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関連審決 無効2009-890027
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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201421668 審決 商標
平成25行ケ10254審決取消請求事件 判例 商標
不服201028655 審決 商標
不服201320736 審決 商標
不服20151139 審決 商標
関連ワード 識別力 /  包装 /  出所表示機能 /  識別機能 /  指定商品 /  ありふれた名称 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項15号 /  ただ乗り(フリーライド) /  希釈化(ダイリュージョン) /  類似性(類否判断) /  手続違背 /  専用使用権 /  商品の類似 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  補正 /  類似範囲 /  商標権の分割 /  無効審判 /  商号 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10378号 審決取消請求事件
原告 有限会社はせ川製麺所
訴訟代理人弁理士 小林正治 小林正英 甲斐哲平
訴訟復代理人弁護士 五藤昭雄 芦川淳一
被告株式会社福寿園脱退前被告サントリー酒類株式会社引受承継人 サントリー食品株式会社
両名訴訟代理人弁理士 蔵田昌俊 小出俊實 吉田親司 幡 茂良橋本良樹 潮崎 宗脱退前被告 サントリー酒類株式会社
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/09/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告が求めた判決
特許庁が無効2009-890027号事件について平成21年10月15日にした審決を取り消す。
事案の概要
原告は,登録を受けた下記商標(ただし後記の商標権分割の前のもの。以下「本件商標」という。)について,被告株式会社福寿園(以下「被告福寿園」という。)及びサントリー株式会社(商号変更後の商号 サントリー酒類株式会社,脱退前被告)の請求により,特許庁が本件商標の登録を無効とする審決をしたので,その取消しを求めた。 なお,被告福寿園は,特許庁から後記引用商標の登録を受け,脱退前被告サントリー酒類株式会社(旧商号サントリー株式会社)は,平成16年7月29日,被告福寿園から上記商標につき,缶,ペットボトル,紙容器及び瓶入りの茶飲料についての使用に限って,専用使用権の設定を受けたが,その後,被告引受承継人サントリー食品株式会社に対し,上記専用使用権を譲渡し,平成22年1月22日,この旨の移転登録手続をした。 記 本件商標(登録第5150330号) ・出願 平成19年11月1日 ・登録 平成20年7月11日 (指定商品。ただし,後記の商標権分割の前のもの。) 第30類「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,平成19年11月1日,本件商標につき登録出願をし,平成20年7月11日,特許庁から設定登録を受けた。 被告福寿園及び脱退被告サントリー酒類株式会社(当時の商号はサントリー株式会社)は,平成21年3月31日,特許庁に対し,本件商標をその指定商品に使用するときは,被告福寿園らの商品を示すものとして需要者及び取引者の間で著名になっている引用商標と混同を生ずるおそれがあり,商標法4条1項15号に違反するとの理由で,本件商標の無効審判請求をした。 特許庁は,上記請求につき無効2009-890027号事件として審理した上で,平成21年10月15日,本件商標の登録を無効とする審決をし,その謄本は,同月28日,原告に送達された。 (2) 脱退前被告サントリー酒類株式会社は,平成21年4月1日,その商号を「サントリー株式会社」から現在の商号に変更するとともに,本店所在地を現在の肩書地に移転したが,特許庁に対する必要な届出を怠っていたため,特許庁において脱退被告の商号等の変更の事実を知らないまま,審決に,請求人の表示のうち脱退前被告サントリー酒類株式会社について,旧商号である「サントリー株式会社」と旧本店所在地が記載された。 原告は,脱退前被告サントリー酒類株式会社の旧商号と同一の商号を有し,脱退前被告サントリー酒類株式会社の旧本店所在地と同一の場所に本店を設けている「サントリー株式会社」(旧々商号サントリーホールディングス株式会社,旧商号株式会社サントリーホールディングス。平成20年8月18日に設立された。)と 被 告福寿園を被告として,審決の取消しを求める訴えを提起したが,その後の平成22年6月21日,被告サントリー株式会社をサントリー酒類株式会社に変更する旨の行政事件訴訟法40条2項,15条に基づく当裁判所の許可を得て,上記のとおり本件訴訟の被告が変更された。 そして,被告引受承継人は,本訴提起後の平成22年7月16日,当裁判所の決定により,脱退前被告サントリー酒類株式会社の被告たる地位を引き受け,他方,脱退前被告サントリー酒類株式会社は,平成22年7月26日,本件第4回口頭弁論期日において,原告らの同意を得て本件訴訟から脱退した。 (3) 原告は,平成22年7月14日付けで,本件商標権を,指定商品を第30類「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当但しそばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当を除く」とするものと,指定商品を第30類「そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」とするものに分割する商標出願をし,平成22年7月15日,前者が商標登録第5150330号の1として,後者が同号の2としてそれぞれ登録された。 2 審決の理由 審決の理由の要点は,「本件商標は,その構成中に被告『福寿園』と『サントリー』が緑茶飲料について使用し,取引者又は需要者間に著名な引用商標と同一又は類似の商標を有しているといえる・・・。そして,・・・本件商標の指定商品と被告『福寿園』と『サントリー』が使用している商品『緑茶飲料』とは,密接に関連する類似性の程度の高い商品といえる・・・以上よりすると,本件商標をその指定商品について使用するときは,これに接する取引者,需要者は,周知著名となっている引用商標を連想,想起し,該商品が被告『福寿園』と『サントリー』又は同人らと経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである」というものである。 記 引用商標(登録第4766195号) 「伊右衛門」 (標準文字) ・出願 平成15年9月11日 ・登録 平成16年4月23日 (指定商品) ・第16類「懐紙及びその他の紙類,紙製テーブルナプキン,紙製タオル,紙製手ふき,紙製ハンカチ」 ・第20類「木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,せんす,盆(金属製のものを除く。),」 ・第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,食器類(貴金属製のものを除く。),泡立て器,茶筅,棗,盆(貴金属製のものを除く。),ひしゃく,茶しゃく,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,花瓶(貴金属製のものを除く。),香炉」 ・第30類「茶」 ・第32類「清涼飲料」
原告主張の審決取消事由
