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関連審決 取消2009-300649
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ3344不当利得返還請求事件 判例 商標
関連ワード 独占的使用 /  包装 /  使用事実 /  指定商品 /  公序良俗(4条1項7号) /  不使用 /  権利濫用(権利の濫用) /  通常使用権 /  専用使用権 /  国内 /  警告 /  信義則 /  存続期間 /  不使用取消審判 /  正当な理由 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10100号 審決取消請求事件
原告 X
訴訟代理人弁護士 中村誠一
同 近藤誠一
同 千 川原公一
被告 ジャス ・インターナショナル 株式会 社
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/09/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が取消2009−300649号事件について平成21年11月24日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求主文同旨第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,別紙「本件商標目録」記載の登録第4952253号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1,2)。
被告は,平成21年6月1日,特許庁に対し,本件商標につき商標法50条1項に基づく不使用による商標登録取消審判(取消2009-300649号事件)を請求し(以下,この請求を「本件取消審判請求」という。),平成21年6月17日,その請求の登録(以下「本件予告登録」という。)がされた(甲2)。
特許庁は,平成21年11月24日,「登録第4952253号商標の商標登録は取り消す。」との審決をし,その謄本は,同年12月4日,原告に送達された。
2審決の理由審決の理由は,?商標法50条1項による商標登録の取消審判の請求があったときは,同条2項の規定により,被請求人(原告)において,その請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標を使用していることを証明し,又は使用していないことについて正当な理由のあることを明らかにしない限り,その登録の取消しを免れない,?しかし,被請求人(原告)は,本件取消審判請求に対して答弁をしていない,?よって,本件商標の登録は,商標法50条1項の規定により取り消すべきものである,というものである。
第3当事者の主張1 審決の取消事由に係る原告の主張審決は,(1)本件商標の使用の事実(取消事由1),(2)本件取消審判請求が信義則違反,権利濫用に当たること(取消事由2)を理由として,取り消されるべきである。
(1) 取消事由1(本件商標の使用の事実)以下に述べるとおり,本件予告登録から3年以内に日本国内において通常使用権者により本件商標が指定商品について使用されていたから,本件取消審判請求は理由がなく,本件商標登録を商標法50条1項により取り消した審決は,取り消されるべきである。
アファインプラスによる使用(ア)本件ファインプラス許諾契約の締結原告は,本件商標の管理権を与えていたスマイリーワールド・リミテッド(SMILEYWORLDLTD。当時は,スマイリー・ライセンシング・コーポレーション。以下「SLC社」という。)を代理人として,平成20年6月30日,株式会社ファインプラス(以下「ファインプラス」という。)との間で,本件商標について,その使用対象を被服類,使用範囲を日本,使用開始日を同年8月1日,有効期限を平成22年7月31日とする通常使用権許諾契約(以下「本件ファインプラス許諾契約」という。)を締結した(甲3)。
(イ)ファインプラスによる本件商標の使用の事実ファインプラスは,本件ファインプラス許諾契約に基づき,平成20年6月30日,原告より,ファインプラスの個々の製品(被服類)について,本件商標を使用することの承認を受け(甲4の1〜10),同年8月1日より本件商標を付した同社の製品を販売している。実際に,ファインプラスは,本件商標使用製品の販売状況につき,商品名,純売上数,平均卸売単価,及びこれらに基づき契約に従って計算した商標使用料を記載した「SmileyWorld 製品販売報告書」(甲5の1〜3)を作成し,これを月々原告に交付している。
よって,通常使用権者であるファインプラスが,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標をその指定商品について使用していた事実が明らかである。
イ今泉による本件商標の使用(ア)本件今泉許諾契約の締結原告は,SLC社を代理人として,平成20年7月22日,株式会社今泉(以下「今泉」という。)との間で,本件商標について,その使用対象として履物類を含み,使用範囲を日本,使用開始日を同年10月1日,有効期限を平成21年9月30日とする通常使用権許諾契約(以下「本件今泉許諾契約」という。)を締結した(甲6)。
