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関連審決 取消2009-670010
関連ワード 指定商品 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  国内 /  正当な理由 /  国際登録 /  継続 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10078号 審決取消請求事件
原告アイアールエス オーストラリ アピーティーワイリミテッド
訴訟代理人弁理士 越前昌弘
被告オズデ アアカデミーピーティーワイリミテッド
訴訟代理人弁護士 田中克郎
同 中村勝彦
訴訟代理人弁理士 佐藤俊司
同 田中景子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/09/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が取消2009−670010号事件について平成21年10月20日にした審決を取り消す。
22訴訟費用は被告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求主文第1項,2項同旨第2争いのない事実 原告は,国際登録第804782号商標(平成15年2月10日国際登録,平成16年4月9日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
本件商標の構成は,別紙(本件商標)のとおりであり,その指定商品は,第3類「Hair treatment products,lotions,shampoos,conditioners,styling creams and waxes」(ヘアトリートメント用剤,ローション,シャンプー,コンディショナー(毛髪用),整髪用クリーム及びワックス)である。
被告は,平成21年6月2日,特許庁に対し,本件商標につき商標法50条1項に基づく商標登録取消審判(取消2009-670010号事件)を請求し(以下「本件取消審判請求」という。),同月17日,その請求の予告登録がされた。
特許庁は,平成21年10月20日,原告が本件取消審判請求に対して答弁をせず,本件商標に関し指定商品のいずれかについて使用をしていることの証明をせず,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしないとして,「国際登録第804782号商標の商標登録は取り消す。」との審決(付加期間90日。以下,単に「審決」という。)をした。
第3取消事由に関する原告の主張審決は,審判請求書副本送達の瑕疵(取消事由1),本件商標の不使用の認定の誤り(取消事由2)があるから,違法として取り消されるべきである。
1審判請求書副本送達の瑕疵(取消事由1)3 原告は,本件取消審判請求書の副本の送達を受けておらず,答弁の機会が与えられなかったから,審決は違法である。
2本件商標の不使用の認定の誤り(取消事由2) 原告は,平成20年(2008年)の数年前から日本市場に参入すべくオーストラリア貿易促進庁(AUSTRADE )の日本事務所と連絡を取り合っており,平成15年(2003年)6月24日から同月29日までの間には東京訪問プログラム(Tokyo Visit Program )を実施し,複数の流通業者及び広告業者の担当者と面会をした。また,原告は,平成18年(2006年)5月以降,複数回にわたり,製品に貼付する日本語ラベルの翻訳及び製作を業者に発注した。
さらに,原告は,平成18年(2006年)1月ころから平成20年(2008年)9月ころまでの間,大阪府羽曳野市のS( S,以下「 S」という場合がある。)に対し,原告製品(CLASSIC ROCK,HARD ROCK,DIRTY ROCK,SOLID ROCK,PUNK ROCK Gel)を販売し,本件商標の指定商品である整髪用クリーム及びワックスについて,本件商標を取引書類に付して,本件商標を使用した(なお,その後,Sは,指定商品について,美容院等に対する試供品の配布・PR 活動・販売,音楽祭・ナイトクラブ等のイベントにおける試供品の配布をした。)。そして,原告は,平成20年(2008年)から平成21年(2009年)にかけて,本格的に日本市場に参入するため,オーストラリア貿易促進庁(AUSTRADE )の日本事務所と連絡を取って,市場参入のアドバイスを受けた。なお,大阪の美容室に試供品として提供された本件商標を付した整髪用ワックスが,平成21年(2009年)12月29日,店頭に陳列されていた。
上記のとおり,原告は,少なくとも平成18年(2006年)6月から平成21年(2009年)6月までの間,オーストラリア貿易促進庁(AUSTRADE)を介して本格的な市場参入を計画し, Sを介して原告商品の日本への販売,PR 活動を続け,本件商標の使用について継続した努力を行うとともに,本件商4標を取引書類に付するなどして,本件商標を使用した。したがって,これと異なる認定をした審決には誤りがある。
第4被告の反論1審判請求書副本送達の瑕疵(取消事由1)に対して 特許庁は,原告に対し,適法に本件取消審判請求書の副本の送達を行っており,原告がこれを実際に受け取ることができなかったのは,国際事務局に対する住所変更手続を怠っていたからにすぎない。
したがって,原告は,自らの手続の怠慢により本件取消審判請求に対する答弁の機会を失ったのであって,審決に違法はない。