1 手続違背(審理不備,取消事由1) 商標権の分割(商標法24条)は無効審判請求に対する商標権保全の一手段であるから,商標権の分割により商標登録の違法事由が解消されなければならない。そうすると,商標権分割の効果は,分割前の商標登録時まで遡及するか,遡及したのと同等に取り扱われなければ無意味である。 また,商標法24条は商標法条約7条に対応するものであるところ,商標法条約7条(1)は,出願の分割につき,「2以上の商品又はサービスを掲げる出願(以下「もとの出願」という。)は・・・分割することができる。分割出願は当該もとの出願の出願日及び優先権がある場合はその利益を維持するものとする。」と規定し,同条(2)は,登録後の商標権の分割につき,同条(1)を準用している。同条(2)が同条(1)を準用しているのは,商標登録が無効とされるのを回避するための趣旨に出たものであって,この趣旨を全うするためには,商標権の分割の効果は,商標登録時まで遡及するか,遡及したのと同等の利益が維持されるものと解さなければならない。 したがって,少なくとも分割前のもともとの登録時に,当該分割された商標(権)がそれぞれ登録されたものと取り扱われるべきである。 そうすると,本件商標権のうち指定商品をそばの麺とするもの(第5150330号の1)と指定商品をその余の商品とするもの(同号の2)のそれぞれについて,各指定商品と「緑茶飲料」の関連性,商品の出所の混同のおそれが各別に審理・判断される必要があるところ,審決は上記各点につき各別に審理・判断することなく,また上記各点につき十分な審理を行っていない。 そうすると,審決には審理不備の違法があり,取り消されるべきである。 2 脱退前被告サントリー酒類株式会社らが使用した結果周知になった商標の認定の誤り(取消事由2) (1) 緑色の竹筒型の背景等と合わせて使用されていることを無視していること 脱退前被告サントリー酒類株式会社及び被告福寿園(以下まとめて「被告ら」ということがある。)は,竹の節目と縦の繊維をあしらった緑色の竹筒型のペットボトル容器を使用し,これを背景として,「京都福寿園/いえもん/○茶 /伊右衛門」と数段にわたって縦書きで白色の文字で抜き文字状に記しており,しかも,上記の文字のうち「京都」の文字(漢字)については,特に赤色の地に上記のとおり白色の文字で記されている。 上記のとおり,「京都福寿園/いえもん/○茶 /伊右衛門」の文字は抜き文字状に記されているから,これに接する看者は緑色の背景と一体のものとして看取することができるものである。 そして,「京都」の文字の地の色である赤色はペットボトル容器の緑色と補色の関係にあるから,緑色の背景の中でワンポイント的に際だって目立っている。 そうすると,被告らが製造販売する商品で使用しているのは引用商標ではなく,「緑色の竹筒型の背景」に,「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶」,「白抜きの漢字の『伊右衛門』」をまとまりよく配し,全体が1つに結合された図形商標(標章。以下「被告ら使用商標」という。)である。 被告らも,自らが製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」が需要者等の間で著名になった理由として,京都の老舗の茶葉の製造業者である被告福寿園の創業者の名前を採用し,従来の同種商品にない特異な名前であって,信頼性及び親近感のあるものを商標としたことのほかに,竹筒型のペットボトル容器を採用して,手作りの質感を持たせたことを挙げているところであるし,審決も甲第8,9,11号証に竹筒型のペットボトル容器が表示されていることを認定している。 また,被告ら使用商標から「緑色の竹筒型の背景」,「『京都』の文字の地色になっている赤色」,「『○茶 』の文字」をそれぞれ除去すると,上記商標(標章)とは全く異なる印象の外観のものになって,別個の商標(標章)になってしまう。 あるいは,さらに被告らが製造販売する緑茶飲料のペットボトル容器からパッケージのフィルム全体を剥がすと,もはや竹筒を印象付けることはできない。そうすると,被告らが製造販売する竹筒型の緑茶飲料のペットボトル容器を看者に印象付けているのは,上記の「緑色の竹筒型の背景」であって,竹筒型のペットボトル容器,「緑色の竹筒型の背景」及び「赤地に白色の『京都』の文字」等と,「白抜きの漢字の『伊右衛門』」とは相互に分かち難く結合しているものである。 また,仮に被告ら使用商標中に引用商標の「伊右衛門」が含まれているとしても,引用商標は標準文字からなるものであり,図形を含む商標や縦書き文字からなる商標はいずれも標準文字の商標としては登録されないから,被告ら使用商標が標準文字からなる商標でないことは明らかである。 したがって,被告らが製造販売する商品で使用しているのは,被告ら使用商標であって,引用商標ではない。 しかるに,審決は,「緑色の竹筒型の背景」を無視して,被告らが製造販売する商品で使用する商標を引用商標であると認定しているが,上記認定は誤りである。 (2) 「緑色の竹筒型の背景」等が用いられている図形商標(標章)を使用していることをもって引用商標を使用しているとはいえないこと 「緑色の竹筒型の背景」に,「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶」,「白抜きの漢字の『伊右衛門』」をまとまりよく配し,全体が1つに結合された図形商標(標章)である被告ら使用商標と,標準文字からなる引用商標とは全く別個のものであって,被告らが前者を使用しているからといって,後者を使用していることにはならない。 被告らは,雑誌や広告の見出し等で「伊右衛門」の文字だけを表示したことがあるが,これは媒体の性格等のために被告ら使用商標を使用することが困難であったからにすぎない。 3 引用商標の周知性の認定の誤り(取消事由3) (1) 被告らが引用商標を使用していないことに基づく誤り 前記のとおり,被告らは自らが製造販売する緑茶飲料に被告ら使用商標を使用し,引用商標を使用していない。 また,標準文字は,図形,色彩等を含まず,特許庁長官が指定する文字で構成されるところ,被告ら及び被告引受承継人サントリー食品株式会社は,文字のみからなる「伊右衛門」商標を使用した証拠を提出しない。 したがって,引用商標が使用されない以上,需要者及び取引者の間で周知されることはありえない。あるいは,被告らが引用商標を使用したことがあったとしても,これが単独で使用されたことはなかったから,取引者及び需要者の間で周知になったのは被告ら使用商標であって,引用商標は周知になってはいなかった。 被告らが製造販売する緑茶飲料が需要者の間で話題になったのは,上記緑茶飲料が京都の老舗の製茶業者である被告福寿園との共同開発であり,上記緑茶飲料の容器のデザインが「竹筒型」であったことがその大きな要因であった。したがって,被告らによる使用の結果周知になった商標は,単なる「伊右衛門」ではなく,「容器が竹筒型のデザインである,京都福寿園の伊右衛門」であったし,「衛」が「エ」と表記される「伊右エ門」でもなかった。しかも,被告らの緑茶飲料のテレビコマーシャルでは,「京都/福寿園/○茶 /伊右衛門」の図柄だけでなく,ほとんどの場合,「キョウトフクジュエンノオチャ イエモン」というナレーションを伴っていたことから,需要者が「イエモン」と聞いたときに想起するものは,「京都/福寿園/○茶/伊右衛門」あるいは「キョウトフクジュエンノオチャ イエモン」の商標であった。 引用商標が被告らの使用によって,被告らが緑茶飲料に使用するものとして,取引者及び需要者の間で広く認識されていたとの審決は誤りである。 (2) 「伊右衛門」はありふれた名前であること 「伊右衛門」はありふれた名前であり,実存する人が多数いるし,「伊右衛門」という名称,屋号の食堂,居酒屋,商店などは日本全国に多数存在する。 「伊右衛門」の前に「緑茶」や「飲み物」或いは「生産者名」を指称する文字(用語)を付加して初めて被告ら使用商標の「京都福寿園のお茶」の「伊右衛門」を想起できる。 したがって,「伊右衛門」のみからなる引用商標が需要者及び取引者の間で広く認識されることになるものではない。 (3) 被告らが商標(標章)を使用する商品・役務を区別しないことに基づく誤り 引用商標の周知性の判断に当たっては,引用商標の「緑茶」,「飲食物の提供」への使用と「緑茶飲料」への使用とを明確に区別しなければならないところ,審決は,被告らの当該商標(標章)の「緑茶」,「飲食物の提供」への使用を加えて引用商標が取引者及び需要者の間で広く認識されるようになった旨認定しており,誤りである。 