関連ワード | 識別機能 / 指定役務 / 周知性 / 4条1項11号 / 類似性(類否判断) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 補正 / ドメイン / 無効審判 / 商号 / |
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事件 |
平成
22年
(行ケ)
10052号
審決取消請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2010/07/07 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成22年7月7日判決言渡 平成22年(行ケ)第10052号審決取消請求事件(商標) 口頭弁論終結日平成22年6月14日 判決 原告 X 被告 特許庁長官 指定代理人 小川きみえ 同 野口美代子 同 田村正明 同 豊田純一 主文 1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1請求 特許庁が不服2008?19906号事件について平成21年12月22日 にした審決を取り消す。 第2事案の概要 1本件は,原告が後記2 (1) の商標(以下「本願商標」という。)につき商標登 録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求を したが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた 事案である。 2争点は,下記 (1) の本願商標が下記 (2) の各引用商標との関係で商標法4条1項 11号(類似)に違反するか,等である。 (1) (本願商標) 「MIZUHO.NET」 (標準文字) (指定役務) ・第35類,第37?42類 詳細は別添審決別掲 (1) のとおり (2) 引用商標 ア引用商標1(商標登録第3000902号,特例商標) (商標) ・出 願 日 平成4年9月18日 ・登 録 日平成6年7月29日 ・商標権者東日本旅客鉄道株式会社 (指定役務) 第39類 「旅客車による輸送」 イ引用商標2(商標登録第4451446号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年2月9日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第40類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (2) のとおり ウ引用商標3(商標登録第4457745号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年3月9日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第37類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (3) のとおり エ引用商標4(商標登録第4457746号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年3月9日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第38類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (4) のとおり オ引用商標5(商標登録第4474910号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年5月18日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第39類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (5) のとおり カ引用商標6(商標登録第4474911号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年5月18日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第41類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (6) のとおり キ引用商標7(商標登録第4474912号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年5月18日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第42類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (7) のとおり ク引用商標8(商標登録第4478383号) (商標) (標準文字) ・出 願 日平成11年12月16日 「MIZUHO」 ・登 録 日平成13年6月1日 ・商標権者株式会社みずほフィナンシ (指定役務) 第35類 ャルグループ 詳細は別添審決別掲 (8) のとおり 3争点は,本願商標が前記各引用商標に類似し,その商標登録が商標法4条1 項11号に違反するか等である。 