番号:第4073391号商標の構成:指定商品:第3類「化粧品」商標登録出願日:平成8年5月14日出願人:株式会社リバティー登録査定日:平成9年9月5日設定登録日:平成9年10月24日被告に対する移転登録日:平成13年5月16日存続期間更新登録日:平成19年10月9日A審判請求審判請求日:平成21年8月10日(取消2009-300903号)審決日:平成22年2月23日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」原告に対する審決謄本送達日:平成22年3月5日2本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,株式会社ニッセン(以下「ニッセン」という。)及び有限会社天意和ゴールド(以下「天意和ゴールド」という。)が「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」なる商標(以下,総称して「使用商標1」という。)を使用し,また,天意和ゴールドが,「ヴァージンピンク」なる商標(以下「使用商標2」という。)を使用し,それぞれ化粧品(以下「本件使用商品」という。)の広告をしたことが認められるが,ニッセン及び天意和ゴールドは,本件商標に係る商標権の通常使用権者とは認められないから,本件商標に係る商標権の通常使用権者が他人の業務に係る商品と混同を生じる使用をしたとは認められない,というものである。
3なお,本件審決は,その理由中において,使用商標1については,本件商標に類似するが,原告の業務に係る商品を表示する商標であると原告が主張する別紙引用商標目録記載1及び2の商標(以下,順に「引用商標1」及び「引用商標2」といい,総称して「引用商標」という。)には類似せず,しかも,引用商標が原告の周知表示であるとも認められないとし,また,使用商標2については,本件商標とは類似しないが,引用商標とは類似し,天意和ゴールドが平成20年8月ころに販売した本件使用商品は,取引者及び需要者をして,原告の商品とその出所について混同を生じさせるおそれがあったものということができると付言している。
3取消事由Aニッセン及び天意和ゴールドが通常使用権者に該当しないとした判断の誤り(取消事由1)A引用商標が原告の周知商標でないとした判断の誤り(取消事由2)A本件商標と使用商標2との類否判断の誤り(取消事由3)A引用商標と使用商標1との類否判断の誤り(取消事由4)第3当事者の主張1取消事由1(ニッセン及び天意和ゴールドが通常使用権者に該当しないとした判断の誤り)について〔原告の主張〕A商標法53条1項の趣旨についてア本件審決は,ニッセン及び天意和ゴールドが商品の販売において原告の商品(以下「原告商品」という。)との誤認混同行為を行っていることを認めながら,ニッセン及び天意和ゴールドは,日本全国に少なからず存在するであろう小売業者の一つといえる者であり,本件商標に係る商標権の通常使用権者とは認められないと判断した。
イ商標法51条は,商標権者自らが故意により類似商標等の使用を行い,その結果他人の業務に係る商品等と混同を生じさせたときは,商標権者としての商標の4正当使用義務に違反するのみならず,他人の権利を侵害し,一般公衆の利益を害するものであるから,何人もその商標登録を審判により取り消し得ることとし,商標権を不法に行使する者に対して制裁を課すとともに,第三者の権利及び一般公衆の利益を保護しようとしたものである(最高裁昭和58年(行ツ)第31号同61年4月22日第三小法廷判決・裁判集民事147号587頁参照)。
ウしかるところ,被告は,本件使用商品の製造販売を全く行うことなく,本件商標の使用許諾によって収入を得ており,自己の信用とは関係なく原告商品の信用にただ乗りし,原告による商標の権利行使を妨害しているものである。
このような実情からすると,本件商標の使用許諾は公衆を欺瞞するものであり,本件商標に係る商標権は,商標法53条1項あるいは同法51条1項の適用を受けるべきものである。
実際,インターネット検索において,引用商標「ヴァージンピンク」や「バージンピンク」を検索すると,本件商標を付した商品も複数検索されるが,その中には,「前から気になっているシミとかは余計に目立つような気がします。」「バージンピンクは効果はないですよ」などという書き込みがされており(甲45),劣悪な商品が混入することにより,原告商品の信用が毀損されている。
A本件審決における証拠判断は社会通念に反することについてア本件審決は,ニッセンの販売に係る商品はさくら薬品株式会社(以下「さくら薬品」という。)からの提案により採用した商品であり,同社が商標権者より許諾を受けて使用しているので,原告の商標権を侵害するものではないとのニッセンの回答(以下「ニッセン回答」という。甲7-1-1及び2)から,ニッセンは,さくら薬品から本件使用商品の仕入れをし,これを単に販売したにすぎないとする。
しかしながら,ニッセン回答には,通常使用権者でなければ知り得ない事項である商標権者(被告)の名前と本件商標の登録番号まで明記してあり,ニッセン回答から,ニッセンを単なる販売業者にすぎないとする本件審決の証拠判断は,証拠法則にも,社会通念にも反するものである。