また,被告らが「飲食物の提供」に関して使用したのは「IYEMON SALON KYOTO」,「京ノ茶寮伊右衛門」であって,引用商標でも前記2の図形商標(標章)でもなかった。 したがって,「緑茶」,「飲食物の提供」に関する商標(標章)の使用に係る審決の認定判断は誤りである。 (4) 販売量が多いからといって直ちに使用している商標が周知になるわけではないこと 被告らが製造販売する緑茶飲料の販売量が多いことや,被告ら使用商標がマスコミに取り上げられることが多かったからといって,被告ら使用商標が直ちに周知になるわけではないし,商品の出所につき直ちに混同のおそれが生ずるわけではない。 4 混同を生ずるおそれの認定の誤り(取消事由4) 前記のとおり,被告らが製造販売する緑茶飲料に使用しているのは被告ら使用商標であって引用商標ではないから,引用商標との関係で,商品の出所の混同のおそれを認定した審決の認定判断は誤りである。 また,以下のとおり,被告ら使用商標と本件商標とは類似せず,被告ら使用商標と引用商標との間で商品の出所の混同を生ずるおそれはない。 (1) 商品の関連性に関する認定判断に誤りがあること ア 「緑茶飲料」と本件商標の指定商品である「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」とは,別々の売り場で別々に販売されるのが通例である。 すなわち,本件商標の指定商品のうち「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば」はいずれも加工を要する食材であって,加工する必要がなく,すぐ飲むことができる「緑茶飲料」と同じ売り場で販売されることはない。 とりわけ,「そばの麺」は,日持ちしにくく,冷蔵を要する商品であって(日配食品,和日配),その売り場が冷蔵ショーケース等のあるスーパー,百貨店等の食品売り場に限られている(なお,スーパーでも,「そばの麺」と「緑茶飲料」とは,カテゴリー別に区分された別々のコーナーで陳列・販売されるのが通常である。)。 他方,被告らが製造販売する「緑茶飲料」は,ペットボトル容器ないし缶に詰めて販売され,常温で保存すれば足り,冷蔵設備がない小売店等でも販売することができる(段ボール箱等に入れたまま,積み上げて販売していることもある。)。 イ 一般消費者は,「そばの麺」を主食品として,調理用の食品として購入するのが通常であるが,「緑茶飲料」は主食品ではなく単にのどが渇いたときに購入する飲料ないし嗜好品であって,両者は購入の目的が異なる商品である。 ウ 「緑茶飲料」と「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」とは,商品の包装の形態も全く異なるし,生産者,加工者から一般消費者に小売りされるまでの販売経路も全く異なる。 例えば「そばの麺」は樹脂製の包装袋やパッケージに封入して販売されるが,「緑茶飲料」はペットボトル容器ないし缶に充填して販売され,その包装の形態が全然異なる。 エ 本件商標の指定商品のうち「そば弁当」も,ペットボトルや缶に充填して提供される「緑茶飲料」とは異なり,賞味期限が短いものであるし,生産者,加工者から一般消費者に小売りされるまでの販売経路も「緑茶飲料」とは全く異なる。「そば弁当」を一般消費者に販売するときに「緑茶飲料」を合わせて販売するのが通常であるとか,「そば弁当」を購入する一般消費者が必ず「緑茶飲料」を購入するとか,「そば弁当」を購入する一般消費者が必ず「緑茶飲料」を飲むという関係にはなく,「そば弁当」と「緑茶飲料」とは格別密接な関係にあるものではないし,「そば弁当」と「緑茶飲料」とは取引形態,消費形態が異なる。 「緑茶飲料」は,「そば弁当」以外の商品であるおにぎりや,幕の内弁当等の各種の弁当,あるいは菓子等の多くの食品を食べるときに同時に飲まれるのが通常であるが,これは「緑茶飲料」が他の飲料と同様に食品を食べやすくするための飲料であるからであって,消費者等には食品とは別の商品と認識されるのが通常である。
「緑茶飲料」が各種の弁当等の食品と密接に関連する商品であるという理由で,上記食品と一緒に飲食されるわけではない。したがって,「緑茶飲料」が「そば弁当」等と一緒に飲食されることがあるからといって,「緑茶飲料」が「そば弁当」と密接に関係する商品になるわけではない。 オ 「茶そば」は,「そばの麺」に「緑茶飲料」が使用されているのではなく,「そばの麺」に「緑茶の粉末」が使用されているにすぎないものであるから,「そばの麺」と「緑茶飲料」との間には関連性がない。 カ なお,仮に当該商標が著名であったとしても,これによって商品の関連性が左右されるものではなく,引用商標の著名性を理由にして「緑茶飲料」と本件商標の指定商品の類似性を決することはできない。 キ しかるに,審決は,本件商標の指定商品と「緑茶飲料」との間では商品の関連性がないにもかかわらず,この結論に反する認定をしており,誤りである。 (2) 商標の類似性に関する判断に誤りがあること ア 本件商標は「そば処/いえもん/伊右エ門/伊右エ門の印影」を縦書きで配置した外観を有するものである一方,被告ら使用商標は「緑色の竹筒型の背景」に,「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶」,「白抜きの漢字の『伊右衛門』」をまとまりよく配し,全体が1つに結合された図形商標(標章)である。 被告ら使用商標の「緑色の竹筒型の背景」は,非常に特徴的かつ印象的なもので,取引者及び需要者の目を引きやすく,取引者及び需要者に被告らが製造販売する緑茶飲料の特徴として記憶されるに至っている。 また,「『京都』の文字の背景となっている赤色の地」も,被告ら使用商標の特徴の1つになっている。 本件商標と被告ら使用商標とは,ひらがな書きの「いえもん」がある点で共通するものの,漢字で記した部分は,本件商標では「伊右衛門」である一方,被告ら使用商標では「伊右エ門」であり,本件商標では上記漢字部分の第3字目を漢字の「衛」と記すのに対し,被告ら使用商標ではかたかな文字の「エ」と記す点が異なり,また,被告ら使用商標には「緑色の竹筒型の背景」,「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの○茶」が配されているのに対し,本件商標にはこれらの要素が存しない点,本件商標には「そば処」の文字があるが被告ら使用商標には上記文字がない点が異なる。 そうすると,本件商標と被告ら使用商標とは,その外観が一見して明らかに異なるものである。 イ 本件商標からは「ソバドコロ」,「ソバドコロイエモン」の称呼が生じるが,被告ら使用商標からは,上記のような称呼は生じず,他方,被告ら使用商標からは「キョウトフクジュエン」,「マルチャ」,「チャマル」の称呼が生じるが,本件商標からはこのような称呼は生じない。 また被告らが製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」のコマーシャルに基づいて取引者及び需要者が発しうる称呼は単なる「イエモン」ではなく「キョウトフクジュエンノオチャイエモン」であるところ,本件商標からはこのような称呼は生じない。 そうすると,本件商標と被告ら使用商標とは,生じる称呼が異なり,類似しない。 ウ 本件商標中には「そば処」の文字部分があるから,本件商標からは「そば麺販売店の店名や製造業者としての『伊右エ門』」,「そば屋の屋号としての『伊右エ門』」,「『伊右エ門』という名称のそば屋」の観念が生じる。 他方,被告ら引用商標からは「福寿園の伊右衛門」や「竹筒」,「京都」,「京都福寿園」,「福寿園」の観念が生じるが,本件商標からはこれらの観念は生じない。 そうすると,本件商標と被告ら引用商標とは,生じる観念が異なる。 エ 以上のとおり,本件商標と被告ら引用商標とは,その外観,称呼,観念が異なるから,両者は類似しない。 (3) 商品の出所の混同を生ずるとの判断に誤りがあること ア 前記のとおり,被告ら使用商標と本件商標とは類似しない上,被告ら使用商標の特徴及び独創性は,緑色の竹筒型のペットボトルのデザインを背景に採用している点,白色の「京都」の文字の地色を赤色とし,白抜きの漢字の「福寿園」とつなげて記している点,白抜きの「○茶 」を配している点,白抜きの漢字の「伊右衛門」を配している点にある。 