(イ)今泉による本件商標の使用の事実今泉は,平成20年9月20日,原告より,今泉の製品(指定商品を含む。)につき本件商標使用の承認を受け,平成21年2月28日より,本件商標を付した商品を,有限会社マッシーズ(甲8)や株式会社丸大(甲9)等の卸売業者や,株式会社西友(甲10)等の小売業者に対して販売した。実際に,今泉は,平成21年度製品カタログ(甲7)に,本件商標を付した商品を掲載した(甲7)。
よって,通常使用権者である今泉が,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標をその指定商品について使用していた事実が明らかである。
ウサカモトによる本件商標の使用(ア)本件サカモト許諾契約の締結原告は,SLC社を代理人として,平成20年8月29日,株式会社サカモト(以下「サカモト」という。)との間で,本件商標について,その使用対象を文房具,使用範囲を日本,使用開始日を同年9月1日,有効期限を平成21年8月31日とする通常使用権許諾契約(以下「本件サカモト許諾契約」という。)を締結した(甲11)。
(イ)サカモトによる本件商標の使用サカモトは,本件サカモト許諾契約に基づき,平成20年9月20日,原告より,サカモトの製品のデザインにつき本件商標使用の承認を受け,平成21年1月10日より本件商標を付した同社の製品を,株式会社エムディーエス(甲13),株式会社サンエイ(甲14),大平紙業株式会社(甲15)及びERG株式会社(甲16)等に販売してきた。その際,サカモトは,製品カタログ(甲12)に,本件商標を付した商品を掲載していた。
よって,通常使用権者であるサカモトが,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標をその指定商品について使用したことが明らかである。
(2) 取消事由2(本件取消審判請求が信義則違反,権利濫用に当たること) ア違法な本件専用使用権設定登録原告は,平成12年10月30日,SLC社を代理人として,被告との間で,原告の有する商標について,契約期間4年の約定で再許諾権を含む専用使用権を設定する旨の契約(以下「本件専用使用権設定契約」という。)を締結した(甲17)。その際,被告は,本件商標以外の商標について,その契約期間4年を上回る10年を存続期間とする専用使用権設定登録(以下「本件専用使用権設定登録」という。)の同意書を原告(代理人SLC社)に対して送付し,契約期間を4年とする登録の同意書であると原告(代理人SLC社)を誤信させてその同意書に署名をさせ,同年12月20日,事実に反して契約期間を10年とする専用使用権の違法な本件専用使用権設定登録をした。
イ本件専用使用権設定登録の抹消の遅延そして,本件専用使用権設定契約は,平成16年10月30日の契約期間満了時に更新契約がされなかった上,再三にわたる原告からの本件専用使用権設定登録の抹消要求にもかかわらず,被告は平成19年1月9日まで本件専用使用権設定登録の抹消に同意せず,実際に抹消登録をしたのは,同年5月9日であった(甲23)。
ウホームページによる営業妨害行為さらに,被告は,本件専用使用権設定契約の更新を原告に拒絶されたことから,原告に報復し,原告の利益を害することを目的として,平成20年5月15日の時点において,「本件商標については被告が所有しており,また,その専用使用権を得ている。」旨の虚偽の事実を被告のインターネットのホームページ上で広告するという,原告に対する営業活動妨害行為をしていた(甲24)。
なお,甲24のホームページを印刷した書面は,K 弁護士が平成20年5月15日当時にインターネットで閲覧し,瑕疵なくプリントアウトするため,自己のパソコンのプリント・スクリーンに一度取り込んでから印刷したものであり,弁護士倫理に反して証拠操作をしたようなものではない。
エ本件取消審判請求が信義則違反,権利濫用に当たること公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に関する商標法4条1項7号の適用に関しては,「特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が,その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど,当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も,この規定に該当すると解するのが相当である。」とされている(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第7号平成16年12月21日判決参照)。この法理は,商標法50条による商標取消審判請求にも適用されるべきである。
これを本件についてみると,本件取消審判請求は,本件専用使用権設定契約を締結していた被告が,前記のとおり違法な本件専用使用権設定登録行為,本件専用使用権設定登録の抹消の遅延,ホームページによる営業妨害行為をした上,不使用期間3年の経過を待って商標法50条1項により本件商標の登録取消審判請求をしたものであり,商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当するから,信義則違反又は権利濫用に当たるものとして,許されない。