5また,ニッセン回答においては,さくら薬品は,本件使用商品の販売に関する提案者とされ,同商品の仕入先については,「弊社仕入先」と記載するのみで,これを明らかにしていない。被告の主張を前提とすると,さくら薬品は本件商標に係る商標権の通常使用権者であり,本件使用商品を製造してニッセンに卸している製造卸売業者ということになるが,本件使用商品にはさくら薬品の名は全く表示されていない。登録商標を付した商品を卸して販売業者の名において販売させる場合,その販売業者に登録商標の使用許諾を与えないことはあり得ない。
まして,本件審決が,「ニッセンは,法的に問題のある商品については一切取り扱わない方針である」との記載から,ニッセンは違法行為をすることはないと判断したことは,明らかに常識に反するものである。しかも,さくら薬品は,平成15年10月8日に資本金100万円で設立され,その後本店の所在地を数回移転したのみならず,設立当初の役員6名のうち,代表取締役を含む4名が辞任するなど,到底,信用のおける会社ではない。ニッセン回答は,「18年間販売の事実につきましても,弊社仕入先より確約をいただいております。」とするが,ニッセン回答の当時,さくら薬品は設立後5年しか経過しておらず,18年間の販売実績があるとする余地はなく,回答内容が虚偽であることも明らかである。
この点につき,被告は,株式会社リバティー(以下「リバティー社」という。)の販売実績を含めて回答したものであると主張するが,18年間の販売実績とは,平成2年からの実績を意味するところ,リバティー社が株式会社エムツウプロダクツ(以下「エムツウ社」という。)から原告商品の販売代理店としての地位を引き継いだのは,平成3年(甲29)であるから,リバティー社の販売実績のみでは足りないものである。18年間の販売実績とは,原告商品の販売実績と一致するものであり,ニッセンにおける本件使用商品の宣伝文句は,原告商品の販売実績にただ乗りし,原告商品と誤認混同を生じさせる意図を有しているものである。
イ本件審決は,天意和ゴールドによる誤認混同行為についても,同社は本件使用商品の製造委託を受けた太陽製薬から商品を受け取り,単に販売のみを行ってい6たものと推認されるとした。
しかしながら,太陽製薬の回答(以下「太陽製薬回答」という。甲7-2-1及び2)は,本件使用商品については,本件商標をカタカナ書き(ヴァージン&ピンク)にした登録第4224557号商標(被告が商標権者である。以下,「本件カタカナ商標」という。甲2-2-1及び2)を有するという株式会社日本薬粧(以下「日本薬粧」という。)の依頼により製造し,同社にのみ全品販売している,日本薬粧の依頼により天意和ゴールドに商品を直送したことがあるが,商標に関しては商標権者と話し合ってほしい,日本薬粧は破産手続に入っているなどと,原告を嘲笑するような内容である。
しかも,被告は,本件カタカナ商標を付した商品を,10年間にわたり,天意和ゴールドに出荷している旨の太陽製薬回答(乙3)や,平成11年10月から現在に至るまで,本件使用商品を販売しているが,その間,原告商品との誤注文を受けたことがなく,原告商品を取り扱ったこともない旨の天意和ゴールド作成の証明書(乙2)を,それぞれ書証として提出しているから,被告と天意和ゴールドとの間には,何らかの関係が存すること,すなわち天意和ゴールドが被告の通常使用権者であることは明らかである。
なお,以上の各回答書の内容は明らかに虚偽であるが,その記載内容からしても,太陽製薬回答の内容は虚偽であって,天意和ゴールドが本件使用商品販売システムの中核を担っているものと推測される。 A小括以上からすると,ニッセン及び天意和ゴールドは,いずれも本件商標に係る商標権の通常使用権者であるというべきである。
〔被告の主張〕A商標法53条1項の趣旨についてニッセン及び天意和ゴールドは,本件使用商品を仕入れ,カタログ販売するいわゆる通販小売業者にすぎず,本件商標に係る商標権の通常使用権者ではない。
7したがって,商標法53条1項が適用される前提を欠くものである。
なお,原告は,同法51条についても主張するが,本件において,同条適用の余地はない。
A本件審決における証拠判断は社会通念に反することについてこの点に関する本件審決の事実認定及び証拠判断は,以下のとおり,何ら社会通念に反するものではない。
アニッセン回答に,本件商標の商標権者である被告と登録番号が明記されたのは,通販業者であるニッセンが,商品を仕入れて小売するに当たり,提案者のさくら薬品から商標権者等の情報を入手したからにすぎない。したがって,これらの情報が記載されているからといって,通常使用権者であると認めることはできない。
イ原告は,さくら薬品の役員の減少等を根拠に,同社が信用の置ける会社ではないなどと主張するが,役員数と会社の信用とは無関係であって,原告の主張こそ,むしろ社会通念に反するものである。
ウ原告について,引用商標の使用実績(原告商品の販売実績)が認められない以上,ニッセンや天意和ゴールドの「18年間のロングセラー」等のキャッチコピーが,原告の信用にただ乗りする意図を有するものではないことは明らかである。