そして,被告らは,自らが製造販売する緑茶飲料につき,「竹」をモチーフにしたことを前面に出してアピールし,取引者及び需要者においても,「竹」をモチーフにした緑茶飲料が珍しいとの印象を抱いて商品を受け入れたものであった。 したがって,被告ら使用商標の特徴及び独創性は,「伊右衛門」の部分のみにあるのではなく図形全体にある。 しかるに,本件商標には「緑色の竹筒型の背景」等は存しないから,その特徴及び独創性において被告ら使用商標と明らかに異なるのであって,取引者及び需要者において被告ら使用商標が付された商品と本件商標が付された商品との間で出所の混同を生じることはない。 イ 前記のとおり,本件商品の指定商品と緑茶飲料との間には商品の関連性がないし,周知著名であるのは緑茶飲料のみについて使用される被告ら使用商標のみである。 一般に,当該商標が周知著名であるほど,需要者にはその印象が明確に植え付けられるので,需要者は商標の僅かな相違でも識別できるものであるところ,仮に被告ら使用商標が周知著名であったとすれば,前記のとおり本件商標とは相違するから,需要者は被告ら使用商標と本件商標との相違を容易に識別することができる。 ウ 多くの一般消費者は,脱退前被告サントリー酒類株式会社やその関係会社を飲料メーカーとして認識しているし,被告ら使用商標は「緑茶飲料」のブランドとして強く印象付けられているから,被告らないしその関係会社等が「そばの麺」を製造販売しているとは考える可能性は小さい。その上,本件商標と被告ら使用商標は前記のとおり類似しないし,本件商標の指定商品は「緑茶飲料」と密接に関連しているものではないから,「そばの麺」に本件商標が付されたとしても,需要者及び取引者において,「緑茶飲料」を製造販売する被告らないしその関係会社が,わざわざ著名な被告ら使用商標のうちの「伊右衛門」の1字を変えて「伊右エ門」とし,「そばの麺」に本件商標を付して販売している等と考える可能性は小さいものというべきである。すなわち,需要者及び取引者は,「そばの麺」に本件商標が付されたときに,「緑茶飲料」を製造販売する被告ら又は被告らと何らかの関係がある者の業務に係る商品であると認識することはなく,むしろ,被告ら又は被告らと関係がある者の業務に係る商品とは関係がない商品,すなわち被告らとは無関係の者が製造販売する商品であり,被告らが製造販売する「緑茶飲料」とは無関係の商品と認識するのが通常である。 エ 原告は,平成13年ころから,原告代表者の親戚が先祖の名を使用して開業したそば屋「伊右エ門」にそば麺を納品してきており,その後そば麺等に関して「そば処 伊右エ門」の商標(標章)を使用するようになったものであり,被告ら使用商標と本件商標とでは,その由来が異なるものである。 オ 本件商標については,いったん引用商標等を引用して拒絶査定がされ,指定商品の一部を削除する補正のみで登録がされている。また,本件商標につき,特許庁は,これが商標法4条1項15号に違反するとの拒絶理由通知をしなかった。 そうすると,本件商標の審査においては,本件商標は被告ら使用商標や引用商標と類似せず,引用商標は需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っていないと判断され,補正後の指定商品との関係で商品の出所の混同が生じないとの判断がされていたものであった。 カ 以上のとおり,被告ら使用商標と本件商標とでは,その体裁等が異なり,商品の関連性がないのであって,本件商標をその指定商品である「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」に使用したとしても,取引者及び需要者において,商品の出所が被告ら又は被告らと経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所につき混同を生ずるおそれはないというべきである。 原告には引用商標に係る被告らの信用にただ乗りする意図も,引用商標の出所識別力希釈化させる意図も有していないのであって,本件商標の登録は商標法4条1項15号の趣旨に反するものではない。 なお,被告らが緑茶飲料に使用しているのは被告ら使用商標であるが,引用商標と対比するとしても,引用商標はあくまでも標準文字商標であり,その登録に際しては,横書きは認めない,図形を含むものは認めない等の一定の制限が設けられている以上,標準文字商標である引用商標の同一又は類似範囲をむやみに広く考えるべきではない。 キ 原告は,被告らが「緑茶飲料」の販売を開始する前である平成12年から,「そば処 伊右エ門」又は「伊右エ門」の商標(標章)を付した商品を販売してきており,上記商標(標章)は,被告らが「緑茶飲料」の販売を開始したときには,既に山形県及びその隣接県において,日本そば麺,中華そば麺について,原告が製造販売する商品を示すものとして,需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っていた。したがって,前記使用商標が付された被告ら商品「緑茶飲料」が,原告商品よりも後発的に販売されたとしても,少なくとも前記地域においては,被告ら商品と原告商品とは相区別される状態にあり,広義・狭義を問わず出所の混同を生じるおそれはなかった。
取消事由に関する被告らの主張
1 取消事由1(手続違背)に対し 商標権の分割(商標法24条)の効力は遡及しないから,本件商標の指定商品全部との関係で商標登録を無効とするとの判断をした審決に何ら影響を及ぼすものではない。 また仮に商標権の分割の効力が本件商標の登録出願時まで遡及するとしても,引用商標が既に高い周知性を獲得していた事実に変わりはなく,無効事由が解消するわけではない。 2 脱退前被告サントリー酒類株式会社らが使用した結果周知になった商標の認定の誤り(取消事由2)に対し (1) 「商標」とは「商品,役務」について使用される「標章」をいうものであり,「商品,役務」を離れた商標の使用というものはない。 商標が「商品」について使用されるときは,必ず,商品自体か,商品パッケージか,宣伝広告物,その他取引書類等について使用される。 商標が使用される商品,パッケージ等は,必ず具体的な形態,デザイン等を有するものであって,各社は商品形状,包装パッケージの形状,デザイン等に応じ,商標をこれらに調和良くアレンジし,需要者により効果的にアピールするために様々なデザイン的要素を工夫して,魅力的商品として市場に送り出している。 建築資材のように嗜好的要素が絡まない商品については他のデザイン要素等を入れずに登録商標のみが表示されていることがあるかもしれないが,一般大衆の趣味趣向にアピールする商品においては通常はあり得ないことである。すなわち,商標を実際に使用するときは,これが付される商品等との関係で変更して使用されるのが通常で,物理的に同一の商標を使用することはむしろまれである。 ここで,商標の使用とは,これが付されるパッケージ等の商品形態が異なるたびに各別の商標が使用されることになるものではなく,当該商標と外観,観念,称呼が同一であるか,または同一性を保ったまま一体として使用されている限り,いずれも当該商標を使用しているものと評価できる。 商品,商品の包装,パッケージ等において登録商標とともに他のデザイン的要素等が表示されて使用されるのが商標使用の実際であり,それゆえに登録商標以外の文字,図形,デザイン,色彩等が伴っていても,「登録商標」が一体として表示されている以上,「登録商標」の使用を否定すべき理由はない。 例えば,被告らは,容器,パッケージ等の形状,デザイン等に応じ,視覚的にみて調和良く需要者にアピールさせるために商標の表示位置,大きさ,色彩等に様々な工夫を凝らしており,「竹筒型」のペットボトル容器に引用商標を付すのみならず,「竹筒型」以外の形状のボトル容器に引用商標を付したり,「缶」容器に引用商標を付したり,「紙パッケージ」容器に引用商標を付したりしているし,「伊右衛門 新茶」,「伊右衛門 焙じ茶」,「伊右衛門 濃いめ」等の表示を商品に付したり,茶葉の「袋」入りパッケージ上に引用商標を付したりしている。