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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成24行ケ10068審決取消請求事件 判例 商標
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平成24行ケ10066審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10391審決取消請求事件 判例 商標
平成24行ケ10067審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  指定役務 /  周知商標 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項8号 /  4条1項15号 /  4条1項19号 /  不正目的(不正の目的) /  不正競争の目的 /  不使用 /  除斥期間 /  権利濫用(権利の濫用) /  通常使用権 /  専用使用権 /  観念(観念類似) /  国内 /  存続期間 /  無効審判 /  更新登録 /  登録異議申立 /  不使用取消審判 /  外国 /  継続 /  商号 /  同業者 /  卑猥(卑わい) /  差別的 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10040号 審決取消請求事件
原告ジャス・インターナショナル株式会社
訴訟代理人弁護 士仲村晋一
被告ポロ・ビーシーエス株式会社
訴訟代理人弁護 士山本忠雄矢口敬子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/11/08
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた判決
特許庁が無効2009-890038号,無効2009-890039号,無効2009-890040号及び無効2009-890046号の併合事件について平成22年1月21日にした審決を取り消す。
事案の概要
原告は,被告が商標権者である4つの商標登録について無効審判請求をしたが,特許庁から請求却下及び請求不成立の審決を受けたので,その取消しを求めた。
主たる争点は,訴権濫用の有無,原告の利害関係の有無,商標法4条1項7号,15号,19号の該当性である。
1 特許庁における手続の経緯(1)被告は,平成10年4月27日以降,別紙1本件商標目録記載1〜4の各商標(以下,これらを順に「本件商標1」〜「本件商標4」といい,これらを併せて「本件各商標」という。)の商標権者である。
(2)ア原告は,平成21年4月30日,本件商標1の登録を無効とするとの無効審判を請求した(無効2009-890038号事件 。)イ原告は,平成21年4月30日,本件商標2及び3について,いずれも指定商品中第25類( 被服 )の全指定商品の登録を無効とするとの各無効審判を請求 「」した(本件商標2に係る請求は無効2009-890039号事件,本件商標3に係る請求は無効2009-890040号事件 。),, (「」) ウ 原告は 平成21年5月11日 本件商標4の指定商品中第25類被服の全指定商品の登録を無効とするとの無効審判を請求した(無効2009-890046号事件 。)エ特許庁は,上記ア〜ウの無効審判請求事件の審理を併合し,平成22年1月21日 「本件審判の請求中,商標法4条1項15号並びに不正競争防止法2条1 ,項1号及び2号を理由とする請求は却下する。その余の請求は成り立たない 」旨。
の審決をし,その謄本は平成22年2月2日原告に送達された。
2 審決の理由の要点(1) 原告の利害関係について原告は,海外に実在する「POLOCLUB」と契約してその名称を使用した事業を計画するなどしている旨述べており,各審判請求につき利害関係がある。
(2)商標法4条1項7号の登録障害事由のうち同法46条1項1号の無効理由該当性について本件各商標の「POLO」の文字は,乗馬競技を意味するものであるから,その構成自体が非道徳的等に当たる文字でないことは明らかである。また,本件各商標を指定商品について使用することが社会公共の利益に反するなどということもできない。さらに,国際信義に反する場合等に当たるともいえない 「POLO」の語自体は。
著作物ではなく,他の法律により使用が禁止されている場合に当たらない。原告提出の証拠に記載された事情が存在するとしても,そのような事情のみによって,直ちに登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが到底容認し得ないような場合に当たるとはいえない。したがって,本件各商標の登録は,商標法4条1項7号に違反してされたときに該当しないので,同法46条1項1号の規定によりその登録を無効とすべきではない。
(3)商標法4条1項7号の登録障害事由のうち同法46条1項5号の無効理由該当性について原告の主張は被告が本件各商標をラルフ・ローレン(以下,特に断らない限り,ラルフ・ローレン個人,ポロ・ファッションズ・インコーポレーテッド,ザ・ポロ・ローレン・カンパニーの会社を総称して「ラルフ・ローレン」という )に係る。
商品と誤認させる方法で使用しているというものであるが,被告は,本件各商標についてラルフ・ローレンとライセンス契約を締結し 「POLO」に関する商標を使用 ,しているから,本件各商標の使用が社会公共の利益に反するなどとはいえない。また,本件各商標の登録が米国と我が国の関係に影響を与えたり,我が国の公益を害するものとも認められない。したがって,本件各商標の登録は,商標登録がされた後において商標法4条1項7号に掲げる商標に該当するものとなっているときに該, 。 当しないので 同法46条1項5号の規定によりその登録を無効とすべきではない(4) 商標法4条1項15号の登録障害事由の有無について本件商標1に関する請求は,平成8年法律第68号による改正前の商標法47条によって,不正の目的の有無に関わらず,5年の除斥期間が適用される。