なお,原告が指摘する,ニッセン回答における「18年間の販売実績」なる表現は,リバティー社による販売実績を含む趣旨のものと思われる。
エ原告は,天井和ゴールドの証明書(乙2)や太陽製薬の回答書(乙3)が被告から書証として提出されていることから,天意和ゴールドが通常使用権者であるなどと主張する。
しかしながら,被告は,これら各文書を,通常使用権者であるさくら薬品を介して小売業者である天意和ゴールドから入手したにすぎず,これらをもって天意和ゴールドが通常使用権者であるといえないことは明らかである。
A小括以上からすると,ニッセン及び天意和ゴールドが本件商標に係る商標権の通常8使用権者とは認められないとした本件審決の判断は正当である。
2取消事由2(引用商標が原告の周知商標でないとした判断の誤り)について〔原告の主張〕A原告における引用商標使用の経緯原告は,昭和62年2月ころ,引用商標を発案し,美肌を保持する化粧用ジェルである原告商品に使用した。
引用商標を付した原告商品は,けがれを知らぬ処女の桃色の肌をイメージして,爆発的な人気を得た。
原告商品は,エムツウ社やリバティー社などの販売代理店を通じて大々的に販売され,取引者及び需要者の間において,引用商標は,原告の周知商標として認識されるに至った。
A本件審決の認定判断の是非ア本件審決は,原告が,エムツウ社及びリバティー社が原告の販売代理店であった事実を示す証拠として提出した女性週刊誌の広告(甲8〜27)は,不鮮明であるなどとして,引用商標の著名性を立証する証拠として採用できないとする。
しかしながら,十数年以上の年月を経過した縮小コピーではあるものの,同各証拠には,雑誌名や発行日等が明確に記載され,不鮮明ではあるものの,引用商標が判読できるのであるから,証拠能力を否定することは相当ではない。
この宣伝広告活動は,エムツウ社及びリバティー社が,原告の販売代理店として,原告の責任において製造した原告商品を販売するに当たり,原告の検閲を受け,その管理下において,原告のために行ったものであり,その宣伝広告費についても奨励費として原告から支払われた補助金によって補填されている。
また,これら雑誌広告類に加え,リバティー社が原告の販売代理店として利用していた当時の容器表示印刷の版下(以下,総称して「本件版下」という。甲33〜甲34の3)も存在しており,同社が原告の販売代理店であったことは明らかである。
9当時,原告の販売代理店として,原告商品を販売していたのは,エムツウ社やリバティー社だけではなく,有限会社A化学(以下「A化学」という。)を始めとする多数の小売業者等もそれぞれ独自の宣伝広告を行って販売しており,原告商品を開発し,その製造を行っているのが原告であることは,業界で知らぬ者はなかったのである。
イ本件審決は,株式会社ベルトゥリー・エンタープライズ(以下「エンタープライズ社」という。)が原告の販売代理店であることを認めるに足りる証拠はないとするが,当該事実は,同社作成の証明書(甲44)から明らかである。
ウそのほか,本件審決は,化粧品製造品目追加許可申請書及び許可書(甲3-1〜甲3-3)によっては,原告商品が,原告により開発されたものであることの証明にはならないとするが,これらの事実は原告代表者の報告書(甲28)からも明らかであるし,被告も,原告商品が原告により開発されたことについては争わないのであるから,本件審決の認定判断は明らかに誤りである。
A小括以上からすると,引用商標は,原告の周知商標として,取引者及び需要者に認識されていたものであるから,ニッセン及び天意和ゴールドが引用商標の周知性ただ乗りしようとしたことは明らかである。
〔被告の主張〕A原告の商標としての引用商標の周知性ア原告は,引用商標は原告の周知商標であると主張するが,「ヴァージンピンク」なる商標(引用商標)は,被告が代表者であったリバティー社の周知商標である。
すなわち,エムツウ社は,平成元年6月ころから,引用商標を付した化粧品の販売を開始し,それ以降,週刊誌上に定期的に広告を掲載して宣伝広告活動を行った。
リバティー社も,平成3年2月1日付けで,エムツウ社より引用商標を化粧品について使用する権利を譲り受け(甲29),その後も継続して,引用商標を付した10化粧品を販売すると共に,週刊誌等やテレビを通じて全国的な宣伝広告活動を行った(甲8〜27,乙6〜17)。
このような宣伝広告活動の実績により,引用商標は,むしろリバティー社の業務に係る化粧品を表示するものとして,遅くとも平成6年ころには取引者及び需要者の間に広く認識され,いわゆる周知商標となっていたものである。