また,新聞,チラシ,テレビコマーシャル等の広告宣伝媒体においては,単に「伊右衛門」の表示又は「イエモン」の称呼で特定されている。 そして,新聞,チラシ,テレビコマーシャル等の広告においては,「竹筒型」のペットボトル容器の商品のみならず,「竹筒型」以外の形状のボトル容器等の商品も同時に掲載等されており,必ず「竹筒型」のペットボトル容器とともに引用商標が表示されていたわけではない。 確かに,「竹筒型」のペットボトルは需要者に好評を博し,「竹筒型」のペットボトルを見ただけでも被告らが製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」を直感するようになっているが,これは引用商標とは別途に著名な商品等表示性を有するに至ったということにすぎない。引用商標は,その「伊右衛門」の文字及び「イエモン」の称呼により,需要者及び取引者に対して高い自他商品識別機能,商品出所表示機能を果たしているのであって,「竹筒型」のペットボトルの商品でなければ,被告らが製造販売する緑茶商品「伊右衛門」を識別できないというものではない。 したがって,原告が主張する被告ら使用商標は,被告らの「引用商標」の「使用態様を示す一例」というべきであって,両者は「登録商標」とその「使用態様を示す一例」の関係にあるし,商標としても,その使用の実態においても同一性を有する商標である。このとおり,被告らが引用商標を指定商品の容器,包装等や広告宣伝物に使用していることは明らかである。 上記のとおりの商標の本質,商標の使用の実際を離れて,被告らが引用商標を商品に使用していないとか,被告らの使用の結果引用商標が周知になっていないとするのは,全く的外れである。 (2) 商標はその外観,称呼,観念を通じて取引者,需要者によって認識されるものであって,商標が著名となったときは,その外観のみならず,その称呼,観念の何れにおいても同時に著名性が備わる。 したがって,商標の識別機能や需要者に対する商標の認識度を,商品の外観形状と結びつけてしか発揮し得ないかのごとく主張する原告の主張は,商標の持つ総合的機能を無視した,極めて平面的,一面的なものである。 (3) 原告が主張する被告ら使用商標の構成要素中,「緑色竹筒型背景」は被告らが製造販売する「緑茶飲料」の商品形態(包装)の一部にすぎないし,「福寿園」は「緑茶飲料」の原料である茶葉を供給する業務提携先としての表示であり,「京都」は被告福寿園本社の所在地としての表示であり,また,「○茶 」等の文字は緑茶飲料の商品内容を簡易に記述するものとして慣用されているものにすぎない。したがって,これらにより引用商標が図形商標となったり,また,使用されている商標と引用商標との間の同一性が左右されたりするものではない。 3 取消事由3(引用商標の周知性の認定の誤り)に対し ありふれた名称であっても,特定人が特定の商品につき広く使用し,宣伝した結果,当該特定人の業務に係る商品を示す商標として強い識別力を有することがあり,人名に由来する商標のうちには周知・著名なものがある。引用商標の「伊右衛門」も,被告らが使用した結果周知・著名になったものであり,これが被告らの業務に係る商品を示すものとして需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っていることは明らかである。 4 取消事由4(混同を生ずるおそれの認定の誤り)に対し (1) 審決は,「緑茶飲料」は「茶菓子」,「弁当」等の飲食物と共に,同一の機会に,同一の場所等で飲食されることが一般的に行われているという日常の経験則に基づき,引用商標の指定商品と本件商標の指定商品とは密接な関連性を有すると認定したもので,何らの誤りはない。 (2) 本件商標の要部は中央に極めて大きく縦書きで記された「伊右エ門」の文字であるところ,上記文字部分と引用商標とは第3字目が漢字の「衛」であるかかたかな文字の「エ」であるかが異なるのみであるし,本件商標の要部からも引用商標からも同一の称呼「イエモン」が生じることは明らかである。また,本件商標からも引用商標からも人名である「伊右衛門」の観念を生じることも明らかである。 そうすると,本件商標と引用商標とは,称呼が共通し,外観及び観念が類似するから,類似の商標というべきである。 (3) 引用商標は,従来はみられなかった特異なもので,極めて高い識別力を有し,緑茶飲料について広く使用された結果,本件商標の出願当時には「緑茶飲料」の出所が被告らであることを示すものとして,需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っていた。 そうすると,原告が「緑茶飲料」と密接な関係を有する「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」に本件商標を使用するときは,需要者及び取引者に,商品の出所が被告ら又は被告らと経済的,組織的に何らかの関係を有する関係を有する者の業務に係る商品であるとの混同を生ずるおそれがあるというべきであり,これと同旨の審決の認定判断に誤りはない。 なお,仮に原告に対し一般消費者等から苦情が寄せられたことがなかったとしても,著名な引用商標を使用する被告らには,信用維持等につき様々な不利益,危険を被っており,これらの不利益を軽視することはできないし,原告が積極的に販路を拡大するときは,混同を生ずるおそれはますます大きくなる。 (4) 被告福寿園は,平成17年,大阪市の大丸心斎橋店に喫茶飲食店「京ノ茶寮伊右衛門」を開店し,緑茶のほかに食事ができるサービスを行っているし,また横浜市の大丸ららぽーと横浜店に「慶茶」を開店し,緑茶のほかに茶そば,茶がゆ等を提供しているのであって,これらのサービスは今後拡大される可能性が高い。 (5) 原告が主張する本件商標の使用実績は,せいぜい平成13年ころ以降のものにすぎず,引用商標の出願日(平成15年9月11日)以前の販売数量はわずかなものである。また,上記出願日以後の売上げは,引用商標が日本全国にあまねく知られた後のものにすぎない。 他方,本件商標の出願時(平成19年11月1日)までに被告らが製造販売した緑茶飲料の数量は相当な規模に上り,高い実績を上げてきた。すなわち,平成16年3月16日に緑茶飲料「伊右衛門」を発売して以来,500mlペットボトル24本入りのケース換算で,平成16年には年間約3420万ケース,平成17年には年間約5250万ケース,平成18年には年間約5000万ケース,平成19年には年間約5200万ケースを販売し,日本全国の需要者及び取引者に広く知られるに至った。また,被告らは,平成16年以降,テレビコマーシャルで緑茶飲料「伊右衛門」を宣伝広告してきているが,上記コマーシャルの物語性が評価されて,賞を受ける等しており,需要者及び取引者に引用商標が広く知られるに至っている。 そうすると,原告の使用により,本件商標が周知になったとはいえないし,原告による本件商標の使用実績は,混同を生ずるおそれに係る結論を左右するものではない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(手続違背)について 取消事由1で原告が実質的に主張するのは,本件商標権を分割したから,引用商標との対比での商標法4条1項15号該当の有無は,分割したそれぞれの指定商品ごとに判断されるべきであって,分割したいずれかの商標権について,この該当性が否定されるならば,審決は少なくともその部分において結果的に違法となって取り消されるべきであるとするものである。 しかし,以下に説示するとおり,分割後のいずれの指定商品についてみても,引用商標との対比において商標法4条1項15号に該当すると認定判断されるのであって,原告の上記主張は理由がなく,審決に原告主張の審理不備の違法があるとすることはできない。 以下においては,本件口頭弁論終結時において存在する,分割された本件商標権の商標登録について無効理由の存否を判断すべきであるが,分割された両商標権のいずれについても認定判断が共通するので,分割前の本件商標権について審決の認定判断の違法の有無を検討する。 