オ なお,被告が前提となる背景事情として述べる事実関係は,否認し,又は争う。H がスマイル・マークの創作者であると認めるに足りる創作当時の客観的証拠はない。また,本件商標は,左目でウィンクしているスマイル・マークであって,原告による本件商標登録が最も早い。
2被告の反論(1) 取消事由1(本件商標の使用の事実)に対しア原告は,審判において何ら使用の事実を主張,立証しなかったものであるから,約1年後の本件訴訟の段階になってから新たな使用の事実を主張立証することは許されない。
イ原告提出の証拠は,本件商標の使用との関連性がなかったり,パソコンにより誰でも自由に後で作成することが可能なものであったり,内部書類にすぎなかったり,弱い立場のサブ・ライセンス先を介して容易に捏造することができるようなものであるから,いずれも信用性がない。よって,使用の事実が証明されたとはいえない。
(2) 取消事由2(本件取消審判請求が信義則違反,権利濫用に当たること)に対しア前提となる背景事情(ア)原告は,スマイル・マークの著作者ではないこと 原告は,1971年にスマイル・マークを自ら創作,著作したと公言している。しかし,原告は,仏国の「フランス・ソワール」紙が1970年当時に「スマイル・キャンペーン」を行った際のスマイル・マークを盗用して,その商標登録をした者にすぎず,著作権者ではない。なお,1968年ころ原告を含む3人のフランス人が,アメリカ旅行をした際にスマイル・マークを見て,帰国後に3人の名前でフランスでの商標登録の出願をしようと約束したが,原告が単独でスマイル・マークの商標登録出願をした旨のレポートの記載がある。
また,原告は,すべてのスマイル・マーク関連商標について,米国特許庁により「拒絶」されている。
さらに,原告は,米国「People」誌において,「自分はスマイルを創作したことはなく,商標登録をしただけである。」旨告白している。
(イ)米国人 H がスマイル・マークの著作者であること スマイル・マークは,1963年に米国人 H が創作,著作したものである。スマイル・マークが創作・著作された経緯は,H の故郷である米国マサチューセッツ州ウスター市の2つの保険会社が合併する際,両社の社員の融合を図るために,保険会社副会長が,当時ウスター州でグラフィック・デザイナーをしていた H に対し,バッジやカード,ポスター等に使える小さなシンボルマークの制作を依頼したことに始まる。H は,同依頼に基づきスマイリー・フェイスを制作した。当初,同保険会社は,「バッジ」を顧客に配布していたが,「バッジ」の人気が全米に広まり,米国民1億人の胸に「スマイル・バッジ」が着けられた。2001年4月12日,H が死去したときには,全世界の新聞において,「スマイルの生みの親」の死去として紹介された。
ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団又は有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッドは,スマイル・マークの基本マーク(「DESIGNED BY HARVEY R. BALL USA 1963」と一体となったもの)等104件について米国で商標登録をし,我が国でも834件の本件商標及びその関連商標についての商標登録をし,126件の著作物について「著作権登録」をしている。
(ウ)日本でのスマイリー・フェイスの登場 日本では,1970年(昭和45年),「ニコニコ・マーク」,「ラブ・ピース」の大流行とともに,スマイリー・フェイスの人気が高まった。文具メーカーが,スマイル・マークを使用し,文具等の企業26社が「ラブ・ピース・アソシエーション」を作り,大規模な共同宣伝を行った。その結果,人気が高まり,スマイル・マークは,知らない者がいないほど著名になった。「ニコニコ・マーク」の大流行は,当時のアメリカを訪問した文具メーカーの担当者がアメリカの大流行を真似したものであり,それも H の功績であるといえる。
(エ)原告の日本での権利主張他方,原告は,平成9年ころ,来日し,当時の代理人であった株式会社イングラム(以下「イングラム社」という。)と共同で「記者会見」を行い,「スマイルは自分が『著作権』と商標権を有している。」,「無断使用者には断固たる処置を行う。」旨宣言し,同時に平成9年2月11日付け及び同年4月10日付けの日本経済新聞において,「私を勝手に使わないで!」などとする全面広告による警告を行った。
そのため,スマイル商標を使用していた日本の企業約30社は,原告に対して,多額の支払を余儀なくされ,共同広告まで強要された。
イングラム社は,平成10年,株式会社エフエム東京に対し,「原告及びイングラム社が,詐欺ビジネスを行っている。」旨の放送が営業妨害又は信用棄損に当たると主張して,損害賠償等を求める訴訟を提起した。2審の東京高等裁判所は,平成12年1月19日,原告はスマイル・マークの創作者でも著作権者でもなく,スマイル・マークの商標権を有しておらず,「『国際的詐欺ビジネスの様相を見せ始めている』と形容することも,あながち不当ではない」などと指摘して,イングラム社敗訴の判決を言い渡し(東京高等裁判所平成11年(ネ)第5027号事件),これが広く新聞報道された。