本件商標2〜4については,同改正後の商標法47条1項により,不正の目的で商標登録を受けた場合を除き,5年の除斥期間が適用される。本件商標2〜4は「POLO」の文字を共通にする点で本件商標1の関連商標といい得るものであり,本件商標1について被告とラルフ・ローレンとの間で通常使用権許諾契約が締結されるといった経緯・事情の下では,本件商標2〜4について不正の目的で登録を受けたとは認め難く,5年の除斥期間が適用される。
そして,商標法4条1項15号に関する請求は,いずれも除斥期間経過後にされたものであるから,不適法な請求である。
(5) 商標法4条1項19号の登録障害事由の有無について原告が提出する証拠を勘案しても,本件各商標の登録は,商標法4条1項19号に違反してされたものと認めることはできない。
(6) 不正競争防止法2条1項1号及び2号を理由とする請求について不正競争防止法2条1項1号及び2号違反は,商標法46条所定の無効理由に該当しない。したがって,この点を理由とする請求は不適法な請求である。
原告主張の審決取消事由及び被告の主張に対する反論
1 訴権濫用(権利濫用)の被告の主張に対して被告の主張については,否認ないし争う。
2 原告の利害関係に係る被告の主張に対して原告は,平成10年から平成12年にかけて,海外の有名な「POLO」関係のブランド(名称)を使用して,日本国内で「商品化事業」を行っていた。原告は,平成10年ころ,被告から本件各商標を盾にした妨害を受け,この事業を断念し,損害を受けた経緯がある。しかし,原告は,それらの事業の準備を現在まで継続しており,最近も,海外に実在する複数のポロクラブと交渉して,その名称を使った事業の再開を計画しており,本件各商標の存在は,原告の上記事業展開の障害となる。
したがって,原告には利害関係がある。
3 商標法4条1項7号の登録障害事由の有無に関する判断の誤り(1)被告が本件各商標を登録・保持している目的は,世界的に有名な米国のラルフ・ローレンの著名性に便乗して日本の消費者に誤認を与え,ラルフ・ローレンの半分以下の値段で商品を売って利益を上げることにある。
(2)本件商標1の出願日は昭和47年6月13日であるが,出願人のAは,同日 「ラルフローレン」という商標の登録出願を行っている。また,ラルフ・ロー ,「」 (), レンの POLO 商品が大々的にスタートしたのが昭和42年 1967年 でありそのことは日本でも当時マスコミで相当報道されていた。したがって,Aが,ラルフ・ローレンの「POLO」の著名性に便乗して,日本の消費者に誤認を与える目的で本件商標1を出願したことは明らかである。
(3)本件商標3及び4が出願された理由については,被告が「POLO」の表示のみからなる商標を単体で使用すると,消費者が被告とラルフ・ローレンとの関連を誤認することを十分に意識しているため,消費者からの非難や抗議を避けるために出願したものである 事実 被告のすべての現在の商品には POLO の文字と BRITISH 。, 「」「COUNTRYSPIRIT」の文字とを組み合わせたものを使用している。このように,被告は,明らかに 「不正競争防止法違反」に該当することを認識している。 ,(4)審決では,本件各商標の権利者であった公冠販売株式会社とラルフ・ロー。,, レンとの間で不争契約が締結された旨認定している しかし ラルフ・ローレンは日本進出の際に,不本意ながら不争契約を締結させられたのである。また,不争契約の内容も,被告が,ラルフ・ローレンによる商標使用を容認するというものであって,ラルフ・ローレンの著名性を被告が使用できるという内容ではない。消費者は,被告の製品をラルフ・ローレンの製品と同一だと誤信しているのであり,上記のような契約があるからといって,消費者に誤認を与えてよいとはいえない。
また,上記不争契約の対象も本件商標1及び2のみであって,本件商標3及び4は無関係である。
(5)本件各商標は,ラルフ・ローレンのファッションデザインの著作物の著作権を侵害している。
(6)したがって,本件各商標は,?当該商標の構成自体が非道徳的,卑わい等, , でなくとも 指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し社会の一般的道徳観念に反する場合,?他の法律(不正競争防止法等)によって,当該商標の使用が禁止されている場合,?特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,?当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当する。
4 商標法4条1項15号の登録障害事由の有無に関する判断の誤り本件各商標は,他人(ラルフ・ローレン)の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある商標であるから,商標法4条1項15号に該当する商標である。
本件各商標は,不正競争防止法に反して商標登録を受けたものであって,商標法4条1項7号に該当するので 「除斥期間」適用外であると考えるべきである。 ,5 商標法4条1項19号の登録障害事由の有無に関する判断の誤り(1)本件各商標は,ラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務を表示するものとして,日本国内又は海外における需要者間に広く認知されている商標と同一又は類似のものであって,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法4条1項19号に該当する商標である。
, , (2) すなわち ラルフ・ローレンの使用する標章と被告の使用する標章とでは「POLO」の字体が同一であり,ポロ・プレーヤーのマレット(杖)の向きが上向きか下向きの違いしかなく,本件商標3,4については,商標のうち「POLO」の部分を強調しており,消費者を誤認させている。また,被告は,自己使用の目的で本件,「」() 各商標を保持しているのではなく いわゆる 商標ブローカー として他人 9社に本件各商標の使用を許諾し,ラルフ・ローレンと混同させるような商品を製造・販売させている。さらに,被告とラルフ・ローレンのホームページにはいずれもスポーツのポロのイメージはなく,アメリカ・カジュアルのイメージしかない。これらの事情を総合的に判断すると,被告が米国,日本又全世界で有名なラルフ・ローレンの著名性やそのイメージに便乗し,不正な目的で商標を登録し,維持していることは明らかである。