第3当事者の主張 1請求原因 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,平成13年1月11日になした原出願(商願2001?6532 号)からの商標法10条1項に基づく分割出願として,平成18年5月29 日,本件商標出願(商願2006?49270号)をし,平成18年12月 26日に第38類・第39類に属する指定役務を変更する手続補正をし,そ の指定役務は別添審決別掲 (1) のとおりのものとなったが,平成20年6月9 日に特許庁から拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は上記請求を不服2008?19906号事件として審理した上,平 成21年12月22日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし, その謄本は平成22年1月16日原告に送達された。 (2) 審決の内容 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商 標は前記各引用商標と類似し,その指定役務も引用商標の指定役務と同一又 は類似の役務を包含するから商標法4条1項11号(類似)に違反する,と いうものである。 (3) 審決の取消事由 しかしながら,審決には次のとおりの誤りがあるから,違法として取り消 されるべきである。 ア本願商標の観念認定の誤り(取消事由1) 本願商標はアルファベットの標準文字で「MIZUHO.NET」を横 書きして表したものであるところ,「MIZUHO.NET」がその全体と してインターネットのドメイン名を表す表示と捉えることができ,また「. NET」の部分はインターネットのドメイン名の命名法則の1つである分 野別トップレベルドメイン(gTLD, generic Top Level Domain )の1つ であり,出所識別機能を有しないから,「.NET」の部分の前の部分の表 示「MIZUHO」も含めることで初めて出所識別機能を有するものであ る。 なお,「.」(ピリオド)の部分は,本願商標を「MIZUHO」と「NE T」に視覚上分離する機能を果たすのではなく,本願商標をインターネッ トドメイン名としてとらえた場合には,両部分を視覚的に結び付ける機能 を有するものである。 「.NET」の部分からは「ネットワーク」,「インターネット」の観念 が生じるから,本願商標からは,その全体として,「『ミズホネット』,『ミ ズホドットネット』等と呼称される,ネットワークサービスを提供するこ とを目的として,ネットワークサービス事業者がネットワーク上で自らの 識別子として使用するドメイン名,又は,上記事業者が顧客に対し,ネッ トワーク上における顧客の識別子の一部として利用に供するために使用す るドメイン名」の観念が生じる。 しかるに,審決は,本願商標の「.NET」の部分は独立して出所識別 機能を果たさず,「MIZUHO」の部分から「みずみずしい稲の穂」の観 念が生じる旨認定しており,上記認定は誤りである。 イ本願商標の称呼認定の誤り(取消事由2) 前記アのとおり,本願商標は一体のものとして把握したときに初めて出 所識別機能を有するものであって,構成部分の一部を抽出するのは相当で ない一方,本願商標の全体を称呼した場合でも決して冗長になることなく, 一息によどみなく称呼できることからすれば,本願商標の全体から称呼が 生じるものというべきである。 そうすると,本願商標からは「ミズホネット」,「ミズホドットネット」, 「ミズホピリオドネット」の称呼が生じるものというべきである。 しかるに,審決は,「MIZUHO」の部分のみから称呼が生じると認定 しており,上記認定は誤りである。 ウ本願商標と各引用商標が類似するとした判断の誤り(取消事由3) 審決は,前記ア,イの認定を前提に,本願商標と各引用商標とが称呼及 び観念が共通する類似の商標であると判断しており,この判断は誤りであ る。 なお,本願商標に係る類否判断の基礎となる社会状況と「みずほねっと」 の構成を有する原告の商標登録第4246220号の商標(下記のとおり。 以下「別件商標」という。)の無効審判請求における類否判断の基礎となっ た社会状況は大きく異ならないから,本願商標も別件商標と同様に登録さ れるべきものである。 記 (商標) (標準文字) ・出 願 日平成9年5月26日 「みずほねっと」 ・登 録 日平成11年3月5日 ・商標権者X(原告) (指定役務) 第35類「広告,商品の販売に関する情報の提供」 第38類「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」 エ憲法29条違反(取消事由4) 本願商標と類似する別件商標の指定役務「電子計算機端末による通信ネ ットワークへの接続の提供」(第38類)は本願商標の指定役務に含まれる ので,審決が取り消されない場合,原告が別件商標を使用するに当たり, 「みずほ」,「MIZUHO」の文字を含む標章を使用するときは,商標法 違反となるおそれがあり,その結果別件商標の使用が困難になる。