イリバティー社は,引用商標の使用実績を根拠に,平成6年,不正競争防止法に基づき,A化学を債務者として,東京地方裁判所に仮処分命令の申立て(東京地方裁判所平成6年(ヨ)第22030号)をした。リバティー社とA化学とは,同事件において,「ヴァージンピンク」なる商標は,リバティー社が使用し,A化学及びその利害関係人(「A」「A商店」「西日本エラン販売」「西日本エラン販売株式会社」及びその他のいかなる呼称を用いる場合も含む。)は,平成8年3月6日以降,化粧品に「ヴァージンピンク」なる商標を使用せず,A化学は,医薬部外品製造承認申請における名称を「ヴァージンピンク」から「バージンビンク」に変更する旨の和解(乙1)をした。これにより,A化学及びその利害関係人は,平成8年3月6日以降,化粧品に「ヴァージンピンク」なる商標を適法に使用する権原を有しないことが確定したものである。原告とA化学とは,密接な関係を有しており,実質的に同一であるというべきであるし,少なくとも,原告は,同和解における利害関係人に該当するものである。したがって,A化学及び原告が,平成8年3月6日以降,化粧品に「ヴァージンピンク」なる商標を使用することはあり得ない。
ウ以上からすると,原告には,「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原がないのであるから,商標法53条1項により保護されるべき信用も,妨害されるとする権利自体も存在しない。
原告による本件審判請求は,むしろ権利の濫用に該当するものというべきである。
A本件審決の認定判断の是非ア雑誌広告(甲8〜27)は,いずれもリバティー社の雑誌広告であり,原告の表示は一切存在しない。したがって,原告提出の各書証によっては,引用商標が11原告の周知著名商標であったことを認定することはできず,出所の混同は生じないとした本件審決の判断は正当である。
イ本件版下にも,原告が製造元であることを示す表示は一切存在せず,原告が引用商標を使用した商品を製造販売した事実を認定できないことは明らかである。
原告が製造元ではない以上,リバティー社やエムツウ社等が原告の販売代理店となることもあり得ない。
A小括以上からすると,引用商標は,原告の周知商標とは認められないとした本件審決の認定判断は相当である。
3取消事由3(本件商標と使用商標2との類否判断の誤り)について〔原告の主張〕A商標の類否判断の基準最高裁判例において,商標の類否に関する判断基準については,「著名性及び類似性のみならず,引用商標の独創性や,取引者及び需要者において普通に払われる注意力をも判断の要素とすべき」ものとされている(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。
A本件審決の類否判断の是非ア称呼及び外観について本件審決は,本件商標を構成する「Virgin」と「Pink」の各語を「&」で並列的に結合することにより,「おとめと桃色」なる意味合いを容易に想起することができるが,これは,観念上判然としないものであるから,構成全体をもって,一体不可分の造語を表したものと認識されるとし,さらに,かかる造語性を根拠として,本件商標は,「ヴァージンアンドピンク」又は「バージンアンドピンク」の一連の称呼のみを生じるとする。
また,同様に,造語である使用商標2の称呼は,「ヴァージンピンク」であるから,両商標の称呼非類似であるとする。
12しかしながら,特許庁の審査基準は,文字部分の一部が異なっていても,特徴的部分が共通していれば類似の商標としており,また,結合商標の一部が特に顕著であれば,その部分のみが用いられても類似の商標であると定めているのであるから,結合商標の中間部に「&」の1文字が加えられたことをもって,非類似であると解することはできない。
「Virgin」と「Pink」とは,それぞれ,6文字と4文字の独立した意味を有する単語で,本件商標の登録以前に,原告の商品に係る「Virgin Pink」の商標(引用商標)が存在する以上,取引者及び需要者は,各単語の間に1文字の記号である「&」が入ったとしても無視するか,気付かないのが通常であり,仮に気付いたとしても,同一の出所表示であると考えるのが通常である。
しかも,特に意味を有さない記号「&」の1文字を,正確に「ア」「ン」「ド」と称呼するとは到底考えられず,短くはない10文字の引用商標に加えて,13文字となる本件商標について,格別なくても意味の通じる「&」が省略されるのはむしろ自然である。
したがって,「ヴァージンアンドピンク」が無理なく一連に称呼され,また,「ヴァージンアンドピンク」の称呼しか生じないという本件審決の判断は,社会通念を無視しているものというほかない。
同様に,特に意味を有さず,無視されがちな記号である「&」1文字が用いられていることによって,外観非類似であるとの判断も,相当ではない。
観念について「Virgin」と「Pink」とが,それぞれ「処女,おとめ」,「桃色,ピンク」の意味を有することは,本件審決も認めており,同一の単語要素から成り立つ本件商標と使用商標2が同一の観念を有することも明らかである。
被告は,本件商標及び使用商標2は,「ヴァージン」あるいは「ピンク」のみから構成されるものではないから,各構成要素にそれぞれ意味があるからといって,両商標はいずれも全体として特定の熟語的意味合いが生じない以上,両商標を観念13上比較すべくもないと主張する。
しかしながら,原告が引用商標を発案した昭和60年代において,引用商標は,「処女の桃色」という印象を与える観念を有することから,当時の厚生省が,商品名として不適切であると評価したため,原告は,約1年間,「エレガンスゼリー」の商品名を用いざるを得なかったものである。