(3)ラルフ・ローレンは,昭和42年(1967年)には,米国で活躍を開始,, , しており その後 ニューヨークの高級百貨店であるブルーミングデールに出店し米国最高のファッション・デザイナー賞であるコティ賞を受賞するなどしていた。
,(), 「」 また 昭和45年 1970年 当時 米国のラルフ・ローレンの商品の半分が POLOのネクタイであったことは有名で,誰でも知っている事実であった。
他方,Aは,本件商標1の出願と同日 「ラルフローレン」という商標の出願を ,行っている。また,本件商標1の出願日は昭和47年6月13日であり,その当時日本でラルフ・ローレンの米国での著名性はよく新聞・雑誌等で報じられていた。
さらに,Aは,ネクタイの専用メーカーを経営していたが,本件商標1についても指定商品をネクタイ関連に限定して出願している。これらの事情に加えて,日本では「ポロ競技」はほとんど知られておらず,ラルフ・ローレンの流行と無関係に着想するとは考えられない。
したがって,Aが,ラルフ・ローレンの著名性に便乗する目的で本件商標1の登録出願をしたことは間違いない。
さらに,丸永衣料株式会社は,昭和47年に別紙2参考商標目録記載の商標(以下「丸永商標」という )の登録出願をしている。そうすると,A(タッグネック 。
ウェアー工業株式会社)と丸永衣料株式会社の2者が,昭和47年当時,同時に「POLO」に関する商標(丸永商標と本件商標1)を出願したことになるが,同時期に 「POLO 競技を着想して出願した」というのは,あまりにも偶然すぎて不自然で ,ある。これに加えて,丸永衣料株式会社とAが,無効審判請求等で弁護士を介入させて争い,その結果,和解契約を締結することなどは普通でなく,その裏に両者がそれぞれ将来の大きな利益,すなわち,ラルフ・ローレンの著名性を日本で利用して,不当な利益を上げる目的を有していたといえる。
以上のとおり,本件商標1は,ラルフ・ローレンの著名性とイメージに便乗した不正な目的で商標登録が行われた。そして,本件商標2〜4は,本件商標1が不正の目的で商標登録されたことに関連して出願されたもので,やはり不正の目的で出願されたものである。
6 不正競争防止法2条1項1号及び2号に関する判断の誤り商標法47条において「不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く」とされていることからすると,不正競争防止法2条1項1号及び2号に反する場合も商標の無効理由とすべきである。
被告の主張及び反論
1 訴権濫用(権利濫用)原告は,本件各商標に関して,無効審判請求,不使用取消審判請求,審決取消訴訟の提起を行い,これを利用して被告に関するネガティブキャンペーンを行い,これらと同時に,被告の困惑に乗じて,被告から本件各商標の実施権など何らかの経済的利益を引き出そうとしてきた。また,原告は,被告が原告に対して本件各商標に基づいて異議を述べたことにより原告の事業が頓挫したと邪推し,私怨を晴らすために本件訴訟を提起している。さらに,被告は,数年おきに行われる上記の審判・訴訟に対応するため,訴訟費用や時間等の多大なる損失を被っている。
このように,原告の訴訟提起は,正当な権利行使ではなく,訴権の濫用である。
少なくとも,このような原告が商標法上の公益的理由(商標法4条1項7号,15号,19号)に基づく商標の無効を主張することは,権利濫用として認められるべきではない。
2 原告の利害関係原告提出の証拠によっても,原告が「POLO」関連のビジネスを行おうとしていたのは,直近でも平成10年ころである。したがって,原告が,現在,そのような事業を行っていない以上,もはや利害関係人とはいえず,原告の請求は不適法なものとして却下されるべきである。
3商標法4条1項7号の登録障害事由のうち同法46条1項1号の無効理由該当性に対して(1)本件各商標は 「POLO」の文字の構成等からして,?その構成自体が非道徳 ,的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,?当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般道徳観念に反する場合,?特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合のいずれにも該当しないことは明らかである。
(2)本件各商標の「POLO」の語は著作物とはいえず,他人の著作権を侵害することもない。
(3)本件各商標の登録の経緯は,次のとおりであり,商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合にも該当しない。
ア被告は,繊維製品の製造・卸売業を営む公冠株式会社とその子会社である公冠販売株式会社が共同で出資して設立した会社である。
このうち,公冠販売株式会社は,昭和60年に商号を変更するまでは,丸永衣料株式会社という商号で営業していた。そして,丸永衣料株式会社は,昭和43年ごろから「ポロ競技」に着想を得た「POLO」商標を子供服のブランドとして使用し,昭和47年4月22日に丸永商標を出願した。その後,丸永衣料株式会社は,丸永商標を子供服だけではなく,婦人服,紳士服の分野にも拡大し,丸永衣料株式会社が公冠販売株式会社と商号を変更して以降も,丸永商標を付した衣料は,公冠グループの「POLO」ブランドとして,全国に浸透した。
また,丸永衣料株式会社は,昭和56年4月6日,丸永商標の小文字筆記体を大文字ゴシック体にしたものとして,本件商標2を出願した。
, , 。 イ 一方 丸永商標と同時期の昭和47年 本件商標1がAによって出願されたAは,一般人ではなく,当時京都で「タッグネックウェアー工業株式会社」を経営していたネクタイの製造業者であり,昭和47年当時流行していた英国トラッドデザインの一環として,英国の伝統的なスポーツの一つであるポロ競技に着想し,「POLO」の文字からなる本件商標1を自己の商標として出願した。