(オ)被告と原告との本件専用使用権設定契約の締結被告は,既にハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団とのライセンス契約に基づく「スマイル商品化事業」を「文房具」等を中心として行っていた。しかし,被告は,イングラム社と原告との前記代理人契約終了により困窮したライセンシーの混乱を収拾し,ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団をライセンス元とする前記「スマイル商品化事業」に対する原告からの妨害を排除して,「スマイル商品化事業」を維持発展させるため,平成12年10月30日,原告との間で,契約期間を4年間とする独占的使用権(再許諾権を含む。)を設定する契約(本件専用使用権設定契約)を締結した。
イ違法な本件専用使用権設定登録行為及び本件専用使用権設定登録の抹消拒否による使用妨害行為が存在しないこと(ア)被告は,専用使用権設定登録における存続期間については「10年」とすることについて,原告に説明して,その同意を得ていた。すなわち,専用使用権設定登録については,その手続の煩雑さ,費用負担その他を考えて,商標権の存続期間を10年にするのが業界の常識であり,本件専用使用権設定登録もそれに従ったにすぎない。よって,違法行為はない。
(イ)被告は,本件専用使用権設定契約の更新を懇願したにもかかわらず,原告から一方的に更新を拒絶され,本件専用使用権設定契約は,平成16年10月30日の期間満了により終了した。その「専用使用権」の登録抹消が遅れたのは,原告から平成19年まで抹消の要請がなかったため失念していたものにすぎない。
ウ前記のとおり,原告は,スマイル・マークの創作者ではなく,著作権者でもなく,スマイル・マークの商標権を有しておらず,「『国際的詐欺ビジネスの様相を見せ始めている』と形容することも,あながち不当ではない」などとする東京高等裁判所の判決言渡しを受けた経緯がある。原告が,スマイル・マークのライセンス事業を拡大できないのは,そのような事情が原因である。何人も商標不使用取消請求をすることができるとの制度の下において,上記のような事情によって使用されていない商標に対して,被告が商標の不使用取消審判請求をすることが信義則違反や権利濫用に当たる余地はない。
第4当裁判所の判断1取消事由1(本件商標の使用の事実)について当裁判所は,以下のとおり,本件予告登録前3年以内に日本国内において通常使用権者により本件商標が指定商品について使用されていたことが証明されたものであるといえるから,本件商標登録を商標法50条1項により取り消した審決は,取り消されるべきであると判断する。
(1)事実認定証拠によれば,以下の各事実が認められる。
アファインプラスによる本件商標の使用(ア)本件ファインプラス許諾契約の締結原告は,本件商標の管理権を有していたSLC社(日本における実際の代理業務担当者は株式会社タクトコミュニケーションズ)を代理人として,平成20年6月30日ころ,ファインプラスとの間で,本件商標について,その使用対象をアパレル(被服類),使用範囲を日本,使用開始日を同年8月1日,有効期限を平成22年7月31日とする本件ファインプラス許諾契約を締結した(甲3,33)。
(イ)ファインプラスによる本件商標の使用の事実ファインプラスは,本件ファインプラス許諾契約に基づき,通常使用権者として,平成20年7月4日ころ,原告代理人SLC社に対し,株式会社タクトコミュニケーションズを通じて,ファインプラスの個々の製品(本件商標の指定商品である被服)について,本件商標を使用することの承認を申請し(甲4の1〜10),同年9月末以降,本件商標を指定商品(被服)に付してこれを同社製品としてゼビオ株式会社,ヤマトフィナンシャル株式会社及び株式会社ヒマラヤに対し,販売した(甲25の1〜7,甲33〔ファインプラス代表者の陳述書〕)。
そして,ファインプラスは,平成20年9月1日から同年10月末日までと,平成21年3月1日から同月末日まで,本件商標使用製品の販売状況につき,商品名,純売上数,平均卸売単価,及びこれらに基づき契約に従って計算した商標使用料を記載した「SmileyWorld 製品販売報告書」(甲5の1〜3。その商品コードが甲4の1〜10の製品番号と一致)を作成し,これを月々,株式会社タクトコミュニケーションズを介して,原告代理人SLC社に対して報告した。
(ウ) 以上によれば,本件商標の通常使用権者であるファインプラスが,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標をその指定商品(被服)に付して販売したことが認められるから,通常使用権者であるファインプラスが本件商標を指定商品について使用したことが証明されたものであるといえる。
イ今泉による本件商標の使用(ア)本件今泉許諾契約の締結原告は,SLC社を代理人として,平成20年7月24日ころ,今泉との間で,本件商標について,その使用対象として履物を含み,使用範囲を日本,使用開始日を同年10月1日,有効期限を平成21年9月30日とする本件今泉許諾契約を締結した(甲6,35)。
(イ)今泉による本件商標の使用の事実今泉は,本件今泉許諾契約に基づき,通常使用権者として,本件商標を付した商品(履物であるサンダル)を掲載した平成21年度製品カタログ(甲7)を作成し,平成21年4月21日ころから6月2日ころにかけて,本件商標を付した履物(スマイリーワールドサンダル)を,卸売業者である有限会社マッシーズ(甲8・仕入伝票)や株式会社丸大(甲9・仕入伝票)のほか,小売業者である株式会社西友(甲10・物品受領書)に対し,販売した。