すなわ ち,原告がドメイン名「MIZUHO.NET」を使用することが困難に なるおそれがあり,別件商標に係る権利が実質的に失われてしまうことに なる。 したがって,審決の認定判断は憲法29条によって保障される原告の別 件商標に係る権利を害するもので,同条に反し違法である。 オ憲法14条1項違反(取消事由5) 審決は,株式会社みずほフィナンシャルグループの商標権を守るために 特許庁がしたものであって,社会的身分によってした経済的差別であり, 憲法14条に反する違法なものである。 2請求原因に対する認否 請求原因 (1) , (2) は認めるが,同 (3) は争う。 3被告の反論 審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の各取消事由はいずれも理由がない。 (1) 取消事由1に対し 本願商標の「MIZUHO」の文字と「NET」の文字との間には「.」(ピ リオド)が存在するから,「MIZUHO」の文字と「NET」の文字とは視 覚的に分離して看取されるものである。 また,本願商標のうち「MIZUHO」の部分は,「みずみずしい稲の穂」 を意味する「瑞穂」のアルファベットによる表記である一方,「NET」の部 分はインターネットの略称「net」の大文字による表記あるいは分野別ト ップレベルドメインの一つであるし,インターネットの普及に伴い,「情報の 提供」等のサービスをインターネット等の電気通信網を通じて提供すること が一般的になってきており,「NET」の文字はその際に事業者のアドレスの 一部として普通に使用されるようになっているものである。したがって,本 願商標の「NET」ないし「.NET」の部分は,その指定役務の大部分を 占める「情報の提供」との関係で,情報がインターネット等の電気通信網を 通じて提供されるという,役務提供の手段を示すものにすぎず,独立して自 他役務出所識別標識として認識されることはない。 そして,本願商標の全体から特定の観念が生じることはない。 そうすると,本願商標は必ずしも一体不可分のものとしてのみ認識される ものではないし,「MIZUHO」の部分が本願商標の指定役務との関係で自 他役務識別機能を果たし得ない特段の事情はない。 したがって,本願商標は,その「MIZUHO」の部分から「みずみずし い稲の穂」の観念を生じる。 よって,審決の本願商標から生じる観念の認定に誤りはない。 (2) 取消事由2に対し 前記のとおり,本願商標は必ずしも一体不可分のものとしてのみ認識され るものではないし,「MIZUHO」の部分が本願商標の指定役務との関係で 自他役務識別機能を果たし得ない特段の事情はなく,「MIZUHO」の部分 を要部ととらえることができるのであって,「ミズホ」の称呼を生じる。 したがって,審決の本願商標から生じる称呼の認定に誤りはない。 (3) 取消事由3に対し 前記 (1) ,(2) のとおり,審決の本願商標から生じる観念及び称呼の認定に誤 りはないから,上記認定に基づいてされた本願商標と各引用商標の類否判断 に誤りはない。 本願商標と各引用商標とは,全体ではその外観が異なるが,本願商標は引 用商標2ないし8と「MIZUHO」の部分を有する点で外観が共通する。 本願商標と各引用商標とは,「みずみずしい稲の穂」の観念を生じる点で共 通し,「ミズホ」の称呼を生じる点で共通する。 それゆえ,本願商標と引用商標2ないし8とは,本願商標にとっては要部 である「MIZUHO」の部分を有する点で外観が共通し,当該商標から生 じる観念及び称呼が共通する。一方,本願商標と引用商標1とは,外観が異 なるものの,当該商標から生じる観念及び称呼が共通するから,本願商標と 各引用商標とはそれぞれ類似する。 したがって,本願商標と各引用商標とが類似するとした審決の判断に誤り はない。 なお,別件商標と本願商標とはその構成が異なる上,当該商標を登録すべ きか否かの判断は,個々の商標ごとに個別具体的に判断されるべきものであ るから,別件商標が登録されたからといって,本願商標が当然に登録される べきものとなるわけではない。 (4) 取消事由4に対し 本願商標と別件商標とは,その構成態様が明らかに異なるものであって, 本願商標を登録すべきかの問題と別件商標の使用の制約の有無の問題とは何 ら関連がない。 (5) 取消事由5に対し 当該商標を登録すべきか否かの判断は,個々の商標ごとに個別具体的に判 断されるべきものであるところ,審決は,個別具体的に本願商標と各引用商 標との類否判断を行ったものにすぎないのであって,原告と各引用商標の商 標権者との社会的身分や経済的格差を基準にして上記類否判断をしたもので はない。 第4当裁判所の判断 1請求原因 (1) (特許庁における手続の経緯), (2) (審決の内容)の各事実は, いずれも当事者間に争いがない。 