, , , この後 丸永商標が先願であるにもかかわらず 本件商標1が先登録されたため丸永衣料株式会社は,本件商標1につき無効審判請求を行った。この過程で,Aと丸永衣料株式会社との間で和解が成立し,Aが代表であるタッグネックウェアー工, , 業株式会社にネクタイ マフラーに関する専用実施権を設定することを条件として本件商標1は,丸永衣料株式会社に譲渡された。
ウ昭和51年ころからラルフ・ローレンは,西武百貨店とのライセンス契約により日本に進出した。しかし,ラルフ・ローレンは,上記ア,イの事情があったため,昭和56年に西武百貨店を通じ,丸永衣料株式会社への交渉を申し入れた。そして,昭和62年1月1日付けで,公冠販売株式会社がラルフ・ローレンに本件商標1を含む商標を許諾するライセンス契約の締結がなされた。
エその後,公冠グループは,百貨店などを中心とした高価格帯の商品を展開す「」 ,,「」 るラルフ・ローレンの POLO との差別化を明確にするため 自らは 従来から POLOとともに展開していた「POLO BRITISH COUNTRY SPIRIT (以下「POLO BCS」とい 」う )の商品を量販店などの大衆向け商品に拡充すべく,本件商標4を昭和60年 。
に,本件商標3を昭和63年に出願した。
,「」, , そしてPOLO BCS を含む本件各商標は 公冠販売株式会社から被告に継承され平成11年からは,被告が,ライセンサーとして 「POLOBCS」ラインのビジネス ,を拡大した。
オ以上のとおり,被告は,ラルフ・ローレンの「POLO」とは無関係に,日本において「POLO」製品を製造していた企業を母体とする企業である。他方,ラルフ・ローレンが日本に本格的に進出し始めたのは昭和51年からで,それ以前には,日本での知名度はほとんどなかった。したがって,本件商標1は,ラルフ・ローレンの著名性を利用する目的で出願されたものではない。また,本件商標2は上記のとおり丸永商標に関連して出願されたものであるし,本件商標3及び4は 「POLO,BCS」ラインのビジネスを拡充するために出願されたものである。よって,出願の経緯に社会的相当性を欠く事情はなく,不正の目的もない。
(4)商標法4条1項7号の適用範囲は,商標権を受けるべき者をめぐる争いのような当事者間の私的な問題といえるような場合にまで安易に拡大するべきではなく,これらの問題は商標法4条1項8号,10号,15号,19号などの条項によって専ら解決されるべきである。そして,万が一にも本件で原告が主張するような事情があったとしても,それは商標を受けるべき者か否かに関する被告とラルフ・ローレンとの私的な問題にすぎず,本号を適用して判断すべきではない。
4商標法4条1項7号の登録障害事由のうち同法46条1項5号の無効理由該当性に対して(1)被告は,ラルフ・ローレンとの間で本件商標1を含む「POLO」に関する商標についてライセンス契約を締結し,これらの商標について,被告が,ラルフ・ローレンに使用を許諾している関係にある。このような関係からすると,被告がラルフ・ローレンの著名性に便乗した商売を行っているとはいえない。
また,本件各商標を付した被告の商品は一般大衆を対象にロードサイド店等(はるやま等)で販売され,一方,ラルフ・ローレンの「POLO RALPH LAUREN」ブランドを付した商品は,高価格品として百貨店などで販売されており,両商品は,販路が明確に異なっている。
さらに,商標のコンセプトも,被告のものは,英国カントリー精神を基調としている点で,アメリカ発のラルフ・ローレンとは異なっており,多くの消費者に認知されている。
加えて,被告の商標を付した商品には「ポロ・ビーシーエス?との提携により企画・製造されたものです」と明記されており,原告が主張するごとく消費者に誤認を与えるものではない。
(2)また,本件各商標は,?その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,?当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般道徳観念に反する場合,?他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,?特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合のいずれにも該当しない。
(3)したがって,本件各商標は,登録された後においても 「公の秩序又は善良,な風俗を害するおそれがある商標」に該当するものにはなっていない。
5 商標法4条1項15号の登録障害事由の有無に対して(1)本件商標1については,平成8年法律第68号による改正前の商標法47条が適用され,不正の目的の有無を問わず,除斥期間の適用を受ける。
(2)また,本件商標2〜4については,商標登録の時期において,登録を受け,, 。, た者について 不正の目的は存在せず これも除斥期間の適用を受ける すなわち本件商標2は,丸永商標と関連する商標として出願され,本件商標3及び4については,上記のとおり 「POLO BCS」ラインの明確化,拡充のために出願されたもので ,あって,その登録当時に不正の目的はない。加えて,これらの商標はそれぞれ,平成9年5月2日,同年6月13日,同月20日に設定登録をされたものであり,そのころ既に被告とラルフ・ローレンの間には,昭和62年1月1日付のライセンス契約が存在していた。そして,本件商標2〜4は,このライセンス契約と密接に関連する商標であり,この登録の当時に,登録を受けたものである公冠販売株式会社につき,不正の目的があったとはいえない。
6 商標法4条1項19号の登録障害事由の有無に対して本件各商標の出願当時,各出願人に「不正の目的」は全くなかった。
(1)まず,本件商標2〜4の出願当時の事情については,上述したとおりであり,公冠販売株式会社に「不正の目的」は存在しない。