被告は,引用商標2の出願に対する拒絶理由通知について提出された意見書(乙18)において,「ヴァージンピンク」が,格別な意味観念を認識させることのない造語であると主張して登録を受けていることを指摘するが,同意見書は,引用商標2が,商標法3条1項3号(その商品の産地,販売地,品質,原材料……を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標),同法4条1項16号(商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標)に該当するとの指摘に対し,引用商標2から,商品がヴァージンピンク色の品質,原材料等の格別な意味観念を認識させることは有り得ないので,産地,販売地や品質の誤認を招くことはないと主張しているもので,本件における観念の対比とは無関係である。
したがって,使用商標2は,本件商標と同一の観念を有するものというべきである。
ウ原告の商標の独創性について使用商標2は,原告が原告商品に付している引用商標と同一又は類似であるところ,引用商標は,昭和62年2月ころに原告代表者らによって発案された極めて独創性の高いものである。引用商標の対象商品は,美肌を保持する化粧用ジェルであり,けがれを知らぬ処女の桃色の肌をイメージして爆発的な人気を得てきたことからも,高い独創性を有することは明らかである。
A小括以上からすると,本件商標と使用商標2とは,称呼及び観念が類似する商標であり,最高裁判例における商標の類否判断に関する基準を前提としても,類似するものである。
14そして,本件審決は,使用商標2は,引用商標と類似であるとしている。
したがって,使用商標2は,本件商標及び引用商標のいずれにも類似するものであって,本件使用商品に使用商標を付して販売する行為は,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれが生じるものである。
〔被告の主張〕A本件審決の類否判断の是非本件商標と使用商標2は,称呼及び外観のいずれにも顕著な相違があり,観念は比較することができないから,非類似とした本件審決の判断は相当である。
称呼について本件商標から生じる称呼は「ヴァージンアンドピンク」であり,使用商標2から生じる称呼は「ヴァージンピンク」である。
両者の称呼には,「ア」「ン」「ド」の3音の有無という顕著な差があり,混同のおそれなく,明瞭に聴別し得る非類似称呼であることは明らかである。
なお,原告は,「&」の文字は,取引者及び需要者により無視されるか,気付かれることがないから,本件商標は「ヴァージンピンク」との称呼も生じるなどと主張するが,本件商標は,取引者及び需要者の注意を惹く中央部において,「&」マークが明記されている以上,本件商標から生ずる称呼は「ヴァージンアンドピンク」が最も自然であることは明らかである。
外観について本件商標と使用商標2は,取引者及び需要者の注意を惹く中央部において,「&」マークの有無という顕著な差があり,混同のおそれはなく,明確に識別し得る非類似外観であることは明らかである。
観念について本件商標と使用商標2からは,特定の観念を想起することはできない。したがって,観念上の類否は問題とならない。
この点につき,原告は,「ヴァージン」は「処女」の,「ピンク」は「桃色」の15意味を有するから,観念的に同一である旨主張するが,本件商標及び使用商標2とも,「ヴァージン」のみ,あるいは「ピンク」のみから構成されるものではなく,構成要素の個々には意味があるからといって,両商標のいずれからも全体として特定の観念が生じ得ない以上,両商標を観念上比較することはできない。
なお,引用商標2については,出願人であったA化学が,拒絶理由通知に対する意見書(乙18)において,「ヴァージンピンク」は,その全体として,何ら格別な意味観念を認識させることがない造語であると主張して登録を受けているものである。
エ引用商標の独創性について「ヴァージンピンク」なる商標程度のネーミングは,普通一般に見受けられるものにすぎず,なんらの独創性は認められない。「Virgin」を含む商標は,他にも多数登録されているものである。
A小括以上からすると,本件商標と使用商標2とが類似しないとした本件審決の判断は相当である。
4取消事由4(引用商標と使用商標1との類否判断の誤り)について〔原告の主張〕取消事由3(本件商標と使用商標2との類否判断の誤り)において主張したところは,引用商標と使用商標1の類否判断についても当てはまるものであって,引用商標と使用商標1とは類似する。
したがって,使用商標1は,本件商標及び引用商標のいずれにも類似するものであって,本件使用商品に使用商標を付して販売する行為は,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれが生じるものである。
〔被告の主張〕取消事由3において主張したところは,引用商標と使用商標1との類否判断についても当てはまるものであって,引用商標と使用商標1とが類似しないとした本件16審決の判断は相当である。