2 取消事由2(脱退前被告サントリー酒類株式会社らが使用した結果周知になった商標の認定の誤り)について 原告は,脱退前被告サントリー酒類株式会社らが製造販売する商品で使用しているのは引用商標ではなく,「緑色の竹筒型の背景」に,「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶」,「白抜きの漢字の『伊右衛門』」をまとまりよく配し,全体が1つに結合された図形商標(被告ら使用商標)であって,審決は上記「緑色の竹筒型の背景」等を無視している等と主張する。 確かに,脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売した緑茶飲料においては,中央部分の太さを絞り込んだ竹筒型の500mlペットボトル容器に封入したものがあり,上記ペットボトル容器には竹を連想させる緑色のパッケージが巻かれ,このパッケージにはそれぞれ縦書きで「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶」,「白抜きの漢字の『伊右衛門』」が記されている(甲11)。 しかしながら,上記表示のうち「白抜きの漢字の『伊右衛門』」は引用商標の漢字による文字を縦書きで記したものであって,引用商標と実質的に同一であることは明らかである。 そして,商標を商品に使用する際には,需要者により効果的にアピールできるよう,当該商標自体のデザインに修正を加えることもあるし,容器,包装,パッケージ等の形状ないしデザインに工夫を施すこともよく行われている。脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売した緑茶飲料で採用された竹筒型のペットボトル容器やパッケージの上に記された「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶」も,容器,包装等に施された工夫の範疇に属するものであることは明らかで,常に縦書き,白抜き文字の表示「伊右衛門」と一体となって商標を構成すると解さなければならないものではない。したがって,竹筒型のペットボトル容器が採用されている脱退前被告サントリー酒類株式会社の緑茶飲料においても,引用商標が使用されていると認めて差し支えはない。 脱退前被告サントリー酒類株式会社は,竹筒型のペットボトル容器以外にも,通常の350ml入り缶容器,2l入りペットボトル容器,紙製パッケージ等を容器に採用したり,「伊右衛門 新茶」,「伊右衛門 焙じ茶」,「伊右衛門 濃いめ」等の表示を商品に付したり,茶葉の「袋」入りパッケージ上に「伊右衛門」の表示を付したりしているのであって,これらのことからも,「伊右衛門」の表示が「緑色の竹筒型」の容器(ペットボトル容器)とともに使用されているものでもないし,「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶 」等の表示と組合せで使用されているものでもないことが裏付けられる。 結局,脱退前被告サントリー酒類株式会社が緑茶飲料の容器に採用した竹筒型のペットボトル及び緑色のフィルムパッケージ,あるいはさらに加えてパッケージ上の「赤地に白色の『京都』の文字」,「白抜きの漢字の『福寿園』」,「白抜きのひらがな文字の『いえもん』」,「白抜きの○茶 」の表示が,需要者に対する訴求力が大きく,したがって「伊右衛門」の表示と格別に,あるいは「伊右衛門」の表示と合わせて,自他商品識別機能を有するに至っているとしても,脱退前被告サントリー酒類株式会社が引用商標を使用している事実を左右するものではないし,後記のとおり被告らの業務に係る商品を示すものとして需要者及び取引者の間で広く認識されるようになった商標が引用商標であるという事実を左右するものではない。 そうすると,被告らが使用する商標に係る審決の認定判断に原告主張の誤りがあるとはいえず,原告が主張する取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(引用商標の周知性の認定の誤り)について (1) 前記のとおり,脱退前被告サントリー酒類株式会社は,緑茶飲料に引用商標を使用しているものであって,被告らが引用商標を使用していないために引用商標が被告らの業務に係る商品を示すものとして需要者及び取引者の間で広く認識されることにはならなかった旨の原告の主張は理由がない。 (2)ア ところで,証拠によれば,次のとおりの事実が認められる。 (ア) 脱退前被告サントリー酒類株式会社(当時の商号は「サントリー株式会社」)は,平成16年3月16日,緑茶飲料「伊右衛門」を発売したが,このとき,上記緑茶飲料の容器として500ml入りペットボトル容器や,2l入りペットボトル容器のほか,缶等も採用した。 このうち500ml入りペットボトル容器は,容器の胴の中央部分を他の部分よりもやや絞って細身にし,胴の上下部分に膨らみを設けて竹筒型の形状をなしており,その外側に緑色のフィルムを張って,容器全体が竹筒を模したものとなっていたほか,上記フィルムには縦書きで「京都福寿園/いえもん/茶 伊右衛門」と,概ね三段にわたって,うち「京都福寿園」は若干小さく,うち「いえもん」はふりがな風に極めて小さく,うち「茶 伊右衛門」は大きく,それぞれ白抜きの文字で記され,「伊右衛門」の下部に白抜きの英字で「SUNTORY」と横書きに記されていた。なお,500ml入りペットボトル容器の上記の文字列のうち「京都福寿園」の「京都」の文字については,緑色のフィルムの上に特に赤色の地を設け,さらにその上に当該文字が白抜きで記される体裁をなしており,「京都」の文字が強調されるようになっていた。 なお,上記緑茶飲料の容器のうち缶についても,緑色の装飾が施されて,全体が竹筒の形状にも見えるようになっていた(甲9,11)。 (イ) 緑茶飲料「伊右衛門」は発売後2日で500ml入りペットボトル容器24本入りのケースで67万ケースも売れ,需要に供給が追い付かない状況になり,発売から3日目に当たる平成16年3月19日にはいったん500ml入りペットボトル容器の緑茶飲料の出荷を一時休止する事態になった。 脱退前被告サントリー酒類株式会社は,その後500mlペットボトル容器を使用した緑茶飲料「伊右衛門」の販売を再開し,平成16年6月末までに500ml入りペットボトル容器24本入りのケースで1100万ケースも売り上げた。 脱退前被告サントリー酒類株式会社による緑茶飲料「伊右衛門」の売上げは,500ml入りペットボトル容器24本入りのケースで,平成16年に3420万ケース,平成17年に5250万ケース,平成18年に5000万ケース,平成19年に5200万ケースに上った(甲9,弁論の全趣旨)。 (ウ) 脱退前被告サントリー酒類株式会社は,緑茶飲料「伊右衛門」の発売当初から,俳優の本木雅弘及び女優の宮沢りえが被告福寿園の創業者である伊右衛門夫婦を物語風に演じて,「伊右衛門」の商品名の由来を示す上記緑茶飲料のTVコマーシャルを大規模に放送したところ,視聴者の間で好評を博し,平成17年の第34回フジサンケイグループ広告大賞を受賞する等したほか,「伊右衛門」の商品名自体も日刊工業新聞社の「読者が選ぶ2004ネーミング大賞ベスト10」で第1位になった(甲5,8,9)。 (エ) 脱退前被告サントリー酒類株式会社は,緑茶飲料「伊右衛門」のバリエーションとして,平成18年5月には新茶を使用した季節限定商品の「伊右衛門 新茶」を,同年7月には濃い目の味わいの「伊右衛門 濃いめ」を,同年9月にはほうじ茶を使用した季節限定商品の「伊右衛門 焙じ茶」を,平成19年10月には玄米茶を使用した季節限定商品の「伊右衛門 玄米茶」をそれぞれ発売した(甲9)。 イ 前記アの各事実にかんがみれば,「伊右衛門」がもともと珍しくはない人名であったとしても,遅くとも原告が本件商標の登録出願をした平成19年11月1日当時には,脱退前被告サントリー酒類株式会社らの販売独力及び広告宣伝活動によって,引用商標ないし「伊右衛門」の名称は,脱退前被告サントリー酒類株式会社ないし被告福寿園の製造販売する緑茶ないし緑茶飲料あるいはその関連商品を示すものとして,需要者及び取引者の間に広く認識されるようになっていたことは明らかである。 したがって,上記と同旨の審決の認定判断に誤りはない。 (3) 原告は,「伊右衛門」はありふれた名であり,実存する人が多数いるし,「伊右衛門」という名称,屋号の食堂,居酒屋,商店などは日本全国に多数存在するから,「伊右衛門」の前に「緑茶」や「飲み物」或いは「生産者名」を指称する文字(用語)を付加して初めて被告ら使用商標の「京都福寿園のお茶」の「伊右衛門」を想起できるのであって,「伊右衛門」のみからなる引用商標が需要者及び取引者の間で広く認識されることになるものではない等と主張する。 確かに,「伊右衛門」はもともと人名であり,原告の代表者の親戚の祖先にも「伊右エ門」の名を有する者が存在するように,必ずしも稀有な名前というわけではない。 しかし,脱退前被告サントリー酒類株式会社は,前記のとおり,平成16年3月16日に緑茶飲料「伊右衛門」を発売して以降,相当な数量の上記緑茶飲料を売り上げ,また繰り返しテレビCMを流す等して上記緑茶飲料を大規模に宣伝してきたのであって,「伊右衛門」がもともと珍しくはない人名であったとしても,脱退前被告サントリー酒類株式会社らの使用によって,需要者及び取引者において,引用商標「伊右衛門」が脱退前被告サントリー酒類株式会社,被告福寿園ないしこれらと何らかの関係にある者の業務に係る商品であることを示すものとして広く認識されるに至っているものと認めることができる。 そして,引用商標の周知著名性の程度にかんがみれば,「伊右衛門」(引用商標)の前に「緑茶」や「飲み物」或いは「生産者名」を指称する文字(用語)を加えなくても,需要者及び取引者において何人の業務に係る商品であるか容易に判別しうる状況となっているというべきである。 そうすると,原告の上記主張を採用することはできない。 (4) また,原告は,引用商標の周知性の判断に当たっては,引用商標の「緑茶」,「飲食物の提供」への使用と「緑茶飲料」への使用とを明確に区別しなければならないのに,審決は,被告らの商標(標章)の「緑茶」,「飲食物の提供」への使用によっても引用商標が取引者及び需要者の間で広く認識されるようになった旨認定しており,誤りである等と主張する。 確かに,審決は,引用商標の周知著名性を基礎付ける事実として,被告福寿園が製造販売する茶葉のチラシ(甲7),脱退前被告サントリー酒類株式会社らが京都市内で運営するサロン「IYEMON SALON KYOTO」のホームページの写しや小冊子等(甲11),被告福寿園が大阪市内で運営する飲食店「京ノ茶寮 伊右衛門」のホームページの写し等(甲12,13)等を掲げているが,審決が掲げている脱退前被告サントリー酒類株式会社の販売実績等(前記(2))によっても容易に緑茶飲料としての「伊右衛門」の周知性を基礎付けることができるのであり,原告の上記主張は理由がない。 (5) 結局,原告が主張する取消事由3は理由がない。 4 取消事由4(混同を生ずるおそれの認定の誤り)について (1) 前記3のとおり,脱退前被告サントリー酒類株式会社は,緑茶飲料に引用商標を使用しているものであって,被告らが引用商標を使用していないために引用商標との関係で商品の出所の混同を生ずるおそれがない旨の原告の取消事由の主張は理由がない。 (2)ア ところで,引用商標はいずれも漢字の標準文字からなる「伊右衛門」を記してなる外観を有するものである一方,本件商標は,右上に江戸文字風のひらがな文字及び漢字からなる縦書きの「そば処」の黒色の文字をやや小さく,中央右寄りにひらがな文字からなる縦書きの「いえもん」の黒色の文字をふりがな風に相当小さく,中央に江戸文字風のかたかな文字(第3字)及び漢字(第1,2,4字)からなる縦書きの「伊右エ門」の黒色の文字を大きくそれぞれ配し,かつ「門」の字の左下に,細い白線で枠取りした印影状の縦書きの赤地白抜き文字「伊右エ門」(「伊右」と「エ門」とで2段書き)を配した外観を有するものである。本件商標の構成要素のうち,中央の「伊右エ門」の文字は商標全体の面積のほとんどを占めており,また江戸文字風の強調された体裁を有しているから,本件商標に接する看者の注意を強く惹く部分であって,本件商標の要部であるということができる。 引用商標は脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」(いえもん)を示すものとして需要者及び取引者に広く認識されるに至っているところ,引用商標からは,その文字の通常の読みに従って「イエモン」の称呼が生じる。 他方,本件商標は,その要部から「イエモン」の称呼が生じる。なお,上記のとおり,本件商標においては,要部たる中央の「伊右エ門」の右側にふりがな風に「いえもん」の文字が添えて記されているから,本件商標から「イエモン」の称呼が生じることを容易に認定できる。 本件商標の構成要素のうち右上の「そば処」の文字は,中央の文字「伊右エ門」に比してごく小さく記されているものにすぎないから,上記文字「そば処」が本件商標の要部となるものではなく,本件商標から「ソバドコロ」のみの称呼は生じないものと認められ,これに反する取引の実情の存在を認めるに足りる証拠はない。
なお,「伊右エ門」の文字が後記のとおり一般的には人名であることにかんがみても,人名を商標として使用することもよくあるから,そのことをもっても上記の認定判断は左右されない。したがって,本件商標と引用商標とは「イエモン」の称呼を生じる点で共通するから,両商標から生じる称呼は同一である。 そして,引用商標からは,概ね江戸時代ころの人名である「伊右衛門」(例えば,著名な講談である「四谷怪談」の登場人物であるお岩の夫の氏名が田宮伊右衛門である。)の観念が生じるほか,脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」の周知性にかんがみると,上記緑茶飲料の観念が生じる。他方,本件商標からは,その要部からは概ね江戸時代ころの人名である「伊右衛門」の観念が生じるほか,右上に「そば処」の文字が配されている点にかんがみると,商標全体から,食物たるそばの提供元ないしそばを飲食できる場所(店舗)である,屋号ないし名称等が「伊右衛門」である業者との観念も生じる。 このように,本件商標と引用商標とは,概ね江戸時代ころの人名である「伊右衛門」の観念が生じる点で共通するから,両商標から生じる観念は同一である。あるいは,本件商標から食物たるそばの提供元ないしそばを飲食できる場所等である,屋号ないし名称等が「伊右衛門」である業者の観念が生じるとしても,上記屋号ないし名称等を人名である「伊右衛門」に由来するものと連想することができるから,両商標から生じる観念は少なくとも類似するということができる。 また,本件商標と引用商標とは,本件商標の要部の第1,2,4字目の漢字と引用商標の上記と対応する漢字が一致する上,本件商標の要部の第3字目のかたかな文字の「エ」の文字が引用商標の第3字目の漢字の「衛」の読みがなであることが明らかであるから,両商標の外観は類似する。 そうすると,本件商標と引用商標とは類似する。 したがって,上記と同旨をいう審決の本件商標と引用商標の類似性の認定判断に誤りがあるとはいえない。 イ この点,原告は,被告らが製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」のコマーシャルに基づいて取引者及び需要者が発しうる称呼は単なる「イエモン」ではなく「キョウトフクジュエンノオチャイエモン」である等と主張する。 確かに,上記緑茶飲料のTVコマーシャルにおいては,「キョウトフクジュエンノオチャイエモン」とのナレーションがされているものであるが(甲24),「キョウトフクジュエンノオチャイエモン」との称呼は冗長で一般には呼称しにくいものである。また,上記緑茶飲料のペットボトル容器等には,「伊右衛門」と大きく,「京都福寿園」とやや小さく記されているところ,上記TVコマーシャルでは,上記ペットボトル容器や「伊右衛門」と大書したのれんが映されたことがあった点にもかんがみると(甲5),上記ナレーションは商品名「イエモン」を印象付けるためのキャッチフレーズとして流されたものであり,上記TVコマーシャルに基づいて,上記緑茶飲料につき「キョウトフクジュエンノオチャイエモン」との称呼が生じるとはいい難い。 このほかに,前記アの判断を左右するに足りる原告の主張立証はない。 