(2) また,本件商標1を出願したAにも 「不正の目的」は存在しない。 ,すなわち,本件商標1の出願がされた昭和47年(1972年)当時は,ラルフ・ローレンの「POLO」商標は,米国においても周知商標ではなかった。1970年代初頭,ラルフ・ローレンは,ニューヨークにおいて,ネクタイに「POLO」商標を, , , 使用し始め コティ賞を受賞するなどしたが 彼の名前は世間に知られてはおらず彼のファッションが一般大衆に知られるようになったのは,昭和49年(1974年)の映画「華麗なるギャツビー」の衣装製作を手がけたことがきっかけである。
さらに 「POLO」の語自体は,乗馬競技である「ポロ」からなる普通名詞で,独 ,創的な造語といえるものではないため,誰でも思いつくことができるものであり,不正の目的で出願したことを推定することはできない。
7 不正競争防止法2条1項1号及び2号の主張に対して不正競争防止法違反は,商標法46条が定める無効理由のいずれにも該当しないものであり,この点に関する審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 認定事実証拠(本文中に掲記のとおり。なお,特に明示しない限り枝番を含む )及び弁。
論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1) 本件各商標ア本件商標1は,Aにより昭和47年6月13日に商標登録出願され,昭和55年9月29日に商標登録第1434359号として設定登録がされ,平成2年9。, 月20日及び平成12年4月18日にそれぞれ存続期間更新登録がされた また本件商標1については,Aから丸永衣料株式会社に移転されて昭和58年12月19日に移転登録がなされ,さらに,昭和60年1月21日に丸永衣料株式会社が公冠販売株式会社へと商号変更した後,公冠販売株式会社から被告に移転されて平成10年4月27日に移転登録がなされた(甲1の1,38の1 。)イ本件商標2は,丸永衣料株式会社により昭和56年4月6日に商標登録出願され,平成9年5月2日に商標登録第2721189号として設定登録され,その, 。, 後 平成19年4月24日に存続期間更新登録がされた 本件商標2については出願後に丸永衣料株式会社が公冠販売株式会社へと商号変更したのに伴い,公冠販売株式会社を商標権者として設定登録され,公冠販売株式会社から被告に移転されて平成10年4月27日に移転登録がなされた(甲1の2,38の2,弁論の全趣旨 。)ウ本件商標3は,公冠販売株式会社により昭和63年11月9日に商標登録出願され,平成9年6月13日に商標登録第4012493号として設定登録され,平成19年4月24日に存続期間更新登録がされた。本件商標3については,公冠販売株式会社から被告に移転されて平成10年4月27日に移転登録がなされた(甲1の3,38の3 。)エ本件商標4は,公冠販売株式会社により昭和60年8月1日に商標登録出願され,平成9年6月20日に商標登録第4015885号として設定登録され,平成19年4月24日に存続期間更新登録がされた。本件商標4については,公冠販売株式会社から被告に移転されて平成10年4月27日に移転登録がなされた(甲1の4,38の4,54 。)(2) 本件各商標の出願に関連する事実経過ア1939年ニューヨーク生まれのラルフ・ローレンは,1967年(昭和42年)に「POLO」と名付けたブランド名で幅広のネクタイの販売を始め,1968年(昭和43年)にポロ・ファッションズ・インコーポレーテッド社を設立し,1969年(昭和44年)にニューヨークの高級デパートに「POLObyRALPHLAUREN」ショップを出店し,1970年(昭和45年)にファッションに関する賞であるコティ賞を受賞し,1971年(昭和46年)にポロ・プレーヤーの図形を考案した(甲6,48〜51 。)イAは,ネクタイ等を製造する会社であるタッグネックウェアー株式会社を経営していたところ,昭和47年6月13日,本件商標1の商標登録出願を行い,これと同日 「ラルフローレン」の文字からなる商標登録出願も行った(甲65,6 ,7,81,乙25,証人A 。ただし 「ラルフローレン」の出願については,昭和 ),51年10月20日,特許庁により拒絶査定を受けた(甲81 。)ラルフ・ローレンは,昭和52年1月26日に,本件商標1の商標登録異議申立てをしたが,昭和55年3月17日に,この申立ては理由がないとの決定があった(甲82 。また,ラルフ・ローレンは,昭和58年9月22日に,本件商標1の )無効審判請求をしたが,平成7年1月23日に,請求不成立の審判があった(甲83 。)ウ丸永衣料株式会社は,昭和40年代前半ころ以降,小文字の「polo」の文字からなる標章を付した衣料品を販売しており(乙29,証人B ,昭和50年ころ)からは,紳士用衣料品で大文字の「POLO」の文字からなる標章を使用するようになり(証人B ,昭和47年4月22日に小文字の「POLO」の文字と図形からなる丸 )永商標を出願し,昭和55年12月25日に設定登録され(乙13 ,昭和56年)に本件商標2を出願した(甲1の2,証人B,弁論の全趣旨 。)さらに,丸永衣料株式会社は,昭和55年ころから 「POLOBRITISHCOUNTRY ,SPIRIT」の文字からなる商標を付した紳士用衣料品を販売するようになった(証人B 。)エ丸永衣料株式会社は,昭和56年6月4日,本件商標1について,無効審判請求をしたが(甲1の1,93 ,昭和58年6月ころ,指定商品のうちネクタイ )及びマフラーについてタッグネックウェアー株式会社に専用使用権を設定することを条件として,本件商標1をAから譲り受ける旨の合意をして丸永衣料株式会社とAとの間では決着をみた(乙15,証人B 。)丸永衣料株式会社は 昭和60年1月21日 公冠販売株式会社に商号変更し 乙 ,, (13 ,昭和60年8月1日に本件商標4を,昭和63年11月9日に本件商標3 )をそれぞれ出願した(甲1の3,54 。)オ公冠販売株式会社は,昭和62年1月1日,ザ・ポロ・ローレン・カンパニーとの間で,公冠販売株式会社がザ・ポロ・ローレン・カンパニーに対して本件商標1及び丸永商標の通常使用権を設定し,ザ・ポロ・ローレン・カンパニーからロイヤルティを受領すること等を内容とする契約を締結した(甲32,乙28 。)