(ウ)以上によれば,通常使用権者である今泉が,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標をその指定商品(履物)に付して販売することにより,本件商標を指定商品について使用したことが証明されたものであるといえる。
ウサカモトによる本件商標の使用(ア)本件サカモト許諾契約の締結原告は,SLC社を代理人として,平成20年8月29日ころ(弁論の全趣旨),サカモトとの間で,本件商標について,その使用対象を文房具,使用範囲を日本,使用開始日を同年9月1日,有効期限を平成21年8月31日とする本件サカモト許諾契約を締結した(甲11,34)。
(イ)サカモトによる本件商標の使用の事実サカモトは,本件サカモト許諾契約に基づき,原告代理人SLC社に対し,株式会社タクトコミュニケーションズを通じて,個々の製品(文房具)について本件商標を使用することの承認を申請し(甲26の1〜30の2),本件商標を付した文房具についての製品カタログ(甲12)を作成し,平成21年1月23日ころから2月2日ころにかけて,本件商標を付した同社の製品を,株式会社エムディーエス(甲13・物品受領書),株式会社サンエイ(甲14・物品受領書),大平紙業株式会社(甲15・物品受領書)及びERG株式会社(甲16・物品受領書)に対し,販売した。
そして,サカモトは,平成21年3月から7月にかけて,本件商標使用製品の販売状況につき,品名,品番,数量,小売価格,合計額を記載した「SmileyWorld 製品販売報告書」(甲31の1〜6)を作成し,これを月々,株式会社タクトコミュニケーションズを介して,原告代理人SLC社に対して報告し,同年1月から6月末にかけてのロイヤルティーリポート(甲32の1及び2)も提出した。
(ウ)以上によれば,通常使用権者であるサカモトは,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標を付した指定商品(文房具)を販売したことにより,本件商標を指定商品について使用したことが証明されたものであるといえる。
(2)被告の主張に対する判断ア被告は,審判において何ら使用の事実を主張,立証しなかったものであるから,約1年後の本件訴訟になってから新たな使用の事実を主張立証することは許されないと主張する。
しかし,被告の主張は,採用の限りでない。すなわち,商標登録の不使用取消審判において審理の対象となるのは,その審判請求の登録前3年以内における登録商標の使用の事実の存否であるが,その審決取消訴訟においては,その事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和63年(行ツ)第37号平成3年4月23日第3小法廷判決参照)。
イまた,被告は,原告提出の証拠は,本件商標の使用との関連性がなかったり,パソコンにより誰でも自由に後で作成することが可能なものであったり,内部書類にすぎなかったり,弱い立場のサブ・ライセンス先を介して容易に捏造することができるようなものであるから,いずれも信用性がないと主張する。
しかし,被告の主張は採用の限りでない。すなわち,?ファインプラス作成の SmileyWorld 製品販売報告書(甲5の1ないし3),今泉作成の 2009 年度製品カタログ(甲7),並びに株式会社エムディーエス(甲13),株式会社サンエイ(甲14),大平紙業株式会社(甲15)及びERG株式会社(甲16)作成の各物品受領書は,いずれも原本であって,商品コード(製品番号)にも同一性が見られ,本件商標の使用と関連性があると認めることができるから,被告主張のように,パソコンにより誰でも後で作成することが可能なものであるとか,捏造されたものであるなどとはいえない。また,?第1回口頭弁論期日において写しとして提出された契約書(甲3,6,11)についても,裁判所からの求釈明に応じて,第2回口頭弁論期日においてその原本が追加提出されていること(甲3,34,35)に照らせば,本件の各許諾契約書の信用性を否定することはできない。さらに,?ファインプラスの代表者が原告主張のとおり通常使用権者として本件商標を使用した旨を述べた陳述書(甲33)が原告から追加提出されている。
以上の諸点に照らせば,使用の事実に係る原告提出の証拠はすべて信用性がないとする被告の前記主張は,採用の限りでない。そして,本件において,前記(1)の本件商標の使用事実の認定を覆すに足りる証拠はない。
2 結論以上によれば,原告主張の取消事由1(本件商標の使用の事実)は,理由がある。よって,その余の点について判断するまでもなく,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)「本件商標目録」(甲1,2)登録番号:登録第4952253号商標商標の構成:別掲登録出願日:平成17年1月7日設定登録日:平成18年5月12日商品及び役務の区分(指定商品):第3類家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛第16類事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て第25類被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴審判の請求の登録日:平成21年6月17日(別掲)
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 武宮英子