2本件商標の不使用の認定の誤り(取消事由2)に対して 原告は,本件商標に関し,少なくとも平成18年(2006年)6月から平成21年(2009年)6月までの間,オーストラリア貿易促進庁(AUSTRADE )を介して本格的な市場参入を計画していたと主張して,甲4ないし6及び8を提出する。しかし,同証拠は,指定商品等についての本件商標の使用の事実を立証するものでない。また,原告は,S を介して原告商品の日本への販売及びPR 活動を続けるなどし,本件商標を取引書類に付するなどして,本件商標を使用したと主張する。しかし,S が本件商標の通常使用権者であることを裏付ける証拠はなく,また,甲7によってもSに対していかなる商品が発送され,同人がこれを受領したか否かも判然としない。甲9は,本件取消審判請求の予告登録後に作成されたものであり,甲7の請求書に記載された商品と甲9の写真に写されている商品が同一のものであることを裏付ける証拠はないから,甲9により,原告が本件取消審判請求の登録前3年以内に指定商品等について本件商標の使用をしたことの証明にはならない。
以上のとおり,本件商標は,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても,本件取消審判請求の登録前3年以内に指定商品等について日本国内で使用されていなかったものであるから,審決の認定,判断に誤りはな5い。
第5当裁判所の判断1審判請求書副本送達の瑕疵(取消事由1)について商標登録取消しの審判の請求があったときは,審判長は,請求書の副本を被請求人に送達し,相当の期間を指定して,答弁書を提出する機会を与えなければならない旨(商標法56条1項,特許法134条1項),在外者に管理人がないときは,書類を航空扱いとした書留郵便等に付して発送することができる旨(商標法77条5項,特許法192条2項)を,それぞれ定めており,同規定によれば,審判請求書の副本を,「送達」することを要するとしている。
「送達」とは,特定の名宛人に対して,書類の内容を了知する機会を付与するために,法の定める特定の方式に従って行われる通知行為である。法が,特定の書類を通知するに当たり,法の定める送達によらなければならないとしたのは,?送達を受けるべき者に対して,当該書類の内容を確実に知らしめて,その者の手続上及び実体上の利益を確保し,?法に従った通知行為がされた以上,送達を受けるべき者が,現実に書類の内容を了知したか否かにかかわらず,通知が有効に行われたものとして,法所定の法的効果を付与し,手続を進行させることによって,迅速かつ円滑な手続を確保し,?通知が所定の方式によって行われ,かつ,その事実を公証することによって,所定の手続上及び実体上の効果が争われることを防止して手続等の安定を確保する等の趣旨・目的が存在するからである。
「送達」が適法に行われると,上記のような趣旨目的に即した効力が付与され,手続を進行させることができるが,他方,当事者の実体上及び手続上の権利・利益に重大な影響を及ぼすおそれがあるため,「送達」が適法にされたか否かの判断は,上記の観点に照らして,厳格にされる必要がある。
本件について,この観点から検討する。
(1)事実認定6証拠(甲1,3,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
すなわち,被告は,平成21年6月2日,本件取消審判請求をしたこと,原告は,日本国内に営業所を持たず,上記登録手続がされてから審決がされるまでの間,日本において,いわゆる商標管理人を置いていなかったこと,審判長は,平成21年6月22日,原告に対して,航空扱いとした書留郵便に付して,本件取消審判請求書の副本を発送したこと,同副本は,「ABC 」に宛ててされたこと,原告は,そのころ既に住所を変更しており,上記住所から,現在の住所である「DEF 」に移転していたこと(もっとも,後記のとおり,原告は,国際事務局に対し,住所変更登録手続はしておらず,国際登録原簿への登録がされたのは,平成22年4月8日であった。),特許庁は,平成21年10月20日,原告が本件取消審判請求に対して答弁をせず,本件商標を使用していることの証明がないなどとして,本件商標を取り消す旨の審決をし(付加期間90日),同年11月16日,取消審判請求書の副本を発送した住所と同一の住所に宛てて,審決書等を航空扱いとした書留郵便に付して発送したことが認められる。
原告が,その住所を変更した時期について,さらに証拠を検討する。
まず,?原告から翻訳の委託を受けた会社が原告に対して,翻訳料の支払を請求したが,その請求書は,原告の現在の住所に宛てて発行されており,その日付は平成18年5月10日であったこと(甲5),?原告からラベル制作の委託を受けた会社が原告に対して納品書を送ったが,その納品書も,原告の現在の住所に宛てて発行されており,その日付は平成18年9月4日であったことが認められる(甲6)。他方,?原告は,平成18年1月から平成20年9月まで,大阪府在住のS( S)に対し,原告商品を,少なくとも6回にわたり販売したが,その請求書には,変更前の住所(もっとも,変更前の住所とは,スイート番号が異なる。)が表記されていた(甲7)。これらの事実を総合すると,7遅くとも,取消審判請求書の副本が発送された平成21年6月22日までには,原告は,現在の住所へ変更していたものと推認するのが合理的である。
なお,原告が,審決に対する取消訴訟についての出訴期間内である平成22年3月5日に,本訴訟を提起することができたのは,別件商標の審査について,原告代理人と打ち合わせをしている際,登録原簿を確認したところ,偶然,本件商標を取り消す旨の審決がされていたことを発見したことによるものである。
(2)判断上記認定した事実に基づいて,本件における送達が適法であるか否かを検討する。