カ被告は 「POLO」関連のブランドを管理する会社として,平成元年3月 ,, , 17日 公冠株式会社と公冠販売株式会社が資本金を折半して設立した会社であり公冠販売株式会社から本件商標1〜4を譲り受け,これらの商標につき前記(1)のとおり移転登録を得,丸永商標についても同様に譲り受け,移転登録を得た(甲25,38,乙13 。)(3) 本件各商標と原告ア原告は,平成5年ころから平成12年ころにかけて,海外のポロクラブであ「 」,「 」 る ASCOT PARK POLO CLUB 等と交渉し 日本国内で ASCOT PARK POLO CLUB等の標章を用いた商品の製造あるいはその仲介などの事業をしていた(甲23,24,39〜47,61〜64 。)原告は,平成5年から平成12年にかけて 「ASCOTPARKPOLOCLUB」等の ,「POLO」の文字を含む商標登録の出願を多数行ったが,平成13年ころまでに,書証で出ている出願はいずれも拒絶査定を受けている(甲22 。)原告は,平成22年にも 「ASCOTPARKPOLOCLUB」等の海外のポロクラブ関 ,係者と連絡を取るなどして,事業を再開しようとしている(甲71〜75の1,弁論の全趣旨 。)イ平成10年ころ,原告が「POLOCITY」の商標の使用を第三者に許諾し,この商標を付した商品を販売しようとしたところ,被告から,本件商標1及び2の商, ()。, 標権を侵害する旨の通知を受け 対応の検討等を余儀なくされた 甲78またそのころ,被告は 「POLOCITY」の商標について商標登録異議の申立てをしてい ,た(甲77,乙2 。)原告は,平成10年6月,本件商標2について無効審判請求を行い,同業者に対して同様の無効審判請求を行うよう働きかけるなどした(乙2〜4 。また,原告)は,平成11年12月ころ,被告に対し,無効審判請求と関連させて,被告の有する「POLO」関係の商標につき原告に対する通常使用権を設定するよう求める旨の書(),,,, 面を送付し 乙5〜7平成16年3月 平成21年8月 平成22年4月にも被告の有する商標や事業に原告が関与することを希望する趣旨の書面を送付した(乙10〜12 。なお,原告は,平成16年ころ,本件商標2及び3に関する無 )効審判請求を取り下げた(乙8,9 。)2 訴権濫用(権利濫用)について被告は,原告によって無効審判請求等の各手続,ネガティブキャンペーン,経済的利益の要求等が行われたことや,被告の原告に対する本件各商標に基づく権利行使に対する報復として本件訴訟が提起されたことなどを理由として,本件訴訟が訴権の濫用あるいは権利濫用に当たると主張する。
しかし,本件訴訟提起については,商標登録の無効審判請求をするに当たって必要な利害対立がある当事者間で通常想定される審決取消訴訟の提起の範囲を超えて,不当な権利行使であるとすべき事実関係までは認められない。原告が被告に対して通常使用権設定の申出等を行ったことが直ちに不当であるとまではいえないし,商標権者から商標権侵害の通知を受けたことに対する防御のために無効審判請求を行うことも想定し得るのであって,被告による商標権行使に対抗するために無, 。 効審判請求を行い その審決の取消訴訟を提起することが不当であるともいえない原告が同業者に対して無効審判請求をするよう働きかけた事実も,本件訴訟の提起をもって訴権の濫用とするに足りない。
したがって,被告の主張する事実関係を前提としても,本件訴訟の提起が訴権の, 。 濫用あるいは権利濫用に当たるとはいえず 被告の主張は採用することができない3 原告の利害関係について上記1で認定した事実関係によれば,?原告は,平成5年ころから平成12年ころまでの長期間にわたり,本件各商標と「POLO」の文字部分が共通する標章や商標を用いて商品の製造の仲介等の事業を行っており,これに伴い被告から本件商標1及び2の商標権を侵害する旨の通知を受け,あるいは商標登録異議の申立てを受けるなどしていたのであり,?その後も,原被告間においては,平成16年ころまで本件商標2及び3について無効審判請求が係属しており,?原告は,平成22年に, , 入っても 以前交渉していたポロクラブ等と連絡を取っているというのであるから, , 原告には 平成12年以降もそれまで行っていた事業の再開を計画してきたもので本件各商標はその妨げとなるものとして,本件各商標の無効審判を請求するについての利害関係があるといえる。
したがって,この点に関する審決の判断に誤りはなく,被告の主張は採用することができない。
4 商標法4条1項7号の登録障害事由の有無について(1)商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」の該当の有無を判断するに際し,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含まない場,, ,, 合においては 同項15号 19号の各規定が置かれている趣旨に照らすと 単に他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがあるか,あるいは,他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものであるかが問われるときには,15号,19号に規定された各要件を充足するか否かによって,4条1項所定の障害事由の成否を検討すべきであって,そのような事実関係が存在することのみをもって7号の障害事由に該当すると解するのは相当とはいえない。
(2)7号に関する原告の主張は,要するに,本件各商標は,日本国内又は海外で著名であったラルフ・ローレンの「POLO」の著名性に便乗し,日本の消費者を誤認させ,不当な利益を上げることを目的として登録・保持されているものであるから,公序良俗違反に該当するというものである。不正競争防止法違反など原告が他に挙げる観点も,要するにこのような主張に帰するものである(原告は,本件各商標がラルフ・ローレンの著作権を侵害する旨の主張もしている。この主張は,原告がラルフ・ローレンについて著名と主張している「POLO」の語に著作権があることを前提とするものと解されるところ 「POLO」の語は馬上球技を示す普通名詞であ ,って,著作物性を欠くから,原告の主張は採用することができない 。。)このような原告の主張は,まさに上記15号又は19号が規律する商標登録障害事由であって,これらの要件の充足の有無により15号又は19号の障害事由の成否を判断すべきであるから,原告主張の事実関係をもって,7号の障害事由に該当すると解するのは相当ではない。