第4当裁判所の判断1取消事由1(ニッセン及び天意和ゴールドが通常使用権者に該当しないとした判断の誤り)について原告は,ニッセン及び天意和ゴールドが本件商標の通常使用権者であることを前提に,被告の本件商標に係る商標登録の取消しを求めるが,ニッセン及び天意和ゴールドは,いずれも通常使用権者として商標登録原簿に登録されているものではなく,また,本件審判請求の段階から本件訴訟の段階まで,ニッセン及び天意和ゴールドが被告から本件商標の通常使用権を許諾されていたことを直接的に証明する証拠は一切提出されていない。原告にとってみれば,そのような証拠は,仮に存在するとしても,第三者である被告あるいはニッセン及び天意和ゴールドが所持するものであるから,自ら進んで提出する余地はないが,これを踏まえ,原告は,本件においては,ニッセン及び天意和ゴールドの業務形態からしても,また,ニッセン回答及び太陽製薬回答からしても,被告がニッセン及び天意和ゴールドに本件商標の通常使用権を許諾していたことは明らかであると主張する。そこで,原告の主張が本件訴訟において占める意義を理解した上で,以下,原告の主張が採用し得るものであるか否かについて検討することとする。
Aニッセン及び天意和ゴールドの本件使用商品の販売状況アニッセンは,カタログを利用した通信販売業者であるところ,2008年春号カタログ(甲6-1-1及び2),2008年秋号カタログ(甲6-2-1及び2),2009年春号カタログ(甲6-3-1及び2)において,本件使用商品を掲載して販売した。
イ天意和ゴールドは,平成20年9月2日ころ,「いいもの見つけ隊」と題するウェブページで,本件使用商品を掲載して販売した。同ウェブページには,本件使用商品について,「…その人気も偽者が出回るほどの勢いですが,当店で取扱うヴァージンピンクは本物ですのでご安心ください」と記載された(甲6-4,弁論17の全趣旨)。
A本件使用商品の販売に係るニッセン回答及び太陽製薬回答ア原告は,平成20年10月21日付けで,ニッセンに対し,通知書を送付し,本件使用商品の商品名が,原告の有する商標権を侵害するなどと指摘した。
ニッセンは,同年11月10日付けで,原告に対し,回答書(ニッセン回答)を送付した。
ニッセンは,同回答において,ニッセンの販売に係る本件使用商品は,さくら薬品からの提案により採用した商品で,同商品の商品名は登録商標であり,同社が商標権者より許諾を受けて使用しているので,原告の商標権を侵害するものではないこと,カタログにおける,18年間のロングセラーとの記載は,ニッセンで18年間販売しているという意味ではなく,仕入先であるさくら薬品から確約された情報であることなどを回答するとともに,本件商標及び本件カタカナ商標の登録番号,商標権者(被告)などを記載した(甲7-1-1及び2,弁論の全趣旨)。
なお,さくら薬品は,平成15年10月8日に設立された,医薬品及び医薬部外品の製造並びに通信販売及び輸出入等を業とする株式会社である(甲40)。
イまた,太陽製薬は,平成20年11月13日付け及び同月20日付けで,原告の問合せに対し,回答書を送付した(太陽製薬回答)。
太陽製薬は,同回答において,太陽製薬は受託製造会社で,本件使用商品は日本薬粧の依頼により製造した,日本薬粧からは,本件カタカナ商標を有していると説明されており,支給された容器及び箱を用いて充填し,日本薬粧に全品販売した,商標については,直接商標権者と話してほしい,日本薬粧の依頼で,天意和ゴールドへ本件使用商品を直送したことはあるが,同社とは全く面識がなく,どのようなルートで販売しているかは知らないなどと回答した(甲7-2-1及び2)。
A被告のニッセン及び天意和ゴールドに対する通常使用権の許諾の有無アニッセン及び天意和ゴールドの業務形態と通常使用権の必要性ニッセンは,いわゆるカタログ通販業者であるところ,かかる業者は,自主開発18商品を販売することもあるものの,仕入れた商品をカタログに掲載し,販売することが一般的であるから,本件使用商品をさくら薬品から仕入れ,販売したにすぎないというニッセン回答の内容も,ニッセンの業務形態からすると,不合理というものではない。
同様に,天意和ゴールドは,インターネット通販サイトを運営しているところ,インターネット通販業者においても,仕入れた商品をウェブサイトに掲載し,販売することが一般的であるから,天意和ゴールドのウェブサイトにおける,「当店で『取扱う』ヴァージンピンク」との説明文言,日本薬粧の依頼により太陽製薬が製造し,天意和ゴールドに直送したとの太陽製薬回答,天意和ゴールドの業務形態を前提とすると,天意和ゴールドが日本薬粧などから本件使用商品を仕入れ,販売していたものと推測することが自然である。
したがって,ニッセン及び天意和ゴールドが本件使用商品を販売するに当たって,自ら進んで被告から本件商標の通常使用権の許諾を受ける必要は乏しく,被告とニッセン及び天意和ゴールドとの間には,その許諾に係る契約などは締結されていないものと推認されなくもない。