2商標法4条1項11号(登録商標と類似)該当性の有無 原告は,本願商標が各引用商標と類似しないと主張し,類似性に係る特許庁 の認定判断の誤りを主張するので(取消事由1ないし3),以下この点につき検 討する。 (1) 本願商標の内容 ア外観 本願商標はアルファベットの文字である「MIZUHO.NET」を標 準文字で横書きしてなる外観を有するものである。 そして,上記のとおり,本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字 部分と「NET」の文字部分との間には「.」(ピリオド)があるから,両 者の文字部分を視覚的に分離して看取することができるというべきである。 イ観念 上記のとおり,本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部分と「N ET」の文字部分とを視覚的に分離して看取することができるところ,弁 論の全趣旨によれば,審決がされた平成21年12月22日当時,引用商 標2ないし8が,その各指定役務に関し,株式会社みずほフィナンシャル グループ(以下「みずほフィナンシャルグループ」という。)の業務に係る 役務を示すものとして,取引者及び需要者の間で広く認識されていたこと が認められる。 そうすると,本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部分は,取 引者及び需要者に対し,みずほフィナンシャルグループに関係するものと いう強い印象を与えるものというべきである。 一方,?一般に,インターネット(the Internet)が「ne t」(ネット)と略称されることがあること,?「.net」の表記は,イ ンターネットのドメイン名の命名法則の1つである分野別トップレベルド メイン(gTLD, generic Top Level Domain )の1つとして,世界中で普 遍的に使用されていること(なお,ドメイン名のうち,ピリオドで区切ら れたアルファベットの文字(ラベル)の中では,大文字と小文字は区別さ れない。),?インターネットの普及に伴い,「情報の提供」等のサービスを インターネット等の電気通信網を通じて提供することが一般的になってき ており「NET」の文字はその際に事業者のアドレスの一部として普通に 使用されるようになっていること(甲4,5,乙3,弁論の全趣旨)に鑑 みると,本願商標の構成のうち「.NET」ないし「NET」の文字部分 は,上記分野別トップレベルドメイン「.net」の全部又は一部を大文 字で表記したもの,あるいは各種「情報の提供」等のサービスをインター ネット等の電気通信網を通じて提供することを示す表示として,本願商標 の指定役務である第35類「広告及びこれに関する情報の提供」等の取引 者及び需要者に認識されるものということができる。 そうすると,本願商標の構成のうち「.NET」ないし「NET」の文 字部分は,他の部分と独立して役務の出所識別機能を果たすものではなく, 「MIZUHO」の文字部分が強く支配的な印象を与えるもので,本願商 標の要部をなすものというべきである。したがって,「MIZUHO」の文 字部分に接した「広告及びこれに関する情報の提供」等の取引者及び需要 者は,これが「みずみずしい稲の穂」の意である「瑞穂」(広辞苑(第6版), 甲3)のローマ字表記であると連想するものと認められるから,本願商標 からは「みずみずしい稲の穂」の観念が生じるというべきである。 ウ称呼 前記ア,イのとおり,本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部 分と「NET」の文字部分とを視覚的に分離して看取することができるこ と,本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部分が強く支配的な印 象を与え,本願商標の要部をなし,本願商標から「みずみずしい稲の穂」 の観念が生じることからすれば,本願商標からは「ミズホ」の称呼が生じ るものと認められる。 (2) 原告の主張に対する判断 ア取消事由1(観念認定の誤り)について 原告は,本願商標「MIZUHO.NET」はインターネットのドメイ ン名を表す表示と捉えることができ,「.NET」の部分は出所識別機能を 有しないから,「.NET」の部分の前の部分の表示「MIZUHO」も含 めることで初めて出所識別機能を有するものであるし,「.NET」の部分 からは「ネットワーク」,「インターネット」の観念が生じるから,本願商 標からは,その全体として,「『ミズホネット』,『ミズホドットネット』等 と呼称される,ネットワークサービスを提供することを目的としてネット ワークサービス事業者がネットワーク上で自らの識別子として使用するド メイン名,又は,上記事業者が顧客に対し,ネットワーク上における顧客 の識別子の一部として利用に供するために使用するドメイン名」の観念が 生じる旨等主張する。 