後記5及び6で説示する内容に照らすと,本件各商標が15号又は19号の要件を充足しているとはいえず,登録時においても現在においても,公序良俗に反するような事情の存在を認めることはできず,7号の障害事由該当を根拠とする商標法46条1項1号又は5号の無効理由があるということはできない。
したがって,いずれにせよ,原告の上記主張は採用することができない。
以上のとおり,商標法4条1項7号該当性に関する原告の主張は理由がない。
5 商標法4条1項15号の登録障害事由の有無について(1) 本件商標1本件商標1の登録日は昭和55年9月29日であるから,平成8年法律第68号による改正前の商標法47条が適用され,不正の目的の有無を問わず,登録日から5年を経過した場合には商標法4条1項15号を理由とする無効審判を請求することができない。そして,本件商標1に係る無効審判請求の日は平成21年4月30日であって,登録から5年を経過した後であるから,15号を理由とする請求を不適法とした審決の判断に誤りはない。
(2) 本件商標2〜4本件商標2〜4の登録日は平成9年5月又は6月であるから,現行の商標法47条1項が適用され,不正の目的で登録された場合には,登録日から5年を経過した後であっても,商標法4条1項15号を理由とする無効審判の請求は可能である。
そこで,不正の目的の有無について検討するに,上記1で認定した事実関係,特に,丸永衣料株式会社は,本件商標1をAから譲り受ける前に本件商標2を出願していること,本件商標2の出願前に既に丸永商標が登録されていること,丸永商標の「polo」の文字部分と本件商標2の「POLO」の文字とでは,大文字・小文字の別, , や字体が異なっているものの 使用されている文字は共通していることに照らすと本件商標2は,丸永商標に関連して出願された商標であるということができる。そして,上記1で認定したとおり,丸永衣料株式会社が,丸永商標の出願前から既に「」 , polo の文字からなる標章を付した衣料品を販売していたことを併せ考慮すると本件商標2について,ラルフ・ローレンの著名性を利用する目的で出願して登録を受けたものと認めることはできず,他にこのような目的があったことを裏付ける事実関係を認める証拠はない。
同様に,本件商標3及び4も,丸永衣料株式会社から商号変更した公冠販売株式会社が出願したもので,各商標のうち「POLO」の文字部分が丸永商標や本件商標2, ,, と共通することに照らし 丸永商標に関連する商標であるということができ かつ丸永衣料株式会社が昭和40年代前半ころから「polo」の商標を付した衣料品を販売していたことを併せ考慮すると,本件商標3及び4についても,ラルフ・ローレンの著名性を利用する目的で出願して登録を受けたものと認めることはできず,他にこのような目的があったことを裏付ける事実関係を認める証拠はない。
したがって,本件商標2〜4について,不正の目的で登録されたものとは認められないとし,これらの商標に係る商標法4条1項15号を理由とする無効審判請求について,5年の除斥期間経過後にされたもので不適法であるとした審決の判断に誤りはない。
なお,原告は,本件各商標が商標法4条1項7号に該当するので除斥期間の適用がない旨主張するが,15号の除斥期間経過の上記判断を左右しない。
(3)以上のとおり,商標法4条1項15号の登録障害事由があるとする原告の主張は理由がない。
6 商標法4条1項19号の登録障害事由の有無について(1) 本件商標1について上記1で認定した事実関係,特に,本件商標1の出願人であるAが,本件商標1の出願と同日に「ラルフローレン」の文字からなる商標も出願していること,Aの経営する会社とラルフ・ローレンの双方がネクタイを取り扱っていること等に照らすと,Aには,本件商標1の出願時において,主観的にみる限り,ラルフ・ローレンとの関係において何らかの不正の目的があったことを否定し去ることはできない。
しかし,商標法4条1項19号が充足されるには 「不正の目的」に加えて 「他 ,,人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていることが必要である。そして,この要件は,登録出願時において充足されていなければならない(同条3項)これを本件についてみるに,本件商標1は 「POLO」の文字のみから構成される ,。,(,,),, ものである 他方 証拠 甲50 51 53等 によれば ラルフ・ローレンが「」「」,「」「」 商品に polo 又は POLO の文字RALPH LAUREN 又は by RALPH LAURENの文字,ポロ・プレーヤーの図形を組み合わせた標章を使用していたことは窺われるものの,昭和47年ころまでに「POLO」の文字のみからなる商標をその商品に用いていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。また,上記1のとおり,ラルフ・ローレンが 「POLO」と名付けたブランド名でネクタイの販売を行っていたこと ,や,設立した会社が「ポロ・ファッションズ・インコーポレーテッド」の名称であったことは認められるが,これらの事実から直ちにラルフ・ローレンが「POLO」の。, 文字のみからなる商標を商品に用いていたことを推認することもできない さらに「ポロ」の語は馬上球技を示す普通名詞であり 「ポロ」を含む「ポロシャツ」の ,語も昭和47年当時の商品区分第17類にあったのであって,上記1で認定したとおり,丸永衣料株式会社も昭和40年代前半から「polo」の文字からなる標章を用, , いていたことを併せ考慮すると 本件商標1が出願された昭和47年6月13日に「POLO」の文字のみからなる商標がラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務のみを表示するものとして日本国内又は海外における需要者に広く認識されていたと認めることはできない。