イニッセン回答及び太陽製薬回答からみた通常使用権の許諾の可能性この点について,原告は,ニッセン回答や太陽製薬回答には,通常使用権者ではないと知り得ない本件商標や本件カタカナ商標の情報が記載されていることや,被告が天意和ゴールド作成の証明書等(乙2,3)を書証として提出したことをもって,ニッセンや天意和ゴールドが本件商標に係る商標権の通常使用権者であると主張する。
しかしながら,ニッセン回答や太陽製薬回答は,本件使用商品の販売が原告の有する商標を侵害するとの原告からの通知に応じて作成されたものであるところ,そのような通知を受けた者としては,取引先等に照会し,必要な情報を入手した上で返答することがむしろ自然であって,本件商標等の情報が記載されていることをもって,通常使用権者であることが裏付けられるものではない。また,被告が天意和19ゴールド作成の証明書等を入手できたことから,被告が天井和ゴールドと直接あるいは間接的な取引関係にある可能性があることは推測されるものの,直ちに天意和ゴールドが本件商標に係る商標権の通常使用権者であると推測することは明らかに飛躍がある。
さらに,原告は,ニッセン回答において,さくら薬品は本件使用商品の仕入先とは明記されていない,販売業者に登録商標の使用許諾を与えないことはあり得ないなどとも主張する。
しかしながら,ニッセン回答は,「「さくら薬品株式会社」(以下「弊社仕入先」といいます)」(甲7-1-1)と記載しており,本件使用商品の仕入先がさくら薬品であることを明記しているし,登録商標を付した商品の販売において,販売業者の仕入先と商標権者との間で適切な権利処理がされていれば,販売業者が通常使用権者となることが必ずしも必要になるというわけでもない。
そのほか,原告は,天意和ゴールドの証明書等(乙2,3)の記載内容からすると,太陽製薬回答は虚偽であり,天意和ゴールドが本件使用商品販売システムの中核に位置し,本件商標に係る商標権の通常使用権者であることは明らかであるとも主張する。
しかしながら,天意和ゴールドの証明書等に照らし,太陽製薬回答の内容が虚偽であるとされる理由や,太陽製薬回答が虚偽であることから,直ちに天意和ゴールドが本件使用商品販売システムの中核に位置するものであり,本件商標に係る商標権の通常使用権者であるものと断定できる根拠については,原告の主張それ自体においても不明である。原告の主張は採用することができない。
ウ原告の販売実績からみたニッセン回答の信用性の有無なお,原告は,ニッセンのカタログや天意和ゴールドのウェブページにおいて,18年間の販売実績として記載されているのは,明らかに虚偽であり,原告商品と混同させる意図を有しているものであるし,仕入先から確約を得たなどと記載しているニッセン回答は虚偽であるとも主張する。
20しかしながら,原告が,原告商品の販売実績や,エムツウ社及びリバティー社が原告の販売代理店であった事実を示す証拠として提出した女性週刊誌の広告(甲8〜27)は,不鮮明で読み取り難いものも含まれているところ,読み取ることができる広告は,いずれも販売元であるエムツウ社及びリバティー社が広告の主体であり,各広告には,同2社の社名のみが表示されているが,原告やその関連会社の社名は一切表示されていない。原告は,この宣伝広告は,原告の検閲や管理下において行なわれたものであり,費用も原告からの補助金により填補されたと主張するが,そのことを裏付けるに足りる的確な証拠はないばかりか,当該広告に原告の表示が一切されておらず,広告対象が原告商品であるか否かも不明であることからすると,原告主張の事実を認めることはできない。
また,エムツウ社及びリバティー社が,本件版下(甲33〜甲34-3)を使用して印刷された容器に充填された商品を販売していた(甲41)としても,同容器にも,販売元であり,広告の主体であるエムツウ社やリバティー社と,製造元であるクー・インターナショナル社とが併記されているだけで,原告の表示は存在しない。
したがって,これらの証拠によっては,原告商品の販売実績を裏付けることはできず,ニッセン回答が虚偽であるものと断定することはできない。
さらに,原告は,「18年間の販売実績」は,平成2年からの実績を意味するところ,リバティー社がエムツウ社の業務を引き継いだのは平成3年であることから,原告商品の販売実績を前提としているとも主張するが,原告商品の販売実績自体,立証されていないこと,リバティー社がエムツウ社の業務を引き継いだのは平成3年2月1日であるところ(甲29),リバティー社がエムツウ社の業務を引き継いでいる以上,エムツウ社における販売実績を通算することも不合理ではないことなどからすると,ニッセンにおける販売実績の記載が原告商品の販売実績を含んでいるものと断定することもできない。
エ以上のほかに,ニッセン及び天意和ゴールドが本件商標に係る商標権の通常21使用権者であることを認めるに足りる的確な証拠は存しない。
オしたがって,本件において,被告とニッセン及び天意和ゴールドとの間に本件商標の通常使用権の許諾に係る契約が締結されていたと仮定した場合に原告が自ら進んで当該契約に係る契約書等を証拠として提出する余地がないことを勘案しても,そもそも被告がニッセン及び天意和ゴールドに対して本件商標の通常使用権を許諾していたと認めることはできず,原告の主張を採用することはできない。