本件取消審判請求の副本の送達は,原告が,日本国内に営業所を持たない法人であり,上記登録手続から審決までの間,日本において,いわゆる商標管理人を置いていなかったことを理由として,審判長により,航空扱いとした書留郵便に付して,国際登録に記載された原告の住所地に宛てて発送されているので,法の要求する要件を,一応備えているといえる。しかし,前記のとおり,「送達」は,送達を受けるべき者が,現実に書類の内容を了知したか否かにかかわらず,手続を進行させることを可能とさせるものであり,当事者の実体上及び手続上の権利・利益に重大な影響を及ぼすおそれがある手続であることに照らすならば,送達が適法であるか否かについては,送達を受けるべき者にとって,防御の機会が十分に確保されていたか否かを基準として判断すべきである。そのような観点に照らすならば,航空扱いとした書留郵便に付してされた送達が,適法なものとして扱われるためには,特段の事情の存在しない限り,送達を受けるべき当事者の真の住所に宛ててされた場合であることを要すると解するのが相当である。
上記認定事実によれば,審判長は,本件取消審判請求書の副本について,航空扱いとした書留郵便に付して発送したが,その送達は,原告の旧住所地に宛てたものであって,原告の真の住所に宛てたものではないから,上記送達には,8瑕疵があり,原告は,審判手続において審理を受ける機会を実質的に奪われたと評価すべきである。
2本件商標の不使用の認定の誤り(取消事由2)について以上のとおり,本件取消審判請求書の副本の送達には,瑕疵があるが,原告は,審決に対して,出訴期間内に,審決取消訴訟を提起し,使用の事実に関する主張,立証活動を行った。使用の事実に関する立証は,審決取消訴訟における口頭弁論終結まで許されると解すべきであるから,進んで,この点について判断する(最高裁判所平成3年4月23日第3小法廷判決・民集45巻4号538頁参照)。
甲4ないし9及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)原告は,平成20年(2008年)に先立つ数年前から,原告商品について,日本市場へ参入することを計画し,日本の市場調査のため,オーストラリア貿易促進庁(AUSTRADE )大阪事務所に照会して,参入に当たっての情報を収集したり,アドバイスを受けたりし,また,原告商品を日本で販売する際に貼付する日本語ラベルの制作(翻訳を含む。)を業者に注文するなどの準備活動を行った。
(2)そして,原告は,少なくとも,平成18年1月ころから平成20年9月ころまで,大阪府羽曳野市の個人業者と推認されるSに対して,6回にわたって,原告商品を販売した。同販売の過程で,原告は,S に対して,平成18年(2006年)1月2日付け,同年7月12日付け,平成19年(2007年)3月10日付け,同年10月9日付け,平成20年(2008年)4月26日付け,同年9月10日付けの「TAX INVOICE 」(タックス・インボイス,請求書)を発行して,同人に対し送付した(なお,平成20年9月10日の請求書発行は,本件取消審判請求の予告登録の後である。)。
(3)同請求書には,「IRS"Instant Rockstar"-Hard Rock 100ml 」9「IRS"Instant Rockstar"-Classic Rock 100ml 」「IRS"Instant Rockstar"-Solid Rock 100ml 」「IRS"Instant Rockstar"-Dirty Rock 100ml 」「IRS"Instant Rockstar"-Punk Rock Gel 150ml 」「IRS"Instant Rockstar"-Matt Rock 100ml 」などの指定商品を含む各種商品について,数量,単価及び金額が記載されている。
S への販売は,いずれも個数が少ないこと,初回は,すべての品目について50個という均一個数であったのに対し,2回目以降になると,品目毎に個数において差が生じていること(75個から200個)からすれば,市場調査や顧客の嗜好を確認するなどの目的が存在していたと推測できる。
そして,各請求書の最上段には,本件商標が付されることによって,本件商標が使用されていることが明瞭に確認できる(甲7)。
(4)また,平成21年12月29日,大阪市西区内の店舗内において,本件商標が付された商品が陳列されている。もっとも,商品が陳列されている時期は,本件取消審判請求の予告登録後ではあるが,商品が陳列されている写真が残されている事実から,それに先立つ時期に,原告が,日本市場に参入できるかを試みるために,日本の個人業者を選んで,市場展開の可能性などを調査したことが推測され,撮影の対象とされた商品は,原告が日本の業者に販売した原告商品であると推認して差し支えない(甲9)。
以上認定した事実経緯を総合するならば,原告は,本件取消審判請求の登録前3年以内である平成18年1月から平成20年4月に,少なくとも5回にわたり,大阪府羽曳野市の個人に対して指定商品に該当する原告商品を販売し,その際,同販売に関する取引書類(請求書)に,本件商標を付して,本件商標を使用したことを認定することができ,同認定に反する証拠はない。
3結論以上のとおりであり,本件商標に関し指定商品のいずれかについて使用をし10ていることの証明をせず,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしないとして,「国際登録第804782号商標の商標登録は取り消す。」とした審決の認定,判断には誤りがある。よって,本件取消審判請求書の副本の送達に瑕疵があったか否か,審判手続において原告の審理を受ける機会を奪ったものであるか否かの点にかかわらず,本件商標が指定商品に使用されていないとした審決の判断には,誤りがあるから,原告の本訴請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 知野明
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