しかし,前記のとおり,本願商標の構成のうち「.NET」ないし「N ET」の文字部分が,他の部分と独立して役務の出所識別機能を果たすも のではないとしても,本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部分 と「NET」の文字部分とを視覚的に分離して看取することができるし, 引用商標2ないし8の有する周知性のため本願商標の構成のうち「MIZ UHO」の文字部分が強く支配的な印象を与え本願商標の要部であること からすると,本願商標に接した第35類「広告及びこれに関する情報の提 供」等の取引者及び需要者のうち大多数の者においては,引用商標2ない し8の商標権者の商号の命名の基礎となった「みずみずしい稲の穂」の意 味を有する「瑞穂」を連想するものというべきであって,上記取引者及び 需要者において原告主張に係る「『ミズホネット』,『ミズホドットネット』 等と呼称される,ネットワークサービスを提供することを目的としてネッ トワークサービス事業者がネットワーク上で自らの識別子として使用する ドメイン名,又は,上記事業者が顧客に対し,ネットワーク上における顧 客の識別子の一部として利用に供するために使用するドメイン名」の観念 を想起する蓋然性は極めて小さいものというべきである。 そうすると,本願商標から生じる観念に係る審決の認定に誤りがあると いうことはできず,原告の上記主張は採用することができない。 イ取消事由2(称呼認定の誤り)について 原告は,本願商標は一体のものとして把握したときに初めて出所識別機 能を有するものであって,構成部分の一部を抽出するのは相当でないとす る一方,本願商標の全体を称呼した場合でも決して冗長になることなく, 一息によどみなく称呼できることからすれば,本願商標の全体から称呼が 生じるというべきであって,本願商標からは「ミズホネット」,「ミズホド ットネット」,「ミズホピリオドネット」の称呼が生じる旨等主張する。 しかし,本願商標の全体を称呼した場合でも決して冗長になることはな く,一息によどみなく称呼することが可能であるとしても,前記のとおり, 本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部分と「NET」の文字部 分とを視覚的に分離して看取することができること,引用商標2ないし8 の有する周知性のため本願商標の構成のうち「MIZUHO」の文字部分 が,強く支配的な印象を与え本願商標の要部であること,本願商標から「み ずみずしい稲の穂」の観念が生じることからすると,本願商標はその全体 からのみ称呼が生じるといわなければならないわけではなく,前記のとお りその要部から「ミズホ」の称呼が生じるというべきである。 なお,仮に本願商標から「ミズホネット」,「ミズホドットネット」,「ミ ズホピリオドネット」の称呼が生じるとしても,「ミズホ」の部分で後記の とおりの引用商標2ないし8から生じる称呼と共通し,かつ「ネット」,「ド ットネット」,「ピリオドネット」の称呼の一部は本願商標の要部から生じ る称呼に比して相対的に小さい意義しか有しないものであるから,本願商 標から生じる称呼と引用商標2ないし8から生じる称呼とは少なくとも類 似するものである。 したがって,本願商標から生じる称呼に係る審決の認定に誤りがあると いうことはできず,原告の上記主張は採用することができない。 ウ取消事由3(類似するとした判断の誤り)について (ア ) 各引用商標の内容 a引用商標1 引用商標1は,ひらがなで「みずほ」の文字を横書きしてなる外 観を有するもので,その指定役務たる「旅客車による輸送」の取引 者及び需要者において「みずみずしい稲の穂」の意の「瑞穂」をひ らがな書きしたものと認識されるものであるから,引用商標1から は上記「みずみずしい稲の穂」の観念を生じることが認められる。 また,引用商標1から「ミズホ」の称呼が生じることは明らかで ある。 b引用商標2ないし8 引用商標2ないし8は,いずれもアルファベットの大文字である 「MIZUHO」を標準文字で横書きしてなるもので,その指定役 務の取引者及び需要者において,「みずみずしい稲の穂」の意の「瑞 穂」をアルファベットで記したものと認識されるから,引用商標2 ないし8からはいずれも上記「みずみずしい稲の穂」の観念を生じ ることが認められる。 また,前記のとおり,審決がされた平成21年12月22日当時, 引用商標2ないし8が,その各指定役務に関し,みずほフィナンシ ャルグループの業務に係る役務を示すものとして,取引者及び需要 者の間で広く認識されていたものであるから,みずほフィナンシャ ルグループの業務に係る役務との観念を生じることが認められる。 そして,引用商標2ないし8の文字の内容及び上記のとおりの観 念が生じることに鑑みると,引用商標2ないし8からは「ミズホ」 の称呼が生じることが認められる。 (イ ) 本願商標と各引用商標との類否について 事案に鑑み,本願商標と引用商標2ないし8との類否について判断す る。 a上記 (ア )によれば,本願商標と引用商標2ないし8は,その外観が 全体としては異なるものの,いずれも標準文字で横書きした「MIZ UHO」の文字をその構成中に有する点で共通するから,本願商標と 引用商標2ないし8とは,その外観において一定程度類似する点があ るということができる。 