(2) 本件商標2〜4について本件商標2〜4について上記5(2)で説示した点は,それらの登録出願時においても当てはまるから,本件商標2〜4の登録出願時に,丸永衣料株式会社あるいは商号変更後の公冠販売株式会社について不正の目的があったと認めることはできない。
したがって,商標法4条1項19号の登録障害事由があるとする原告の主張も理由がない。
7 不正競争防止法2条1項1号及び2号について,「 」 原告は 商標法47条において 不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除くとされていることからすると,不正競争防止法2条1項1号及び2号に反する場合も商標の無効理由とすべきであると主張するが,原告が掲げる不正競争防止法の各号を理由とする請求を却下した審決の判断に誤りはない。
結論
以上によれば,審決の結論は相当であって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
(平成22年(行ケ)第10040号判決別紙1)本件商標目録1・商標登録第1434359号・登録日昭和55年9月29日・出願日昭和47年6月13日・被告への移転日平成10年4月27日・指定商品第17類(平成3年政令第299号による改正前の分類「ネクタイ,)その他本類に属する商品,但し,ポロシヤツ及びその類似品ならびにコ-トを除く」2・商標登録第2721189号・登録日平成9年5月2日・出願日昭和56年4月6日・被告への移転日平成10年4月27日・指定商品設定登録時第17類(平成3年政令第299号による改正前の分類「被服(運)動用特殊被服を除く,布製身回品(他の類に属するものを除く,寝))具類(寝台を除く」)平成20年8月6日の書換登録後第5類「失禁用おしめ,第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,」防毒マスク,溶接マスク,防火被服,第10類「医療用手袋,第1」」6類「紙製幼児用おしめ,第17類「絶縁手袋,第20類「クッシ」」ョン,座布団,まくら,マットレス,第21類「家事用手袋,第2」」2類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿,第24類「布製身の」回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛,,,,,布湯たんぽカバー座布団カバークッションカバーこたつ布団こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け,第25類「被服」」3・商標登録第4012493号・登録日平成9年6月13日・出願日昭和63年11月9日・被告への移転日平成10年4月27日・指定商品設定登録時第17類(平成3年政令第299号による改正前の分類「被服(運)動用特殊被服を除く,布製身回品(他の類に属するものを除く,寝))具類(寝台を除く」)平成20年8月6日の書換登録後第5類「失禁用おしめ,第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,」防毒マスク,溶接マスク,防火被服,第10類「医療用手袋,第1」」6類「紙製幼児用おしめ,第17類「絶縁手袋,第20類「クッシ」」ョン,座布団,まくら,マットレス,第21類「家事用手袋,第2」」2類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿,第24類「布製身の」回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛,,,,,布湯たんぽカバー座布団カバークッションカバーこたつ布団こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け,第25類「被服」」4・商標登録第4015885号・登録日平成9年6月20日・出願日昭和60年8月1日・被告への移転日平成10年4月27日・指定商品設定登録時第17類(平成3年政令第299号による改正前の分類「被服(運)動用特殊被服を除く,布製身回品(他の類に属するものを除く,寝))具類(寝台を除く」)平成20年8月6日の書換登録後第5類「失禁用おしめ,第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,」防毒マスク,溶接マスク,防火被服,第10類「医療用手袋,第1」」6類「紙製幼児用おしめ,第17類「絶縁手袋,第20類「クッシ」」ョン,座布団,まくら,マットレス,第21類「家事用手袋,第2」」2類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿,第24類「布製身の」回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛,,,,,布湯たんぽカバー座布団カバークッションカバーこたつ布団こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け,第25類「被服」」(平成22年(行ケ)第10040号判決別紙2)参考商標目録・商標登録第1447449号・登録日昭和55年12月25日・出願日昭和47年4月22日・被告への移転日平成10年4月27日・指定商品設定登録時第17類(平成3年政令第299号による改正前の分類「被服(運動)用特殊被服を除く,布製身回品(他の類に属するものを除く,寝具類))(寝台を除く」)平成13年2月14日の書換登録後第5類「失禁用おしめ,第9類「事故防護用手袋,防火被服,防じん」マスク,防毒マスク,溶接マスク,第10類「医療用手袋,第16類」」「」,「」,「」,紙製幼児用おしめ第17類絶縁手袋第21類家事用手袋「,,,,,,第25類洋服コートセーター類ワイシャツ類寝巻き類下着水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフ,,,,,,」ラー耳覆いずきんすげがさナイトキャップヘルメット帽子
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 清水節
裁判官 古谷健二郎