A小括以上の検討結果によれば,ニッセン及び天意和ゴールドが本件商標に係る商標権の通常使用権者であると認めることができないとした本件審決の認定判断は,これを是認し得ることが明らかである。
2取消事由2(引用商標が原告の周知商標でないとした判断の誤り)について取消事由1についての判断で説示したとおり,ニッセン及び天意和ゴールドが本件商標に係る商標権の通常使用権者であると認めることはできないが,事案にかんがみ,取消事由2についても進んで判断することとする。
A原告の商標としての引用商標の周知性原告は,引用商標は原告の商標として周知であり,引用商標と類似する使用商標の使用は,商標法53条1項の定める「他人の業務に係る商品と混同を生ずるもの」をしたものというべきであると主張する。そこで,引用商標が原告の周知商標であるかについてまず検討する。
ア雑誌広告(甲8〜27)について取消事由1について先に指摘したとおり,原告がエムツウ社及びリバティー社が原告の販売代理店であった事実を示す証拠として提出した女性週刊誌の広告(甲8〜27)は,販売元であるエムツウ社及びリバティー社が広告の主体であり,各広告には,同2社の社名のみが表示されているが,原告やその関連会社の社名は一切表示されていない。
原告は,この宣伝広告は,原告の検閲や管理下において行なわれたものであり,22費用も原告からの補助金により填補されたと主張するが,そのことを裏付けるに足りる的確な証拠はないばかりか,当該広告に原告の表示が一切されておらず,広告対象が原告商品であるか否かも不明であることからすると,原告主張の事実を認めることはできない。
イ本件版下(甲33〜甲34の3)について仮に,原告主張のとおり,エムツウ社及びリバティー社が,本件版下を使用して印刷された容器に充填された商品を販売していた(甲41)としても,同容器にも,発売元であり,広告の主体であるエムツウ社やリバティー社と,製造元であるクー・インターナショナル社とが併記されているだけで,原告の表示は存在しない。
したがって,本件版下をもってしても,原告主張の事実を認めることはできない。
ウ新聞広告及び雑誌広告(甲5-1〜甲5-19)について各広告には,商品名として,「ヴァージンピンク」の文字が記載され,また,「Virgin Pink」の文字が印刷された商品容器の写真が表示されており,引用商標が使用されている。もっとも,各広告は,いずれも販売元であるハイテクサービス株式会社(以下「ハイテクサービス社」という。)及びエンタープライズ社が広告の主体であり,各広告には,同2社の社名のみが表示されているが,原告やその関連会社の社名は一切表示されていない。なお,エンタープライズ社の広告には,「テレビ,ラジオでおなじみのベルトゥリーの「薬用ヴァージンピンク」。」などと記載されているもの(甲5-11〜甲5-13)など,当該商品が,広告主体の商品であるかのように記載されているものもあり,また,「当社の商品は,日本で初めて「薬用ヴァージンピンク」を開発・製造したメーカーのものです。」との記載があるものもある(甲5-17及び18)が,開発・製造したメーカーの具体的名称は記載されていない。
したがって,かかる新聞広告及び雑誌広告をもってしても,原告主張の事実を認めることはできない。
エそのほかの証拠について23A証拠(甲37-1〜甲37-4)によると,原告は,平成8年3月18日,厚生大臣より販売名「薬用オレイアホワイトニングエッセンス」で,医薬部外品製造承認を得た化粧品を,現在まで,「ハイテク薬用ヴァージンピンク ホワイトニングエッセンス」として販売しており,平成21年9月17日撮影の同化粧品の外箱には,販売元としてハイテクサービス社が,製造元として原告が,それぞれ表示されている事実が認められる。
もっとも,同化粧品は,クリームである本件化粧品とは形状が異なるのみならず,外箱の形状も明らかに異なること,当該化粧品が,当初から「ヴァージンピンク」を含む名称で販売されていたか否かや,平成21年9月17日現在の外箱を採用した時期も不明であり,同証拠によっても,引用商標が原告の周知商標であることを裏付けるには足りないものである。
Aそのほか,原告は,化粧品関連業者等の証明書(甲42,43)を提出するが,原告の取引先等,化粧品業界に関与する者のごく一部の者が作成した証明書をもって,取引者及び需要者において,引用商標が原告の周知商標であったことを認めるに足りない。
A小括以上からすると,引用商標は,原告の周知商標として取引者及び需要者に認識されていたとまでは認められず,使用商標の使用が「他人の業務に係る商品と混同を生ずる」おそれもまた,認めることはできない。
したがって,引用商標が原告の周知商標であることを前提として,本件商標に係る商標登録を取り消すことを求める原告の請求は理由がない。
3結論以上の次第であるから,本件審決が付言した理由に係る認定判断の誤りをいう原告のその余の取消事由について検討するまでもなく,原告の請求は棄却されるべきものである。
  • この表をプリントする