ウ そして,本件商標の指定商品である「そばの麺」,「そばの乾麺,そばのインスタント麺」についてみれば,緑茶を材料の一つに使用する「茶そば」がそばの一つのジャンルとなっていることは明らかである上,「そばの麺」等を加工した(茹でる等した)料理とともに,そば湯の代わりに,あるいはそば湯に加えて茶が供されることもよくあることであるし,被告福寿園が大阪市内の大丸心斎橋店内で運営するカフェ「京ノ茶寮 伊右衛門」や,横浜市内のららぽーと横浜店内で運営するカフェ「茶房 慶茶 京都福寿園」では,現に顧客に対して緑茶や菓子等のほかに「茶そば」を提供している(甲12,13)。 そうすると,本件商標の指定商品たる「そばの麺」,「そばの乾麺,そばのインスタント麺」についてはもちろん,その原材料たる「そば粉」についても,脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売する緑茶飲料や引用商標の指定商品である「茶」と密接な関係があるものというべきである。 また,本件商標の指定商品のうち,そばの実を茹でた料理である「むきそば」,そばを使用した弁当である「そば弁当」についても,上記のとおり「茶そば」がそばの一つのジャンルとなっている上に,「緑茶飲料」が料理や弁当類と同一の機会に同一の場所で一緒に飲食されることは一般的によく行われることであるから,脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売する緑茶飲料や引用商標の指定商品である「茶」と密接な関係があるものというべきである。 そうすると,上記のとおり,被告福寿園が運営するカフェで,顧客に対して「茶そば」を提供している事実にもかんがみると,本件商標の指定商品である「そばの麺」,「そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」に本件商標を使用するときは,商品の出所が脱退前被告サントリー株式会社,被告福寿園あるいは被告らと経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるとの混同を生ずるおそれがあるというべきである。 したがって,上記と同旨の,本件商標の指定商品と「緑茶飲料」との密接な関連性の有無,混同を生ずるおそれに係る審決の認定に誤りはない。 (3)ア 原告は,本件商標の指定商品のうち「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば」はいずれも加工を要する食材であって,加工する必要がなく,すぐ飲むことができる「緑茶飲料」と同じ売り場で販売されることはなく,とりわけ,「そばの麺」は,日持ちしにくく,冷蔵を要する商品であって(日配食品,和日配),その売り場が冷蔵ショーケース等のあるスーパー,百貨店等の食品売り場に限られている等と主張する。 しかし,「そばの麺」等が加工を要する食品だとはいっても,「そばの麺,そばの乾麺」の場合には茹でるだけ,「そばのインスタント麺」の場合にはお湯等でもどすだけの手間を要するだけにすぎないし,「そばの乾麺,そばのインスタント麺」「そば粉」は常温での保管が可能であるし,「そばの麺」にしても,常に冷蔵保存が必要ともいえないであろうし,冷蔵保存が必要としても,「緑茶飲料」との密接な関係を否定することはできない。 前記(2)ウのとおりの緑茶飲料との密接な関連性にかんがみれば,加工の手間や売り場の違い,保管の方法の違いはいずれも前記(2)ウの結論を左右するものではない。 イ 原告は,「そばの麺」は主食品であるが,「緑茶飲料」は飲料ないし嗜好品であって,両者は購入の目的が異なる等と主張する。 確かに,「そばの麺」と「緑茶飲料」とでは飲食物としての範疇が異なるが,飲食の目的で購入され,飲食の対象となる物であることは共通する上(なお「緑茶飲料」は単なる嗜好品にとどまるものではない。),前記(2)ウのとおり,同一の機会に飲食されることが一般的にされていることにかんがみれば,原告が主張する商品としての性格の違いは前記(2)ウの判断を左右するものではない。 また,「緑茶飲料」と「そばの麺,そばの乾麺,そばのインスタント麺,そば粉,むきそば,そば弁当」との間の商品の包装の形態の違い,賞味期限の長短及び販売経路の相違があるからといって,両者の密接な関係を否定することはできず,前記出所の混同のおそれがあることの判断は左右されない。 そうすると,商品の包装の形態の違い等も前記(2)ウの判断を左右するものではない。 ウ 原告は,多くの一般消費者は,脱退前被告サントリー酒類株式会社やその関係会社を飲料メーカーとして認識している等として,被告らないしその関係会社等が「そばの麺」を製造販売しているとは考える可能性は小さい等と主張する。 しかし,「そばの麺」と「緑茶飲料」とは前記のとおり密接の関係にあり,本件商標と引用商標とが類似することにかんがみれば,一般消費者が脱退前被告サントリー酒類株式会社やその関係会社を飲料メーカーとして認識しているとしても,本件商標が付された「そばの麺」の出所が脱退前被告サントリー酒類株式会社等であると誤認する可能性は否定できない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ 原告は,平成13年ころから,原告代表者の親戚が先祖の名を使用して開業したそば屋「伊右エ門」にそば麺を納品してきており,その後そば麺等に関して「そば処 伊右エ門」の商標(標章)を使用するようになったものである等と主張する。 この主張は,本件商標に接する需要者及び取引者がその指定商品との関連で,本件商標は原告の商品に係るものであることについて引用商標の商品と出所の混同を来さないまでに,その由来からみて識別力が高いとの趣旨において意味があるところ,本件商標と引用商標が異なる人物の名前に由来するものであるとしても,原告は原告代表者の親戚が経営するそば屋以外の取引先に「そばの麺」を販売しているし(弁論の全趣旨),「緑茶飲料」や「そばの麺」等の需要者及び取引者において,本件商標の由来が上記親戚の先祖の氏名であることが広く知れ渡っていること等を認めるに足りる証拠はない(原告が製造販売する「そばの麺」のパッケージにも,その旨の記載は存しない。)。 そうすると,本件商標の由来と引用商標の由来が異なる人物の名前に由来することは,前記(2)ウの判断を左右するものではない。 また,原告は,従前から「そば処 伊右エ門」又は「伊右エ門」の商標(標章)を付した商品を販売してきており,本件商標が既に山形県及びその隣接県において,日本そば麺,中華そば麺について,原告が製造販売する商品を示すものとして,需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っている等と主張する。 しかしながら,原告が製造販売する「そばの麺」の数量は,ラーメン用麺も含め,平成12年5月ないし平成22年1月の間の約10年弱でみたとしても合計38万点強にとどまっているのであって(甲27ないし29,50ないし63),脱退前被告サントリー酒類株式会社の緑茶飲料の前記の販売数量と比較すると極めて小さなものである。 しかも,その販売地が特定の地域にとどまっていないことから,特定の地域で著名になり,そのことが全国に広まっているものとも認められない。本件全証拠にかんがみても,被告らが「緑茶飲料」の販売を開始した時点において,本件商標が既に山形県及びその隣接県において,日本そば麺,中華そば麺について,原告が製造販売する商品を示すものとして,需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っており,少なくとも前記地域においては,脱退前被告サントリー酒類株式会社が製造販売する緑茶飲料「伊右衛門」と原告が製造販売する「そばの麺」等とが相区別される状態にあったことは容易に認めることはできない。 そうすると,原告の上記各主張はいずれも前記(2)の判断を左右するに足りるものではない。 (4) 結局,原告が主張する取消事由4は理由がない。
結論
以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 真辺朋子
裁判官 田邉実
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