また,本願商標と引用商標2ないし8は,いずれも「みずみずし い稲の穂」の観念を生じる点で共通し,いずれも「ミズホ」の称呼 を生じる点で共通する。 そうすると,本願商標と引用商標2ないし8とは,その外観に一 定程度類似する点があり,生じる観念及び称呼が共通するから,類 似するものというべきである。 bそして,本願商標の指定役務のうち「広告」,「経営の診断及び指導」, 「市場調査」,「商品の販売に関する情報の提供」,「ホテルの事業の管 理」(第35類)は引用商標8の指定役務と共通であり,また本願商 標の指定役務のうち「移動体電話による通信」,「電子計算機端末によ る通信」,「電報による通信」,「電話による通信」,「ファクシミリによ る通信」,「無線呼出し」(第38類)は引用商標4の指定役務と共通 である。また,?本願商標の指定役務のうち第35類に属する各種の 情報の提供は,広告や事業経営等に関する情報を提供するもので,引 用商標8の指定役務と類似すること,?本願商標の指定役務のうち第 37類に属する各種の情報の提供は,各種工事等に関する情報を提供 するもので,引用商標3の指定役務と類似すること,?本願商標の指 定役務のうち第38類に属する各種の情報の提供は,通信に関する情 報を提供するもので,引用商標4の指定役務と類似すること,?本願 商標の指定役務のうち第39類に属する各種の情報の提供は,各種の 輸送等に関する情報を提供するもので,引用商標5の指定役務と類似 すること,?本願商標の指定役務のうち第40類に属する各種の情報 の提供は,布地の加工等に関する情報を提供するもので,引用商標2 の指定役務と類似すること,?本願商標の指定役務のうち第41類に 属する各種の情報の提供は,技能の教授等に関する情報を提供するも ので,引用商標6の指定役務と類似すること,?本願商標の指定役務 のうち第42類に属する各種の情報の提供は,宿泊施設の提供等に関 する情報を提供するもので,引用商標7の指定役務と類似することが それぞれ明らかである。 そうすると,本願商標の指定役務と引用商標2ないし8の指定役 務とは,少なくとも一部が同一又は類似であるということができる。 cしたがって,本願商標が引用商標2ないし8と類似するとした審決 の判断に誤りはなく,本願商標は先願登録商標である引用商標2ない し8と類似し,商標法4条1項11号に違反するというべきである。 dなお,本願商標と引用商標2ないし8について上記のとおり判断す る以上,本願商標と引用商標1の類否について判断をする必要はない。 eさらに,原告の別件商標の無効審判請求における商標の類否判断の 基礎となった社会状況,とりわけインターネット等の普及の状況が, 審決がされた平成21年12月22日当時の社会状況とさほど異な るところがなかったとしても,出願された商標を登録すべきものか否 かの判断は,当該商標ごとにされるべきものであって,別件商標が原 告のために登録されたからといって,関連する本願商標が当然に登録 すべきものとなるわけではないから,これに関する原告の主張は採用 することができない。 エその余の主張に対する判断 (ア ) 取消事由4(憲法29条違反)について 原告は,本願商標と類似する別件商標の指定役務「電子計算機端末に よる通信ネットワークへの接続の提供」(第38類)が本願商標の指定 役務に含まれるので,別件商標の使用が商標法違反となるおそれがあり, その結果別件商標の使用,ドメイン名「MIZUHO.NET」の使用 が困難になり,別件商標に係る権利が実質的に失われてしまうことにな る旨等主張する。 しかし,原告の別件商標が登録されたことと,原告主張によればその 少なくとも一部が類似するドメイン名「MIZUHO.NET」を他の 商標権と抵触することなく使用できるかは別の次元の問題であって,原 告の別件商標が登録されたからといって,本願商標が当然に登録される べきものとなるものではない。別件商標の指定役務に電気通信回線網へ の接続サービスの提供等(原告が予定しているインターネットのプロバ イダサービスの提供等はこれに含まれるものと解される。)が含まれて いるとしても,別件商標の全部又は一部と類似するドメイン名を支障な く使用できることまで考慮して上記ドメイン名と同一又は類似する本 願商標を登録すべきか否かを判断すべきであるとまでいうことはでき ない。 そうすると,本願商標の登録を否定した審決の認定判断が原告の別件 商標に係る権利を害するもので,憲法29条に反する旨の原告の主張は 採用することができない。 (イ ) 取消事由5(憲法14条1項違反)について 原告は,審決は,みずほフィナンシャルグループの商標権を守るために, 社会的身分によってした経済的差別であり,憲法14条に反する違法なも のである旨を主張する。しかし,特許庁がみずほフィナンシャルグループ の商標権を守るために,経済的差別を行ったことを認めるに足りる的確な 証拠はなく,原告の上記主張は採用することができない。 4結論 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所 第2部 裁判長裁判官 中野哲弘 裁判官 真辺朋子 裁判官 田邉 実 |